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2022-99569外壁パネル固定金具及び外壁パネルの固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099569
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】外壁パネル固定金具及び外壁パネルの固定方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
E04B2/56 622J
E04B2/56 622C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213404
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110664
【氏名又は名称】ナンカイ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】豊島 一也
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 克己
(72)【発明者】
【氏名】枩林 邦生
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002FA02
2E002FB02
2E002HA03
2E002HB02
2E002HB14
(57)【要約】
【課題】 外壁パネルを支持柱材に固定する場合において、開口部のサッシを支持するサッシ支持柱材と、外壁パネルの縦レール材と、が近接する場合であっても、容易に外壁パネルを支持柱材に固定することができる外壁パネル固定金具を提供する。
【解決手段】外壁パネル固定金具1は、裏面A1aにリップ溝形鋼状の縦レール材A2が固定された外壁パネルAを支持柱材B1に固定する金具であって、縦レール材A2に固定される第1金具2と、支持柱材B1及び第1金具2に固定される第2金具3と、第2金具3を支持柱材B1に固定する第3金具と、を備え、第1金具2は、軸心21cが頭部の中心21dから偏心している第1ボルト21と、第1ボルト21の軸部21bに挿通される第1プレート材22と、第1プレート材22から突出した軸部21bに螺着する第1ナット23と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の外壁仕上材と、当該外壁仕上材の裏面側に固定され、屋内方向へ開口するリップ溝形鋼状の縦レール材と、を有する外壁パネルを、支持柱材に固定する外壁パネル固定金具であって、
前記縦レール材に固定される第1金具と、
前記支持柱材の側面及び前記第1金具に固定される第2金具と、
前記第2金具を前記支持柱材の側面に固定する第3金具と、を備え、
前記第1金具は、頭部が細長な板状であるとともに、軸心が頭部の長手方向の中心から偏心している第1ボルトと、前記第2金具に水平移動可能に固定され、前記第1ボルトの軸部を挿通する第1挿通孔が形成された第1プレート材と、前記第1挿通孔から突出した前記第1ボルトの軸部に螺着する第1ナットと、を有し、
前記第1ボルトは、頭部の短手方向の距離が、前記縦レール材のリップ間の距離以下であるとともに、頭部の長手方向の距離が前記縦レール材のリップ間の距離より長く、且つ、前記縦レール材の溝幅以下であり、
前記第1挿通孔は、水平方向へ延びる長孔であることを特徴とする外壁パネル固定金具。
【請求項2】
前記第1ボルトは、頭部の軸部側の面に突起が形成されており、
前記第1プレート材は、前記第1ボルトが頭部の長手方向を垂直方向へ向けた状態で前記第3金具の方向へ水平移動した際に、前記突起を視認可能な確認孔が形成されることを特徴とする請求項1に記載の外壁パネル固定金具。
【請求項3】
前記第1ボルトは、軸部の先端面に一直線状の刻印が形成されており、
前記刻印は、直線の延びる方向が、前記第1ボルトの頭部の長手方向と同一であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の外壁パネル固定金具。
【請求項4】
前記第1金具は、頭部が前記第1プレート材に固定されるとともに、軸部が前記第1ボルトの軸部と同一の方向へ突出する第2ボルトを有し、
前記第2金具は、前記支持柱材の側面に固定されるとともに、前記第2ボルトの軸部を挿通する第2挿通孔が形成されたL字型状の第2プレート材と、前記第2挿通孔から突出した前記第2ボルトの軸部に螺着する第2ナットと、を有し、
前記第2プレート材は、前記第3金具側と反対側の端縁が、前記第1ナットよりも前記第3金具側に位置しており、
前記第2挿通孔は、水平方向へ延びる長孔であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の外壁パネルの固定金具。
【請求項5】
前記第2プレート材は、前記第3金具側と反対側の端縁のうち、前記第1プレート材を前記第3金具の方向へ水平移動させた際に前記第1ナットに近接する部分を半円状に切り欠かれていることを特徴とする請求項4に記載の外壁パネルの固定金具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の外壁パネル固定金具を用いて、板状の外壁仕上材と、当該外壁仕上材の裏面側に固定され、屋内方向へ開口するリップ溝形鋼状の縦レール材と、を有する外壁パネルを、支持柱材に固定する外壁パネルの固定方法であって、
前記第2金具を前記第3金具で前記支持柱材の側面に固定し、
前記第1ボルトの頭部を前記縦レール材の溝に挿入して前記第1プレート材を前記外壁仕上材の裏面に当接させ、
前記第1ボルトを前記第3金具の方向へ水平移動させるとともに、前記第1ボルトの頭部が前記第3金具と反対側へ延出するように回転させ、
前記第1ボルトの頭部を前記縦レール材のリップに係止させて前記第1ナットを締付けた後、
前記第1プレート材及び前記外壁パネルの水平方向の位置を調整することを特徴とする外壁パネル固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネルを支持柱材に連結固定する外壁パネル固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図16に示すようなコンクリート系の外壁パネルXを、リップ溝形鋼からなる支持柱材Yに固定する場合、L字型状の固定金具Zを用いることが知られている。外壁パネルXはプレキャストコンクリートからなる外壁仕上材X1と、当該外壁仕上材X1の裏面Xa側に固定されるリップ溝型鋼状の縦レール材X2と、を有しており、幅方向の端部を固定金具Zによって支持柱材Yに固定される。固定金具Zは、支持柱材Y及び縦レール材X2の溝にそれぞれボルトZ1、Z2の頭部を差込み、L字型状のプレート材Z3を挟んで屋内側からナットZ4を締付けることにより外壁パネルXを柱材Yに連結固定する。
【0003】
また、縦レール材X2の溝に挿入されるボルトZ1は、頭部Z1aが細長なプレートとなっており、この頭部Z1aは、短手方向の距離が縦レール材X2のリップXb間距離以下であるとともに、長手方向の距離がリップXb間距離以上、且つ、縦レール材X2の溝X3の幅以下となっている。したがって、ボルトZ1を回転させて頭部Z1aの長手方向を水平方向へ向けると、頭部Z1aの長手方向の両端縁を縦レール材X2のリップXbに係止させることができ、ナットZ4を締付けることでプレート材Z3とともリップXbを狭着することができる。このような固定金具を用いるものとして、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-27003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図17に示すように、外壁仕上材Xにサッシを設置するための開口部Xcが形成される場合、外壁仕上材X1の裏面Xa側には、サッシを支持するためのサッシ支持柱材Y1が設置される。その際、サッシ支持柱材Y1が縦レール材X2のリップXbに近接し過ぎてしまい、ナットZ4を締付けるインパクトレンチがサッシ支持柱材Y1に干渉して固定金具Zを上手く設置できないことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであって、開口部付きの外壁パネルを支持柱材に固定する場合において、開口部のサッシを支持するサッシ支持柱材と、外壁パネルの縦レール材と、が近接する場合であっても、容易に外壁パネルを支持柱材に連結固定することができる外壁パネル固定金具及びこれを用いた外壁パネルの固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の外壁パネル固定金具は、板状の外壁仕上材と、当該外壁仕上材の裏面側に固定され、屋内方向へ開口するリップ溝形鋼状の縦レール材と、を有する外壁パネルを、支持柱材に固定する外壁パネル固定金具であって、前記縦レール材に固定される第1金具と、前記支持柱材の側面及び前記第1金具に固定される第2金具と、前記第2金具を前記支持柱材の側面に固定する第3金具と、を備え、前記第1金具は、頭部が細長な板状であるとともに、軸心が頭部の長手方向の中心から偏心している第1ボルトと、前記第2金具に水平移動可能に固定され、前記第1ボルトの軸部を挿通する第1挿通孔が形成された第1プレート材と、前記第1挿通孔から突出した前記第1ボルトの軸部に螺着する第1ナットと、を有し、前記第1ボルトは、頭部の短手方向の距離が、前記縦レール材のリップ間の距離以下であるとともに、頭部の長手方向の距離が前記縦レール材のリップ間の距離より長く、且つ、前記縦レール材の溝幅以下であり、前記第1挿通孔は、水平方向へ延びる長孔であることを特徴としている。
【0008】
本発明の第2の外壁パネル固定金具は、前記第1ボルトが、頭部の軸部側の面に突起を形成されており、前記第1プレート材は、前記第1ボルトが頭部の長手方向を垂直方向へ向けた状態で前記第3金具の方向へ水平移動した際に、前記突起を視認可能な確認孔が形成されることを特徴としている。
【0009】
本発明の第3の外壁パネル固定金具は、前記第1ボルトが、軸部の先端面に一直線状の刻印を形成されており、前記刻印は、直線の延びる方向が、前記第1ボルトの頭部の長手方向と同一であることを特徴としている。
【0010】
本発明の第4の外壁パネル固定金具は、前記第1金具が、頭部を前記第1プレート材に固定されるとともに、軸部が前記第1ボルトの軸部と同一の方向へ突出する第2ボルトを有し、前記第2金具が、前記支持柱材の側面に固定されるとともに、前記第2ボルトの軸部を挿通する第2挿通孔が形成されたL字型状の第2プレート材と、前記第2挿通孔から突出した前記第2ボルトの軸部に螺着する第2ナットと、を有し、前記第2プレート材は、前記第3金具側と反対側の端縁が、前記第1ナットよりも前記第3金具側に位置しており、前記第2挿通孔は、水平方向へ延びる長孔であることを特徴としている。
【0011】
本発明の第5の外壁パネル固定金具は、前記第2プレート材は、前記第3金具側と反対側の端縁のうち、前記第1プレート材を前記第3金具の方向へ水平移動させた際に前記第1ナットに近接する部分を半円状に切り欠かれていることを特徴としている。
【0012】
本発明の第1の外壁パネルの固定方法は、第1から第5のいずれかに記載の外壁パネル固定金具を用いて、板状の外壁仕上材と、当該外壁仕上材の裏面側に固定され、屋内方向へ開口するリップ溝形鋼状の縦レール材と、を有する外壁パネルを、支持柱材に固定する外壁パネルの固定方法であって、前記第2金具を前記第3金具で前記支持柱材の側面に固定し、前記第1ボルトの頭部を前記縦レール材の溝に挿入して前記第1プレート材を前記外壁仕上材の裏面に当接させ、前記第1ボルトを前記第3金具の方向へ水平移動させるとともに、前記第1ボルトの頭部が前記第3金具と反対側へ延出するように回転させ、前記第1ボルトの頭部を前記縦レール材のリップに係止させて前記第1ナットを締付けた後、前記第1プレート材及び前記外壁パネルの水平方向の位置を調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の外壁パネル固定金具によると、頭部が細長な板状である第1ボルトは、頭部の短手方向の距離が、縦レール材のリップ間の距離以下であるとともに、長手方向の距離が縦レール材のリップ間の距離より長く、且つ、縦レール材の溝幅以下であるとされる。したがって、第1ボルトの頭部は、長手方向を垂直方向へ向けた状態で縦レール材の溝に挿入することができ、且つ、溝内で回転させれば長手方向の両端部を縦レール材の各リップに係止させることができる。また第1ボルトは、軸心が頭部の長手方向の中心から偏心しているため、頭部を溝に挿入した状態で第1ボルトを第1挿通孔に沿って第3金具の方向へ水平移動させ、頭部の長手方向の端部のうち、軸部側と反対側の端部が第3金具と反対の方向へ向くよう90度回転させれば、頭部を縦レール材の各リップに係止させることができる。つまり、縦レール材のリップのうち、支持柱材と反対側のリップに何らかの部材が干渉する場合であっても、第1ボルトの軸部と干渉部材との間隔を広げることができるので、専用工具で容易に第1ナットを締付けることができる。
【0014】
本発明の第2の外壁パネル固定金具によると、第1プレート材は、第1ボルトが頭部の長手方向を垂直方向へ向けた状態で第3金具の方向へ水平移動した際に、突起を視認可能な確認孔が形成される。したがって、確認孔から突起の位置を確認しつつ第1ボルトの水平方向の位置を微調整することができ、施工性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第3の外壁パネル固定金具によると、第1ボルトは、軸部の先端面に一直線状の刻印が形成されており、この刻印は、直線の延びる方向が、第1ボルトの頭部の長手方向と同一であるとされる。したがって、第1ボルトの頭部を縦レール材の溝に挿入した際に、軸部側から刻印を確認することで第1プレート材越しに頭部の長手方向の向きを把握することができ、施工性を向上させることができる。
【0016】
本発明の第4の外壁パネル固定金具によると、第2プレート材は、第3金具側と反対側の端縁が、第1ナットよりも第3金具側に位置しており、また第2挿通孔は、水平方向へ延びる長孔とされる。したがって、第2ナットを緩めると、第1プレート材が固定された外壁パネルを第2挿通孔に沿って水平移動させることができ、外壁パネルの水平方向の位置を容易に調整することができる。
【0017】
本発明の第5の外壁パネル固定金具によると、第2プレート材は、第3金具側と反対側の端縁のうち、第1プレート材を第3金具の方向へ水平移動させた際に第1ナットに近接する部分を半円状に切り欠かれている。そのため、第1プレート材が固定された外壁パネルを第3金具側へ水平移動させても、第2プレート材が第1ナットに干渉することはなく、スムーズに外壁パネルの位置を調整することができる。
【0018】
本発明の第1の外壁パネルの固定方法によると、第1ボルトを第3金具の方向へ水平移動させてから第1ボルトの頭部を縦レール材のリップに係止させて第1ナットを締付けるとされる。したがって、縦レール材のリップのうち、支持柱材と反対側のリップに何らかの部材が干渉する場合であっても、第1ボルトの軸部と干渉部材との間隔を広げることができるので、専用工具で容易に第1ナットを締付けることができる。また、外壁パネルを支持柱材に固定した状態で外壁パネルの水平方向の位置を調整することができるので、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】外壁パネルを支持柱材に設置した状態を示す平面図。
図2】外壁パネルを支持柱材に設置した状態を示す背面図。
図3】外壁パネル固定金具及び支持柱材の側面図。
図4】第1金具及び第2金具の分解平面図。
図5】第1金具及び第2金具の分解側面図。
図6】第1プレート材に第1ボルトを固定した状態を示す正面図。
図7】第3金具の分解側面図。
図8】係止体を回転させる状況を示す第3金具の正面図。
図9】外壁パネルの背面図。
図10】外壁パネル及び軸組材を示す平面図。
図11】軸組材を示す背面図。
図12】外壁パネル固定金具を支持柱材に固定した状況を示す平面図。
図13】第1ボルトを水平移動させる状況を示す平面図。
図14】第1突起が第2リップに干渉する状態を示す背面図。
図15】外壁パネルの他端部を支持柱材に固定した状況を示す背面図。
図16】従来の金具で外壁パネルを支持柱材に固定した状態を示す平面図。
図17】サッシ支持柱材が縦レール材に干渉する状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の外壁パネル固定金具の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。なお、本発明における「突起」、「縦レール材のリップ」は、本実施形態においては、それぞれ「第1突起21f」、「第2リップ4」が相当する。
【0021】
図1に示すように、本願の外壁パネル固定金具1は、コンクリート系の外壁パネルAをリップ溝形鋼からなる支持柱材B1に固定するための金具であって、外壁仕上材Aに固定される第1金具2と、支持柱材B1のリップである第1リップB1a側の側面Ba及び第1金具2に固定される第2金具3と、第2金具3を支持柱材B1の側面Baに固定する第3金具4と、を備えている。
【0022】
図2図4、及び図5に示す第1金具2は、頭部21aが板状の第1ボルト21と、第1ボルト21の軸部21bを挿通する第1プレート材22と、第1プレート材22から突出した第1ボルト21の軸部21bに螺着する第1ナット23と、頭部24aが第1プレート材22に固定される第2ボルト24と、を有している。第1金具2を固定する外壁パネルAは、図12に示すように、板状の外壁仕上材A1の裏面A1a側に、外壁仕上材A1の屋内方向へ開口するリップ溝型鋼状の縦レール材A2が固定されており、第1ボルト21は、頭部21aを縦レール材A2の溝A3に挿入される。図5及び図6に示すように、第1ボルト21の頭部21aは、やや細長な板材であり、短手方向の距離L1が、図12に示す縦レール材A2のリップである第2リップA4間の幅W1より短いとともに、長手方向の距離L2が第2リップA4間の幅W1の長さ以上、且つ縦レール材A2の溝幅W2(図12参照)以下となっている。なお図示するように、第1ボルト21は、軸部21bの軸心21cが頭部21aの長手方向の中心21dから偏心しており、且つ、頭部21aの軸部21b側の面21eに2つの第1突起21fが形成されている。これらの第1突起21fは、頭部21aの長手方向の中心21dを挟んで軸部21bと相対向する位置に形成される。このように形成される第1ボルト21は、頭部21aの長手方向を垂直方向へ向けた状態で第1プレート材22に固定されるが、第1ナット23を締付けて時計回りに90度回転させた際に、図2に示すように、第1ボルト21の軸部21bが頭部21aの長手方向の中心21dよりも第3金具4側へ位置するよう予め上下の向きが調整されて固定される。なお、第1ボルト21は、軸部21bの先端面21gに一直線状の刻印21hが施されており、刻印21hの直線が延びる方向と、頭部21aの長手方向とを同一にすることで、第1プレート材22越しであっても頭部21aの長手方向を把握することができる。
【0023】
図1図2図5及び図6に示す第1プレート材22は、水平方向へやや細長な略矩形状の平板材であり、外壁仕上材A1の裏面A1aに当接される。図示するように、第1プレート材22は、第3金具4と反対側の端縁である第1端縁22a寄りに、板厚方向へ貫通する第1挿通孔22b及び確認孔22cが形成されている。第1挿通孔22bは、第1ボルト21の軸部21bを挿通する孔であり、水平方向へ延びる長孔となっている。一方、確認孔22cは、第1ボルト21の第1突起21fを視認するための孔であり、第1ボルト21が頭部21aの長手方向を垂直方向へ向けた状態で第3金具4側へ水平移動し、且つ、第1ボルト21の頭部21aを時計回りに回転させても縦レール材A2の溝A3に干渉しない位置まで水平移動した際に、第1突起21fが位置する部分に形成される。
【0024】
また第1プレート材22は、第1ボルト21の頭部21a側の板面である第1板面22dに複数の第2突起22eが形成される。この複数の第2突起22eは、第1板面22dを外壁仕上材A1に当接した際、第2リップA4の各端縁に係止して第1プレート材22の横ずれを防止するためのものであり、第1挿通孔22bを囲んで形成される。図示するように、これらの第2突起22eは、水平方向又は垂直方向へ互いに間隔を開けて配置されるとともに、第1挿通孔22bを挟んで対称形となるように配置される。また水平方向に隣り合う第2突起22eは、互いに最も離れた部分の端縁同士の距離L3が第2リップA4間の幅W3と略同一となっており、第2リップA4の端縁に係止した際に、第1プレート材22の水平方向の位置をロッキングすることができる。さらに、第1挿通孔22bに最も近接する位置に形成される第2突起22eは、第1挿通孔22bの上下、且つ、第3金具4寄りに形成されており、第1ボルト21が、第1挿通孔22bに沿って第1端縁22a寄りに水平移動した状態で時計回りに回転しようとすると、これらの第2突起22eが第1突起21fに干渉して回転を抑制する。また第2ボルト24は、図2及び図4に示すように、第1ボルト21よりも第3金具4寄りに配置されるとともに、頭部24aが第1プレート材22にかしめられており、軸部24bが第1ボルト21の軸部21bと同一の方向へ突出している。
【0025】
図2図4、及び図5に示す第2金具3は、第2ボルト24の軸部24bを挿通するL字型状の第2プレート材31と、第2プレート材31から突出した第2ボルト24の軸部24bに螺着する第2ナット32と、を有している。図示するように第2プレート材31は、第1プレート材22に固定される第1板部31aと、第1板部31aの第3金具4側の端縁から第1プレート材22と直交する方向へ延出する第2板部31bと、からなるL字型状の金板である。第1板部31aには、第2ボルト24の軸部24bを挿通するための第2挿通孔31cが形成されており、この第2挿通孔31cは、水平方向に延びる長孔となっている。そのため、第2ナット32を緩めれば、第2ボルト24及び第1プレート材22を第2挿通孔31cに沿って水平移動させることができる。また第1板部31aは、水平方向の長さが第1プレート材22よりも短く、第3金具4と反対側の端縁である第2端縁31dが、第1ナット23よりも第3金具4側に位置している。この第2端縁31dは、第1プレート材22を第3金具4の方向へ移動させた際に、第1ナット23に近接する部分が干渉しないよう半円状に切り欠かれており(図2等に示す31e)、第1プレート材22をスムーズに移動させることができる構成となっている。
【0026】
一方、第2板部31bは、第3金具4に固定される略凸型状の金板であり、第1挿通孔22bと略同一の高さに、後述する第3ボルト41の軸部41bを挿通する第3挿通孔31fが形成される。なおこの第3挿通孔31fは、第1挿通孔22b及び第2挿通孔31cと同様、水平方向へ延びる長孔となっている。
【0027】
図2図7及び図8に示す第3金具4は、第2金具3を支持柱材B1に固定する金具であり、頭部41aが板状の係止体40にかしめられた第3ボルト41と、第3ボルト41の軸部41bに挿入されるスプリングばね42と、第3ボルト41の軸部41bを挿通させる第4挿通孔43aが形成された金板材43と、第3ボルト41を締付ける第3ナット44と、を有している。係止体40は、やや細長な略矩形状の金板を用いて形成された係止部40aと、係止部40aの短手方向両端から係止部40aに略直角する方向へ突出する一対の突出部40bとからなるC字型状の部材である。係止部40aは、図8に示すように一方の対角線上に位置する2つの角部が斜めに切断された状態となっており、短手方向の距離L4が図3に示す支持柱材B1のリップである第1リップB1a間の幅W3以下であるとともに、長手方向の距離L5が第1リップB1a間の幅W3以上、且つ支持柱材Bの溝幅W4(図3参照)以下となっている。
【0028】
このように形成される第1金具2、第2金具3及び第3金具4は、図2に示すように、一体的に連結固定される。すなわち、第1金具2の第2ボルト24を第2プレート材31に固定しておき、第3ボルト41の軸部41bをスプリングばね42、第2金具3の第3挿通孔31f、金板材43の第4挿通孔43a、及び第3ナット44に挿通して第3ナット44を締付けることにより一体化する。
【0029】
次に、外壁パネル固定金具1によって連結される外壁パネルA及び支持柱材Bについて説明する。図1及び図9等に示す外壁パネルAは、建物の外壁を構成する部材で、開口部A1bが形成された板状の外壁仕上材A1と、当該外壁仕上材A1の裏面A1a側、且つ、外壁仕上材A1の幅方向の両端部に固定される一対の縦レール材A2と、裏面A1a側、且つ、開口部A1bの高さ方向の両端廻りに各々固定される一対の横レール材A5と、を有している。外壁仕上材A1は、プレキャストコンクリートを均一な厚さに成型した板材であり、表面は化粧仕上げが施されている。また縦レール材A2及び横レール材A5は、外壁仕上材A1の裏面A1a側に開口した状態で外壁仕上材A1に埋設される。
【0030】
外壁仕上材A1の幅は、1000mm~1020mm程度であり、開口部A1bは、外壁仕上材A1の幅方向の中央に形成される。開口部A1bの寸法は特に限定されないが、図示例では幅500mm程度、高さ750mm程度となっている。また縦レール材A2は、外壁仕上材A1の幅方向の両端縁からレール芯までの距離が120mm~135mm程度となる位置にそれぞれ設置される。
【0031】
このように形成される外壁パネルAは、図10及び図11に示すように、複数のリップ溝形鋼を組んで形成される軸組材Cに支持固定される。軸組材Cは、水平方向へ間隔を開けて立設する一対の支持柱材B1と、一対の支持柱材B1の上下端部にそれぞれ架設される一対の支持横架材B2と、外壁仕上材A1の開口部A1b廻りに配置される一対のサッシ支持柱材B3及び一対のサッシ支持横架材B4と、から構成されており、外壁仕上材A1の裏面A1a側に配置される。
【0032】
一対の支持柱材B1は、外壁仕上材A1の幅方向の両端部が位置する部分にそれぞれ配置されるとともに、第1リップB1a同士が互いに相対向するよう配置される。また、サッシ支持柱材B3及びサッシ支持横架材B4は、開口部A1bに設置されるサッシ(図示せず)を支持するための部材であり、一対のサッシ支持横架材B3は、開口部A1bの幅方向の両端が位置する付近にそれぞれ配置され、上下端を一対のサッシ支持横架材B4に固定される。また一対のサッシ横架材B4は、開口部A1bの高さ方向の両端が位置する付近にそれぞれ配置されるとともに、水平方向の両端をそれぞれ支持柱材B1に固定される。なお、外壁パネルAの開口部A1bを先述したような寸法とすると、図10に示すように、支持柱材B1とサッシ支持柱材B3とが近接するため、外壁パネルAを軸組材Cに固定する際、サッシ支持柱材B3が縦レール材A2の第2リップA4に干渉することになる。
【0033】
次に、外壁パネル固定金具1を用いて、外壁パネルAを支持柱材B1に固定する外壁パネルの固定方法について説明する。まず図12に示すように、第2金具3を第3金具4で支持柱材B1に固定する。具体的には、まず図3及び図8に示すように、係止部40aの長手方向を垂直方向へ向けた状態で係止体40を支持柱持B1の溝B5に挿入し、第3ナット44をインパクトレンチで緩めて第3ボルト41を時計回りに90度回転させ、係止体40の長手方向を水平方向へ回転させる。そして図12に示すように、係止体40の長手方向の両端部を各第1リップB1aに係止させ、再び第3ナット44をインパクトレンチで締付けて第1リップB1aを係止体40と第2金具3の第1板部32bとで狭着し、第2金具3を支持柱材B1の第1リップB1a側の側面Baに固定する。
【0034】
続いて、外壁パネルAを支持柱材B1に固定する。まず、図12に示す第1ボルト21が水平方向へ移動可能となる程度に第1ナット23を若干緩めておき、外壁仕上材A1の幅方向の端部を、支持柱材B1の外壁パネルA側の面に近接させ、第1ボルト21の頭部21aを縦レール材A2の溝A3に挿入する。このとき、頭部21aは、先述したように長手方向を垂直方向へ向けた状態となっている。そして、図13に示すように第1プレート材22の第1板面22dを外壁仕上材A1に当接させ、第2突起22eを第2リップA4の各端縁に係止させて、第1プレート材22の水平方向へのずれを防止する。
【0035】
次に、第1ナット23を締付けて第1ボルト21を時計回りに回転させるが、第1ボルト21の軸心21cが縦レール材A2の幅方向の略中央に位置したままではインパクトレンチがサッシ支持柱材B3に干渉してしまうため、第1ボルト21及び第1ナット23を第3金具4の方向へ水平移動させ、第1ボルト21の軸部21bとサッシ支持柱材B3との間隔を広げる。なおこのとき、第1ボルト21は、図6に示すように、第1突起21fが確認孔22cから視認できる位置まで水平移動させる。
【0036】
続いて、図1及び図2に示すように、第1ボルト21の軸部21bが頭部21aの長手方向の中心21dよりも第3金具4側に位置するよう第1ボルト21を時計回りに90度回転させて頭部21aの長手方向の両端部を各第2リップA4に係止させる。先述したように、第1ボルト21は、軸心21cが頭部21aの長手方向の中心21dから偏心しているため、時計回りに回転する際に、頭部21aが縦レール材A2の溝A3に干渉することがない。そのため、第1ボルト21をスムーズに時計回りに回転させることができ、頭部21aの長手方向の両端部を各第2リップA4に係止させることができる。そして、第1ナット23を締付けて頭部21aと第1プレート材22とで第2リップA4を狭着し、外壁パネルAの支持柱材B1への固定を完了する。
【0037】
なお図14に示すように、第1ボルト21は、第3金具4側へ水平移動させても第1突起21fが確認孔22cから視認できない向きに頭部21aを向けていると、第1突起21fが縦レール材A2の第2リップA4に干渉するため頭部21aを時計回りに回転させることができない。このように、第1突起21f及び確認孔32bを設けることにより、第1ボルト21を正しい向きに向けることができ、施工性を向上させることができる。また本実施形態では、外壁パネルAの幅方向の一端部を支持柱材B1に固定する場合について説明したが、外壁パネルAの幅方向の他端部を支持柱持B1に固定する場合は、図15に示すように、外壁パネル固定金具1を上下反転して使用することができる。
【0038】
以上までの工程は、工場内で予め完了され、施工現場へは、外壁パネルAと軸組材Cとを一体化した状態で搬入することができる。また本実施形態では説明を省略するが、外壁パネルAの高さ方向の両端部は、それぞれ一対の支持横架材B2に専用の金具を用いて固定される。
【0039】
施工現場に搬入された外壁パネルAは、軸組材Cを図外の建物躯体に支持固定させた後、水平方向の位置を微調整される。すなわち、図1及び図2に示す第2ナット32を緩め、第2ボルト24及び第1プレート材22が固定された外壁パネルAを第2挿通孔31cに沿って水平移動させ、外壁パネルAの水平方向の位置を調整する。このとき、第2プレート材31は、第2端縁31dに半月状の切欠き31eが形成されているため、第1プレート材22を第3金具4の方向へ移動させても、第1板部31aが第1ナット23に干渉することはなく、スムーズに外壁パネルAの位置を調整させることができる。そして、再び第2ナット32を締付け、外壁パネルAの水平方向への微調整を完了する。
【0040】
このように、本願の外壁パネル固定金具1は、サッシ支持柱材B3が外壁パネルAの縦レール材A2に一部干渉していても、容易に外壁パネルAを支持柱材B1に連結固定することができる。また施工現場では第1ボルト21や第1ナット23を操作することなく外壁パネルAの水平方向の位置調整をすることができるので、施工性を向上させることができる。
【0041】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る外壁パネル固定金具及び外壁パネルの固定方法は、コンクリート系外壁パネルを支持柱材に固定する場合に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 外壁パネル固定金具
2 第1金具
21 第1ボルト
21a (第1ボルトの)頭部
21b (第1ボルトの)軸部
21c (第1ボルトの)軸心
21d 第1ボルトの頭部の長手方向の中心
21e 第1ボルトの頭部の軸部側の面
21f 第1突起(突起)
21g 第1ボルトの軸部の先端面
21h 刻印
22 第1プレート材
22b 第1挿通孔
22c 確認孔
23 第1ナット
24 第2ボルト
24a (第2ボルトの)頭部
24b (第2ボルトの)軸部
3 第2金具
31 第2プレート材
31c 第2挿通孔
32 第2ナット
A 外壁パネル
A1 外壁化粧材
A1a (外壁化粧材の)裏面
A2 縦レール材
A4 第2リップ(縦レール材のリップ)
B1 支持柱材
Ba (支持柱材の)側面
L1 第1ボルトの頭部の短手方向の距離
L2 第1ボルトの頭部の長手方向の距離
W1 縦レール材のリップ間の距離
W2 縦レール材の溝幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17