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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099846
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】治療用吸入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
A61M11/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213877
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 真郎
(72)【発明者】
【氏名】西山 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】田邊 友香
(72)【発明者】
【氏名】村田 悠
(72)【発明者】
【氏名】平澤 麻
(72)【発明者】
【氏名】足達 美由紀
(57)【要約】
【課題】必要な情報を外部装置へ安定して送信することのできる治療用吸入器を提供する。
【解決手段】ネブライザ制御部71は、霧化部73の作動を契機として、当該作動に関する霧化部73の作動履歴情報を通信インタフェース74から管理サーバ6に送信させる送信制御を行うプロセッサを備え、このプロセッサは、霧化部73が停止した後のタイミングにて、上記作動履歴情報のうちの少なくとも一部の情報を管理サーバ6に送信させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧化部により霧化された薬液を吸入可能に構成された治療用吸入器であって、
外部装置と通信可能な通信部と、
前記霧化部の作動を契機として、当該作動に関する前記霧化部の作動履歴情報を前記通信部から外部装置に送信させる送信制御を行うプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記霧化部が停止した後のタイミングにて、前記作動履歴情報のうちの少なくとも一部の情報を前記外部装置に送信させる治療用吸入器。
【請求項2】
請求項1記載の治療用吸入器であって、
前記プロセッサは、前記タイミングにて、前記作動履歴情報の全てを前記外部装置に送信させる治療用吸入器。
【請求項3】
請求項2記載の治療用吸入器であって、
前記霧化部の作動開始を指示する開始操作がなされたタイミングを作動開始タイミングとし、
前記霧化部の作動終了を指示する終了操作がなされたタイミングを作動終了タイミングとし、
前記作動開始タイミングから前記作動終了タイミングまでの時間を作動時間とし、
前記作動履歴情報は、前記作動開始タイミング及び前記作動時間、前記作動終了タイミング及び前記作動時間、前記作動開始タイミング及び前記作動終了タイミング、又は、前記作動時間を含む治療用吸入器。
【請求項4】
請求項3記載の治療用吸入器であって、
前記作動履歴情報は、前記霧化部によって霧化された薬液の種別の情報を更に含む治療用吸入器。
【請求項5】
請求項1記載の治療用吸入器であって、
前記プロセッサは、前記作動履歴情報のうちの第一情報を前記タイミングにて前記外部装置に送信させ、前記作動履歴情報のうちの前記第一情報以外の第二情報を、前記霧化部の作動開始を指示する開始操作がなされたタイミングにて前記外部装置に送信させる治療用吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スタートキーが押下されると、ネブライザ部により薬剤の投与が開始されるとともにコンピュータに開始通知を送信し、ストップキーが押下されると、停止通知をコンピュータに送信するネブライザと、このコンピュータと、を備えるシステムが記載されている。
【0003】
特許文献2には、エアゾール型(加圧式定量噴霧型)の携帯用吸入器の使用状況を送信、管理および表示に適した喘息治療支援システムが記載されている。このシステムでは、吸入器に取り付けられた送信装置が、ユーザの指による薬剤入りの缶の操作を検出すると、吸入器の使用回数情報を算出して、管理サーバに送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-000322号公報
【特許文献2】特開2011-092418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
霧化された薬液を吸入可能に構成されたネブライザ等の治療用吸入器を用いた治療は、医師から指定された頻度で行うことが求められる。ここで、治療用吸入器を用いた1回の治療とは、同一種の薬剤を所定時間(例えば5分間等)吸入する動作が行われることを意味する。例えば、治療用吸入器の霧化部の作動履歴を医師が後から確認できるようにすれば、適切な頻度での治療がなされているかの判断が可能になり、治療方針の決定に役立てることができる。
【0006】
このような作動履歴を管理するために、特許文献1,2に例示されるように、治療用吸入器から外部の管理装置へ対して、作動に関する情報の送信を行うことが考えられる。この場合、治療用吸入器は霧化部を有しているため、この霧化部の作動による情報送信機能への影響を軽減することが求められる。
【0007】
本発明の目的は、必要な情報を外部装置へ安定して送信することのできる治療用吸入器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)
霧化部により霧化された薬液を吸入可能に構成された治療用吸入器であって、
外部装置と通信可能な通信部と、
上記霧化部の作動を契機として、その作動に関する上記霧化部の作動履歴情報を上記通信部から外部装置に送信させる送信制御を行うプロセッサと、を備え、
上記プロセッサは、上記霧化部が停止した後のタイミングにて、上記作動履歴情報のうちの少なくとも一部の情報を上記外部装置に送信させる治療用吸入器。
【0009】
(1)によれば、霧化部が停止した状態で、作動履歴情報の少なくとも一部の情報を外部装置に送信することができる。このため、この少なくとも一部の情報の送信を安定して行うことができ、必要な情報を外部装置に欠落なく送信することができる。このため、外部装置においてこの情報を用いた適切な治療の管理が可能になる。
【0010】
(2)
(1)記載の治療用吸入器であって、
上記プロセッサは、上記タイミングにて、上記作動履歴情報の全てを上記外部装置に送信させる治療用吸入器。
【0011】
(2)によれば、治療用吸入器を用いた治療の管理に利用できる作動履歴情報を欠落なく外部装置に送信することができる。
【0012】
(3)
(2)記載の治療用吸入器であって、
上記霧化部の作動開始を指示する開始操作がなされたタイミングを作動開始タイミングとし、
上記霧化部の作動終了を指示する終了操作がなされたタイミングを作動終了タイミングとし、
上記作動開始タイミングから上記作動終了タイミングまでの時間を作動時間とし、
上記作動履歴情報は、上記作動開始タイミング及び上記作動時間、上記作動終了タイミング及び上記作動時間、上記作動開始タイミング及び上記作動終了タイミング、又は、上記作動時間を含む治療用吸入器。
【0013】
(3)によれば、少なくとも、治療用吸入器を用いた治療の実施タイミングと、その治療が行われた時間を外部装置にて管理できる。これにより、治療が適切な頻度で適正量の薬液を用いて行われたどうかの判断が可能になる。
【0014】
(4)
(3)記載の治療用吸入器であって、
上記作動履歴情報は、上記霧化部によって霧化された薬液の種別の情報を更に含む治療用吸入器。
【0015】
(4)によれば、複数の薬液を用いた治療を行う患者が治療用吸入器を用いる場合に、患者が適切に薬液を吸入しているかどうかを判断できるようになる。
【0016】
(5)
(1)記載の治療用吸入器であって、
上記プロセッサは、上記作動履歴情報のうちの第一情報を上記タイミングにて上記外部装置に送信させ、上記作動履歴情報のうちの上記第一情報以外の第二情報を、上記霧化部の作動開始を指示する開始操作がなされたタイミングにて上記外部装置に送信させる治療用吸入器。
【0017】
(5)によれば、作動履歴情報を外部装置に効率的に送信できる。第一情報については霧化部の作動の影響を受けることなく安定して外部装置に送信できるため、第一情報として優先度の高い情報を含ませることで、治療の管理が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、必要な情報を外部装置へ安定して送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】治療管理システムの概略構成を示す模式図である。
図2図1に示すネブライザの分解斜視図である。
図3図2に示すネブライザを右側方(図2中に矢印Aで示す方向)から見た縦断面図である。
図4図1に示すネブライザの使用状態を示す模式図である。
図5図1に示すネブライザのブロック構成を示す図である。
図6】霧化部の1回の作動で治療が完了する場合のネブライザ制御部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図7】霧化部の2回の作動で治療が完了する場合(治療が1度中断される場合)のネブライザ制御部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図8】霧化部の2回の作動で治療が完了する場合のネブライザ制御部の動作の変形例を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(概要)
本発明の治療用吸入器の一実施形態であるネブライザを含む治療管理システムの概要について説明する。ネブライザは、霧化部が作動したときの霧化部の作動履歴情報をサーバに送信する。サーバは、ネブライザから取得した作動履歴情報に基づいて、ネブライザによって行われた治療の管理を可能な情報を生成する。ネブライザは、作動履歴情報の送信を行う際には、霧化部の停止後に、作動履歴情報の送信を行う。これにより、霧化部の作動ノイズによる情報の送信への影響を抑えて、サーバに作動履歴情報を確実に送信することができる。以下、ネブライザを含む治療管理システムの実施形態の詳細について説明する。
【0021】
(実施形態)
【0022】
(治療管理システムの構成)
図1は、治療管理システム100の概略構成を示す模式図である。治療管理システム100は、噴霧された薬液を吸入することで呼吸器疾患の治療を行う治療用吸入器としてのネブライザ1と、ネブライザ1のユーザ又はその関係者(例えばユーザの親)の所持する電子機器3と、管理装置としての管理サーバ6と、を備える。
【0023】
電子機器3は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、又はタブレット型端末等の通信機能を持つ電子機器である。電子機器3は、インターネット等のネットワーク4を介して管理サーバ6と通信可能に構成されている。電子機器3は、Bluetooth(登録商標)又はWi-Fi等の近距離通信規格に基づいて、ネブライザ1と通信可能に構成されている。
【0024】
電子機器3には、治療管理システム100の運営者から提供される治療管理アプリがインストールされている。この治療管理アプリの機能により、ネブライザ1と電子機器3の間での情報の送受信と、電子機器3から管理サーバ6への情報の送信と、管理サーバ6で生成された表示用データの電子機器3による閲覧等が可能になっている。
【0025】
(管理サーバのブロック構成)
図1に示すように、管理サーバ6は、ネットワーク4に接続された機器と通信を行うための通信インタフェース(IF)61(通信部)と、サーバ制御部62と、データベース63と、を備える。データベース63は、管理サーバ6に外付けされるストレージであってもよいし、ネットワーク4に接続されたネットワークストレージであってもよい。
【0026】
サーバ制御部62は、管理サーバ6全体を統括制御するものであり、プログラムを実行して処理を行うCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、このプロセッサが実行するプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)と、ワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、を含む。本明細書で記載するプロセッサの構造は、具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0027】
サーバ制御部62は、ネブライザ1から電子機器3に送信されて電子機器3から転送されてくる情報を、通信インタフェース61を介して取得し、取得した情報をデータベース63に記録する。サーバ制御部62は、データベース63に記録された情報を処理することで、ネブライザ1を用いて行われた治療のタイミング(治療タイミング)とその治療のなされた時間(治療時間)等の治療実績、を表示するための表示用データを生成する。サーバ制御部62は、電子機器3、又は、ネットワーク4に接続された別の電子機器(例えば、ネブライザ1のユーザの診察を担当する医師の操作する機器)から、この表示用データの閲覧要求を受けると、この表示用データに基づく画像を、要求元の電子機器に表示させる制御を行う。
【0028】
(ネブライザの構造)
図2は、図1に示すネブライザ1の分解斜視図である。図3は、図2に示すネブライザ1を右側方(図2中に矢印Aで示す方向)から見た縦断面図である。
【0029】
図2及び図3に示すように、ネブライザ1は、略楕円柱状の外形をもつ本体下部11と、この本体下部11に対して上方から着脱可能に嵌め込んで装着された本体上部12とからなる本体10と、本体上部12に装着される装着部材20と、本体上部12に対し開閉可能に構成されたキャップ部材30と、を備えている。本体上部12の前半部12Fは略円柱状の外形をもち、本体上部12の後半部12Rは略台形柱状の外形をもっている。
【0030】
図2に示すように、本体下部11の前面には、開始/終了ボタン51及び薬液選択ボタン52を含む操作部材50と、薬液選択ボタン52によって選択中の薬液種別を通知するための発光部81、82、83と、が設けられている。
【0031】
図3に示すように、本体上部12の前半部12Fの上面には、装着部材20を受けるように上方へ向かって開いた略円形の平面形状をもつ凹部16が設けられている。凹部16は、本体10の縦軸方向(鉛直方向)に対して傾斜した底面16bと、この底面16bに連なり、上方へ向かうに連れて次第に開いている側面16cとを有している。凹部16の周りの縁部15における特定の方位(この例では前方側、後方側)に、隆起19f,19rが設けられている。前方側の隆起19fは、凹部16の中心へ向かって円弧状に突起した平面形状を有している。後方側の隆起19rは、凹部16の中心から見て円弧状に窪んだ平面形状を有している。隆起19f,19rは、装着部材20のフランジ部24に嵌合することが予定されている。さらに、凹部16の側面16cには、装着部材20の側壁部23を周方向に取り囲んで接するように、環状の弾性体からなるパッキン29が設けられている。
【0032】
図3に示すように、本体上部12の前半部12Fの内部には、凹部16に対応する位置に振動部40が設けられている。振動部40は、凹部16から下方に離間した位置に配された超音波振動子41と、凹部16の底面16bに相当する位置に水平に配された振動面43と、超音波振動子41と振動面43との間に配され、超音波振動子41の振動を増幅するとともに振動面43へ伝達するホーン42とを含んでいる。超音波振動子41に対する駆動電圧は、本体上部12と本体下部11との間に設けられた接点電極を介して、本体下部11から供給されるようになっている。
【0033】
図2に示すように、本体上部12の後半部12Rには、略半円形の平面形状をもつ貯液部17が設けられている。この貯液部17は、図3に示すように、前面側へ向かうに連れて次第に浅くなる底面17bを有している。貯液部17の前面側部分に連なって、貯液部17から振動部40の振動面43上へ向けて液体(薬液)を供給するための給液路18が設けられている。図2及び図3の分解状態では、貯液部17は上方へ向かって開いている。したがって、ユーザは、貯液部17に上方から薬液等の液体を入れることができる。
【0034】
本体上部12の後半部12Rの後端側の上縁には、本体上部12に対して蝶番38を介して回動可能に、蓋をなすキャップ部材30が連結されている。キャップ部材30は、蝶番38に近い側に配され略台形の平面形状を有する後半部30Rと、この後半部30Rに連なり、環状で略円形の平面形状を有する前半部30Fとを含んでいる。キャップ部材30の前半部30Fのうち本体上部12の上面に対向する側であって、凹部16の周りの縁部15における左側部分15b、右側部分15cに対応する位置に、2つの円筒形の突起部33が突出して設けられている。キャップ部材30の後半部30Rのうち本体上部12の上面に対向する側に、貯液部17の平面形状と対応する略台形の平面形状を有するメサ部34が設けられている。本体上部12に対してキャップ部材30が閉じられ、ネブライザ1が組み立てられた状態では、突起部33は、装着部材20を位置決めするために働く。また、メサ部34は、貯液部17の上部を塞いで、貯液部17から薬液が溢れるのを防ぐ。キャップ部材30の前半部30Fの中央は、マウスピース等が取り付けられるべき開口30oになっている。
【0035】
キャップ部材30の前半部30Fの前縁30Fe(蝶番38とは反対側)には、内向きに突起した係合突起31が設けられている。一方、本体上部12の前半部12Fには、前端から外向き(前方)に突出した係合突起14が設けられている。本体上部12に対してキャップ部材30が閉じられると、キャップ部材30の係合突起31は、本体上部12の係合突起14と、鉛直方向に係合するようになっている。
【0036】
装着部材20は、ネブライザ1が使用される際に本体上部12の凹部16に装着される。装着部材20は、振動面43に対向すべき平坦なフィルム状のシート21と、このシート21を支持する底板部22と、この底板部22の外縁に連なり、凹部16の側面16cに対向すべき環状の側壁部23と、この側壁部23の上縁に連なり、その上縁の周りに径方向外向きに広がるフランジ部24と、このフランジ部24の一部の外縁に連なって下方へ延在する摘まみしろ部25とを含んでいる。シート21は、底板部22の下面に接着または溶着により取り付けられている。シート21のうち略中央の領域がメッシュ部21aを構成している。
【0037】
(ネブライザの組み立て)
ネブライザ1を使用しようとするユーザは、本体10に対してキャップ部材30が開いた状態で、本体10の上方へ向かって開いた形状の凹部16に、図3中に矢印Dで示すように、メッシュ部21aを有する装着部材20を装着する。装着部材20を装着した状態で、ユーザが、本体10(本体上部12)に対して蝶番38を介してキャップ部材30を回転して閉じる。すると、キャップ部材30の係合突起31が、本体上部12の係合突起14と鉛直方向に係合する。これにより、本体上部12に対してキャップ部材30が閉じられた状態で固定される。このようにして、ネブライザ1が簡単に組み立てられる。この状態を組み立て状態という。
【0038】
(ネブライザの使用)
ネブライザ1を使用する場合、予め、ユーザは、本体上部12の貯液部17に薬液を入れておく。そして、図4に示すように、ユーザは、組み立て状態で、キャップ部材30の開口30oに、例えばマウスピース80を装着する。マウスピース80に代えて、ユーザ99の顔を覆うような吸入マスクを装着してもよい。
【0039】
図4に示すように、ネブライザ1を少しだけ手前に傾けると、貯液部17から給液路18を通して、振動部40の振動面43上へ向けて薬液が供給される。つまり、振動面43とメッシュ部21aとの間に薬液が供給される。この状態で、振動部40の超音波振動子41に駆動電圧が印加されて振動面43が振動されると、メッシュ部21a(より正確には、シート21を貫通する複数の貫通孔)を通して薬液90が霧化されて噴出する。このように、振動部40と装着部材20のメッシュ部21aにより、貯液部17に貯留された薬液等の液体を霧化する霧化部(後述の霧化部73)が構成されている。
【0040】
(ネブライザのブロック構成)
図5は、ネブライザ1のブロック構成を示す図である。ネブライザ1は、操作部材50と、ネブライザ制御部71と、発振周波数生成部72と、霧化部73と、電子機器3との通信を行うための通信部を構成する通信インタフェース74と、通知部75と、を備えている。
【0041】
操作部材50に含まれる開始/終了ボタン51は、霧化部73の作動の開始をネブライザ制御部71に指示する開始操作と、霧化部73の作動の停止をネブライザ制御部71に指示する終了操作と、を行うことが可能な操作部材である。例えば、霧化部73が作動していない状態における開始/終了ボタン51の短押し操作が開始操作とされ、開始操作後の開始/終了ボタン51の短押し操作が終了操作とされる。なお、開始/終了ボタン51は、開始操作を行うためのボタンと、終了操作を行うためのボタンとの2つに分けられた構成であってもよい。
【0042】
操作部材50に含まれる薬液選択ボタン52は、ネブライザ1を用いた治療に使用する薬液の種別をユーザが選択するための操作部材である。
【0043】
通知部75は、図2に示した発光部81、82、83から構成されている。発光部81、82、83は、それぞれ、LED(light emitting diode)等の発光素子を含む。電子機器3にインストールされた治療管理アプリの機能により、発光部81、82、83に対し、異なる薬液種別の情報を対応付けて登録できるようになっている。ユーザが、薬液選択ボタン52を操作することで、発光部81を点灯させた状態、発光部82を点灯させた状態、発光部83を点灯させた状態が順次切り替えられる。そして、点灯した発光部に対応する薬液種別が、ユーザから選択された薬液としてネブライザ制御部71により認識されるようになっている。
【0044】
発振周波数生成部72は、ネブライザ制御部71からの制御信号に基づいて、交流の駆動電圧を振動部40の超音波振動子41に印加する。本明細書では、超音波振動子41に駆動電圧が印加されている状態を、霧化部73が作動している状態といい、超音波振動子41に駆動電圧が印加されていない状態を、霧化部73が停止している状態という。
【0045】
ネブライザ制御部71は、CPU等のプロセッサと、ワークメモリとしてのRAMと、各種情報を記録するROMとを含んで構成され、各種の処理をこのプロセッサにて行う。ネブライザ制御部71は、霧化部73が作動していない状態にて開始操作を検出すると霧化部73を作動させ、霧化部73が作動している状態にて終了操作を検出すると霧化部73を停止させる。ネブライザ制御部71は、霧化部73を作動させた場合には、その作動に関する霧化部73の作動履歴情報を、電子機器3を介して管理サーバ6に送信する制御を行う。
【0046】
以下の説明では、ネブライザ制御部71は、開始操作を検出したタイミング(具体的には日時)を霧化部73の作動開始タイミングとして取り扱う。また、ネブライザ制御部71は、終了操作を検出したタイミング(具体的には日時)を霧化部73の作動終了タイミングとして取り扱う。また、ネブライザ制御部71は、作動開始タイミングからその直後の作動終了タイミングまでの時間を霧化部73の作動時間として取り扱う。これらの作動開始タイミング、作動終了タイミング、及び作動時間は、それぞれ、霧化部73の作動履歴情報を構成する。
【0047】
図6は、霧化部73の1回の作動で治療が完了する場合のネブライザ制御部71の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0048】
ネブライザ制御部71は、タイミングt1にて開始操作を検出すると、霧化部73を作動させ、タイミングt2にて終了操作を検出すると、霧化部73の作動を停止させる。また、ネブライザ制御部71は、タイミングt2にて終了操作を検出すると、タイミングt1にて開始した霧化部73の作動に関する作動履歴情報J1を生成する。作動履歴情報J1は、タイミングt1(作動開始タイミング)と、タイミングt1とタイミングt2の間の時間(霧化部73の作動時間)と、霧化部73によって霧化された薬液種別と、の3種から構成される。ネブライザ制御部71は、霧化部73が停止した後のタイミングt3において、作動履歴情報J1を電子機器3に送信する。
【0049】
ネブライザ1から作動履歴情報J1を受信した電子機器3は、この作動履歴情報J1を管理サーバ6に転送する。管理サーバ6では、この作動履歴情報J1がデータベース63に記録される。
【0050】
図7は、霧化部73の2回の作動で治療が完了する場合(治療が1度中断される場合)のネブライザ制御部71の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0051】
ネブライザ制御部71は、タイミングt4にて開始操作を検出すると、霧化部73を作動させる。ネブライザ制御部71は、タイミングt5にて終了操作を検出すると、霧化部73の作動を停止させ、タイミングt4にて開始した霧化部73の作動に関する作動履歴情報J2を生成する。作動履歴情報J2は、タイミングt4(作動開始タイミング)と、タイミングt4とタイミングt5の間の時間(霧化部73の作動時間)と、霧化部73によって霧化された薬液種別と、の3種から構成される。ネブライザ制御部71は、霧化部73が停止した後のタイミングt6において、作動履歴情報J2を電子機器3に送信する。
【0052】
その後、ネブライザ制御部71は、タイミングt7にて開始操作を検出すると、霧化部73を作動させる。ネブライザ制御部71は、タイミングt8にて終了操作を検出すると、霧化部73の作動を停止させ、タイミングt7にて開始した霧化部73の作動に関する作動履歴情報J3を生成する。作動履歴情報J3は、タイミングt7(作動開始タイミング)と、タイミングt7とタイミングt8の間の時間(霧化部73の作動時間)と、霧化部73によって霧化された薬液種別と、の3種から構成される。ネブライザ制御部71は、霧化部73が停止した後のタイミングt9において、作動履歴情報J3を電子機器3に送信する。
【0053】
ネブライザ1から作動履歴情報J2、J3を受信した電子機器3は、この作動履歴情報J2、J3を管理サーバ6に転送する。管理サーバ6では、この作動履歴情報J2、J3がデータベース63に記録される。
【0054】
管理サーバ6のサーバ制御部62は、例えば日付が変わるタイミング等の定期的なタイミングになると、データベース63に記録された過去1日分の複数の作動履歴情報(同一の日付を含む複数の作動履歴情報)からなる作動履歴群を解析する処理を実行する。例えば、ある1日において、図6に示す動作と図7に示す動作が行われていた場合には、作動履歴情報J1、作動履歴情報J2、及び作動履歴情報J3からなる作動履歴群を解析する処理が実行される。
【0055】
具体的には、サーバ制御部62は、作動履歴群から1つの作動履歴情報を選択して第一作動履歴情報とし、作動履歴群からその第一作動履歴情報の次に取得(データベース63に記録)された作動履歴情報を選択して第二作動履歴情報とする。サーバ制御部62は、第一作動履歴情報に基づく霧化部73の作動期間(第一作動期間という)の終了タイミングと第二作動履歴情報に基づく霧化部73の作動期間(第二作動期間という)の開始タイミングとの間の時間(続けて行われた2回の霧化部73の作動の間隔、以下では時間Tと記載する)に基づいて、これら第一作動履歴情報と第二作動履歴情報が同一の治療のために霧化部73が作動したときの情報であるか否かを判定する。サーバ制御部62は、第一作動履歴情報に含まれる作動開始タイミング及び作動時間から、第一作動履歴情報に対応する第一作動期間の終了タイミングを導出し、導出した終了タイミングと、第二作動履歴情報に含まれる作動開始タイミングとから、上記の時間Tを導出する。
【0056】
サーバ制御部62は、作動履歴群に含まれる最も新しい作動履歴情報を除く各作動履歴情報が上記第一作動履歴情報となるように、上述した処理を繰り返す。各作動履歴情報の新旧は、そこに含まれる作動開始タイミングの情報を参照したり、各作動履歴情報がデータベース63に記録された日時を参照したりすることで判断できる。作動履歴群が作動履歴情報J1、作動履歴情報J2、及び作動履歴情報J3からなる場合には、サーバ制御部62は、作動履歴情報J1を第一作動履歴情報とし且つ作動履歴情報J2を第二作動履歴情報として上記判定を行い、作動履歴情報J2を第一作動履歴情報とし且つ作動履歴情報J3を第二作動履歴情報として上記判定を行う。
【0057】
ネブライザ1を用いた治療が途中で中断される場合には、時間T(図7の例であればタイミングt5とタイミングt7の間の時間)は、それほど長くはならない。したがって、サーバ制御部62は、時間Tが予め決められた閾値TH以上である場合には、第一作動履歴情報と第二作動履歴情報が別々の治療のために霧化部73が作動したときの情報であると判定する。サーバ制御部62は、時間Tが閾値TH未満である場合には、第一作動履歴情報と第二作動履歴情報が同一の治療のために霧化部73が作動したときの情報であると判定する。
【0058】
サーバ制御部62は、同一の治療のために霧化部73が作動したときの作動履歴情報であると判定した複数の作動履歴情報の各々に対しては、共通の識別情報を対応付けて記録する。例えば、作動履歴群が作動履歴情報J1、作動履歴情報J2、及び作動履歴情報J3からなる場合には、サーバ制御部62は、作動履歴情報J2と作動履歴情報J3に共通の識別情報を対応付けて記録する。
【0059】
サーバ制御部62は、データベース63に記録された作動履歴群のうち、共通の識別情報が付加されている複数の作動履歴情報については、これら複数の作動履歴情報を結合する結合処理を行う。図7の例では、サーバ制御部62は、例えば、作動履歴情報J2に含まれる作動時間と作動履歴情報J3に含まれる作動時間の合計値を算出し、この合計値と、作動履歴情報J2に含まれる霧化部73の作動開始タイミングと、作動履歴情報J2に含まれる薬液種別の情報とからなる作動履歴情報J2Aを生成する。そして、サーバ制御部62は、作動履歴情報J2、J3を削除し、代わりに、この作動履歴情報J2Aをデータベース63に記録する。
【0060】
なお、サーバ制御部62は、上記結合処理の代わりに、共通の識別情報が付加されている複数の作動履歴情報のいずれか1つのみを残し他を削除する削除処理を行ってもよい。図7の例では、サーバ制御部62は、例えば、作動履歴情報J2と作動履歴情報J3のうち、作動履歴情報J2を削除したり、作動履歴情報J3を削除したりしてもよい。
【0061】
(治療管理システムの効果)
治療管理システム100によれば、管理サーバ6にて取得された時系列で隣り合う2つの作動履歴情報に基づいて、この2つの作動履歴情報が同一の治療のための霧化部73の作動に関する情報であるか否かが判定される。そして、この2つの作動履歴情報が同一の治療のための霧化部73の作動に関する情報であると判定された場合には、この2つの作動履歴情報の補正(上記の結合処理又は削除処理)が行われる。このような構成により、解析処理後のデータベース63には、1回の治療に対して必ず1つの作動履歴情報が記録されることになる。このため、データベース63に記録される作動履歴情報を例えば医師などが参照することで、ネブライザ1を用いた治療の頻度を正確に把握できるようになり、治療方針の決定に役立てることができる。
【0062】
また、上記結合処理が行われる場合には、結合処理後の作動履歴情報に含まれる作動時間によって、1回の治療における薬液の吸入量をおおよそ把握可能となる。このため、ユーザによって適切な治療が行われているかを医師が判断できるようになり、治療方針の決定に役立てることができる。
【0063】
治療管理システム100のネブライザ1は、霧化部73の作動が停止した後のタイミング(図6のタイミングt3、図7のタイミングt6、t9)にて、作動履歴情報の送信を行っている。このように、霧化部73の超音波振動子41が作動していない状態で作動履歴情報の送信が行われることで、霧化部73の作動ノイズの影響を受けることなく、その送信を安定して行うことができる。したがって、管理サーバ6に作動履歴情報を欠落なく送信することができ、治療の管理を的確に行うことができる。
【0064】
(治療管理システムの第一変形例)
サーバ制御部62は、上記の結合処理又は削除処理を行わない構成としてもよい。この場合でも、データベース63に記録される各作動履歴情報に付加されている識別情報によって、治療毎の作動履歴情報を識別できる。つまり、医師は、共通の識別情報が付加されている複数の作動履歴情報を見ることで、これらが1回の治療のために生成された情報であることを認識できる。したがって、この変形例であっても、ユーザによって適切な治療が行われているかを医師が判断できるようになり、治療方針の決定に役立てることができる。
【0065】
(治療管理システムの第二変形例)
サーバ制御部62は、共通の識別情報が対応付けられた複数の作動履歴情報の補正(上記の結合処理と削除処理の何れかを行うこと)の要否確認をユーザ端末(ネットワーク4に接続された電子機器3やその他の機器)に要求し、この要求への応答により補正が必要と判断した場合に、上記結合処理又は上記削除処理を実行するようにしてもよい。このように、ユーザに確認をとってから補正を行うことで、複数の作動履歴情報が誤って補正されてしまうようなことを高い確度で防ぐことができる。この結果、治療の行われた頻度をより正確に医師に提供できるようになる。
【0066】
(治療管理システムの第三変形例)
サーバ制御部62は、時間Tと、第一作動履歴情報に含まれる薬液種別情報と、第二作動履歴情報に含まれる薬液種別情報と、に基づいて、第一作動履歴情報と第二作動履歴情報が同一の治療のために霧化部73が作動したときの情報であるか否かを判定してもよい。
【0067】
続けて行われた霧化部73の2回の作動の間隔である時間Tが短い場合であっても、これら2回の各作動において霧化された薬液種別が異なる場合には、これら2回の作動は別々の治療のために霧化部73が作動されたものと言える。そこで、サーバ制御部62は、時間Tが閾値TH未満であり、且つ、第一作動履歴情報に含まれる薬液種別情報と第二作動履歴情報に含まれる薬液種別情報とが異なる場合には、第一作動履歴情報と第二作動履歴情報が別々の治療のために霧化部73が作動したときの情報であると判定する。一方、サーバ制御部62は、時間Tが閾値TH未満であり、且つ、第一作動履歴情報に含まれる薬液種別情報と第二作動履歴情報に含まれる薬液種別情報とが同じ場合には、第一作動履歴情報と第二作動履歴情報が同一の治療のために霧化部73が作動したときの情報であると判定する。
【0068】
このように、霧化部73が続けて作動したときの各作動期間の間隔だけでなく、各作動期間において霧化された薬液種別を加味することで、治療の中断の有無をより高精度に判定可能となる。
【0069】
(治療管理システムの第四変形例)
ここまでは、サーバ制御部62がネブライザ1から作動履歴情報を取得してデータベース63に記録し、データベース63に記録した作動履歴情報を解析するものとした。しかし、サーバ制御部62の機能をネブライザ1のネブライザ制御部71に持たせてもよい。本変形例の治療管理システムの構成は、治療管理システム100から管理サーバ6が削除された構成となる。本変形例では、ネブライザ制御部71が管理装置を構成する。
【0070】
本変形例の治療管理システムでは、ネブライザ1のネブライザ制御部71が、霧化部73を作動させる毎に、霧化部73の作動履歴情報を生成し、内蔵するROMに記録する。ネブライザ制御部71は、例えば日付が変わるタイミング等の定期的なタイミングになると、ROMに記録された過去1日分の複数の作動履歴情報からなる作動履歴群を解析する処理を実行する。この処理は、前述したサーバ制御部62が行う処理と同じ内容である。
【0071】
このように、ネブライザ1において治療の中断の有無を判定することで、ネブライザ1のROMには、1回の治療に対して必ず1つの作動履歴情報が記録されることになる。このため、ROMに記録された解析処理後の作動履歴情報を例えば電子機器3によって読み出し、これを医師などが参照することで、ネブライザ1を用いた治療の頻度を正確に把握できるようになり、治療方針の決定に役立てることができる。なお、本変形例においても、ネブライザ制御部71は、結合処理又は削除処理を行わない構成とすることができる。
【0072】
(治療管理システムの第五変形例)
前述の第四変形例においては、ネブライザ制御部71が治療の中断の有無を判定し、その判定結果に応じて作動履歴情報を補正するものとした。この変形例として、ネブライザ制御部71が治療の中断の有無を判定し、その判定結果に応じて、作動履歴情報の管理サーバ6への送信を制御するようにしてもよい。本変形例の治療管理システムの構成は、第四変形例の治療管理システムの構成に管理サーバ6が追加された構成である。本変形例における管理サーバ6は、ネブライザ1から送信されてくる作動履歴情報をデータベース63に記録し、記録した情報に基づくデータを生成してユーザ端末等に提供するものである。
【0073】
ネブライザ制御部71は、作動履歴情報を生成すると、生成したこの最新の作動履歴情報を第二作動履歴情報とし、この最新の作動履歴情報の直前に生成した作動履歴情報を第一作動履歴情報とする。そして、ネブライザ制御部71は、第一作動履歴情報と第二作動履歴情報が同一の治療のために霧化部73が作動したときの情報であるか否かを判定する。この判定方法は、上記実施形態のサーバ制御部62が行う判定方法と同じである。ネブライザ制御部71は、第一作動履歴情報と第二作動履歴情報が同一の治療のために霧化部73が作動したときの情報ではないと判定した場合にのみ、第二作動履歴情報の電子機器3への送信を行う。つまり、ネブライザ制御部71は、第一作動履歴情報と第二作動履歴情報が同一の治療のために霧化部73が作動したときの情報であると判定した場合には、第二作動履歴情報の電子機器3への送信を省略する。
【0074】
図8は、霧化部73の2回の作動で治療が完了する場合のネブライザ制御部71の動作の変形例を説明するためのタイミングチャートである。図8図7の相違点は、タイミングt8の後の作動履歴情報J3の送信が省略されている点である。タイミングt5で生成された作動履歴情報J2と、その直前に生成された図6に示した作動履歴情報J1とから導出される時間Tは閾値以上となっている。このため、タイミングt5で生成された作動履歴情報J2は、その後のタイミングt6にて電子機器3に送信される。一方、タイミングt8で生成された作動履歴情報J3と、その直前に生成された作動履歴情報J2とから導出される時間Tは閾値未満となっている。このため、タイミングt8で生成された作動履歴情報J3は、電子機器3へ送信されない。
【0075】
本変形例によれば、治療の中断がなされた場合には、治療の開始から治療の中断までの霧化部73の作動に関する作動履歴情報(図8の例の作動履歴情報J2)のみが電子機器3へ送信される。このため、管理サーバ6のデータベース63には、1回の治療に対して必ず1つの作動履歴情報が記録されることになる。この結果、ネブライザ1を用いた治療の頻度を正確に把握できるようになる。
【0076】
また、本変形例によれば、ネブライザ1からのデータの送信頻度を減らせるため、バッテリで動作するネブライザであれば連続使用時間を延ばすことができる。また、管理サーバ6における治療中断有無の判定や作動履歴情報の補正が不要となる。このため、管理サーバ6の処理負荷を軽減できる。また、データベース63の必要容量も削減できる。
【0077】
(作動履歴情報の変形例)
ここまでの説明では、作動履歴情報(J1、J2、J3)が、霧化部73の作動開始タイミング(開始操作が検出されたタイミング)、霧化部73の作動時間、及び霧化部73によって霧化された薬液種別を含むものとした。しかし、作動履歴情報としては、以下の作動履歴情報IF1~IF3を採用してもよい。
【0078】
作動履歴情報IF1は、霧化部73の作動開始タイミングと、霧化部73の作動終了タイミング(終了操作が検出されたタイミング)と、薬液種別と、により構成される。作動履歴情報IF1を採用する場合には、作動開始タイミングと作動終了タイミングに基づいて霧化部73の作動時間を求めることで、治療の行われたタイミングと治療時間を管理できる。
【0079】
作動履歴情報IF2は、霧化部73の作動終了タイミングと、霧化部73の作動時間と、薬液種別と、により構成される。作動履歴情報IF2を採用する場合には、作動終了タイミングと作動時間に基づいて霧化部73の作動開始タイミングを求めることで、上記の時間Tを導出できる。
【0080】
作動履歴情報IF3は、霧化部73の作動時間と、薬液種別と、により構成される。作動履歴情報IF3を採用する場合には、管理サーバ6において作動履歴情報IF3を受信したタイミングや、ネブライザ1において作動履歴情報IF3が記録されたタイミングを、霧化部73の作動終了タイミングとして取り扱うことで、上記の時間Tを導出できる。
【0081】
実施形態で説明した作動履歴情報(J1、J2、J3)と、変形例の各作動履歴情報IF1~IF3には薬液種別が含まれていなくてもよい。このようにしても、単一種類の薬液を用いて治療することが前提であれば、治療の行われたタイミングと治療時間を管理できる。
【0082】
また、治療管理システムにおいて、治療の頻度と薬液種別だけを管理し、治療時間の管理を不要とする場合も想定される。このような場合には、霧化部73の作動開始タイミングと、薬液種別と、から構成される作動履歴情報IF4を採用してもよい。作動履歴情報IF4を採用する場合には、管理サーバ6において作動履歴情報IF4を受信したタイミングや、ネブライザ1において作動履歴情報IF4が記録されたタイミングを、霧化部73の作動終了タイミングとして取り扱うことで、上記の時間Tを導出できる。作動履歴情報IF4においても、薬液種別の管理を不要とする場合には、薬液種別は省略可能である。
【0083】
(作動履歴情報の送信タイミングの変形例)
ここまでの説明では、ネブライザ1が作動履歴情報を電子機器3に送信する機能を持つ形態において、その作動履歴情報の送信タイミングを、霧化部73の作動が停止した後のタイミングとしている。この変形例として、ネブライザ制御部71は、開始操作を検出したタイミングにて、作動履歴情報の一部を電子機器3に送信し、終了操作に応じて霧化部73の作動が停止した後のタイミングにて、作動履歴情報の残りを電子機器3に送信するようにしてもよい。
【0084】
例えば、作動履歴情報J1を送信する場合には、ネブライザ制御部71は、開始操作を検出したタイミングにて作動開始タイミングの情報を電子機器3に送信し、終了操作に応じて霧化部73を停止させた後のタイミングにて作動時間と薬液種別の情報を電子機器3に送信するようにしてもよい。このようにしても、例えば、作動開始タイミングの送信がうまくいかなった場合には、管理サーバ6が作動履歴情報J1のうちの作動時間及び薬液種別の情報を受信したタイミングを作動終了タイミングとして取り扱うことで、上記の時間Tを導出可能である。この構成によれば、作動履歴情報を効率よく外部装置に送信することができる。
【0085】
実施形態とその変形例の治療管理システム100において、電子機器3を省略し、ネブライザ1と管理サーバ6がネットワーク4を介して通信する構成としてもよい。また、管理サーバ6を省略し、管理サーバ6の機能を電子機器3にインストールされる治療管理アプリで実現してもよい。つまり、電子機器3が作動履歴情報を記録及び解析する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0086】
100 治療管理システム
1 ネブライザ
50 操作部材
51 開始/終了ボタン
71 ネブライザ制御部
73 霧化部
3 電子機器
4 ネットワーク
6 管理サーバ
62 サーバ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8