(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099927
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】電池素子のロール体、その製造方法および該ロール体を含む電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220628BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20220628BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220628BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220628BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220628BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220628BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220628BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M2/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214005
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】591186888
【氏名又は名称】株式会社トッパンインフォメディア
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友治
【テーマコード(参考)】
5H017
5H028
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017DD05
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE07
5H028AA05
5H028BB07
5H028CC12
5H028EE10
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK02
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5H029AL01
5H029AL03
5H029AL11
5H029AL12
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5H029AM04
5H029AM07
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5H029CJ07
5H029CJ22
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5H043AA19
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5H043HA11E
5H043LA21E
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB03
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA04
5H050DA09
5H050DA13
5H050EA10
5H050EA23
5H050FA05
5H050GA04
5H050GA09
5H050GA22
(57)【要約】
【課題】電解液を注入する注液工程を必要とすることなく、簡単に、かつ大量に生産することが可能な電池素子のロール体およびその製造方法、ならびにそのようなロール体を使用した電池を提供する。
【解決手段】第1の長尺の樹脂シート上に、負極集電体層と、少なくとも負極活物質と電解液とを含む負極活性層とがこの順に設けられた負極シートと、第2の長尺の樹脂シート上に、正極集電体層と、少なくとも正極活物質と電解液とを含む正極活性層とがこの順に設けられた正極シートとを、前記負極活性層と前記正極活性層との間にセパレータフィルムを挟んで対向させ巻回した、電池素子のロール体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の長尺の樹脂シート上に、負極集電体層と、少なくとも負極活物質と電解液とを含む負極活性層とがこの順に設けられた負極シートと、第2の長尺の樹脂シート上に、正極集電体層と、少なくとも正極活物質と電解液とを含む正極活性層とがこの順に設けられた正極シートとを、前記負極活性層と前記正極活性層との間にセパレータフィルムを挟んで対向させ巻回した、電池素子のロール体。
【請求項2】
前記負極活性層および前記正極活性層のうち少なくとも一方は、ゲル化剤を含む、請求項1に記載のロール体。
【請求項3】
前記ゲル化剤は、架橋性高分子、高分子ゲル化剤、低分子ゲル化剤、および固体微粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項2に記載のロール体。
【請求項4】
前記ゲル化剤が固体微粒子であり、前記固体微粒子が、導電性微粒子である、請求項3に記載のロール体。
【請求項5】
前記ロール体は、前記負極集電体層が露出する負極集電体露出部、および前記正極集電体層が露出する正極集電体露出部を備える、請求項1~4に記載のロール体。
【請求項6】
前記負極集電体露出部には負極リードが接続され、前記正極集電体露出部には正極リードが接続される、請求項5に記載のロール体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のロール体が電池ケース内に収納された電池。
【請求項8】
広巾長尺の第1の樹脂シートの第1の面上に、負極集電体層と、少なくとも負極活物質と電解液とを含む負極活性層とがこの順に設けられた負極シートを巻回した負極ロール状原反を準備する工程と、
広巾長尺の第2の樹脂シートの第1の面上に、正極集電体層と、少なくとも正極活物質と電解液とを含む正極活性層とがこの順に設けられた正極シートを巻回した正極ロール状原反を準備する工程と
広巾長尺のロール状のセパレータフィルムを準備する工程と、
前記負極ロール状原反から繰り出されてくる前記負極シートと、前記正極ロール状原反から繰り出されてくる前記正極シートを、前記負極活性層と前記正極活性層との間にセパレータフィルムを挟んで対向するように重ね合わせ、前記負極シートと前記セパレータフィルムと前記正極シートとを重ね合わせた状態で、複数の狭巾シートにスリットするスリット工程と、
前記複数の狭巾シートを、それぞれロール状に巻き取り、電池素子のロール体とする巻取り工程と
を有する、電池素子のロール体の製造方法。
【請求項9】
前記スリット工程は、前記負極ロール状原反から繰り出されてくる前記負極シートと、前記正極ロール状原反から繰り出されてくる前記正極シートとを、前記負極活性層と前記正極活性層との間にセパレータフィルムを挟んで対向するように重ね合わせ状態で、スリッタヘッドによって前記複数の狭巾シートに切断する工程を含み、
前記巻取り工程は、前記狭巾シートが所定回数または所定径まで巻き上がると、巻終端を切断する工程を含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記負極ロール状原反を準備する工程が、前記広巾長尺の第1の樹脂シート上に、前記負極集電体層と、前記負極活性層とを、この順に塗布形成する工程を含み、
前記正極ロール状原反を準備する工程が、前記広巾長尺の第2の樹脂シート上に、前記正極集電体層と、前記正極活性層とを、この順に塗布形成する工程を含む、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ロール体に、前記負極集電体層が露出する負極集電体露出部、および前記正極集電体層が露出する正極集電体露出部を形成する工程をさらに有する、請求項8~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記負極集電体露出部に負極リードを接続し、前記正極集電体露出部に正極リードを接続する工程をさらに有する、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池素子のロール体およびその製造方法、ならびにそのようなロール体を使用した電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なリチウムイオン電池の製造方法ではまず、アルミニウム箔などの正極集電体の両面にコバルト酸リチウムなどの正極活物質溶液を塗布・乾燥した正極と、銅箔などの負極集電体に炭素材料などの負極活物質溶液を塗布・乾燥した負極とを作製する。その際、正極及び負極の電極材料は、長い帯状で製造される。次いで、負極と正極との間にイオンが移動できる多孔質のセパレータフィルムをはさみ、正極と負極とセパレータフィルムとが幾層にも重なるようにしてこれらを巻いた後、電池ケースに入れ、電解液を注入した後、封口する。
【0003】
特許文献1には、電池ケースの開口端から電池ケース内に、正極板と負極板とをセパレーターを介して巻回構造に形成した極板群を収容し、電解液を注入した後、前記電池ケースの開口端を封口するリチウムイオン二次電池の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、正極と負極とがセパレーターを介して積層された積層体又は積層巻回された巻回体と上記正極と負極にそれぞれ接合された複数のリードとからなる電池体をフレキシブルなパッケージに収容し、封口してなる薄型電池の製造方法において、上記電池体を上記パッケージに収容し、電解液を注液する工程と、続いて上記パッケージを大気圧よりも小さい圧力で、かつ上記電解液の蒸気圧以上の圧力で減圧封口する工程とからなる薄型電池の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-90974号公報
【特許文献2】再公表WO00/41263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電解液を注入する注液工程を必要とすることなく、簡単に、かつ大量に生産することが可能な電池素子のロール体およびその製造方法、ならびにそのようなロール体を使用した電池を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の長尺の樹脂シート上に、負極集電体層と、少なくとも負極活物質と電解液とを含む負極活性層とがこの順に設けられた負極シートと、第2の長尺の樹脂シート上に、正極集電体層と、少なくとも正極活物質と電解液とを含む正極活性層とがこの順に設けられた正極シートとを、前記負極活性層と前記正極活性層との間にセパレータフィルムを挟んで対向させ巻回した、電池素子のロール体である。
負極活性層に含まれる電解液と正極活性層に含まれる電解液とは、同じものであっても異なるものであってもよい。
【0008】
本発明による電池素子のロール体では、負極シートと正極シートを、第1の長尺の樹脂シートの負極集電体層および負極活性層が設けられた面と、第2の長尺の樹脂シートの正極集電体層および正極活性層が設けられた面とが向かい合った状態で、負極活性層と正極活性層との間にセパレータフィルムが挟まれるように巻き回してあるため、負極シートと正極シートのそれぞれの樹脂シートに挟まれた領域は、負極集電体層、負極活性層、セパレータフィルム、正極活性層、正極集電体層が順次積層された積層構成となり、この積層構成が樹脂シートにより電気的に絶縁されて、多数巻き回された電池素子のロール体となっている。
【0009】
本発明によるロール体では、負極活性層および正極活性層のうち少なくとも一方は、ゲル化剤を含むものとすることができる。
長尺の樹脂シートに設けられた正極活性層および負極活性層は電極活物質粒子と電解液を含むため、例えば、粒子懸濁液、コロイド懸濁液、乳濁液、ゲル、又はミセルのような液相と固相との混合物である半固体の状態にある。このため、樹脂シート上に電極活性層を形成する過程で液漏れや形状維持が困難な場合がある。
本発明によれば、電極活性層にゲル化剤を添加することで、流動性を保ちつつ樹脂シート上に電極活性層を固定化しやすくすることができる。
負極活性層および正極活性層のいずれもがゲル化剤を含むものである場合、これらの層が含むゲル化剤は同じものであっても異なるものであってもよい。
【0010】
ゲル化剤は、架橋性高分子、高分子ゲル化剤、低分子ゲル化剤、および固体微粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種とすることができる。
本発明によるロール体において、ゲル化剤として固体微粒子を用いる場合、固体微粒子を導電性微粒子とすることができる。
【0011】
本発明によるロール体では、前記負極集電体層が露出する負極集電体露出部、および前記正極集電体層が露出する正極集電体露出部を設けることができる。
この場合、負極集電体露出部に負極リードを、正極集電体露出部に正極リードを接続することで、他の電気部品等との電気的な接合を行うことができる。
本発明による電池は、前記ロール体を電池ケース内に収納した電池とすることができる。
【0012】
本発明は、広巾長尺の第1の樹脂シートの第1の面上に、負極集電体層と、少なくとも負極活物質と電解液とを含む負極活性層とがこの順に設けられた負極シートを巻回した負極ロール状原反を準備する工程と、広巾長尺の第2の樹脂シートの第1の面上に、正極集電体層と、少なくとも正極活物質と電解液とを含む正極活性層とがこの順に設けられた正極シートを巻回した正極ロール状原反を準備する工程と、広巾長尺のロール状のセパレータフィルムを準備する工程と、前記負極ロール状原反から繰り出されてくる前記負極シートと、前記正極ロール状原反から繰り出されてくる前記正極シートを、前記負極活性層と前記正極活性層との間にセパレータフィルムを挟んで対向するように重ね合わせ、前記負極シートと前記セパレータフィルムと前記正極シートとを重ね合わせた状態で、複数の狭巾シートにスリットするスリット工程と、前記複数の狭巾シートを、それぞれロール状に巻き取り、電池素子のロール体とする巻取り工程とを有する、電池素子のロール体の製造方法である。
【0013】
本発明の製造方法によれば、樹脂シートを介して、負極集電体層、負極活性層、セパレータフィルム、正極活性層、正極集電体層が順次積層された積層構成が多数巻き回された任意の寸法の電池素子のロール体を効率よく、大量に生産することができる。
【0014】
本発明の製造方法では、前記スリット工程は、前記負極ロール状原反から繰り出されてくる前記負極シートと、前記正極ロール状原反から繰り出されてくる前記正極シートと、前記ロール状のセパレータフィルムから繰り出されてくるセパレータフィルムを、前記負極活性層と前記正極活性層との間にセパレータフィルムを挟んで対向するように重ね合わせた状態で、スリッタヘッドによって前記複数の狭巾シートに切断するようにし、また前記巻取り工程において、前記狭巾シートが所定回数または所定径まで巻き上がると、巻終端を切断するようにすることができる。
これにより任意の電池容量に合わせた電池素子のロール体を製造することができる。
【0015】
本発明の製造方法では、前記負極ロール状原反を準備する工程が、前記広巾長尺の第1の樹脂シート上に、前記負極集電体層と、前記負極活性層とを、この順に塗布形成し、前記正極ロール状原反を準備する工程が、前記広巾長尺の第2の樹脂シート上に、前記正極集電体層と、前記正極活性層とを、この順に塗布形成するようにするとよい。
塗布形成は、各層のペースト(塗工液)を樹脂シート上に、順次塗布して積層形成できるため、塗布巾、塗布長の制約が少なく、同じ積層構成を大量に生産するのに適している。
流動性のある半固体の電極活性層は、ノズルなどから樹脂シート上に供給することにより塗布形成を行うのに適している。必要により、光重合や可塑化、ゲル化により、樹脂シート上に電極活性層を固定化することができ、高温加熱で流動化したものを環境温度下で固定化することもできる。また、電解液の凝固点以下の温度にすることで、電極活性層を固定化してもよい。
【0016】
本発明の製造方法は、ロール体の少なくも一部、典型的には最外周面および最内周面に、前記負極集電体層が露出する負極集電体露出部、および前記正極集電体層が露出する正極集電体露出部を形成する工程をさらに有するものとすることができる。
この場合、前記負極集電体露出部に負極リードを、前記正極集電体露出部に正極リードを接続することで、他の電気部品等との電気的な接合を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、樹脂シートを介して、負極集電体層、負極活性層、セパレータフィルム、正極活性層、正極集電体層が順次積層された積層構成が多数巻き回された任意の寸法の電池素子のロール体を効率よく、大量に生産することができる。
また、各層のペースト(塗工液)を樹脂シート上に、順次塗布、乾燥させて積層形成することで、塗布巾、塗布長の制約が少なく、同じ積層構成を大量に生産するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の1つの実施形態によるロール体の模式図であって、(a)はロール体の全体を示す図、(b)はロール体の断面積層構造を示す図である。
【
図2】本発明の製造方法の1つの実施形態を説明するための工程フロー図である。
【
図3】本発明の製造方法の1つの実施形態におけるスリット工程を説明するための模式図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【
図4】本発明の製造方法の1つの実施形態における負極シートおよび正極シートの断面積層構成を示した模式図であって、(a)は負極シートと正極シートとセパレータフィルムを準備した状態を示す図、(b)は負極シートと正極シートとセパレータフィルを積層した状態を示す図、(c)は負極シートと正極シートとセパレータフィルムを複数積層した状態を示す図である。
【
図5】本発明の製造方法の1つの実施形態において集電体露出部を形成した場合の断面積層構造を示す模式図である。
【
図6】本発明の製造方法の1つの実施形態において集電体露出部にリードを接続した場合の断面積層構造を示す模式図である。
【
図7】本発明の1つの実施形態による電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の1つの実施形態によるロール体の模式図である。
図1(a)は、本発明の1つの実施形態によるロール体1の全体像を模式的に示す。
図1(b)は、ロール体1の部分的な積層構造を模式的に示す。
この実施形態による電池素子のロール体1は、長尺の樹脂シート21上に、負極集電体層22と、負極活性層23とが形成されてなる負極シート20と、長尺の樹脂シート上31に、正極集電体層32と、正極活性層33とが形成されてなる正極シート30と、セパレータフィルム4とを、負極活性層23と正極活性層33との間にセパレータフィルム4が挟まれるようにして、多数巻回したものである。
負極シート20と正極シート30はセパレータフィルム4を挟んで負極活性層23と正極活性層33が向かい合った状態で巻き回してあるため、負極シートと正極シートのそれぞれの樹脂シートに挟まれた領域は、
図1(b)に示すように、負極集電体層22、負極活性層23、セパレータフィルム4、正極活性層33、正極集電体層32が順次積層された積層構成となり、この積層構成が樹脂シート21、31により電気的に絶縁されて多数巻き回された電池素子のロール体1となる。
【0020】
樹脂シートとしては、例えば、ポリイミド、ポリエステル、及びポリプロピレン、ポリエチレ、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂等を使用することができる。これら樹脂シートは、絶縁性を有し、且つ加熱に対して安定性を有するものが好ましく、例えば、ポリイミドを好適に使用することができる。樹脂シートの厚みを50μm以下、好ましくは、25μm以下にすることが好ましい。
【0021】
負極集電体の大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。負極集電体の材質としては、例えば、ダイス鋼、金、白金、インジウム、ニッケル、銅、ステンレス鋼などを使用することができる。負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状などが挙げられる。
負極集電体の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ法、蒸着法、及びCVD法等が挙げられる。また、銅などの金属粉等に対して、溶剤、樹脂等を適宜混合することにより、ペーストを調製し、そのペーストを樹脂シートの上に塗布し、乾燥させることにより形成することもできる。
負極集電体の厚みとしては、例えば、5μm~500μm、好ましくは、10μm~50μmとすることができる。
【0022】
負極活性層は、負極活物質と電解液とを含有する半固体状の層である。負極活物質としては、例えば、リチウム、リチウム合金、インジウム、スズ、鉛、ケイ素、ケイ素酸化物、及び炭素材料、リチウム含有リン酸化物、具体例としては、Li3V2(PO4)3、Li3Fe2(PO4)3、Li4Ti5O12等が挙げられる。これらの負極活物質粒子のうちの1種のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
【0023】
負極活性層に用いる電解液は、例えば有機溶媒に電解質を溶解したものであってよく、特に制限はなく、従来公知のものから目的に応じて適宜選択することができる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等のエステル類や、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、置換テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ピランおよびその誘導体、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等のエーテル類や、3-メチル-2-オキサゾリジノン等の3置換-2-オキサゾリジノン類や、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。また、電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム、ホウフッ化リチウム、リンフッ化リチウム、塩化アルミン酸リチウム、ハロゲン化リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等を用いることができる。
負極活性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm~400μm、好ましくは0.5μm~200μm、より好ましくは1μm~50μmとすることができる。
【0024】
正極集電体層の形状、材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。正極集電体層は、例えば、ダイス鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン合金、銅、ニッケルなどを使用することができる。正極集電体層の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状などが挙げられる。
正極集電体層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ法、蒸着法、及びCVD法等が挙げられる。また、炭素粉末、金属粉等に対して、溶剤、樹脂等を適宜混合することにより、ペーストを調製し、そのペーストを樹脂シートの上に塗布し、乾燥させることにより形成することもできる。
正極集電体の厚みとしては、例えば、5μm~500μm、好ましくは、10μm~50μmとすることができる。
【0025】
正極活性層は、正極活物質と電解液とを含有する半固体状の層である。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、これら複合酸化物の一部を他の遷移金属で置換したもの、二酸化マンガン、五酸化バナジウムなどのような遷移金属化合物、硫化鉄などの遷移金属カルコゲン化合物を用いることができる。具体例としては、Li3V2(PO4)3、Li3Fe2(PO4)3、LiMnPO4、LiCoO2,LiNiO2、LiFePO4,LiCoPO4、LiNiPO4、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiMn2O4,LiNi0.5Mn1.5O4、Li4Ti5O12等が挙げられる。これらの正極活物質粒子のうちの1種のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
正極活性層に用いる電解液は、例えば有機溶媒に電解質を溶解したものであってよく、特に制限はなく、負極活性層に用いる電解液と同じものを用いることができ、従来公知のものから目的に応じて適宜選択することができる。
正極活性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm~400μm、好ましくは0.5μm~200μm、より好ましくは1μm~50μmとすることができる。
【0026】
長尺の樹脂シートに設けられた正極活性層および負極活性層は電極活物質粒子と電解液を含むため、例えば、粒子懸濁液、コロイド懸濁液、乳濁液、ゲル、又はミセルのような液相と固相との混合物である半固体の状態にすることができる。このため流動性のある半固体の電極活性層はノズルなどから樹脂シート上に供給することにより塗布形成を行うことができる。また必要により、光重合や可塑化、ゲル化により樹脂シート上に電極活性層を固定化することができ、高温加熱で流動化したものを環境温度下で固定化してもよいし、電解液の凝固点以下の温度にすることで固定化してもよい。
【0027】
樹脂シート上に電極活性層を形成する過程で液漏れや形状維持が困難な場合は、電極活性層にゲル化剤を添加することで流動性を保ちつつ、樹脂シート上に電極活性層を固定化しやすくすることができる。ゲル化剤は、架橋性高分子、高分子ゲル化剤、低分子ゲル化剤、および固体微粒子からなる群から選ばれる少なくとも一つとすることができる。ゲル化剤の添加によりイオン伝導度が低下することを防止するために、ゲル化剤として用いる固体微粒子として、カーボンブラックなどの導電性微粒子を用いることができる。
【0028】
本発明で用いるセパレータフィルムは、正極活性層と負極活性層の間に介在して、両電極活物質の接触に伴う短絡防止や電解液を浸透させ導電性を確保する役割を担っている。セパレータフィルムとしては、絶縁性で電解液を含浸しても十分な強度が得られるものであればよく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等からなる多孔性フィルムが好ましく、それぞれの単層、PE/PPの二層構造、PP/PE/PPの三層構造などを好適に用いることができる。
【0029】
次に、本発明の電池素子のロール体の製造方法の一例について説明する。
図2は本発明の製造方法の1つの実施形態について説明するための工程フロー図である。この実施形態の製造方法は、広巾長尺の樹脂シート21を準備し、負極集電体層22、少なくとも負極活物質と電解液を含む負極活性層23を順次積層形成した負極シート20が多数巻回された負極ロール状原反を準備する工程と、広巾長尺の樹脂シート31を、正極集電体層32、少なくとも正極活物質と電解液を含む正極活性層33を順次積層形成した正極シート30が多数巻回された正極ロール状原反を準備する工程と、巾広長尺のロール状のセパレータフィルムを準備する工程と、負極ロール状原反から繰り出されてくる負極シート20と、正極ロール状原反から繰り出されてくる正極シート30を、前記負極活性層23と正極活性層33との間にセパレータフィルム4が挟まれるように重ね合わせ、負極シート20とセパレータフィルム4と正極シート30とを重ね合わせた状態で、複数の狭巾シートにスリットするスリット工程と、を有し、複数の狭巾シートを、それぞれロール状に巻き取り、電池素子のロール体とする巻取り工程をさらに有するものである。
【0030】
図3は、本発明の製造方法の1つの実施形態におけるスリット工程を説明するための模式図である。(a)は斜視的に示した図、(b)は側面的に示した図である。
スリット工程において、負極ロール状原反から繰り出されてくる負極シート20と、正極ロール状原反から繰り出されてくる正極シート30とを、セパレータフィルム4を挟んで重ね合わせた状態で、例えば、ニップロール5で重ねて、スリッタヘッド6によって複数の狭巾シートに切断し、各狭巾シートをロール状に巻き取り、複数のロール体1とする。
スリット工程はスリッタ装置によって行われる。スリッタ装置は、ロール状の原反から繰り出されてくる巾広のシートを、スリッタヘッドによって複数の狭巾の状シートに切断し、各狭巾のシートを巻芯にロール状に巻き取る装置である。例えば、
図3(b)のように、狭巾のシートが所定回数または所定径まで巻き上がると、カッター機構71,72によって巻終端を切断した後、狭巾のロール状に巻き取られたロール体1を取り出すと共に、巻芯をスリッタ装置内に復帰させる巻芯回転機構81,82を有する。
【0031】
図4は、本発明の製造方法の1つの実施形態における負極シート20、セパレータフィルム4および正極シート30の積層構成を示した模式図である。
図4を用いて、本発明の製造方法の一例を説明すると、広巾長尺の樹脂シートを準備し、負極集電体層、負極活性層を順次積層形成して、負極シート20とする。
積層形成する方法は、例えば、各層の母材となる物質を、必要により溶剤、樹脂等と適宜混合することによりペーストを調製し、各層のペーストを樹脂シートの上に、例えばノズル方式、グラビア方式、スクリーン方式等の他の塗布方式で、順次、塗布し、乾燥させることにより負極シート20を形成する。
負極集電体の形成方法は、例えば、銅などの金属粉等に対して、溶剤、樹脂等を適宜混合することにより、ペーストを調製し、そのペーストを樹脂シートの上に塗布し、乾燥させることにより形成する方法とすることができる。塗布後、必要によりロールプレス等で加熱プレスしてもよい。
負極活性層の形成方法は、電極活物質粒子と電解液を含む半固体状のペーストをノズルなどから樹脂シート上に供給することにより塗布形成する方法とすることができる。
同様の方法で、正極を構成するための正極シート30を形成する。
セパレータフィルム4は、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等からなる従来公知のものから目的に応じて適宜選択することができる。
これにより
図4(a)に示すような積層構成を有する、負極シート20が多数巻回された負極ロール状原反と正極シート30が多数巻回された正極ロール状原反と、ロール状のセパレータフィルムを準備する。
【0032】
次にスリット装置の巻出機構に負極ロール状原反と正極ロール状原反とロール状のセパレータフィルムをセットし、負極ロール状原反から負極シート20を繰り出し、正極ロール状原反から正極シート30を繰り出し、ロール状のセパレータフィルムからセパレータフィルム4を繰り出す。負極ロール状原反から繰り出された負極シート20と、正極ロール状原反から繰り出された正極シート30と、ロール状のセパレータフィルムから繰り出されたセパレータフィルム4は、ニップロールでそれぞれの電極活性層が向い合った状態でセパレータフィルム4を挟んで重ねられ、
図4(b)に示すような積層構成となる。
【0033】
負極シート20と正極シート30とセパレータフィルム4はこの状態でスリッタヘッドによって複数の狭巾シートに切断し、ロール状に巻き取られることで、
図4(c)に示すように、負極シート20とセパレータフィルム4と正極シート30が複数積層された状態となる。この積層状態は、負極集電体層と正極集電体層とが樹脂シートで絶縁されたロール体となる。
【0034】
以上、本発明の製造方法について説明したが、本発明は、電池形状や用途により必要な工程を追加することができる。
【0035】
他には、ロール状に巻き取ったロール体1の少なくとも一部、典型的には最外周面および最内周面に、負極集電体層および正極集電体層が露出する集電体露出部を形成してよい(
図5)、負極集電体層の集電体露出部に負極リードを、正極集電体層の集電体露出部に正極リードを接続することで他の電気部品等との電気的な接合を行うことができる(
図6)。露出部の形成方法は、例えば、ショットブラスト、サンドブラスト、研磨、溶出、及び、切削などの方法を用いることができる
【0036】
上述したように作製されたロール体1は、例えば
図7に示すように電池ケース内に収納される。電池ケースとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、従来の電池で使用可能な公知のラミネートフィルムや筐体などが挙げられる。電池の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円筒型、角型、ボタン型、コイン型、扁平型などが挙げられる。
【符号の説明】
【0037】
1 ロール体
20 負極シート
21、31 樹脂シート
22 負極集電体層
23 負極活性層
4 セパレータフィルム
32 正極集電体層
33 正極活性層
5 ニップロール
6 スリッタヘッド
71、72 カッター機構
81.82 巻芯回転機構