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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099620
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】電源装置及び電源装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213482
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】指田 和之
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 健一
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730BB62
5H730BB82
5H730BB85
5H730BB88
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE07
5H730FD01
5H730FD31
5H730FG12
(57)【要約】
【課題】突入電流を抑制できる電源装置及び電源装置の制御方法を提供する。
【解決手段】電源装置は、複数のコンバータと、複数のコンバータの出力電圧を整流して負荷へ出力する複数の整流アームを含む、整流回路と、複数のコンバータを制御する制御回路と、を備える。複数のコンバータの各々の一方の出力端子は、各々の隣のコンバータの他方の出力端子に電気的に接続されるとともに、複数の整流アームの内の1つの整流アームに電気的に接続されている。制御回路は、電源オン時に、複数のコンバータを、1つずつ動作開始させる制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンバータと、
前記複数のコンバータの出力電圧を整流して負荷へ出力する複数の整流アームを含む、整流回路と、
前記複数のコンバータを制御する制御回路と、
を備え、
前記複数のコンバータの各々の一方の出力端子は、各々の隣のコンバータの他方の出力端子に電気的に接続されるとともに、前記複数の整流アームの内の1つの整流アームに電気的に接続され、
前記制御回路は、
電源オン時に、前記複数のコンバータを、1つずつ動作開始させる制御を行う、
ことを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記複数のコンバータの内の1つのコンバータを動作開始させてから予め定められた閾値時間が経過したタイミングで、次のコンバータを動作開始させる制御を行う、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記複数のコンバータの内の1つのコンバータを動作開始させ、出力電流が予め定められた閾値電流以下になったタイミングで、次のコンバータを動作開始させる制御を行う、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記複数のコンバータの各々は、電流共振コンバータである、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
複数のコンバータと、前記複数のコンバータの巻線電圧を整流して負荷へ出力する複数の整流アームを含む、整流回路と、前記複数のコンバータを制御する制御回路と、を備え、前記複数のコンバータの各々の一方の出力端子は、各々の隣のコンバータの他方の出力端子に電気的に接続されるとともに、前記複数の整流アームの内の1つの整流アームに電気的に接続された、電源装置の制御方法であって、
電源オン時に、前記複数のコンバータを、1つずつ動作開始させる、
ことを特徴とする、電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及び電源装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1から第3のスイッチングレグの全てのスイッチング素子をスイッチング動作させる第1の動作モードと、第1から第3のスイッチングレグのうち少なくとも1つ以上のスイッチングレグの上下どちらか一方のスイッチング素子を常にオンとし、他方のスイッチング素子を常にオフとなるように動作させる第2の動作モードと、を備える電力変換装置が、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-173961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電流共振コンバータを直列接続した電源装置において、電源オン時に、大きな突入電流が流れる。
【0005】
本発明は、突入電流を抑制できる電源装置及び電源装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の電源装置は、
複数のコンバータと、
前記複数のコンバータの巻線電圧を整流して負荷へ出力する複数の整流アームを含む、整流回路と、
前記複数のコンバータを制御する制御回路と、
を備え、
前記複数のコンバータの各々の一方の出力端子は、各々の隣のコンバータの他方の出力端子に電気的に接続されるとともに、前記複数の整流アームの内の1つの整流アームに電気的に接続され、
前記制御回路は、
電源オン時に、前記複数のコンバータを、1つずつ動作開始させる制御を行う、
ことを特徴とする。
【0007】
前記電源装置において、
前記制御回路は、
前記複数のコンバータの内の1つのコンバータを動作開始させてから予め定められた閾値時間が経過したタイミングで、次のコンバータを動作開始させる制御を行う、
ことを特徴とする。
【0008】
前記電源装置において、
前記制御回路は、
前記複数のコンバータの内の1つのコンバータを動作開始させ、出力電流が予め定められた閾値電流以下になったタイミングで、次のコンバータを動作開始させる制御を行う、
ことを特徴とする。
【0009】
前記電源装置において、
前記複数のコンバータの各々は、電流共振コンバータである、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様の電源装置の制御方法は、
複数のコンバータと、前記複数のコンバータの巻線電圧を整流して負荷へ出力する複数の整流アームを含む、整流回路と、前記複数のコンバータを制御する制御回路と、を備え、前記複数のコンバータの各々の一方の出力端子は、各々の隣のコンバータの他方の出力端子に電気的に接続されるとともに、前記複数の整流アームの内の1つの整流アームに電気的に接続された、電源装置の制御方法であって、
電源オン時に、前記複数のコンバータを、1つずつ動作開始させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様の電源装置及び電源装置の制御方法は、突入電流を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施の形態の電源装置の回路構成を示す図である。
図2図2は、第1の実施の形態の電源装置のフルブリッジ回路の回路構成を示す図である。
図3図3は、第1の実施の形態の電源装置のモードを示す図である。
図4図4は、第1の実施の形態の電源装置の2次巻線側の電圧(電流)の方向を示す図である。
図5図5は、比較例の電源装置の出力電圧及び出力電流を示す図である。
図6図6は、第1の実施の形態の電源装置の制御回路の電源オン時の動作を示すフローチャートである。
図7図7は、第1の実施の形態の電源装置の出力電圧及び出力電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の電源装置及び電源装置の制御方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
<第1の実施の形態及び比較例>
(全体構成)
図1は、第1の実施の形態の電源装置の回路構成を示す図である。電源装置1は、直流電源21から出力されコンデンサ22で平滑化後の直流電圧Vinの供給を受けて、出力電圧Voutを負荷23へ出力する。
【0015】
電源装置1は、第1電流共振コンバータ2-1から第4電流共振コンバータ2-4までと、整流回路3と、制御回路4と、コンデンサ5と、電圧センサ6と、電流センサ7と、を含む。
【0016】
なお、第1の実施の形態では、電流共振コンバータの数を偶数(偶数の代表として4個)としたが、本開示はこれに限定されない。電流共振コンバータの数は、奇数であっても良い。第1の実施の形態では、電流共振コンバータの数を4個としたが、電流共振コンバータの数は、2個であっても良いし、6個以上であっても良い。
【0017】
また、各コンバータは、電流共振コンバータに限定されない。
【0018】
第1電流共振コンバータ2-1から第4電流共振コンバータ2-4までの各々は、LLC共振を利用した電流共振コンバータ(LLCコンバータ)である。第1電流共振コンバータ2-1から第4電流共振コンバータ2-4までの各々は、コンデンサ22に電気的に接続されている。第1電流共振コンバータ2-1から第4電流共振コンバータ2-4までの各々には、直流電源21から出力されコンデンサ22で平滑化後の直流電圧Vinが入力される。
【0019】
第1電流共振コンバータ2-1は、第1フルブリッジ回路FB1と、第1トランスT1と、を含む。第1電流共振コンバータ2-1は、第1フルブリッジ回路FB1と第1トランスT1との間に、漏れインダクタンス14-1と、コンデンサ15-1と、を含む。漏れインダクタンス14-1は、第1トランスT1に含んでも良い。
【0020】
第2電流共振コンバータ2-2は、第2フルブリッジ回路FB2と、第2トランスT2と、を含む。第2電流共振コンバータ2-2は、第2フルブリッジ回路FB2と第2トランスT2との間に、漏れインダクタンス14-2と、コンデンサ15-2と、を含む。漏れインダクタンス14-2は、第2トランスT2に含んでも良い。
【0021】
第3電流共振コンバータ2-3は、第3フルブリッジ回路FB3と、第3トランスT3と、を含む。第3電流共振コンバータ2-3は、第3フルブリッジ回路FB3と第3トランスT3との間に、漏れインダクタンス14-3と、コンデンサ15-3と、を含む。漏れインダクタンス14-3は、第3トランスT3に含んでも良い。
【0022】
第4電流共振コンバータ2-4は、第4フルブリッジ回路FB4と、第4トランスT4と、を含む。第4電流共振コンバータ2-4は、第4フルブリッジ回路FB4と第4トランスT4との間に、漏れインダクタンス14-4と、コンデンサ15-4と、を含む。漏れインダクタンス14-4は、第4トランスT4に含んでも良い。
【0023】
図2は、第1の実施の形態の電源装置のフルブリッジ回路の回路構成を示す図である。なお、図2では、第1フルブリッジ回路FB1の回路構成を示しているが、第2フルブリッジ回路FB2から第4フルブリッジ回路FB4までの回路構成は、第1フルブリッジ回路FB1の回路構成と同様であるので、図示及び説明を省略する。
【0024】
第1フルブリッジ回路FB1は、第1アーム30-1及び第2アーム30-2を含む。第1アーム30-1は、ハイサイドのトランジスタTr1-1と、ローサイドのトランジスタTr1-2と、を含む。第2アーム30-2は、ハイサイドのトランジスタTr2-1と、ローサイドのトランジスタTr2-2と、を含む。
【0025】
なお、本開示では、各トランジスタがMOSFETであることとしたが、これに限定されない。各トランジスタは、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイス、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などでも良い。
【0026】
各トランジスタは、寄生ダイオード(ボディダイオード)を有する。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。寄生ダイオードは、トランジスタのオフ時の過渡的な逆起電力を逃すためのフリーホイールダイオードとして利用可能である。
【0027】
トランジスタTr1-1のソースは、トランジスタTr1-2のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr2-1のソースは、トランジスタTr2-2のドレインに電気的に接続されている。
【0028】
トランジスタTr1-1のドレイン及びトランジスタTr2-1のドレインは、コンデンサ22の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。トランジスタTr1-2のソース及びトランジスタTr2-2のソースは、コンデンサ22の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0029】
トランジスタTr1-1のドレインとトランジスタTr2-1のドレインとの接続点が、第1フルブリッジ回路FB1の一方の入力端子である。トランジスタTr1-2のソースとトランジスタTr2-2のソースとの接続点が、第1フルブリッジ回路FB1の他方の入力端子である。
【0030】
第1フルブリッジ回路FB1の2つの入力端子には、直流電圧Vinが入力される。
【0031】
トランジスタTr1-1のソースとトランジスタTr1-2のドレインとの接続点が、第1フルブリッジ回路FB1の一方の出力端子である。トランジスタTr1-2のソースとトランジスタTr2-2のドレインとの接続点が、第1フルブリッジ回路FB1の他方の出力端子である。
【0032】
第1フルブリッジ回路FB1は、直流電圧Vin、直流電圧-Vin、又は、ゼロ電圧を、一方の出力端子と他方の出力端子との間に出力する。
【0033】
例えば、第1フルブリッジ回路FB1は、トランジスタTr1-1及びトランジスタTr2-2がオン状態、且つ、トランジスタTr1-2及びトランジスタTr2-1がオフ状態の場合、直流電圧Vinを、一方の出力端子と他方の出力端子との間に出力する。
【0034】
また例えば、第1フルブリッジ回路FB1は、トランジスタTr1-1及びトランジスタTr2-2がオフ状態、且つ、トランジスタTr1-2及びトランジスタTr2-1がオン状態の場合、直流電圧-Vinを、一方の出力端子と他方の出力端子との間に出力する。
【0035】
また例えば、第1フルブリッジ回路FB1は、トランジスタTr1-1からトランジスタTr2-2までがオフ状態の場合、ゼロ電圧を、一方の出力端子と他方の出力端子との間に出力する。
【0036】
再び図1を参照すると、第1トランスT1は、1次巻線10-1と、2次巻線11-1と、コア12-1と、を含む。1次巻線10-1及び2次巻線11-1は、コア12-1に巻回されている。
【0037】
1次巻線10-1は、励磁インダクタンス13-1と、漏れインダクタンス14-1と、を含む。1次巻線10-1の一端は、コンデンサ15-1を介して、第1フルブリッジ回路FB1の一方の出力端子に電気的に接続されている。1次巻線10-1の他端は、第1フルブリッジ回路FB1の他方の出力端子に電気的に接続されている。励磁インダクタンス13-1、漏れインダクタンス14-1及びコンデンサ15-1は、LLC共振回路を構成する。
【0038】
なお、本開示では、LLC共振回路が1次巻線10-1の側にあることとしたが、これに限定されない。LLC共振回路は、2次巻線11-1の側にあっても良い。また、LLC共振回路は、1次巻線10-1の側と、2次巻線11-1の側と、の両側にあっても良い。
【0039】
第2トランスT2は、1次巻線10-2と、2次巻線11-2と、コア12-2と、を含む。1次巻線10-2は、励磁インダクタンス13-2と、漏れインダクタンス14-2と、を含む。第2トランスT2のこれらの要素の接続関係は、第1トランスT1と同様であるので、説明を省略する。
【0040】
第3トランスT3は、1次巻線10-3と、2次巻線11-3と、コア12-3と、を含む。1次巻線10-3は、励磁インダクタンス13-3と、漏れインダクタンス14-3と、を含む。第3トランスT3のこれらの要素の接続関係は、第1トランスT1と同様であるので、説明を省略する。
【0041】
第4トランスT4は、1次巻線10-4と、2次巻線11-4と、コア12-4と、を含む。1次巻線10-4は、励磁インダクタンス13-4と、漏れインダクタンス14-4と、を含む。第4トランスT4のこれらの要素の接続関係は、第1トランスT1と同様であるので、説明を省略する。
【0042】
整流回路3は、ブリッジダイオードである。整流回路3は、第1整流アーム3-1から第5整流アーム3-5までを含む。
【0043】
第1整流アーム3-1は、ハイサイドのダイオードD1-1と、ローサイドのダイオードD1-2と、を含む。ダイオードD1-1のアノードは、ダイオードD1-2のカソードに電気的に接続されている。
【0044】
ダイオードD1-1のアノードとダイオードD1-2のカソードとの接続点が、第1整流アーム3-1の入力端子である。ダイオードD1-1のカソードが、第1整流アーム3-1の一方(高電位側)の出力端子である。ダイオードD1-2のアノードが、第1整流アーム3-1の他方(低電位側)の出力端子である。
【0045】
第2整流アーム3-2は、ハイサイドのダイオードD2-1と、ローサイドのダイオードD2-2と、を含む。ダイオードD2-1のアノードは、ダイオードD2-2のカソードに電気的に接続されている。
【0046】
ダイオードD2-1のアノードとダイオードD2-2のカソードとの接続点が、第2整流アーム3-2の入力端子である。ダイオードD2-1のカソードが、第2整流アーム3-2の一方(高電位側)の出力端子である。ダイオードD2-2のアノードが、第2整流アーム3-2の他方(低電位側)の出力端子である。
【0047】
第3整流アーム3-3は、ハイサイドのダイオードD3-1と、ローサイドのダイオードD3-2と、を含む。ダイオードD3-1のアノードは、ダイオードD3-2のカソードに電気的に接続されている。
【0048】
ダイオードD3-1のアノードとダイオードD3-2のカソードとの接続点が、第3整流アーム3-3の入力端子である。ダイオードD3-1のカソードが、第3整流アーム3-3の一方(高電位側)の出力端子である。ダイオードD3-2のアノードが、第3整流アーム3-3の他方(低電位側)の出力端子である。
【0049】
第4整流アーム3-4は、ハイサイドのダイオードD4-1と、ローサイドのダイオードD4-2と、を含む。ダイオードD4-1のアノードは、ダイオードD4-2のカソードに電気的に接続されている。
【0050】
ダイオードD4-1のアノードとダイオードD4-2のカソードとの接続点が、第4整流アーム3-4の入力端子である。ダイオードD4-1のカソードが、第4整流アーム3-4の一方(高電位側)の出力端子である。ダイオードD4-2のアノードが、第4整流アーム3-4の他方(低電位側)の出力端子である。
【0051】
第5整流アーム3-5は、ハイサイドのダイオードD5-1と、ローサイドのダイオードD5-2と、を含む。ダイオードD5-1のアノードは、ダイオードD5-2のカソードに電気的に接続されている。
【0052】
ダイオードD5-1のアノードとダイオードD5-2のカソードとの接続点が、第5整流アーム3-5の入力端子である。ダイオードD5-1のカソードが、第5整流アーム3-5の一方の出力端子である。ダイオードD5-2のアノードが、第5整流アーム3-5の他方の出力端子である。
【0053】
第1整流アーム3-1の入力端子は、第1トランスT1の2次巻線11-1の一端11-1aに電気的に接続されている。第2整流アーム3-2の入力端子は、第1トランスT1の2次巻線11-1の他端11-1b及び第2トランスT2の2次巻線11-2の一端11-2aに電気的に接続されている。第3整流アーム3-3の入力端子は、第2トランスT2の2次巻線11-2の他端11-2b及び第3トランスT3の2次巻線11-3の一端11-3aに電気的に接続されている。
【0054】
第4整流アーム3-4の入力端子は、第3トランスT3の2次巻線11-3の他端11-3b及び第4トランスT4の2次巻線11-4の一端11-4aに電気的に接続されている。第5整流アーム3-5の入力端子は、第4トランスT4の2次巻線11-4の他端11-4bに電気的に接続されている。
【0055】
つまり、第1電流共振コンバータ2-1から第4電流共振コンバータ2-4までの各々の一方の出力端子は、各々の隣(図1中で1つ上)の電流共振コンバータの他方の出力端子に電気的に接続されているとともに、第1整流アーム3-1から第5整流アーム3-5までの内の1つの整流アームに電気的に接続されている。例えば、第4電流共振コンバータ2-4の一方の出力端子(2次巻線11-4の一端11-4a)は、隣(図1中で1つ上)の第3電流共振コンバータ2-3の他方の出力端子(2次巻線11-3の他端11-3b)に電気的に接続されているとともに、第4整流アーム3-4に電気的に接続されている。なお、第1電流共振コンバータ2-1の一方の出力端子(2次巻線11-1の一端11-1a)は、単独で、第1整流アーム3-1に電気的に接続されている。
【0056】
なお、本開示において、隣の電流共振コンバータとは、地理的な配置が隣であることに限定されず、電気的(配線的)に隣であれば良い。例えば、図1において、第1電流共振コンバータ2-1と第2電流共振コンバータ2-2とが、地理的に隣に配置されていることに限定されない。但し、配線の簡易化、配線長の抑制等の観点から、隣の電流共振コンバータとは、地理的な配置が隣であり、且つ、電気的(配線的)に隣であることが好ましい。
【0057】
ダイオードD1-1からD5-1までのカソードは、電気的に接続されており、整流回路3の一方(高電位側)の出力端子である。ダイオードD1-2からD5-2までのアノードは、電気的に接続されており、整流回路3の他方(低電位側)の出力端子である。ダイオードD1-1からD5-1までのカソードは、コンデンサ5の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。ダイオードD1-2からD5-2までのアノードは、コンデンサ5の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0058】
整流回路3は、2次巻線11-1から11-4までに励磁される電圧を全波整流して、コンデンサ5に出力する。コンデンサ5は、整流回路3で全波整流された電圧を平滑化する。コンデンサ5の電圧が、出力電圧Voutである。
【0059】
コンデンサ5の一端(高電位側端)は、負荷23の一端(例えば、リチウムイオン電池の正極)に電気的に接続されている。コンデンサ5の他端(低電位側端)は、負荷23の他端(例えば、リチウムイオン電池の負極)に電気的に接続されている。
【0060】
負荷23には、コンデンサ5で平滑化された出力電圧Voutが入力される。例えば、負荷23がリチウムイオン電池である場合には、リチウムイオン電池は、コンデンサ5で平滑化された出力電圧Voutによって、充電される。
【0061】
電圧センサ6は、出力電圧Voutを検出して、電圧検出信号Sを制御回路4に出力する。電流センサ7は、負荷23に流れる出力電流Ioutを検出して、電流検出信号Sを制御回路4に出力する。
【0062】
出力設定部24は、出力電圧Voutの電圧設定値信号S及び出力電流Ioutの電流設定値信号Sを制御回路4に出力する。
【0063】
例えば、負荷23がリチウムイオン電池である場合に、出力設定部24は、出力電流Ioutを5Aで一定に維持したまま出力電圧Voutを50Vから1000Vまで変化させる電圧設定値信号S及び電流設定値信号Sを、制御回路4に出力する。つまり、出力設定部24は、電流設定値信号Sの信号値を「5A」に維持したまま、電圧設定値信号Sの信号値を「50V」から「1000V」まで変化させる。そして、出力設定部24は、出力電圧Voutが1000Vに達したら、出力電圧Voutを1000Vで一定に維持したまま出力電流Ioutを5Aから0Aまで変化させる電圧設定値信号S及び電流設定値信号Sを、制御回路4に出力する。つまり、出力設定部24は、電圧設定値信号Sの信号値を「1000V」に維持したまま、電流設定値信号Sの信号値を「5A」から「0A」まで変化させる。
【0064】
電圧設定値信号S及び電流設定値信号Sは、CHAdeMO(商標)に則った信号であることが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0065】
制御回路4は、電圧センサ6から入力される電圧検出信号S、電流センサ7から入力される電流検出信号S、出力設定部24から入力される電圧設定値信号S及び電流設定値信号Sに基づき、モード(動作するコンバータの数)を切り替える。そして、制御回路4は、出力電圧Vout及び出力電流Ioutの各々が設定値になるように、スイッチング制御信号を第1フルブリッジ回路FB1から第4フルブリッジ回路FB4までに出力する。
【0066】
図3は、第1の実施の形態の電源装置のモードを示す図である。電源装置1は、第1モードから第4モードまでの4つのモードを有する。
【0067】
表50の第1列51に示すように、第1モードでは、第1電流共振コンバータ2-1から第4電流共振コンバータ2-4までの全部がオン(動作)する。第1モードが、出力が最も大きいモードである。
【0068】
表50の第2列52に示すように、第2モードでは、第1電流共振コンバータ2-1から第3電流共振コンバータ2-3までがオンし、第4電流共振コンバータ2-4がオフ(停止)する。第2モードが、出力が2番目に大きいモードである。
【0069】
表50の第3列53に示すように、第3モードでは、第1電流共振コンバータ2-1及び第2電流共振コンバータ2-2がオンし、第3電流共振コンバータ2-3及び第4電流共振コンバータ2-4がオフする。第3モードが、出力が3番目に大きいモードである。
【0070】
表50の第4列54に示すように、第4モードでは、第1電流共振コンバータ2-1がオンし、第2電流共振コンバータ2-2から第4電流共振コンバータ2-4までがオフする。第4モードが、出力が最も小さいモードである。
【0071】
図4は、第1の実施の形態の電源装置の2次巻線側の電圧(電流)の方向を示す図である。詳しくは、図4は、第1トランスT1の1次巻線10-1に正極性の電圧61が印加され、第2トランスT2の1次巻線10-2に正極性の電圧62が印加される場合の、第1トランスT1及び第2トランスT2の2次巻線側の電圧(電流)の方向を示す図である。
【0072】
この場合、第1トランスT1の1次巻線10-1には、矢印63で示す方向に電圧が生じ、第2トランスT2の1次巻線10-2には、矢印64で示す方向に電圧が生じる。従って、第1トランスT1及び第2トランスT2の2次巻線側には、矢印65で示すように、ダイオードD1-2→第1トランスT1の2次巻線11-1の一端11-1a→第1トランスT1の2次巻線11-1の他端11-1b→第2トランスT2の2次巻線11-2の一端11-2a→第2トランスT2の2次巻線11-2の他端11-2b→ダイオードD3-1の経路に、電圧が生じる。
【0073】
つまり、1つの電流共振コンバータと隣の電流共振コンバータとの出力極性が同じの場合は、2次巻線側は、直列接続(電圧加算)となる。
【0074】
制御回路4は、1つの電流共振コンバータと隣の電流共振コンバータとの出力極性を同じに制御することにより、電流を維持したまま、電圧を高くすることができる。
【0075】
(比較例)
比較例では、制御回路4は、電源オン時に、第1電流共振コンバータ2-1から第4電流共振コンバータ2-4までの全部を一斉に動作開始させる。
【0076】
図5は、比較例の電源装置の出力電圧及び出力電流を示す図である。波形71は、出力電流Ioutの波形である。波形72は、出力電圧Voutの波形である。
【0077】
タイミングtにおいて、第1電流共振コンバータ2-1から第4電流共振コンバータ2-4までの全部が一斉に動作開始すると、波形71で示すように、出力電流Ioutは、大きな突入電流Iとなる。出力電流Ioutは、時間が経過するに従って減少して行き、やがて電流Iに収束する。また、波形72で示すように、出力電圧Voutは、時間が経過するに従って上昇して行き、やがて電圧Vに収束する。
【0078】
このように大きな突入電流Iが流れると、直流電源21、コンデンサ22、ダイオードD1-1からD5-2まで、コンデンサ5及び負荷23等へのピーク電流の負担が大きい。また、コンデンサ22、ダイオードD1-1からD5-2まで及びコンデンサ5を大きな部品にする必要があるので、装置が大型化し、高コスト化する。
【0079】
(第1の実施の形態)
図6は、第1の実施の形態の電源装置の制御回路の電源オン時の動作を示すフローチャートである。
【0080】
図6を参照すると、制御回路4は、ステップS10において、第1電流共振コンバータ2-1を動作開始させる。つまり、制御回路4は、電源装置1を第4モードで動作させる。
【0081】
制御回路4は、ステップS12において、予め定められた閾値時間が経過したか否かを判定する。制御回路4は、閾値時間が経過していないと判定したら(ステップS12でNo)、ステップS12で待機する。制御回路4は、閾値時間が経過したと判定したら(ステップS12でYes)、処理をステップS14に進める。
【0082】
制御回路4は、ステップS14において、第2電流共振コンバータ2-2を動作開始させる。つまり、制御回路4は、電源装置1を第3モードで動作させる。
【0083】
制御回路4は、ステップS16において、閾値時間が経過したか否かを判定する。制御回路4は、閾値時間が経過していないと判定したら(ステップS16でNo)、ステップS16で待機する。制御回路4は、閾値時間が経過したと判定したら(ステップS16でYes)、処理をステップS18に進める。
【0084】
制御回路4は、ステップS18において、第3電流共振コンバータ2-3を動作開始させる。つまり、制御回路4は、電源装置1を第2モードで動作させる。
【0085】
制御回路4は、ステップS20において、閾値時間が経過したか否かを判定する。制御回路4は、閾値時間が経過していないと判定したら(ステップS20でNo)、ステップS20で待機する。制御回路4は、閾値時間が経過したと判定したら(ステップS20でYes)、処理をステップS22に進める。
【0086】
制御回路4は、ステップS22において、第4電流共振コンバータ2-4を動作開始させる。つまり、制御回路4は、電源装置1を第1モードで動作させる。その後、制御回路4は、電源オン時の処理を終了する。
【0087】
このように、第1の実施の形態の電源装置1の制御回路4は、複数の電流共振コンバータを、1つずつ動作開始させる。
【0088】
図7は、第1の実施の形態の電源装置の出力電圧及び出力電流を示す図である。波形73は、出力電流Ioutの波形である。波形74は、出力電圧Voutの波形である。
【0089】
タイミングt10において、第1電流共振コンバータ2-1が動作開始すると、波形73で示すように、出力電流Ioutは、小さな突入電流I10となる。ここで、I10<Iである。出力電流Ioutは、時間が経過するに従って減少して行き、やがて電流I11に収束する。また、波形74で示すように、出力電圧Voutは、時間が経過するに従って上昇して行く。
【0090】
タイミングt10から閾値時間経過後のタイミングt11において、第2電流共振コンバータ2-2が動作開始すると、波形73で示すように、出力電流Ioutは、小さな突入電流となる。出力電流Ioutは、時間が経過するに従って減少して行き、やがて収束する。また、波形74で示すように、出力電圧Voutは、時間が経過するに従って上昇して行く。
【0091】
タイミングt11から閾値時間経過後のタイミングt12において、第3電流共振コンバータ2-3が動作開始すると、波形73で示すように、出力電流Ioutは、小さな突入電流となる。出力電流Ioutは、時間が経過するに従って減少して行き、やがて収束する。また、波形74で示すように、出力電圧Voutは、時間が経過するに従って上昇して行く。
【0092】
タイミングt12から閾値時間経過後のタイミングt13において、第4電流共振コンバータ2-4が動作開始すると、波形73で示すように、出力電流Ioutは、小さな突入電流となる。出力電流Ioutは、時間が経過するに従って減少して行き、やがて収束する。また、波形74で示すように、出力電圧Voutは、時間が経過するに従って上昇して行く。
【0093】
以上説明したように、第1の実施の形態の電源装置1は、比較例と比較して、突入電流I10を、突入電流Iよりも小さくすることができる。これにより、電源装置1は、直流電源21、コンデンサ22、ダイオードD1-1からD5-2まで、コンデンサ5及び負荷23等へのピーク電流の負担を軽減できる。また、電源装置1は、コンデンサ22、ダイオードD1-1からD5-2まで及びコンデンサ5を大きな部品にしなくて済むので、装置を小型化でき、低コスト化することができる。
【0094】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の電源装置の回路構成は、第1の実施の形態の電源装置1の回路構成と同様であるので、図示及び説明を省略する。
【0095】
第1の実施の形態では、制御回路4は、1つの電流共振コンバータを動作開始させてから閾値時間が経過したタイミングで、次の電流共振コンバータを動作開始させる。
【0096】
一方、第2の実施の形態では、制御回路4は、1つの電流共振コンバータを動作開始させ、出力電流Ioutが予め定められた閾値電流以下になったタイミングで、次の電流共振コンバータを動作開始させる。
【0097】
この場合、制御回路4は、第1の実施の形態で説明した図6のフローチャートのステップS12、S16及びS20の各々において、出力電流Ioutが閾値電流以下になったか否かを判定すれば良い。
【0098】
第2の実施の形態の電源装置は、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0099】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
1 電源装置
2-1 第1電流共振コンバータ
2-2 第2電流共振コンバータ
2-3 第3電流共振コンバータ
2-4 第4電流共振コンバータ
3 整流回路
4 制御回路
5、22 コンデンサ
6 電圧センサ
7 電流センサ
21 直流電源
23 負荷
24 出力設定部
FB1 第1フルブリッジ回路
FB2 第2フルブリッジ回路
FB3 第3フルブリッジ回路
FB4 第4フルブリッジ回路
T1 第1トランス
T2 第2トランス
T3 第3トランス
T4 第4トランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7