(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099603
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】圧電振動デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20220628BHJP
H01L 23/04 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H01L23/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213454
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 悟
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC10
5J108CC11
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE14
5J108FF11
5J108GG03
5J108GG09
5J108GG14
5J108KK04
(57)【要約】
【課題】半田による浸食作用を抑制することが可能な圧電振動デバイスを提供する。
【解決手段】圧電振動デバイスにおいて、第2封止部材30の内部空間に面していない側の第2主面302には、半田を介して外部回路基板に電気的に接続される外部電極端子32が形成され、外部電極端子32,32は、パッケージ側面に形成された側面配線271,171,371、側面配線272,172,372を経由して、第1、第2励振電極111,112に電気的に接続されており、第7、第8側面配線371,372は、表面の金属膜が半田の濡れ性の低い少なくともTiを含む膜によって形成される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一主面に第1励振電極が形成され、前記基板の他主面に前記第1励振電極と対になる第2励振電極が形成された圧電振動板と、
前記圧電振動板の前記第1励振電極を覆う第1封止部材と、
前記圧電振動板の前記第2励振電極を覆う第2封止部材と、が設けられ、
前記第1封止部材と前記圧電振動板とが接合され、かつ前記第2封止部材と前記圧電振動板とが接合されることによって、前記第1励振電極と前記第2励振電極とを含む前記圧電振動板の振動部が気密封止された内部空間が設けられた圧電振動デバイスにおいて、
前記第2封止部材の前記内部空間に面していない側の主面には、半田を介して外部回路基板に電気的に接続される外部電極端子が形成され、
前記外部電極端子は、当該圧電振動デバイスのパッケージ側面に形成された側面配線に電気的に接続されており、前記側面配線の一部または全部には、前記半田に対する耐浸食構造が設けられていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記耐浸食構造を有する前記側面配線は、表面の金属膜が半田の濡れ性の低い金属によって形成されることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記耐浸食構造を有する前記側面配線は、少なくとも前記第2封止部材の側面に設けられていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項4】
請求項2または3に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記金属膜は、少なくともTiを含む膜であることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記圧電振動板、前記第1、第2封止部材が、ATカット水晶板であり、
前記側面配線が、ATカット水晶板のZ´軸方向に沿って形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子等の圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の動作周波数の高周波化や、パッケージの小型化(特に低背化)が進んでいる。そのため、高周波化やパッケージの小型化にともなって、圧電振動デバイス(例えば水晶振動子、水晶発振器等)も高周波化やパッケージの小型化への対応が求められている。
【0003】
この種の圧電振動デバイスでは、その筐体が略直方体のパッケージで構成されている。このパッケージは、例えばガラスや水晶からなる第1封止部材および第2封止部材と、例えば水晶からなり両主面に励振電極が形成された圧電振動板とから構成され、第1封止部材と第2封止部材とが圧電振動板を介して積層して接合される。そして、パッケージの内部(内部空間)に配された圧電振動板の振動部(励振電極)が気密封止されている(例えば、特許文献1)。以下、このような圧電振動デバイスの積層形態をサンドイッチ構造という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような圧電振動デバイスでは、圧電振動板の振動部の励振電極が、第2封止部材の内部空間に面していない側の主面に形成された外部電極端子に電気的に接続される。圧電振動デバイスを外部回路基板(実装基板)に搭載する場合、外部電極端子が半田を介して外部回路基板に電気的に接続されるようになっている。しかし、半田は、Sn(スズ)を含むため、励振電極から外部電極端子までの電気的な導通経路に、Au(金)が含まれる場合、半田による浸食作用によって、導通抵抗の増加や、断線等の不具合が発生することが懸念される。同様の問題点は、例えば第1封止部材の内部空間に面していない側の主面に形成されたアース接続用電極から、外部電極端子までの電気的な導通経路に、Au(金)が含まれる場合にも懸念される。
【0006】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、半田による浸食作用を抑制することが可能な圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、基板の一主面に第1励振電極が形成され、前記基板の他主面に前記第1励振電極と対になる第2励振電極が形成された圧電振動板と、前記圧電振動板の前記第1励振電極を覆う第1封止部材と、前記圧電振動板の前記第2励振電極を覆う第2封止部材と、が設けられ、前記第1封止部材と前記圧電振動板とが接合され、かつ前記第2封止部材と前記圧電振動板とが接合されることによって、前記第1励振電極と前記第2励振電極とを含む前記圧電振動板の振動部が気密封止された内部空間が設けられた圧電振動デバイスにおいて、前記第2封止部材の前記内部空間に面していない側の主面には、半田を介して外部回路基板に電気的に接続される外部電極端子が形成され、前記外部電極端子は、当該圧電振動デバイスのパッケージ側面に形成された側面配線に電気的に接続されており、前記側面配線の一部または全部には、前記半田に対する耐浸食構造が設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、パッケージ側面の側面配線の一部または全部に設けられた耐浸食構造により、側面配線における半田の浸食経路を遮断することができるので、例えば第1、第2励振電極やアース接続用電極への側面配線を経由した導通経路の半田の濡れ広がりを抑制することができ、第1、第2励振電極やアース接続用電極の半田による浸食を抑制することができる。また、側面配線の半田浸食による導通抵抗の増加や、断線等の発生を抑制することができる。
【0009】
上記構成において、前記耐浸食構造を有する前記側面配線は、表面の金属膜が半田の濡れ性の低い金属によって形成されることが好ましい。この構成によれば、側面配線の表面の金属膜が半田の濡れ性の低い金属によって形成されるため、側面配線における半田の浸食経路を遮断することができるので、例えば第1、第2励振電極やアース接続用電極への導通経路の半田の濡れ広がりを抑制することができ、第1、第2励振電極やアース接続用電極の半田による浸食を抑制することができる。また、側面配線の半田浸食による導通抵抗の増加や、断線等の発生を抑制することができる。
【0010】
上記構成において、前記耐浸食構造を有する前記側面配線は、少なくとも前記第2封止部材の側面に設けられていることが好ましい。この構成によれば、パッケージ側面のうちの少なくとも第2封止部材の側面において、半田の浸食経路を遮断することができ、例えば第1、第2励振電極やアース接続用電極の半田による浸食を抑制することができる。
【0011】
上記構成において、前記金属膜は、少なくともTiを含む膜であることが好ましい。この構成によれば、パッケージ側面上に形成された金属膜の表面に、少なくともTiを含む膜が形成されるので、半田の濡れ性の低いTiを含む膜が露出された構成になっている。これにより、パッケージ側面における半田の浸食経路を遮断することができ、例えば第1、第2励振電極やアース接続用電極の半田による浸食を抑制することができる。
【0012】
上記構成において、前記圧電振動板、前記第1、第2封止部材が、ATカット水晶板であり、前記側面配線が、ATカット水晶板のZ´軸方向に沿って形成されていることが好ましい。この上記構成によれば、断線が生じにくい安定した側面配線を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の圧電振動デバイスによれば、パッケージ側面の側面配線の一部または全部に設けられた耐浸食構造により、側面配線における半田の浸食経路を遮断することができるので、例えば第1、第2励振電極やアース接続用電極への導通経路の半田の濡れ広がりを抑制することができ、第1、第2励振電極やアース接続用電極の半田による浸食を抑制することができる。また、側面配線の半田浸食による導通抵抗の増加や、断線等の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる水晶振動子の各構成を模式的に示した概略構成図である。
【
図2】
図2は、水晶振動子の第1封止部材の第1主面側の概略平面図である。
【
図3】
図3は、水晶振動子の第1封止部材の第2主面側の概略平面図である。
【
図4】
図4は、水晶振動子の水晶振動板の第1主面側の概略平面図である。
【
図5】
図5は、水晶振動子の水晶振動板の第2主面側の概略平面図である。
【
図6】
図6は、水晶振動子の第2封止部材の第1主面側の概略平面図である。
【
図7】
図7は、水晶振動子の第2封止部材の第2主面側の概略平面図である。
【
図8】
図8は、水晶振動子の-X方向側の概略側面図である。
【
図9】
図9は、水晶振動子の+X方向側の概略側面図である。
【
図10】
図10は、水晶振動子の第2封止部材の概略断面図である。
【
図11】
図11は、変形例1にかかる水晶振動子の-X方向側の概略側面図である。
【
図12】
図12は、変形例1にかかる水晶振動子の+X方向側の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を適用する圧電振動デバイスが水晶振動子である場合について説明する。
【0016】
まず、本実施形態にかかる水晶振動子100の基本的な構造を説明する。水晶振動子100は、
図1に示すように、水晶振動板(圧電振動板)10、第1封止部材20、および第2封止部材30を備えて構成されている。この水晶振動子100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造のパッケージが構成される。すなわち、水晶振動子100においては、水晶振動板10の両主面のそれぞれに第1封止部材20および第2封止部材30が接合されることでパッケージの内部空間(キャビティ)が形成され、この内部空間に振動部11(
図4、
図5参照)が気密封止される。
【0017】
本実施形態にかかる水晶振動子100は、例えば、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、パッケージでは、キャスタレーションを形成せずに、後述する側面配線等を用いて電極の導通を図っている。また、水晶振動子100は、外部に設けられる外部回路基板(図示省略)に半田を介して電気的に接続されるようになっている。
【0018】
次に、上記した水晶振動子100における水晶振動板10、第1封止部材20および第2封止部材30の各部材について、
図1~
図7を用いて説明する。なお、ここでは、接合されていないそれぞれ単体として構成されている各部材について説明を行う。
図2~
図7は、水晶振動板10、第1封止部材20および第2封止部材30のそれぞれの一構成例を示しているに過ぎず、これらは本発明を限定するものではない。
【0019】
水晶振動板10は、
図4、
図5に示すように、水晶からなる圧電基板であって、その両主面(第1主面101,第2主面102)が平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。本実施形態では、水晶振動板10として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。
図4、
図5に示す水晶振動板10では、水晶振動板10の両主面101,102が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板10の短手方向(短辺方向)に平行な方向がX軸方向とされ、水晶振動板10の長手方向(長辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされている。なお、ATカットは、人工水晶の3つの結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)、および光学軸(Z軸)のうち、Z軸に対してX軸周りに35°15′だけ傾いた角度で切り出す加工手法である。ATカット水晶板では、X軸は水晶の結晶軸に一致する。Y´軸およびZ´軸は、水晶の結晶軸のY軸およびZ軸からそれぞれ概ね35°15′傾いた(この切断角度はATカット水晶振動板の周波数温度特性を調整する範囲で多少変更してもよい)軸に一致する。Y´軸方向およびZ´軸方向は、ATカット水晶板を切り出すときの切り出し方向に相当する。
【0020】
水晶振動板10の両主面101,102には、一対の励振電極(第1励振電極111,第2励振電極112)が形成されている。水晶振動板10は、略矩形に形成された振動部11と、この振動部11の外周を取り囲む外枠部12と、振動部11と外枠部12とを連結することで振動部11を保持する保持部13とを有している。すなわち、水晶振動板10は、振動部11、外枠部12および保持部13が一体的に設けられた構成となっている。保持部13は、振動部11の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部のみから、-Z´方向に向けて外枠部12まで延びている(突出している)。そして、振動部11と外枠部12との間には、水晶振動板10を切り抜いて形成された切り抜き部10aが設けられている。本実施形態では、水晶振動板10には、振動部11と外枠部12とを連結する保持部13が1つのみ設けられており、切り抜き部10aが振動部11の外周囲を囲うように連続して形成されている。
【0021】
第1励振電極111は振動部11の第1主面101側に設けられ、第2励振電極112は振動部11の第2主面102側に設けられている。第1励振電極111,第2励振電極112には、これらの励振電極を外部電極端子に接続するための引出配線(第1引出配線113,第2引出配線114)が接続されている。第1引出配線113は、第1励振電極111から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン14に繋がっている。第2引出配線114は、第2励振電極112から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン15に繋がっている。
【0022】
水晶振動板10の両主面(第1主面101,第2主面102)には、水晶振動板10を第1封止部材20および第2封止部材30に接合するための振動板側封止部がそれぞれ設けられている。第1主面101の振動板側封止部としては振動板側第1接合パターン121が形成されており、第2主面102の振動板側封止部としては振動板側第2接合パターン122が形成されている。振動板側第1接合パターン121および振動板側第2接合パターン122は、外枠部12に設けられており、平面視で環状に形成されている。振動板側第1接合パターン121の外周縁は、水晶振動板10(外枠部12)の第1主面101の外周縁に近接して設けられている。振動板側第2接合パターン122の外周縁は、水晶振動板10(外枠部12)の第2主面102の外周縁に近接して設けられている。
【0023】
水晶振動板10の第1主面101には、振動板側第1接合パターン121の外周側に、積層間配線用接合パターン181,182が形成されている。積層間配線用接合パターン181,182は、振動板側第1接合パターン121に接続されておらず、振動板側第1接合パターン121とは所定の間隔を隔てて設けられている。積層間配線用接合パターン181は、水晶振動板10の第1主面101の-X方向側かつ+Z´方向側の部分に設けられており、後述する第1側面配線171に接続されている。積層間配線用接合パターン182は、水晶振動板10の第1主面101の+X方向側かつ-Z´方向側の部分に設けられており、後述する第2側面配線172に接続されている。
【0024】
また、水晶振動板10の第2主面102には、振動板側第2接合パターン122の外周側に、積層間配線用接合パターン183,184が形成されている。積層間配線用接合パターン183,184は、振動板側第2接合パターン122に接続されておらず、振動板側第2接合パターン122とは所定の間隔を隔てて設けられている。積層間配線用接合パターン183は、水晶振動板10の第2主面102の-X方向側かつ+Z´方向側の部分に設けられており、後述する第1側面配線171に接続されている。積層間配線用接合パターン184は、水晶振動板10の第2主面102の+X方向側かつ-Z´方向側の部分に設けられており、後述する第2側面配線172に接続されている。
【0025】
水晶振動板10には、
図4、
図5に示すように、第1主面101と第2主面102との間を貫通する1つのスルーホールが形成されている。具体的には、第1スルーホール162は、外枠部12であって、振動板側第1接合パターン121および振動板側第2接合パターン122の内周側に設けられている。また、第1スルーホール162は、振動部11のZ´軸方向の一方側(
図4、
図5では、-Z´方向側)に設けられている。第1スルーホール162の周囲には、第1主面101側では接続用接合パターン124が、第2主面102側では接続用接合パターン15が形成されている。
【0026】
第1スルーホール162には、第1主面101と第2主面102とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、第1スルーホール162の内壁面に沿って形成されている。また、第1スルーホール162の中央部分は、第1主面101と第2主面102との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。なお、第1主面101および第2主面102の電極間の導通を、スルーホールの貫通電極以外の手段(例えば外枠部12の内壁面等に形成された配線)によって行ってもよい。
【0027】
水晶振動板10の側面には、
図4、
図5に示すように、2つの側面配線が形成されている。具体的には、水晶振動板10の-X方向側の側面103に、第1側面配線171が形成されている。水晶振動板10の+X方向側の側面104に、第2側面配線172が形成されている。
【0028】
第1側面配線171は、水晶振動板10の-X方向側の側面103の+Z´方向側の部分に形成されている。第1側面配線171は、水晶振動板10の第1主面101に設けられた積層間配線用接合パターン181に接続されている。第1側面配線171は、水晶振動板10の第2主面202に設けられた積層間配線用接合パターン183に接続されている。
【0029】
第2側面配線172は、水晶振動板10の+X方向側の側面104の-Z´方向側の部分に形成されている。第2側面配線172は、水晶振動板10の第1主面101に設けられた積層間配線用接合パターン182に接続されている。第2側面配線172は、水晶振動板10の第2主面202に設けられた積層間配線用接合パターン184に接続されている。
【0030】
また、水晶振動板10の外枠部12の内壁面には、
図4、
図5に示すように、2つの内部配線が形成されている。具体的には、水晶振動板10の外枠部12の-X方向側の内壁面105に、第1内部配線173が形成されている。水晶振動板10の外枠部12の+X方向側の内壁面106に、第2内部配線174が形成されている。
【0031】
第1内部配線173は、外枠部12の-X方向側の内壁面105の中央部に所定の幅で設けられている。第1内部配線173は、水晶振動板10の第1主面101に設けられた振動板側第1接合パターン121に接続されている。第1内部配線173は、水晶振動板10の第2主面102に設けられた振動板側第2接合パターン122に接続されている。
【0032】
第2内部配線174は、外枠部12の+X方向側の内壁面106の中央部に所定の幅で設けられている。第2内部配線174は、水晶振動板10の第1主面101に設けられた振動板側第1接合パターン121に接続されている。第2内部配線174は、水晶振動板10の第2主面102に設けられた振動板側第2接合パターン122に接続されている。第1内部配線173および第2内部配線174は、振動部11を挟んで互いに対向するように配置されている。
【0033】
第1封止部材20は、
図2、
図3に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第1封止部材20の第2主面202(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第1封止部材20は振動部を有するものではないが、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用いることで、水晶振動板10と第1封止部材20の熱膨張率を同じにすることができ、水晶振動子100における熱変形を抑制することができる。また、第1封止部材20におけるX軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとされている。
【0034】
第1封止部材20の第1主面201(水晶振動板10に面しない外方の主面)には、
図2に示すように、配線用の第1、第2端子22,23と、シールド用(アース接続用)の金属膜28とが形成されている。配線用の第1、第2端子22,23は、水晶振動板10の第1、第2励振電極111,112と、第2封止部材30の外部電極端子32とを電気的に接続するための配線として設けられている。第1、第2端子22,23は、Z´軸方向の両端部に設けられており、第1端子22が、+Z´方向側に設けられ、第2端子23が、-Z´方向側に設けられている。第1、第2端子22,23は、X軸方向に延びるように形成されている。第1端子22および第2端子23は、略矩形状に形成されている。第1端子22は、第1主面201の-X方向側の端部まで延びており、後述する第3側面配線271に接続されている。第2端子23は、第1主面201の+X方向側の端部まで延びており、後述する第4側面配線272に接続されている。
【0035】
金属膜28は、第1、第2端子22,23の間に設けられており、第1、第2端子22,23とは所定の間隔を隔てて配置されている。金属膜28は、第1封止部材20の第1主面201の第1、第2端子22,23が形成されていない領域のうち、ほとんど全ての領域に設けられている。金属膜28は、第1封止部材20の第1主面201の+X方向の端部から-X方向の端部にわたって設けられている。金属膜28は、第1主面201の-X方向の端部まで延びており、後述する第5側面配線273に接続されている。また、金属膜28は、第1主面201の+X方向の端部まで延びており、後述する第6側面配線274に接続されている。
【0036】
第1封止部材20には、
図2、
図3に示すように、第1主面201と第2主面202との間を貫通する2つのスルーホールが形成されている。具体的には、第2,第3スルーホール212,213が、
図2、
図3の+Z´方向および-Z´方向にそれぞれ設けられている。
【0037】
第2,第3スルーホール212,213には、第1主面201と第2主面202とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、第2,第3スルーホール212,213それぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第2,第3スルーホール212,213それぞれの中央部分は、第1主面201と第2主面202との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。そして、第2スルーホール212の貫通電極が、第1端子22に電気的に接続されている。第3スルーホール213の貫通電極が、第2端子23に電気的に接続されている。
【0038】
第1封止部材20の第2主面202には、水晶振動板10に接合するための封止部材側第1封止部としての封止部材側第1接合パターン24が形成されている。封止部材側第1接合パターン24は、平面視で環状に形成されている。封止部材側第1接合パターン24の外周縁は、第1封止部材20の第2主面202の外周縁に近接して設けられている。また、第1封止部材20の第2主面202では、第2スルーホール212の周囲には接続用接合パターン261が形成されており、第3スルーホール213の周囲には接続用接合パターン262が形成されている。さらに、接続用接合パターン261に対して第1封止部材20の長軸方向の反対側(-Z´方向側)には接続用接合パターン263が形成されており、接続用接合パターン261と接続用接合パターン263とは配線パターン27によって接続されている。
【0039】
また、第1封止部材20の第2主面202には、封止部材側第1接合パターン24の外周側に、積層間配線用接合パターン281,282が形成されている。積層間配線用接合パターン281,282は、封止部材側第1接合パターン24に接続されておらず、封止部材側第1接合パターン24とは所定の間隔を隔てて設けられている。積層間配線用接合パターン281は、第1封止部材20の第2主面202の-X方向側かつ+Z´方向側の部分に設けられており、後述する第3側面配線271に接続されている。積層間配線用接合パターン282は、第1封止部材20の第2主面202の+X方向側かつ-Z´方向側の部分に設けられており、後述する第4側面配線272に接続されている。
【0040】
第1封止部材20の側面には、
図2、
図3に示すように、4つの側面配線が形成されている。具体的には、第1封止部材20の-X方向側の側面203に、第3側面配線271および第5側面配線273が形成されている。第1封止部材20の+X方向側の側面204に、第4側面配線272および第6側面配線274が形成されている。
【0041】
第3側面配線271は、第1封止部材20の-X方向側の側面203の+Z´方向側の部分に形成されている。第3側面配線271は、第1封止部材20の第1主面201に設けられた第1端子22に接続されている。第3側面配線271は、第1封止部材20の第2主面202に設けられた積層間配線用接合パターン281に接続されている。
【0042】
第4側面配線272は、第1封止部材20の+X方向側の側面204の-Z´方向側の部分に形成されている。第4側面配線272は、第1封止部材20の第1主面201に設けられた第2端子23に接続されている。第4側面配線272は、第1封止部材20の第2主面202に設けられた積層間配線用接合パターン282に接続されている。
【0043】
第5側面配線273は、第1封止部材20の-X方向側の側面203の-Z´方向側の部分に形成されている。第5側面配線273は、第1封止部材20の第1主面201に設けられた金属膜28に接続されている。第5側面配線273は、第1封止部材20の第2主面202に設けられた封止部材側第1接合パターン24に接続されている。
【0044】
第6側面配線274は、第1封止部材20の+X方向側の側面204の+Z´方向側の部分に形成されている。第6側面配線274は、第1封止部材20の第1主面201に設けられた金属膜28に接続されている。第6側面配線274は、第1封止部材20の第2主面202に設けられた封止部材側第1接合パターン24に接続されている。
【0045】
第2封止部材30は、
図6、
図7に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第2封止部材30の第1主面301(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第2封止部材30においても、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用い、X軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとすることが望ましい。
【0046】
この第2封止部材30の第1主面301には、水晶振動板10に接合するための封止部材側第2封止部としての封止部材側第2接合パターン31が形成されている。封止部材側第2接合パターン31は、平面視で環状に形成されている。封止部材側第2接合パターン31の外周縁は、第2封止部材30の第1主面301の外周縁に近接して設けられている。
【0047】
また、第2封止部材30の第1主面301には、封止部材側第2接合パターン31の外周側に、積層間配線用接合パターン381,382が形成されている。積層間配線用接合パターン381,382は、封止部材側第2接合パターン31に接続されておらず、封止部材側第2接合パターン31とは所定の間隔を隔てて設けられている。積層間配線用接合パターン381は、第2封止部材30の第1主面301の-X方向側かつ+Z´方向側の部分に設けられており、後述する第7側面配線371に接続されている。積層間配線用接合パターン382は、第2封止部材30の第1主面301の+X方向側かつ-Z´方向側の部分に設けられており、後述する第8側面配線372に接続されている。
【0048】
第2封止部材30の第2主面302(水晶振動板10に面しない外方の主面)には、水晶振動子100の外部に設けられる外部回路基板に電気的に接続する4つの外部電極端子32が設けられている。外部電極端子32は、第2封止部材30の第2主面302の4隅(隅部)にそれぞれ位置する。外部電極端子32は、平面視で、水晶振動子100のパッケージの内部空間に沿ってそれぞれ設けられており、略L字状に形成されている。外部電極端子32は、平面視で、上述した水晶振動板10の外枠部12と重複する位置に設けられている。
【0049】
第2封止部材30の側面には、
図6、
図7に示すように、4つの側面配線が形成されている。具体的には、第2封止部材30の-X方向側の側面303に、第7側面配線371および第9側面配線373が形成されている。第2封止部材30の+X方向側の側面304に、第8側面配線372および第10側面配線374が形成されている。
【0050】
第7側面配線371は、第2封止部材30の-X方向側の側面303の+Z´方向側の部分に形成されている。第7側面配線371は、第2封止部材30の第1主面301に設けられた積層間配線用接合パターン381に接続されている。第7側面配線371は、第2封止部材30の第2主面302に設けられた外部電極端子32に接続されている。
【0051】
第8側面配線372は、第2封止部材30の+X方向側の側面304の-Z´方向側の部分に形成されている。第8側面配線372は、第2封止部材30の第1主面301に設けられた積層間配線用接合パターン382に接続されている。第8側面配線372は、第2封止部材30の第2主面302に設けられた外部電極端子32に接続されている。
【0052】
第9側面配線373は、第2封止部材30の-X方向側の側面303の-Z´方向側の部分に形成されている。第9側面配線373は、第2封止部材30の第1主面301に設けられた封止部材側第2接合パターン31に接続されている。第9側面配線373は、第2封止部材30の第2主面302に設けられた外部電極端子32に接続されている。
【0053】
第10側面配線374は、第2封止部材30の+X方向側の側面304の+Z´方向側の部分に形成されている。第10側面配線374は、第2封止部材30の第1主面301に設けられた封止部材側第2接合パターン31に接続されている。第10側面配線374は、第2封止部材30の第2主面302に設けられた外部電極端子32に接続されている。
【0054】
上記構成の水晶振動板10、第1封止部材20、および第2封止部材30を含む水晶振動子100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが振動板側第1接合パターン121および封止部材側第1接合パターン24を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが振動板側第2接合パターン122および封止部材側第2接合パターン31を重ね合わせた状態で拡散接合されて、
図1、
図8、
図9に示すサンドイッチ構造のパッケージが製造される。これにより、パッケージの内部空間、つまり、振動部11の収容空間が気密封止される。
【0055】
水晶振動子100において、水晶振動板10の振動部11を気密封止する封止部(シールパス)115,116は、平面視で、環状に形成されている。シールパス115は、上述した振動板側第1接合パターン121および封止部材側第1接合パターン24の拡散接合(Au-Au接合)によって形成され、シールパス115の内縁形状が略八角形に形成されている。シールパス115の外縁形状は略矩形に形成され、シールパス115の外周縁がパッケージの外周縁に近接して配置される。同様に、シールパス116は、上述した振動板側第2接合パターン122および封止部材側第2接合パターン31の拡散接合(Au-Au接合)によって形成され、シールパス116の内縁形状が略八角形に形成されている。シールパス116の外縁形状は略矩形に形成され、シールパス116の外周縁がパッケージの外周縁に近接して配置される。
【0056】
このように拡散接合によってシールパス115,116が形成された水晶振動子100において、第1封止部材20と水晶振動板10とは、1.00μm以下のギャップを有し、第2封止部材30と水晶振動板10とは、1.00μm以下のギャップを有する。つまり、第1封止部材20と水晶振動板10との間のシールパス115の厚みが、1.00μm以下であり、第2封止部材30と水晶振動板10との間のシールパス116の厚みが、1.00μm以下(具体的には、本実施形態のAu-Au接合では0.15μm~1.00μm)である。なお、比較例として、Snを用いた従来の金属ペースト封止材では、5μm~20μmとなる。
【0057】
また、上述した接続用接合パターン同士、および積層間配線用接合パターン同士も重ね合わせられた状態で拡散接合される。そして、接続用接合パターン同士、および積層間配線用接合パターン同士の接合により、水晶振動子100では、第1励振電極111、第2励振電極112と、外部電極端子32との間の電気的導通が得られるようになっている。具体的には、第1励振電極111は、第1引出配線113、配線パターン27、第2スルーホール212、第1端子22、第3側面配線271、第1積層間配線117、第1側面配線171、第2積層間配線118、および第7側面配線371を順に経由して、外部電極端子32に接続される。第1積層間配線117は、第1封止部材20と水晶振動板10との積層間に配置される配線である。この第1積層間配線117は、第1封止部材20の第2主面202に形成された積層間配線用接合パターン281と、水晶振動板10の第1主面101に形成された積層間配線用接合パターン181との拡散接合によって形成される。
図8に示すように、第1積層間配線117の+Z´方向側の端部に、第3側面配線271が接続され、第1積層間配線117の-Z´方向側の端部に、第1側面配線171が接続されている。第2積層間配線118は、水晶振動板10と第2封止部材30との積層間に配置される配線である。この第2積層間配線118は、水晶振動板10の第2主面102に形成された積層間配線用接合パターン183と、第2封止部材30の第1主面301に形成された積層間配線用接合パターン381との拡散接合によって形成される。
図8に示すように、第2積層間配線118の-Z´方向側の端部に、第1側面配線171が接続され、第2積層間配線118の+Z´方向側の端部に、第7側面配線371が接続されている。
【0058】
また、第2励振電極112は、第2引出配線114、第1スルーホール162、第3スルーホール213、第2端子23、第4側面配線272、第3積層間配線119、第2側面配線172、第4積層間配線120、および第8側面配線372を順に経由して、外部電極端子32に接続される。第3積層間配線119は、第1封止部材20と水晶振動板10との積層間に配置される配線である。この第3積層間配線119は、第1封止部材20の第2主面202に形成された積層間配線用接合パターン282と、水晶振動板10の第1主面101に形成された積層間配線用接合パターン182との拡散接合によって形成される。
図9に示すように、第3積層間配線119の-Z´方向側の端部に、第4側面配線272が接続され、第3積層間配線119の+Z´方向側の端部に、第2側面配線172が接続されている。第4積層間配線120は、水晶振動板10と第2封止部材30との積層間に配置される配線である。この第4積層間配線120は、水晶振動板10の第2主面102に形成された積層間配線用接合パターン184と、第2封止部材30の第1主面301に形成された積層間配線用接合パターン382との拡散接合によって形成される。
図9に示すように、第4積層間配線120の+Z´方向側の端部に、第2側面配線172が接続され、第4積層間配線120の-Z´方向側の端部に、第8側面配線372が接続されている。
【0059】
さらに、金属膜28は、第5側面配線273、シールパス115、第1内部配線173、シールパス116、第9側面配線373を順に経由して、アース接続(グランド接続、外部電極端子32の一部を利用)されている。同様に、金属膜28は、第6側面配線274、シールパス115、第2内部配線174、シールパス116、第10側面配線374を順に経由して、アース接続(グランド接続、外部電極端子32の一部を利用)されている。
【0060】
本実施形態では、第1、第2励振電極111,112と、外部電極端子32,32との間の電気的な導通経路は、環状のシールパス115,116には電気的に接続されないようになっている。
【0061】
具体的には、平面視で、環状のシールパス115,116の内方において、第1励振電極111が、第2スルーホール212の貫通電極を介して、第1封止部材20の第1主面201の第1端子22に電気的に接続されている。第1端子22は、平面視で、環状のシールパス115,116の内方と外方に跨って配置されている。そして、平面視で、環状のシールパス115,116の外方において、第1端子22が、水晶振動子100のパッケージ側面に形成された側面配線271,171,371を経由して、第2封止部材30の第2主面302の外部電極端子32に電気的に接続されている。このような第1励振電極111と、外部電極端子32との間の電気的な導通経路は、環状のシールパス115,116には電気的に接続されていない。
【0062】
同様に、平面視で、環状のシールパス115,116の内方において、第2励振電極112が、第1スルーホール162の貫通電極および第3スルーホール213の貫通電極を介して、第1封止部材20の第1主面201の第2端子23に電気的に接続されている。第2端子23は、平面視で、環状のシールパス115,116の内方と外方に跨って配置されている。そして、平面視で、環状のシールパス115,116の外方において、第2端子23が、水晶振動子100のパッケージ側面に形成された側面配線272,172,372を経由して、第2封止部材30の第2主面302の外部電極端子32に電気的に接続されている。このような第2励振電極112と、外部電極端子32との間の電気的な導通経路は、環状のシールパス115,116には電気的に接続されていない。
【0063】
水晶振動子100において、上述した各種接合パターンは、複数の層が水晶板上に積層されてなり、その最下層側からTi(チタン)層とAu(金)層とが蒸着またはスパッタリングにより形成されているものとすることが好ましい。また、水晶振動子100に形成される他の配線や電極も、接合パターンと同一の構成とすれば、接合パターンや配線および電極を同時にパターニングでき、好ましい。
【0064】
本実施形態では、上記構成の水晶振動子100において、第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372からAu膜の一部または全部が除去されており、第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372がAu以外の導電性金属によって導通を行う構成になっているので、半田に対する耐浸食構造を有している。以下、この点について詳細に説明する。
【0065】
水晶振動子100の第2封止部材30の内部空間に面していない側の第2主面302には、半田を介して外部回路基板に電気的に接続される外部電極端子32が形成されている。外部電極端子32は、水晶振動子100のパッケージ側面に形成された側面配線371,171,271を経由して、第1励振電極111に電気的に接続されている。また、外部電極端子32は、水晶振動子100のパッケージ側面に形成された側面配線372,172,272を経由して、第2励振電極112に電気的に接続されている。そして、第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372に、半田に対する耐浸食構造が設けられている。
【0066】
本実施形態の耐浸食構造について、
図10を参照して説明する。なお、
図10では、第2封止部材30の-X方向側の側面303の第7側面配線371に設けられた耐浸食構造のみを示しているが、第2封止部材30の+X方向側の側面304の第8側面配線372にも同様の耐浸食構造が設けられている。
【0067】
図10に示すように、第2封止部材30の-X方向側の側面303に第7側面配線371が形成されている。第7側面配線371によって、第2封止部材30の第2主面302に形成された外部電極端子32と、第2封止部材30の第1主面301に形成された第2積層間配線118とが電気的に接続されている。
【0068】
第7側面配線371は、第2封止部材30の-X方向側の側面303上に、蒸着またはスパッタリングにより成膜された第1の導電性金属からなる第1金属膜371aと、この第1金属膜371a上に、蒸着またはスパッタリングにより成膜された第2の導電性金属からなる第2金属膜371bとを有する構成になっている。
【0069】
外部電極端子32は、第2封止部材30の第2主面302上に、蒸着またはスパッタリングにより成膜された第1の導電性金属からなる第1金属膜32aと、この第1金属膜32a上に、蒸着またはスパッタリングにより成膜された第2の導電性金属からなる第2金属膜32bと、この第2金属膜32b上に、例えば蒸着により成膜されたAu(金)からなるAu膜32cとを有する構成になっている。
【0070】
第2積層間配線118は、第2封止部材30の第1主面301に設けられた積層間配線用接合パターン381と、水晶振動板10の第2主面202に設けられた積層間配線用接合パターン183とが接合することによって形成される。Au膜の除去が、第2積層間配線118の形成前(接合前)に、ウエハの状態の第2封止部材30に対して行われるため、
図10では、第2積層間配線118の形成前(接合前)の積層間配線用接合パターン381のみを図示している。積層間配線用接合パターン381は、第2封止部材30の第1主面301上に、蒸着またはスパッタリングにより成膜された第1の導電性金属からなる第1金属膜381aと、この第1金属膜381a上に、蒸着またはスパッタリングにより成膜されたAu(金)からなるAu膜381cとを有する構成になっている。
【0071】
本実施形態では、第1の導電性金属として、Ti(チタン)が用いられ、第2の導電性金属として、NiTi(ニッケル・チタン)が用いられている。なお、上述の第1、第2の導電性金属は一例であって、上記以外の導電性金属を用いてもよい。また、上述した第7側面配線371、外部電極端子32、および積層間配線用接合パターン381の多層構造は一例であって、各電極の層数は特に限定されない。例えば、積層間配線用接合パターン381を、外部電極端子32と同様に、第2金属膜を有する3層構造としてもよいし、あるいは、外部電極端子32を、積層間配線用接合パターン381と同様に、第2金属膜を有しない2層構造としてもよい。
【0072】
積層間配線用接合パターン381の第1金属膜381aと、第7側面配線371の第1金属膜371aと、外部電極端子32の第1金属膜32aとが一体的に形成されている。また、第7側面配線371の第2金属膜371bと、外部電極端子32の第2金属膜32bとが一体的に形成されている。
【0073】
一方、積層間配線用接合パターン381のAu膜381cと、外部電極端子32のAu膜32cとは一体的に形成されておらず、第2封止部材30の-X方向側の側面303において遮断されている。第7側面配線371は、Au以外の導電性金属によって、積層間配線用接合パターン381と、外部電極端子32とが導通される構成になっている。この場合、第7側面配線371は、第2封止部材30の-X方向側の側面303に形成されたAu膜が除去されることによって形成することが可能である。つまり、第2封止部材30の-X方向側の側面303にもAu膜を予め形成しておき、このAu膜を、積層間配線用接合パターン381のAu膜381cおよび外部電極端子32のAu膜32cと一体的に形成する。そして、第2封止部材30の-X方向側の側面303のAu膜を、例えばメタルエッチングによって除去することにより、Au膜を含まない第7側面配線371が形成される。このようにして、Au膜が除去された第7側面配線371が、第2封止部材30の-X方向側の側面303に形成される。Au膜の除去は、ウエハの状態の第2封止部材30に対して行われ、第2封止部材30が水晶振動板10と接合される前に行われる。
【0074】
なお、
図10に示すように、第2封止部材30の-X方向側の側面303のAu膜の全部を除去してもよいし、第2封止部材30の-X方向側の側面303のAu膜の一部を除去してもよい。
【0075】
本実施形態では、第7側面配線371からAu膜の一部または全部が除去されており、第7側面配線371がAu以外の導電性金属によって導通を行う構成になっているので、半田対する耐浸食性を有する。
【0076】
詳細には、水晶振動子100を外部回路基板に搭載する場合、一般的には、半田が用いられ、半田は、第2封止部材30の外部電極端子32と外部回路基板との間に介在される。しかし、半田は、Sn(スズ)を含むため、第7側面配線371がAu膜を有する場合、このAu膜に沿って第7側面配線371内に半田が濡れ広がるおそれがある。このため、半田の浸食作用によって、Au膜を構成するAuが半田に拡散し、導通抵抗の増加や、断線等の不具合が発生することが懸念される。このように、第7側面配線371がAu膜によって導通を行う構成の場合、このAu膜が半田の浸食経路になる可能性がある。
【0077】
そこで、本実施形態では、第7側面配線371において、半田の浸食経路になり得るAu膜を遮断し、Au以外の導電性金属で形成された第1金属膜371aによって、第2封止部材30の第1主面301の積層間配線用接合パターン381と、第2主面302の外部電極端子32とを導通するようにしている。このように、第7側面配線371に設けられた耐浸食構造により、第7側面配線371における半田の浸食経路を遮断することができるので、第1励振電極111への導通経路の半田の濡れ広がりを抑制することができ、第1励振電極111の半田による浸食を抑制することができる。また、第7側面配線371の半田浸食による導通抵抗の増加や、断線等の発生を抑制することができる。
【0078】
同様に、第8側面配線372に設けられた耐浸食構造により、第8側面配線372における半田の浸食経路を遮断することができるので、第2励振電極112への導通経路の半田の濡れ広がりを抑制することができ、第2励振電極112の半田による浸食を抑制することができる。また、第8側面配線372の半田浸食による導通抵抗の増加や、断線等の発生を抑制することができる。
【0079】
以上のように、本実施形態では、第7、第8側面配線371,372の表面の金属膜が、半田の濡れ性の低い金属(この場合、NiTi)によって形成されている。第7、第8側面配線371,372の表面の金属膜が、少なくともTiを含む膜によって形成され、半田の濡れ性の低いTiを含む膜が露出された構成になっている。これにより、第7、第8側面配線371,372における半田の浸食経路を遮断することができるので、第1、第2励振電極111,112への導通経路の半田の濡れ広がりを抑制することができ、第1、第2励振電極111,112の半田による浸食を抑制することができる。また、第7、第8側面配線371,372の半田浸食による導通抵抗の増加や、断線等の発生を抑制することができる。
【0080】
本実施形態では、水晶振動板10、第1、第2封止部材20,30が、それぞれATカット水晶板であり、側面配線271,171,371および側面配線272,172,372が、ATカット水晶板のZ´軸方向に沿って(X軸端面に)形成されている。これにより、断線が生じにくい安定した側面配線271,171,371および側面配線272,172,372を容易に形成することができる。この点について、以下に説明する。
【0081】
水晶振動子100の製造工程で、水晶振動板10、第1、第2封止部材20,30はウエハの状態で製造されるが、水晶振動板10、第1、第2封止部材20,30の外形は、それぞれウェットエッチングによって形成される。ここで、ATカット水晶板の異方性により、水晶振動板10等のZ´軸端面には、Z´軸方向に突出する突起部等が生じることがあり、Z´軸端面に側面配線を形成する場合、突起部の部分で側面配線の膜厚が小さくなったり、露光時に突起部の影が生じて側面配線のパターニングが困難になるといった問題がある。
【0082】
一方、水晶振動板10等のX軸端面には、そのような突起部は形成されず、X軸端面は、なす角が鈍角となるような複数の傾斜面がつながった形状になる。このため、水晶振動板10等のX軸端面に側面配線を形成する場合、側面配線の膜厚を容易に確保することができ、露光時に影が生じにくく側面配線のパターニングを容易に行うことができる。これにより、水晶振動板10等のX軸端面には、Z´軸端面に比べて、側面配線を容易に形成することができ、また、導通抵抗も小さくすることができる。
【0083】
したがって、本実施形態では、ATカット水晶板によって形成された水晶振動板10、第1、第2封止部材20,30のZ´軸方向に沿って(X軸端面に)側面配線271,171,371および側面配線272,172,372を形成することによって、断線が生じにくい安定した側面配線271,171,371および側面配線272,172,372を容易に形成することができる。
【0084】
なお、側面配線271,171,371および側面配線272,172,372だけでなく、側面配線273,373および側面配線274,374についても同様に、第1、第2封止部材20,30のZ´軸方向に沿って形成されているので、断線が生じにくい安定した側面配線273,373および側面配線274,374を容易に形成することができる。
【0085】
また、水晶振動板10のウエハでは、第1側面配線171および第2側面配線172の電極構成が、振動部11の第1、第2励振電極111,112の電極構成と共通する。このため、第1、第2封止部材20,30の電極構成に比べて、第1側面配線171および第2側面配線172の下地電極膜(例えばTi膜)が薄く形成される。例えば水晶振動板10の電極構成は、Ti膜、Au膜を含む構成になっており、第1、第2封止部材20,30の電極構成は、Ti膜、NiTi膜、Au膜を含む構成になっている。また、水晶振動板10の電極構成のTi膜は、第1、第2封止部材20,30の電極構成のTi膜よりも薄くなっている。
【0086】
本実施形態では、第1励振電極111が、第1封止部材20に設けられた第2スルーホール212の貫通電極を介して、第1封止部材20の内部空間に面していない側の第1主面201に形成された第1端子22に電気的に接続されている。第2励振電極112が、水晶振動板10に設けられた第1スルーホール162の貫通電極、および第1封止部材20に設けられた第3スルーホール213の貫通電極を介して、第1封止部材20の形成された第2端子23に電気的に接続されている。第1端子22は、水晶振動子100のパッケージ側面に形成された側面配線271,171,371を経由して、第2封止部材30の内部空間に面していない側の第2主面302に形成された外部電極端子(第1外部電極端子)32に電気的に接続されている。第2端子23は、水晶振動子100のパッケージ側面に形成された側面配線272,172,372を経由して、第2封止部材30の第2主面302に形成された外部電極端子(第2外部電極端子)32に電気的に接続されている。
【0087】
本実施形態によれば、第1封止部材20の内部空間に面していない側の第1主面201に形成された第1、第2端子22,23を経由して、第1、第2励振電極111,112と、外部電極端子32,32とが電気的に接続されるので、第1、第2励振電極111,112から外部電極端子32,32までの電気的な導通経路を長くすることができ、第1、第2励振電極111,112の半田による浸食を抑制することができる。また、側面配線271,171,371および側面配線272,172,372の半田浸食による導通抵抗の増加や、断線等の発生を抑制することできる。さらに、第1、第2端子22,23と、外部電極端子32,32とが、スルーホールを用いずに電気的に接続されるため、水晶振動板10、第1、第2封止部材20,30それぞれの外周縁部にスルーホールを形成する必要がなくなり、水晶振動子100の小型化に容易に対応できる。
【0088】
この場合、側面配線271,171,371および側面配線272,172,372は、パッケージ側面に凹部(キャスタレーション)を形成することなく形成されている。これにより、水晶振動板10、第1、第2封止部材20,30それぞれの側面に凹部を形成する必要がなくなり、水晶振動子100の小型化に容易に対応できる。
【0089】
本実施形態では、水晶振動子100のパッケージ側面に形成された側面配線271,171,371のうち、水晶振動板10に形成された第1側面配線171が、少なくとも第2封止部材30に形成された第7側面配線371に対し、平面視でずらして配置されている。
図8に示すように、水晶振動板10の第1側面配線171が、第1封止部材20の第3側面配線271および第2封止部材30の第7側面配線371の両方に対し、平面視で、-Z´方向側にずらして配置されている。そして、水晶振動板10の第1側面配線171が、第1積層間配線117を介して第1封止部材20の第3側面配線271に接続され、第1側面配線171が、第2積層間配線118を介して第2封止部材30の第7側面配線371に接続されている。このように、水晶振動板10に形成された第1側面配線171を、第1、第2封止部材20,30に形成された第3、第7側面配線271,371に対し、ずらすことによって、水晶振動子100のパッケージ側面における、半田の浸食を抑制することができ、第1励振電極111の半田による浸食を抑制することができる。
【0090】
また、水晶振動子100のパッケージ側面に形成された側面配線272,172,372のうち、水晶振動板10に形成された第2側面配線172が、少なくとも第2封止部材30に形成された第8側面配線372に対し、平面視でずらして配置されている。
図9に示すように、水晶振動板10の第2側面配線172が、第1封止部材20の第4側面配線272および第2封止部材30の第8側面配線372の両方に対し、平面視で、+Z´方向側にずらして配置されている。そして、水晶振動板10の第2側面配線172が、第3積層間配線119を介して第1封止部材20の第4側面配線272に接続され、第2側面配線172が、第4積層間配線120を介して第2封止部材30の第8側面配線372に接続されている。このように、水晶振動板10に形成された第2側面配線172を、第1、第2封止部材20,30に形成された第4、第8側面配線272,372に対し、ずらすことによって、水晶振動子100のパッケージ側面における、半田の浸食を抑制することができ、第2励振電極112の半田による浸食を抑制することができる。
【0091】
なお、ずらす量(Z´軸方向の長さ)については、水晶振動板10の側面配線171,172と、第1、第2封止部材20,30の側面配線271,272,371,372とが側面視で重畳していなければ特に限定されない。
図8、
図9に示す例では、水晶振動板10の側面配線171,172と、第2封止部材30の側面配線371,372との間には、水晶振動板10の側面配線171,172のZ´軸方向の幅と略同じ長さの隙間が設けられている。また、水晶振動板10の側面配線171,172と、第1封止部材20の側面配線271,272との間には、水晶振動板10の側面配線171,172のZ´軸方向の幅と略同じ長さの隙間が設けられている。
【0092】
また、本実施形態では、第1封止部材20の第1主面201にアース用電極としての金属膜28が設けられている。金属膜28は、水晶振動板10の外枠部12の内壁面105に形成された第1内部配線173を経由して、第2封止部材30の第2主面302に形成された外部電極端子32に電気的に接続されている。また、金属膜28は、水晶振動板10の外枠部12の内壁面106に形成された第2内部配線174を経由して、第2封止部材30の第2主面302に形成された外部電極端子32に電気的に接続されている。このように、水晶振動板10の外枠部12の内壁面105,106にアース接続用の内部配線173,174が設けられているので、外部環境の影響を受けにくくなり、アース接続を安定的に行うことができる。
【0093】
ここで、水晶振動子100の製造工程で、水晶振動板10はウエハの状態で製造されるが、水晶振動板10のウエハでは、第1内部配線173、第2内部配線174等の電極構成が、振動部11の第1、第2励振電極111,112の電極構成と共通する。このため、第1、第2封止部材20,30の電極構成に比べて、第1内部配線173、第2内部配線174等の下地電極膜(例えばTi膜)が薄く形成される。したがって、水晶振動子100のパッケージの半田による実装により、パッケージの側面に設けられた電極は、半田浸食による断線リスクが高くなり、アース接続を安定的に行うことができなくなる可能性がある。しかし、本実施形態では、水晶振動板10の外枠部12の内壁面105(106)にアース接続用の第1内部配線173(第2内部配線174)を設けることによって、そのような半田浸食による断線を未然に防ぐことができ、第1内部配線173(第2内部配線174)を介して、アース接続を安定的に行うことができる。
【0094】
本実施形態では、上述したように、環状のシールパス115,116が、第1内部配線173(第2内部配線174)に電気的に接続されている。これにより、アース接続された環状のシールパス115,116によって、水晶振動板10の振動部11を囲うことができるので、電磁波のシールド効果を高めることができる。
【0095】
また、本実施形態では、第1内部配線173(第2内部配線174)が、水晶振動板10の外枠部12の内壁面105(106)に沿って延びるように平面状に形成されている。このように、外枠部12の内壁面105(106)に平面状に形成された第1内部配線173(第2内部配線174)によって、電磁波のシールド効果を高めることができる。この場合、第1、第2内部配線173,174が、水晶振動板10の外枠部12の平面視で対向する一対の内壁面105,106にそれぞれ設けられている。これにより、平面状に形成された一対の第1、第2内部配線173,174によって振動部11が挟まれるので、振動部11の側方からの電磁波を効果的にシールドすることができる。さらに、第1、第2内部配線173,174が延びる方向(Z´軸方向)において、第1、第2内部配線173,174の幅が、第1、第2励振電極111,112の幅よりも大きくなっているので、電磁波のシールド効果をより高めることができる。
【0096】
本実施形態では、上述したように、第1封止部材20の内部空間に面していない側の第1主面201に形成された金属膜28が、第1封止部材20の-X方向側の側面203に形成された第5側面配線273に電気的に接続されており、第2封止部材30の外部電極端子32が、第2封止部材30の-X方向側の側面303に形成された第9側面配線373に電気的に接続されている。また、第1封止部材20の金属膜28が、第1封止部材20の+X方向側の側面204に形成された第6側面配線274に電気的に接続されており、第2封止部材30の外部電極端子32が、第2封止部材30の+X方向側の側面304に形成された第10側面配線374に電気的に接続されている。この構成によれば、第1、第2封止部材20,30のシールパス115,116よりも外周側の部分に、電気的な接続を行うためのスルーホールを設ける必要がなくなるので、水晶振動子100の小型化に容易に対応できる。また、金属膜28が第1封止部材20の内部空間に面していない側の第1主面201に形成されているので、内部空間内に形成される配線の形成を妨げることがなくなり、第1、第2励振電極111,112等と短絡する危険性がなくなる。さらに、金属膜28が第1、第2励振電極111,112から比較的離れているパッケージ表面に形成されるので、電磁波のシールド効果をより高めることができる。
【0097】
本実施形態では、
図4に示すように、水晶振動板10の-X方向側の側面103に、第1励振電極111に電気的に接続される第1側面配線171が設けられており、この第1側面配線171と第1励振電極111との間に、第1内部配線173が配置されている。第1側面配線171と第1励振電極111とが側面視で重畳するが、第1側面配線171と第1励振電極111との間に、アース接続された第1内部配線173を配置することによって、第1側面配線171と第1励振電極111との重畳に起因して発生する寄生容量を抑制できる。
【0098】
また、
図5に示すように、水晶振動板10の+X方向側の側面104に、第2励振電極112に電気的に接続される第2側面配線172が設けられており、この第2側面配線172と第2励振電極112との間に、第2内部配線174が配置されている。第2側面配線172と第2励振電極112とが側面視で重畳するが、第2側面配線172と第2励振電極112との間に、アース接続された第2内部配線174を配置することによって、第2側面配線172と第2励振電極112との重畳に起因して発生する寄生容量を抑制できる。
【0099】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0100】
上述した耐浸食構造は一例であって、さまざまに変更することが可能である。例えば、第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372からのAu膜の一部または全部の除去に加えて、第2封止部材30の外部電極端子32の端部のAu膜32cの一部を除去してもよいし、あるいは、第2封止部材30の積層間配線用接合パターン381の端部のAu膜381cの一部を除去してもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372からAu膜の一部または全部を除去する場合について説明した。しかし、これに限らず、第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372のAu膜を残した状態で、このAu膜上にAu以外の半田の濡れ性の低い金属(例えばTi)からなる金属膜を形成することによって、耐浸食構造を構成してもよい。第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372のAu膜の表面が、Au以外の金属からなる金属膜によって覆われている。この場合、第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372のAu膜に沿って半田が濡れ広がることを抑制することができ、導通抵抗の増加や、断線等の不具合の発生を抑制することができる。なお、半田の濡れ広がりをより確実に抑制する観点からは、上記実施形態のように、第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372のAu膜を除去することによって、半田の浸食経路を遮断することが好ましい。
【0102】
上記実施形態において、第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372からのAu膜の一部または全部の除去に加えて、第2封止部材30の外部電極端子32のAu膜32cの一部を除去してもよいし、あるいは、第2封止部材30の積層間配線用接合パターン381のAu膜381cの一部を除去してもよい。
【0103】
上述した耐浸食構造は、少なくとも第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372に設けられていることが好ましいが、第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372に加えて、第1封止部材20の第3、第4側面配線271,272にも、同様の耐浸食構造を設けることが可能である。この場合、第2封止部材30の第7、第8側面配線371,372に加えて、第1封止部材20の第3、第4側面配線271,272においても、半田の浸食経路を遮断することができ、好ましい。
【0104】
上記実施形態では、第1、第2励振電極111,112に電気的に接続される側面配線371,171,271、側面配線372,172,272に、半田に対する耐浸食構造を設けた場合について説明した。しかし、第1封止部材20の第1主面201に形成されたアース用電極としての金属膜28に電気的に接続される側面配線373,273、側面配線374,274に、半田に対する耐浸食構造を設けてもよい。あるいは、第1、第2励振電極111,112に電気的に接続される側面配線371,171,271、側面配線372,172,272とともに、アース用電極としての金属膜28に電気的に接続される側面配線373,273、側面配線374,274に、半田に対する耐浸食構造を設けてもよい。これらの場合、上述した耐浸食構造が、少なくとも第2封止部材30の第9、第10側面配線373,374に設けられていることが好ましいが、第2封止部材30の第9、第10側面配線373,374に加えて、第1封止部材20の第5、第6側面配線273,274にも、同様の耐浸食構造を設けることが可能である。
【0105】
上記実施形態では、水晶振動板10の側面配線171,172を、第1封止部材20の側面配線271,272および第2封止部材30の側面配線371,372の両方に対して、Z´軸方向にずらして配置したが、水晶振動板10の側面配線171,172を、第1封止部材20の側面配線271,272に対しては、Z´軸方向にずらさず、第2封止部材30の側面配線371,372のみに対して、Z´軸方向にずらして配置してもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、第1封止部材20の側面配線271,272および第2封止部材30の側面配線371,372を側面視で略同じ位置に配置したが、第1封止部材20の側面配線271,272および第2封止部材30の側面配線371,372を側面視でずらして配置してもよい。
【0107】
上記実施形態では、水晶振動板10の側面配線171,172、第1封止部材20の側面配線271,272、および第2封止部材30の側面配線371,372を、水晶振動子100のパッケージのX軸方向の側面(X軸端面)に形成したが、水晶振動板10の側面配線171,172、第1封止部材20の側面配線271,272、および第2封止部材30の側面配線371,372を、水晶振動子100のパッケージのZ´軸方向の側面(Z´軸端面)に形成してもよい。ただし、上述したように、水晶振動板10の側面配線171,172、第1封止部材20の側面配線271,272、および第2封止部材30の側面配線371,372を、水晶振動子100のパッケージのX軸方向の側面(X軸端面)に形成することによって、断線が生じにくい安定した側面配線を容易に形成することができる。
【0108】
上記実施形態では、水晶振動板10に形成された第1、第2側面配線171,172が、第2封止部材30の内部空間に面していない側の第2主面302に形成された外部電極端子32,32に対し、側面視で、上下方向において重畳する位置に配置されたが(
図8、
図9参照)、例えば
図11、
図12に示す変形例1のように、第1、第2側面配線171a,172aを、外部電極端子32,32に対し、側面視で、上下方向において重畳しない位置に配置してもよい。
【0109】
この変形例1では、
図11に示すように、水晶振動板10の-X方向側の側面103に形成された第1側面配線171aが、
図8の第1側面配線171よりも-Z´方向側にずらして配置されている。そして、側面視で、第1側面配線171aが2つの外部電極端子32,32間のスペースに配置されている。第1側面配線171aが、外部電極端子32,32に対し、側面視で、上下方向において重畳しない位置に配置されている。
【0110】
また、
図12に示すように、水晶振動板10の+X方向側の側面104に形成された第2側面配線172aが、
図9の第2側面配線172よりも+Z´方向側にずらして配置されている。そして、側面視で、第2側面配線172aが2つの外部電極端子32,32間のスペースに配置されている。第2側面配線172aが、外部電極端子32,32に対し、側面視で、上下方向において重畳しない位置に配置されている。
【0111】
この変形例1によれば、水晶振動板10に形成された第1、第2側面配線171a,172aを、第2封止部材30に形成された外部電極端子32,32に対し、側面視で、上下方向において重畳させないことによって、外部電極端子32,32からはみ出した半田が第1、第2側面配線171a,172aに接触して付着することが避けられる。これにより、第1、第2側面配線171a,172aの半田付着による導通抵抗の増加や、断線等の発生を抑制することができる。
【0112】
上記実施形態では、4つの外部電極端子32のうち2つをアース接続用の電極端子として用いたが、1つの外部電極端子32のみをアース接続用の電極端子として用いてもよい。例えば、第10側面配線374を外部電極端子32に直接的に接続し、この外部電極端子32に金属膜28を経由して第9側面配線373を電気的に接続する構成としてもよい。この場合、第9側面配線373は、シールパス116、第1内部配線173、シールパス115、および第5側面配線273を順に経由して、金属膜28に電気的に接続され、さらに、第6側面配線274、シールパス115、第2内部配線174、シールパス116、および第10側面配線374を順に経由して、外部電極端子32に電気的に接続される。なお、第1、第2内部配線173,174のうち一方のみを設ける構成としてもよい。
【0113】
上記実施形態では、アース接続された第1、第2内部配線173,174を水晶振動板10の外枠部12の内壁面105,106に形成したが、水晶振動板10の外側面(例えば側面103,104)にアース接続された側面配線を設ける構成としてもよい。この場合、アース接続された水晶振動板10の側面配線を第2封止部材30に形成された第9、第10側面配線373,374に対し、平面視でずらして配置してもよい。あるいは、アース接続された水晶振動板10の側面配線を、第2封止部材30に形成された第9、第10側面配線373,374、および第1封止部材20に形成された第5、第6側面配線273,274に対し、平面視でずらして配置してもよい。これらの構成によれば、シールパス115,116から外部電極端子32,32までの電気的な導通経路を長くすることができ、シールパス115,116の半田による浸食を抑制することができる。また、アース接続された水晶振動板10の側面配線や、側面配線373,374、側面配線273,274の半田浸食による断線等の発生を抑制することできる。
【0114】
上記実施形態では、水晶振動板10の外枠部12の-X方向側の内壁面105および+X方向側の内壁面106に第1、第2内部配線173,174を形成したが、水晶振動板10の外枠部12の-Z´方向側の内壁面および+Z´方向側の内壁面に内部配線を形成してもよい。また、水晶振動板10の外枠部12の4つの内壁面(-X方向側の内壁面105、+X方向側の内壁面106、-Z´方向側の内壁面、および+Z´方向側の内壁面)の全てに内部配線を形成してもよい。
【0115】
上記実施形態では、第1封止部材20の内部空間に面していない側の第1主面201にアース用電極を設けたが、これに限らず、第1封止部材20の内部空間に面している側の第2主面202にアース用電極を形成してもよい。
【0116】
上記実施形態では、第2封止部材30の第2主面302の外部電極端子32の数を4つとしたが、これに限定されるものではなく、外部電極端子32の数を、例えば、2つ、6つ、あるいは8つ等としてもよい。また、本発明を水晶振動子100に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば水晶発振器等にも本発明を適用してもよい。
【0117】
上記実施形態では、第1封止部材20および第2封止部材30を水晶板によって形成したが、これに限定されるものではなく、第1封止部材20および第2封止部材30を、例えば、ガラスまたは樹脂によって形成してもよい。
【符号の説明】
【0118】
10 水晶振動板(圧電振動板)
20 第1封止部材
30 第2封止部材
32 外部電極端子
100 水晶振動子(圧電振動デバイス)
111 第1励振電極
112 第2励振電極
171 第1側面配線
172 第2側面配線
271 第3側面配線
272 第4側面配線
302 第2主面(内部空間に面していない側の主面)
371 第7側面配線
372 第8側面配線