(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099782
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】露光装置および露光方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213778
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 英俊
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA09
2H197AA39
2H197BA11
2H197CA03
2H197CD12
2H197CD13
2H197CD15
2H197CE01
2H197CE10
2H197HA04
(57)【要約】
【課題】フォトリソグラフィ法によるカラーフィルタの製造において、生産性に影響を及ぼさずに露光処理時の異物による欠陥の発生を未然に防止する露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
【解決手段】紫外光を照射する光源と、レジスト塗布基板を積載するステージ部と、フォトマスクを固定・保持するマスクホルダ部を備えた、カラーフィルタのパターンを形成する露光装置において、前記マスクホルダ部または前記ステージ部、もしくはその両方を、フォトマスクを介して光源から基板へ紫外光を照射している間に、前記ステージ部のレジスト塗布基板積載部と平行な平面内を一方向に移動させる駆動機構を有することを特徴とする露光装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光を照射する光源と、レジスト塗布基板を積載するステージ部と、フォトマスクを固定・保持するマスクホルダ部を備えた、カラーフィルタのパターンを形成する露光装置において、前記マスクホルダ部または前記ステージ部、もしくはその両方を、フォトマスクを介して光源から基板へ紫外光を照射している間に、前記ステージ部のレジスト塗布基板積載部と平行な平面内を一方向に移動させる駆動機構を有することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
カラーフィルタのパターン形成に用いる露光方法において、レジスト塗布基板を積載するステージ部もしくはフォトマスク、もしくはその両方を、レジスト塗布基板積載面と平行な平面領域内の一方向に相対移動させながら露光処理を行う露光方法。
【請求項3】
カラーフィルタのパターン形成に用いる露光方法において、レジスト塗布基板を積載するステージ部もしくはフォトマスク、もしくはその両方を、基板積載面と平行な平面領域内の一方向に搖動もしくは振動させながら露光処理を行う露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置向けカラーフィルタの製造に用いられる露光装置および露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置の高精細化が大きく進み、それに伴い表示装置の製造技術は高精細であることを前提とした上で、高い生産性を維持することが求められている。
【0003】
液晶表示装置などの表示装置用のカラーフィルタの生産工程においてはフォトリソグラフィ法が主流である。フォトリソグラフィ法は感光性樹脂を塗布した基板を露光した後、不要な樹脂を現像除去することで所望のパターンを形成する手法であり、高い再現性と生産性を有する。
【0004】
フォトリソグラフィ法において、露光はカラーフィルタの品質、生産性を左右する重要なプロセスの一つである。任意の開口パターンが形成されたフォトマスクを介して、ネガ型若しくはポジ型のフォトレジストに紫外光を照射することで、フォトマスク上の微細なパターンを大面積基板上に再現性良く転写することが可能となる。
【0005】
フォトリソグラフィ法を用いたカラーフィルタの製造工程では、露光プロセスで用いるフォトマスクへの異物付着が問題となる。例えば、
図3に示すような、表示装置用のカラーフィルタの露光プロセスにおいて、フォトマスク5の開口部10の一部に遮光性の異物6が付着すると、その異物が照射光を遮蔽し、転写先の基板に付着異物に起因する欠陥7が発生する。ここで発生する欠陥は、遮光性の異物がマスクに付着し続ける限り発生し続け、転写基板ごとに共通する不良となってしまう。そのため、マスク付着異物に起因する共通不良が発生した場合、その異物が微細なものであっても、露光装置を停止し、マスク洗浄による異物除去を都度行う必要がある。
【0006】
前述した不良に対し、半導体分野においては、マスクの面内に同一パターンが複数形成されたフォトマスクを使用し、露光処理の際に各パターンを重ね合わせて露光することで、フォトマスクの異物付着による転写影響を抑制する手法が考案されている(特許文献1)。しかし、このような手法を用いた場合、一枚のカラーフィルタ基板に対して複数回の露光が必要となるため、リードタイム(カラーフィルタ基板1枚の製造に要する時間)が大幅に増加する他、各パターンの重ね合わせのズレに起因する転写パターン形状不良が発生することも想定され、生産性を向上させる観点において好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フォトリソグラフィ法によるカラーフィルタの製造において、生産性に影響を及ぼさずに露光処理時の異物による欠陥の発生を未然に防止する露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、本発明の請求項1に係る発明は、
紫外光を照射する光源と、レジスト塗布基板を積載するステージ部と、フォトマスクを固定・保持するマスクホルダ部を備えた、カラーフィルタの製造に用いられる露光装置において、前記マスクホルダ部または前記ステージ部、もしくはその両方を、フォトマスクを介して光源から基板へ紫外光を照射している間に、前記ステージ部のレジスト塗布基板積載部と平行な平面内を一方向に移動させる駆動機構を有することを特徴とする露光装置である。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、カラーフィルタの製造に用いられる露光方法において、レジスト塗布基板を積載するステージ部もしくはフォトマスク、もしくはその両方を、レジスト塗布基板積載面と平行な平面領域内の一方向に相対移動させながら露光処理を行う露光方法である。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、カラーフィルタの製造に用いられる露光方法において、レジスト塗布基板を積載するステージ部もしくはフォトマスク、もしくはその両方を、レジスト塗布基板積載面と平行な平面領域内の一方向に搖動もしくは振動させながら露光処理を行う露光方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の露光装置および露光方法を用いることで、リードタイムを増加させることなく、異物付着による欠陥を抑制することができることから、フォトリソグラフィ法によるカラーフィルタの製造において、露光不良の発生を未然に防止し、カラーフィルタ製造工程における歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る露光装置の構成を模式的に説明する断面図である。
図1(a)はフォトマスクを移動させる前の露光状態を、
図1(b)はフォトマスクを移動させた後の露光状態をそれぞれ示した図である。
【
図2】本発明の別の実施形態に係る露光装置の構成を模式的に説明する断面図である。
図2(a)はレジスト塗布基板を移動させる前の露光状態を、
図2(b)はレジスト塗布基板を移動させた後の露光状態をそれぞれ示した図である。
【
図3】従来の露光装置による露光を模式的に説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の露光装置およびその露光プロセスを添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る露光装置の構成を模式的に説明する断面図である。
【0016】
本発明の実施形態に係る露光装置100は、紫外光8を照射する光源(不図示)と、フォトマスク5を固定・保持するマスクホルダ部20と、透明基板1に感光性レジストが塗布されたレジスト塗布基板50を積載するステージ部30と、レジスト塗布基板50の露光時に、ステージ部30に対してマスクホルダ部20を1方向に相対移動させる駆動機構40と、を有する。
【0017】
ここで、ステージ30のレジスト塗布基板50積載面、若しくはフォトマスク5の遮光パターン形成面をXY平面、光源から紫外光8をレジスト塗布基板50へ照射する方向をZ軸とするXYZ空間を定義し、以降は説明の簡略化のため上記定義に従い記述する。
【0018】
前記フォトマスク5の転写パターン形成面はレジスト塗布基板50の塗布面のレジスト層2の面と平行関係にある。
【0019】
前記駆動機構40は
図1の例においてはマスクホルダ部20に接続されているが、装置の設計に応じて、
図2のようにステージ部30に接続し、駆動させてもよいし、あるいは図示しないがステージ部30、マスクホルダ部20両方に接続し、駆動させてもよい。
【0020】
次に、本発明における露光プロセスの詳細と、本露光プロセスによる欠陥防止のメカニズムについて説明する。
【0021】
図1(a)はフォトマスクを移動させる前の露光を模式的に説明する図である。光源(不図示)からレジスト塗布基板50へフォトマスク5を介して紫外光8を照射すると、フォトマスク5に描画された転写パターンに従い、開口部10直下の領域のみが露光され、遮光部4直下の領域は未露光となる。しかし、フォトマスク5の開口部10の一部に異物6があった場合、本来露光されるべき開口部直下の領域が異物6で遮光され、転写された露光パターン内に、意図しない未露光部である領域17aが発生する。
【0022】
図1(b)はフォトマスクを移動させた後の露光を模式的に説明する図である。
【0023】
光源(不図示)から紫外光8がレジスト塗布基板50へ照射されている間、前述した駆動機構40により、フォトマスク5とレジスト塗布基板を積載したステージ部がXY平面の一方向を移動し、基板に転写されるフォトマスクパターン位置が移動する。
【0024】
駆動機構による転写パターンの移動後、未露光領域17aは、異物が付着していないマスク開口部の直下になるため、紫外光が基板に到達するようになり、該当部のレジストの反応が進行するようになる。転写パターン移動後の付着異物直下部に当たる領域17bは、転写パターン移動後は異物により遮光されるが、露光開始時は開口部の直下であるために既に露光によるレジストの反応は進行している。この時、領域17a、17bに、レジスト反応の為に必要な光量が露光されていれば、マスク付着異物による転写欠陥が抑制される。
【0025】
また、駆動機構による転写パターンの移動後、領域17a,17bとは別に、新たに露光される領域18と、遮光される領域19が生じる。露光される塗布レジストがネガ型であれば領域18、ポジ型であれば領域19にパターンが形成される。前記パターンは、通常の露光方法においては形成されないパターンであるため、表示装置の設計によっては表示特性に不具合を与える恐れがあるが、該パターンの形成領域が、表示に用いられない領域であれば、表示特性へ影響及ぼすことはない。また、表示エリア上に形成される場合であっても、駆動機構による転写パターンの移動範囲が後述の範囲に従っていれば、表示特性へ影響を及ぼすことはない。
【0026】
本露光プロセスにおいて、駆動機構によりマスク又はステージが移動する距離9は、付着異物の寸法よりも大きく、形成される画素パターン幅よりも小さい必要がある。移動距離が異物の寸法よりも小さい場合、異物により遮光されていた領域を十分にカバーすることができず、未露光領域が発生し欠陥となる。形成パターン幅を超えて移動する場合、隣接画素上に意図しないパターンが形成されてしまい、表示特性へ悪影響をもたらす恐れがある。
【0027】
上述の移動によるパターン形成領域拡大の影響を考慮すると、本露光装置に用いられるフォトマスクは、マスクの開口長を、本来の設計から、駆動機構での移動距離に相当する分差し引いた長さにすることが好ましい。例えば、開口部の設計が短辺15μm、長辺25μmのマスクに対し、駆動機構による移動距離を短辺方向に5μmとした場合は、開口部の設計を短辺10μmに縮小する。これにより、駆動機構の移動により拡大したパターン形成領域が相殺されるため、意図しない領域へのパターン形成を抑制することができる。
【0028】
上記の実施形態では、マスクもしくはステージの少なくとも1つをXY平面の1方向に相対移動させることで欠陥となる未露光部の発生を抑制しているが、マスクもしくはステージの少なくとも1つを、XY平面におけるX方向もしくはY方向のいずれか1方向に複数回搖動もしくは振動させることでも同様の効果が得られる。本方式においては、相対移動と比較して、移動前後の各領域の露光量が均一になるため、露光ムラを小さくすることができる。
【0029】
上述の揺動もしくは振動によりマスク又はステージのいずれかが移動する領域は、異物の寸法よりも大きく、形成される画素パターン幅よりも小さい必要がある。移動距離が異物の寸法よりも小さい場合、異物により遮光されていた部分が十分に露光されず、欠陥が残ってしまう。形成パターン幅を超えて移動する場合、隣接画素上を始め、意図しない箇所にパターンが形成されてしまい、表示特性への悪影響をもたらす恐れがある。
【符号の説明】
【0030】
1・・・透明基板
2・・・レジスト膜
3・・・紫外線が照射される部分
4・・・遮光部
5・・・フォトマスク
6・・・異物
7・・・欠陥
8・・・紫外線
9・・・移動距離
10・・・開口部
11・・・透明基板
17a・・・異物で遮光された領域(転写パターン移動前)
17b・・・異物で遮光された領域(転写パターン移動後)
18・・・転写パターン移動後に露光される領域
19・・・転写パターン移動後に遮光される領域
20・・・マスクホルダ部
30・・・ステージ部
35・・・ステージ連結部
40・・・駆動機構
50・・・レジスト塗布基板
100・・・露光装置
200・・・露光装置