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  • 特開-固体撮像素子および製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099612
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】固体撮像素子および製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20220628BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20220628BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H04N5/369
G02B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213466
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】坂川 誠
【テーマコード(参考)】
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
4M118AA08
4M118AB01
4M118CA02
4M118CA32
4M118EA01
4M118EA14
4M118FA06
4M118GB03
4M118GB07
4M118GB10
4M118GC07
4M118GD04
5C024CY47
5C024EX43
5C024GX02
5C024GZ34
(57)【要約】
【課題】チタン系ブラック材料を使用しつつ、製造過程における不良にも対応しやすい固体撮像素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】固体撮像素子100は、複数の光電変換素子PDを有するウェハ基板101と、骨格中にカルボン酸を持つ樹脂を主成分としてウェハ基板上に形成された有機膜10と、チタン系ブラック材料を主成分として有機膜上に形成され、複数の開口を有する遮光層20と、開口上または開口内に配置された複数のマイクロレンズ31とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換素子を有するウェハ基板と、
骨格中にカルボン酸を持つ樹脂を主成分として前記ウェハ基板上に形成された有機膜と、
チタン系ブラック材料を主成分として前記有機膜上に形成され、複数の開口を有する遮光層と、
前記開口上または前記開口内に配置された複数のマイクロレンズと、
を備える、
固体撮像素子。
【請求項2】
前記複数の光電変換素子が形成された有効画素領域の周縁において、全周にわたり前記有機膜が除去されている、
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記有機膜の厚さが4.0マイクロメートル以下である、
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
平面視において前記開口と重なる位置に設けられた着色層をさらに備える、
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
複数の光電変換素子を有する複数の単位区画が形成されたシリコンウェハ上に、骨格中にカルボン酸を持つ樹脂を用いて、少なくとも前記複数の単位区画を覆う有機膜を形成し、
前記有機膜上にチタン系ブラック材料を用いて遮光層を形成し、
pH11以下のアルカリ性剥離液を用いて前記遮光層を前記有機膜とともに除去し、
前記シリコンウェハ上に新しい前記有機膜を形成する、
固体撮像素子の製造方法。
【請求項6】
前記有機膜を形成した後に、前記複数の単位区画を切り離すためのスクライブラインに沿って前記有機膜の一部を除去する、
請求項5に記載の固体撮像素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子、より詳しくは、マイクロレンズアレイが取り付けられたオンチップタイプの固体撮像素子に関する。この固体撮像素子の製造方法にも言及する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子の薄型軽量化と高精細化に伴い、光電変換素子の配列基板上に直接ブラックマトリクスやマイクロレンズを形成するオンチップタイプの固体撮像素子が増えている。
【0003】
近年、固体撮像素子においては、画質向上の為に、非画素領域に遮光膜を形成する技術が提案されている。中でも赤外光によるノイズ防止の観点から、遮光層の着色材として酸化チタン、酸窒化チタン等のチタン系ブラック材料が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5254650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オンチップタイプの固体撮像素子において、着色層の形成過程で不良が生じた場合、Oアッシング等のドライプロセスを用いて着色層を剥離し、撮像素子回路の形成されたウェハを再生利用するのが一般的である。
【0006】
しかし、上述のチタン系ブラック材料は、遮光性に優れる反面、このようなドライプロセスで剥離することが困難である。チタン系ブラック材料からなる層は、加温した強アルカリ液でなければ剥離できない。強アルカリ液を用いると、下地の固体撮像素子回路にダメージを与えてしまうため、ウェハの再利用が困難となる。
【0007】
本発明は、チタン系ブラック材料を使用しつつ、製造過程における不良にも対応しやすい固体撮像素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、複数の光電変換素子を有するウェハ基板と、骨格中にカルボン酸を持つ樹脂を主成分としてウェハ基板上に形成された有機膜と、チタン系ブラック材料を主成分として有機膜上に形成され、複数の開口を有する遮光層と、開口上または開口内に配置された複数のマイクロレンズとを備える固体撮像素子である。
【0009】
本発明の第二の態様は、複数の光電変換素子を有する複数の単位区画が形成されたシリコンウェハ上に、骨格中にカルボン酸を持つ樹脂を用いて、少なくとも複数の単位区画を覆う有機膜を形成し、有機膜上にチタン系ブラック材料を用いて遮光層を形成し、pH11以下のアルカリ性剥離液を用いて遮光層を有機膜とともに除去し、シリコンウェハ上に新しい前記有機膜を形成する、固体撮像素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る固体撮像素子は、チタン系ブラック材料を使用しつつ、製造過程における不良にも対応しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図である。
図2】同固体撮像素子の製造方法の一過程を示す模式図である。
図3】同製造方法の一過程を示す模式図である。
図4】同製造方法の一過程を示す模式図である。
図5】同製造方法の一過程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図5を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図である。固体撮像素子100は、複数の光電変換素子PDを有するウェハ基板101と、ウェハ基板101に順に形成された、有機膜10、遮光層20、およびマイクロレンズ部30とを備えている。
【0013】
有機膜10は、骨格中にカルボン酸を持つ樹脂で形成された透明性を有する層である。有機膜10は、複数の光電変換素子PD全体を覆う単一の層を形成している。
有機膜10の厚さは、後述する剥離のしやすさの観点からは、4.0μm以下が好ましく、マイクロレンズ部30を含めた固体撮像素子100全体の光学的設計の観点からは、2.0μm以下であることがより好ましい。
【0014】
遮光層20は、酸化チタン、酸窒化チタン、窒化チタンのいずれかを主成分とするチタン系ブラック材料で形成されている。遮光層20は、各光電変換素子PDに対応する位置に多角形状またはピンホール状の開口を有するメッシュ状に形成されている。これにより、遮光層20は、複数の光電変換素子PDを画素として区画するブラックマトリクスとして機能する。
【0015】
マイクロレンズ部30は、複数のマイクロレンズ31を有する。マイクロレンズ31は、遮光層20の開口と概ね同様の配置態様を有しており、固体撮像素子100の平面視において、各開口は、マイクロレンズ31の1つと重なっている。
マイクロレンズ31は、開口内に配置されてもよい。
【0016】
以上の様に構成された固体撮像素子100においては、マイクロレンズ31に入射した光が遮光層20の開口を通過して光電変換素子PDに導かれることにより、撮像機能を発揮する。これにより、固体撮像素子100は各種イメージャーや各種センサとして機能する。カラーフィルタ等の着色層をさらに組み合わせることにより、固体撮像素子100をカラー撮像に対応させることもできる。着色層は、固体撮像素子100の平面視において、開口と重なるように設けられる。着色層は、マイクロレンズ部30と遮光層20との間に設けられてもよいし、開口内に配置されてもよい。
【0017】
固体撮像素子100は、大きなウェハに複数形成することにより効率よく量産できる。以下にその手順を説明する。
【0018】
まず、図2に示すように、1枚のシリコンウェハSwに、複数の光電変換素子PDおよび配線を有する単位区画Uaを複数形成する。各単位区画Uaは、それぞれウェハ基板101として機能する。
【0019】
次に、図3に示すように、シリコンウェハSwの前面に有機膜10を形成し、図4に示すように、単位区画Uaごとに区切られるように有機膜10をパターニングする。フォトリソグラフィを用いたパターニングが簡便であるため、このようなパターニングが可能な樹脂材料で有機膜を形成することが好ましい。
パターニングの一例として、単位区画Uaを切り離す際のスクライブラインSLに沿って有機膜10の一部を除去する態様を挙げることができる。
【0020】
次に、図5に示すように、各単位区画Ua上にチタン系ブラック材料からなる遮光層20を形成し、開口またはピンホールを形成するためのパターニングを行う。チタン系ブラック材料は、カーボン系ブラック材料よりもパターニング特性に優れているため、遮光層20をより精度よく形成できる。
【0021】
ここで、遮光層20の形成不良やパターニング不良等により、遮光層20の形成をやり直す場合は、シリコンウェハSwにアルカリ性の剥離液をスプレーしたり、シリコンウェハSwを剥離液に浸漬したりして、剥離液を有機膜10に接触させる。
有機膜10は、樹脂骨格中にカルボン酸を有する材料で形成されているため、pH11以下の弱アルカリ性の剥離液で剥離できる。本実施形態において、剥離液は有機膜10がパターニングにより除去された部位からシリコンウェハSwと有機膜10との界面に直接作用できるため、各単位区画Uaの有機膜10を迅速に剥離できる。
【0022】
遮光層20をシリコンウェハSw上に直接形成した場合、剥離するためにはpH14以上の強アルカリ性の剥離液が必要になり、各単位区画Uaの光電変換素子PDや配線等への多大なダメージが避けられない。本実施形態では、遮光層20が有機膜10上に形成されているため、有機膜10を剥離することで遮光層20をともに剥離でき、シリコンウェハSwに形成された各機構へのダメージもほぼなくすことができる。
有機膜10および遮光層20を剥離した後は、シリコンウェハSw上に新しい有機膜を形成し、上述の工程をやり直す。
【0023】
遮光層20が問題なく形成できたら、続けてマイクロレンズ部30を遮光層20上に形成する。マイクロレンズ部30は、フォトリソグラフィによるパターニング、熱リフロー、バックエッチ等の公知技術を適宜組み合わせることにより形成できる。
【0024】
マイクロレンズ部30が問題なく形成できたら、各単位区画UaをスクライブラインSLに沿って切り離すと、複数の固体撮像素子100が完成する。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係る固体撮像素子100は、ウェハ基板101上に形成した有機膜10上にチタンブラック系材料からなる遮光層20が形成された構成を有するため、製造過程において、ウェハ基板101に作りこまれた機構にダメージを与えずに、遮光層20を容易に作り直すことができる。
したがって、遮光性能に優れた遮光層を備えつつ、製造のしやすさが両立されている。
【0026】
上述した製造方法においては、有機膜10のパターニング工程が省略されてもよい。この場合、有機膜の剥離に要する時間は多少長くなるが、同様に、有機膜10および遮光層20を一度に剥離できる。
【0027】
本実施形態の固体撮像素子について、実験例を用いてさらに説明する。本発明の技術的範囲は、実験例の具体的内容のみによって何ら制限されない。
【0028】
(実験例1)
単位区画を複数形成したシリコンウェハの上面全体に、骨格中にカルボン酸を持つ樹脂材料で厚さ1.0μmの有機膜を形成した。樹脂材料として、特許第2961722号に記載の組成物を使用した。主な成分は、メタクリル酸、メタクリル酸グリシジル、およびメチルメタクリレートの共重合体と、2,3,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノンと、3官能メタアクリレートである。
有機膜上に、チタン系ブラック材料を用いて単位区画と概ね同一寸法の平面視正方形の遮光層を複数形成した。各遮光層の厚さは1.5μmとした。
以上により、実験例1に係る構造物を作製した。
【0029】
(実験例2)
有機膜を形成後にパターニングを行って、有機膜を単位区画に対応した複数の平面視正方形の領域に分割した点を除き、実験例1と同様の手順で、実験例2に係る構造物を作製した。分割された有機膜は、単位区画より一回り大きい寸法とし、平面視において遮光層が有機膜の範囲内に位置するように形成した。
【0030】
(実験例3)
有機膜を設けない点を除き、実験例1と同様の手順で、実験例3に係る構造物を作製した。
【0031】
(実験例4)
骨格中にカルボン酸を持たない樹脂材料で有機膜を形成した点を除き、実験例1と同様の手順で、実験例4に係る構造物を作製した。樹脂材料として、特許第2982156号に記載の組成物を使用した。主な成分は、メタクリル酸グリシジル、およびメタクリル酸メチルの共重合体と、2-エチル-4-メチルイミダゾールと、イソシアヌル酸である。
【0032】
各実験例の構造物を2つずつ準備し、それぞれ50℃に加温した弱アルカリ性剥離液(pH11以下)および50℃に加温した強アルカリ性剥離液(pH14以上)に浸漬して、遮光層の剥離を試みた。
結果について、遮光層の剥離、および単位区画Ua内の構造に対するダメージの2項目を評価した。評価基準は以下の通りである。
遮光層剥離
◎(good):遮光層が完全に剥離されている
〇(fair):遮光層が一部残留している
×(bad):遮光層が全部残留しており、剥離されない
構造ダメージ
〇(good):光電変換でき、再利用可能
×(bad):光電変換できず、再利用不能
なお、遮光層剥離の評価が×の場合は、評価不能(-)とした。
結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示すように、実験例1および2では、弱アルカリ性の剥離液で有機膜および遮光層を剥離でき、その際に構造ダメージは生じなかった。
有機膜を設けなかった実験例3と、骨格中にカルボン酸を持たない樹脂材料で有機膜を形成した実験例4では、弱アルカリ性剥離液で遮光層を剥離できなかった。
いずれの実験例も強アルカリ剥離液を使うと遮光層を剥離できたが、シリコンウェハへのダメージが大きく、再利用不能となった。
以上より、本実施形態に係る固体撮像素子の有用性を確認できた。
【0035】
以上、本発明の一実施形態および実施例について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0036】
例えば、有機膜を形成するための組成物は、界面活性剤、密着助剤等の他の成分を含有してもよい。この場合、有機膜には、これら他の成分が残留することもある。
【0037】
有機膜は、光電変換素子が形成された有効画素領域の周縁すべてで除去されることが好ましい。スクライブラインに沿った除去はこの条件を満たすものであるが、より有効画素領域に近い位置で全周にわたり有機膜を除去することで、有効画素領域の有機膜全体に四方から剥離液が浸透するため、不良な遮光層をより短時間で除去できる。
【0038】
本発明の固体撮像素子に着色層を設ける場合、平面視における一部に着色層が配置されなくてもよい。例えば、光電変換素子の一部をピント調整等に用いる固体撮像素子等に本発明を適用する場合、フィルタ部においてピント調整に用いる光電変換素子に対応する領域に色フィルタを配置しないといった態様もありうる。
【符号の説明】
【0039】
10 有機膜
20 遮光層
30 マイクロレンズ部
31 マイクロレンズ
100 固体撮像素子
101 ウェハ基板
PD 光電変換素子
SL スクライブライン
Sw シリコンウェハ
Ua 単位区画
図1
図2
図3
図4
図5