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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099594
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61C 17/12 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
B61C17/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213439
(22)【出願日】2020-12-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
(72)【発明者】
【氏名】駒屋 智博
(72)【発明者】
【氏名】関 竜司
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠
(72)【発明者】
【氏名】松岡 克弥
(57)【要約】
【課題】結合部材に吊設されている電気機器の振動に共振して発生する結合部材の振動を低減することができる鉄道車両を提供する。
【解決手段】一対の側梁20を結合する結合部材30と、結合部材30よりも上方に位置する客室床40と、結合部材30と客室床40との間に位置して客室床40を支持する複数の床受け50と、結合部材30の下面30bに吊設された電気機器60と、を備える鉄道車両1において、電気機器60が吊設されている結合部材30(第1横梁31)に対して、直接または他部材90を介して間接に、結合部材30(第1横梁31)の固有振動によって増幅された電気機器60の振動を低減する動吸振器70が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の側梁を結合する結合部材と、
前記結合部材よりも上方に位置する客室床と、
前記結合部材と前記客室床との間に位置して前記客室床を支持する複数の床受けと、
前記結合部材の下面に吊設された電気機器と、を備える
鉄道車両において、
前記電気機器が吊設されている前記結合部材に対して、直接または他部材を介して間接に、前記結合部材の固有振動によって増幅された前記電気機器の振動を低減する動吸振器が設けられている
鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両であって、
前記電気機器は、防振ゴム部材を介して、前記結合部材の下面に吊設されている
鉄道車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鉄道車両であって、
複数の前記床受けは、前記鉄道車両の幅方向の中央部において、前記幅方向に離間して配置された一対の中央床受けを含み、
前記動吸振器は、前記幅方向について、一対の前記中央床受けの間に設けられている
鉄道車両。
【請求項4】
請求項3に記載の鉄道車両であって、
前記動吸振器は、前記鉄道車両の高さ方向に延びる中心軸部材を有し、
前記中心軸部材が、一対の前記中央床受けの間のうち前記鉄道車両の前記幅方向について各々の前記中央床受けから等距離に位置する中央位置に配置される態様で、前記動吸振器が、前記結合部材に対して、直接または他部材を介して間接に設けられている
鉄道車両。
【請求項5】
請求項1~請求項4に記載の鉄道車両であって、
前記電気機器が、主変圧器である
鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対の側梁を結合する結合部材(例えば横梁)と、前記結合部材よりも上方に位置する客室床と、前記結合部材と前記客室床との間に位置して前記客室床を支持する複数の床受けと、前記結合部材の下面に吊設された電気機器と、を備える鉄道車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-166628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような構造を有する鉄道車両では、電気機器が吊設されている結合部材(例えば横梁)の固有振動数が、電気機器が発生する低周波帯域の振動の振動数(例えば、120Hz)付近であった場合、該電気機器の振動に伴って結合部材が共振して、該電気機器の低周波帯域の振動が増幅することがあった。この増幅された電気機器の低周波帯域の振動が、床受けを通じて客室床に伝わり、客室内の空気を振動させることによって、客室内に低周波帯域の騒音が発生して、乗客に不快感を与えることがあった。このような、電気機器の振動に起因して発生する客室内の騒音を低減するために、鉄道車両において、結合部材の固有振動に起因した電気機器の振動の増幅を低減する技術が求められていた。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、結合部材の固有振動によって増幅された電気機器(結合部材に吊設されている電気機器)の振動を低減することができる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、一対の側梁を結合する結合部材と、前記結合部材よりも上方に位置する客室床と、前記結合部材と前記客室床との間に位置して前記客室床を支持する複数の床受けと、前記結合部材の下面に吊設された電気機器と、を備える鉄道車両において、前記電気機器が吊設されている前記結合部材に対して、直接または他部材を介して間接に、前記結合部材の固有振動によって増幅された前記電気機器の振動を低減する動吸振器が設けられている鉄道車両である。
【0007】
上述の鉄道車両では、電気機器が吊設されている結合部材に対して、直接または他部材を介して間接に、結合部材の固有振動によって増幅された電気機器の振動を低減する動吸振器が設けられている。このため、結合部材に吊設されている電気機器の振動(以下、これを機器振動ともいう)に伴って結合部材が共振したときに、結合部材に取り付けられている動吸振器が振動することによって、結合部材の固有振動によって増幅された機器振動を低減することができる。
【0008】
従って、上述の鉄道車両では、床受けを通じて客室床に伝わる機器振動の大きさを低減することができる。これにより、機器振動に起因して発生する客室内の騒音を低減することができる。
【0009】
なお、結合部材の固有振動数帯は、低周波帯域(例えば、80~160Hz)であり、低周波帯域の騒音は、乗客に不快感を与える。これに対し、上述の鉄道車両では、「結合部材の固有振動によって増幅された機器振動(例えば、120Hzの振動)が、床受けを通じて客室床に伝わることによって発生する客室内の騒音」を低減することができるので、乗客にとって不快な騒音を低減することができるといえる。
【0010】
結合部材としては、例えば、一対の側梁を結合する複数の横梁や、一対の側梁を結合する床部材(ダブルスキン構造の床部材)を挙げることができる。
また、動吸振器は、自身が振動することによって、制振対象である結合部材の振動を低減する機能を有する機器である。動吸振器としては、錘(質量体)と、この錘を支持する弾性体とを備えるものを挙げることができる。
【0011】
動吸振器は、電気機器が吊設されている結合部材に対して直接設けるようにしても良いし、結合部材に対して他部材を介して間接に設けるようにしても良い。動吸振器を、結合部材に対して他部材を介して間接に設ける態様としては、例えば、動吸振器を、結合部材の上面に設けられた床板(客室床よりも下方に位置して、床受けの下端部が固定される床板)の上面に固定する態様で、結合部材に対して床板を介して間接に設ける態様を挙げることができる。
【0012】
さらに、前記の鉄道車両であって、前記電気機器は、防振ゴム部材を介して、前記結合部材の下面に吊設されている鉄道車両とすると良い。
【0013】
防振ゴム部材を介して、電気機器を結合部材の下面に吊設することで、電気機器から結合部材に伝わる振動(主に、高周波帯域の振動)を低減することができる。従って、上述の鉄道車両では、動吸振器による結合部材の低周波帯域の振動の低減に加えて、防振ゴム部材による結合部材の高周波帯域の振動の低減を実現することができる。これにより、上述の鉄道車両では、広範囲の周波数帯域にわたって、電気機器の振動に起因して発生する客室内の騒音を低減することができる。
【0014】
さらに、前記いずれかの鉄道車両であって、複数の前記床受けは、前記鉄道車両の幅方向の中央部において、前記幅方向に離間して配置された一対の中央床受けを含み、前記動吸振器は、前記幅方向について、一対の前記中央床受けの間に設けられている鉄道車両とすると良い。
【0015】
鉄道車両は、その幅方向(以下、車両幅方向ともいう)に延びる結合部材の両端部が、車両幅方向の両端部に位置する一対の側梁に支持された構造となっている。このため、結合部材に吊設されている電気機器の振動に結合部材が共振するときは、車両幅方向の中央部において最も大きく振動することになる。従って、従来、車両幅方向の中央部において車両幅方向に離間して配置された一対の中央床受けを有する鉄道車両では、電気機器の振動に起因して結合部材の共振が発生した場合、結合部材の車両幅方向の中央部において機器振動が大きく増幅され、この機器振動が中央床受けを通じて客室床に伝わることで、客室内に騒音が発生し易くなっていた。
【0016】
これに対し、上述の鉄道車両では、結合部材の固有振動によって増幅された電気機器の振動を低減する動吸振器を、鉄道車両の幅方向について一対の中央床受けの間に設けている。このようにすることで、電気機器の振動に起因して結合部材が共振した場合において、車両幅方向の中央部における大きな振動を効果的に低減することができる。これにより、機器振動が増幅されることを抑制できるので、機器振動に起因して発生する客室内の騒音を効果的に低減することができる。
【0017】
さらに、前記の鉄道車両であって、前記動吸振器は、前記鉄道車両の高さ方向に延びる中心軸部材を有し、前記中心軸部材が、一対の前記中央床受けの間のうち前記鉄道車両の前記幅方向について各々の前記中央床受けから等距離に位置する中央位置に配置される態様で、前記動吸振器が、前記結合部材に対して、直接または他部材を介して間接に設けられている鉄道車両とすると良い。
【0018】
上述の鉄道車両では、動吸振器として、鉄道車両の高さ方向に延びる中心軸部材を有する動吸振器を用いている。そして、この動吸振器の中心軸部材が、一対の中央床受けの間のうち鉄道車両の幅方向について各々の中央床受けから等距離に位置する中央位置に配置される態様で、動吸振器を、結合部材に対して直接または他部材を介して間接に設けている。
【0019】
このようにすることで、電気機器の振動に起因して結合部材が共振した場合において、車両幅方向の中央部における大きな振動をより一層低減することができる。これにより、機器振動が増幅されることを抑制できるので、機器振動に起因して発生する客室内の騒音をより一層低減することができる。
なお、一対の中央床受けの間のうち車両幅方向について各々の中央床受けから等距離に位置する中央位置は、結合部材上において、結合部材の車両幅方向の中央位置と一致する。
【0020】
さらに、前記の鉄道車両であって、前記電気機器は、主変圧器である鉄道車両とすると良い。
【0021】
上述の鉄道車両では、主変圧器(トランス)が吊設されている結合部材に対して、直接または他部材を介して間接に、結合部材の固有振動によって増幅された電気機器の振動を低減する動吸振器が設けられている。これにより、結合部材の固有振動によって増幅された主変圧器の振動を低減することができる。従って、上述の鉄道車両では、床受けを通じて客室床に伝わる主変圧器の振動を低減することができるので、主変圧器の振動に起因して発生する客室内の騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態にかかる鉄道車両の断面概略図である。
図2】同鉄道車両の客室床の下方の上面視拡大概略図である。
図3図1のB部拡大図である。
図4】ハンマリング試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、実施形態にかかる鉄道車両1の断面概略図であり、鉄道車両1を車両長さ方向DL(鉄道車両1の長さ方向、図1において紙面に直交する方向)に直交する方向に切断した断面概略図である。図2は、鉄道車両1の客室床40の下方の上面視拡大概略図である。但し、図2では、床板90の図示を省略している。図3は、図1のB部拡大図である。
【0024】
本実施形態の鉄道車両1は、台枠10と客室床40と床受け50と電気機器60とを備える。このうち、台枠10は、鉄道車両1の幅方向(車両幅方向DWとする、図1及び図2において左右方向)の両端部に位置する一対の側梁20,20と、この一対の側梁20,20を結合する複数の横梁30とを有する。
【0025】
複数の横梁30の上面30cには、床板90が設けられている(図1参照)。この床板90は、客室床40よりも下方に位置して、床受け50の下端部が固定される床板である。客室床40は、横梁30及び床板90よりも上方に配置されている。床受け50は、鉄道車両1の高さ方向(車両高さ方向DHとする、図1において上下方向)について、横梁30と客室床40との間(詳細には、床板90と客室床40との間)に位置して、客室床40を支持している。なお、床受け50と客室床40との間には、防振ゴム部材55が配置されている(図3参照)。すなわち、床受け50は、防振ゴム部材55を介して、客室床40を支持している。
【0026】
本実施形態の鉄道車両1では、車両幅方向DWについて、4本の床受け50が間隔を空けて設けられている(図1及び図2参照)。車両幅方向DWに間隔を空けて並ぶ4本の床受け50のうち、車両幅方向DWの中央部において、車両幅方向DWに離間して配置された2本の床受け50を、一対の中央床受け51,51とする。さらに、鉄道車両1は、客室床40の上面41に設けられた座席80を備える。
【0027】
電気機器60は、横梁30の下面30bに吊設されている(図1参照)。ここで、鉄道車両1に含まれる複数の横梁30のうち電気機器60が吊設されている横梁30を、第1横梁31とする。電気機器60は、防振ゴム部材65を介して、第1横梁31の下面31bに吊設されている。なお、本実施形態では、電気機器60は、主変圧器(トランス)である。また、本実施形態では、第1横梁31を含む横梁30が、一対の側梁20,20を結合する結合部材である。
【0028】
ところで、従来、上述のような構造を有する鉄道車両では、電気機器60の振動(機器振動)に伴って、電気機器60が吊設されている第1横梁31が、低周波帯域の固有振動数(例えば、120Hz)で共振して、電気機器60の低周波帯域の振動が増幅することがあった。この増幅された電気機器60の低周波帯域の振動が、床受け50を通じて客室床40に伝わって、客室P内の空気を振動させることによって、客室P内に低周波帯域の騒音が発生して、乗客に不快感を与えることがあった。
【0029】
これに対し、本実施形態の鉄道車両1では、電気機器60が吊設されている第1横梁31の上面31cに対して、床板90を介して間接に、第1横梁31の固有振動によって増幅された電気機器60の振動を低減する動吸振器70が設けられている(図1及び図2参照)。この動吸振器70は、第1横梁31の固有振動数と同等の固有振動数を有する。なお、本実施形態では、1つの電気機器60が、2本の第1横梁31に吊設されている。そして、電気機器60が吊設されている各々の第1横梁31の上面31cに対して、床板90を介して間接に、動吸振器70が設けられている(図1及び図2参照)。この動吸振器70は、自身が振動することによって、制振対象である第1横梁31の振動を低減する。なお、第1横梁31の固有振動数は、低周波帯域の振動数(本実施形態では、120Hz)である。
【0030】
動吸振器70は、図3に示すように、固定板71と、固定板71の上面に立設されたボルト72と、押さえ板73と、ナット74と、錘75と、弾性体76,77とを備える。固定板71は、金属板からなり、図示しないボルトによって、床板90を介して第1横梁31の上面31cに固定される。ボルト72は、雄ねじが形成された軸部のみからなり、固定板71の上面に溶接されている。このボルト72は、動吸振器70において、車両高さ方向DHに延びる中心軸部材である。
【0031】
錘75は、金属からなり、中心に貫通孔を有する円盤形状(円筒形状)を有し、ボルト72に挿通されている。弾性体76,77は、ゴムからなり、中心に貫通孔を有する円筒形状を有し、ボルト72に挿通されている。なお、弾性体77と錘75と弾性体76は、一体とされており、この順で、下方から上方に向かって積み重なっている。換言すれば、錘75が弾性体76と77との間に挟まれる態様で、これらが一体とされており、一体とされた弾性体77と錘75と弾性体76が、ボルト72に挿通されている。
【0032】
押さえ板73は、金属からなり、中心に貫通孔を有する円盤形状を有し、ボルト72に挿通されている。この押さえ板73は、弾性体76の上面に配置され、弾性体76を下方に押さえる。より具体的には、上方から、一体とされた弾性体77と錘75と弾性体76を、固定板71に立設しているボルト72に挿通させて、さらに、上方から押さえ板73をボルト72に挿通させて、これらを上下方向に積み重ねた状態で、上方からナット74をボルト72の雄ねじに螺合させて、このナット74によって押さえ板73を下方に押圧する。これにより、押さえ板73によって、弾性体76を下方に押圧する態様で、押さえ板73と固定板71との間に、一体とされた弾性体77と錘75と弾性体76を挟んで固定する。これにより、固定板71とボルト72と押さえ板73とナット74と錘75と弾性体76,77とが一体となった動吸振器70となる。この動吸振器70は、図示しないボルトによって、固定板71を、床板90を介して第1横梁31の上面31cに固定することで、床板90を介して間接に第1横梁31の上面31cに設けられている。
【0033】
本実施形態の鉄道車両1では、第1横梁31の下面31bに吊設されている電気機器60の振動に伴って、第1横梁31が共振したときに、第1横梁31に取り付けられている動吸振器70が、電気機器60の振動数と同等の固有振動数(具体的には、120Hz)で振動することで、第1横梁31(結合部材)の固有振動によって増幅された機器振動(電気機器60の振動)を低減することができる。
【0034】
従って、本実施形態の鉄道車両1では、床受け50を通じて客室床40に伝わる機器振動の大きさを低減することができる。これにより、機器振動に起因して発生する客室P内の騒音を低減することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、電気機器60を、防振ゴム部材65を介して、第1横梁31の下面31bに吊設しているので、電気機器60から第1横梁31に伝わる振動(主に、高周波帯域の振動)を低減することができる。従って、本実施形態の鉄道車両1では、動吸振器70による第1横梁31の振動の低減(低周波帯域における振動の低減)に加えて、防振ゴム部材65による第1横梁31の振動の低減(高周波帯域の振動の低減)を実現することができる。これにより、本実施形態の鉄道車両1では、広範囲の周波数帯域にわたって、電気機器60の振動に起因して発生する客室P内の騒音を低減することができる。
【0036】
ところで、鉄道車両1の台枠10は、車両幅方向DWに延びる複数の横梁30(第1横梁31を含む)の両端部が、車両幅方向DWの両端部に位置する一対の側梁20,20に支持された構造となっている(図1及び図2参照)。このため、第1横梁31に吊設されている電気機器60の振動に起因して第1横梁31が固有振動するときは、車両幅方向DWの中央部において最も大きく振動することになる。
【0037】
従って、従来、車両幅方向DWの中央部において車両幅方向DWに離間して配置された一対の中央床受け51,51を有する鉄道車両では、電気機器60の振動に起因して第1横梁31の固有振動(共振)が発生した場合、第1横梁31の車両幅方向DWの中央部において機器振動が大きく増幅され、この機器振動が中央床受け51を通じて客室床40に伝わることで、客室P内に騒音が発生し易くなっていた。
【0038】
これに対し、本実施形態の鉄道車両1では、第1横梁31の固有振動数と同等の固有振動数を有する動吸振器70(従って、第1横梁31の固有振動によって増幅された電気機器60の振動を低減する動吸振器70)を、車両幅方向DWについて一対の中央床受け51,51の間に設けている(図1図3参照)。このようにすることで、電気機器60の振動に起因して第1横梁31が固有振動した場合において、車両幅方向DWの中央部における大きな振動を効果的に低減することができる。これにより、機器振動が増幅されることを抑制できるので、機器振動に起因して発生する客室P内の騒音を効果的に低減することができる。
【0039】
また、前述のように、動吸振器70は、車両高さ方向DHに延びる中心軸部材であるボルト72を有する。そして、動吸振器70は、中心軸部材であるボルト72が、一対の中央床受け51,51の間のうち、車両幅方向DWについて各々の中央床受け51から等距離L1だけ離れて位置する中央位置CPに配置される態様で、第1横梁31に対して床板90を介して間接に設けられている。詳細には、動吸振器70の中心軸CA(ボルト72の中心軸に一致する)を、中央位置CPに配置している。なお、本実施形態の鉄道車両1では、第1横梁31上における中央位置CPは、第1横梁31の車両幅方向DWの中央位置と一致している。
【0040】
このようにすることで、電気機器60の振動に起因して第1横梁31が共振した場合において、車両幅方向DWの中央部における大きな振動をより一層低減することができる。これにより、機器振動が増幅されることを抑制できるので、機器振動に起因して発生する客室P内の騒音をより一層低減することができる。
【0041】
<ハンマリング試験>
次に、ハンマリング試験について説明する。本試験では、実施形態にかかる動吸振器70を設けた第1横梁31(測定対象物)を、インパルスハンマで加振して、120Hz(第1横梁31の固有振動数)におけるアクセレランスの値を求めた。また、比較形態として、動吸振器70を設けていない第1横梁31を、インパルスハンマで加振して、120Hz(第1横梁31の固有振動数)におけるアクセレランスの値を求めた。その後、比較形態にかかるアクセレランスの値を基準(=1)として、実施形態及び比較形態にかかるアクセレランスの比の値(アクセレランス比とする)を求めた。その結果を図4に示す。
【0042】
図4に示すように、実施形態では、アクセレランス比が約0.3となり、比較形態(アクセレランス比=1)に比べて、120Hz(第1横梁31の固有振動数)におけるアクセレランスの値が1/3以下となった。この結果より、第1横梁31の固有振動数と同等の固有振動数(具体的には、120Hz)を有する動吸振器70を、第1横梁31に設けることで、第1横梁31の固有振動の振動を大幅に低減することができると共に、第1横梁31の固有振動によって増幅された電気機器(第1横梁31に吊設されている電気機器60)の振動を低減することができるといえる。従って、本実施形態の鉄道車両1では、電気機器60が吊設されている第1横梁31の上面31cに対して、床板90を介して間接に動吸振器70を設けているので、電気機器60の振動に起因した第1横梁31の固有振動の振動を大幅に低減することができると共に、第1横梁31の固有振動によって増幅された電気機器60の振動を低減することができるといえる。
【0043】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0044】
例えば、実施形態の鉄道車両1では、第1横梁31を含む横梁30の上面31cに床板90を設け、電気機器60が吊設されている第1横梁31の上面31cに対して、床板90を介して間接に、動吸振器70を設けるようにした(図1参照)。しかしながら、第1横梁31を含む横梁30の上面31cに床板90を設けることなく、電気機器60が吊設されている第1横梁31の上面31cまたは下面31bに対して、直接に、動吸振器70を設けるようにしても良い。
【0045】
また、実施形態では、全ての床受け50と客室床40との間に防振ゴム部材55を配置して、全ての床受け50が防振ゴム部材55を介して客室床40を支持する構造を示した。しかしながら、防振ゴム部材55を、中央床受け51と客室床40との間にのみ配置し、中央床受け51以外の床受け50と客室床40との間には防振ゴム部材55を配置しないようにしても良い。すなわち、中央床受け51が防振ゴム部材55を介して客室床40を支持する一方、中央床受け51以外の床受け50は、客室床40を直接支持する構造としても良い。あるいは、床受け50と客室床40との間に防振ゴム部材55を配置することなく、全ての床受け50が、直接、客室床40を支持する構造としても良い。
【0046】
また、本実施形態では、結合部材が、一対の側梁20,20を結合する横梁30である例を示した。しかしながら、横梁30を設けることなく、結合部材を、一対の側梁20,20を結合する床部材(ダブルスキン構造の床部材)としても良い。このようにした場合でも、一対の側梁20,20を結合する床部材に、床部材の固有振動によって増幅された電気機器(床部材に吊設されている電気機器)の振動を低減する動吸振器を設けることで、床部材の固有振動によって増幅された電気機器の振動を低減することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 鉄道車両
10 台枠
20 側梁
30 横梁(結合部材)
31 第1横梁(結合部材)
40 客室床
50 床受け
51 中央床受け
60 電気機器(主変圧器)
65 防振ゴム部材
70 動吸振器
72 ボルト(中心軸部材)
75 錘
76,77 弾性体
80 座席
90 床板
CP 中央位置
DW 車両幅方向
DH 車両高さ方向
DL 車両長さ方向
P 客室
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の側梁を結合する結合部材と、
前記結合部材よりも上方に位置する客室床と、
前記結合部材と前記客室床との間に位置して前記客室床を支持する複数の床受けと、
前記結合部材の下面に吊設された電気機器と、を備える鉄道車両において、
前記電気機器が吊設されている前記結合部材に対して、直接または他部材を介して間接に、前記結合部材の固有振動によって増幅された前記電気機器の振動を低減する、鉄道車両の高さ方向に延びる中心軸部材を有し、前記中心軸部材に錘と該錘を支持する弾性体を上下方向に積み重ねた動吸振器が設けられている鉄道車両。
【請求項2】
一対の側梁を結合する結合部材と、
前記結合部材よりも上方に位置する客室床と、
前記結合部材と前記客室床との間に位置して前記客室床を支持する複数の床受けと、
前記結合部材の下面に吊設された電気機器と、を備える
鉄道車両において、
前記電気機器が吊設されている前記結合部材に対して、直接または他部材を介して間接に、前記結合部材の固有振動によって増幅された前記電気機器の振動を低減する動吸振器であって、前記結合部材の固有振動数と同等の固有振動数を有する前記動吸振器が設けられている鉄道車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鉄道車両であって、
前記電気機器は、防振ゴム部材を介して、前記結合部材の下面に吊設されている鉄道車両。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の鉄道車両であって、
複数の前記床受けは、前記鉄道車両の幅方向の中央部において、前記幅方向に離間して配置された一対の中央床受けを含み、
前記動吸振器は、前記幅方向について、一対の前記中央床受けの間に設けられている
鉄道車両。