(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099545
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】画像処理装置及び点検システム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20220628BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220628BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220628BHJP
【FI】
H04N5/232 290
H04N5/232 300
H04N7/18 D
G03B15/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213355
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】岩上 顕夫
【テーマコード(参考)】
5C054
5C122
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CA05
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA03
5C054EA07
5C054FC01
5C054FC03
5C054FC12
5C054FC15
5C054FD07
5C054FF03
5C054GB01
5C054GB05
5C054GB15
5C054HA26
5C122DA12
5C122DA14
5C122EA42
5C122FA18
5C122FG05
5C122FH11
5C122FH18
5C122GA34
5C122HA01
5C122HA88
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】距離が離れた位置から個別に撮像して取得した画像データであっても、これらの間での時間差を補正できる画像処理装置及びこれを備える点検システムを提供すること。
【解決手段】画像処理装置50は、異なる位置を撮像した画像データGDに時刻情報TIを加えた画像情報GIを複数取得する画像情報取得部60と、撮影環境の状態を示す指標IXに基づいて、画像情報GIの間での相関関数CFから時刻ずれを補正する時刻補正部72とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる位置を撮像した画像データに時刻情報を加えた画像情報を複数取得する画像情報取得部と、
撮影環境の状態を示す指標に基づいて、前記画像情報の間での相関関数から時刻ずれを補正する時刻補正部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記撮影環境の状態を示す指標として、連続撮像された画像間について規定した距離が含まれる、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記撮影環境の状態を示す指標として、画像の輝度が含まれる、請求項1及び2のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記相関関数は、前記撮影環境の状態を示す指標に対して予め設けた閾値から定まる時刻の変化点について、前記画像情報に関する前記時刻の変化点の間での相関関係を示す関数である、請求項1~3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記時刻の変化点は、前記閾値に基づく前記画像情報についての2値化データであり、
前記相関関数は、前記2値化データから算出される、請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の画像処理装置を備える点検システムであって、
点検対象設備を異なる位置から撮像して得た前記画像データに前記時刻情報を加えて前記画像情報を生成する複数の撮像部と、
前記複数の撮像部により複数生成された前記画像情報を、前記画像処理装置に対して出力する画像情報出力部と
を備える点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば点検対象を撮像した画像について解析処理をするための画像処理装置及びこれを備える点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、画像処理に関する技術として、複数のカメラで共通の制御部を用意するもの(特許文献1参照)や、複数のカメラで同一の被写体を撮影するもの(特許文献2参照)等が知られている。
【0003】
しかしながら、例えば、上記特許文献1のような態様では、距離が離れた位置にあるカメラを独立に制御したい、といった場合に適切に対応できない可能性がある。また、上記特許文献2のような態様では、各カメラで撮像範囲が異なるようにしたい、といった場合に適切に対応できない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-216736号公報
【特許文献2】特許第3958638号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、距離が離れた位置から個別に撮像して取得した画像データであっても、これらの間での時間差を補正できる画像処理装置及びこれを備える点検システムを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための画像処理装置は、異なる位置を撮像した画像データに時刻情報を加えた画像情報を複数取得する画像情報取得部と、撮影環境の状態を示す指標に基づいて、画像情報の間での相関関数から時刻ずれを補正する時刻補正部とを備える。
【0007】
上記画像処理装置では、画像情報取得部において、異なる位置を別個独立に撮像した画像データの取得が可能であり、時刻補正部において、撮影環境の状態を示す指標に基づいて、画像データに時刻情報を付加した画像情報の間での相関関数から時刻ずれ(時間差)を補正できる。つまり、取得した複数の画像データの間での撮影時の時刻同期に相当する処理を事後的に行える。
【0008】
本発明の具体的な側面では、撮影環境の状態を示す指標として、連続撮像された画像間について規定した距離が含まれる。この場合、例えば画像間について規定した距離の変化について相関関数を利用した比較をすることで、画像情報の間での時刻ずれ(時間差)を補正できる。
【0009】
本発明の別の側面では、撮影環境の状態を示す指標として、画像の輝度が含まれる。この場合、例えば画像の輝度の変化について相関関数を利用した比較をすることで、画像情報の間での時刻ずれ(時間差)を補正できる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、相関関数は、撮影環境の状態を示す指標に対して予め設けた閾値から定まる時刻の変化点について、画像情報に関する時刻の変化点の間での相関関係を示す関数である。この場合、指標に対応した時刻の変化点に基づく相関関数により、迅速かつ的確な時刻ずれ(時間差)の算出が可能になる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、時刻の変化点は、閾値に基づく画像情報についての2値化データであり、相関関数は、2値化データから算出される。この場合、2値化データにより簡易で迅速な処理が可能となる。
【0012】
上記目的を達成するための点検システムは、上記画像処理装置を備える点検システムであって、点検対象設備を異なる位置から撮像して得た画像データに時刻情報を加えて画像情報を生成する複数の撮像部と、複数の撮像部により複数生成された画像情報を、画像処理装置に対して出力する画像情報出力部とを備える。
【0013】
上記点検システムでは、複数の撮像部により複数生成され、画像情報出力部により上記画像処理装置に対して出力された画像情報について、画像処理装置において時刻ずれ(時間差)を補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)は、一実施形態に係る点検システムの利用態様について説明するための斜視図であり、(B)は、点検システムを構成する撮像部による画像データを概念的に示す画像図であり、(C)は、画像の合成結果を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る画像処理装置を含む点検システムの一構成例を示すブロック図である。
【
図3】画像処理装置における処理内容について説明するための図である。
【
図4】点検システムについての一構成例を説明するためのブロック図である。
【
図5】画像処理装置における処理についてのフローチャートである。
【
図6】画像処理装置における処理のうち、指標の算出について一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】ハッシュ値の算出について一例を説明する図である。
【
図8】(A)は、画像間の距離の変化の様子を示すグラフであり、(B)は、画像における平均輝度の変化の様子を示すグラフである。
【
図9】画像処理装置における処理のうち、カメラ間の時刻ずれ算出について一例を説明するためのフローチャートである。
【
図10】データの2値化について一例を説明するためのグラフである。
【
図11】相関関数について一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1等を参照して、一実施形態に係る画像処理装置及びこれを備える点検システムについて一例を説明する。
図1(A)~
図1(C)は、本実施形態に係る点検システム100について説明するための前提として、点検システム100の利用態様について一例を示す図である。例えば、
図1(A)は、点検システム100における点検対象COの一例を、列車設備TEとした場合の様子について示す斜視図となっている。また、
図1(B)は、
図1(A)の例示のような点検システム100を構成する撮像部としての複数のカメラ10(カメラ1,2,…)により連続して撮像される画像G(動画)を概念的に示す画像図であり、
図1(C)は、画像の合成結果としての合成画像SGを示す図である。
【0016】
また、
図2は、本実施形態に係る画像処理装置50を含む点検システム100について一構成例を示すブロック図であり、
図3は、画像処理装置50における処理内容について説明するための図である。
【0017】
まず、
図1(A)に示す一例では、点検システム100を構成する複数のカメラ10は、列車TRの屋根上において、予め定められた箇所に取付固定されており、列車TRの進行方向D1に存在する点検対象COを撮像する。点検システム100は、撮像された画像に基づき、点検対象COの異常の有無を判断する。一方、図示の一例における点検対象COとしての列車設備TEは、鉄柱が線路を跨ぐように設けられた部材となっており、複数のカメラ10で異なる位置から列車設備TEの全体を撮像し、その撮像結果を、
図1(C)に例示するように貼り合わせる(合成する)ことで、点検対象COたる列車設備TEを捉えるものとなっている。すなわち、点検システム100は、上記のようにして合成された画像に基づいて、列車設備TEに異常がないか等の各種確認を行う。
【0018】
以上のように、
図1(A)~
図1(C)の示す一例の利用態様では、列車TRに搭載された各カメラ10により、1つの列車設備TEを異なる位置から移動しつつ連続撮像することで、
図1(B)に示すような複数の画像Gが取得され、取得された画像Gから適切なものすなわち列車設備TEを画像中に含むもの(例えば、部分画像TE1i,TE2iを含むもの)を選択して合成することで、
図1(C)に例示するような列車設備TEを示す部分画像TEiを含んだ合成画像SGを形成することが可能になる。
【0019】
ここで、点検システム100が、上記のような利用態様となる場合、各カメラ10間での撮像タイミングが同期していることが望ましい。すなわち、撮像した時刻を示す時刻情報が各カメラ10の間で共通するように、例えば1つの制御部(共通の制御部)で、複数のカメラ10の動作制御を統括的に行う、といった態様とすることが望ましい。しかしながら、上記一例のような列車TRに複数のカメラ10を搭載して撮像を行う、といった場合のように、各カメラ10間の距離が大きくなると、かかる態様とすることは困難であり、各カメラ10において独立に制御がなされることになる。
【0020】
本実施形態に係る点検システム100あるいはこれを構成する画像処理装置50(
図2参照)では、点検システム100を構成する複数のカメラ10が独立して制御され(撮像動作をし)、各カメラ10の間で時刻のずれ(時間差)が生じ得る場合であっても、これを補正可能としている。これにより、目的とする点検対象COを的確に捉えることができる。
【0021】
以下、
図2を参照して、画像処理装置50を含む点検システム100について一構成例を説明する。図示のように、点検システム100は、複数のカメラ10を含む画像情報生成装置40と、画像処理装置50とを備える。図示の例では、画像情報生成装置40は、列車TRに搭載される車上側の設備であり、列車TRの屋根上(屋外)に設けられる列車屋根上機器40Aと、屋内に設けられる列車内機器40Bとで構成される。列車屋根上機器40Aとしては、カメラ10のほか、照明(ストロボ)11が設けられている。列車内機器40Bとしては、制御部20のほか、操作部21、外部記憶媒体22、画像情報出力部30等が設けられる。また、図示の例では、1つの列車屋根上機器40Aとこれに対応する1つの列車内機器40Bとが一組の構成となっており、かかる組合せが複数存在して画像情報生成装置40が構成されているが、以下では、説明を簡略化するため、一組の列車屋根上機器40Aと列車内機器40Bとに着目して説明する。
【0022】
カメラ10は、既述のように、所定の位置や姿勢で固定されて設けられ、カメラ10での撮像により生成される画像データGDが、制御部20に出力される。なお、1つの画像データGDは、
図1(B)に例示した1つの画像Gに相当する。また、ここでの一例では、カメラ10は、近赤外カメラとし、照明11は、カメラ10に応じて近赤外光を照射する。目には見えない近赤外光を利用することで、撮影時に周囲への影響を抑制できる。具体的には、例えば夜中に線路上の設備点検のために撮像を行う、といった場合であっても、照明11によって光量の大きい光を照射しても、近隣への光害となる可能性を抑えられる。なお、カメラ10及び照明11は、制御部20からの指令信号に従って動作する。
【0023】
制御部20は、例えばCPUあるいは各種回路等で構成され、各部と接続されて、撮像に関する各種動作を制御する。例えば、制御部20は、入力装置としての操作部21に接続されており、ユーザーによる操作部21の操作に基づく各種指令信号を受け付け、これに応じた種々の動作を行う。なお、図示の一例では、1つのカメラ10を制御する場合を例示しているが、複数のカメラ10を制御する場合も考えられる。これについては、
図4を参照して、バリエーションの態様について後述する。
【0024】
以上のように、制御部20は、カメラ10や照明11の動作制御を行うが、この際、特に、カメラ10からの画像データGDに対して、時刻付与を行う。すなわち、制御部20は、カメラ10から順次出力される画像データGDに、時刻情報TIを都度加えていく時刻付与部TAとして機能する。以下、画像データGDに時刻情報TIが加えられた情報を、画像情報GIとする。制御部20は、順次生成した画像情報GIを、外部記憶媒体22に記憶させる。
【0025】
外部記憶媒体22は、各種ストレージデバイス等で構成され、各種動作に必要なプログラム等を格納するとともに、上記により取得した画像に関する各種情報、特に、複数の画像データGDと時刻情報TIとで構成される複数の画像情報GIを格納する。
【0026】
画像情報出力部30は、複数の撮像部であるカメラ10により複数生成された画像情報GIを、画像処理装置50に対して出力する。
【0027】
また、この場合、複数組の列車屋根上機器40A及び列車内機器40Bで構成される画像情報生成装置40には、複数の画像情報出力部30が存在することから、画像処理装置50は、複数の画像情報出力部30から、それぞれ連続した画像データGDを含む画像情報GIを受け付けるものとなっている。
【0028】
画像処理装置50は、受け付けた画像情報GIについて、各種画像処理を行うため、画像情報取得部60と、主制御部70と、記憶部80とを備える。
【0029】
画像情報取得部60は、各画像情報出力部30から出力される各種情報、特に、複数の画像情報GIを受け付けるインターフェース部である。
【0030】
主制御部70は、例えばCPUあるいは各種回路等で構成され、各種画像処理を行う画像処理装置50の本体部分であるとともに、データ処理を行う。このため、本実施形態では、主制御部70は、画像解析部71と、時刻補正部72とを備える、あるいは、これらとして機能する。画像解析部71は、画像情報GIに対する各種画像処理を施し、特に、ここでは、異なる画像情報出力部30から送信される画像情報GI間での時刻ずれを算出可能とするために、各画像情報GI(画像データGD)における撮影環境の状態を示す指標の算出を行う。より具体的には、撮影環境の状態を示す指標の1つである、画像情報GIのうち連続撮像された画像間について規定した距離や、画像の輝度について、算出を行う。また、時刻補正部72は、画像解析部71において算定された撮影環境の状態を示す指標、すなわち上記距離や輝度に基づいて、画像情報GI間での時刻ずれを補正する。
【0031】
記憶部80は、各種ストレージデバイス等で構成され、主制御部70からの指令に従って、例えば画像情報取得部60で受け付けた画像情報GIを格納するほか、主制御部70での各種処理結果としての各種データを格納する。
【0032】
以下、
図3として示す概念図を参照して、画像処理装置50における処理内容について説明する。
図2等を参照して説明した構成において、画像データGD等の各種データの流れについては、
図3に示すようなものとなる。具体的に説明すると、図中において画像データ1,2,3,…で示す複数の画像データGDが種々の位置から撮像が行われた結果として取得され、これらに時刻情報TIがそれぞれ付与されたものが、画像処理装置50の画像情報取得部60において、画像情報GIとして受け付けられる。すなわち、画像処理装置50側には、図中において画像情報1,2,3,…として示す複数の画像情報GIが取り込まれており、各画像情報1,2,3,…は、画像データ1,2,3,…と、これに対応する時刻情報1,2,3,…とで構成されている。
【0033】
なお、各画像情報1,2,3,…は、連続した画像で構成されており、一部拡大して破線で囲って示すように、例えば画像情報1であれば、複数(多数)の画像情報1-1,1-2,1-3,…で構成されている。なお、他の画像情報2等についても、同様である。つまり、見方を変えると、各画像情報GIは、複数(多数)の画像情報で構成される画像情報群となっているとも言える。
【0034】
ただし、これらの画像情報GIの間(例えば画像情報1と画像情報2との間)では、時刻付与に際して必ずしも同期がなされておらず、時刻ずれが発生している可能性がある。例えば、撮像に使用するカメラ10(
図2等参照)ごとの制御機器のクロック周波数の誤差等がその要因となる場合がある。
【0035】
これに対して、画像処理装置50は、時刻補正部72において、撮影環境の状態を示す指標IXに基づいて、画像情報GIの間での相関関数CFから時刻ずれを補正する態様となっている。ここでは、カメラ10(
図2等参照)間で撮影環境の状態を示す指標IXとして、画像間の距離及び輝度に着目し、特に、複数(多数)の画像情報1-1,1-2,1-3,…からそれらの変化を捉え、当該変化に関する相関関数CFを利用することで、時刻ずれの度合を算定している。なお、このような指標IXや相関関数CFについての具体的一例は、
図5等を参照して後述する。
【0036】
また、以上のような処理を行う画像処理装置50の設置等に関しては、種々の態様が考えられる。例えば、上記したカメラ10(
図2等参照)等による画像情報GIの生成動作とは、別個独立に画像処理を行うべく、画像処理装置50は、カメラ10側と画像処理装置50側とを離隔して単独で存在する態様とすることが考えられる。ただし、カメラ10側と画像処理装置50側とを離隔して配置した態様であっても、画像情報GIの取得に関しては、例えば無線通信等を利用することで、画像情報GIの生成とこれの画像解析等の処理とを同時並行的に行える態様としてもよい。一方、画像処理装置50を列車内機器40B(
図2参照)とともに車載の構成とし画像処理装置50と各部とが接続されて、同時並行的に一括して処理を行う態様としてもよい。
【0037】
以下、
図4として示すブロック図の点検システム100を参照して、上記態様の変形例について示す。
【0038】
まず、上記一例のうち、列車屋根上機器40Aや列車内機器40Bについては、1つのカメラ10に対して、1つの照明、1つの制御部20等で構成しているものとしたが、これに限らず、種々の組合せが考えられる。例えば、
図4においてカメラ1等で示すように、列車屋根上機器40Aにおいて照明を有しない構成とすることもできる。むろん、カメラ2等で示すように、あるいは上記した一態様のように、列車屋根上機器40Aにおいて、1つのカメラ10(図示の例ではカメラ2)と1つの照明11(図示の例では照明1)とを備える構成としてもよい。この他にも、例えば2つのカメラ3,4に対して、列車内機器40B側に設けた1つの制御部3で制御を行う構成とすることも考えられる。さらに、2つのカメラ5,6にそれぞれ対応する照明2,3を設け、これらに対して、1つの制御部4で制御を行う構成とすることも考えられる。
【0039】
また、画像処理装置50については、
図4の一例では、各種データ管理を行う中央サーバCVが画像処理装置50としての機能を含んでいる。具体的には、中央サーバCVは、例えば、列車内機器40Bに設けた上記各態様の外部記憶媒体1等に対応して、これらからの画像情報GIを含む各種情報を格納する外部記憶媒体1A等で構成される記憶部MEを備えるとともに、全体を制御する制御部MPや、画像処理部GP、さらには、操作部(入力装置)OUや、表示部(出力装置)DS等を備える。中央サーバCVでは、制御部MPからの各種指令信号に従って、記憶部MEの外部記憶媒体1A等に格納された各種情報を、例えば画像処理部GPにおいて解析処理し、その結果を、ディスプレイ等で構成される表示部DSに表示させる。また、制御部MPは、操作部OUを介して、オペレーターからの各種操作信号を受け付け、これに応じた各種処理を行う。以上により、中央サーバCVは、画像処理装置50としても機能する。
【0040】
以下、
図5等を参照して、本実施形態に係る画像処理を利用した時刻ずれ補正の一例について、詳細を説明する。
【0041】
まず、
図5のフローチャートに示すように、本実施形態では、画像処理装置50における処理は、大きく分けて、指標の算出(ステップS1)と、カメラ間の時刻ずれ補正(ステップS2)との2つの処理で構成されている。
【0042】
このうち、前段のステップS1については、詳細を
図6~
図8を参照して説明する。また、後段のステップS2については、詳細を
図9~
図11を参照して説明する。
【0043】
まず、
図6のフローチャートを参照して、
図5のステップS1に関して、さらに詳細な処理手順の一例を説明する。なお、ここでは、
図2に例示した画像処理装置50の主制御部70が、画像解析部71として機能する。
【0044】
画像解析部71としての主制御部70は、まず、複数のカメラ10のうち、対象となるカメラ10を指定する(ステップS101)。すなわち、どのカメラ10からの画像情報GIを処理対象とするかを決定する。なお、この場合において、選択された画像情報GIは、
図3において画像情報1に関して例示したように、複数(多数)の画像情報1-1等で構成されているものとする。
【0045】
次に、主制御部70は、画像情報GIのうちから1枚の画像(例えば、
図3の画像情報1-1を構成する画像データ1-1)の情報を入力し(ステップS102)、当該画像情報(1枚の画像データ)についてのハッシュ値を算出し(ステップS103)、さらに、主制御部70は、ステップS103で算出されたハッシュ値を利用して、指標の1つである画像間の距離を算出する(ステップS104)。なお、ハッシュ値の算出やこれに基づく画像間の距離の算出に関する具体的一例については、
図7等を参照して後述する。
【0046】
次に、主制御部70は、ステップS102で入力された画像情報(1枚の画像データ)について、もう1つ別の指標としての平均輝度を算出する(ステップS105)。なお、平均輝度の算出方法の詳しい一例については、後述する。また、平均輝度の算出については、ステップS103及びステップS104の処理と同時並行的になされてもよい。
【0047】
主制御部70は、ステップS102からステップS105までの処理を終えると、ステップS101で選択された画像情報GIを構成する全ての画像情報(画像データ)について処理を完了したか否かを確認し(ステップS106)、完了していなければ(ステップS106:No)、主制御部70は、画像情報GIのうちから新たな1枚の画像(例えば、
図3の画像情報1-2を構成する画像データ1-2)の情報を入力し(ステップS102)、同様の処理を行う。
【0048】
一方、ステップS106において、対象となっている画像情報GIに含まれる全ての画像情報(画像データ)について処理を完了したことが確認されると(ステップS106:Yes)、主制御部70は、ステップS101で選択された画像情報GI(例えば、
図2の画像情報1)に関して算出した画像間の距離及び平均輝度について、記憶部80に保存する(ステップS107)。
【0049】
主制御部70は、ステップS107でのデータ保存の処理を終えると、複数のカメラ10の全てについて処理を完了したか否か、すなわち全ての画像情報GIについて処理を完了したか否か、を確認し(ステップS108)、完了していなければ(ステップS108:No)、主制御部70は、複数のカメラ10のうちから新たなカメラ10を指定し(ステップS101)、すなわち当該カメラ10に対応する画像情報GI(例えば画像情報2)を入力し、同様の処理を行う。
【0050】
一方、ステップS108において、対象となっている全てのカメラ10について、処理を完了したことが確認されると(ステップS108:Yes)、主制御部70は、画像解析部71としての動作を終了する。
【0051】
なお、以上のようにして得られる画像間の距離及び平均輝度が、
図5のステップS2に示すカメラ間の時刻ずれ補正を行うための指標として、利用される。
【0052】
以下、
図7を参照して、上述したハッシュ値の算出について、具体的一例を説明する。まず、図示のように、連続画像による画像群を含む画像情報GIについて、これを構成する連続する画像の一部を、画像G1,G2,G3とする。これらについて、それぞれ以下の動作手順(1)~(5)により、図示のような8×8行列のハッシュ値を算出する。
(1) 画像G1,G2,G3を縮小する。
(2) 画像G1,G2,G3がカラーの場合、グレースケールに変換する。
(3) 離散コサイン変換処理により、画像の周期成分を算出する。
(4) 周期成分のうち、低周期成分を抽出する。
(5) 低周期成分が平均より大きいか否かで2値化する。
【0053】
以上により、図示のように、例えば8×8の行列となるハッシュ値を得ることができる。これをベクトル化することで、64次元ベクトルになる。なお、上記態様の場合、2値化していることで、当該ベクトルを構成する各要素の値は、0か1となっている。また、この場合、上記のようにして求めたハッシュ値は、元の画像が似ているもの同士である場合には、ハッシュ値も似たものとなる(0,1の配置が近似する)。したがって、ハッシュ値についての画像間の差異を距離として規定することで、画像の変化の様子を捉えることが可能になる。
【0054】
次に、上記のようにして得られたハッシュ値を利用した画像間の距離の算出について説明する。図示の例では、連続する3つの画像G1,G2,G3を示しており、この場合、時間的に隣接する2つの画像の間での距離、すなわち、画像G1と画像G2との間での距離、画像G2と画像G3との間での距離を取得する。さらい言い換えると、入力画像と1つ前の入力画像との距離を算出する。入力画像のハッシュ値をx=(x
1,x
2,…,x
64)とし、1つ前の入力画像のハッシュ値をy=(y
1,y
2,…,y
64)とすると、画像間の距離d(x,y)は、例えば
と規定できる。上記3つの画像G1,G2,G3についてであれば、画像G1と画像G2とについて、図中においてこれらに対応する8×8行列で示される0または1のハッシュ値を、上式に当てはめて計算すると、その間の距離は、10であり、同様に、画像G2と画像G3との間での距離は、30である。既述のように、画像が類似するほど、距離が小さくなるため、上記の場合、画像G1と画像G2とは相対的に類似した画像であるのに対して、画像G2と画像G3とは相対的に異なる画像である、ということが分かる。以上のように、上記では、撮影環境の状態を示す指標として、連続撮像された画像間について規定した距離を含められることになる。
【0055】
なお、
図6のフローチャートにおいて、最初の1枚の画像についての処理では、1つ前の入力画像が存在しない。この場合、例えば予め定めたデフォルト値(例えば64個全ての要素の値を0としたもの)との比較から距離を算出してもよい。あるいは、最初の1枚に対しては距離を算出しないものとしてもよい。
【0056】
上記のような距離d(x,y)の特性について考える。例えば、カメラ10を搭載した列車TR(
図1等参照)が停止している場合には、撮像環境が変化しないあるいはほとんど変化しないため、連続画像間の距離も小さいあるいはほぼゼロに近くなると考えられる。一方、列車TRが走り出した瞬間に、距離の値に大きな変化が生じると考えられ、かつ、かかる変化は、列車TRに搭載されたカメラ10全てに同時に生じると考えらえる。したがって、この変化を捉え、時刻の基準とすることで、各カメラ10間における時刻ずれを補正することができる。すなわち、カメラ10が停止していることがある、といった場合において、上記距離d(x,y)を、撮影環境の状態を示す指標として採用できる。
【0057】
なお、上記距離d(x,y)は、距離を示す指標としての一例であり、距離については、ハッシュ値の差異に応じた大小関係を示すことが可能であれば、上記以外にも種々の定義を採用することが可能である。また、ハッシュ値についても、上記以外の種々の手法を採用することができる。
【0058】
次に、平均輝度の算出について、すなわち画像全体の輝度の平均値の算出について説明する。例えば、上記3つの画像G1,G2,G3等に示すような各画像において、画像の幅をWとし、高さをHとし、座標(x,y)の画素の輝度をI(x,y)とし、平均輝度をmとすると、平均輝度mは、
で表される。この場合、撮影環境が変化するすなわち周りの明るさが変化するような場合に、平均輝度mは、大きく変化すると考えられる。
【0059】
上記のような平均輝度mの特性について考える。例えば、カメラ10を搭載した列車TR(
図1等参照)がトンネルに出入りする場合には、明るさに関する変化が激しくなると考えられる。これは、例えば夜間であっても、近赤外光を発する照明11(
図2等参照)を使用する場合には、同様であると考えられる。また、かかる変化は、列車TRに搭載されたカメラ10全てに同時あるいはほぼ同時に生じると考えらえる。したがって、この変化を捉え、時刻の基準とすることで、各カメラ10間における時刻ずれを補正することができる。すなわち、明るさについて瞬間的な変化が生じる、といった場合において、上記平均輝度mを、撮影環境の状態を示す指標として採用できる。複数のカメラ10が例えば列車TRの先端側と後端側とに存在する場合のように進行方向について差のある位置に配置されている場合には、多少の時間差が生じるが、この場合、例えば各カメラの配置やトンネルに入る際の列車TRの速度まで加味して補正をすることが考えられる。
【0060】
なお、上記平均輝度mは、輝度を示す指標としての一例であり、輝度については、この変化を的確に示すことが可能であれば、上記以外にも種々の定義を採用することが可能であり、例えば、1つの画像中における輝度の最小値と最大値との差を指標として採用するといったことも考えられる。
【0061】
図8(A)は、指標の1つとしての画像間の距離dの変化の様子を示すグラフであり、図中において、横軸は、時刻を示しており、縦軸は、画像間の距離dの値を示している。ここでは、複数のカメラ10を搭載した列車TRが、走行状態から一旦停止して、また、走行を開始するまでの間に、2つのカメラ10(例えばカメラ1,2)でそれぞれ撮像された画像情報GI(画像情報1,2)について、解析を行った結果を示している。なお、カメラ1とカメラ2とでは、時刻に関する同期がなされておらず、時刻については、各画像情報GIに含まれる時刻情報TIに基づいている。また、実線で示す曲線P1は、一のカメラ10(カメラ1)における画像間の距離を示しており、破線で示す曲線P2は、他のカメラ10(カメラ2)における画像間の距離を示している。
【0062】
列車TRが停止している間、カメラ1,2の映像は変化しないので、画像間の距離は、どちらについても小さくなる。つまり、カメラ1及びカメラ2のいずれも、グラフ上の一定区間で画像間の距離が小さいままの状態が続いている。しかしながら、
図8(A)の例では、カメラ2のほうが、カメラ1より距離が0の状態あるいはこれに近い状態となる区間が、左寄りになっている。この差が、両者間での時刻のずれに相当する。
【0063】
図8(B)は、指標の1つとして別の一態様である画像における平均輝度mについて、その変化の様子を示すグラフであり、図中において、横軸は、時刻を示しており、縦軸は、平均輝度mの値を示している。ここでは、複数のカメラ10を搭載した列車TRが、トンネルに入り、その後トンネルを出るまでの間に、2つのカメラ(例えばカメラ3,4)でそれぞれ撮像された画像情報GI(画像情報3,4)について、解析を行った結果を示している。なお、カメラ3とカメラ4とでは、時刻に関する同期がなされておらず、時刻については、各画像情報GIに含まれる時刻情報TIに基づいている。また、実線で示す曲線Q1は、一のカメラ10(カメラ3)における平均輝度を示しており、破線で示す曲線Q2は、他のカメラ10(カメラ4)における平均輝度を示している。
【0064】
列車TRがトンネルに入ってからトンネルを出る前までの間、カメラ1,2の映像の平均輝度は、小さくなっている。しかしながら、
図8(B)の例では、カメラ4のほうが、カメラ3より輝度が0の状態あるいはこれに近い状態となる区間が、右寄りになっている。この差が、両者間での時刻のずれに相当する。
【0065】
以上のような距離や輝度を、撮影環境の状態を示す指標として採用することで、各カメラ10の間に生じる時刻ずれ(時間差)について、的確な補正ができる。
【0066】
次に、
図9のフローチャートを参照して、
図5のステップS2に関して、さらに詳細な処理手順の一例を説明する。なお、ここでは、
図2に例示した画像処理装置50の主制御部70が、時刻補正部72として機能する。
【0067】
また、ここでは、一例として、対象となる複数のカメラ10のうちの一のカメラ10(例えばカメラ1)における時刻情報を基準として、カメラ1に対して他のカメラ10(カメラ2等)における時刻情報のずれ度合を計算するものとする。
【0068】
時刻補正部72としての主制御部70は、まず、複数のカメラ10のうち、2つのカメラについて選択し、これらの間での相対的な時刻ずれを補正すべく、指標の読込みを行う(ステップS201)。すなわち、一のカメラ10(カメラ1)と他のカメラ10(例えばカメラ2)とを選択し、これらについての画像情報(画像情報1,2)に関する指標(距離d、平均輝度m)のデータを記憶部80から抽出して読み込む。より具体的には、
図8(A)のグラフに例示したようなデータを読み込む。
【0069】
次に、主制御部70は、ステップS201において読み込んだデータ中の変化点を読み取るべく、2値化の処理を行う(ステップS202)。すなわち、主制御部70は、
図8(A)に例示したような値の著しい変化があった箇所を特定した2値化データの作成を行う。なお、これについて詳しくは、
図10を参照して一例を後述する。
【0070】
次に、主制御部70は、ステップS202での2値化データに基づく相関関数の算出を行う(ステップS203)。さらに、主制御部70は、算出された相関関数のピーク位置を算出し(ステップS204)、これを出力する(ステップS205)。この出力結果が、求めるべき時刻情報のずれ度合、すなわち時刻ずれに対する補正量に相当する。なお、2値化データを利用した相関関数の算出や、相関関数のピーク位置の抽出については、
図11を参照して一例を後述する。
【0071】
主制御部70は、ステップS201からステップS205までの処理を終えると、全てのカメラ10の組合せについての処理が完了したか否か、つまり上記のようにカメラ1を基準とした場合、カメラ1と他のカメラとの組合せについての処理がすべて完了したかを確認し(ステップS206)、完了していなければ(ステップS206:No)、主制御部70は、新たな組合せについて、同様の処理を行う。
【0072】
一方、ステップS206において、対象となっている全ての組合せについて、処理を完了したことが確認されると(ステップS206:Yes)、主制御部70は、時刻補正部72としての動作を終了する。
【0073】
以下、
図10のグラフを参照して、データの2値化について、すなわち上述した2値化データの作成について、一例を説明する。図示のうち、上段αは、
図8(A)に例示したグラフ、すなわち2つのカメラ10(例えばカメラ1,2)についての画像間の距離dの変化を示しており、下段βは、上段αについて2値化した一例について示している。なお、下段βにおいて、横軸は、上段αと同様、時刻となっており、縦軸は、2値化したものすなわち0か1かで表される値となっている。また、下段βにおいて実線で示す曲線R1は、上段αに示す曲線P1に対応し、下段βにおいて破線で示す曲線R2は、曲線P2に対応する。
【0074】
ここでは、図示のうち、上段αに示すように、指標としての画像間の距離における変化点を定めるものとして、予め閾値を設けておき、当該閾値を超える時刻を変化点とする。下段βに示す2値化データは、当該閾値を下回る場合に値が1となり、それ以外では0となっている。
【0075】
上記のようにして、2つのカメラ10(カメラ1,2)に対して算出した2値化データに対し、
図11に例示するような相関関数を算出する。具体的には、
図10に例示した2値化データにおける曲線R1,R2に対応するデータを、p
1(t),p
2(t)とした場合において、相関関数R(s)を、
と規定すると、相関関数R(s)は、
図11に例示するようなグラフとなる。この相関関数R(s)は、2つのカメラ1,2の間での時刻のずれになるところで、最大値を取る。つまり、図中において、相関関数R(s)がピークを示す時のsの値Tが、求めるべき時刻のずれとなる。
【0076】
以上では、相関関数R(s)が、撮影環境の状態を示す指標である画像間の距離に対して予め設けた閾値から定まる時刻の変化点について、2つのカメラ1,2からの画像情報GIに関する時刻の変化点の間での相関関係を示す関数となっている。また、上記の場合、その時刻の変化点は、閾値に基づく画像情報についての2値化データ(2値化データの変化点)で示されており、相関関数R(s)は、2値化データから算出されるものとなっている。これにより、簡易で迅速、かつ、的確な処理が可能となっている。
【0077】
既述のように、基準とするカメラ1と他のカメラとの全ての組合せについて、同様に、上記のような相関関数に基づく時刻のずれの算出を行うことで、基準とするカメラ1に対する他のカメラでの時刻のずれ度合が算定でき、これに基づく補正ができ、延いては、取得した画像情報全体についての時間的同期が確立できる。
【0078】
また、もう1つの指標である平均輝度mについても、例示した
図8(B)のグラフに関して、同様の2値化処理及び相関関数に基づく算出を行うことで、時刻のずれに関する算定が可能となる。
【0079】
また、時刻のずれの算出に関しては、画像間の距離dと平均輝度mとの双方を共に使用する態様としてもよいが、例えば、列車TRの走行区間等を考慮して、最適なものを都度選択する、という態様とすることも考えられる。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る画像処理装置50は、異なる位置を撮像した画像データGDに時刻情報TIを加えた画像情報GIを複数取得する画像情報取得部60と、撮影環境の状態を示す指標IXに基づいて、画像情報GIの間での相関関数CFから時刻ずれを補正する時刻補正部72とを備える。上記のような構成の画像処理装置50では、画像情報取得部60において、異なる位置を別個独立に撮像した画像データGDの取得が可能であり、時刻補正部72において、撮影環境の状態を示す指標IXに基づいて、画像データGDに時刻情報TIを付加した画像情報GIの間での相関関数CFから時刻ずれ(時間差)を補正できる。つまり、取得した複数の画像データGDの間での撮影時の時刻同期に相当する処理を事後的に行える。
【0081】
また、本実施形態に係る点検システム100は、画像処理装置50を備えるものであって、点検対象設備(例えば点検対象COとしての列車設備TE)を異なる位置から撮像して得た画像データGDに時刻情報TIを加えて画像情報GIを生成する複数の撮像部としてのカメラ10と、複数のカメラ10により複数生成された画像情報GIを、画像処理装置50に対して出力する画像情報出力部30とを備える。この場合、複数のカメラ10により複数生成され、画像情報出力部30により画像処理装置50に対して出力された画像情報GIについて、画像処理装置50において時刻ずれ(時間差)を補正できる。
【0082】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0083】
まず、上述した一例では、1つのカメラ10(例えばカメラ1)を基準として、他のカメラの時刻のずれ度合を算出しているが、これに限らず、例えば基準を定めずに全てのカメラの組合せについて相関関数による算定をして、これらの結果に基づき時刻のずれを補正してもよい。
【0084】
また、上記では、指標として、画像間の距離に関するものと画像の輝度に関するものとの2つを採用しているが、どちらか一方のみを指標とする態様とすることも可能である。
【0085】
また、上記では、2値化データから相関関数を算出しているが、2値化していないデータ(例えば
図8に示す曲線P1,P2のままのデータ)について相関関数を算出する場合も考えられる。
【0086】
また、上記では、カメラ10や、照明11において、近赤外光を利用するするものとしているが、これに限らず、例えば可視光を利用する態様とすることも考えられる。
【0087】
また、上記では、列車TR上に搭載する態様としているが、これに限らず他の移動体に搭載する態様とすることも考えられ、例えば、単数または複数の車両にカメラを搭載し、道路設備に関する点検を行うことも考えられる。
【符号の説明】
【0088】
10…カメラ、11…照明、12…画像情報、20…制御部、21…操作部、22…外部記憶媒体、30…画像情報出力部、40…画像情報生成装置、40A…列車屋根上機器、40B…列車内機器、50…画像処理装置、60…画像情報取得部、70…主制御部、71…画像解析部、72…時刻補正部、80…記憶部、100…点検システム、CF…相関関数、CO…点検対象、CV…中央サーバ、D1…進行方向、DS…表示部、G,G1,G2,G3…画像、GD…画像データ、GI…画像情報、GP…画像処理部、IX…指標、ME…記憶部、MP…制御部、OU…操作部、P1,P2,Q1,Q2,R1,R2…曲線、R(s)…相関関数、SG…合成画像、T…値、TA…時刻付与部、TE…列車設備、TI…時刻情報、TR…列車、d…距離(指標)、m…平均輝度(指標)、α…上段、β…下段