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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099844
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】治療用吸入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
A61M11/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213874
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平澤 麻
(72)【発明者】
【氏名】西山 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】田邊 友香
(72)【発明者】
【氏名】前田 真郎
(72)【発明者】
【氏名】足達 美由紀
(57)【要約】
【課題】治療の履歴を適切に管理することが可能な治療用吸入器を提供する。
【解決手段】ネブライザ1は、治療の開始を指示する治療開始操作と、霧化部73の洗浄開始を指示する洗浄開始操作とを行うことが可能な操作部材50と、治療開始操作を受けて霧化部73を作動させる第一処理、洗浄開始操作を受けて霧化部73を作動させる第二処理、及び霧化部73の作動履歴情報の管理サーバ6への送信を管理する第三処理を行うネブライザ制御部71と、を備え、ネブライザ制御部71は、第一処理を行う場合と第二処理を行う場合とで上記管理の内容を変更する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧化部により霧化された薬液を吸入可能に構成された治療用吸入器であって、
前記薬液とは別の洗浄液を前記霧化部により霧化することで前記霧化部の洗浄が可能に構成されており、
治療の開始を指示する治療開始操作と、前記霧化部の洗浄開始を指示する洗浄開始操作とを行うことが可能な操作部材と、
前記治療開始操作を受けて前記霧化部を作動させる第一処理、前記洗浄開始操作を受けて前記霧化部を作動させる第二処理、及び前記霧化部の作動履歴情報の外部装置への送信を管理する第三処理を行うプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記第一処理を行う場合と前記第二処理を行う場合とで前記管理の内容を変更する治療用吸入器。
【請求項2】
請求項1記載の治療用吸入器であって、
前記プロセッサは、前記第一処理を行った場合には、前記第一処理により作動した前記霧化部の作動履歴情報を外部装置に送信し、前記第二処理を行った場合には、前記第二処理により作動した前記霧化部の作動履歴情報の前記外部装置への送信を省略する治療用吸入器。
【請求項3】
請求項1記載の治療用吸入器であって、
前記プロセッサは、前記第一処理により作動した前記霧化部の第一作動履歴情報と、前記第二処理により作動した前記霧化部の第二作動履歴情報とを、識別可能な形式にて前記外部装置に送信する治療用吸入器。
【請求項4】
請求項3記載の治療用吸入器であって、
前記プロセッサは、前記第二作動履歴情報については、洗浄のための作動であること示す情報を付加して前記外部装置に送信する治療用吸入器。
【請求項5】
請求項3記載の治療用吸入器であって、
前記プロセッサは、前記第一作動履歴情報については、治療のための作動であること示す情報を付加して前記外部装置に送信する治療用吸入器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の治療用吸入器であって、
前記操作部材は、更に、治療の終了を指示する治療終了操作を行うことが可能であり、
前記プロセッサは、前記洗浄開始操作を受けて前記霧化部を作動させた場合には、既定時間経過後に、前記霧化部を停止させる治療用吸入器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の治療用吸入器であって、
前記操作部材は、前記治療開始操作を行うことが可能な第一操作部材と、前記洗浄開始操作を行うことが可能な第二操作部材と、を含む治療用吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、薬液を収容可能な液溜り及びこの液溜りを外側へ開放する噴出口を有する筒状容器と、この筒状容器内に設けられ、薬液を霧化するとともに霧化した薬液を噴出口を通して噴霧する超音波ポンプと、を備えるネブライザが記載されている。このネブライザは、液溜り内の薬液を廃棄し、この液溜り内に洗浄用の蒸留水等を注入し、この蒸留水の噴霧を行うことにより、噴霧機構の洗浄が可能に構成されている。
【0003】
特許文献2には、水または化粧水などの液体を微細なミストにして送出するミスト発生装置が記載されている。このミスト発生装置では、洗浄スイッチの操作により、薬剤の噴霧機構を逆転動作させて洗浄水による噴霧機構の洗浄が行われる。
【0004】
特許文献3には、スタートキーが押下されると、ネブライザ部により薬剤の投与が開始されるとともにコンピュータに開始通知を送信し、ストップキーが押下されると、停止通知をコンピュータに送信するネブライザと、このコンピュータと、を備えるシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-023026号公報
【特許文献2】特開2014-18794号公報
【特許文献3】特開2018-000322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
霧化された薬液を吸入可能に構成されたネブライザ等の治療用吸入器を用いた治療は、医師から指定された頻度で行うことが求められる。ここで、治療用吸入器を用いた1回の治療とは、同一種の薬剤を所定時間(例えば5分間等)吸入する動作が行われることを意味する。特許文献3に記載されているように、治療用吸入器の作動履歴を、例えば医師が後から確認できるようにすれば、適切な頻度での治療が行われているかどうかといった判断が可能になり、治療方針の決定に役立てることができる。
【0007】
このような治療用吸入器においては、特許文献1に記載されているように、霧化部によって霧化する液体を薬液から洗浄液に変更し、その状態で洗浄液を霧化させることで、霧化部の洗浄を行う構成が想定される。しかし、霧化部の洗浄動作と、霧化部による薬液の霧化動作とが区別できないと、適切な頻度で治療が行われたかどうかを判断することが難しくなる。
【0008】
本発明の目的は、治療の履歴を適切に管理することが可能な治療用吸入器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
霧化部により霧化された薬液を吸入可能に構成された治療用吸入器であって、
前記薬液とは別の洗浄液を前記霧化部により霧化することで前記霧化部の洗浄が可能に構成されており、
治療の開始を指示する治療開始操作と、前記霧化部の洗浄開始を指示する洗浄開始操作とを行うことが可能な操作部材と、
前記治療開始操作を受けて前記霧化部を作動させる第一処理、前記洗浄開始操作を受けて前記霧化部を作動させる第二処理、及び前記霧化部の作動履歴情報の外部装置への送信を管理する第三処理を行うプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記第一処理を行う場合と前記第二処理を行う場合とで前記管理の内容を変更する治療用吸入器。
【0010】
(1)によれば、例えば、洗浄開始操作を受けた場合と治療開始操作を受けた場合とで、作動履歴情報に付加する情報を変更してから外部装置に送信したり、治療開始操作を受けた場合にのみ作動履歴情報を外部装置に送信したり、といったことが可能になる。これにより、洗浄のために霧化部が作動した状態と、治療のために霧化部が作動した状態とを区別した管理が可能になる。この結果、治療用吸入器を用いた治療の頻度を正確に把握できるようになり、治療方針の決定に役立てることができる。
【0011】
(2)
(1)記載の治療用吸入器であって、
前記プロセッサは、前記第一処理を行った場合には、前記第一処理により作動した前記霧化部の作動履歴情報を外部装置に送信し、前記第二処理を行った場合には、前記第二処理により作動した前記霧化部の作動履歴情報の前記外部装置への送信を省略する治療用吸入器。
【0012】
(2)によれば、洗浄のための霧化部の作動履歴情報は外部装置に送信されない。このため、外部装置では、治療のために作動した霧化部の作動履歴情報のみが収集されることになる。この収集された情報を用いることで、治療用吸入器を用いた治療の頻度を正確に把握することが可能になる。
【0013】
(3)
(1)記載の治療用吸入器であって、
前記プロセッサは、前記第一処理により作動した前記霧化部の第一作動履歴情報と、前記第二処理により作動した前記霧化部の第二作動履歴情報とを、識別可能な形式にて前記外部装置に送信する治療用吸入器。
【0014】
(3)によれば、洗浄のために霧化部が作動した状態と、治療のために霧化部が作動した状態とを区別した管理が可能になる。また、第二作動履歴情報を参照することで、適切な頻度で霧化部の洗浄が行われているかどうかの確認ができる。
【0015】
(4)
(3)記載の治療用吸入器であって、
前記プロセッサは、前記第二作動履歴情報については、洗浄のための作動であること示す情報を付加して前記外部装置に送信する治療用吸入器。
【0016】
(4)によれば、洗浄のために霧化部が作動した状態と、治療のために霧化部が作動した状態とを区別することが可能になる。
【0017】
(5)
(3)記載の治療用吸入器であって、
前記プロセッサは、前記第一作動履歴情報については、治療のための作動であること示す情報を付加して前記外部装置に送信する治療用吸入器。
【0018】
(5)によれば、洗浄のために霧化部が作動した状態と、治療のために霧化部が作動した状態とを区別することが可能になる。
【0019】
(6)
(1)から(5)のいずれか1つに記載の治療用吸入器であって、
前記プロセッサは、前記洗浄開始操作を受けて前記霧化部を作動させた場合には、既定時間経過後に、前記霧化部を停止させる治療用吸入器。
【0020】
(6)によれば、霧化部の洗浄時において既定時間を超えた霧化部の作動は行われなくなる。これにより、洗浄時に必要以上の霧化部の作動が行われるのを防いで、機器の耐久性向上を図ることができる。
【0021】
(7)
(1)から(6)のいずれか1つに記載の治療用吸入器であって、
前記操作部材は、前記治療開始操作を行うことが可能な第一操作部材と、前記洗浄開始操作を行うことが可能な第二操作部材と、を含む治療用吸入器。
【0022】
(7)によれば、洗浄のために霧化部を作動させる状態と、治療のために霧化部を作動させる状態とをユーザが認識しやすくなる。この結果、例えば、洗浄のための作動履歴情報が、治療のための作動履歴情報として誤って送信されてしまうのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、治療の履歴を適切に管理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】治療管理システムの概略構成を示す模式図である。
図2図1に示すネブライザの分解斜視図である。
図3図2に示すネブライザを右側方(図2中に矢印Aで示す方向)から見た縦断面図である。
図4図2に示すネブライザの使用状態を説明する模式図である。
図5図1に示すネブライザのブロック構成を示す図である。
図6図5に示すネブライザ制御部の治療制御時の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図7図5に示すネブライザ制御部の洗浄制御時の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図8図5に示すネブライザ制御部の治療制御時の動作の変形例を説明するためのタイミングチャートである。
図9図5に示すネブライザ制御部の洗浄制御時の動作の変形例を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(概要)
本発明の一実施形態であるネブライザは、霧化部によって薬液を霧化し、霧化された薬液の吸入により喘息等の呼吸器疾患の治療を行う治療モードと、薬液に代えて洗浄液を霧化部により霧化することで霧化部の洗浄を行う洗浄モードと、を搭載する。ネブライザに設けられた操作部材の操作によってこれらモードが変更される。ネブライザは、更に、外部装置と通信可能に構成されており、霧化部の作動履歴情報の外部装置への送信を管理する機能を持ち、この管理の内容をモードに応じて変更する。
【0026】
例えば、ネブライザは、治療モードにおいて作動した霧化部の作動履歴情報については外部装置に送信し、洗浄モードにおいて作動した霧化部の作動履歴情報については外部装置へ送信しない。これにより、外部装置には、治療のために作動した霧化部の作動履歴情報のみが収集される。したがって、この収集された作動履歴情報を利用することで、ネブライザを用いて行われた治療の頻度等を正確に把握できるようになり、医師による治療方針の決定に役立てることができる。以下、ネブライザを含む治療管理システムの実施形態の詳細について説明する。
【0027】
(治療管理システムの構成)
図1は、治療管理システム100の概略構成を示す模式図である。治療管理システム100は、噴霧された薬液を吸入することで呼吸器疾患の治療を行う治療用吸入器としてのネブライザ1と、ネブライザ1のユーザ又はその関係者(例えばユーザの親)の所持する電子機器3と、管理サーバ6と、を備える。
【0028】
電子機器3は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、又はタブレット型端末等の通信機能を持つ電子機器である。電子機器3は、インターネット等のネットワーク4を介して管理サーバ6と通信可能に構成されている。電子機器3は、Bluetooth(登録商標)又はWi-Fi等の近距離通信規格に基づいて、ネブライザ1と通信可能に構成されている。
【0029】
電子機器3には、治療管理システム100の運営者から提供される治療管理アプリがインストールされている。この治療管理アプリの機能により、ネブライザ1と電子機器3の間での情報の送受信と、電子機器3から管理サーバ6への情報の送信と、管理サーバ6で生成された表示用データの電子機器3による閲覧等が可能になっている。
【0030】
(管理サーバのブロック構成)
図1に示すように、管理サーバ6は、ネットワーク4に接続された機器と通信を行うための通信インタフェース(IF)61と、サーバ制御部62と、データベース63と、を備える。データベース63は、管理サーバ6に外付けされるストレージであってもよいし、ネットワーク4に接続されたネットワークストレージであってもよい。
【0031】
サーバ制御部62は、管理サーバ6全体を統括制御するものであり、プログラムを実行して処理を行うCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、このプロセッサが実行するプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)と、ワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、を含む。本明細書で記載するプロセッサの構造は、具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0032】
サーバ制御部62は、ネブライザ1から電子機器3に送信されて電子機器3から転送されてくる情報を、通信インタフェース61を介して取得し、取得した情報をデータベース63に記録する。サーバ制御部62は、データベース63に記録された情報を処理することで、ネブライザ1を用いて行われた治療のタイミング(治療タイミング)とその治療のなされた時間(治療時間)等の治療実績、を表示するための表示用データを生成する。サーバ制御部62は、電子機器3、又は、ネットワーク4に接続された別の電子機器(例えば、ネブライザ1のユーザの診察を担当する医師の操作する機器)から、この表示用データの閲覧要求を受けると、この表示用データに基づく画像を、要求元の電子機器に表示させる制御を行う。
【0033】
(ネブライザの構造)
図2は、図1に示すネブライザ1の分解斜視図である。図3は、図2に示すネブライザ1を右側方(図2中に矢印Aで示す方向)から見た縦断面図である。
【0034】
図2及び図3に示すように、ネブライザ1は、略楕円柱状の外形をもつ本体下部11と、この本体下部11に対して上方から着脱可能に嵌め込んで装着された本体上部12とからなる本体10と、本体上部12に装着される装着部材20と、本体上部12に対し開閉可能に構成されたキャップ部材30と、を備えている。本体上部12の前半部12Fは略円柱状の外形をもち、本体上部12の後半部12Rは略台形柱状の外形をもっている。
【0035】
図2に示すように、本体下部11には、第一操作部材を構成する開始/終了ボタン51、及び、第二操作部材を構成する洗浄ボタン54を含む操作部材50が設けられている。
【0036】
図3に示すように、本体上部12の前半部12Fの上面には、装着部材20を受けるように上方へ向かって開いた略円形の平面形状をもつ凹部16が設けられている。凹部16は、本体10の縦軸方向(鉛直方向)に対して傾斜した底面16bと、この底面16bに連なり、上方へ向かうに連れて次第に開いている側面16cとを有している。凹部16の周りの縁部15における特定の方位(この例では前方側、後方側)に、隆起19f,19rが設けられている。前方側の隆起19fは、凹部16の中心へ向かって円弧状に突起した平面形状を有している。後方側の隆起19rは、凹部16の中心から見て円弧状に窪んだ平面形状を有している。隆起19f,19rは、装着部材20のフランジ部24に嵌合することが予定されている。さらに、凹部16の側面16cには、装着部材20の側壁部23を周方向に取り囲んで接するように、環状の弾性体からなるパッキン29が設けられている。
【0037】
図3に示すように、本体上部12の前半部12Fの内部には、凹部16に対応する位置に振動部40が設けられている。振動部40は、凹部16から下方に離間した位置に配された超音波振動子41と、凹部16の底面16bに相当する位置に水平に配された振動面43と、超音波振動子41と振動面43との間に配され、超音波振動子41の振動を増幅するとともに振動面43へ伝達するホーン42とを含んでいる。超音波振動子41に対する駆動電圧は、本体上部12と本体下部11との間に設けられた接点電極を介して、本体下部11から供給されるようになっている。
【0038】
図2に示すように、本体上部12の後半部12Rには、略半円形の平面形状をもつ貯液部17が設けられている。この貯液部17は、図3に示すように、前面側へ向かうに連れて次第に浅くなる底面17bを有している。貯液部17の前面側部分に連なって、貯液部17から振動部40の振動面43上へ向けて液体(薬液)を供給するための給液路18が設けられている。図2及び図3の分解状態では、貯液部17は上方へ向かって開いている。したがって、ユーザは、貯液部17に上方から薬液等の液体を入れることができる。
【0039】
本体上部12の後半部12Rの後端側の上縁には、本体上部12に対して蝶番38を介して回動可能に、蓋をなすキャップ部材30が連結されている。キャップ部材30は、蝶番38に近い側に配され略台形の平面形状を有する後半部30Rと、この後半部30Rに連なり、環状で略円形の平面形状を有する前半部30Fとを含んでいる。キャップ部材30の前半部30Fのうち本体上部12の上面に対向する側であって、凹部16の周りの縁部15における左側部分15b、右側部分15cに対応する位置に、2つの円筒形の突起部33が突出して設けられている。キャップ部材30の後半部30Rのうち本体上部12の上面に対向する側に、貯液部17の平面形状と対応する略台形の平面形状を有するメサ部34が設けられている。本体上部12に対してキャップ部材30が閉じられ、ネブライザ1が組み立てられた状態では、突起部33は、装着部材20を位置決めするために働く。また、メサ部34は、貯液部17の上部を塞いで、貯液部17から薬液が溢れるのを防ぐ。キャップ部材30の前半部30Fの中央は、マウスピース等が取り付けられるべき開口30oになっている。
【0040】
キャップ部材30の前半部30Fの前縁30Fe(蝶番38とは反対側)には、内向きに突起した係合突起31が設けられている。一方、本体上部12の前半部12Fには、前端から外向き(前方)に突出した係合突起14が設けられている。本体上部12に対してキャップ部材30が閉じられると、キャップ部材30の係合突起31は、本体上部12の係合突起14と、鉛直方向に係合するようになっている。
【0041】
装着部材20は、ネブライザ1が使用される際に本体上部12の凹部16に装着される。装着部材20は、振動面43に対向すべき平坦なフィルム状のシート21と、このシート21を支持する底板部22と、この底板部22の外縁に連なり、凹部16の側面16cに対向すべき環状の側壁部23と、この側壁部23の上縁に連なり、その上縁の周りに径方向外向きに広がるフランジ部24と、このフランジ部24の一部の外縁に連なって下方へ延在する摘まみしろ部25とを含んでいる。シート21は、底板部22の下面に接着または溶着により取り付けられている。シート21のうち略中央の領域がメッシュ部21aを構成している。
【0042】
(ネブライザの組み立て)
ネブライザ1を使用しようとするユーザは、本体10に対してキャップ部材30が開いた状態で、本体10の上方へ向かって開いた形状の凹部16に、図3中に矢印Dで示すように、メッシュ部21aを有する装着部材20を装着する。装着部材20を装着した状態で、ユーザが、本体10(本体上部12)に対して蝶番38を介してキャップ部材30を回転して閉じる。すると、キャップ部材30の係合突起31が、本体上部12の係合突起14と鉛直方向に係合する。これにより、本体上部12に対してキャップ部材30が閉じられた状態で固定される。このようにして、ネブライザ1が簡単に組み立てられる。この状態を組み立て状態という。
【0043】
(ネブライザの使用)
ネブライザ1を使用する場合、予め、ユーザは、本体上部12の貯液部17に薬液を入れておく。そして、図4に示すように、ユーザは、組み立て状態で、キャップ部材30の開口30oに、例えばマウスピース80を装着する。マウスピース80に代えて、ユーザ99の顔を覆うような吸入マスクを装着してもよい。
【0044】
図4に示すように、ネブライザ1を少しだけ手前に傾けると、貯液部17から給液路18を通して、振動部40の振動面43上へ向けて薬液が供給される。つまり、振動面43とメッシュ部21aとの間に薬液が供給される。この状態で、振動部40の超音波振動子41に駆動電圧が印加されて振動面43が振動されると、メッシュ部21a(より正確には、シート21を貫通する複数の貫通孔)を通して薬液90が霧化されて噴出する。このように、振動部40と装着部材20のメッシュ部21aにより、貯液部17に貯留された薬液等の液体を霧化する霧化部(後述の霧化部73)が構成されている。
【0045】
ネブライザ1は、貯液部17に水道水等の洗浄液を入れた状態で霧化部73を作動させて、この洗浄液を霧化することで、霧化部73(より具体的には振動面43及びメッシュ部21a)の洗浄を行うことが可能となっている。
【0046】
(ネブライザのブロック構成)
図5は、ネブライザ1のブロック構成を示す図である。ネブライザ1は、操作部材50と、ネブライザ制御部71と、発振周波数生成部72と、霧化部73と、通信インタフェース74と、通知部75と、を備えている。
【0047】
操作部材50に含まれる開始/終了ボタン51は、治療の開始(換言すると、霧化部73の作動の開始)をネブライザ制御部71に指示する治療開始操作と、治療の終了(換言すると、霧化部73の作動の停止)をネブライザ制御部71に指示する治療終了操作と、を行うことが可能な部材である。例えば、霧化部73が作動していない状態における開始/終了ボタン51の短押し操作が治療開始操作とされ、治療開始操作後の開始/終了ボタン51の短押し操作が治療終了操作とされる。なお、開始/終了ボタン51は、治療開始操作を行うためのボタンと、治療終了操作を行うためのボタンとの2つに分けられた構成であってもよい。
【0048】
操作部材50に含まれる洗浄ボタン54は、霧化部73の洗浄開始をネブライザ制御部71に指示する洗浄開始操作を行うことが可能な部材である。例えば、霧化部73が作動していない状態における洗浄ボタン54の短押し操作が、洗浄開始操作とされる。
【0049】
発振周波数生成部72は、ネブライザ制御部71からの制御信号に基づいて、交流の駆動電圧を振動部40の超音波振動子41に印加する。本明細書では、超音波振動子41に駆動電圧が印加されている状態を、霧化部73が作動している状態といい、超音波振動子41に駆動電圧が印加されていない状態を、霧化部73が停止している状態という。
【0050】
ネブライザ制御部71は、CPU等のプロセッサを含んで構成され、各種の処理をこのプロセッサにて行う。ネブライザ制御部71は、霧化部73が作動していない状態にて治療開始操作を検出すると霧化部73を作動させ、霧化部73が作動している状態にて治療終了操作を検出すると霧化部73を停止させる治療制御を行う。治療制御を行うモードが上記概要で述べた治療モードである。
【0051】
この治療制御において、ネブライザ制御部71は、治療開始操作を検出した第一タイミング(具体的には日時)を、霧化部73の作動開始タイミングとして取り扱う。また、ネブライザ制御部71は、治療終了操作を検出した第二タイミング(具体的には日時)を、霧化部73の作動終了タイミングとして取り扱う。また、ネブライザ制御部71は、第一タイミングから第二タイミングまでの時間を霧化部73の作動時間として取り扱う。これらの第一タイミング、第二タイミング、及び作動時間は、それぞれ、この治療制御時の霧化部73の作動履歴情報を構成する。
【0052】
ネブライザ制御部71は、霧化部73が作動していない状態にて洗浄開始操作を検出すると霧化部73を作動させ、洗浄開始操作を検出してから既定時間(例えば1分間等)が経過すると、霧化部73を停止させる洗浄制御を行う。洗浄制御を行うモードが上記概要で述べた洗浄モードである。
【0053】
なお、治療制御時においても、治療開始操作が検出されてから、所定時間にわたって治療終了操作が検出されない状態が継続した場合には、ネブライザ制御部71が霧化部73を停止させてもよい。この場合の所定時間は、上記の既定時間よりも長い時間に設定される。
【0054】
ネブライザ1のユーザは、自身の治療を行う場合には、貯液部17に薬液を投入した状態で治療開始操作を行い、霧化された薬液の吸入を行う。その後、ユーザは、治療終了操作を行い、薬液の吸入を終了する。ユーザは、霧化部73の洗浄を行う場合には、貯液部17に水道水等の洗浄液を投入した状態で洗浄開始操作を行い、洗浄液を霧化させることで、霧化部73の洗浄を行う。
【0055】
ネブライザ制御部71は、霧化部73を作動させた場合には、その作動に関する霧化部73の作動履歴情報の電子機器3への送信の管理を行う。以下、具体的に説明する。
【0056】
図6は、ネブライザ制御部71の治療制御時の動作を説明するためのタイミングチャートである。ネブライザ制御部71は、タイミングt1にて治療開始操作を検出すると霧化部73を作動させる。ネブライザ制御部71は、タイミングt2にて治療終了操作を検出すると、霧化部73の作動を停止させ、タイミングt1にて開始した霧化部73の作動に関する作動履歴情報J1を生成する。そして、ネブライザ制御部71は、霧化部73が停止した後のタイミングt3において、作動履歴情報J1を電子機器3に送信する。
【0057】
作動履歴情報J1は、例えば、タイミングt1(作動開始タイミング)と、タイミングt1とタイミングt2の間の時間(霧化部73の作動時間)の2つから構成される。作動履歴情報J1は、タイミングt1(作動開始タイミング)とタイミングt2(作動終了タイミング)の2つから構成されたり、タイミングt1とタイミングt2の間の時間(作動時間)とタイミングt2(作動終了タイミング)の2つから構成されたりしてもよい。作動履歴情報J1には、更に、霧化部73によって霧化された薬液の種別の情報が含まれるようにしてもよい。霧化部73の作動時間は、ユーザによって吸入される薬液量と強い相関を持つ。このため、この作動時間を参照することで、ユーザがどの程度の薬液を吸入したのかをある程度判断可能である。
【0058】
ネブライザ1から作動履歴情報J1を受信した電子機器3は、この作動履歴情報J1を管理サーバ6に転送する。管理サーバ6では、この作動履歴情報J1がデータベース63に記録される。
【0059】
図7は、ネブライザ制御部71の洗浄制御時の動作を説明するためのタイミングチャートである。ネブライザ制御部71は、タイミングt4にて洗浄開始操作を検出すると霧化部73を作動させ、タイミングt4から上記の既定時間経過後のタイミングt5になると、霧化部73の作動を停止させる。このとき、ネブライザ制御部71は、タイミングt4で開始された霧化部73の作動に関する作動履歴情報の電子機器3への送信は行わない。つまり、洗浄のために作動した霧化部73の作動履歴情報は管理サーバ6に送信されない。このため、管理サーバ6では、治療のために作動した霧化部73の作動履歴情報(上記の作動履歴情報J1)のみが収集されることになる。
【0060】
(治療管理システムの効果)
治療管理システム100によれば、治療のために作動した霧化部73の作動履歴情報のみが管理サーバ6に収集される。換言すると、洗浄のために作動した霧化部73の作動履歴情報は管理サーバ6にて管理されない。このため、データベース63に記録される作動履歴情報に基づくデータを参照することで、ネブライザ1を用いた治療の治療タイミング及び治療時間等を正確に確認できるようになる。したがって、ユーザの治療方針の決定を支援することができる。
【0061】
治療管理システム100のネブライザ1は、霧化部73の作動が停止した後のタイミングで、作動履歴情報J1の送信を行っている。このように、霧化部73の超音波振動子41が作動していない状態で作動履歴情報J1の送信が行われることで、霧化部73の作動ノイズの影響を受けることなく、その送信を安定して行うことができる。したがって、管理サーバ6に作動履歴情報J1を欠落なく送信することができ、治療の管理を的確に行うことができる。
【0062】
なお、作動履歴情報J1には、治療タイミングを特定できる情報(例えば、霧化部73の作動開始タイミング又は霧化部73の作動終了タイミング)が少なくとも含まれていればよい。上記のように、作動履歴情報J1に作動時間が含まれていると、各治療時に適正量の薬液が吸引されているかどうかを医師が確認できるようになる。この結果、治療方針の決定により役立てることができる。
【0063】
(治療管理システムの第一変形例)
ネブライザ1は、治療制御を行った場合と洗浄制御を行った場合のそれぞれにおいて、霧化部73の作動履歴情報を電子機器3(管理サーバ6)に送信してもよい。図8は、ネブライザ制御部71の治療制御時の動作の変形例を説明するためのタイミングチャートである。図9は、ネブライザ制御部71の洗浄制御時の動作の変形例を説明するためのタイミングチャートである。
【0064】
図8に示すように、ネブライザ制御部71は、タイミングt1にて霧化部73を作動させ、タイミングt2にて霧化部73の作動を停止させる。また、ネブライザ制御部71は、タイミングt2にて治療終了操作を検出すると、前述したのと同じ作動履歴情報J1(第一作動履歴情報)を生成し、作動履歴情報J1に既定の治療IDを付加する。治療IDは、治療のための作動であることを示す識別情報である。そして、ネブライザ制御部71は、霧化部73が停止した後のタイミングt3において、治療IDが付加された作動履歴情報J1を電子機器3に送信する。
【0065】
図9に示すように、ネブライザ制御部71は、タイミングt4にて洗浄開始操作を検出すると、霧化部73を作動させ、タイミングt5になると、霧化部73の作動を停止させる。また、ネブライザ制御部71は、タイミングt5にて霧化部73の作動を停止させると、作動履歴情報J2(第二作動履歴情報)を生成し、作動履歴情報J2に洗浄IDを付加する。洗浄IDは、洗浄のための作動であることを示す識別情報である。作動履歴情報J2は、例えば、タイミングt4(作動開始タイミング)と、タイミングt4から霧化部73が停止するまでの時間(作動時間)とからなる。ネブライザ制御部71は、霧化部73が停止した後のタイミングt6において、洗浄IDが付加された作動履歴情報J2を電子機器3に送信する。
【0066】
ネブライザ1から作動履歴情報J1、J2を受信した電子機器3は、この作動履歴情報J1、J2を管理サーバ6に転送する。管理サーバ6では、作動履歴情報J1、J2がデータベース63に記録される。
【0067】
この変形例によれば、治療のために作動した霧化部73の第一作動履歴情報と、洗浄のために作動した霧化部73の第二作動履歴情報が、それぞれに異なる識別情報が付加された状態で、管理サーバ6に送信される。このため、この識別情報を参照することで、データベース63に記録される多数の作動履歴情報から、治療のための作動履歴情報のみを抽出することができる。そして、その抽出した作動履歴情報に基づくデータを参照することで、ネブライザ1を用いた治療の治療タイミング及び治療時間等を正確に確認できるようになる。
【0068】
また、データベース63に記録された第二作動履歴情報を参照することで、どのような頻度でネブライザ1の洗浄が行われているかが確認できる。ネブライザ1において、装着部材20のメッシュ部21aに目詰まりが生じていると、十分な量の薬液を吸入できない可能性がある。そのため、霧化部73の洗浄は定期的に行うことが望ましい。第二作動履歴情報がデータベース63に記録されることで、医師は、定期的な洗浄がなされていないことが原因で症状が改善していない、等の判断も可能になる。
【0069】
なお、ネブライザ制御部71は、作動履歴情報J1には治療IDを付加して管理サーバ6に送信し、作動履歴情報J2には洗浄ID等の識別情報を付加することなく管理サーバ6に送信するようにしてもよい。このようにしても、データベース63に記録される多数の作動履歴情報から、治療のための作動履歴情報J1のみを抽出することができる。
【0070】
または、ネブライザ制御部71は、作動履歴情報J2には洗浄IDを付加して管理サーバ6に送信し、作動履歴情報J1には治療ID等の識別情報を付加することなく管理サーバ6に送信するようにしてもよい。このようにしても、データベース63に記録される多数の作動履歴情報から、治療のための作動履歴情報J1のみを抽出することができる。
【0071】
実施形態とその変形例の治療管理システム100において、電子機器3を省略し、ネブライザ1と管理サーバ6がネットワーク4を介して通信する構成としてもよい。また、管理サーバ6を省略し、管理サーバ6の機能を電子機器3にインストールされる治療管理アプリで実現してもよい。つまり、電子機器3が作動履歴情報を記録して管理する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
100 治療管理システム
1 ネブライザ
50 操作部材
51 開始/終了ボタン
54 洗浄ボタン
71 ネブライザ制御部
73 霧化部
3 電子機器
4 ネットワーク
6 管理サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9