(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099614
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】筆記具のキャップ
(51)【国際特許分類】
B43K 23/08 20060101AFI20220628BHJP
B43K 23/12 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B43K23/08 130
B43K23/12 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213468
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正史
(57)【要約】
【課題】内キャップと筆記具本体とが強固に嵌合された場合でも、筆記具本体から容易に取り外すことができる筆記具のキャップを提供する。
【解決手段】本発明の筆記具のキャップ1は、内キャップ3が外キャップ2の内部に前後方向に移動可能に配置される。外キャップ2の内面に、内キャップ3の前方移動を規制する第1規制部21と、内キャップ3の後方移動を規制する第2規制部22と、を備える。内キャップ3の外面に、第1規制部21と係止可能な第1係止部31と、第2規制部22と係止可能な第2係止部32と、を備える。キャップ装着完了状態において、第1規制部21と第1係止部31とが前後方向に係止される。筆記具本体のペン先側からキャップを引く抜くことにより、内キャップ3の軸線が外キャップ2の軸線に対して傾いた状態で第2係止部32と第2規制部22とが前後方向に係止される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外キャップと、該外キャップの内部に配置される内キャップとを備え、前記内キャップの内面が筆記具本体のペン先側の外面と気密嵌合される筆記具のキャップであって、
前記内キャップが前記外キャップの内部に前後方向に移動可能に配置され、
前記外キャップの内面に、前記内キャップの前方移動を規制する第1規制部と、
前記内キャップの後方移動を規制する第2規制部と、を備え、
前記内キャップの外面に、前記第1規制部と係止可能な第1係止部と、前記第2規制部と係止可能な第2係止部と、を備え、
前記キャップが筆記具本体のペン先側の外面に装着された状態において、
前記外キャップの第1規制部と前記内キャップの第1係止部とが前後方向に係止され、且つ前記内キャップ内面と前記筆記具本体のペン先側の外面とが気密嵌合され、
前記筆記具本体のペン先側を前記キャップから引く抜くことにより、
前記内キャップの軸線が前記外キャップの軸線に対して傾いた状態で前記内キャップの外面の第2係止部と前記外キャップの内面の第2規制部とが前後方向に係止されることを特徴とする筆記具のキャップ。
【請求項2】
前記第1規制部の後方且つ前記第2規制部の前方の前記外キャップの内面に、前方に向かうに従い内径が小さくなる形状のガイド部を備え、前記キャップを筆記具本体のペン先側の外面に装着する過程で、前記内キャップの外面が前記ガイド部に接触する請求項1に記載の筆記具のキャップ。
【請求項3】
前記第2係止部が周状に形成され、前記第2係止部が全周において前後方向の位置が一致され、
前記第2規制部が周状に形成され、前記第2規制部の径方向に対向する位置が前後方向に異なる部分を有する請求項1または2に記載の筆記具のキャップ。
【請求項4】
前記第2規制部が周状に形成され、前記第2規制部が全周において前後方向の位置が一致され、
前記第2係止部が周状に形成され、前記第2係止部の径方向に対向する位置が前後方向に異なる部分を有する請求項1または2に記載の筆記具のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具のキャップに関する。詳細には、外キャップと、該外キャップの内部に配置される内キャップとからなり、前記内キャップが筆記具本体のペン先側の外面と気密嵌合される筆記具のキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、キャップ本体内面にインナーキャップ(本願の内キャップに相当)が嵌合される構成が記載されている。特許文献2には、外キャップの内部に内キャップが進退可能に挿着された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-228089号公報
【特許文献2】特開平11-321181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のキャップは、寸法バラツキ等で内キャップ内面と筆記具本体外面とが強固に嵌合された場合、キャップを筆記具本体から取り外す際、強い力を必要とし、キャップを筆記具本体から容易に取り外すことができないおそれがある。
【0005】
本願発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、内キャップと筆記具本体とが強固に嵌合された場合でも、筆記具本体から容易に取り外すことができる筆記具のキャップを提供しようとするものである。
本発明で「前」とは、キャップの閉鎖側を指し、「後」とはキャップの開口側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の発明は、外キャップと、該外キャップの内部に配置される内キャップとを備え、前記内キャップの内面が筆記具本体のペン先側の外面と気密嵌合される筆記具のキャップであって、前記内キャップが前記外キャップの内部に前後方向に移動可能に配置され、前記外キャップの内面に、前記内キャップの前方移動を規制する第1規制部と、前記内キャップの後方移動を規制する第2規制部と、を備え、前記内キャップの外面に、前記第1規制部と係止可能な第1係止部と、前記第2規制部と係止可能な第2係止部と、を備え、前記キャップが筆記具本体のペン先側の外面に装着された状態において、前記外キャップの第1規制部と前記内キャップの第1係止部とが前後方向に係止され、且つ前記内キャップ内面と前記筆記具本体のペン先側の外面とが気密嵌合され、前記筆記具本体のペン先側を前記キャップから引く抜くことにより、前記内キャップの軸線が前記外キャップの軸線に対して傾いた状態で前記内キャップの外面の第2係止部と前記外キャップの内面の第2規制部とが前後方向に係止されることを特徴とする。
【0007】
前記第1の発明の筆記具のキャップは、前記筆記具本体のペン先側を前記キャップから引く抜くことにより、前記内キャップの軸線が前記外キャップの軸線に対して傾いた状態で前記内キャップの外面の第2係止部と前記外キャップの内面の第2規制部とが前後方向に係止され、それにより、前記内キャップの内面と前記筆記具本体のペン先側の外面との気密嵌合が解除される。その結果、前記第1の発明の筆記具のキャップは、内キャップと筆記具本体とが強固に嵌合された場合でも、筆記具本体から容易に取り外すことができる。
【0008】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の筆記具のキャップであって、前記第1規制部の後方且つ前記第2規制部の前方の前記外キャップの内面に、前方に向かうに従い内径が小さくなる形状のガイド部を備え、前記キャップを筆記具本体のペン先側の外面に装着する過程で、前記内キャップの外面が前記ガイド部に接触することを特徴とする。
【0009】
前記第2の発明の筆記具のキャップは、前記キャップを筆記具本体のペン先側の外面に装着する過程で、前記内キャップの外面が前記ガイド部に接触することにより、外キャップの軸線に対して内キャップの軸線が傾いた状態が次第に解消され、その後、内キャップの第1係止部と外キャップの第1規制部とが前後方向に適正に係止されると同時に、筆記具本体のペン先側の外面と内キャップの内面が適正に気密嵌合される。
【0010】
本願の第3の発明は、前記第1または第2の発明の筆記具のキャップにおいて、前記第2係止部が周状に形成され、前記第2係止部が全周において前後方向の位置が一致され、前記第2規制部が周状に形成され、前記第2規制部の径方向に対向する位置が前後方向に異なる部分を有することを特徴とする。
【0011】
前記第3発明の筆記具のキャップは、前記第1の発明の構造(即ち、前記筆記具本体のペン先側をキャップから引く抜くことにより、内キャップの軸線が外キャップの軸線に対して傾いた状態で内キャップの外面の第2係止部と外キャップの内面の第2規制部とが前後方向に係止される構造)を、簡易な構造により得ることができる。
【0012】
本願の第4の発明は、前記第1または第2の発明の筆記具のキャップにおいて、前記第2規制部が周状に形成され、前記第2規制部が全周において前後方向の位置が一致され、前記第2係止部が周状に形成され、前記第2係止部の径方向に対向する位置が前後方向に異なる部分を有することを特徴とする。
【0013】
前記第4発明の筆記具のキャップは、前記第1の発明の構造(即ち、前記筆記具本体のペン先側をキャップから引く抜くことにより、内キャップの軸線が外キャップの軸線に対して傾いた状態で内キャップの外面の第2係止部と外キャップの内面の第2規制部とが前後方向に係止される構造)を、簡易な構造により得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の筆記具のキャップは、内キャップと筆記具本体とが強固に嵌合された場合でも、筆記具本体から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態のキャップ装着完了状態を示す要部縦断面図である。
【
図2】
図1のキャップの取り外し過程を示す要部縦断面図である。
【
図3】
図1のキャップの取り外し完了状態を示す要部縦断面図である。
【
図5】
図4の内キャップを省略した外キャップのA-A矢視断面図である。
【
図6】
図1のキャップの装着過程を示す要部縦断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態のキャップ装着完了状態を示す要部縦断面図である。
【
図8】
図7のキャップの取り外し過程を示す要部縦断面図である。
【
図9】
図8の外キャップ及び筆記具本体を省略した内キャップのB-B矢視断面図である。
【
図10】
図7のキャップの取り外し完了状態を示す要部縦断面図である。
【
図12】
図7のキャップの装着過程を示す要部縦断面図である。
【
図13】本発明の第3の実施の形態のキャップの取り外し状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を、
図1乃至
図6に示す。本実施の形態の筆記具のキャップ1は、外キャップ2と、該外キャップ2内に配置される内キャップ3とからなる。
【0017】
・外キャップ
外キャップ2は、内孔が前後方向に貫通された円筒体からなり、合成樹脂(例えば、ポリカーボネイト等)の射出成形により得られる。外キャップ2の内面に、第1規制部21が一体に形成される。第1規制部21より後方の外キャップ2の内面に、第2規制部22が一体に形成される。第2規制部22より後方の外キャップ2の内面(外キャップ2の後端開口部近傍内面)に、内側嵌合部23(例えば、環状突起または周状に分散配置される複数の突起)が一体に形成される。第1規制部21と第2規制部22との間(第1規制部21より後方且つ第2規制部22より前方)の外キャップ2の内面には、ガイド部24が形成される。尚、これ以外に、外キャップ2は前端が閉鎖され且つ後端が開口された構成であってよい。
【0018】
・第1規制部
第1規制部21は、環状の後ろ向き段部よりなる。第1規制部21は、全周囲において前後方向の位置が同一である。第1規制部21は、周状に分散配置される軸方向に延びる複数の突条でもよい。第1規制部21は、外キャップ2の前端部を閉鎖する閉鎖壁であってもよい。
【0019】
・第2規制部
第2規制部22は、周状に一体に形成された突起よりなる。第2規制部22は、径方向に対向する位置が異なる部分を有する。具体的には、
図4及び
図5に示すように、第2規制部22は、点状の前側突起22aと、該前側突起22aの後方に位置し且つ周状に延びる後側突起22bとからなり、後側突起22bは、前側突起22aより後方に延びる軸方向の仮想延長線上を除く領域に形成される。これ以外にも、第2規制部22が、点状の前側突起と、該前側突起の後方に位置し且つ周状に分散配置される点状の複数の後側突起とからなり、後側突起が、前側突起より後方に延びる軸方向の仮想延長線上を除く領域に形成される構成でもよい。前側突起22aと後側突起22bとの前後方向の距離aは、内キャップ3が外キャップ2内部のガイド部24の径方向の内方空間で、外キャップ2の軸線に対して内キャップ3の軸線がわずかに傾くように設定される。
【0020】
・ガイド部
ガイド部24は、内キャップ3の前端部外周が接触可能な前側ガイド部24aと、前側ガイド部24aより後方に連設され且つ内キャップ3の第2係止部32が接触可能な後側ガイド部24bとからなる。前側ガイド部24a及び後側ガイド部24bの両方が、前方に向かうに従い内径が小さくなる円錐面形状(即ち前方に向かうに従い軸心方向に接近する形状)を有する。前側ガイド部24aと軸線とがなす角度は、後側ガイド部24bと軸線とがなす角度より大きい。
【0021】
内キャップ3の第2係止部32が外キャップ2の第2規制部22と当接を開始した状態において(
図2の状態において)、ガイド部24と内キャップ3外面との間には、径方向の隙間が形成される。それにより、外キャップ2内のガイド部24の径方向の内方空間において、外キャップ2の軸線に対して内キャップ3の軸線が傾くことが可能となる。
【0022】
・内キャップ
内キャップ3は、前端が閉鎖され且つ後端が開口された有底円筒体からなり、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン等)の射出成形により得られる。内キャップ3の外面の前端外周縁部は、第1係止部31となる。第1係止部31より後方の内キャップ3の外周面には、第2係止部32が一体に形成される。第1係止部31及び第2係止部32は、全周囲において前後方向の位置が同一である。具体的には、第2係止部32は、周状に延びる突起または周状に分散配置される複数の突起からなる。第2係止部32より後方の内キャップ3の開口部内面には、環状の内側シール部33が形成される。内側シール部33は、例えば、環状平滑面または環状突起よりなる。
【0023】
・筆記具本体
筆記具本体5の一端にはペン先53が設けられ、筆記具本体5のペン先側の外面には、ペン先近傍の外周面に形成される外側シール部51と、該外側シール部51より後方に形成される外側嵌合部52(例えば、環状突起、または周状に分散配置される複数の突起)とを備える。外側嵌合部52は、外キャップ2内面の内側嵌合部23が複数の突起の場合は、環状突起が好ましく、外キャップ2内面の内側嵌合部23が環状突起の場合は、複数の突起が好ましい。ペン先53は、例えば、ボールペンチップ、繊維または多孔質材料からなるマーキングペンペン先、毛筆体、先端にスリットを有する金属板からなる万年筆ペン先等が挙げられる。
【0024】
・キャップ取り外し過程(
図1→
図2→
図3の順に移行)
キャップ取り外し過程を説明する。
図1に、筆記具本体5のペン先側外面にキャップが装着された状態を示す。この状態において、内キャップ3の第1係止部31と外キャップ2の第1規制部21とが前後方向に当接され、且つ内キャップ3の第2係止部32が外キャップ2の第2規制部22より前方に離間されている。また、この状態において、筆記具本体5のペン先側の外側シール部51と内キャップ3の内側シール部33とが環状に気密嵌合され、且つ外キャップ2の内側嵌合部23と筆記具本体5の外側嵌合部52とが嵌合(具体的には抜け止め係合)されている。
【0025】
図2に、
図1の状態から筆記具本体5のキャップからの引き抜き動作を開始し、筆記具本体5の後方移動に伴い内キャップ3が後方移動し、第2係止部32の片側と第2規制部22(前側突起22a)との前後方向の当接が開始された状態を示す。また、この状態において、外キャップ2の内側嵌合部23と筆記具本体5の外側嵌合部52との嵌合が解除されている。
【0026】
図3に、キャップの取り外しが完了した状態を示す。
図2の状態からさらなる筆記具本体5の後方移動に伴い、第2係止部32の片側と第2規制部22(前側突起22a)との当接により、内キャップ3が前側突起22aを支点にして軸線に対して傾き、第2係止部32の径方向反対側と第2規制部22(後側突起22b)とが当接される。それにより、内キャップ3の内側シール部33と筆記具本体5の外側シール部51との気密嵌合が解除されるとともに、内キャップ3の後方移動が阻止される。この状態において、外キャップ2の軸線と内キャップ3の軸線とのなす角度は、2度~5度の範囲に設定される。
【0027】
・キャップ装着過程(
図3→
図6→
図1の順に移行)
キャップ装着過程を説明する。
図6に、
図4のキャップを筆記具本体5のペン先側に装着する過程を示す。
図6の状態において、外キャップ2に対する筆記具本体5の前方移動に伴い、第2係止部32と第2規制部22との前後方向の当接状態が解除されると同時に、内キャップ3外面が外キャップ2内面のガイド部24に接触して、外キャップ2の軸線に対する内キャップ3の軸線の傾きが、小さくなっている、または無くなっている。
【0028】
図1に、筆記具本体5のペン先側へのキャップ装着が完了した状態を示す。
図6の状態から、さらなる筆記具本体5の前方移動に伴い、筆記具本体52と外キャップ2の内側嵌合部23とが乗り越え嵌合し、その後、第1係止部31と第1規制部21とが前後方向に当接されて内キャップ3の前方移動が阻止され、さらなる筆記具本体5の前方移動に伴い、内キャップ3の内側シール部33と筆記具本体5の外側シール部51とが気密嵌合される。
【0029】
本実施の形態の筆記具のキャップ1は、外キャップ2と、該外キャップ2の内部に配置される内キャップ3とを備え、前記内キャップ3の内面が筆記具本体5のペン先側の外面と気密嵌合される筆記具のキャップであって、前記内キャップ3が前記外キャップ2の内部に前後方向に移動可能に配置され、前記外キャップ2の内面に、前記内キャップ3の前方移動を規制する第1規制部21と、前記内キャップ3の後方移動を規制する第2規制部22と、を備え、前記内キャップ3の外面に、前記第1規制部21と係止可能な第1係止部31と、前記第2規制部22と係止可能な第2係止部32と、を備え、前記キャップが筆記具本体5のペン先側の外面に装着された状態において、前記外キャップ2の第1規制部21と前記内キャップ3の第1係止部31とが前後方向に係止され、且つ前記内キャップ3内面と前記筆記具本体5のペン先側の外面とが気密嵌合され、前記筆記具本体5のペン先側を前記キャップから引く抜くこと(または前記キャップを前記筆記具本体5のペン先側から引く抜くこと)により、前記内キャップ3の軸線が前記外キャップ2の軸線に対して傾いた状態で前記内キャップ3の外面の第2係止部32と前記外キャップ2の内面の第2規制部22とが前後方向に係止される。
【0030】
それにより、本実施の形態の筆記具のキャップ1は、前記筆記具本体5のペン先側を前記キャップから引く抜くことにより、前記内キャップ3の軸線が前記外キャップ2の軸線に対して傾いた状態で前記内キャップ3の外面の第2係止部32と前記外キャップ2の内面の第2規制部22とが前後方向に係止され、それにより、前記内キャップ3の内面と前記筆記具本体5のペン先側の外面との気密嵌合が解除される。その結果、本実施の形態の筆記具のキャップ1は、内キャップ3と筆記具本体5とが強固に嵌合された場合でも、筆記具本体5から容易に取り外すことができる。
【0031】
本実施の形態の筆記具のキャップ1は、前記第1規制部21の後方且つ前記第2規制部22の前方の前記外キャップ2の内面に、前方に向かうに従い内径が小さくなる形状のガイド部24を備え、前記キャップを筆記具本体5のペン先側の外面に装着する過程で、前記内キャップ3の外面が前記ガイド部24に接触する。それにより、本実施の形態の筆記具のキャップ1は、前記キャップを筆記具本体5のペン先側の外面に装着する過程で、前記内キャップ3の外面が前記ガイド部24に接触することにより、外キャップ2の軸線に対して内キャップ3の軸線が傾いた状態が次第に解消され、その後、内キャップ3の第1係止部31と外キャップ2の第1規制部21とが前後方向に適正に係止されると同時に、筆記具本体5のペン先側の外面と内キャップ3の内面が適正に気密嵌合される。
【0032】
本実施の形態の筆記具のキャップ1は、前記第2係止部32が周状に形成され、前記第2係止部32が全周において前後方向の位置が一致され、前記第2規制部22が周状に形成され、前記第2規制部22の径方向に対向する位置が前後方向に異なる部分を有する。それにより、前記筆記具本体5のペン先側をキャップから引く抜くことにより、内キャップ3の軸線が外キャップ2の軸線に対して傾いた状態で内キャップ3の外面の第2係止部32と外キャップ2の内面の第2規制部22とが前後方向に係止される構造を、簡易な構造により得ることができる。
【0033】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を、
図7乃至
図12に示す。本実施の形態の筆記具のキャップ1は、外キャップ2と、該外キャップ2内に配置される内キャップ3とからなる。
【0034】
・外キャップ
外キャップ2は、内孔が前後方向に貫通された円筒体からなり、合成樹脂(例えば、ポリカーボネイト等)の射出成形により得られる。外キャップ2の内面に、第1規制部21が一体に形成される。第1規制部21より後方の外キャップ2の内面に、第2規制部22が一体に形成される。第2規制部22より後方の外キャップ2の内面(外キャップ2の後端開口部近傍内面)に、内側嵌合部23(例えば、環状突起または周状に分散配置される複数の突起)が一体に形成される。第1規制部21と第2規制部22との間(第1規制部21より後方且つ第2規制部22より前方)の外キャップ2の内面には、ガイド部24が形成される。尚、これ以外に、外キャップ2は前端が閉鎖され且つ後端が開口された構成であってよい。
【0035】
・第1規制部
第1規制部21は、環状の後ろ向き段部よりなる。第1規制部21は、全周囲において前後方向の位置が同一である。第1規制部21は、周状に分散配置される軸方向に延びる複数の突条でもよい。第1規制部21は、外キャップ2の前端部を閉鎖する閉鎖壁であってもよい。
【0036】
・第2規制部
第2規制部22は、周状に一体に形成された突起よりなる。第2規制部22は、全周囲において前後方向の位置が同一である。第2規制部22は、周状に連続した環状突起または周状に分散配置される複数の点状突起からなる。
【0037】
・ガイド部
ガイド部24は、内キャップ3の前端部外周が接触可能な前側ガイド部24aと、前側ガイド部24aより後方に連設され且つ内キャップ3の第2係止部32が接触可能な後側ガイド部24bとからなる。前側ガイド部24a及び後側ガイド部24bの両方が、前方に向かうに従い内径が小さくなる円錐面形状(即ち前方に向かうに従い軸心方向に接近する形状)を有する。前側ガイド部24aと軸線とがなす角度は、後側ガイド部24bと軸線とがなす角度より大きい。
【0038】
内キャップ3の第2係止部32が外キャップ2の第2規制部22と当接を開始した状態において(
図8の状態において)、ガイド部24と内キャップ3外面との間には、径方向の隙間が形成される。それにより、外キャップ2内のガイド部24の径方向の内方空間において、外キャップ2の軸線に対して内キャップ3の軸線が傾くことが可能となる。
【0039】
・内キャップ
内キャップ3は、前端が閉鎖され且つ後端が開口された有底円筒体からなり、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン等)の射出成形により得られる。内キャップ3の外面の前端外周縁部は、第1係止部31となる。第1係止部31より後方の内キャップ3の外周面には、第2係止部32が一体に形成される。第1係止部31は、全周囲において前後方向の位置が同一である。具体的には、第2係止部32は、点状突起または周状に分散配置される複数の突起からなる。第2係止部32より後方の内キャップ3の開口部内面には、環状の内側シール部33が形成される。内側シール部33は、例えば、環状平滑面または環状突起よりなる。
【0040】
第2係止部32は、径方向に対向する位置が前後方向に異なる部分を有する。具体的には、
図7乃至
図9に示すように、第2係止部32は、点状の後側突起32bと、該後側突起32bの前方に位置し且つ周状に延びる前側突起32aとからなり、前側突起32aは、後側突起32bより前方に延びる軸方向の仮想延長線上を除く領域に形成される。これ以外にも、第2係止部32が、点状の後側突起と、該後側突起の前方に位置し且つ周状に分散配置される点状の複数の前側突起とからなり、前側突起が、後側突起より後方に延びる軸方向の仮想延長線上を除く領域に形成される構成でもよい。前側突起32aと後側突起32bとの前後方向の距離bは、内キャップ3が外キャップ2内部のガイド部24の径方向の内方空間で、外キャップ2の軸線に対して内キャップ3の軸線がわずかに傾くように設定される。
【0041】
・筆記具本体
筆記具本体5の一端にはペン先53が設けられ、筆記具本体5のペン先側の外面には、ペン先近傍の外周面に形成される外側シール部51と、該外側シール部51より後方に形成される外側嵌合部52(例えば、環状突起、または周状に分散配置される複数の突起)とを備える。外側嵌合部52は、外キャップ2内面の内側嵌合部23が複数の突起の場合は、環状突起が好ましく、外キャップ2内面の内側嵌合部23が環状突起の場合は、複数の突起が好ましい。ペン先53は、例えば、ボールペンチップ、繊維または多孔質材料からなるマーキングペンペン先、毛筆体、先端にスリットを有する金属板からなる万年筆ペン先等が挙げられる。
【0042】
・キャップ取り外し過程(
図7→
図8→
図10の順に移行)
キャップ取り外し過程を説明する。
図7に、筆記具本体5のペン先側外面にキャップが装着された状態を示す。この状態において、内キャップ3の第1係止部31と外キャップ2の第1規制部21とが前後方向に当接され、且つ内キャップ3の第2係止部32が外キャップ2の第2規制部22より前方に離間されている。また、この状態において、筆記具本体5のペン先側の外側シール部51と内キャップ3の内側シール部33とが環状に気密嵌合され、且つ外キャップ2の内側嵌合部23と筆記具本体5の外側嵌合部52とが嵌合(具体的には抜け止め係合)されている。
【0043】
図8に、
図1の状態から、筆記具本体5のキャップからの引き抜き動作を開始し、筆記具本体5の後方移動に伴い内キャップ3が後方移動し、第2係止部32の片側(後側突起32b)と第2規制部22との前後方向の当接が開始された状態を示す。また、この状態において、外キャップ2の内側嵌合部23と筆記具本体5の外側嵌合部52との嵌合が解除されている。
【0044】
図10に、キャップの取り外しが完了した状態を示す。
図8の状態からさらなる筆記具本体5の後方移動に伴い、第2係止部32の片側(後側突起32b)と第2規制部22との当接により、内キャップ3が後側突起32bを支点にして軸線に対して傾き、第2係止部32の片側(後側突起32b)の径方向反対側の第2係止部32(前側突起32a)と第2規制部22とが当接される。それにより、内キャップ3の内側シール部33と筆記具本体5の外側シール部51との気密嵌合が解除されるとともに、内キャップ3の後方移動が阻止される。この状態において、外キャップ2の軸線と内キャップ3の軸線とのなす角度は、2度~5度の範囲に設定される。
【0045】
・キャップ装着過程(
図10→
図12→
図7の順に移行)
キャップ装着過程を説明する。
図12に、
図11のキャップを筆記具本体5のペン先側に装着する過程を示す。
図12の状態において、外キャップ2に対する筆記具本体5の前方移動に伴い、第2係止部32と第2規制部22との前後方向の当接状態が解除されると同時に、内キャップ3外面が外キャップ2内面のガイド部24に接触して、外キャップ2の軸線に対する内キャップ3の軸線の傾きが、小さくなっている、または無くなっている。
【0046】
図7に、筆記具本体5のペン先側へのキャップ装着が完了した状態を示す。
図12の状態から、さらなる筆記具本体5の前方移動に伴い、筆記具本体5の外側嵌合部52と外キャップ2の内側嵌合部23とが乗り越え嵌合し、その後、第1係止部31と第1規制部21とが前後方向に当接されて内キャップ3の前方移動が阻止され、さらなる筆記具本体5の前方移動に伴い、内キャップ3の内側シール部33と筆記具本体5の外側シール部51とが気密嵌合される。
【0047】
本実施の形態の筆記具のキャップ1は、外キャップ2と、該外キャップ2の内部に配置される内キャップ3とを備え、前記内キャップ3の内面が筆記具本体5のペン先側の外面と気密嵌合される筆記具のキャップであって、前記内キャップ3が前記外キャップ2の内部に前後方向に移動可能に配置され、前記外キャップ2の内面に、前記内キャップ3の前方移動を規制する第1規制部21と、前記内キャップ3の後方移動を規制する第2規制部22と、を備え、前記内キャップ3の外面に、前記第1規制部21と係止可能な第1係止部31と、前記第2規制部22と係止可能な第2係止部32と、を備え、前記キャップが筆記具本体5のペン先側の外面に装着された状態において、前記外キャップ2の第1規制部21と前記内キャップ3の第1係止部31とが前後方向に係止され、且つ前記内キャップ3内面と前記筆記具本体5のペン先側の外面とが気密嵌合され、前記筆記具本体5のペン先側を前記キャップから引く抜くこと(または前記キャップを前記筆記具本体5のペン先側から引く抜くこと)により、前記内キャップ3の軸線が前記外キャップ2の軸線に対して傾いた状態で前記内キャップ3の外面の第2係止部32と前記外キャップ2の内面の第2規制部22とが前後方向に係止される。
【0048】
それにより、本実施の形態の筆記具のキャップ1は、前記筆記具本体5のペン先側を前記キャップから引く抜くことにより、前記内キャップ3の軸線が前記外キャップ2の軸線に対して傾いた状態で前記内キャップ3の外面の第2係止部32と前記外キャップ2の内面の第2規制部22とが前後方向に係止され、それにより、前記内キャップ3の内面と前記筆記具本体5のペン先側の外面との気密嵌合が解除される。その結果、本実施の形態の筆記具のキャップ1は、内キャップ3と筆記具本体5とが強固に嵌合された場合でも、筆記具本体5から容易に取り外すことができる。
【0049】
本実施の形態の筆記具のキャップ1は、前記第1規制部21の後方且つ前記第2規制部22の前方の前記外キャップ2の内面に、前方に向かうに従い内径が小さくなる形状のガイド部24を備え、前記キャップを筆記具本体5のペン先側の外面に装着する過程で、前記内キャップ3の外面が前記ガイド部24に接触する。それにより、本実施の形態の筆記具のキャップ1は、前記キャップを筆記具本体5のペン先側の外面に装着する過程で、前記内キャップ3の外面が前記ガイド部24に接触することにより、外キャップ2の軸線に対して内キャップ3の軸線が傾いた状態が次第に解消され、その後、内キャップ3の第1係止部31と外キャップ2の第1規制部21とが前後方向に適正に係止されると同時に、筆記具本体5のペン先側の外面と内キャップ3の内面が適正に気密嵌合される。
【0050】
本実施の形態の筆記具のキャップ1は、前記第2規制部22が周状に形成され、前記第2規制部22が全周において前後方向の位置が一致され、前記第2係止部32が周状に形成され、前記第2係止部32の径方向に対向する位置が前後方向に異なる部分を有することにより、前記筆記具本体5のペン先側をキャップから引く抜くことにより、内キャップ3の軸線が外キャップ2の軸線に対して傾いた状態で内キャップ3の外面の第2係止部32と外キャップ2の内面の第2規制部22とが前後方向に係止される構造を、簡易な構造により得ることができる。
【0051】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を
図13に示す。本実施の形態の筆記具のキャップ1は、第1の実施の形態の変形例であり、第1の実施の形態と異なる点は、内キャップ3を後方に付勢すする弾発体4(例えばコイルスプリング)を外キャップ2内に配置した点であり、他の構成及び作用効果は第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
弾発体4の前端は、外キャップ2内面の第1規制部21より前方の係止段部25に係止され、弾発体4の後端は、内キャップ3の前端面に当接される。本実施の形態の筆記具のキャップ1は、筆記具本体5から外した状態において、弾発体4により第2係止部32が第2規制部22に常時、圧接される。それにより、キャップを筆記具本体5から外した状態において、外キャップ2内での内キャップ3のがたつきを防止できる。
【符号の説明】
【0053】
1 筆記具のキャップ
2 外キャップ
21 第1規制部
22 第2規制部
22a 前側突起
22b 後側突起
23 内側嵌合部
24 ガイド部
24a 前側ガイド部
24b 後側ガイド部
25 係止段部
3 内キャップ
31 第1係止部
32 第2係止部
32a 前側突起
32b 後側突起
33 内側シール部
4 弾発体
5 筆記具本体
51 外側シール部
52 外側嵌合部
53 ペン先