(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099905
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】口栓及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/00 20060101AFI20220628BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B29C44/00 D
B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213973
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】三田 とも子
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓治
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 倫寿
【テーマコード(参考)】
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
4F206AB02A
4F206AG20
4F206AH57
4F206AR20
4F206JA04
4F206JF04
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN11
4F214AB02A
4F214AG20
4F214AH57
4F214AR20
4F214UA08
4F214UB01
4F214UC02
4F214UC12
4F214UL11
(57)【要約】
【課題】発泡によって軽量化が図られており且つ液漏れを十分に抑制できる口栓の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る口栓の製造方法は、(A)樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、(B)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、(C)キャビティ内において、圧力の低下によって溶融樹脂組成物を発泡させる工程と、(D)溶融樹脂組成物の発泡に由来する複数の空隙を有する口栓を金型から回収する工程とを含む。(A)工程において、超臨界状態の窒素を使用する場合、樹脂材料100質量部に対して0.1~1.2質量部の窒素を添加する。(A)工程において、超臨界状態の二酸化炭素を使用する場合、樹脂材料100質量部に対して0.8~4.2質量部の二酸化炭素を添加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)樹脂材料と、超臨界状態の窒素とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、
(B1)前記溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、
(C1)前記キャビティ内において、圧力の低下によって前記溶融樹脂組成物を発泡させる工程と、
(D1)前記発泡に由来する複数の空隙を有する口栓を前記金型から回収する工程と、
を含み、
前記溶融樹脂組成物における前記樹脂材料の質量を100質量部としたとき、前記超臨界状態の窒素の量が0.1~1.2質量部である、口栓の製造方法。
【請求項2】
(A2)樹脂材料と、超臨界状態の二酸化炭素とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、
(B2)前記溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、
(C2)前記キャビティ内において、圧力の低下によって前記溶融樹脂組成物を発泡させる工程と、
(D2)前記発泡に由来する複数の空隙を有する口栓を前記金型から回収する工程と、
を含み、
前記溶融樹脂組成物における前記樹脂材料の質量を100質量部としたとき、前記超臨界状態の二酸化炭素の量が0.8~4.2質量部である、口栓の製造方法。
【請求項3】
容器本体とともに容器を構成する口栓であって、
容器本体が熱融着される表面を有する融着部と、
外周にネジ部が形成されている口部と、
を備え、
超臨界流体に由来する空隙を有する発泡層を含む、口栓。
【請求項4】
前記融着部から前記口部とは反対側の方向の延びるストロー部を更に備える、請求項3に記載の口栓。
【請求項5】
前記発泡層において、複数の前記空隙が互いに独立している、請求項3又は4に記載の口栓。
【請求項6】
前記発泡層は、断面観察によって求められる空隙の面積割合が25%以下である、請求項3~5のいずれか一項に記載の口栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は口栓及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック成形品が身の回りのあらゆる日用品や工業製品に用いられている。プラスチック成形品の品質向上及びコストダウンによる汎用化が進み、プラスチック成形品の需要が高まっている。一方、海洋プラスチックごみ問題にみられるようにマイクロプラスチックによって環境汚染に影響を与えることが注目されるようになり、脱プラスチック運動やプラスチック製品の使用を控える風潮が高まっている。
【0003】
食品や日用品の用途における使い捨てのプラスチック容器については、ユーザーから少しでも石油由来のプラスチック使用量を少なくできないかという要望が強くなってきている。このような要望に対し、原料の一部に植物由来の樹脂を使用する、再生プラスチック材を活用する、寸法や形状の工夫によってプラスチック使用量を削減するなどの取り組みがなされている。
【0004】
プラスチック成形品を軽量化する手段として発泡成形が知られている。発泡成形は化学発泡成形と物理発泡成形に大別できる。化学発泡成形では発泡剤が使用される。一方、物理発泡成形では超臨界状態の流体が使用され、この方法は超臨界流体成形と称される。化学発泡成形は発泡剤の環境への悪誘響の懸念、金型の汚染等の課題がある。超臨界流体成形は、従来、自動車部品成形や事務用機器類などの比較的大型の工業製品に適用されてきた。近年、超臨界流体の生成技術及び樹脂組成物への混練技術の向上に伴い、ハイサイクルな射出成形に超臨界流体成形を適用することが検討されている。特許文献1~3は超臨界流体成形によって製造される食品用容器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6085729号公報
【特許文献2】特許6430684号公報
【特許文献3】特開2020-040690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、超臨界流体成形の適用範囲を広げるべく、飲み物やゼリーなどの液状物を収容する容器の口栓を超臨界流体成形で製造することを試みた。その結果、発泡の程度を高めるにしたがって、樹脂材料の使用量を削減できる一方、液漏れが生じやすいことを見出した。
【0007】
本開示は、発泡によって軽量化が図られており且つ液漏れを十分に抑制できる口栓及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面は超臨界流体を使用して口栓を製造する方法に関する。本開示の第一の態様に係る製造方法は、超臨界状態の窒素を使用するものである。すなわち、この製造方法は、(A1)樹脂材料と、超臨界状態の窒素とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、(B1)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、(C1)キャビティ内において、圧力の低下によって溶融樹脂組成物を発泡させる工程と、(D1)発泡に由来する複数の空隙を有する口栓を金型から回収する工程とを含み、溶融樹脂組成物における樹脂材料の質量を100質量部としたとき、超臨界状態の窒素の量が0.1~1.2質量部である。
【0009】
上記製造方法によれば、溶融樹脂組成物における窒素の量が上記範囲であることで、口栓の軽量化と液漏れの抑制の両方を十分高度に達成することができる。本発明者らの検討によると、溶融樹脂組成物における窒素の量が1.2質量部を超えると、樹脂材料が不規則に流れた痕と認められる模様が口栓の表面に現れるとともに、特に口元の先端がデコボコになりやすい。このデコボコが液漏れの原因の一つと推察される。
【0010】
超臨界状態の窒素の代わりに、超臨界状態の二酸化炭素を使用してもよい。すなわち、本開示の第二の態様に係る製造方法は、(A2)樹脂材料と、超臨界状態の二酸化炭素とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、(B2)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、(C2)キャビティ内において、圧力の低下によって溶融樹脂組成物を発泡させる工程と、(D2)発泡に由来する複数の空隙を有する口栓を金型から回収する工程とを含み、溶融樹脂組成物における樹脂材料の質量を100質量部としたとき、超臨界状態の二酸化炭素の量が0.8~4.2質量部である。
【0011】
上記製造方法によれば、溶融樹脂組成物における二酸化炭素の量が上記範囲であることで、口栓の軽量化と液漏れの抑制の両方を十分高度に達成することができる。本発明者らの検討によると、溶融樹脂組成物における二酸化炭素の量が4.2質量部を超えると、樹脂材料が不規則に流れた痕と認められる模様が口栓の表面に現れるとともに、特に口元の先端がデコボコになりやすい。このデコボコが液漏れの原因の一つと推察される。
【0012】
本開示の一側面は、容器本体とともに容器を構成する口栓に関する。この口栓は、容器本体が熱融着される表面を有する融着部と、外周にネジ部が形成されている口部とを備え、超臨界流体に由来する空隙を有する発泡層を含む。
【0013】
口栓の機械的強度の観点から、上記発泡層において複数の空隙が互いに独立していることが好ましい。また、口栓は、断面観察によって求められる空隙の面積割合が25%以下である発泡層を備えることが好ましい。この面積割合が25%以下であることで、口栓の十分な機械的強度を確保できるとともに液漏れをより一層高度に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、発泡によって軽量化が図られており且つ液漏れを十分に抑制できる口栓及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本開示の一実施形態に係る口栓を示す断面図である。
【
図2】
図2は
図1に示す口栓を備えるスパウト容器の一例を模式的に示す正面図である。
【
図3】
図3は本開示の他の実施形態に係る口栓を示す断面図である。
【
図4】
図4は本開示の他の実施形態に係る口栓を示す断面図である。
【
図5】
図5は本開示の他の実施形態に係る口栓を備える容器の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は
図5に示す容器が備える口栓を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は比較例1に係る口栓のCT画像である。
【
図8】
図8(a)~
図8(c)は実施例1,2及び比較例2に係る口栓のCT画像である。
【
図9】
図9(a)~
図9(c)は実施例3,4及び比較例3に係る口栓のCT画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<口栓の製造方法>
本実施形態に係る口栓の製造方法は以下の工程を含む。
(A)樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程。
(B)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程。
(C)キャビティ内において、圧力の低下によって溶融樹脂組成物を発泡させる工程。
(D)溶融樹脂組成物の発泡に由来する複数の空隙を有する口栓を金型から回収する工程。
(A)工程から(D)工程の一連の工程は、例えば、MuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用して実施できる(特許文献1,2参照)。
【0018】
[(A)工程]
まず、樹脂材料と、超臨界状態の窒素又は二酸化炭素とを含む溶融樹脂組成物を調製する。樹脂材料として、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂が挙げられる。本発明者らの検討によると、窒素を使用する場合、樹脂材料100質量部に対して0.1~1.2質量部の超臨界状態の窒素を添加して溶融樹脂組成物を調製する。窒素の量が0.1質量部以上であることで、発泡による口栓の軽量化を実現できる。他方、窒素の量が1.2質量部以下であることで、液漏れを十分に抑制できる。窒素の量の下限値は、口栓の軽量化の観点から、好ましくは0.15質量部であり、より好ましくは0.2質量部である。窒素の量の上限値は、液漏れをより一層高度に抑制するとともに口栓の機械的強度の向上の観点から、好ましくは0.75質量部であり、より好ましくは0.55質量部である。
【0019】
二酸化炭素を使用する場合、樹脂材料100質量部に対して0.8~4.2質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製する。二酸化炭素の量が0.8質量部以上であることで、発泡による口栓の軽量化を実現できる。他方、二酸化炭素の量が4.2質量部以下であることで、液漏れを十分に抑制できる。二酸化炭素の量の下限値は、口栓の軽量化の観点から、好ましくは1.0質量部であり、より好ましくは1.2質量部である。二酸化炭素の量の上限値は、液漏れをより一層高度に抑制するとともに口栓の機械的強度の向上の観点から、好ましくは2.8質量部であり、より好ましくは1.7質量部である。
【0020】
上述のとおり、超臨界流体として、窒素又は二酸化炭素を使用することができる。本発明者らの検討によると、発泡性の向上の観点からすると、超臨界流体として、二酸化炭素よりも窒素を使用することが好ましい。
【0021】
使用する樹脂材料がポリプロピレン樹脂である場合、溶融樹脂組成物の温度(スクリューシリンダ温度)は、210~230℃程度であることが好ましい。使用する樹脂材料がポリエチレン樹脂である場合、この温度は220~240℃程度であることが好ましい。この温度が下限値以上であることで、キャビティ内において樹脂が流動しやすく、他方、上限値以下であることで、例えば、樹脂の焦げ付きを抑制できる傾向にある。
【0022】
溶融樹脂組成物は、樹脂材料及び超臨界流体以外の成分を含んでもよい。すなわち、溶融樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、フィラー、着色剤、スリップ剤、帯電防止剤などを更に含んでもよい。
【0023】
[(B)工程及び(C)工程]
(A)工程で調製した溶融樹脂組成物を金型のゲートを通じてキャビティ内に射出する。溶融樹脂組成物がキャビティ内に導入されると、圧力の低下によって気泡セルが成長して独立した気泡が樹脂組成物内に発生する。射出速度は、5~100mm/秒であることが好ましく、10~30mm/秒であることがより好ましい。射出速度が5mm/秒以上であることで、流動末端まで樹脂を到達させやすく、ショートショットの発生を抑制できる傾向にある。他方、射出速度が100mm/秒以下であることで、成形体内において気泡が疎の部分が生じたり、成形体の表面に凹凸ができたりすることを抑制できる傾向にある。本発明者らの検討によると、樹脂材料がポリエチレン樹脂であり、超臨界流体が窒素である場合、(B)工程における射出速度は20~40mm/秒であることが好ましく、25~35mm/秒であることがより好ましい。樹脂材料がポリエチレン樹脂であり、超臨界流体が二酸化炭素である場合、(B)工程における射出速度は20~40mm/秒であることが好ましく、25~35mm/秒であることがより好ましい。
【0024】
本発明者らの検討によると、作製すべき口栓に厚肉部と薄肉部があると、超臨界流体に起因する発泡が主に厚肉部で生じる一方、薄肉部においては発泡が抑制される。このため、口栓の全体としては発泡によって軽量化を図ることができ且つ薄肉部については十分な強度を維持することができる。溶融樹脂組成物がゲートを通じてキャビティ内に導入されると、圧力の低下によって発泡する。通常の射出成形では樹脂の充填後にキャビティ内に圧力をかける工程(保圧)を実施するのに対し、上記製造方法では、例えば、この圧力をかける工程を実施しない、あるいは充填ピーク圧より低い圧力をかけることで厚肉部において発泡が生じる。薄肉部における発泡が抑制される主因は薄肉部において発泡が生じる前に樹脂が冷却固化するためと推察される。
【0025】
上述のとおり、口栓の厚肉部における発泡を十分に促進させる観点から、キャビティ内に溶融樹脂組成物を充填した後、キャビティ内に圧力をかける工程(保圧)を実施しなくてよい。他方、口栓の薄肉部における発泡を抑制する観点から、キャビティ内の圧力を低下させるための「コアバック」と称される工程を実施しないことが好ましい。コアバックは、キャビディに充填された溶融樹脂が固化し終わる前に、金型の可動部を移動させてキャビディの容積を拡大させる工程である(特許文献1参照)。本実施形態においては、上述のとおり、溶融樹脂組成物がキャビティ内に導入されることに伴う圧力低下により、キャビティにおける厚肉部に対応する領域で発泡を生じさせることでき、一方、薄肉部に対応する領域での発泡を抑制することができる。
【0026】
[(D)工程]
口栓の温度が30~60℃程度に下がった時点で、口栓を金型から回収する。口栓の内部に発泡に由来する空隙が形成されていることで、軽量化が図られ、プラスチック材料の使用量が削減されている。空隙が形成されていることで、空隙が形成されていない成形体(通常の射出成形体)と比較して、5質量%以上の軽量化が図られていることが好ましい。
【0027】
<口栓>
図1に示す口栓5は、上記工程を経て製造されたものである。口栓5は、融着部1と、口部2と、複数のプレート3とを備える。融着部1は、容器本体8(
図2参照)が熱融着される表面1aを有する。口部2は、外周に形成されたネジ部2aを有しており、キャップ6(
図2参照)が装着される。複数のプレート3は、融着部1と口部2との間に、横方向に延びるように設けられている。プレート3は、
図2に示すスパウト容器10の製造過程や液状物の充填過程などにおいて、口栓5又はスパウト容器10を搬送したり、位置決めしたりする際に利用される。
【0028】
口栓5は、超臨界状態の窒素又は二酸化炭素に由来する空隙を有する発泡層5aを備える。口栓5の表面はスキン層5bで構成されていることが好ましい。スキン層5bは微小な凹凸(ディンプル)や発泡痕(スワールマーク)などの外観上の欠陥が認められないことが好ましい。口栓5において、肉厚が1.5~8mm程度の部分が厚肉部に相当する。具体的には、融着部1が厚肉部に相当する。他方、口栓5において、肉厚が0.8~0.9mm程度の部分が薄肉部に相当する。具体的には、口部2の先端及びプレート3が薄肉部に相当する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態においては、融着部1に発泡層5aが形成されている。発泡層5aにおいては、発泡の起因する空隙が互いに独立していることが好ましい。これに対し、複数の空隙が独立しておらず、これらが一体化していると、口栓5の強度が不十分となる傾向にある。超臨界流体として窒素を使用した場合、発泡層5aにおいて、互いに独立して存在する空隙の直径は0.6~1.0mm程度である。他方、超臨界流体として二酸化炭素を使用した場合、発泡層5aにおいて、互いに独立して存在する空隙の直径は1.2~1.8mm程度である。なお、口栓5の厚肉部以外の領域に空隙が形成されていない訳ではなく、例えば、平均直径が1~50μm程度の微細な空隙が形成されている。
【0030】
発泡層5aにおける空隙の面積割合は好ましくは25%以下である。この面積割合が25%以下であることで、口栓の十分な機械的強度を確保できるとともに液漏れをより一層高度に抑制することができる。他方、この面積割合が15%以上であることで、口栓の軽量化をより十分に図ることが可能である。この面積割合は、CTスキャンによる断面画像から求めることができる。
【0031】
<スパウト容器>
スパウト容器10は、口栓5と、キャップ6と、容器本体8とを備える。キャップ6は、内面に形成されたネジ部を有し、口部2に装着できるように構成されている。容器本体8は、軟包装材で構成されている。容器本体8の内面はヒートシール性を有する樹脂で構成されており、融着部1の表面1aに熱融着されている。
【0032】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、
図1に示す構成の口栓5を例示したが、口栓は、
図3に示す構成であってもよい。
図3に示す口栓15は、融着部1から口部2とは反対側の方向の延びるストロー部4を更に備える。
【0033】
また、口栓は、
図4に示す構成であってもよい。
図4に示す口栓25は、融着部1から口部2とは反対側の方向に並行して延びる二本の棒21,22と、これらの連結している第一及び第二の連結部23a,23bとを備える。第一の連結部23aは、二本の棒21,22の先端部を連結している。第二の連結部23bは、第一の連結部23aの近傍であって融着部1側に、第一の連結部23aと並行して設けられている。第一の連結部23aと第二の連結部23bの距離は8~20mm程度であればよい。なお、口栓25におけるこれらの構成は、スパウト容器内の液体が残り少ない状態となっても、スパウト容器内に隙間を形成することによって液体が口部2へと流れやすくするためのものである。第二の連結部23bの肉厚は1.5~2mm程度であり、厚肉部に相当する。
【0034】
上記実施形態においては、スパウト容器用の口栓を例示したが、本開示に係る口栓は他の容器に適用される形態であってもよい。
図5は、本開示に係る口栓を備える容器の一例を模式的に示す斜視図である。この図に示す容器30は、例えば、ジュース、しょう油又は酒を収容した状態で販売するためのものである。容器30は、容器本体38と、口栓35と、キャップ36とを備える。
図6に示すように、口栓35は、容器本体38が熱融着される表面31aを有する融着部31と、外周にネジ部32aが形成されている口部32とを備える。
【実施例0035】
以下、本開示について実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(比較例1)
以下の材料を使用し、通常の射出成形によって
図4に示す構成の口栓(計10個)を作製した。
図7は比較例1に係る口栓のCTスキャンによる断面画像である。
[樹脂材料]
・高密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、2100K(商品名))
[着色剤(マスターバッチ)]
・PEMSSCMF0291ホワイト(大日精化株式会社製)
[口栓の構成]
・口部の内径:8.7mm
・口部の外径:10.6mm
・融着部の最大肉厚:7.8mm
・二本の棒21,22(
図4参照)の間隔:14mm
・第一の連結部23a(
図4参照)の最大肉厚:1.5mm
・第二の連結部23b(
図4参照)の最大肉厚:2mm
・重量:3.00g
【0037】
(実施例1)
上記樹脂材料100質量部に対して0.5質量部の超臨界状態の窒素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用して比較例1と同じ形状の口栓(計10個)を作製した。射出速度は30mm/秒とした。実施例1に係る口栓の重量は2.82gであり、比較例1を基準として6.0%の軽量化率が達成された。なお、本実施例及び以下の実施例及び比較例ではMuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用した。
【0038】
図8(a)は実施例1に係る口栓のCTスキャンによる断面画像である。この断面画像に示されたとおり、融着部1に視認可能な空隙が形成され、第二の連結部23に互いに独立した空隙(直径0.6~1.0mm程度)が形成されていた。断面画像から、第二の連結部23bにおける空隙の数及び空隙の面積割合を求めた。表1に結果を示す。なお、空隙の面積割合は、第二の連結部の断面積に対する第二の連結部における空隙の面積(断面画像で黒く表示されている部分の面積)の割合である。
【0039】
(実施例2)
上記樹脂材料100質量部に対して1.0質量部の超臨界状態の窒素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用して実施例1と同様にして口栓(計10個)を作製した。実施例2に係る口栓の重量は2.79gであり、比較例1を基準として7.0%の軽量化率が達成された。
【0040】
図8(b)は実施例2に係る口栓のCTスキャンによる断面画像である。この断面画像に示されたとおり、融着部1及び第二の連結部23に視認可能な空隙が形成されていた。断面画像から、実施例1と同様にして第二の連結部23bにおける空隙の数及び空隙の面積割合を求めた。表1に結果を示す。
【0041】
(比較例2)
上記樹脂材料100質量部に対して2.0質量部の超臨界状態の窒素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用して実施例1と同様にして口栓(計10個)を作製した。比較例2に係る口栓の重量は2.73gであり、比較例1を基準として9.0%の軽量化率が達成された。
【0042】
図8(c)は比較例2に係る口栓のCTスキャンによる断面画像である。この断面画像に示されたとおり、融着部1及び第二の連結部23に視認可能な空隙が形成されていた。断面画像から、実施例1と同様にして第二の連結部23bにおける空隙の数及び空隙の面積割合を求めた。表1に結果を示す。
【0043】
(実施例3)
上記樹脂材料100質量部に対して1.5質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用して比較例1と同じ形状の口栓を作製した。射出速度は30mm/秒とした。実施例3に係る口栓の重量は2.83gであり、比較例1を基準として5.7%の軽量化率が達成された。
【0044】
図9(a)は実施例3に係る口栓のCTスキャンによる断面画像である。この断面画像に示されたとおり、融着部1に視認可能な空隙が形成され、第二の連結部23に互いに独立した空隙(直径1.2~1.8mm程度)が形成されていた。断面画像から、実施例1と同様にして第二の連結部23bにおける空隙の数及び空隙の面積割合を求めた。表2に結果を示す。
【0045】
(実施例4)
上記樹脂材料100質量部に対して3.0質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用して実施例1と同様にして口栓を作製した。実施例4に係る口栓の重量は2.81gであり、比較例1を基準として6.3%の軽量化率が達成された。
【0046】
図9(b)は実施例4に係る口栓のCTスキャンによる断面画像である。この断面画像に示されたとおり、融着部1及び第二の連結部23に視認可能な空隙が形成されていた。断面画像から、実施例1と同様にして第二の連結部23bにおける空隙の数及び空隙の面積割合を求めた。表2に結果を示す。
【0047】
(比較例3)
上記樹脂材料100質量部に対して6.0質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用して実施例1と同様にして口栓を作製した。比較例3に係る口栓の重量は2.79gであり、比較例1を基準として7.0%の軽量化率が達成された。
【0048】
図9(c)は比較例3に係る口栓のCTスキャンによる断面画像である。この断面画像に示されたとおり、融着部1及び第二の連結部23に視認可能な空隙が形成されていた。断面画像から、実施例1と同様にして第二の連結部23bにおける空隙の数及び空隙の面積割合を求めた。表2に結果を示す。
【0049】
<液漏れの評価>
実施例及び比較例に係る口栓をそれぞれ使用してスパウト容器を作製した。なお、キャップは通常の射出成形で作製した。スパウトの口部をキャップで閉鎖し、口部に浸透液を注入した。キャップが下側になるように倒立状態で設置し、24時間後に口部とキャップの間から液漏れが認められるか否かを確認した。実施例及び比較例について、それぞれ10個のスパウト容器を作製して評価した。10個のスパウト容器のうち、液漏れが生じたスパウト容器の数(液漏れの発生数)を表1,2に示した。
【0050】
【0051】
1,31…融着部、1a,31a…表面、2,32…口部、2a,32a…ネジ部、3…プレート、4…ストロー部、5,15,25,35…口栓、5a…発泡層、5b…スキン層、6,36…キャップ、8,38…容器本体、10…スパウト容器、21,22…棒、23a…第一の連結部、23b…第二の連結部、30…容器