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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099661
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】伝送線路変換構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/51 20110101AFI20220628BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20220628BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20220628BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H01R12/51
H01R43/00 B
H05K1/18 U
H05K1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213573
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100163876
【弁理士】
【氏名又は名称】上藤 哲嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100187045
【弁理士】
【氏名又は名称】梅澤 奈菜
(72)【発明者】
【氏名】倉光 康太
【テーマコード(参考)】
5E051
5E223
5E336
5E338
【Fターム(参考)】
5E051BA01
5E051BB01
5E223AA01
5E223AB45
5E223AB60
5E223AB65
5E223AB76
5E223AC25
5E223BA47
5E223BA50
5E223BB01
5E223CA11
5E223CB82
5E223CC09
5E223CD01
5E223DA23
5E223DB11
5E336AA04
5E336AA16
5E336BB03
5E336BC34
5E336BC36
5E336CC59
5E336DD02
5E336EE01
5E336GG11
5E338AA03
5E338BB65
5E338BB75
5E338CC02
5E338CD12
5E338EE11
(57)【要約】
【課題】プリント基板の伝送線路とコネクタ部の芯線との接続性について、プリント基板の製造誤差によるばらつきを抑えること、長期的な信頼性を得ること、且つVSWRの悪化を防ぐことができる伝送線路変換構造及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る伝送線路変換構造は、伝送線路11aが形成されたプリント基板11と、伝送線路11aに対して電気信号を入出力する芯線12aを有し、プリント基板11に固定されるコネクタ部12と、芯線12aを抱え込む摺動接触部13a及び伝送線路11aに接触する接触部13bを有するスライディングコンタクト13と、芯線12aと摺動接触部13aとを固定し、伝送線路11aと接触部13bとを固定する半田膜14と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送線路(11a)が形成されたプリント基板(11)と、
前記伝送線路に対して電気信号を入出力する芯線(12a)を有し、前記プリント基板に固定されるコネクタ部(12)と、
前記芯線を抱え込む摺動接触部(13a)及び前記伝送線路に接触する接触部(13b)を有するスライディングコンタクト(13)と、
前記芯線と前記摺動接触部とを固定し、前記伝送線路と前記接触部とを固定する半田膜(14)と、
を備える伝送線路変換構造。
【請求項2】
前記プリント基板は、
前記コネクタ部が固定される縁の側面に金属面が形成され、
前記伝送線路の先端が前記縁に未達であることを特徴とする請求項1に記載の伝送線路変換構造。
【請求項3】
前記スライディングコンタクトは、金以外の金属であることを特徴とする請求項1又は2に記載の伝送線路変換構造。
【請求項4】
前記スライディングコンタクトは、金であることを特徴とする請求項1又は2に記載の伝送線路変換構造。
【請求項5】
プリント基板(11)とコネクタ部(12)とを備える伝送線路変換構造の製造方法であって、
前記コネクタ部が有する芯線(12a)を抱え込むスライディングコンタクト(13)の摺動接触部(13a)に前記芯線をはめ込む工程と、
前記スライディングコンタクトの接触部(13b)と前記プリント基板に形成された伝送線路(11a)の端部とが接触するように、前記プリント基板と前記コネクタ部とを接続する工程と、
前記芯線と前記摺動接触部との隙間、及び前記伝送線路と前記接触部との隙間に半田(14)を流し込む工程と、
を備える伝送線路変換構造の製造方法。
【請求項6】
前記プリント基板は、
前記コネクタ部が固定される縁の側面に金属面が形成され、
前記伝送線路の先端が前記縁に未達であることを特徴とする請求項5に記載の伝送線路変換構造の製造方法。
【請求項7】
前記スライディングコンタクトは、金以外の金属であることを特徴とする請求項5又は6に記載の伝送線路変換構造の製造方法。
【請求項8】
前記スライディングコンタクトは、金であることを特徴とする請求項5又は6に記載の伝送線路変換構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平面伝送線路と同軸伝送線路との伝送線路変換構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板(プリント基板)と外部との間で信号を伝搬するために、回路基板の平面伝送線路と外部接続に用いられる同軸伝送線路(エンドランチコネクタ)との間には伝送線路変換構造が用いられる。近年、ミリ波帯の利用拡大により18GHz~60GHzのエンドランチコネクタの需要が高まりつつある(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-081745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1の伝送線路変換構造301のように、エンドランチコネクタ12の芯線12aとプリント基板11上の伝送線路11aとを半田14で半田付けすることで、芯線12aと伝送線路11aとを確実に固定できる。しかし、半田付けを行うことでその部分のインピーダンスが変化し、電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)が悪化する。そこで、伝送線路変換構造の周波数特性を優先するために半田付けを行わず、図2のように芯線12aを伝送線路11aを押し付けるだけの伝送線路変換構造302もある。
【0005】
しかし、伝送する電気信号の周波数が高くなる(例えば、ミリ波)と、エンドランチコネクタ12から芯線12aの飛び出し量が短くなり、図3のように伝送線路11aとの接触部が小さくなる。このような状態では、伝送線路11aと芯線12aとの接続性について、プリント基板11の製造誤差によるばらつきを抑えることが困難であり、当該構造の使用環境によっては長期的な信頼性を得ることも困難という課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、プリント基板の伝送線路とコネクタ部の芯線との接続性について、プリント基板の製造誤差によるばらつきを抑えること、長期的な信頼性を得ること、且つVSWRの悪化を防ぐことができる伝送線路変換構造及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る伝送線路変換構造は、スライディングコンタクトを介してプリント基板の伝送線路とコネクタ部の芯線と接続することとした。
【0008】
具体的には、請求項1に記載された伝送線路変換構造は、
伝送線路(11a)が形成されたプリント基板(11)と、
前記伝送線路に対して電気信号を入出力する芯線(12a)を有し、前記プリント基板に固定されるコネクタ部(12)と、
前記芯線を抱え込む摺動接触部(13a)及び前記伝送線路に接触する接触部(13b)を有するスライディングコンタクト(13)と、
前記芯線と前記摺動接触部とを固定し、前記伝送線路と前記接触部とを固定する半田膜(14)と、
を備える。
【0009】
請求項2に記載された伝送線路変換構造は、請求項1に記載された伝送線路変換構造の前記プリント基板は、前記コネクタ部が固定される縁の側面に金属面が形成され、前記伝送線路の先端が前記縁に未達であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された伝送線路変換構造は、請求項1又は2に記載された伝送線路変換構造の前記スライディングコンタクトが、金以外の金属であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載された伝送線路変換構造は、請求項1又は2に記載された伝送線路変換構造の前記スライディングコンタクトが、金であることを特徴とする請求項1又は2に記載の伝送線路変換構造。
【0012】
また、請求項5に記載された製造方法は、プリント基板(11)とコネクタ部(12)とを備える伝送線路変換構造の製造方法であって、
前記コネクタ部が有する芯線(12a)を抱え込むスライディングコンタクト(13)の摺動接触部(13a)に前記芯線をはめ込む工程と、
前記スライディングコンタクトの接触部(13b)と前記プリント基板に形成された伝送線路(11a)の端部とが接触するように、前記プリント基板と前記コネクタ部とを接続する工程と、
前記芯線と前記摺動接触部との隙間、及び前記伝送線路と前記接触部との隙間に半田(14)を流し込む工程と、
を備える。
【0013】
請求項6に記載された製造方法は、請求項5に記載された製造方法において、前記プリント基板は、前記コネクタ部が固定される縁の側面に金属面が形成され、前記伝送線路の先端が前記縁に未達であることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載された製造方法は、請求項5又は6に記載された製造方法において、前記スライディングコンタクトが、金以外の金属であることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載された製造方法は、請求項5又は6に記載された製造方法において、前記スライディングコンタクトが、金であることを特徴とする。
【0016】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明に係る伝送線路変換構造は、コネクタ部の芯線が短くなっても、スライディングコンタクトで延伸することでプリント基板の伝送線路との接続面積を大きくすることができ、接続性や信頼性を向上させることができる。さらに、スライディングコンタクトの構造により半田付けを行っても半田量を図1より低減することができる。
【0018】
また、プリント基板によっては、プリント基板の端面とコネクタ部の端面との間の隙間による伝送特性の劣化を軽減するために、側面に金属面を付したものがある。このようなプリント基板の場合、表面の伝送線路をプリント基板の縁まで延伸することができない。つまり伝送路方向の軸において、表面の伝送線路のコネクタ側の端が基板の端面とは同一の位置に無く、基板の端面を基準とするとコネクタ部とは逆側に位置することとなる。本明細書では、このような状態を「伝送線路のプルバック」と記載する(図1から図4の符号PBがプルバックである。)。このようなプリント基板を用いた場合、図3の構造であればプリント基板の伝送線路とコネクタ部の芯線との接続部がさらに小さくなり、接続性や信頼性の課題が顕著となる。本発明に係る伝送線路変換構造であれば、スライディングコンタクトで接続面積を増やすことができるので、コネクタ部の芯線の飛び出し量の減少に対応することができる。また、プリント基板の伝送線路のプルバックPBに対応することができる。
【0019】
スライディングコンタクトを金以外の金属(例えば銅)であれば、半田との合金化による接続強度劣化を抑えることができる。
【0020】
以上のように、本発明は、プリント基板の伝送線路とコネクタ部の芯線との接続性について、プリント基板の製造誤差によるばらつきを抑えること、長期的な信頼性を得ること、且つVSWRの悪化を防ぐことができる伝送線路変換構造及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】伝送線路変換構造の課題を説明する図である。
図2】伝送線路変換構造の課題を説明する図である。
図3】伝送線路変換構造の課題を説明する図である。
図4】本発明に係る伝送線路変換構造を説明する図である。
図5】本発明に係る伝送線路変換構造が備えるスライディングコンタクトを説明する図である。
図6】本発明に係る伝送線路変換構造を説明する図である。
図7】本発明に係る伝送線路変換構造の効果を説明する図である。
図8】本発明に係る伝送線路変換構造の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0023】
図4は、本実施形態の伝送線路変換構造304を説明する図である。また、 図6は、伝送線路変換構造304を説明する上面図(A)と側面図(B)である。伝送線路変換構造304は、
伝送線路11aが形成されたプリント基板11と、
伝送線路11aに対して電気信号を入出力する芯線12aを有し、プリント基板11に固定されるコネクタ部12と、
芯線12aを抱え込む摺動接触部13a及び伝送線路11aに接触する接触部13bを有するスライディングコンタクト13と、
芯線12aと摺動接触部13aとを固定し、伝送線路11aと接触部13bとを固定する半田膜14と、
を備える。
【0024】
ここで、プリント基板11は、コネクタ部12が固定される縁の側面に金属面15が形成され、伝送線路11aの先端が前記縁に未達であることが好ましい。このような伝送線路変換構造が用いられる場合、コネクタ部12の芯線12aから伝送線路11aの下にあるグランド層16aとプリント基板11の裏面のグランド層16bの間の誘電体層17bに電磁波が浸入する。この電磁波を遮断する目的で金属面15を設置する。図6では、グランド層が2層である場合を例示したが、プリント基板は2つ以上の誘電体層からなる多層基板であればよく、伝送線路11aの下に複数のグランド層があればよい。
【0025】
コネクタ部12は、例えば、特許文献1に開示されるようなエンドランチコネクタとすることができる。
【0026】
図5は、スライディングコンタクト13を説明する図である。スライディングコンタクト13は、金属板のプレス加工により構成されたものであり、その一端側には摺動接触部13aが形成され、他端側には半田付け用の接触部13bが形成されている。
【0027】
摺動接触部13aは、コネクタ部12の芯線12aに対して摺動自在な状態でその外周部に接触するものである。本実施形態では、芯線12aの円柱形状に対応して、芯線12aの外径より小さい内径の円筒形で、当該芯線を受け入れたときにその内径が拡大するように側壁がスリット13cにより不連続に形成されている(所謂すり割り円筒形)。また、半田付け部13bは、その先端側をプリント基板11の伝送線路11aの端部に半田付けするためのものである。
【0028】
スライディングコンタクト13は、金以外の金属(例えば銅)であることが好ましい。半田との合金化による接続強度劣化を抑えることができる。
【0029】
スライディングコンタクト13は、金(表面が例えば0.5μm以下の薄い金めっきである場合も含む)であってもよい。
【0030】
スライディングコンタクト13を、摺動接触部13aにコネクタ部12の芯線12aを嵌入させ、半田付け部13bの先端部分をプリント基板11の伝送線路11aに接触させ半田14で固定する。このとき、半田14は、その表面張力と毛細管現象によりスライディングコンタクト13の形状を覆うように薄くでき、且つ摺動接触部13aと芯線12aとの隙間及び半田付け部13bと伝送線路11aとの隙間を埋めることができる。つまり、半田14は、図6(A)及び(B)に破線で示すように、スライディングコンタクト13の形状が現れる程度に薄膜状態とすることができる。このため、伝送線路変換構造304は、図1で説明した伝送線路変換構造301と異なり、半田14の量を極小化することができ、インピーダンスの変化を小さくすることができる。
【0031】
インピーダンス変化を小さくすることでリターンロスを低減することができる。図7は、図1で説明した伝送線路変換構造301のVSWRと本実施形態の伝送線路変換構造304のVSWRとを比較した図である。横軸は電気信号の周波数、縦軸はリターンロスである。点線は伝送線路変換構造301のリターンロス、実線は伝送線路変換構造304のリターンロスを示している。図7が示すように、スライディングコンタクト13により半田14の量が減ったため、10GHz~64GHzの範囲で伝送線路変換構造304のリターンロスは伝送線路変換構造301のリターンロスより低減している。
【0032】
図8は、伝送線路変換構造304の製造方法を説明するフローチャートである。
当該製造方法は、
コネクタ部12が有する芯線12aを抱え込むスライディングコンタクト13の摺動接触部13aに芯線12aをはめ込む工程(ステップS01)と、
スライディングコンタクト13の接触部13bとプリント基板11に形成された伝送線路11aの端部とが接触するように、プリント基板11とコネクタ部12とを接続する工程(ステップS02)と、
芯線12aと摺動接触部13aとの隙間、及び伝送線路11aと接触部13bとの隙間に半田14を流し込む工程(ステップS03)と、
を備える。
【0033】
伝送線路変換構造304は、コネクタ部12の芯線12aとプリント基板11の伝送線路11aの媒介するスライディングコンタクト13を備えることで、伝送線路11aの基板端からのプルバックの課題を解決でき実効的に線路を延伸させる効果を有し、高周波特性を改善させることが可能となる。また、半田付け工程で表面張力によって半田量を必要最小に抑えることができる。伝送線路変換構造304によってVSWRを改善し、エンドランチコネクタの高周波性能と接続信頼性を両立できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の伝送線路変換構造は、ミリ波帯の高周波機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
11:プリント基板
11a:伝送線路
12:コネクタ部
12a:芯線
13:スライディングコネクタ
13a:摺動接触部
13b:接触部
14:半田、半田膜
15:金属面
16a、16b:グランド層
17a、17b:誘電体層
301~304:伝送線路変換構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8