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  • 特開-水性液状化粧料及びペン型化粧品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099835
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】水性液状化粧料及びペン型化粧品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20220628BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220628BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20220628BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20220628BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20220628BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220628BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/02
A61K8/29
A61Q1/10
A61K8/88
A61K8/81
A45D34/04 525A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213861
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】荻野 一紀
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC792
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD352
4C083BB23
4C083CC14
4C083DD11
4C083DD23
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】 オートペンタイプで使用する場合であっても吐出が可能であるとともに、十分な耐水性を有し、濃淡差や色差が抑制された描線を形成することができる水性液状化粧料及びそれを含むペン型化粧品を提供すること。
【解決手段】 水性液状化粧料は、(A)無機着色顔料と、(B)アニオン性分散剤と、(C)皮膜形成性ポリマーエマルションと、を含む水性液状化粧料であって、(A)成分の含有量が、化粧料全量を基準として、11~35質量%であり、(A)成分が、(A1)一次粒子径が0.15μm以上のチタンブラックと、(A2)ベンガラ、黒酸化鉄及び黄酸化鉄からなる群より選択される少なくとも一種の酸化鉄と、を含有し、(B)成分の含有量が、(A1)成分及び(A2)成分の合計100質量部に対して、8質量部以下である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無機着色顔料と、(B)アニオン性分散剤と、(C)皮膜形成性ポリマーエマルションと、を含む、水性液状化粧料であって、
前記(A)成分の含有量が、化粧料全量を基準として、11~35質量%であり、
前記(A)成分が、(A1)一次粒子径が0.15μm以上のチタンブラックと、(A2)ベンガラ、黒酸化鉄及び黄酸化鉄からなる群より選択される少なくとも一種の酸化鉄と、を含有し、
前記(B)成分の含有量が、前記(A1)成分及び前記(A2)成分の合計100質量部に対して、8質量部以下である、水性液状化粧料。
【請求項2】
25℃における粘度が50mPa.s以下である、請求項1に記載の水性液状化粧料。
【請求項3】
前記(A1)成分と前記(A2)成分との質量比[(A1)/(A2)]が、1/10~6/1である、請求項1又は2に記載の水性液状化粧料。
【請求項4】
オートペンタイプの塗布具と、当該塗布具に充填された、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性液状化粧料と、を備える、ペン型化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性液状化粧料及びペン型化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
液状化粧料の製品形態として、液状化粧料の表面張力と毛細管現象の作用によって化粧料が吐出されるオートペンタイプの化粧品が利用されている。このような化粧品においては、通常、良好な吐出が得られやすいこと、塗布後の乾燥速度が速いことなどの点から水性の液状化粧料が用いられている。一方で、水性液状化粧料は、耐水性が劣る傾向にある。一般にアイライナーなどの化粧料では非水溶性皮膜剤を用いて耐水性を向上させている。水性液状化粧料の場合、例えば、下記特許文献1には、アクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル、酢酸ビニル、スチレンから選ばれるモノマーの重合体及び/又は共重合体(ポリスチレンは除く)のエマルジョンを配合した液状化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-073220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、リキッドアイライナーやアイブロウ化粧料などにおいては、黒や茶色以外の色の要望が増えつつある。そのため、黒酸化鉄やカーボンブラックといった黒色顔料と一緒に、ベンガラ、黄酸化鉄、酸化チタン、紺青などの無機顔料や有機着色剤レーキなど、その他の顔料を混合することがある。
【0005】
しかしながら、顔料が上記の混合系である水性液状化粧料をオートペンタイプで使用すると、描線に濃淡差や色差が発生する場合があることが判明した。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、オートペンタイプで使用する場合であっても吐出が可能であるとともに、十分な耐水性を有し、濃淡差や色差が抑制された描線を形成することができる水性液状化粧料及びそれを含むペン型化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、(A)無機着色顔料と、(B)アニオン性分散剤と、(C)皮膜形成性ポリマーエマルションと、を含む水性液状化粧料であって、(A)成分の含有量が、化粧料全量を基準として、11~35質量%であり、(A)成分が、(A1)一次粒子径が0.15μm以上のチタンブラックと、(A2)ベンガラ、黒酸化鉄及び黄酸化鉄からなる群より選択される少なくとも一種の酸化鉄と、を含有し、(B)成分の含有量が、(A1)成分及び(A2)成分の合計100質量部に対して、8質量部以下である、水性液状化粧料を提供する。
【0008】
本発明の水性液状化粧料によれば、上記構成を有することにより、オートペンタイプで使用する場合であっても吐出が可能であるとともに、十分な耐水性を有し、濃淡差や色差が抑制された描線を形成することができる。このような効果が奏される理由について本発明者らは以下の通り推察する。(C)成分を含む水性液状化粧料において、(A1)成分と(A2)成分とを組み合わせ、これらに対して(B)成分を特定割合以下で用いることにより、アニオン成分に起因する耐水性の低下を抑制しつつ、(A1)成分及び(A2)成分の分散状態を良好に維持することができたと考えられる。これにより、十分な吐出性と、化粧膜の耐水性と、描線における濃淡差や色差の抑制とを両立することができたと推察する。
【0009】
上記の水性液状化粧料は、吐出性の観点から、25℃における粘度が50mPa.s以下であってもよい。この場合、オートペンタイプの塗布具によって化粧料を安定的に吐出しやすくなる。
【0010】
また、発色、描線の濃淡差や色差の抑制、及び吐出性を一層向上させる観点から、(A1)成分と(A2)成分との質量比[(A1)/(A2)]が、1/10~6/1であってもよい。
【0011】
本発明はまた、オートペンタイプの塗布具と、当該塗布具に充填された、上記の水性液状化粧料と、を備える、ペン型化粧品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オートペンタイプで使用する場合であっても吐出が可能であるとともに、十分な耐水性を有し、濃淡差や色差が抑制された描線を形成することができる水性液状化粧料及びそれを含むペン型化粧品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ペン型化粧品について説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の水性液状化粧料は、(A)無機着色顔料(以下、(A)成分という場合もある)、と、(B)アニオン性分散剤(以下、(B)成分という場合もある)と、(C)皮膜形成性ポリマーエマルション(以下、(C)成分という場合もある)と、を含む。
【0015】
なお、本明細書において水性とは、少なくとも水が含まれていることを意味する。水性化粧料には、水以外にエタノール等の炭素数1~5の低級アルコールが更に含まれていてもよい。
【0016】
本実施形態の水性液状化粧料における水の含有量は、化粧料全量基準で、30~85質量%であってもよく、40~80質量%であってもよく、50~70質量%であってもよい。
【0017】
また、本明細書において液状とは、25℃において流動性を示すものであることを指す。本実施形態の水性液状化粧料の25℃における粘度は、10000mPa・s以下であってもよく、容器の形態によって適宜設定することができる。例えば、ペン型は、25℃における粘度が5000mPa・s以下である化粧料が好ましい。
【0018】
オートペンタイプでの吐出性を良好にする観点から、本実施形態の水性液状化粧料は、25℃における粘度が、50mPa・s以下であることが好ましく、40mPa・s以下であることがより好ましく、35mPa・s以下であることが更に好ましく、30mPa・s以下であることが更により好ましく、25mPa・s以下であることが特に好ましい。また、使用性の観点から、本実施形態の水性液状化粧料は、25℃における粘度が、4mPa・s以上であることが好ましく、6mPa・s以上であることがより好ましい。
【0019】
なお、上記の粘度は、25℃の試料について、ブルックフィールド型粘度計(BM型)を用いて、下記の条件で測定した値を意味する。
5~50mPa・s:BLアダプタ、回転数12rpm
50~500mPa・s:ローターNo.1、回転数12rpm
250~2500mPa・s:ローターNo.2、回転数12rpm
1000~10000mPa・s:ローターNo.3、回転数12rpm
5000~50000mPa・s:ローターNo.4、回転数12rpm
【0020】
[(A)無機着色顔料]
無機着色顔料は、通常化粧品に使用されるものであれば特に限定されず用いることができる。例えば、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、群青、紺青、酸化チタン、微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、チタンブラック(チタン・酸化チタン焼結物)、カーボンブラック、硫酸バリウム、パール顔料(雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、アルミニウムフレーク等)などが挙げられる。これらの粉体は、使用性や分散性等の向上を目的として、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、金属石鹸、シリコーン化合物、フッ素化合物、界面活性剤、アミノ酸化合物等が挙げられる。
【0021】
本実施形態の水性液状化粧料は、発色、及び描線の濃淡差や色差の抑制の観点から、(A)成分として、(A1)一次粒子径が0.15μm以上のチタンブラックと(以下、(A1)成分という場合もある)、(A2)ベンガラ、黒酸化鉄及び黄酸化鉄からなる群より選択される少なくとも一種の酸化鉄(以下、(A2)成分という場合もある)と、を含有することができる。
【0022】
(A1)成分は、例えば、Tilack D(赤穂化成(株)製、商品名)などの市販品を用いることができる。(A1)成分は、ホウ素フリーであってもよい。
【0023】
(A1)成分は、発色、及び描線の濃淡差や色差の抑制の観点から、一次粒子径が0.15μm~0.6μmであってもよく、0.15μm~0.5μmであってもよく、0.2μm~0.4μmであってもよい。
【0024】
(A1)成分の含有量は、発色、及び描線の濃淡差や色差の抑制の観点から、(A)成分全量を基準として、20~80質量%であってもよく、22~70質量%であってもよく、25~60質量%であってもよく、27~50質量%であってもよい。
【0025】
(A2)成分の含有量は、発色、及び描線の濃淡差や色差の抑制の観点から、(A)成分全量を基準として、20~70質量%であってもよく、25~65質量%であってもよく、30~60質量%であってもよい。
【0026】
耐水性、発色、描線の濃淡差や色差の抑制、吐出性、及び分散安定性を高水準で両立させる観点から、(A1)成分と(A2)成分との合計含有量が、化粧料全量基準で、15~30質量%であってもよく、16~25質量%であってもよく、17~21質量%であってもよい。
【0027】
発色、描線の濃淡差や色差の抑制、及び吐出性を一層向上させる観点から、(A1)成分と(A2)成分との質量比[(A1)/(A2)]が、1/10~6/1であってもよく、1/3~6/1であってもよい。
【0028】
吐出性を向上させる観点から、(A1)成分と(A2)成分との質量比[(A1)/(A2)]が、1/1~6/1であってもよく、1/1~3/1であってもよく、1/1~2/1であってもよい。
【0029】
発色、描線の濃淡差や色差の抑制、分散安定性の観点から、(A1)成分と(A2)成分との質量比[(A1)/(A2)]が、1/10~1/1であってもよく、1/5~1/1であってもよく、1/3~1/1であってもよく、2/5~1/1であってもよい。
【0030】
本実施形態の水性液状化粧料は、(A)成分として、上述した(A1)成分及び(A2)成分に加えて、(A3)酸化チタン(以下、(A3)成分という場合もある)を更に含有していてもよい。
【0031】
(A3)成分の含有量は、描線の多様な色の表現や、隠蔽性の付与の観点から、(A)成分全量を基準として、0.01~30質量%であってもよく、1~28質量%であってもよく、5~27質量%であってもよい。
【0032】
また、描線の多様な色の表現や、隠蔽性の付与の観点から、(A3)成分の含有量は、(A1)成分及び(A2)成分の合計100質量に対して、0~60質量部であってもよく、3~50質量部であってもよく、5~40質量部であってもよい。
【0033】
本実施形態の水性液状化粧料は、濃淡差や色差が抑制された描線を形成する観点から、カーボンブラックの含有量が、(A)成分100質量部に対して、10質量部以下であってもよく、カーボンブラックを含まないものであってもよい。
【0034】
本実施形態の水性液状化粧料における(A)成分の含有量は、化粧料全量基準で、11~35質量%であり、15~30質量%であってもよく、18~28質量%であってもよい。(A)成分の含有量がこのような範囲にあると、濃淡差や色差が抑制された描線を形成することができ、吐出性及び発色にも優れる化粧料が得られやすくなる。
【0035】
[(B)アニオン性分散剤]
(B)成分としては、ポリアスパラギン酸塩、ポリアクリル酸塩やポリメタクリル酸塩等のポリカルボン酸塩などのアニオン性高分子が挙げられる。また、(B)成分は、水溶性であるものを用いることができる。
【0036】
ポリアスパラギン酸塩とは、アスパラギン酸を構成単位に含む重合体である。ポリカルボン酸塩とは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸に由来する構成単位を含む単独重合体、もしくは共重合体である。ポリアクリル酸塩とは、アクリル酸を構成単位に含む単独重合体であり、ポリメタクリル酸塩とは、メタクリル酸を構成単位に含む単独重合体である。
【0037】
上記重合体の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩、または塩基性アミノ酸塩を利用することができ、中でもナトリウム塩やカリウム塩が好ましい。
【0038】
(B)成分は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
アニオン性高分子の平均分子量(Mw)は、1000~15000であってもよく、2000~10000であってもよい。水溶性重合体の平均分子量(Mw)は、分子量既知のポリエチレングリコールを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0040】
アニオン性分散剤は、市販品を用いることができる。ポリアスパラギン酸塩としては、アクアデュウSPA-30(味の素社製、平均分子量(Mw)4000)、Baypure DS100(ランクセス社製、平均分子量(Mw)2500)が挙げられる。ポリアクリル酸塩としては、アロンT-50(東亜合成社製、平均分子量(Mw)6000)、
アロンA-30SL(東亜合成社製、平均分子量(Mw)6000)が挙げられる。ポリカルボン酸塩としては、アロンA-6330(東亜合成社製、平均分子量(Mw)10000)、アロンA-6001(東亜合成社製、平均分子量(Mw)8000)が挙げられる。
【0041】
(B)成分の含有量は、吐出性、及び、十分な耐水性を有し、濃淡差や色差が抑制された描線を形成する観点から、(A)成分100質量部に対して、8質量部以下であってもよく、0.1~6質量部であってもよく、1~5質量部であってもよく、1.5~3質量部であってもよい。また、同様の観点から、(B)成分の含有量は、(A1)成分及び(A2)成分の合計100質量部に対して、8質量部以下であり、0.5~5質量部であってもよく、1~3質量部であってもよく、1.5~3質量部であってもよい。
【0042】
(B)成分の含有量は、耐水性の観点から、(C)成分の含有量100質量部に対して、3~35質量部であってもよく、4~30質量部であってもよく、5~10質量部であってもよい。
【0043】
本実施形態の水性液状化粧料における(B)成分の含有量は、化粧料全量基準で、0.1~1.5質量%であってもよく、0.2~1質量%であってもよく、0.3~0.8質量%であってもよい。
【0044】
[(C)皮膜形成性ポリマーエマルション]
皮膜形成性ポリマーエマルションに含まれるポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを構成単位として含む水に不溶の重合体若しくは共重合体が挙げられる。共重合体の構成単位としては、酢酸ビニルモノマー、スチレンモノマーなどが挙げられる。共重合体の場合、ランダム共重合体であっても、グラフト共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、コア・シェル型共重合体であってもよい。
【0045】
皮膜形成性ポリマーエマルションの具体例としては、アクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション等が挙げられる。なお、ここでいうアクリル酸アルキルには、メタクリル酸アルキルも包含される。皮膜形成性ポリマーエマルションは、水を媒体とし、固形分濃度が30~60質量%のものを用いることができる。
【0046】
皮膜形成性ポリマーエマルションは市販品を用いることができる。アクリル酸アルキル共重合体エマルションとしては、ヨドゾールGH800F(アクゾノーベル社製、製品名、固形分濃度45質量%)、ヨドゾールGH810F(アクゾノーベル社製、製品名、固形分濃度46質量%)、ヨドゾールGH34F(アクゾノーベル社製、製品名、固形分濃度42質量%)、ダイトゾール5000SJ(大東化成工業社製、製品名、固形分濃度50質量%)などが挙げられる。アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルションとしては、ヨドゾールGH41F(アクゾノーベル社製、製品名、固形分濃度45質量%)、ダイトゾール5000STY(大東化成工業社製、製品名、固形分濃度50質量%)、エマポリーCE-119N(日光ケミカルズ株式会社販売、製品名)などが挙げられる。アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルションとしては、ビニゾール2140L(大同化成工業社製、製品名、固形分濃度45質量%)などが挙げられる。
【0047】
皮膜形成性ポリマーエマルションは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
本実施形態の水性液状化粧料における(C)成分の含有量は、化粧料全量を基準として、固形分濃度換算で3~18質量%であってもよく、5~15質量%であってもよく、6~12質量%であってもよく、7~10質量%であってもよい。(C)成分の含有量が上記の範囲にあると、描線等の化粧膜の耐水性を向上させつつ、吐出性の確保、及び、描線における濃淡差や色差の抑制が容易となる。
【0049】
本実施形態に係る水性液状化粧料には、上記の各成分の他に通常化粧品に使用される他の成分、例えば、(A)成分以外の粉体、界面活性剤、(B)成分以外の水溶性分散剤、(C)成分以外の皮膜形成剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、紫外線吸収剤、ビタミン類、美容成分、酸化防止剤、香料等を必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0050】
(A)成分以外の粉体としては、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体、カルミン、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂等の合成樹脂粉体、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体などが挙げられる。
【0051】
界面活性剤としては、親水性ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
【0052】
親水性ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及び、それらのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、スルホン酸塩、アルキル硫酸塩などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、レシチン、カルボベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0053】
(B)成分以外の水溶性分散剤としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(VP/VAコポリマー)などの水溶性ポリマーを用いることができる。
【0054】
(C)成分以外の皮膜形成剤としては、PVP、PVA、VP/VAコポリマーなどが挙げられる。
【0055】
粘度調整剤としては、粘土鉱物、キサンタンガム等の多糖類などが挙げられる。
【0056】
本実施形態に係る水性液状化粧料は、上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分及び水、並びに必要に応じてその他の成分を溶解又は分散し、均一に攪拌・混合することにより製造することができる。
【0057】
本実施形態に係る水性液状化粧料は、アイライナー、アイブロウ、アイシャドウ、マスカラなどのメイクアップ化粧料として用いることができる。
【0058】
本実施形態に係る水性液状化粧料は化粧品に使用される公知の製品形態で利用することができる。製品形態としては、例えば、ペンタイプ(ペン型)、ボトルタイプなどが挙げられる。ペンタイプとしては、化粧料を含浸した繊維収束体又は化粧料を充填した充填部といった化粧料貯蔵部と、これに接合された筆やフェルトからなる塗布部とを備えており、ダイヤルやノック等で貯蔵部に力を加えることによって化粧料が強制的に吐出されるメカニカルタイプ、液状化粧料の表面張力と毛細管現象の作用によって化粧料が吐出されるオートペンタイプが挙げられる。
【0059】
本実施形態に係る水性液状化粧料は、使用方法の簡便性、携帯性の観点から、オートペンタイプで利用することが好ましい。オートペンタイプの容器は、公知のものを用いることができ、例えば、特開2016-87094号公報に開示の液状化粧料容器が挙げられる。
【0060】
本実施形態のペン型化粧品は、オートペンタイプの塗布具と、当該塗布具に充填された、上述の本実施形態に係る水性液状化粧料と、を備える。
【0061】
図1は、ペン型化粧品を示す模式断面図である。図1に示されるペン型化粧品100は、全体形状が筆記具の如き細長い丸棒状を呈するものであり、円筒状の容器本体1と、容器本体1内に設けられ本実施形態に係る水性液状化粧料Lを収容する収容部2と、容器本体1の先端に装着され収容部2内の水性液状化粧料Lを塗布するための毛筆3と、容器本体1内に配置され収容部2内と毛筆3を結ぶ軸状の中継芯4と、中継芯4周りに装着された略円筒状のジャバラ部材5と、を概略備える。なお、ここでは、使用者が容器本体1を持って塗布しやすいように、容器本体1に対して、有底円筒状の把持筒6が螺合により着脱可能に装着されている。なお、容器本体1は円筒状に限定されるものではなく、矩形筒等であっても良い。
【0062】
ペン型化粧品100においては、収容部2、毛筆3及び中継芯4が、オートペンタイプの塗布具を構成しており、収容部2に本実施形態に係る水性液状化粧料が充填されている。
【0063】
容器本体1は、例えばPP等から形成され、鍔付きで先細の円筒状に構成される。容器本体1の外周面に設けられた鍔部の後端面には、容器本体1に螺子込まれた把持筒6の先端面が突き当てられ、鍔部の先端面には、容器本体1に装着されたキャップ10の開放端面が突き当てられる。また、容器本体1の後端の開口は、有底円筒状の尾栓7を差し込み装着することにより、閉じられている。
【0064】
ジャバラ部材5は、水性液状化粧料Lの流量をコントロールするためのもので、水性液状化粧料Lを含む溝(ジャバラ)を有し、その円筒状の後端部が、容器本体1の内周面の凹部に嵌合することにより、容器本体1に装着されている。そして、容器本体1内のジャバラ部材5の後端部と尾栓7との間に上記収容部2が形成されており、この収容部2内に水性液状化粧料Lが充填されている。
【0065】
中継芯4は、例えばアクリル樹脂等から形成され、ジャバラ部材5の筒孔を通過するように軸線方向に延在し、その先端側がジャバラ部材5の先端側と嵌合することでジャバラ部材5に装着されている。中継芯4は、その後端側の部分が収容部2内に進入すると共に、その先端側の部分が毛筆3に進入することで、収容部2内と毛筆3とを結んでいる。そして、中継芯4は、毛細管現象により収容部2内の水性液状化粧料Lを吸い上げ毛筆3へ供給するのを可能とする。
【0066】
図1に示されるペン型化粧品100においては、塗布体が毛筆とされているが、フェルトチップ、ウレタンチップに変更してもよい。
【0067】
容器本体1の先端側には、毛筆3等を保護するための有底円筒状のキャップ10が嵌合により着脱自在に装着されている。
【0068】
ペン型化粧品100にあっては、収容部2内に、水性液状化粧料Lと共に、軸線方向に移動可能な撹拌子20及び軸線方向に伸縮可能なコイルバネ21が収容されている。撹拌子20は、ここでは、特に好ましいとして、球体とされているが、多面体や錐体等であっても良い。
【0069】
コイルバネ21は、径違いの複数のバネ部(ここでは径違いの2個のバネ部)を軸線方向に一体的に連ねた一体成形のバネであり、ここでは、例えばSUS等より成形されている。このコイルバネ21は、撹拌子20の径よりも小径の小径バネ部を後半部に備えると共に、小径バネ部の前方の軸線方向隣に、撹拌子20の径より大径の大径バネ部を連ねて備える。
【0070】
ここで、使用者がペン型化粧品100を振ると、撹拌子20は、コイルバネ21を構成する大径バネ部内を軸線方向に移動可能とされているため、撹拌子20が軸線方向に移動し、この撹拌子20の移動により水性液状化粧料Lが撹拌される。
【0071】
このように構成されたペン型化粧品100にあっては、収容部2内の水性液状化粧料Lは、中継芯4を介して先端側の毛筆3に向かって流出し、使用者により毛筆3による塗布に供される。なお、本実施形態に係るペン型化粧品100においては、上述した撹拌子20及びコイルバネ21を備えることにより、効率よく水性液状化粧料Lを毛筆3へ流出させることができるが、撹拌子20及びコイルバネ21を備えない構成に変更してもよい。
【0072】
以上、本実施形態に係るペン型化粧品として、所謂直液式の構成を有する容器を備える化粧品を例に説明したが、化粧品の容器はこのような構造を有するものに特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ペン型化粧品100のジャバラ部材5、撹拌子20、コイルバネ21を省略し、収容部2には水性液状化粧料Lを含浸により充填した中綿部材を収容し、後端側の部分を中綿部材の内部に進入させた中継芯4により水性液状化粧料Lを吸い上げ毛筆3へ供給する、所謂中綿式の構成を有する容器を用いてもよい。
【実施例0073】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
<水性液状化粧料の製造>
(実施例1~9、比較例1~7)
表1~4に示される各成分を同表中に示す割合(質量%)で、ディスパーにて混合し、水性液状化粧料をそれぞれ得た。なお、表中、ポリマーエマルション、アニオン性分散剤及びノニオン性分散剤の値は固形分の配合量を示す。
【0075】
なお、表1~4に示される各成分は、下記に示すものを使用した。
チタンブラック-1:チタンブラック(赤穂化成(株)製、製品名「Tilack D TM-B-CSM」、一次粒子径:0.2~0.4μm)
チタンブラック-2:チタンブラック(赤穂化成(株)製、製品名「Tilack D TS-A-CSM」、一次粒子径:0.03~0.1μm)
ポリアスパラギン酸Na:ポリアスパラギン酸Na(味の素(株)製、製品名「アクアデュウ SPA-30B」、平均分子量(Mw)4000)
ポリアクリル酸Na:ポリアクリル酸Na(東亜合成(株)製、製品名「アロン T-50」、平均分子量(Mw)6000)
ポリカルボン酸Na:ポリアクリル酸Na(東亜合成(株)製、製品名「アロン A-6330」、平均分子量(Mw)10000)
ポリマーエマルション-1:アクリル酸アルキル共重合体エマルション(アクゾノーベル社製、製品名「ヨドゾールGH800F」、固形分濃度45質量%)
ノニオン分散剤-1:べへネス-30(ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、日光ケミカルズ(株)製、製品名「NIKKOL BB-30」)
【0076】
<水性液状化粧料の粘度>
25℃の試料について、ブルックフィールド型粘度計(BM型)を用いて、下記の条件で粘度を測定した。なお、測定時間は1分間とした。
5~50mPa・s:BLアダプタ、回転数12rpm
50~500mPa・s:ローターNo.1、回転数12rpm
250~2500mPa・s:ローターNo.2、回転数12rpm
1000~10000mPa・s:ローターNo.3、回転数12rpm
5000~50000mPa・s:ローターNo.4、回転数12rpm
【0077】
<水性液状化粧料の評価>
上記で得られた水性液状化粧料について、下記の評価方法に従って、吐出性、濃淡差、耐水性、分散安定性、発色を評価した。
【0078】
(吐出性)
上記で得られた水性液状化粧料を、図1に示す容器と同様の構造を有するオートペンタイプのリキッドアイライナー容器(塗布体:毛筆、中継芯:アクリル樹脂)の収容部に充填して充填品を作製した。
【0079】
容器充填品を用いて手の甲に筆記し、幅2mm、長さ4cmの線を3本塗布した際の吐出の良さを目視で確認し、下記評価基準で吐出性を評価した。
[評価基準]
◎:十分な液量で吐出され、描線が均一である。
○:問題ない液量で吐出され、描線がほぼ均一である。
△:吐出される液量が少なめで、描線がややムラ付く。
×:吐出される液量が少なく、描線が掠れる。
【0080】
(濃淡差)
化粧品評価専門パネル10名に、上記と同様にして得られた容器充填品を使用してもらい、描線の濃淡差を評価してもらった。なお、濃淡差の評価は、下記の評価基準に従って5段階評価を行いサンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を下記の判定基準に従って判定した。
[評点:評価基準]
5点:描線に全く濃淡差がない。
4点:描線にほぼ濃淡差がない。
3点:描線にやや濃淡差がある。
2点:描線に濃淡差がある。
1点:描線にかなり濃淡差がある。

[判定基準(評点の平均点)]
◎:4以上
○:3以上4未満
△:2以上3未満
×:2未満
【0081】
(耐水性)
腕に化粧料を塗布し、10分間乾燥させた後に、流水で濡らし、指の腹で擦過し、塗布物の残り具合を目視にて観察し、下記評価基準で耐水性を評価した。
[評価基準]
◎:塗布部の剥がれがない(極めて良好)。
○:塗布部の剥がれが少ない(良好)。
△:塗布部の剥がれが少しある(やや不良)。
×:塗布部の剥がれが多い(不良)
【0082】
(分散安定性(沈降のしにくさ))
透明な瓶に試料を入れて、25℃の環境下で1日放置し、粉体成分の沈降状態を目視で確認し、下記評価基準で分散安定性(沈降のしにくさ)を評価した。
[評価基準]
◎:液の全体部に粉体が目視確認できる。
○:液の中間部まで粉体が目視確認できる。
△:液の下部に粉体が目視確認できる。
×:液の底部にしか粉体が目視確認できない。
【0083】
(発色)
上記と同様にして得られた容器充填品を用いて手の甲に筆記し、描線の発色(隠蔽性)を目視で確認し、下記評価基準で発色を評価した。
[評価基準]
◎:描線が十分に発色し肌を隠蔽している。
○:描線が発色し肌をほぼ隠蔽している。
△:描線の発色が十分でなく肌の隠蔽性が若干弱い。
×:描線の発色が弱く肌を隠蔽していない。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【符号の説明】
【0088】
1…容器本体、2…収容部、3…毛筆(塗布体)、20…撹拌子、21…コイルバネ(小径バネ部及び大径バネ部)、100…ペン型化粧品、L…水性液状化粧料。
図1