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特開2022-99709果汁とエタノールを含有する組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099709
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】果汁とエタノールを含有する組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20220628BHJP
【FI】
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213673
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】石川 良
(72)【発明者】
【氏名】小田井 英陽
(72)【発明者】
【氏名】野畑 順子
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 桂子
(72)【発明者】
【氏名】塩野 貴史
(72)【発明者】
【氏名】長谷田 圭亮
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LH03
4B115LP02
(57)【要約】
【課題】清澄性を有するとともに、柑橘混濁果汁が有する柑橘果実らしい香味が維持された柑橘果汁エタノール混合組成物の提供。
【解決手段】1v/v%以上のエタノールを含有する柑橘果汁エタノール混合組成物を製造する方法であって、(a)柑橘果実の混濁果汁に、エタノール濃度が1v/v%以上となるようにエタノールを混合することにより、果汁エタノール混合物を得る工程、および(b)該果汁エタノール混合物に対して固液分離処理を行う工程を含んでなる、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1v/v%以上のエタノールを含有する柑橘果汁エタノール混合組成物を製造する方法であって、
(a)柑橘果実の混濁果汁に、エタノール濃度が1v/v%以上となるようにエタノールを混合することにより、果汁エタノール混合物を得る工程、および
(b)該果汁エタノール混合物に対して固液分離処理を行う工程
を含んでなる、方法。
【請求項2】
混濁果汁とエタノールの接触開始から固液分離処理開始までの果汁エタノール混合物の温度が0~50℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混濁果汁に、エタノール濃度が10~65v/v%となるようにエタノールが混合される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
混濁果汁とエタノールの接触開始から固液分離処理開始までの時間が120時間以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法によって製造される、柑橘果汁エタノール混合組成物。
【請求項6】
柑橘果汁を含有し、エタノール濃度が1v/v%以上であり、存在する粒子のメジアン径が0.1μm以上であり、かつ、リモネン濃度が0.1ppm以上である、柑橘果汁エタノール混合組成物。
【請求項7】
リモネン濃度が1~5000ppmである、請求項6に記載の柑橘果汁エタノール混合組成物。
【請求項8】
粒子のメジアン径が20~100μmである、請求項6または7に記載の柑橘果汁エタノール混合組成物。
【請求項9】
エタノール濃度が10~65v/v%である、請求項6~8のいずれか一項に記載の柑橘果汁エタノール混合組成物。
【請求項10】
請求項5~9のいずれか一項に記載の柑橘果汁エタノール混合組成物を含んでなる、アルコール飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果汁とエタノールを含有する組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
果実の搾汁液は混濁果汁と呼ばれ、柑橘果実の場合には、果実由来のパルプ等の固形物が混在している。この固形物は特有の舌触りがある他、凝集・沈殿を生じることがあり、これらの特徴は、その果汁の用途によっては好ましくない特徴として認識される。
【0003】
この問題を解決した果汁として、従来から、混濁果汁に酵素処理や固液分離処理を施して固形分を低減させた透明果汁と呼ばれるものが存在するが、これらの処理によって柑橘果実らしい香味が損なわれるという問題があった。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、予め柑橘混濁果汁に所定量のエタノールを混合し、得られた混合物を固液分離処理することにより、十分な清澄性を確保しながらも、柑橘果実らしい香味が維持された柑橘果汁エタノール混合組成物が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
【0005】
従って、本発明は、清澄性を有するとともに、柑橘混濁果汁が有する柑橘果実らしい香味が維持された柑橘果汁エタノール混合組成物およびその製造方法を提供する。
【0006】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)1v/v%以上のエタノールを含有する柑橘果汁エタノール混合組成物を製造する方法であって、
(a)柑橘果実の混濁果汁に、エタノール濃度が1v/v%以上となるようにエタノールを混合することにより、果汁エタノール混合物を得る工程、および
(b)該果汁エタノール混合物に対して固液分離処理を行う工程
を含んでなる、方法。
(2)混濁果汁とエタノールの接触開始から固液分離処理開始までの果汁エタノール混合物の温度が0~50℃である、前記(1)に記載の方法。
(3)混濁果汁に、エタノール濃度が10~65v/v%となるようにエタノールが混合される、前記(1)または(2)に記載の方法。
(4)混濁果汁とエタノールの接触開始から固液分離処理開始までの時間が120時間以下である、前記(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記(1)~(4)のいずれかに記載の方法によって製造される、柑橘果汁エタノール混合組成物。
(6)柑橘果汁を含有し、エタノール濃度が1v/v%以上であり、存在する粒子のメジアン径が0.1μm以上であり、かつ、リモネン濃度が0.1ppm以上である、柑橘果汁エタノール混合組成物。
(7)リモネン濃度が1~5000ppmである、前記(6)に記載の柑橘果汁エタノール混合組成物。
(8)粒子のメジアン径が20~100μmである、前記(6)または(7)に記載の柑橘果汁エタノール混合組成物。
(9)エタノール濃度が10~65v/v%である、前記(6)~(8)のいずれかに記載の柑橘果汁エタノール混合組成物。
(10)前記(5)~(9)のいずれかに記載の柑橘果汁エタノール混合組成物を含んでなる、アルコール飲料。
【0007】
本発明によれば、清澄性を有するとともに、柑橘混濁果汁が有する柑橘果実らしい香味が維持された柑橘果汁エタノール混合組成物が提供される。この柑橘果汁エタノール混合組成物は、従来の柑橘果汁または柑橘系香料の代わりにアルコール飲料の原料として用いることができ、得られるアルコール飲料は、清澄性を有するとともに、柑橘混濁果汁が有する柑橘果実らしい香味を有するものとなる。また、柑橘果汁エタノール混合組成物の製造過程において、エタノール処理条件や固液分離処理条件を適宜調整し、リモネン濃度と粒子径を一定範囲内に調整することで、柑橘果汁エタノール混合組成物の香味をさらに向上させることも可能である。
【発明の具体的説明】
【0008】
本発明において「アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされる、アルコール度数1度以上の飲料を意味する。
【0009】
本明細書において、「ppm」は「mg/L」と同義であり、「ppb」は「μg/L」と同義である。
【0010】
本発明の柑橘果汁エタノール混合組成物は、1v/v%以上のエタノールを含有するものであり、柑橘果実の混濁果汁に、エタノール濃度が1v/v%以上となるようにエタノールを混合することにより、果汁エタノール混合物を作製し、該果汁エタノール混合物に対して固液分離処理を行うことによって製造される。
【0011】
原料となる柑橘果実は、柑橘の果実であればいかなる種類のものであってもよく、製造しようとするアルコール飲料の香味に応じて当業者により適宜選択される。従って、柑橘果実の種類は特に制限されるものではないが、例えば、アルコール飲料の原料として採用しやすいレモン、グレープフルーツ、オレンジ、みかん、柚子、金柑、かぼす、すだち、シークヮーサー、ライム、シトロン、ブッシュカンなどが好ましく、さらに好ましくはレモンおよびグレープフルーツとされる。
【0012】
柑橘果実の混濁果汁は、柑橘果実の搾汁液であり、果実由来のパルプ等の固形物を含有している。本発明に用いられる柑橘果実の混濁果汁は、柑橘果実の搾汁液、その濃縮物、その希釈物のいずれであってもよいが、好ましくは濃縮混濁果汁とされる。また、本発明においてエタノールと混合される柑橘果実の混濁果汁は、柑橘果実の透明果汁との混合物の形態であってもよい。つまり、本発明では、混濁果汁を含む液体において、所定のエタノール濃度に調整されていればよく、該液体中に透明果汁が存在していても、エタノール濃度が所定の範囲内にあればよい。
【0013】
本発明に用いられるエタノールは、食用に適したエタノールであればよく、例えば、工業用アルコール、酒類などのいずれのものを用いてもよい。エタノールとしては、例えば、酒類を好適に用いることができ、酒類としては、例えば、蒸留酒、スピリッツ、リキュールがよく、好ましくはウォッカを用いることができる。
【0014】
エタノールを所定の濃度で混濁果汁に添加するときは、所定量のエタノールを混濁果汁に添加し、必要に応じてこの混合物に水を添加してもよいし、あるいは、エタノールを予め水で希釈しておき、この希釈物を混濁果汁に添加してもよいし、あるいは、混濁果汁に予め水を添加しておき、そこに必要量のエタノールを添加してもよいし、あるいは、混濁果汁に対してエタノールおよび水を同時に添加してもよい。また、混濁果汁にエタノールを添加した後、これらの十分な混合のために、次の固液分離処理の前に混合操作を行ってもよい。このような混合操作は、攪拌羽、バブリング、スタッティックミキサー、配管内での循環など、当技術分野において公知の手段により行うことができる。
【0015】
柑橘果実の混濁果汁にエタノールを添加して得られる混合物におけるエタノールの濃度の下限値は、1v/v%、好ましくは2.5v/v%、より好ましくは5v/v%、さらに好ましくは10v/v%、さらに好ましくは15v/v%、さらに好ましくは25v/v%、さらに好ましくは35v/v%とされる。上限値については、前記混合物におけるエタノールの濃度は、好ましくは100v/v%未満、より好ましくは80v/v%以下、さらに好ましくは75v/v%以下、さらに好ましくは65v/v%以下、さらに好ましくは55v/v%以下とされる。
【0016】
固液分離処理は、果汁エタノール混合物中の固形分濃度を低減できる処理であればいかなる処理であってもよい。このような処理としては、遠心分離処理、濾過処理、静置処理(デカンテーション)などが挙げられ、好ましくは遠心分離処理または濾過処理、より好ましくは遠心分離処理とされる。
【0017】
エタノールと果汁の接触開始から固液分離開始までの時間は、特に制限されるものではないが、好ましくは150時間以下、より好ましくは120時間以下、さらに好ましくは1440分(24時間)以下とされる。
【0018】
エタノールと果汁の接触開始から固液分離開始までの果汁エタノール混合物の温度は、特に制限されるものではないが、好ましくは0~60℃、より好ましくは0~50℃、さらに好ましくは0~40℃、さらに好ましくは1~40℃とされる。
【0019】
本発明の方法によって得られる柑橘果汁エタノール混合組成物は、清澄性を有するとともに、柑橘混濁果汁が有する柑橘果実らしい香味を維持している。
【0020】
さらに、上記の柑橘果汁エタノール混合組成物の分析結果から、柑橘果汁エタノール混合組成物が、柑橘果汁を含有し、エタノール濃度が1v/v%以上であり、存在する粒子のメジアン径が0.1μm以上であり、かつ、リモネン濃度が0.1ppm以上であれば、本発明の方法によって得られるものでなくても、清澄性を有するとともに、柑橘混濁果汁が有する柑橘果実らしい香味を維持することが示された。従って、本発明の第二の態様によれば、上記の条件を充足する柑橘果汁エタノール混合組成物が提供される。以下、「本発明の柑橘果汁エタノール混合組成物」との用語には、本発明の方法によって得られる柑橘果汁エタノール混合組成物のみならず、本発明の第二の態様による柑橘果汁エタノール混合組成物も含まれる。
【0021】
本発明の柑橘果汁エタノール混合組成物におけるエタノールの濃度の下限値は、1v/v%、好ましくは2.5v/v%、より好ましくは5v/v%、さらに好ましくは10v/v%、さらに好ましくは15v/v%、さらに好ましくは25v/v%、さらに好ましくは35v/v%とされる。上限値については、前記混合組成物におけるエタノールの濃度は、好ましくは100v/v%未満、より好ましくは80v/v%以下、さらに好ましくは75v/v%以下、さらに好ましくは65v/v%以下、さらに好ましくは55v/v%以下とされる。
【0022】
本発明の柑橘果汁エタノール混合組成物におけるリモネンの濃度の下限値は、好ましくは0.1ppm、より好ましくは0.5ppm、さらに好ましくは1.0ppm、さらに好ましくは5.0ppm、さらに好ましくは10ppmとされる。また、本発明の柑橘果汁エタノール混合組成物におけるリモネンの濃度の上限値は、好ましくは5000ppm、より好ましくは3000ppm、さらに好ましくは1000ppm、さらに好ましくは500ppm、さらに好ましくは100ppmとされる。リモネン濃度は、GC/MSを用いる公知の方法によって測定することができる。
【0023】
本発明の柑橘果汁エタノール混合組成物中に存在する粒子のメジアン径の下限値は、好ましくは0.1μm、より好ましくは0.5μm、さらに好ましくは1.0μm、さらに好ましくは5.0μm、さらに好ましくは10μm、さらに好ましくは20μm、さらに好ましくは30μmとされる。また、本発明の柑橘果汁エタノール混合組成物中に存在する粒子のメジアン径の上限値は、好ましくは1000μm、より好ましくは750μm、さらに好ましくは600μm、さらに好ましくは200μm、さらに好ましくは100μmとされる。メジアン径は、レーザ回折・散乱法で測定することができる。屈折率としては1.60-0.10iを選択することができる。
【0024】
本発明の柑橘果汁エタノール混合組成物の濁度は、好ましくは500ntu以下、より好ましくは400ntu以下、さらに好ましくは250ntu以下、さらに好ましくは100ntu以下、さらに好ましくは50ntu以下とされる。濁度は、透過光測定方式で測定することができる。
【0025】
本発明の柑橘果汁エタノール混合組成物の糖度の下限値は、好ましくは5°、より好ましくは10°、さらに好ましくは15°、さらに好ましくは20°とされる。また、本発明の柑橘果汁エタノール混合組成物の糖度の上限値は、好ましくは200°、より好ましくは100°、さらに好ましくは50°とされる。糖度は、屈折率方式で測定することができる。
【0026】
本発明の柑橘果汁エタノール混合組成物は、飲料に添加することにより、その飲料の濁度を増加させることなく、柑橘果実らしい香味を付与することができる。飲料における本発明の柑橘果汁エタノール混合組成物の含有量(つまり添加量)は、特に制限されるものではなく、その飲料の種類や、所望の香味の強度に応じて、当業者により適宜決定される。
【0027】
本発明における飲料は、二酸化炭素を圧入したもの、すなわち、炭酸飲料であってもよい。
【0028】
本発明における飲料のpHは、特に制限されるものではないが、好ましくは2.5~5.0に調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定することができる。
【0029】
本発明における飲料は、飲料の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、甘味料(例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、異性化液糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等)、酸味料(例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、リン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、またはそれらの塩類等)、色素、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤など)等を適宜添加することができる。
【0030】
本発明における飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【実施例0031】
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例における実験には、以下の方法を採用した。
(1)官能評価
官能評価では、各サンプルに水またはアルコールを添加してアルコール濃度を16v/v%に調整したものを試飲サンプルとした。官能評価は、訓練されたパネラー5人で行い、その平均値を採用した。今回行った全ての試飲サンプルにおいて、標準誤差は0.2以下であった。
【0033】
(2)濁度
濁度は、透過光測定方式で測定した。
【0034】
(3)リモネン濃度
リモネンの濃度は、以下の条件によるGC/MS分析によって測定した:
GC/MS本体:QP2010 SHIMAZU、AOC20i;
カラム:J&W Scientific 1909is-936 HP-1MS Agilent。
【0035】
(4)サンプルに含まれる粒子のメジアン径
メジアン径は、Shimadzu SALD-2200・WingSALD IIを使用し、屈折率を1.50-0.20iとするレーザ回折・散乱法で測定した。
【0036】
実施例1:柑橘果汁エタノール混合組成物におけるエタノール濃度の検討
本実施例では、柑橘果汁エタノール混合組成物におけるエタノール濃度を検討した。具体的には、レモンまたはグレープフルーツの混濁濃縮果汁に、様々な量の水およびエタノールを加え、1秒間混合したのち、1000Gで10分間遠心分離を行った。遠心後、上清を回収し、柑橘果汁エタノール混合組成物のサンプルを得た。実験中は、全てのサンプルが20℃になるように管理した。全てのサンプルについて濁度を測定するとともに、官能評価を行った。
【0037】
官能評価項目と評価基準は、以下の通りとした。
(i)果実香味:柑橘果実らしい香りと味の総体的な強さ。高いほど好ましい。
果実としてレモンを使用した試飲サンプルについては、試験区1を5点、試験区4を9点として等間隔に刻み、果実としてグレープフルーツを使用した試飲サンプルについては、試験区7を5点、試験区10を9点として等間隔に刻み、いずれも1点(弱い)~9点(強い)のスコアで評価した。
(ii)苦渋味:柑橘果実らしさを越えて感じられる苦みと渋みの強さ。低いほど好ましい。
果実としてレモンを使用した試飲サンプルについては、試験区1を5点、試験区4を1点として等間隔に刻み、果実としてグレープフルーツを使用した試飲サンプルについては、試験区7を5点、試験区10を1点として等間隔に刻み、いずれも1点(弱い)~9点(強い)のスコアで評価した。
(iii)バーニング感:アルコールの刺激に伴う喉のヒリヒリと焼け付くような感覚の強さ。低いほど好ましい。
果実としてレモンを使用した試飲サンプルについては、試験区1を5点、試験区4を1点として等間隔に刻み、果実としてグレープフルーツを使用した試飲サンプルについては、試験区7を5点、試験区10を1点として等間隔に刻み、いずれも1点(弱い)~9点(強い)のスコアで評価した。
(iv)酸味の丸み:柑橘特有の酸味のまろやかさの度合い。高いほど好ましい。
果実としてレモンを使用した試飲サンプルについては、試験区1を5点、試験区4を9点として等間隔に刻み、果実としてグレープフルーツを使用した試飲サンプルについては、試験区7を5点、試験区10を9点として等間隔に刻み、いずれも1点(弱い)~9点(強い)のスコアで評価した。
(v)塩味:柑橘果実においては低い程好ましい。
果実としてレモンを使用した試飲サンプルについては、試験区1を5点、試験区4を1点として等間隔に刻み、果実としてグレープフルーツを使用した試飲サンプルについては、試験区7を5点、試験区10を1点として等間隔に刻み、いずれも1点(弱い)~9点(強い)のスコアで評価した。
(vi)青臭み:生臭さを想起させる好ましくない香りの強さ。低い程好ましい。
果実としてレモンを使用した試飲サンプルについては、試験区1を5点、試験区4を1点として等間隔に刻み、果実としてグレープフルーツを使用した試飲サンプルについては、試験区7を5点、試験区10を1点として等間隔に刻み、いずれも1点(弱い)~9点(強い)のスコアで評価した。
【0038】
結果を表1に示す。
【表1】
【0039】
実施例2:柑橘果汁エタノール混合組成物の製造における処理温度と処理時間の検討
本実施例では、柑橘果汁エタノール混合組成物の製造における処理温度と処理時間を検討した。具体的には、レモンまたはグレープフルーツの混濁濃縮果汁に、エタノール濃度を45%となるように水およびエタノールを加えて一定時間混合したのち、1000Gで10分間遠心分離を行った。遠心後、上清を回収し、柑橘果汁エタノール混合組成物のサンプルを得た。実験中は全てのサンプルが表2に示す温度になるように管理した。濁度は全て100NTU以下であった。全てのサンプルについて官能評価を行った。
【0040】
官能評価項目と評価基準は、以下の通りとした。
(i)果実香味:柑橘果実らしい香りと味の総体的な強さ。高いほど好ましい。
果実としてレモンを使用した試飲サンプルについては、実施例1の試験区1を5点、実施例1の試験区4を9点として等間隔に刻み、果実としてグレープフルーツを使用した試飲サンプルについては、実施例1の試験区7を5点、実施例1の試験区10を9点として等間隔に刻み、いずれも1点(弱い)~9点(強い)のスコアで評価した。
【0041】
結果を表2に示す。
【表2】
【0042】
レモンを用いたサンプルおよびグレープフルーツを用いたサンプルのいずれについても、40℃において150時間処理したサンプル、60℃において24時間以上処理したサンプルは、芋様のオフフレーバーが感じられ、総合的な嗜好性も低下した。
【0043】
実施例3:柑橘果汁エタノール混合組成物におけるリモネン濃度と粒子のメジアン径の検討
本実施例では、柑橘果汁エタノール混合組成物におけるリモネン濃度と粒子のメジアン径を検討した。具体的には、レモンまたはグレープフルーツの混濁濃縮果汁に、エタノール濃度が5~80%となるように水およびエタノールを加えて10秒間混合し、すぐに遠心分離処理(200G~1000G、2~20分)を行った。遠心後、上清を回収し、柑橘果汁エタノール混合組成物のサンプルを得た。実験中は、全てのサンプルが20℃になるように管理した。サンプルの濁度・リモネン濃度を測定し、適宜リモネン香料を添加してリモネン濃度を調整した。濁度は全て100NTU以下であった。全てのサンプルについて官能評価を行った。
【0044】
官能評価項目と評価基準は、以下の通りとした。
(i)果実香味:柑橘果実らしい香りと味の総体的な強さ。高いほど好ましい。
果実としてレモンを使用した試飲サンプルについては、リモネン濃度0.3ppm/メジアン径1.3μmのサンプルを5点、リモネン濃度1000ppm/メジアン径70.5μmのサンプルを9点として等間隔に刻み、果実としてグレープフルーツを使用した試飲サンプルについては、リモネン濃度0.4ppm/メジアン径1.1μmのサンプルを5点、リモネン濃度1000ppm/メジアン径31.6μmのサンプルを9点として等間隔に刻み、いずれも1点(弱い)~9点(強い)のスコアで評価した。
【0045】
結果を表3に示す。
【表3】
【0046】
リモネン濃度5000ppmのサンプルはいずれも強い収斂味を呈しており、総合的な嗜好性も低下した。