(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099547
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】周波数同期回路
(51)【国際特許分類】
H04B 1/18 20060101AFI20220628BHJP
H04L 27/00 20060101ALI20220628BHJP
H04L 27/38 20060101ALI20220628BHJP
H03L 7/06 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H04B1/18 C
H04L27/00 C
H04L27/38 100
H03L7/06 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213362
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 達郎
(72)【発明者】
【氏名】羽生田 雅也
【テーマコード(参考)】
5J106
5K062
【Fターム(参考)】
5J106AA02
5J106BB01
5J106CC01
5J106CC31
5J106DD44
5J106FF02
5J106GG01
5J106HH01
5J106JJ03
5J106KK37
5K062AB02
5K062AB10
5K062AC02
5K062BC02
5K062BC10
5K062BE06
5K062BE08
(57)【要約】
【課題】PLL制御用の集積回路を使用することなく周波数同期を行う。
【解決手段】FPGA100内に構成される、デジタル直交復調処理を行う直交復調部103と、デジタル直交復調処理で使用する発振信号を直交復調部103へと供給するNCO部102と、を有し、デジタル直交復調処理の対象の信号の周波数と、NCO部102の発振周波数との間の周波数誤差Δfを検出し、周波数誤差Δfに基づいてFPGA100の動作クロックが制御される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FPGA内に構成される、
デジタル直交復調処理を行う直交復調部と、
前記デジタル直交復調処理で使用する発振信号を前記直交復調部へと供給するNCO部と、を有し、
前記デジタル直交復調処理の対象の信号の周波数と、前記NCO部の発振周波数との間の周波数誤差を検出し、
前記周波数誤差に基づいて前記FPGAの動作クロックが制御される、
ことを特徴とする周波数同期回路。
【請求項2】
前記FPGA内に構成される、
前記デジタル直交復調処理後の実部と虚部とのそれぞれについての0~Tの積分時間Tの積分結果を前記デジタル直交復調処理後の実部と虚部とのそれぞれについてのT~2Tの積分時間Tの積分結果で除して複素除算処理を行う除算部と、
前記複素除算処理後の実部と虚部とを用いて逆正接関数演算を行って位相回転角を計算するとともに前記位相回転角を用いて前記周波数誤差を算出する周波数誤差計算部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の周波数同期回路。
【請求項3】
前記FPGA内に構成される、
時間t1における前記デジタル直交復調処理後の実部および虚部を時間t2における前記デジタル直交復調処理後の実部および虚部で除して複素除算処理を行う除算部と(但し、前記デジタル直交復調処理の対象の信号のサンプリング周期をΔtとすると、t2=t1+Δt)、
前記複素除算処理後の実部と虚部とを用いて逆正接関数演算を行って位相回転角を計算するとともに前記位相回転角を用いて前記周波数誤差を算出する周波数誤差計算部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の周波数同期回路。
【請求項4】
前記FPGA内に構成される、
前記デジタル直交復調処理後の実部と虚部とを用いて逆正接関数演算を行う逆正接演算部と、
前記逆正接関数演算の結果についての-T~0の積分時間Tの積分結果から前記逆正接関数演算の結果についての0~Tの積分時間Tの積分結果を減算して積分差分を計算する積分演算部と、
前記積分差分を用いて前記周波数誤差を算出する周波数誤差計算部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の周波数同期回路。
【請求項5】
前記FPGA内に構成される、
前記デジタル直交復調処理後の実部と虚部とを用いて逆正接関数演算を行う逆正接演算部と、
時間t2における前記逆正接関数演算の結果から時間t1における前記逆正接関数演算の結果を減算して時間差分を計算する微分演算部と(但し、前記デジタル直交復調処理の対象の信号のサンプリング周期をΔtとすると、t2=t1+Δt)、
前記時間差分を用いて前記周波数誤差を算出する周波数誤差計算部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の周波数同期回路。
【請求項6】
前記デジタル直交復調処理の対象の信号の前記周波数が音声周波数帯域である、
ことを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の周波数同期回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周波数同期回路に関し、例えば無線通信装置における周波数同期の仕組みとして適用して好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送波周波数帯域の受信信号を直交復調して基底帯域のベースバンド受信信号を生成する受信機では、受信信号の搬送波周波数と直交復調に使用される搬送波周波数(別言すると、局部発振周波数)との間に周波数誤差が存在すると、送信データを誤って再生してしまう場合がある。このため、このような受信機では、通常、周波数誤差を検出してこの誤差を補正する機能として搬送波周波数同期の機能を備えるようにしている。搬送波周波数同期では、送信側と受信側との通信周波数を一致させるために、受信側において周波数誤差を検出してこの誤差を低減させるように局部発振周波数を制御するようにしている。このような技術として、例えば、送信側でOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing の略;直交周波数分割多重)信号の同期信号区間内の所定位置に1種類以上の異なる周波数の無変調キャリア信号を同一の繰り返しパターンで挿入して間欠的に送信し、受信側で無変調キャリア信号の内、最もレベルの高い無変調キャリア信号の周波数にロックしてOFDM信号復調用の基準搬送周波数信号を再生する方式が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、PLL(Phase Locked Loop の略;位相同期ループ)制御用の集積回路(IC:Integrated Circuit の略)を使用して搬送波周波数同期のための回路を構成すると、部品点数が多くなる、という問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、PLL制御用の集積回路を使用することなく周波数同期を行うことが可能な、周波数同期回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、FPGA内に構成される、デジタル直交復調処理を行う直交復調部と、前記デジタル直交復調処理で使用する発振信号を前記直交復調部へと供給するNCO部と、を有し、前記デジタル直交復調処理の対象の信号の周波数と、前記NCO部の発振周波数との間の周波数誤差を検出し、前記周波数誤差に基づいて前記FPGAの動作クロックが制御される、ことを特徴とする周波数同期回路である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の周波数同期回路において、前記FPGA内に構成される、前記デジタル直交復調処理後の実部と虚部とのそれぞれについての0~Tの積分時間Tの積分結果を前記デジタル直交復調処理後の実部と虚部とのそれぞれについてのT~2Tの積分時間Tの積分結果で除して複素除算処理を行う除算部と、前記複素除算処理後の実部と虚部とを用いて逆正接関数演算を行って位相回転角を計算するとともに前記位相回転角を用いて前記周波数誤差を算出する周波数誤差計算部と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の周波数同期回路において、前記FPGA内に構成される、時間t1における前記デジタル直交復調処理後の実部および虚部を時間t2における前記デジタル直交復調処理後の実部および虚部で除して複素除算処理を行う除算部と(但し、前記デジタル直交復調処理の対象の信号のサンプリング周期をΔtとすると、t2=t1+Δt)、前記複素除算処理後の実部と虚部とを用いて逆正接関数演算を行って位相回転角を計算するとともに前記位相回転角を用いて前記周波数誤差を算出する周波数誤差計算部と、を有する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の周波数同期回路において、前記FPGA内に構成される、前記デジタル直交復調処理後の実部と虚部とを用いて逆正接関数演算を行う逆正接演算部と、前記逆正接関数演算の結果についての-T~0の積分時間Tの積分結果から前記逆正接関数演算の結果についての0~Tの積分時間Tの積分結果を減算して積分差分を計算する積分演算部と、前記積分差分を用いて前記周波数誤差を算出する周波数誤差計算部と、を有する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の周波数同期回路において、前記FPGA内に構成される、前記デジタル直交復調処理後の実部と虚部とを用いて逆正接関数演算を行う逆正接演算部と、時間t2における前記逆正接関数演算の結果から時間t1における前記逆正接関数演算の結果を減算して時間差分を計算する微分演算部と(但し、前記デジタル直交復調処理の対象の信号のサンプリング周期をΔtとすると、t2=t1+Δt)、前記時間差分を用いて前記周波数誤差を算出する周波数誤差計算部と、を有する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5に記載の周波数同期回路において、前記デジタル直交復調処理の対象の信号の前記周波数が音声周波数帯域である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1乃至請求項5に記載の発明によれば、FPGA内に構成される直交復調部におけるデジタル直交復調処理の対象の信号の周波数とNCO部の発振周波数との間の周波数誤差に基づいてFPGAの動作クロックが制御されるようにしているので、PLL制御用の集積回路を使用することなく周波数同期を行うことが可能となる。
【0013】
請求項2や請求項4に記載の発明によれば、周波数誤差の検出に積分を用いるようにしているので、微分を用いる方式と比べて、瞬間的な変動の影響を平均化することができ、周波数誤差を適切に検出することが可能となり、延いては周波数同期を一層高精度に行うことが可能となる。
【0014】
請求項6に記載の発明によれば、音声周波数帯域の信号の通信において上記の作用効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る周波数同期回路の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】この発明の実施の形態2に係る周波数同期回路の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】この発明の実施の形態3に係る周波数同期回路の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】この発明の実施の形態4に係る周波数同期回路の概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。なお、以下では、周波数同期に纏わるこの発明の特徴的な構成について説明し、無線通信を行う際の従来と同様の仕組みについては説明を省略する。
【0017】
また、下記の各数式における各記号/変数の意味はそれぞれ下記のとおりである。
A:入力信号(別言すると、受信信号)の振幅
f:基準周波数〔kHz〕
Δf:周波数誤差〔kHz〕
θ:位相差〔rad〕
t:時間(サンプリング時刻)
j:虚数単位
【0018】
基準周波数f(即ち、入力信号(受信信号)の周波数;言い換えると、送信側の無線通信装置において無線信号の送信のために使用される搬送波周波数)は、特定の周波数帯域に限定されるものではなく、例えば種々の通信規格それぞれに対応する周波数帯域が考慮されるなどしたうえで適当な周波数帯域が適宜設定・選択される。基準周波数fは、例えば音声周波数帯域に設定され、具体的には例えば3kHz程度の周波数帯域に設定されるようにしてもよい(この場合は即ち、基準周波数f=3〔kHz〕である)。なお、基準周波数fは、FPGA100が対応可能な最大サンプリング周波数の4分の1程度を上限として設定・選択されることが好ましい。
【0019】
実施の形態に係る周波数同期回路1は、FPGA100内に構成される、デジタル直交復調処理を行う直交復調部103と、デジタル直交復調処理で使用する発振信号を直交復調部103へと供給するNCO部102と、を有し、デジタル直交復調処理の対象の信号の周波数と、NCO部102の発振周波数との間の周波数誤差Δfを検出し、周波数誤差Δfに基づいてFPGA100の動作クロックが制御される、ようにしている。
【0020】
そのうえで、この発明に係る周波数同期回路1は、下記の実施の形態1乃至4のような構成で実現され得る。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に係る周波数同期回路1の概略構成を示す機能ブロック図である。この周波数同期回路1は、受信側の周波数を入力される信号の周波数と同期させる、言い換えると、受信側の通信周波数(別言すると、復調搬送波周波数)を送信側の通信周波数(別言すると、変調搬送波周波数)と同期させる周波数制御を行う信号処理回路である。周波数同期回路1は、例えば、送信側の無線通信装置との間で無線通信を行って無線信号を受信する受信側の無線通信装置に実装される。送信側の無線通信装置からは、直交変調処理が施されて生成される無線信号が送信される。
【0022】
周波数同期回路1は、FPGA(Field Programmable Gate Array の略)100が用いられて、つまりFPGA100内に構成されて受信側の無線通信装置に実装される。
【0023】
FPGA100には、当該FPGA100が動作するためのクロックを当該FPGA100へと供給するクロック回路として、基準クロック(別言すると、原振クロック)を生成する発振器201を含む発振回路200が接続される。発振器201によって生成される基準クロック(原振クロック)の周波数は、制御電圧Vcを調整することにより可変であるように構成される。
【0024】
発振器201は、特定の種類には限定されないものの、アナログ電圧(即ち、アナログの制御電圧Vc)によって周波数が制御される電圧制御発振器(VCO:Voltage Controled Oscillator の略)によって構成され、例えば電圧制御温度補償型水晶発振器(VCTCXO:voltage controlled temperature compensated crystal oscillator)によって構成されることが好ましい。
【0025】
実施の形態1に係る周波数同期回路1は、FPGA100内に構成される、デジタル直交復調処理後の実部と虚部とのそれぞれについての0~Tの積分時間Tの積分結果をデジタル直交復調処理後の実部と虚部とのそれぞれについてのT~2Tの積分時間Tの積分結果で除して複素除算処理を行う除算部108と、複素除算処理後の実部と虚部とを用いて逆正接関数演算を行って位相回転角Zを計算するとともに位相回転角Zを用いて周波数誤差Δfを算出する周波数誤差計算部110と、を有する、ようにしている。
【0026】
周波数同期回路1が実装される受信側の無線通信装置は、送信側の無線通信装置から送信される無線信号をアンテナ(図示省略)を介して受信する。前記無線信号から、必要に応じて所定の処理(例えば、帯域制限処理、増幅処理、周波数変換処理)が施されて、アナログ受信信号が生成される。このアナログ受信信号の周波数が基準周波数fである。
【0027】
A/D変換器101(ADC:Analog to Digital Converter の略)は、FPGA100の外部に配設され、上記のアナログ受信信号をデジタル受信信号へと変換して出力する。A/D変換器101から出力される信号が、FPGA100内に構成される周波数同期回路1の直交復調部103へと入力される。A/D変換器101から出力される信号d(t)は、下記の数式1のように表される。
【数1】
【0028】
A/D変換器101から出力される信号d(t)は、必要に応じて自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control の略)により、利得が調整されて振幅Aが正規化されるようにしてもよい。振幅Aが正規化された信号d
A(t)は下記の数式2のように表され、以降の説明では下記の数式2のように表される信号d
A(t)が用いられるとする。
【数2】
【0029】
NCO部102は、数値制御発振器(NCO:Numerically Controlled Oscillator の略)として機能し、基準周波数fに合わせた発振周波数を有する発振信号を生成して出力する。
【0030】
ここで、周波数同期回路1へと入力されるアナログ受信信号の周波数である基準周波数fとNCO部102の発振周波数との間に周波数誤差が存在すると送信データを誤って再生してしまう場合があるので、送信データを誤りなく再生するためには基準周波数fと発振周波数とが一致することが望ましい。しかしながら、基準周波数fとNCO部102の発振周波数とは必ずしも一致せず、基準周波数fと発振周波数との間に周波数誤差が存在する場合がある。
【0031】
このため、この発明では、NCO部102の発振周波数を基準周波数fに追従させて基準周波数fと発振周波数との間の周波数誤差を低減させて最小にする(好ましくは、ゼロにする)ように、周波数同期回路1が構成されているFPGA100に接続する発振回路200の発振器201によって生成される基準クロックの周波数を可変制御する。つまり、基準クロックを生成する発振器201の制御電圧Vcを調整することによって発振器201によって生成される基準クロックの周波数を可変制御し、これによりFPGA100の動作クロックの周波数の制御を介してNCO部102の発振周波数を制御して、基準周波数fと発振周波数との間の周波数誤差を低減させ最小にして好ましくはゼロにする。
【0032】
基準周波数fとNCO部102の発振周波数との間の周波数誤差をΔfとすると、NCO部102の発振周波数は「f+Δf」となってNCO部102によって生成される発振信号の周波数は「f+Δf」となり、NCO部102から出力される発振信号s(t)は下記の数式3のように表される。
【数3】
【0033】
NCO部102から出力される発振信号s(t)は、必要に応じて、A/D変換器101におけるサンプリングレートに揃えるように周波数変換される(具体的には、ダウンコンバートされる)ようにしてもよい。
【0034】
直交復調部103は、A/D変換器101から出力されるデジタル受信信号(ここでは、振幅Aが正規化された信号dA(t);上記の数式2参照)の入力を受けるとともに、NCO部102から出力される発振信号s(t)(上記の数式3参照)の供給を受け、前記デジタル受信信号dA(t)に対して前記発振信号s(t)を用いてデジタル直交復調処理を施して、直交復調処理後の受信信号を出力する。
【0035】
直交復調処理後の受信信号は、直交復調における同相成分(In-phase component)のI信号と直交復調における直交成分(Quadrature component)のQ信号とから構成される複素信号である。複素信号で表される複素数を「I+jQ」(但し、jは虚数単位)と表すとき、同相成分は当該複素数の実部Iを表す信号であり、直交成分は当該複素数の虚部Qを表す信号である
【0036】
直交復調部103から出力されるデジタル直交復調処理後の信号y(t)は下記の数式4のように表される。
【数4】
【0037】
第1の実部抽出部104Rは、直交復調部103によるデジタル直交復調処理後の信号y(t)から実部を抽出して出力する。また、第1の虚部抽出部104Iは、直交復調部103によるデジタル直交復調処理後の信号y(t)から虚部を抽出して出力する。なお、デジタル直交復調処理は、数値演算で行われ、実部と虚部とがそれぞれ抽出されることによって実行されるようにしている。
【0038】
実部LPF部105Rおよび虚部LPF部105Iは各々ローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter の略)として機能し、実部LPF部105Rは第1の実部抽出部104Rから出力される直交復調処理後の信号y(t)のうちの実部について、また、虚部LPF部105Iは第1の虚部抽出部104Iから出力される直交復調処理後の信号y(t)のうちの虚部について、それぞれ、直交復調処理によって発生する2倍波を除去し直流成分を抽出して出力する。
【0039】
実部LPF部105
Rや虚部LPF部105
Iによって具体的には上記の数式4の右辺の分子の第2項の成分が除去されて、実部LPF部105
Rおよび虚部LPF部105
Iから出力される信号LPF(y(t))は下記の数式5のように表される。
【数5】
【0040】
実部積分部106Rは実部LPF部105Rから出力される信号について、また、虚部積分部106Iは虚部LPF部105Iから出力される信号について、それぞれ、積分時間T〔秒〕の積分を行って(言い換えると、積分時間T〔秒〕にわたって積算して)T秒ごとに積分処理の結果を出力する。積分時間Tは、特定の時間長さに限定されるものではなく、例えば0.50~0.85〔秒〕程度の範囲のうちのいずれかの時間長さに設定されることが考えられる。
【0041】
実部遅延部107Rは実部積分部106Rから出力される信号を、また、虚部遅延部107Iは虚部積分部106Iから出力される信号を、それぞれ、積分時間T〔秒〕だけ遅延させて出力する。
【0042】
除算部108は、実部積分部106Rおよび虚部積分部106I、ならびに、実部遅延部107Rおよび虚部遅延部107Iの各々から出力される信号の入力を受ける。このとき、実部遅延部107Rおよび虚部遅延部107Iは、実部積分部106Rや虚部積分部106Iから出力される信号を積分時間T〔秒〕だけ遅延させて出力する。これにより、除算部108は、実部積分部106Rおよび虚部積分部106IからT~2Tの積分時間Tの積分結果の入力を受けるとともに、実部遅延部107Rおよび虚部遅延部107Iから0~Tの積分時間Tの積分結果の入力を受ける。
【0043】
除算部108は、実部遅延部107Rおよび虚部遅延部107Iから出力される0~Tの積分時間Tの積分結果を実部積分部106Rおよび虚部積分部106Iから出力されるT~2Tの積分時間Tの積分結果で除して複素除算処理を施して、複素除算処理後の信号Ydを出力する。
【0044】
第2の実部抽出部109Rは、除算部108による複素除算処理後の信号Ydから実部Re(Yd)を抽出して出力する。また、第2の虚部抽出部109Iは、除算部108による複素除算処理後の信号Ydから虚部Im(Yd)を抽出して出力する。
【0045】
周波数誤差計算部110は、第2の実部抽出部109
Rから出力される複素除算処理後の信号Y
dのうちの実部Re(Y
d)と、第2の虚部抽出部109
Iから出力される複素除算処理後の信号Y
dのうちの虚部Im(Y
d)とを用いて、下記の数式6に示すように逆正接関数(即ち、tan
-1)演算を行うことによって位相回転角Zの値を計算する。
【数6】
【0046】
ここで、実部LPF部105
Rや虚部LPF部105
Iから出力される信号LPF(y(t))(上記の数式5参照)の不定積分は下記の数式7のようになる。
【数7】
【0047】
上記の数式7をふまえ、LPF(y(t))の0~Tでの積分時間Tの定積分は下記の数式8のようになる。すなわち、実部遅延部107
Rおよび虚部遅延部107
Iから出力される信号は下記の数式8のように表される。
【数8】
【0048】
また、LPF(y(t))のT~2Tでの積分時間Tの定積分は下記の数式9のようになる。すなわち、実部積分部106
Rおよび虚部積分部106
Iから出力される信号は下記の数式9のように表される。
【数9】
【0049】
上記の数式8および数式9をふまえ、除算部108から出力される複素除算処理後の信号Y
dは下記の数式10のように表される。
【数10】
【0050】
上記の数式10をふまえて上記の数式6は下記の数式11Aのようになるので、周波数誤差Δfは下記の数式11Bのようになる。
【数11】
【0051】
周波数誤差計算部110は、計算された位相回転角Zの値(上記の数式6参照)を用いて上記の数式11Bに従って周波数誤差Δfを算出して出力する。
【0052】
制御電圧更新部111は、周波数誤差計算部110から出力される周波数誤差Δfを低減させ最小にして好ましくはゼロにするように、NCO部102を含むFPGA100の動作クロックの周波数の制御を介してNCO部102の発振周波数を制御するための、FPGA100に接続する発振回路200の発振器201によって生成される基準クロックの周波数を可変制御する制御電圧Vcを計算する。
【0053】
制御電圧更新部111は、具体的には、周波数誤差計算部110から出力される周波数誤差Δfの入力を受け、前記周波数誤差Δfと当該時点における(言い換えると、前回処理における)NCO部102の発振周波数や発振器201の制御電圧Vcとに基づいて、前記周波数誤差Δfを最小にするための、発振回路200の発振器201の制御電圧Vcを計算して出力する。
【0054】
なお、例えば、発振器201の制御電圧Vcの増減の程度と周波数誤差Δfの変動の程度との間の関係などのような、発振器201の制御電圧Vcの増減に対するNCO部102の発振周波数の変動や周波数誤差Δfの変動の感度(例えば、関数)が用いられて制御電圧Vcが計算されたり特定されたりするようにしてもよい。
【0055】
D/A変換器112(DAC:Digital to Analog Converter の略)は、FPGA100の外部に配設され、FPGA100内に構成される周波数同期回路1の制御電圧更新部111から出力される制御電圧Vcの入力を受け、デジタル信号である前記制御電圧Vcをアナログ信号へと変換して出力する。
【0056】
発振回路200の発振器201は、D/A変換器112から出力される制御電圧Vc(尚、アナログ信号である)の入力を受け、前記制御電圧Vcに基づく周波数の基準クロックを生成してFPGA100へと供給する。
【0057】
発振器201から供給される基準クロックによってFPGA100の動作クロックの周波数が制御され、これにより、FPGA100内に構成されるNCO部102の発振周波数が制御されて、基準周波数fとNCO部102の発振周波数との間の周波数誤差が低減して最小化され、好ましくはゼロになる。
【0058】
実施の形態1に係る周波数同期回路1によれば、FPGA100内に構成される直交復調部103におけるデジタル直交復調処理の対象の信号の周波数(即ち、基準周波数f)とNCO部102の発振周波数との間の周波数誤差Δfに基づいてFPGA100の動作クロックが制御されるようにしているので、PLL制御用の集積回路を使用することなく周波数同期を行うことが可能となる。
【0059】
実施の形態1に係る周波数同期回路1によれば、また、周波数誤差計算部110によって周波数誤差Δfが随時算出されることにより、周波数誤差Δfが時々刻々どの程度発生しているのかを装置単体で調査することが可能となる。
【0060】
実施の形態1に係る周波数同期回路1によれば、さらに、周波数誤差Δfの検出に積分を用いるようにしているので、微分を用いる方式と比べて、瞬間的な変動の影響を平均化することができ、周波数誤差Δfを適切に検出することが可能となり、延いては周波数同期を一層高精度に行うことが可能となる。
【0061】
(実施の形態2)
図2は、この発明の実施の形態2に係る周波数同期回路1の概略構成を示す機能ブロック図である。この実施の形態2におけるA/D変換器101,NCO部102,直交復調部103,第1の実部抽出部104
Rおよび第1の虚部抽出部104
I,ならびに実部LPF部105
Rおよび虚部LPF部105
Iは、上述の実施の形態1と同等の構成・処理であるので、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0062】
実施の形態2に係る周波数同期回路1は、FPGA100内に構成される、時間t1におけるデジタル直交復調処理後の実部および虚部を時間t2におけるデジタル直交復調処理後の実部および虚部で除して複素除算処理を行う除算部121と(但し、デジタル直交復調処理の対象の信号のサンプリング周期をΔtとすると、t2=t1+Δt)、複素除算処理後の実部と虚部とを用いて逆正接関数演算を行って位相回転角Zを計算するとともに位相回転角Zを用いて周波数誤差Δfを算出する周波数誤差計算部123と、を有する、ようにしている。
【0063】
除算部121は、実部LPF部105Rおよび虚部LPF部105Iの各々から出力される信号LPF(y(t))(上記の数式5参照)の入力を受け、前記信号LPF(y(t))について、時間(サンプリング時刻)t=「t1」におけるLPF(y(t1))を、時間(サンプリング時刻)t=「t2」におけるLPF(y(t2))で除して複素除算処理を施して、複素除算処理後の信号Ydを出力する。なお、A/D変換器101におけるサンプリング周期をΔt〔秒〕とすると「t2=t1+Δt」であり、A/D変換器101におけるサンプリング周波数をfs〔Hz〕とすると「Δt=1/fs」である。
【0064】
第2の実部抽出部122Rは、除算部121による複素除算処理後の信号Ydから実部Re(Yd)を抽出して出力する。また、第2の虚部抽出部122Iは、除算部121による複素除算処理後の信号Ydから虚部Im(Yd)を抽出して出力する。
【0065】
周波数誤差計算部123は、第2の実部抽出部122
Rから出力される複素除算処理後の信号Y
dのうちの実部Re(Y
d)と、第2の虚部抽出部122
Iから出力される複素除算処理後の信号Y
dのうちの虚部Im(Y
d)とを用いて、下記の数式12に示すように逆正接関数(即ち、tan
-1)演算を行うことによって位相回転角Zの値を計算する。
【数12】
【0066】
ここで、実部LPF部105
Rや虚部LPF部105
Iから出力される信号LPF(y(t))(上記の数式5参照)について、時間(サンプリング時刻)t=「t
1」におけるLPF(y(t
1))は下記の数式13Aのように表され、時間(サンプリング時刻)t=「t
2」におけるLPF(y(t
2))は下記の数式13Bのように表される。
【数13】
【0067】
上記の数式13をふまえ、除算部121から出力される複素除算処理後の信号Y
dは下記の数式14のように表される。
【数14】
【0068】
上記の数式14をふまえて上記の数式12は下記の数式15Aのようになるので、周波数誤差Δfは下記の数式15Bのようになる。
【数15】
【0069】
なお、数式15における「t2-t1」は、複素除算処理後の信号Yd(上記の数式14参照)を計算する際に用いた時間(サンプリング時刻)tの差であり、具体的にはA/D変換器101におけるサンプリング周期〔秒〕である。すなわち、A/D変換器101におけるサンプリング周期をΔt〔秒〕とすると「t2-t1=Δt」である。
【0070】
周波数誤差計算部123は、計算された位相回転角Zの値(上記の数式12参照)を用いて上記の数式15Bに従って周波数誤差Δfを算出して出力する。
【0071】
制御電圧更新部111以降の構成・処理は、上述の実施の形態1と同等の構成・処理であるので、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0072】
実施の形態2に係る周波数同期回路1によれば、FPGA100内に構成される直交復調部103におけるデジタル直交復調処理の対象の信号の周波数(即ち、基準周波数f)とNCO部102の発振周波数との間の周波数誤差Δfに基づいてFPGA100の動作クロックが制御されるようにしているので、PLL制御用の集積回路を使用することなく周波数同期を行うことが可能となる。
【0073】
実施の形態2に係る周波数同期回路1によれば、また、周波数誤差計算部110によって周波数誤差Δfが随時算出されることにより、周波数誤差Δfが時々刻々どの程度発生しているのかを装置単体で調査することが可能となる。
【0074】
(実施の形態3)
図3は、この発明の実施の形態3に係る周波数同期回路1の概略構成を示す機能ブロック図である。この実施の形態3におけるA/D変換器101,NCO部102,直交復調部103,第1の実部抽出部104
Rおよび第1の虚部抽出部104
I,ならびに実部LPF部105
Rおよび虚部LPF部105
Iは、上述の実施の形態1と同等の構成・処理であるので、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0075】
実施の形態3に係る周波数同期回路1は、FPGA100内に構成される、デジタル直交復調処理後の実部と虚部とを用いて逆正接関数演算を行う逆正接演算部131と、逆正接関数演算の結果についての-T~0の積分時間Tの積分結果から逆正接関数演算の結果についての0~Tの積分時間Tの積分結果を減算して積分差分Δ∫yatan(t)を計算する積分演算部132と、積分差分Δ∫yatan(t)を用いて周波数誤差Δfを算出する周波数誤差計算部133と、を有する、ようにしている。
【0076】
逆正接演算部131は、実部LPF部105
Rから出力される信号LPF(y(t))(上記の数式5参照)のうちの実部Re(LPF(y(t)))と、虚部LPF部105
Iから出力される信号LPF(y(t))(上記の数式5参照)のうちの虚部Im(LPF(y(t)))とを用いて、下記の数式16に示すように逆正接関数(即ち、tan
-1)演算を行うことによってy
atan(t)の値を計算して出力する。
【数16】
【0077】
積分演算部132は、逆正接演算部131から出力される逆正接関数演算結果のyatan(t)の値の入力を受け、前記yatan(t)の値について、積分時間T〔秒〕の積分を行って(言い換えると、積分時間T〔秒〕にわたって積算して)T秒ごとに積分処理の結果を保持する。積分時間Tは、特定の時間長さに限定されるものではなく、例えば0.50~0.85〔秒〕程度の範囲のうちのいずれかの時間長さに設定されることが考えられる。
【0078】
そして、積分演算部132は、逆正接関数演算結果のyatan(t)の値の-T~0の積分時間Tの積分結果(積算結果)から逆正接関数演算結果のyatan(t)の値の0~Tの積分時間Tの積分結果(積算結果)を減算して、減算結果を積分差分Δ∫yatan(t)として出力する。すなわち、積分演算部132は、積分時間T〔秒〕にわたるyatan(t)の値の積分結果(積算結果)を、連続する2つの積分期間で減算して、積分差分Δ∫yatan(t)として出力する。
【0079】
ここで、上記の数式5もふまえ、上記の数式16における実部Re(LPF(y(t)))は下記の数式17Aのように表され、虚部Im(LPF(y(t)))は下記の数式17Bのように表される。
【数17】
【0080】
上記の数式17をふまえ、上記の数式16は下記の数式18のようになる。
【数18】
【0081】
上記の数式18の不定積分は下記の数式19ようになる。
【数19】
【0082】
上記の数式19をふまえ、y
atan(t)の-T~0での積分時間Tの定積分からy
atan(t)の0~Tでの積分時間Tの定積分を減算した結果は下記の数式20ようになる。
【数20】
【0083】
上記の数式20をふまえると、積分演算部132から出力される積分差分Δ∫yatan(t)は上記の数式20のように表されるので、「Δ∫yatan(t)=2πΔfT2」が成り立つ。したがって、周波数誤差Δfは「Δf=Δ∫yatan(t)/2πT2」となる。
【0084】
上記を踏まえ、周波数誤差計算部133は、積分演算部132から出力される積分差分Δ∫yatan(t)の値の入力を受け、前記積分差分Δ∫yatan(t)の値を用いて「Δf=Δ∫yatan(t)/2πT2」に従って周波数誤差Δfを算出して出力する。
【0085】
制御電圧更新部111以降の構成・処理は、上述の実施の形態1と同等の構成・処理であるので、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0086】
実施の形態3に係る周波数同期回路1によれば、FPGA100内に構成される直交復調部103におけるデジタル直交復調処理の対象の信号の周波数(即ち、基準周波数f)とNCO部102の発振周波数との間の周波数誤差Δfに基づいてFPGA100の動作クロックが制御されるようにしているので、PLL制御用の集積回路を使用することなく周波数同期を行うことが可能となる。
【0087】
実施の形態3に係る周波数同期回路1によれば、また、周波数誤差計算部110によって周波数誤差Δfが随時算出されることにより、周波数誤差Δfが時々刻々どの程度発生しているのかを装置単体で調査することが可能となる。
【0088】
実施の形態3に係る周波数同期回路1によれば、さらに、周波数誤差Δfの検出に積分を用いるようにしているので、微分を用いる方式と比べて、瞬間的な変動の影響を平均化することができ、周波数誤差Δfを適切に検出することが可能となり、延いては周波数同期を一層高精度に行うことが可能となる。
【0089】
(実施の形態4)
図4は、この発明の実施の形態4に係る周波数同期回路1の概略構成を示す機能ブロック図である。この実施の形態4におけるA/D変換器101,NCO部102,直交復調部103,第1の実部抽出部104
Rおよび第1の虚部抽出部104
I,ならびに実部LPF部105
Rおよび虚部LPF部105
Iは、上述の実施の形態1と同等の構成・処理であるので、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0090】
実施の形態4に係る周波数同期回路1は、FPGA100内に構成される、デジタル直交復調処理後の実部と虚部とを用いて逆正接関数演算を行う逆正接演算部141と、時間t2における逆正接関数演算の結果から時間t1における逆正接関数演算の結果を減算して時間差分Δyatan(t)を計算する微分演算部142と(但し、デジタル直交復調処理の対象の信号のサンプリング周期をΔtとすると、t2=t1+Δt)、時間差分Δyatan(t)を用いて周波数誤差Δfを算出する周波数誤差計算部143と、を有する、ようにしている。
【0091】
逆正接演算部141は、実部LPF部105
Rから出力される信号LPF(y(t))(上記の数式5参照)のうちの実部Re(LPF(y(t)))と、虚部LPF部105
Iから出力される信号LPF(y(t))(上記の数式5参照)のうちの虚部Im(LPF(y(t)))とを用いて、下記の数式21に示すように逆正接関数(即ち、tan
-1)演算を行うことによってy
atan(t)の値を計算して出力する。
【数21】
【0092】
微分演算部142は、逆正接演算部141から出力される逆正接関数演算結果のyatan(t)の値の入力を受け、前記yatan(t)の値について、時間(サンプリング時刻)t=「t1」におけるyatan(t1)の値と時間(サンプリング時刻)t=「t2」におけるyatan(t2)の値とを保持する。なお、A/D変換器101におけるサンプリング周期をΔt〔秒〕とすると「t2=t1+Δt」であり、A/D変換器101におけるサンプリング周波数をfs〔Hz〕とすると「Δt=1/fs」である。
【0093】
そして、微分演算部142は、時間(サンプリング時刻)t=「t2」における逆正接関数演算結果のyatan(t2)の値から時間(サンプリング時刻)t=「t1」における逆正接関数演算結果のyatan(t1)の値を減算して、減算結果を時間差分Δyatan(t2)として出力する。すなわち、微分演算部142は、逆正接演算部141から出力される逆正接関数演算結果のyatan(t)の値を、連続する2つのサンプリング時刻で減算して、時間差分Δyatan(t)として出力する。
【0094】
ここで、上記の数式5もふまえ、上記の数式21における実部Re(LPF(y(t)))は下記の数式22Aのように表され、虚部Im(LPF(y(t)))は下記の数式22Bのように表される。
【数22】
【0095】
上記の数式22をふまえ、上記の数式21は下記の数式23のようになる。
【数23】
【0096】
上記の数式23を時間tで微分すると下記の数式24のようになる。
【数24】
【0097】
上記の数式24をふまえると、微分演算部142から出力される時間差分Δyatan(t)は上記の数式24のように表されるので、「Δyatan(t)=-2πΔf」が成り立つ。したがって、周波数誤差Δfは「Δf=-Δyatan(t)/2π」となる。
【0098】
上記を踏まえ、周波数誤差計算部143は、微分演算部142から出力される時間差分Δyatan(t)の値の入力を受け、前記時間差分Δyatan(t)の値を用いて「Δf=-Δyatan(t)/2π」に従って周波数誤差Δfを算出して出力する。
【0099】
制御電圧更新部111以降の構成・処理は、上述の実施の形態1と同等の構成・処理であるので、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0100】
実施の形態4に係る周波数同期回路1によれば、FPGA100内に構成される直交復調部103におけるデジタル直交復調処理の対象の信号の周波数(即ち、基準周波数f)とNCO部102の発振周波数との間の周波数誤差Δfに基づいてFPGA100の動作クロックが制御されるようにしているので、PLL制御用の集積回路を使用することなく周波数同期を行うことが可能となる。
【0101】
実施の形態4に係る周波数同期回路1によれば、また、周波数誤差計算部110によって周波数誤差Δfが随時算出されることにより、周波数誤差Δfが時々刻々どの程度発生しているのかを装置単体で調査することが可能となる。
【0102】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0103】
具体的には、上記の実施の形態では
図1乃至
図4に示す具体的な回路構成によってこの発明が実現されるようにしているが、この発明を実現するための具体的な回路構成は
図1乃至
図4に示す態様に限定されるものではなく、他の具体的な回路構成によってこの発明が実現されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 周波数同期回路
100 FPGA
101 A/D変換器
102 NCO部
103 直交復調部
104R 第1の実部抽出部
104I 第1の虚部抽出部
105R 実部LPF部
105I 虚部LPF部
106R 実部積分部
106I 虚部積分部
107R 実部遅延部
107I 虚部遅延部
108 除算部
109R 第2の実部抽出部
109I 第2の虚部抽出部
110 周波数誤差計算部
111 制御電圧更新部
112 D/A変換器
121 除算部(実施の形態2)
122R 第2の実部抽出部(実施の形態2)
122I 第2の虚部抽出部(実施の形態2)
123 周波数誤差計算部(実施の形態2)
131 逆正接演算部(実施の形態3)
132 積分演算部
133 周波数誤差計算部(実施の形態3)
141 逆正接演算部(実施の形態4)
142 微分演算部
143 周波数誤差計算部(実施の形態4)
200 発振回路
201 発振器