(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099549
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】記録装置及び記録システムの制御方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213368
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 真裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA09
2C056EB03
2C056EB13
2C056EB30
2C056EC03
2C056EC14
2C056EC36
2C056FD20
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】コスト上昇を抑えつつ、光照射に起因する被記録媒体の損傷を低減することができる記録装置を提供する。
【解決手段】記録装置10は、光硬化性の液体を被記録媒体Aに吐出するヘッド20と、前記被記録媒体Aに光を照射する光源31と、前記光源31の温度を検知する温度センサ33と、コントローラ60と、を備え、前記コントローラ60は、前記被記録媒体Aの媒体情報を取得する情報取得処理と、前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源31の上昇温度を予測する温度予測処理と、前記温度センサ33により検知された前記光源31の検知温度が前記光の照射により上昇したときの上昇温度である検知上昇温度が、前記温度予測処理にて予測された前記光源31の予測上昇温度以下又は前記予測上昇温度未満である場合には、前記被記録媒体Aを冷却する媒体クーリング処理と、を実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性の液体を被記録媒体に吐出するヘッドと、
前記被記録媒体に光を照射する光源と、
前記光源の温度を検知する温度センサと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記被記録媒体の媒体情報を取得する情報取得処理と、
前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源の上昇温度を予測する温度予測処理と、
前記温度センサにより検知された前記光源の検知温度が前記光の照射により上昇したときの上昇温度である検知上昇温度が、前記温度予測処理にて予測された前記光源の上昇温度である予測上昇温度以下又は前記予測上昇温度未満である場合には、前記被記録媒体を冷却する媒体クーリング処理と、を実行する、記録装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記媒体クーリング処理において、
前記検知上昇温度が前記予測上昇温度よりも高い場合に前記被記録媒体を冷却せずに、前記検知上昇温度が前記予測上昇温度以下である場合に前記被記録媒体を冷却する、又は、
前記検知上昇温度が前記予測上昇温度以上である場合に前記被記録媒体を冷却せずに、前記検知上昇温度が前記予測上昇温度未満である場合に前記被記録媒体を冷却する、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
光硬化性の液体を被記録媒体に吐出するヘッドと、
前記被記録媒体に光を照射する光源と、
前記光源の温度を検知する温度センサと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記被記録媒体の媒体情報を取得する情報取得処理と、
前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源の上昇温度を予測する温度予測処理と、
温度センサにより検知された前記光源の検知温度の変化率が、前記温度予測処理にて予測された前記光源の予測上昇温度の変化率以下又は前記予測上昇温度の変化率よりも小さい場合には、前記被記録媒体を冷却する媒体クーリング処理と、を実行する、記録装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記媒体クーリング処理において、
前記検知温度の変化率が前記予測上昇温度の変化率よりも大きい場合に前記被記録媒体を冷却せずに、前記検知温度の変化率が前記予測上昇温度の変化率以下である場合に前記被記録媒体を冷却する、又は、
前記検知温度の変化率が前記予測上昇温度の変化率以上である場合に前記被記録媒体を冷却せずに、前記検知温度の変化率が前記予測上昇温度の変化率未満場合に前記被記録媒体を冷却する、請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記媒体情報を入力する入力部を備えている、請求項1~4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記媒体情報は、前記被記録媒体の材質及び色に関する情報を有している、請求項1~5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記媒体クーリング処理において、前記光源から前記光を照射しないことにより、前記被記録媒体を冷却する、請求項1~6のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記被記録媒体に送風するファンを備え、
前記コントローラは、前記媒体クーリング処理において、前記ファンによる送風によって前記被記録媒体を冷却する、請求項1~7のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記光源が搭載された基板を備え、
前記温度センサは、前記基板に設けられたサーミスタである、請求項1~8のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記温度センサにより検知された前記光源の検知温度が、所定の温度以上又は所定の温度より大きい場合、前記基板を冷却する基板クーリング処理を実行する、請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
光源から被記録媒体に光を照射する光照射装置を少なくとも含む記録システムの制御方法であって、
前記光源の温度を検知する温度検知処理と、
前記被記録媒体の媒体情報を取得する情報取得処理と、
前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源の上昇温度を予測する温度予測処理と、
前記温度検知処理により検知された前記光源の検知温度が前記光の照射により上昇したときの上昇温度である検知上昇温度が、前記温度予測処理にて予測された前記光源の予測上昇温度以下又は前記予測上昇温度未満である場合には、前記被記録媒体を冷却する媒体クーリング処理と、を実行する、記録システムの制御方法。
【請求項12】
前記媒体クーリング処理において、
前記検知上昇温度が前記予測上昇温度よりも高い場合に前記被記録媒体を冷却せずに、前記検知上昇温度が前記予測上昇温度以下である場合に前記被記録媒体を冷却する、又は、
前記検知上昇温度が前記予測上昇温度以上である場合に前記被記録媒体を冷却せずに、前記検知上昇温度が前記予測上昇温度未満である場合に前記被記録媒体を冷却する、請求項11に記載の記録システムの制御方法。
【請求項13】
光源から被記録媒体に光を照射する光照射装置を少なくとも含む記録システムの制御方法であって、
前記光源の温度を検知する温度検知処理と、
前記被記録媒体の媒体情報を取得する情報取得処理と、
前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源の上昇温度を予測する温度予測処理と、
温度センサにより検知された前記光源の検知温度の変化率が、前記温度予測処理にて予測された前記光源の予測上昇温度の変化率以下又は前記予測上昇温度の変化率よりも小さい場合には、前記被記録媒体を冷却する媒体クーリング処理と、を実行する、記録システムの制御方法。
【請求項14】
前記媒体クーリング処理において、
前記検知温度の変化率が前記予測上昇温度の変化率よりも大きい場合に前記被記録媒体を冷却せずに、前記検知温度の変化率が前記予測上昇温度の変化率以下である場合に前記被記録媒体を冷却する、又は、
前記検知温度の変化率が前記予測上昇温度の変化率以上である場合に前記被記録媒体を冷却せずに、前記検知温度の変化率が前記予測上昇温度の変化率よりも小さい場合に前記被記録媒体を冷却する、請求項13に記載の記録システムの制御方法。
【請求項15】
前記媒体クーリング処理において、前記光源から前記光を照射しないことにより、前記被記録媒体を冷却する、請求項11~14のいずれか一項に記載の記録システムの制御方法。
【請求項16】
前記媒体クーリング処理において、ファンによる送風によって前記被記録媒体を冷却する、請求項11~15のいずれか一項に記載の記録システムの制御方法。
【請求項17】
光硬化性の液体を被記録媒体に吐出するヘッドと、
前記被記録媒体に光を照射する光源と、
前記光源の温度を検知する温度センサと、を備えた記録装置に、
前記被記録媒体の媒体情報を取得する情報取得処理と、
前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源の上昇温度を予測する温度予測処理と、
前記温度センサにより検知された前記光源の検知温度が前記光の照射により上昇したときの上昇温度である検知上昇温度が、前記温度予測処理にて予測された前記光源の予測上昇温度以下又は前記予測上昇温度未満である場合には、前記被記録媒体を冷却する媒体クーリング処理と、を実行させる、プログラム。
【請求項18】
前記記録装置に、前記媒体クーリング処理において、
前記検知上昇温度が前記予測上昇温度よりも高い場合に前記被記録媒体を冷却させずに、前記検知上昇温度が前記予測上昇温度以下である場合に前記被記録媒体を冷却させる、又は、
前記検知上昇温度が前記予測上昇温度以上である場合に前記被記録媒体を冷却させずに、前記検知上昇温度が前記予測上昇温度未満である場合に前記被記録媒体を冷却させる、請求項17に記載のプログラム。
【請求項19】
光硬化性の液体を被記録媒体に吐出するヘッドと、
前記被記録媒体に光を照射する光源と、
前記光源の温度を検知する温度センサと、を備えた記録装置に、
前記被記録媒体の媒体情報を取得する情報取得処理と、
前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源の上昇温度を予測する温度予測処理と、
前記温度センサにより検知された前記光源の検知温度の変化率が、前記温度予測処理にて予測された前記光源の予測上昇温度の変化率以下又は前記予測上昇温度の変化率よりも小さい場合には、前記被記録媒体を冷却する媒体クーリング処理と、を実行させる、プログラム。
【請求項20】
前記記録装置に、前記媒体クーリング処理において、
前記検知温度の変化率が前記予測上昇温度の変化率よりも大きい場合に前記被記録媒体を冷却させずに、前記検知温度の変化率が前記予測上昇温度の変化率以下である場合に前記被記録媒体を冷却させる、又は、
前記検知温度の変化率が前記予測上昇温度の変化率以上である場合に前記被記録媒体を冷却させずに、前記検知温度の変化率が前記予測上昇温度の変化率よりも小さい場合に前記被記録媒体を冷却させる、請求項19に記載のプログラム。
【請求項21】
前記記録装置に、前記媒体クーリング処理において、前記光源から前記光を照射させないことにより、前記被記録媒体を冷却させる、請求項17~20のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項22】
前記被記録媒体に送風するファンを備えた記録装置に、前記媒体クーリング処理において、前記ファンによる送風によって前記被記録媒体を冷却させる、請求項17~21のいずれか一項に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及び記録システムの制御方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の記録装置として、特許文献1の記録装置が知られている。この記録装置では、記録ヘッドにより記録用紙にインクを吐出し、紫外線光源部により記録用紙に紫外線を照射して、記録用紙上のインクを硬化させている。また、紫外線光源部には温度検出手段が装着されており、温度検出手段による検出温度が所定の上限温度を超えないように、ファンにより紫外線光源部を冷却している。これにより、紫外線照射時に発する熱によって紫外線光源部の寿命が短くなるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の記録装置では、紫外線を照射する紫外線光源部を冷却しているが、紫外線光源部から照射された紫外線によって記録用紙が損傷することについては検討されていない。例えば、記録用紙にその表面状態が異なる部分を有している場合、記録用紙の色及び材質等の表面状態に応じて光による記録用紙の温度上昇が異なるため、温度上昇が高い部分では損傷するおそれがある。これに対し、仮に記録用紙の温度を測定するセンサを設けると、部品数が増え、コスト上昇に繋がる。
【0005】
本発明はこのような事態に鑑み、コスト上昇を抑えつつ、光照射に起因する被記録媒体の損傷を低減することができる記録装置及びその制御方法並びにプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る記録装置は、光硬化性の液体を被記録媒体に吐出するヘッドと、前記被記録媒体に光を照射する光源と、前記光源の温度を検知する温度センサと、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記被記録媒体の媒体情報を取得する情報取得処理と、前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源の上昇温度を予測する温度予測処理と、前記温度センサにより検知された前記光源の検知温度が前記光の照射により上昇したときの上昇温度である検知上昇温度が、前記温度予測処理にて予測された前記光源の上昇温度である予測上昇温度以下又は前記予測上昇温度未満である場合には、前記被記録媒体を冷却する媒体クーリング処理と、を実行する。
【0007】
本発明のある態様に係る記録装置は、光硬化性の液体を被記録媒体に吐出するヘッドと、前記被記録媒体に光を照射する光源と、前記光源の温度を検知する温度センサと、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記被記録媒体の媒体情報を取得する情報取得処理と、前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源の上昇温度を予測する温度予測処理と、温度センサにより検知された前記光源の検知温度の変化率が、前記温度予測処理にて予測された前記光源の予測上昇温度の変化率以下又は前記予測上昇温度の変化率よりも小さい場合には、前記被記録媒体を冷却する媒体クーリング処理と、を実行する。
【0008】
本発明のある態様に係る記録システムの制御方法は、光源から被記録媒体に光を照射する光照射装置を少なくとも含む記録システムの制御方法であって、前記光源の温度を検知する温度検知処理と、前記被記録媒体の媒体情報を取得する情報取得処理と、前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源の上昇温度を予測する温度予測処理と、前記温度検知処理により検知された前記光源の検知温度が前記光の照射により上昇したときの上昇温度である検知上昇温度が、前記温度予測処理にて予測された前記光源の予測上昇温度以下又は前記予測上昇温度未満である場合には、前記被記録媒体を冷却する媒体クーリング処理と、を実行する。
【0009】
本発明のある態様に係る記録システムの制御方法は、光源から被記録媒体に光を照射する光照射装置を少なくとも含む記録システムの制御方法であって、前記光源の温度を検知する温度検知処理と、前記被記録媒体の媒体情報を取得する情報取得処理と、前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源の上昇温度を予測する温度予測処理と、温度センサにより検知された前記光源の検知温度の変化率が、前記温度予測処理にて予測された前記光源の予測上昇温度の変化率以下又は前記予測上昇温度の変化率よりも小さい場合には、前記被記録媒体を冷却する媒体クーリング処理と、を実行する。
【0010】
本発明のある態様に係るプログラムは、光硬化性の液体を被記録媒体に吐出するヘッドと、前記被記録媒体に光を照射する光源と、前記光源の温度を検知する温度センサと、を備えた記録装置に、前記被記録媒体の媒体情報を取得する情報取得処理と、前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源の上昇温度を予測する温度予測処理と、前記温度センサにより検知された前記光源の検知温度が前記光の照射により上昇したときの上昇温度である検知上昇温度が、前記温度予測処理にて予測された前記光源の予測上昇温度以下又は前記予測上昇温度未満である場合には、前記被記録媒体を冷却する媒体クーリング処理と、を実行させる。
【0011】
本発明のある態様に係るプログラムは、光硬化性の液体を被記録媒体に吐出するヘッドと、前記被記録媒体に光を照射する光源と、前記光源の温度を検知する温度センサと、を備えた記録装置に、前記被記録媒体の媒体情報を取得する情報取得処理と、前記情報取得処理にて取得された前記媒体情報に基づいて前記光の照射による前記光源の上昇温度を予測する温度予測処理と、前記温度センサにより検知された前記光源の検知温度の変化率が、前記温度予測処理にて予測された前記光源の予測上昇温度の変化率以下又は前記予測上昇温度の変化率よりも小さい場合には、前記被記録媒体を冷却する媒体クーリング処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、コスト上昇を抑えつつ、光照射に起因する被記録媒体の損傷を低減することができる記録装置及びその制御方法並びにプログラムを提供することが可能であるという効果を奏する。
【0013】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る記録装置の斜視図である。
【
図2】
図1の記録装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図1の記録装置を前後方向に直交する断面で切断した断面図である。
【
図4】
図1のヘッドユニットを下方から視た概略図である。
【
図5】
図1の記録装置を左右方向に直交する断面で切断した断面図である。
【
図6】
図1の光源の予測上昇温度の経時変化を示すグラフである。
【
図7】
図1の記録システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態2に係る記録システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の変形例1に係る記録システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
<液体吐出装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る記録装置10は、
図1に示すように、例えば、記録システム11に備えられ、ヘッド20から被記録媒体Aに液体を吐出し、光照射装置30から光を被記録媒体Aに照射して、画像を印刷するインクジェットプリンタである。被記録媒体Aとしては、布帛及び紙等のシート、並びに、ボール及びマグカップなどの立体物が挙げられる。液体は、光硬化性の液体であって、例えば、紫外線又は赤外線等の光によって硬化するインクである。
【0016】
記録装置10は、筐体12、ヘッドユニット13、第1ファン16(
図5)、走査装置40、搬送装置50及びコントローラ60(
図2)を備えている。なお、コントローラ60の詳細については後述する。また、ヘッド20及び光照射装置30が並ぶ方向を左右方向と称する。左右方向に交差(例えば、直交)し且つ互いに交差(例えば、直交)する方向を前後方向及び上下方向と称する。但し、記録装置10の配置はこれに限定されない。
【0017】
筐体12は、ヘッドユニット13、第1ファン16、走査装置40、搬送装置50及びコントローラ60を収容している。例えば、筐体12は、上部が開口する本体14、及び、本体14の上部開口を開閉可能に覆う蓋を有している。本体14は、その上部に設けられた上部開口、その前部に設けられた前部開口14a、その後部に設けられた後部開口14bを有している。前方から後方を見ると、前部開口14aと後部開口14bとが互いに重なるように配置されている。本体14の内部空間は、前部開口14a及び後部開口14bを介して外部に連通している。
【0018】
走査装置40は、一対の走査レール41、キャリッジ42、駆動ベルト43、走査モータ44を有し、ヘッドユニット13を左右方向に移動させる。一対の走査レール41は、左右方向に延びる長尺部材であって、前後方向において互いの間にヘッドユニット13を挟むように互いに平行に配置されている。キャリッジ42は、ヘッドユニット13を搭載し、走査レール41に沿って左右方向に移動可能に支持されている。駆動ベルト43は、無端ベルトであって、左右方向に走査レール41に沿って延び、キャリッジ42に接続され、プーリを介して走査モータ44に連結されている。走査モータ44が駆動ベルト43を駆動することにより、走査レール41に沿ってキャリッジ42が左右方向に往復移動する。
【0019】
搬送装置50は、ステージ51、搬送レール52、ステージ支持台53及び搬送モータ54(
図2)を有している。ステージ51は、その上面に被記録媒体Aが載置され、上下方向において被記録媒体Aとヘッド20との間隔を規定する。搬送レール52は、前後方向に延び、筐体12を貫通して、前部開口14aから前方に突出し、後部開口14bから後方に突出している。ステージ支持台53は、例えば、ステージ51を取り外し可能に支持し、搬送レール52に沿って前後方向に移動可能に支持され、搬送モータ54に連結されている。搬送モータ54がステージ支持台53を駆動することにより、ステージ51を前後方向に移動する。
【0020】
図5に示すように、第1ファン16は、ステージ51上に配置され、第1回転軸16b、及び、第1回転軸16bに接続された複数の第1羽16cを有している。第1ファン16は、空気をステージ51上の被記録媒体Aに吹き付けるように第1回転軸16bが第1ファンモータ16a(
図2)により回転する。
【0021】
<ヘッドユニットの構成>
ヘッド20及び光照射装置30は、
図3及び
図4に示すように、ヘッド20の下面及び光照射装置30の下面がステージ51の上面に対向するようにヘッドユニット13に配置されている。ヘッド20は、複数のノズル21、複数の個別流路22、共通流路23、流路形成体24、及び、複数の駆動素子25(
図2)を有している。複数のノズル21は、前後方向において互いに等間隔に並んでノズル列を成している。複数のノズル列は、左右方向において互いに等間隔に並んでいる。
【0022】
流路形成体24は、例えば、直方体形状であって、その内部にノズル21、個別流路22及び共通流路23が形成されている。ノズル21は、流路形成体24の下面にて開口している。共通流路23は前後方向に延び、共通流路23から複数の個別流路22が分岐している。個別流路22は、その上流端が共通流路23に接続され、その下流端がノズル21に接続されている。このため、共通流路23を流れる液体は、前後方向に流れる間に個別流路22に分流し、ノズル21に供給される。
【0023】
駆動素子25は、圧電素子等であって、個別流路22に対応して設けられ、個別流路22の容積を変動させるよう駆動する。これにより、個別流路22の液体に、ノズル21から液体を吐出する圧力が付与される。
【0024】
光照射装置30は、液体が吐出しながら移動するヘッド20の上流に配置されている。一方向印刷では、例えば、ヘッド20が左側に移動する際に液体を吐出し、右側に移動する際には液体を吐出しない。この場合、光照射装置30は、印刷時の左側への移動方向においてヘッド20の上流である右側に配置されている。光照射装置30は、液体を被記録媒体A上に吐出するヘッド20に追随して移動しながら、被記録媒体A上の液体に光を照射する。
【0025】
なお、双方向印刷では、記録装置10は、左右方向においてヘッド20を挟むように一対の光照射装置30が配置される。一対の光照射装置30のうちの右側の光照射装置30は、左側に移動しながら液体を被記録媒体A上に吐出するヘッド20に追随して左側に移動しながら、被記録媒体A上の液体に光を照射する。一対の光照射装置30のうちの左側の光照射装置30は、右側に移動しながら液体を被記録媒体A上に吐出するヘッド20に追随して右側に移動しながら、被記録媒体A上の液体に光を照射する。
【0026】
光照射装置30は、複数の光源31、光源31が搭載された基板32、及び、光源31の温度を検知する温度センサ33を有している。光源31は、例えば、LEDであって、コントローラ60により駆動されて、ノズル21から吐出された液体を硬化する光(例えば、紫外線又は赤外線)を発光する。
【0027】
基板32は、例えば、絶縁性材料から成り、矩形の平板形状であって、前後方向の長さが左右方向の長さよりも長い。基板32は、光源31が搭載された下面、及び、下面と反対側の上面を有しており、この下面及び上面はそれぞれ平坦である。
【0028】
温度センサ33は、例えば、基板32に設けられたサーミスタであって、基板32の下面において基板32の中央に配置されており、基板32の下面の温度を検知する。温度センサ33は、コントローラ60に電気的に接続されており、検知温度をコントローラ60に出力する。例えば、コントローラ60は、この検知温度に基づいて光源31の性能低下及び劣化を抑制するように光源31を消灯したり、後述する第2ファン35等を制御したりしてもよい。なお、温度センサ33の配置場所は基板32の中央に限定されず、例えば、温度センサ33は基板32の下面において光源31よりも基板32の外周縁側である基板32の端に配置されていてもよい。
【0029】
この基板32の下面には光源31が配置されているため、温度センサ33の検知温度は光源31の温度に相当する。但し、検知温度と光源31の温度とに差がある場合には、検知温度と光源31の温度との第1対応関係が記憶部62に予め記憶されており、コントローラ60は第1対応関係に基づいて検知温度から光源31の温度を取得してもよい。また、温度センサ33は光源31の温度を取得できれば、温度センサ33の配置場所は基板32に限定されず、例えば、基板32が取り付けられたケース、又は、筐体12などに配置されていてもよい。
【0030】
<コントローラの構成>
コントローラ60は、
図2に示すように、ヘッド駆動回路63を介して駆動素子25に接続され、駆動素子25の駆動を制御する。コントローラ60は、光源駆動回路64を介して光源31に接続され、光源31の駆動を制御する。コントローラ60は、走査駆動回路65を介して走査モータ44に接続され、走査モータ44の駆動を制御する。コントローラ60は、搬送駆動回路66を介して搬送モータ54に接続され、搬送モータ54の駆動を制御する。コントローラ60は、第1ファン駆動回路67を介して第1ファンモータ16aに接続され、第1ファンモータ16aの駆動を制御する。
【0031】
コントローラ60は、演算部61及び記憶部62を有している。記憶部62は、演算部61がアクセス可能なメモリであって、RAM及びROM等により構成されている。RAMは、印刷ジョブ等の各種データを一時的に記憶する。ROMは、各種データ処理を行うためのプログラムを記憶している。なお、コントローラ60は、集中制御する単独の制御装置であってもよいし、分散制御する複数の制御装置であってもよい。また、プログラムは、記憶部62以外の他の記憶媒体に記憶されていてもよい。また、プログラムは、単独又は複数の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0032】
演算部61は、CPU等のプロセッサ、及び、ASIC等の集積回路等により構成されている。演算部61は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、駆動素子25、光源31、走査モータ44及び搬送モータ54を制御して、印刷処理、情報取得処理、温度予測処理、温度検知処理、媒体クーリング処理を実行する。これらの詳細については後述する。
【0033】
<印刷処理>
このような記録装置10において、コントローラ60は、印刷データを取得し、印刷データに基づいて印刷処理を実行する。印刷データは、被記録媒体Aに印刷される画像を示す画像データ(例えば、ラスタデータ)を含んでいる。印刷データは、記憶部62に記憶されていてもよいし、ネットワーク、コンピュータ及び記憶媒体等の外部機器から取得されてもよい。
【0034】
コントローラ60が、走査モータ44を制御して、ヘッドユニット13を左右方向に移動させる移動動作を実行する。また、コントローラ60は、駆動素子25を制御して、ヘッド20から液体を吐出させる吐出動作を実行する。コントローラ60は、光源31を制御して、光源31から光を照射させる光照射動作を実行する。さらに、コントローラ60は、搬送モータ54を制御して、被記録媒体Aを前方へ搬送させる搬送動作を実行する。そして、記録装置10が移動動作、吐出動作及び光照射動作を含む画像記録処理と、搬送処理とを交互に繰り返し、印刷処理を進めていく。
【0035】
この画像記録処理では、
図3に示すように、ヘッド20が左側へ移動しながら、ヘッド20から液体を吐出する。これにより、ヘッド20の下面に対向した、ステージ51上の被記録媒体Aに液体が着弾する。また、光照射装置30がヘッド20に追随して左側へ移動しながら、光源31から光を照射する。これにより、光源31に対向した被記録媒体A上の液体に光が照射され、この液体が光により硬化して被記録媒体Aに定着する。このため、液体によって被記録媒体Aに画像が記録される。
【0036】
<情報取得処理>
記録装置10において、表面状態が互いに異なる複数の部分を有する被記録媒体Aを印刷する場合、被記録媒体Aの表面状態に応じて被記録媒体Aの光による温度上昇が異なる。このため、光を吸収し易い部分では光による熱によって被記録媒体Aが損傷するおそれがある。そこで、光による熱によって被記録媒体Aが損傷するのを抑制するために、媒体クーリング処理が実行される。
【0037】
但し、被記録媒体Aの温度を検出する専用の検出器を用いると、記録装置10のコスト上昇を招いてしまう。このため、光源31の温度を検知する温度センサ33を用いて被記録媒体Aの上昇温度を予測し、この予測上昇温度に基づいて媒体クーリング処理が実行される。
【0038】
この上昇温度の予測に際し、照射光による被記録媒体Aの温度上昇は被記録媒体Aの表面状態に依存するため、コントローラ60は、被記録媒体Aの媒体情報を取得する情報取得処理を実行する。媒体情報は、照射光と被記録媒体Aの上昇温度との関係に関する情報であって、例えば、被記録媒体Aの光反射率に関する情報等であり、より具体的には、被記録媒体Aの材質及び色に関する情報を有している。材質としては、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂及びABS樹脂等の樹脂、並びに、ステンレスなどの金属等が例示される。色としては、透明、黒及び白等が例示される。
【0039】
記録装置10は、
図2に示すように、媒体情報を入力する入力部15を備えていてもよい。入力部15は、ボタン又はタッチパネル等が例示され、コントローラ60に電気的に接続されている。例えば、ユーザによって入力部15が操作されて、媒体情報が入力部15からコントローラ60に入力される。なお、媒体情報は、印刷データに含まれてもよい。
【0040】
<温度予測処理>
コントローラ60は、情報取得処理にて取得された媒体情報に基づいて光の照射による光源31の上昇温度を予測する温度予測処理を実行する。
【0041】
光源31の光照射開始からt(s)後までの光源31の上昇温度L(℃)は、L=R×(W+△W)×(1-e^(-t/T))の式1で表される。ここで、発熱量Wは、光源31の照度により決まる固定値である。熱抵抗R(℃/W)及び時定数T(s)は、光照射装置30の構造により決まる固定値である。このうち時定数Tは、光照射装置30の熱抵抗(℃/W)と熱容量(J/℃)との積である。この熱抵抗(℃/W)は、光源31からその周囲へ伝播する熱の抵抗であって、1/(表面積×熱伝達率)で表される。熱容量は、光源31の温度を1℃上昇させるために必要な熱量であって、体積(m3)×比熱(J/kg・℃)×密度(kg/m3)で表される。
【0042】
△Wは、△W=S×P×rの式2で表される。Sは、光源31と対向する被記録媒体Aの面積(m2)であって、光源31と被記録媒体Aとの対向距離に応じた固定値である。rは、被記録媒体Aの光反射率であり、媒体情報から求められる。Pは、光源31の照度(W/m2)であって、P=ax^3+bx^2+cx+dの式3で表される。a、b、c及びdは、光源31の配置により決まる係数である。xは、光源31と被記録媒体Aとの距離(m)であり、被記録媒体Aの形状等に応じて予め設定される。従って、光源31の照度Pも固定値である。
【0043】
このように、光源31の上昇温度Lは、光源31自身の発熱、及び、被記録媒体Aからの反射光による熱により決まる。ここで、例えば、被記録媒体Aは、その明度が高い白色等の色の箇所ほど、その光反射率rが高く、光源31の温度上昇が高くなる。これに対し、被記録媒体Aは、その明度が低い黒色等の色の箇所ほど、その光反射率rが低く、光源31の温度上昇が低くなる。このため、被記録媒体Aの表面状態に応じて光源31の上昇温度Lは変化する。
【0044】
図6に示すように、被記録媒体Aの媒体情報に基づいて、光の照射時間t(s)に対する被記録媒体Aの上昇温度L(℃)が予測される。この光の照射時間tにおける光源31の予測上昇温度Lと被記録媒体Aの媒体情報とを対応付けた第2対応関係は、記憶部62に予め記憶されている。コントローラ60は、媒体情報、及び、光の照射開始からの経過時間である照射時間tを取得し、第2対応関係に基づいて照射時間tにおける光源31の予測上昇温度Lを媒体情報に応じて取得する。
【0045】
なお、被記録媒体Aの光反射率rが、被記録媒体Aの媒体情報と予め対応付けられて、この第3対応関係が記憶部62に記憶されていてもよい。この場合。コントローラ60は、第3対応関係を参照して媒体情報から被記録媒体Aの光反射率rを取得し、この光反射率r及び時間tを上記式1に代入することにより光源31の予測上昇温度Lを算出してもよい。
【0046】
<媒体クーリング処理>
コントローラ60は、温度センサ33により検知された光源31の検知温度が光の照射により上昇したときの上昇温度である検知上昇温度が、温度予測処理にて予測された光源31の上昇温度である予測上昇温度以下である場合には、被記録媒体Aを冷却する媒体クーリング処理を実行する。この場合、コントローラ60は、媒体クーリング処理において、検知上昇温度が予測上昇温度よりも高い場合に被記録媒体Aを冷却せずに、検知上昇温度が予測上昇温度以下である場合に被記録媒体Aを冷却する。
【0047】
なお、コントローラ60は、温度センサ33により検知された光源31の検知上昇温度が、温度予測処理にて予測された光源31の予測上昇温度未満である場合には、被記録媒体Aを冷却する媒体クーリング処理を実行してもよい。この場合、コントローラ60は、媒体クーリング処理において、検知上昇温度が予測上昇温度以上である場合に被記録媒体Aを冷却せずに、検知上昇温度が予測上昇温度未満である場合に被記録媒体Aを冷却してもよい。
【0048】
すなわち、例えば、被記録媒体Aの光反射率rが高い場合、光源31の温度上昇が高い一方、被記録媒体Aの光吸収率が低く、光による温度上昇が低い。これに対し、被記録媒体Aの光反射率rが低い場合、光源31の温度上昇が低い一方、その光吸収率が高く、光による温度上昇が高い。例えば、被記録媒体Aにおいて光の照射範囲が光反射率rが高い部分から光反射率rが低い部分に移動した場合、光源31の検知温度が低くなり、被記録媒体Aの温度が上昇し損傷し易くなる。
【0049】
この光源31の検知温度は、光の照射時間の経過に伴って光源31の温度が上昇することにより上昇する。このため、コントローラ60は、光源31が光照射を開始すると、その光照射開始時間の検知温度を温度センサ33から取得して記憶部62に記憶する。そして、コントローラ60は、光照射開始時間から所定時間毎に温度センサ33の検知温度を取得して記憶部62に記憶していく。ここで、コントローラ60は、光照射開始時間からt(s)後の検知温度を温度センサ33から取得すると、この検知温度から、光照射開始時間の検知温度を引いて、光照射時間tにおける検知上昇温度を演算する。そして、コントローラ60は、検知上昇温度が、光照射開始時間からt(s)後の光源31の予測上昇温度以下である場合に媒体クーリング処理を実行する。
【0050】
例えば、コントローラ60は、媒体クーリング処理において、光源31から光を照射しないことにより、被記録媒体Aを冷却する。この場合、コントローラ60は、光源駆動回路64により光源31の点灯及び消灯を制御する。コントローラ60が光源31を消灯することにより、光源31から光が照射されず、照射光による被記録媒体Aの温度上昇が抑えられ冷却される。
【0051】
なお、光源31を消灯している間、ヘッド20からの液体の吐出も停止する。これにより、媒体クーリング処理中における液体が被記録媒体Aに着弾してから光照射されるまでの硬化時間が媒体クーリング処理前よりも長くなり、硬化した液体のテクスチャが変化することを抑制することができる。
【0052】
また、
図2に示すように、記録装置10は、第1ファン16により被記録媒体Aに送風して被記録媒体Aを冷却してもよい。この場合、コントローラ60は、媒体クーリング処理において第1ファン16を駆動し、媒体クーリング処理以外において第1ファン16を停止する。なお、媒体クーリング処理として、光源31の消灯及び第1ファン16の駆動の少なくともいずれか一方を行ってもよい。
【0053】
媒体クーリング処理は、所定の時間、実行される。この時間は、媒体情報に応じて定められてもよい。媒体クーリング処理により被記録媒体Aの温度が低下し易いほど、その被記録媒体Aに対する媒体クーリング処理の実行時間を短くしてもよい。なお、媒体クーリング処理は、光源31の検知上昇温度が光源31の予測上昇温度よりも高くなるまで実行されてもよい。
【0054】
なお、媒体クーリング処理を実行するか否かは設定可能であってもよい。例えば、ユーザが入力部15を操作することにより、媒体クーリング処理の実行をしないように設定する。この場合、コントローラ60は、情報取得処理、温度予測処理及び媒体クーリング処理を実行しない。これにより、媒体クーリング処理として光源31の消灯が行われず、消灯に起因する印刷の遅延を低減することができる。
【0055】
また、媒体クーリング処理の実行可能時間は設定可能であってもよい。例えば、コントローラ60は、被記録媒体Aの媒体情報と光の照射時間tにおける光源31の上昇温度とを対応付けた第2対応関係に基づいて媒体情報から光源31の予測上昇温度の経時変化を求める。そして、コントローラ60は、この予測上昇温度の経時変化に基づいて予測上昇温度が所定の第1上昇温度に達する時間を算出し、この時間を媒体クーリング処理の実行可能時間を設定にしてもよい。この第1上昇温度は、光照射により上昇した被記録媒体Aの上昇温度が被記録媒体Aの劣化上昇温度に達したときの光源31の温度よりも低く設定されている。
【0056】
このため、光の照射開始からの経過時間が実行可能時間に達するまでは、検知上昇温度が予測上昇温度以下又は予測上昇温度未満になっても、コントローラ60は媒体クーリング処理を実行しない。これにより、被記録媒体Aに光が照射されていても、被記録媒体Aの上昇温度が低い状態では、媒体クーリング処理を実行しないことにより、媒体クーリング処理に起因する印刷時間の遅延及び駆動コストの上昇を抑制することができる。
【0057】
<記録システムの制御方法>
記録システム11の制御方法は、
図7に示すフローチャートの一例に沿ってコントローラ60により実行される。まず、コントローラ60は、印刷データを記憶部62又は外部機器等から取得する(ステップS1)。また、コントローラ60は、情報取得処理を実行し、印刷する被記録媒体Aの媒体情報を取得する(ステップS2)。
【0058】
コントローラ60は、印刷データに基づいて印刷処理を実行する(ステップS3)。印刷処理において、ヘッド20から被記録媒体Aに液体を吐出しながら、光源31から被記録媒体Aに光を照射する。ここで、コントローラ60は、光の照射開始からの照射時間tをカウントしながら記憶部62に記憶する。
【0059】
光照射により光源31の温度が上昇する。このため、コントローラ60は、温度検知処理を実行し、照射開始時間t0における温度センサ33の検知温度を取得して記憶部62に記憶する。そして、コントローラ60は、照射開始時間t0からの照射時間t1における温度センサ33の検知温度を取得する(ステップS4)。また、コントローラ60は温度予測処理を実行し、所定の対応関係を参照して、検知時の照射時間t1における光源31の予測上昇温度Lを媒体情報に応じて取得する(ステップS5)。
【0060】
そして、コントローラ60は、照射時間t1の検知温度から照射開始時間t0の検知温度を引いた検知上昇温度を演算し、検知上昇温度が予測上昇温度L以下か否かを判定する(ステップS6)。ここで、検知上昇温度が予測上昇温度Lよりも高ければ(ステップS6:NO)、コントローラ60は媒体クーリング処理を実行しないで、印刷データに基づく印刷処理が終了しているか否かを判定する(ステップS8)。印刷処理が終了していなければ(ステップS8:NO)、コントローラ60は、ステップS3の処理に戻り、S3~S8の処理を繰り返す。
【0061】
一方、検知上昇温度が予測上昇温度L以下(ステップS6:YES)、コントローラ60は媒体クーリング処理を実行する(ステップS7)。媒体クーリング処理では、例えば、光源31から被記録媒体Aへの光の照射を停止する。これにより、被記録媒体Aにおける照射光による熱の発生が抑えられ、被記録媒体Aが冷却される。また、コントローラ60は、光の照射停止と共に、ヘッド20からの液体吐出を停止して、印刷処理を中止する。そして、媒体クーリング処理が所定の時間、実行されると、印刷処理が終了していなければ(ステップS8:NO)、コントローラ60は、ステップS3の処理に戻って印刷処理を再開し、S3~S8の処理を繰り返す。
【0062】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る記録装置10では、コントローラ60は、被記録媒体Aの媒体情報を取得する情報取得処理と、情報取得処理にて取得された媒体情報に基づいて光の照射による光源31の上昇温度を予測する温度予測処理と、温度センサ33により検知された光源31の検知上昇温度の変化率が、温度予測処理にて予測された光源31の予測上昇温度の変化率以下である場合には、被記録媒体Aを冷却する媒体クーリング処理と、を実行する。
【0063】
この場合、コントローラ60は、媒体クーリング処理において、検知温度の変化率が予測上昇温度の変化率よりも大きい場合に被記録媒体Aを冷却せずに、検知温度の変化率が予測上昇温度の変化率以下である場合に被記録媒体Aを冷却してもよい。
【0064】
例えば、記録システム11の制御方法は、
図8に示すフローチャートの一例に沿ってコントローラ60により実行される。この
図8のフローチャートでは、コントローラ60は、
図7のフローチャートにおけるステップS5の処理に代えて、ステップS9の処理を実行する。
【0065】
このステップS9の処理で、コントローラ60は、ステップS4の温度検知処理によって検知した温度に基づいて時間に対する検知温度の変化率を演算する。ここで、コントローラ60は、所定の時間間隔△tで検知温度を温度センサ33から取得して記憶部62に記憶する。そして、コントローラ60は、照射時間tnに検知温度を取得すると、この現照射時間tnの直前に取得した前照射時間tn-1の検知温度である前検知温度を記憶部62から取得する。そして、コントローラ60は、現検知温度から前検知温度を引いた差を算出し、この差を時間間隔△tで割ることにより、前検知温度に対する現検知温度の温度変化率である検知温度変化率を取得する。
【0066】
また、コントローラ60は、ステップS5の温度予測処理によって予測した上昇温度に基づいて時間に対する予測上昇温度の変化率を演算する。ここで、コントローラ60は、媒体情報と光源31の上昇温度との所定の対応関係に基づいて、現照射時間tnにおける光源31の予測上昇温度である現予測上昇温度、及び、前照射時間tn-1における光源31の予測上昇温度である前予測上昇温度を媒体情報から取得する。そして、コントローラ60は、現予測上昇温度と前予測上昇温度との差を算出し、この差を時間間隔△tで割る。これにより、コントローラ60は、前予測上昇温度に対する現予測上昇温度の上昇温度変化率である予測上昇温度変化率を取得する。
【0067】
そして、コントローラ60は、検知温度変化率が予測上昇温度変化率よりも大きい場合には(ステップS9:NO)、媒体クーリング処理を実行せずに、ステップS8の処理に進む。これにより、媒体クーリング処理による印刷時間の遅延及び第1ファン16の駆動コストを低減することができる。一方、コントローラ60は、検知温度変化率が予測上昇温度変化率以下である場合には(ステップS9:YES)、媒体クーリング処理を実行する(ステップS7)。これにより、被記録媒体Aの温度上昇率が大きいため、光源31からの光照射による被記録媒体Aの劣化を低減することができる。
【0068】
なお、記録装置10では、コントローラ60は、温度センサ33により検知された光源31の検知温度の変化率が、温度予測処理にて予測された光源31の予測上昇温度の変化率よりも小さい場合には、被記録媒体Aを冷却する媒体クーリング処理を実行してもよい。この場合、コントローラ60は、媒体クーリング処理において、検知温度の変化率が予測上昇温度の変化率以上である場合に被記録媒体Aを冷却せずに、検知温度の変化率が予測上昇温度の変化率よりも小さい場合に被記録媒体Aを冷却してもよい。
【0069】
このように、被記録媒体Aを冷却することにより、光照射による被記録媒体Aの劣化を低減することができる。また、被記録媒体Aを冷却しないことにより、媒体クーリング処理による印刷時間の遅延及び駆動コストの上昇を抑制することができる。
【0070】
<変形例1>
変形例1に係る記録装置10では、実施の形態1及び実施の形態2において、コントローラ60は、温度センサ33により検知された光源31の検知温度が、所定の温度以上である場合、基板32を冷却する基板クーリング処理を実行する。
【0071】
例えば、記録装置10は、
図3に示すように、基板32を冷却する第2ファン35を備えている。なお、記録装置10は、第2ファン35を収容するケース36を有していてもよい。また、記録装置10は、基板32を冷却するヒートシンク34を有していてもよい。ヒートシンク34は、第2ファン35と基板32との間に配置され、基板32に取り付けられる。ヒートシンク34は、第2ファン35からの空気を受けて、基板32及び光源31を冷却する。
【0072】
ケース36は、内部空間を有する直方体形状であって、その内部空間に光源31、基板32、ヒートシンク34及び第2ファン35を収容している。ケース36は、下側開口、流入口36a及び流出口36bを有し、下側開口は基板32により覆われている。流入口36aはケース36の上面に開口し、流出口36bは第2ファン35と基板32との間のケース36の側面に開口している。なお、流入口36aを覆うようにフィルタがケース36に取り付けられていてもよい。これにより、流入口36aからケース36内に空気が流入する際、空気に含まれる液体のミストをフィルタが捕集することができる。
【0073】
第2ファン35は、第2ファンモータ35a、第2回転軸35b及び複数の第2羽根35cを有している。第2回転軸35bは、上下方向に延び、第2ファンモータ35a(
図2)に接続されており、第2ファンモータ35aの駆動により回転する。第2ファンモータ35aは、第2ファン駆動回路68(
図2)を介してコントローラ60(
図2)により制御される。複数の第2羽根35cは、第2回転軸35bに接続されており、第2回転軸35bを中心に回る。これにより、空気は流入口36aから吸い込まれ、ヒートシンク34に吹き付けられてから、流出口36bから流出する。
【0074】
この場合、例えば、記録システム11の制御方法は、
図9に示すフローチャートの一例に沿ってコントローラ60により実行される。この
図9のフローチャートでは、コントローラ60は、
図7のフローチャートにおけるステップS7の処理とステップS8の処理の間に、ステップS10及びS11の処理を実行する。
【0075】
このステップS10の処理で、コントローラ60は、ステップS5の温度検知処理によって検知した温度に基づいて、検知温度が所定の温度未満である場合には(ステップS10:NO)、第2ファンモータ35aを停止しておく。このように、光源31が低温である場合には、第2ファンモータ35aを駆動しないことにより、駆動コストの低減を図ることができる。一方、コントローラ60は、温度センサ33からの検知温度が所定の温度以上である場合には(ステップS10:YES)、第2ファンモータ35aを駆動し、基板クーリング処理を実行する(ステップS11)。これにより、光源31が冷却されることにより、熱による光源31の性能低下及び劣化を低減することができる。
【0076】
なお、コントローラ60は、温度センサ33により検知された光源31の検知温度が、所定の温度よりも高い場合、基板32を冷却する基板クーリング処理を実行してもよい。この場合、コントローラ60は、温度センサ33からの検知温度が所定の温度以下である場合に第2ファンモータ35aを停止し、検知温度が所定の温度よりも高い場合に第2ファンモータ35aを駆動してもよい。これにより、駆動コストを抑制しながら、熱による光源31の性能低下及び劣化を低減することができる。
【0077】
<その他の変形例>
上記全ての実施の形態及び変形例において、記録システム11は、ヘッド20、光源31、温度センサ33及びコントローラ60を有する記録装置10を備えていた。但し、記録システム11は、光源31を備えていれば、ヘッド20、温度センサ33及びコントローラ60の少なくとも1つを備えていなくてもよい。例えば、記録システム11は、コントローラ60を備えずに、ヘッド20、光源31及び温度センサ33を備えていてもよい。
【0078】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の記録装置及びその制御方法並びにプログラムは、コスト上昇を抑えつつ、光照射に起因する被記録媒体の損傷を低減することができる記録装置及びその制御方法並びにプログラム等として有用である。
【符号の説明】
【0080】
10 :記録装置
11 :記録システム
15 :入力部
20 :ヘッド
30 :光照射装置
31 :光源
32 :基板
33 :温度センサ
60 :コントローラ