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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099812
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】金車
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/04 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
B66D3/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213822
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505312730
【氏名又は名称】株式会社電力機材サービス
(71)【出願人】
【識別番号】000139702
【氏名又は名称】株式会社安田製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 良幸
(72)【発明者】
【氏名】北村 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 隆英
(72)【発明者】
【氏名】青木 佳明
(72)【発明者】
【氏名】袴塚 功男
(72)【発明者】
【氏名】藤田 教昌
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 玲朗
(72)【発明者】
【氏名】川崎 伯晃
(57)【要約】
【課題】索輪からのワイヤロープの脱線を好適に防ぎ、作業員の負荷を軽減し且つ作業時間を短縮することが可能な金車を提供する。
【解決手段】本発明にかかる金車100の構成は、ワイヤロープ30がかかる索輪110と、索輪110を支持するフレーム120と、索輪110の外周とフレーム120が交差する位置であって、索輪110の両側かつフレーム120の両側に、索輪110の面内方向に回転軸を有する縦ローラ130を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープがかかる索輪と、
前記索輪を支持するフレームと、
前記索輪の外周と前記フレームが交差する位置であって、該索輪の両側かつ該フレームの両側に、前記索輪の面内方向に回転軸を有する縦ローラを備えたことを特徴とする金車。
【請求項2】
前記縦ローラの近傍に、前記索輪の面内方向と直交する方向に回転軸を有する横ローラを備えたことを特徴とする請求項1に記載の金車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープのかかる金車に関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔の建設や整備などにおいて、鉄塔に電線を張る架線工事においては、金属製の滑車(以下、金車と称する)が頻繁に使用される。鉄塔で使用される金車としては、特許文献1の滑車を例示することができる。特許文献1の滑車は主として上下方向にワイヤロープを動かすものであり、資材や工具等を地表から高所へ引き上げるために使用される。特許文献1の滑車では、滑車用巻込防止装置を索輪から2方向に延びるワイヤロープの両方側に一対備えている。かかる構成によれば、ワイヤロープを円滑に通過させつつ索輪への異物の巻込みを防ぐことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-055861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では上下方向にワイヤロープを通していたが、架線工事においては鉄塔間に電線を張るものであるから、横方向にワイヤロープを通すことになる。ここで鉄塔が直線的に並んでいればよいが、地形に応じて鉄塔がずれて建てられるため、金車に通すワイヤロープや電線には水平角が生じる。
【0005】
ここで電線は重く太いものであるから、まず金車には延線ロープと呼ばれる細く軽いワイヤロープが張られ、それから太いロープ、電線へと引き替えられる。金車は電線の重量と張力にも耐えられる大きさと剛性を持っているため、例えば80kgほどもある重い設備である。延線の最初の段階のワイヤロープは電線に比して極端に軽いため、張力も弱く、ワイヤロープの水平荷重では金車の振れ角(垂直からの傾斜角)が小さい。このためワイヤロープが索輪の縁に乗ってしまい、索輪の回転に伴って索輪から外れていき、いずれ索輪から外れて索輪とフレームの間に挟まってしまう、いわゆる脱線を生じることがある。
【0006】
脱線が生じると索輪の回転が停止し、索輪とフレームとの間に挟まったワイヤロープが傷ついてしまう。このため、脱線が生じたら延線作業を中断し、正常な状態に戻す作業を行う。その後で傷付いたワイヤロープを交換し、延線作業を再開する。このように脱線が生じると、作業員が行う作業が増え、作業に大幅な遅延が生じてしまう。
【0007】
現状の脱線防止対策としては、延線の種類(ロープ、ワイヤロープ、電線など)毎に最適な金車に交換したり、金車の下方に付けたロープを鉄塔に固縛して最適な金車の振れ角になるように調整したり(あらかじめ傾けておく)することが行われている。しかしながら、これらは煩雑な作業であり、また高所作業であるため、延線作業が長時間化してしまう。また延線作業中は各鉄塔に監視員を配置し、脱線の可能性が高くなった場合には延線作業を一時停止して、金車の振れ角等を調整していた。この場合、延線作業に多くの人手を有することとなる。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、索輪からのワイヤロープの脱線を好適に防ぎ、作業員の負荷を軽減し且つ作業時間を短縮することが可能な金車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる金車の代表的な構成は、ワイヤロープがかかる索輪と、索輪を支持するフレームと、索輪の外周とフレームが交差する位置であって、索輪の両側かつフレームの両側に、索輪の面内方向に回転軸を有する縦ローラを備えたことを特徴とする。
【0010】
上記構成では、ワイヤロープの金車への入口、出口付近に細径縦長のローラを複数設置している。、ワイヤロープが索輪から外れた場合であっても、外れたワイヤロープは縦ローラに回転支持されて走行することができる。したがって、索輪からのワイヤロープの脱線を好適に防ぎ、作業員の負荷を軽減し且つ作業時間を短縮することが可能となる。
【0011】
上記縦ローラの近傍に、索輪の面内方向と直交する方向に回転軸を有する横ローラを備えるとよい。かかる構成によれば、ワイヤロープが索輪の縁に乗り上げ、索輪の回転によって上方に登っていった場合であっても、ワイヤロープは横ローラに乗り上げて走行することができる。これにより、ワイヤロープが索輪とフレームとの間に挟まりこむことを防ぐため、索輪からのワイヤロープの脱線を好適に防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、索輪からのワイヤロープの脱線を好適に防ぎ、作業員の負荷を軽減し且つ作業時間を短縮することが可能な金車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態にかかる金車を説明する図である。
図2】縦ローラにワイヤロープが支持された状態の例を示す図である。
図3】横ローラにワイヤロープが支持された状態の例を示す図である。
図4】従来の金車を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図4は、従来の金車10を説明する図である。図4に示すように、金車10は、鉄塔20の腕金22に吊り下げられ、鉄塔20にワイヤロープ30等、最終的には電線(不図示)を張るために用いられる。
【0016】
このとき、金車10に対して横方向に通されたワイヤロープ30(延線ロープとも称される)に水平角が生じることがある。水平角が生じると金車10に水平荷重が作用するため、矢印F方向に金車10が傾くことになる。しかしワイヤロープ30は電線に比して極端に軽いため、張力も弱く、ワイヤロープ30の水平荷重では金車10の振れ角(垂直からの傾斜角)が小さい。このためワイヤロープ30が索輪12の縁に乗ってしまい、索輪12の回転に伴って索輪12から外れていき、索輪12から外れて索輪12とフレーム14の間に挟まってしまう、いわゆる脱線を生じることがある。
【0017】
図1は、本実施形態にかかる金車100を説明する図である。図1(a)は、本実施形態の金車100の全体斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の金車100を側方から観察した状態を示す図である。図1(a)および(b)に示す本実施形態の金車100には、ワイヤロープ30(図4参照)がかけられる。
【0018】
金車100は、索輪110、フレーム120、縦ローラ130および横ローラ140を含んで構成される。索輪110は、金属製(例えばアルミダイキャスト製)であり、ワイヤロープ30がかけられる溝112を有する。索輪110の両面には、金属製(例えば鉄製)のフレーム120が配置されている。索輪110は、このフレーム120によって支持される。フレーム120の上部には、上方が開口した断面コの字状の吊下金具150が設けられている。これにより、金車100が鉄塔20の腕金22(図5参照)に吊り下げられる。
【0019】
図2は縦ローラ130にワイヤロープが支持された状態の例を示す図である。縦ローラ130は、図1および図2に示すように、索輪110の外周とフレーム120が交差する位置P1であって、索輪110の両側かつフレーム120の両側に設けられている。
【0020】
「面内方向に回転軸を有する」とは、索輪110の回転面と縦ローラ130の回転軸が平行であることを意味する。換言すれば、索輪110の接線と縦ローラ130の回転軸は交差する。
【0021】
フレーム120の両側とは、すなわちワイヤロープ30の金車100への入口側、出口側の両方である。ワイヤロープ30は入口側出口側の両方にかかる場合があるためである。本実施形態においてフレーム120の両側の2本の縦ローラ130は、上方の幅が狭く下方の幅が広いハの字に配置されている。これにより縦ローラ130を支持するブラケット130aの長さを短くすることができ、ブラケット130aの剛性を高めることができる。
【0022】
索輪110の両側とは、索輪110の表面、裏面の両方であり、図1(b)に示すように索輪110を挟んだ両側である。したがって縦ローラ130は都合4本配置している。ワイヤロープ30は一度には索輪110の片面側にしかかからないため、縦ローラ130も横ローラ140も索輪110の片面側のみに配置してもよい。しかしながら、本実施形態のように索輪110の両側に配置することにより、金車100を腕金22に取り付ける際に向きを考慮する必要をなくすことができる。
【0023】
これにより、図2に示すように、ワイヤロープ30に大きな水平角が生じて索輪110の溝112から出てしまった場合であっても、ワイヤロープ30は縦ローラ130によって回転支持されて走行することができる。したがって、したがって、索輪110からのワイヤロープ30の脱線を好適に防ぎ、作業員の負荷を軽減し且つ作業時間を短縮することが可能となる。
【0024】
図3は横ローラ140にワイヤロープが支持された状態の例を示す図である。横ローラ140は、縦ローラ130の近傍であって、索輪110の面内方向と直交する方向に回転軸を有する。
【0025】
縦ローラ130の近傍とは、縦ローラ130と横ローラ140によってL字の枠を形成する位置である。また、横ローラ140は索輪の縁114の脇に、縁114より回転軸116側に配置されている。
【0026】
「面内方向と直交する」とは、索輪110の回転面と横ローラ140の回転軸が直交することを意味する。換言すれば、索輪110の回転軸116と横ローラ140の回転軸は平行である。
【0027】
図3(a)の位置P2に示すように、ワイヤロープ30にかかる水平角のために、ワイヤロープ30が索輪の縁114に乗り上げる場合がある。この状態で索輪110が矢印の方向に回転すると、ワイヤロープ30が索輪の縁114を登っていってしまう。このような場合であっても、図3(b)に示すように、位置P3でワイヤロープ30は横ローラ140に乗り上げて走行することができる。これにより、ワイヤロープ30が索輪110とフレーム120との間に挟まりこむことを防ぐため、索輪110からのワイヤロープ30の脱線を好適に防ぐことが可能となる。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、ワイヤロープのかかる金車として利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10…金車、12…索輪、14…フレーム、20…鉄塔、22…腕金、30…ワイヤロープ、100…金車、110…索輪、112…溝、114…索輪の縁、116…回転軸、120…フレーム、130…縦ローラ、130a…ブラケット、140…横ローラ、150…吊下金具
図1
図2
図3
図4