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特開2022-99785調光フィルム、調光装置、スクリーンおよび調光フィルムの製造方法
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  • 特開-調光フィルム、調光装置、スクリーンおよび調光フィルムの製造方法 図1
  • 特開-調光フィルム、調光装置、スクリーンおよび調光フィルムの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099785
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】調光フィルム、調光装置、スクリーンおよび調光フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20220628BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20220628BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/13 101
G02F1/1339 500
G02F1/1334
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213781
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森永 かおり
(72)【発明者】
【氏名】矢野 勇士
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 泰佑
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA33
2H088FA02
2H088FA09
2H088GA02
2H088GA03
2H088GA04
2H088GA06
2H088GA10
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA03
2H088HA06
2H088JA05
2H088JA10
2H088JA11
2H088MA01
2H189AA04
2H189DA04
2H189DA49
2H189FA06
2H189FA22
2H189JA05
2H189JA10
2H189JA12
2H189JA14
2H189LA01
2H189LA03
2H189LA05
2H189LA09
2H189MA15
(57)【要約】
【課題】スペーサ起因の、透明な状態におけるヘイズ値の増加や、不透明な状態におけるヘイズ値の低下を回避した調光フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材1上に透明導電膜2を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜を内側にして液晶材料を含む調光層3を挟み込む様に積層して得た調光フィルムであって、調光層の厚さを一定に保持するスペーサ4の調光層の体積に占める比率が0.5%未満であり、調光層の厚さを、調光層を100等分した各区画内の1点の測定値から得られる、不偏分散の平方根と平均値から不変分散の平方根÷平均値として算出される変動係数が10%以下である事を特徴とする調光フィルム10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に透明導電膜を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜を内側にして液晶材料を含む調光層を挟み込む様に積層して得た調光フィルムであって、
前記調光層の厚さを一定に保持するスペーサの体積の、前記調光層の体積に占める比率が0.5%未満であり、
前記調光層を100等分した各区画内の前記調光層の厚さに関する100個の測定値から得られる、不偏分散の平方根と平均値を使用して、不変分散の平方根÷平均値として算出される変動係数が10%以下である事を特徴とする調光フィルム。
【請求項2】
前記調光層が、液晶材料とポリマーネットワークのみからなる事を特徴とする請求項1に記載の調光フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の調光フィルムと、前記調光フィルムに駆動電圧を供給する交流電源と、該交流電源から供給される交流電圧を前記調光フィルムに供給するか否かを切り換えるスイッチと、を備えている事を特徴とする調光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の調光装置を使用した事を特徴とする投影画像を投影するスクリーン。
【請求項5】
請求項1または2に記載の調光フィルムの製造方法であって、
前記透明導電フィルムを形成した前記透明導電フィルムの透明導電膜上に、前記調光層となる前記液晶材料を塗布する工程と、
塗布された前記液晶材料の上に、透明導電膜側を向けて前記透明導電フィルムを積層する工程と、を備えており、
前記塗布装置が、ダイコータまたはマイクログラビアコータである事を特徴とする調光フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶材料を含んだ調光層を備える調光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
調光フィルムは、少なくとも、液晶材料からなる層や液晶材料を高分子材料の中に分散した層からなる調光層を、透明基材上に透明導電膜を形成した透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして積層した積層体である。調光フィルムの一対の透明導電膜からなる透明電極間に印加する交流電圧を変化させる事により、調光層を構成する液晶材料の配向状態を変化させる事により、光の透過量を変化させる光学的なデバイス(光学素子)である。
【0003】
調光層の具体的な構成としては、例えば、液晶材料層(以後、単に液晶層と記す。)としてツイストネマティック液晶(TN液晶)を用い、その液晶層を透明導電フィルムの透明電極側を内側にして積層した積層体を作製する。その積層体の表裏面に直線偏光層を積層する事により作製した調光フィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、調光層として、液晶材料を高分子材料の中に分散した高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)を使用した調光フィルムも知られている。高分子分散型液晶の場合は、偏光層は不要であり、印加する交流電圧のON/OFFにより光の散乱状態を変化させる事で、透明/不透明の切り替えを可能にしている。
【0005】
これらの調光フィルムの調光層の厚さを一定に保持する為、スペーサが使用されている。スペーサには、通常、スペーサ粒子が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6489272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このスペーサは、調光層の厚さを一定に保持する機能を発揮する一方で、調光フィルムの光学特性の劣化の原因にもなっている。具体的には、スペーサが存在する事により、調光フィルムを透明な状態にした時に、ヘイズ値(曇り状態を表す指標で、ヘイズ値が高い(大きい)程、曇りの度合いが強くなる。)が高くなる問題の原因となっている。即ち、スペーサが形成されている事で、光が散乱して曇り状態が発生している。また、調光フィルムを不透明な状態にした時に、スペーサが存在する事により、調光層が無い部分が形成される為、その部分は透明なままとなる事によりヘイズ値が低下する。
【0008】
上記の事情に鑑み、スペーサ起因の、透明な状態におけるヘイズ値の増加や、不透明な状態におけるヘイズ値の低下を回避した調光フィルムを提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する手段として、本発明の第一の態様は、透明基材上に透明導電膜を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜を内側にして液晶材料を含む調光層を挟み込む様に積層して得た調光フィルムであって、
調光層の厚さを一定に保持するスペーサの体積の調光層の体積に占める比率が0.5%
未満であり、
調光層を100等分した各区画内の調光層の厚さに関する100個の測定値から得られる、不偏分散の平方根と平均値を使用して、不変分散の平方根÷平均値として算出される変動係数が10%以下である事を特徴とする調光フィルムである。
【0010】
また、前記調光層が、液晶材料とポリマーネットワークのみからなる事を特徴とすることが好ましい。
【0011】
また、前記調光フィルムと、前記調光フィルムに駆動電圧を供給する交流電源と、該交流電源から供給される交流電圧を前記調光フィルムに供給するか否かを切り換えるスイッチと、を備えている事を特徴とする調光装置であることが好ましい。
【0012】
また、前記調光装置を使用した事を特徴とする投影画像を投影するスクリーンであることが好ましい。
【0013】
また、前記調光フィルムの製造方法であって、
前記透明導電フィルムを形成した前記透明導電フィルムの透明導電膜上に、前記調光層となる前記液晶材料を塗布する工程と、
塗布された液晶材料の上に、前記透明導電フィルムの透明導電膜側を向けて積層する工程と、を備えており、
前記塗布装置が、ダイコータまたはマイクログラビアコータである事を特徴とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の調光フィルムによれば、調光層の体積に占めるスペーサの体積比率が0.5%未満であって、且つ調光層の厚さの変動状態を表す変動係数が10%以下である。スペーサは、一対の調光フィルムの透明導電膜間に調光層に含まれる球状の支持体である。調光層の体積に占めるスペーサの体積比率が0.5%未満であれば、調光フィルムを正面から見た時に、調光フィルムの調光層の有効面積に対するスペーサの専有面積の比率も非常に小さな専有面積比率となる。その為、透明な状態においては、スペーサが無い調光フィルムと同等のより低いヘイズ値を備え、また不透明な状態においては、スペーサがない調光フィルムと同等のより高いヘイズ値を備えた調光フィルムを提供できることを見出した。
【0015】
また、本発明の調光装置によれば、本発明の調光フィルムを使用している為、透明な状態においてはより低いヘイズ値を備え、また不透明な状態においてはより高いヘイズ値を備えた調光装置を提供する事ができる。
【0016】
また、本発明のスクリーンによれば、本発明の調光装置を使用している為、透明な状態においてはより低いヘイズ値を備え、また不透明な状態においてはより高いヘイズ値を備えたスクリーンを提供する事ができる。
【0017】
また、本発明の調光フィルムの製造方法によれば、調光層の体積に占めるスペーサの体積比率が0.5%未満であっても、調光層の厚さの変動状態を表す変動係数が10%以下の膜厚を備える調光フィルムを提供可能とする事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の調光フィルムの一例を示す断面説明図。
図2】本発明の調光フィルムを上面から透視した場合の上面透視図であって、透明導電膜上に形成されたスペーサの形成状況の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<調光フィルム>
本発明の調光フィルムについて、図1図2を用いて説明する。
図1は、本発明の調光フィルム10の一部を例示する断面説明図である。
図2は、本発明の調光フィルム10の一部を例示する上面説明図である。
【0020】
本発明の調光フィルム10は、透明基材1上に透明導電膜2を形成した一対の透明導電フィルム5の透明導電膜2側を内側にして、液晶材料を含む調光層3を積層した積層体からなる調光フィルムである(図1参照)。
【0021】
調光層3の中には、調光層3の厚さを一定に保持するスペーサ4が、ある一定の割合より少ない状態で均一にばらまかれた状態で存在する(図2参照)。
本発明の調光フィルム10においては、調光層3の体積に占めるスペーサ4の体積比率が0.5%未満である。
この様に低密度である事により、調光層3が透明時である時のヘイズ値の増加を抑える事ができる。また、調光層3が不透明時である時のヘイズ値の低下を抑える事が可能となる。
【0022】
且つ、調光層3を100等分した各区画内の調光層3の厚さに関する100個の測定値から得られる、不偏分散の平方根と平均値を使用して、不変分散の平方根÷平均値として算出される変動係数が10%以下である。
調光層3の厚さの変動係数を10%以下にする事で、ムラの発生を抑制する事が可能となる。
【0023】
(スペーサ)
本発明におけるスペーサ4としては、従来の液晶表示装置で使用されて来た粒子状のスペーサ粒子を好適に用いることができる。本発明においては、調光層3を塗工して形成する際に使用される塗工液に均一分散させておき、調光層3を塗工した段階で、調光層3に均一に分散したスペーサ4が配置された状態で塗工される。
スペーサ4の材料としては、特に限定する必要は無く、シリカからなるスペーサ粒子であっても、樹脂からなるスペーサ粒子であっても構わない。
【0024】
(変動係数)
ここで変動係数とは、調光層3の厚さの均一性を表す指標である。調光フィルム10の全域を100等分し、各区画内において調光層3の厚さの測定を行う場合、個々の測定値をxiとすると、下記の式(1)と式(2)から、厚さの不偏分散の平方根sと、厚さの測定値の平均値aを算出する事ができる。変動係数は、s÷aによって算出する事ができる。
【数1】
【数2】
【0025】
変動係数が10%を超えると、調光層3の膜厚バラツキが大きくなる為、調光フィルム10のムラが無視できなくなる。その為、変動係数は10%(または、0.1)以下にする必要がある。
【0026】
調光層3の厚さは、破壊的な測定方法と非破壊的な測定方法のいずれかを用いて測定する事ができる。破壊的な測定方法としては、調光フィルム10の断面を露出させる事によって、SEM(走査型電子顕微鏡)などの観察、測定手段を用いて測定する方法が挙げられる。また、非破壊的な測定方法としては、光学的な測定方法や超音波を用いた測定方法などを挙げる事ができる。例えば、光学的な測定方法は、レーザー光を調光フィルムに照
射する事で、透明導電フィルム5の透明導電膜2と調光層3の2つの界面で反射されたレーザー光を測定し、それらのレーザー光が反射されてくるまでの時間差から調光層3の厚さを測定する事ができる。また、超音波を用いる方法も同様に、超音波を調光フィルムに与えた時に、2つの界面で反射された超音波を測定し、それらの超音波が反射されてくるまでの時間差から調光層3の膜厚を測定する事ができる。
【0027】
調光層3の体積に占めるスペーサ4の体積比率が0.5%未満であっても、測定から得られた調光層3の厚さの変動係数が0.1を超えると、スペーサ4による厚さの均一化が不十分となる。その為、調光層3の厚さにバラツキが多くなり、ムラが発生し易くなる。
また、測定から得られた調光層3の厚さの変動係数が0.1未満であっても、調光層3の体積に占めるスペーサ4の体積比率が0.5%以上となると、光の散乱が増え、ヘイズ値が上昇する。
【0028】
(透明導電フィルム)
透明導電フィルム5は、透明基材1の片面に透明導電膜2を形成したフィルムである。透明導電膜2の一部は、外部の交流電源から交流電圧を給電するための給電電極(図示省略)となっている。
【0029】
(透明基材)
透明基材1は、透明で電気的な絶縁材料であれば特に限定する必要は無い。例えば、透明な樹脂フィルムや樹脂シートを好適に使用する事ができる。また、樹脂に限らず、ガラスフィルムやガラス板を使用する事も可能である。更に、それらの複合材料を使用しても良い。例えば、透明樹脂フィルムや透明樹脂シートと極薄ガラスを、接着層を介して積層したものであっても良い。
【0030】
(透明導電膜)
透明導電膜2は、体積抵抗率が1×10-3Ω×cmより小さな値を持ち、可視光線の波長範囲(380nm~780nm)で光透過率が概ね80%以上の値をもっている透明導電膜であれば、好適に使用する事ができる。この様な透明導電膜としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide、錫を添加した酸化インジウム)をはじめ、酸化錫、アルミニウムを添加した酸化亜鉛、などを挙げる事ができる。これらの透明導電膜は主に、直流マグネトロンスパッタ装置を使用した反応性スパッタリング法を用いて作製されるが、これに限定する必要は無く、真空蒸着法、イオンプレーティング法、各種のCVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相成長法)法などを使用して作製しても良い。また、電極形成の為の透明導電膜のパターニング方法としては、成膜時に不要部に膜が付かない様にマスクをかけて成膜する方法や、成膜後にフォトリソ法にてパターニングする方法や、逆に成膜前に感光性樹脂をパターニングして、成膜しない部分をマスクした後、成膜し、感光性樹脂パターンを剥離除去するリフトオフ法を使用することができる。
【0031】
(調光層)
調光層3は、例えば、ポリマーネットワーク型液晶(PNLC)であり、液晶分子と、三次元の網目状に形成された樹脂からなるポリマーネットワークとを含み、ポリマーネットワークが有する空隙に液晶分子が保持されている。調光層3は、ポリマー分散型液晶(PDLC)など、他の構造であってもよい。
【0032】
液晶分子には、ネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などの従来公知の液晶分子を用いることができる。中でも、低電圧での駆動ならびに散乱特性などを考慮すると、誘電率の異方性が高く、屈折率の異方性の大きいものが好ましい。液晶分子は、ポリマーネットワークを形成する重合反応に供するエチレン基などの官能基を有してい
てもよい。
【0033】
調光層3は、ノーマルモードとリバースモードのいずれであってもよい。ノーマルモードの調光層3は、電圧印加(ON)により透過状態となり、電圧除去(OFF)により散乱状態となる。リバースモードの調光層3は、電圧除去(OFF)により透過状態となり、電圧印加(ON)により散乱状態となる。
【0034】
調光フィルム10にリバースモードの調光層3を用いる場合は、調光フィルム10は各透明導電膜2と調光層3との間に配向膜を有する。配向膜は、液晶層の配向方式(TN方式、VA方式、IPS方式、OCB方式など)に応じて、電圧除去(OFF)時に透過状態を呈する分子配向となるものが選定され、従来公知の水平配向膜,垂直配向膜のいずれかの配向膜が用いられる。
【0035】
リバースモードのPNLCによる調光層3を具備する調光フィルムの製造にあたっては、液晶と光重合性化合物(モノマー)との混合物を一対の透明導電フィルム5(透明基材1に透明導電膜2、配向層(不図示)が積層されてなる)の間に挟む。次いで、一定の条件下で紫外線を照射することにより、光重合によって液晶中の光重合性化合物を高分子に変化させる。光重合および架橋結合により、微細なドメイン(高分子の空隙)を無数に有するポリマーネットワークが液晶中に形成される。一方、ノーマルモードの調光フィルムの製造にあたっては、透明基材1に透明導電膜2と配向層とが積層されてなる透明導電フィルム5に代えて、透明基材1に透明導電2が積層されて配向層が積層されていない透明導電フィルム5が用いられて、同様の手順によってなされる。
【0036】
調光層3には、スペーサ4が含まれていても良い。スペーサ4を導入することにより、調光層3の厚さをある程度均一に保つことが可能となる。しかしながら、透明時のヘイズ値の増加や不透明時のヘイズ値の低下を防ぐ為、スペーサ4の体積が、調光層3の体積に占める体積占有比率は0.5%未満である事が必要となる。同時に、ムラを防ぐ為、膜厚は上述した変動係数で10%以下である事が必要である。
【0037】
なお、調光層3には、スペーサ4が含まれていないことが好ましい。換言するとスペーサ4の体積の、調光層3の体積に占める体積占有比率が0.0%である事が好ましい。この場合には、調光層3の厚さを均一に形成する為、ダイコータやマイクログラビアコータなどの、塗工膜厚の均一性が高い塗工装置を使用して、調光層3の塗工を行う必要がある。調光層3の膜厚の均一性は、上述した変動係数が10%(または0.1)以下である事が必要である。
【実施例0038】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0039】
<実施例1>
PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、ITO(Indium Tin
Oxide)薄膜を約100nmの厚さで形成した第1透明導電フィルムを基材として、塗液1を膜厚が15μmとなる様に、塗工装置としてダイコータを用いて塗工する事により、調光層を形成した。その後、ラミネータを用いて、第1透明導電フィルムと同じ仕様の第2透明導電フィルムのITO薄膜側を調光層に面して貼り合わせた後、紫外線照射により、調光フィルムを得た。更に、この調光フィルムに透明導電膜からの取り出し電極を取り付け、切替器を接続する事により、調光装置を得た。塗工液にはスペーサを含ませていない。
(塗工液1の組成)
樹脂 50重量部
重合開始剤(BASF社のIrg.184) 3重量部
液晶(Merck社製) 47重量部
【0040】
<実施例2>
塗工装置として、マイクログラビアコータを使用した事以外、実施例1と同様にして、調光フィルムと調光装置を得た。
【0041】
<比較例1>
塗工液としてスペーサを含む塗工液2を使用した事以外、実施例1と同様にして、調光フィルムと調光装置を得た。
(塗工液2の組成)
樹脂 50重量部
スペーサ(積水化学社のSP-215) 3重量部
重合開始剤(BASF社のIrg.184) 3重量部
液晶(Merck社製) 47重量部
【0042】
<比較例2>
PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、ITO(Indium Tin
Oxide)薄膜を約100nmの厚さで形成した第1透明導電フィルムを基材として、スペーサを含まない塗工液1を、設計上、膜厚が15μmになる量だけ滴下した後、ラミネータを用いて所定の圧力で、第1透明導電フィルムと同じ仕様の第2透明導電フィルムのITO薄膜側を調光層に面して貼り合わせた後、紫外線照射により、調光フィルムを得た。更に、この調光フィルムに透明導電膜からの取り出し電極を取り付け、切替器を接続する事により、調光装置を得た。
【0043】
<比較例3>
塗工液としてスペーサを含む塗工液3を用いた事以外、比較例2と同様にして、調光フィルムと調光装置を得た。
(塗工液3の組成)
樹脂 50重量部
スペーサ(積水化学社のSP-215) 1重量部
重合開始剤(BASF社のIrg.184) 3重量部
液晶(Merck社製) 47重量部
【0044】
<比較例4>
塗工液としてスペーサを含む塗工液2を用いた事以外、比較例3と同様にして、調光フィルムと調光装置を得た。
【0045】
<比較例5>
塗工液としてスペーサを含む塗工液4を用いた事以外、比較例3と同様にして、調光フィルムと調光装置を得た。
(塗工液4の組成)
樹脂 50重量部
スペーサ(積水化学社のSP-215) 10重量部
重合開始剤 3重量部
液晶 47重量部
【0046】
<評価>
1.スペーサの占有体積比率の測定
実施例1~2および比較例1~5で作製した調光フィルムの調光層を、光学顕微鏡にて観察し、1mmに相当する領域に存在するスペーサの個数をカウントした。使用した球
状のスペーサ(積水化学社のSP-215)の平均粒径(15μm)を使用して、1個のスペーサの体積を算出し、検出されたスペーサの個数を乗じて、スペーサの体積を算出した。その体積を1mm3で割る事により、スペーサ占有体積比率を算出した。
【0047】
2.調光層の厚さの変動係数
実施例1~2および比較例1~5で作製した調光フィルムの調光層を、走査型電子顕微鏡にて、断面観察を行う事により、調光層の厚さを測定した。断面観察を行う測定サンプルは、調光フィルムを均等な大きさの100個の区画領域(100等分した区画領域)に区分し、調光フィルムを各区画領域から切り出して、樹脂包埋し、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察に使用する研磨処理を行った後、電子顕微鏡観察を行った。この様にして、100個の調光層の厚さの測定データを取得した。
【0048】
取得した100個の測定データから、平均値aと不偏分散の平方根sを、式(1)と式(2)から算出し、調光層の厚さの変動係数を、s÷aによって算出した。
【数3】
【数4】
【0049】
3.ムラの評価
不透明時の調光層の膜厚ムラによるヘイズ値のムラを外観ムラとして目視にて算出した。ムラが観察された場合を×、観察されなかった場合を〇、として評価した。
【0050】
4.ヘイズ値の測定
実施例1~2および比較例1~5で作製した調光フィルムを、ヘイズメータを用いて測定し、不透明時のヘイズ値と、透明時のヘイズ値を測定した。
不透明時のヘイズ値が95%以上を〇、95%未満を×、とした。
透明時のヘイズ値が5%未満を〇、5%以上を×、とした。
【0051】
以上の評価結果をまとめて表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示した様に、実施例1と2においては、それぞれ、ダイコータとマイクログラビアコータを使用して調光層を塗布した。その為、調光層の厚さの変動係数は、10%未満となった。その為、スペーサを使用していなくても、膜厚の均一性が確保された為、ムラが観察される事はなかった。また、スペーサを使用していない為、不透明時のヘイズ値は、両者とも97%と良好であった。また透明時のヘイズ値も、両者とも3%と良好であった。
【0054】
比較例1については、スペーサを3重量部含む塗工液を、ダイコータを使用して塗布する事により調光層を形成した。その為、膜厚の均一性が確保され、ムラが観察される事はなかった。しかしながら、スペーサの占有体積比率が3%であったが、不透明時のヘイズ値は94%、透明時のヘイズ値は7%となり、両方とも良好では無かった。
【0055】
比較例2については、スペーサを含まない塗工液を、ラミネータを使用して塗布する事により調光層を形成した。その為、膜厚の均一性が確保できず、調光層の厚さの変動係数が20%となり、ムラが観察された。一方、スペーサの占有体積比率が0%であったため、不透明時のヘイズ値は96%、透明時のヘイズ値は4%となり、両方とも良好であった。
【0056】
比較例3については、スペーサを含む1重量部含む塗工液を、ラミネータを使用して塗布する事により調光層を形成した。その為、膜厚の均一性が確保できず、調光層の厚さの
変動係数が9%となったが、ムラは観察されなかった。一方、スペーサの占有体積比率が1%であったが、不透明時のヘイズ値は94%、透明時のヘイズ値は5%となり、両方とも良好ではなかった。この結果から、ヘイズ値を良好にするスペーサの占有体積比率は、0%~1%の間にあり、凡そ0.5%が境界値であると考えられる。
【0057】
比較例4については、スペーサを3重量部含む塗工液を、ラミネータを使用して塗布する事により調光層を形成したが、調光層の厚さの変動係数は5%となり、ムラは観察されなかった。一方、スペーサの占有体積比率が3%であったため、不透明時のヘイズ値は94%、透明時のヘイズ値は7%となり、両方とも良好ではなかった。
【0058】
比較例5については、スペーサを10重量部含む塗工液を、ラミネータを使用して塗布する事により調光層を形成したが、調光層の厚さの変動係数は3%となり、ムラは観察されなかった。一方、スペーサの占有体積比率が10%であったため、不透明時のヘイズ値は93%、透明時のヘイズ値は8%となり、両方とも良好ではなかった。
【符号の説明】
【0059】
1・・・透明基材
2・・・透明導電膜
3・・・調光層
4・・・スペーサ
10・・・調光フィルム
図1
図2