(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099933
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】操作検出システム及び操作検出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20220628BHJP
A61B 5/377 20210101ALI20220628BHJP
【FI】
G06F3/01 515
A61B5/04 320M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214015
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 泰成
【テーマコード(参考)】
4C127
5E555
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127DD01
4C127GG11
5E555AA02
5E555AA11
5E555AA46
5E555BA29
5E555BA38
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5E555BC04
5E555BE16
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5E555DB53
5E555DC13
5E555DC21
5E555EA25
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザが意図した通りの非接触操作が可能な操作検出システム及び操作検出方法を提供する。
【解決手段】操作検出システム1は、空中に浮かぶ空中像を生成する空中像生成装置10と、ユーザから見て空中像生成装置10により生成される空中像と重なる位置で周期的に点滅する光を放射し、ユーザの眼に向けて光刺激を加える光刺激印加装置20と、ユーザの頭部に装着され、ユーザの視覚野の脳波を計測する脳波計30と、脳波計30に通信可能に接続され、脳波計30で計測された脳波の周波数成分からSSVEPが検出された場合に操作信号を出力する操作検出装置40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中に浮かぶ空中像を生成する空中像生成装置と、
ユーザから見て前記空中像生成装置により生成される空中像と重なる位置で周期的に点滅する光を放射し、ユーザの眼に向けて光刺激を加える光刺激印加装置と、
ユーザの頭部に装着され、ユーザの視覚野の脳波を計測する脳波計と、
前記脳波計に通信可能に接続され、前記脳波計で計測された脳波の周波数成分からSSVEPが検出された場合に操作信号を出力する操作検出装置と、
を備える操作検出システム。
【請求項2】
前記光刺激印加装置は、ユーザから見て前記空中像生成装置で生成される空中像の奥側又は手前側に配置されている、
請求項1に記載の操作検出システム。
【請求項3】
前記光刺激印加装置は、チェッカーパターン状に点滅する光を放射する、
請求項1又は2に記載の操作検出システム。
【請求項4】
前記操作検出装置は、前記脳波計で計測された脳波から一定時間幅の最新の波形を周期的に抽出し、抽出された波形に対してパワースペクトル解析を実行することで、前記脳波計で計測された脳波の周波数成分を取得する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の操作検出システム。
【請求項5】
前記操作検出装置は、前記脳波計で計測された脳波の周波数成分から同一周波数の前記SSVEPが一定時間継続して検出された場合に操作信号を出力する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の操作検出システム。
【請求項6】
前記空中像生成装置は、空中の異なる位置に複数の空中像を生成し、
前記光刺激印加装置は、ユーザから見て前記空中像生成装置により生成される各空中像とそれぞれ重なる位置で、互いに異なる周波数で周期的に点滅する光を放射し、
前記操作検出装置は、前記脳波計で計測された脳波の周波数成分から前記SSVEPが検出された場合に、前記SSVEPの周波数に関するデータを含む操作信号を出力する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の操作検出システム。
【請求項7】
ユーザが焦点を合わせて注視する対象である注視対象と、
ユーザから見て前記注視対象の手前側に配置され、前記注視対象と重なる位置で周期的に点滅する空中像を生成し、ユーザの眼に向けて光刺激を加える光刺激印加装置と、
ユーザの頭部に装着され、ユーザの視覚野の脳波を計測する脳波計と、
前記脳波計に通信可能に接続され、前記脳波計で計測された脳波の周波数成分からSSVEPが検出された場合に操作信号を出力する操作検出装置と、
を備える操作検出システム。
【請求項8】
空中に浮かぶ空中像を生成する空中像生成工程と、
ユーザから見て前記空中像生成工程で生成された空中像と重なる位置で周期的に点滅する光を放射し、ユーザの眼に向けて光刺激を加える光刺激印加工程と、
前記光刺激印加工程で光刺激を加えられたユーザの視覚野の脳波を計測する脳波測定工程と、
前記脳波測定工程で計測された脳波の周波数成分からSSVEPが検出された場合に操作信号を出力する操作信号出力工程と、
を含む操作検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作検出システム及び操作検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空中に浮かんで見える空中像を用いたインタラクション技術に注目が集まっている。この空中像に対して人間が何らかの操作を行うと、システムや機器が反応するように構成することで、非接触のインタラクションを実現できる。例えば、特許文献1には、空中像で位置が示された複数の注目点にユーザの手指を移動させるジェスチャー操作を検出する操作検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の操作検出装置では、空間中に設定された複数の注目点のそれぞれに物体が存在するか否かを検出し、その検出結果に基づきジェスチャー操作の有無を判定する。このため、ユーザが実体のない空中像に手や指を重ねる際に、奥行き方向の目測の誤りが必然的に生じてしまい、ユーザが意図した通りの操作が困難である。
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、ユーザが意図した通りの非接触操作が可能な操作検出システム及び操作検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る操作検出システムは、
空中に浮かぶ空中像を生成する空中像生成装置と、
ユーザから見て前記空中像生成装置により生成される空中像と重なる位置で周期的に点滅する光を放射し、ユーザの眼に向けて光刺激を加える光刺激印加装置と、
ユーザの頭部に装着され、ユーザの視覚野の脳波を計測する脳波計と、
前記脳波計に通信可能に接続され、前記脳波計で計測された脳波の周波数成分からSSVEPが検出された場合に操作信号を出力する操作検出装置と、
を備える。
【0007】
前記光刺激印加装置は、ユーザから見て前記空中像生成装置で生成される空中像の奥側又は手前側に配置されてもよい。
【0008】
前記光刺激印加装置は、チェッカーパターン状に点滅する光を放射してもよい。
【0009】
前記操作検出装置は、前記脳波計で計測された脳波から一定時間幅の最新の波形を周期的に抽出し、抽出された波形に対してパワースペクトル解析を実行することで、前記脳波計で計測された脳波の周波数成分を取得してもよい。
【0010】
前記操作検出装置は、前記脳波計で計測された脳波の周波数成分から同一周波数の前記SSVEPが一定時間継続して検出された場合に操作信号を出力してもよい。
【0011】
前記空中像生成装置は、空中の異なる位置に複数の空中像を生成し、
前記光刺激印加装置は、ユーザから見て前記空中像生成装置により生成される各空中像とそれぞれ重なる位置で、互いに異なる周波数で周期的に点滅する光を放射し、
前記操作検出装置は、前記脳波計で計測された脳波の周波数成分から前記SSVEPが検出された場合に、前記SSVEPの周波数に関するデータを含む操作信号を出力してもよい。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る操作検出システムは、
ユーザが焦点を合わせて注視する対象である注視対象と、
ユーザから見て前記注視対象の手前側に配置され、前記注視対象と重なる位置で周期的に点滅する空中像を生成し、ユーザの眼に向けて光刺激を加える光刺激印加装置と、
ユーザの頭部に装着され、ユーザの視覚野の脳波を計測する脳波計と、
前記脳波計に通信可能に接続され、前記脳波計で計測された脳波の周波数成分からSSVEPが検出された場合に操作信号を出力する操作検出装置と、
を備える。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係る操作検出方法は、
空中に浮かぶ空中像を生成する空中像生成工程と、
ユーザから見て前記空中像生成工程で生成された空中像と重なる位置で周期的に点滅する光を放射し、ユーザの眼に向けて光刺激を加える光刺激印加工程と、
前記光刺激印加工程で光刺激を加えられたユーザの視覚野の脳波を計測する脳波測定工程と、
前記脳波測定工程で計測された脳波の周波数成分からSSVEPが検出された場合に操作信号を出力する操作信号出力工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユーザが意図した通りの非接触操作が可能な操作検出システム及び操作検出方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る操作検出システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る光刺激印加装置の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る操作検出装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】(a)は、本発明の実施の形態1に係る脳波の時間波形の一例を示すグラフであり、(b)は、本発明の実施の形態1に係るパワースペクトル解析で得られた脳波の周波数成分の一例を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る操作検出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る操作検出システムの構成を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態3に係る操作検出システムの構成を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態3に係る空中像の一例を示す図である。
【
図9】(a)は、本発明の実施の形態3に係るテキスト入力装置のハードウェア構成を示すブロック図であり、(b)は、本発明の実施の形態3に係る画像データベースのデータテーブルの一例を示す図である。
【
図10】(a)、(b)は、いずれも本発明の実施の形態3に係る操作検出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】(a)、(b)は、いずれも実施例1における脳波のパワースペクトルを示すグラフである。
【
図12】実施例2における実験装置の構成を示す模式図である。
【
図13】(a)、(b)は、いずれも実施例2における脳波のパワースペクトルを示すグラフである。
【
図14】(a)、(b)は、いずれも実施例3における脳波のパワースペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る操作検出システム及び操作検出方法を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1~
図5を参照して、実施の形態1に係る操作検出システム及び視線検出方法を説明する。
図1は、実施の形態1に係る操作検出システム1の構成を示す図である。操作検出システム1は、ユーザの視線が一定時間継続して空中像に向いていることを検出した場合に、空中像に対するユーザの操作を検出するシステムである。操作検出システム1では、ユーザから見て空中像の奥側の位置からユーザの眼に向けて周期的な光刺激を加え、この状態で計測されたユーザの脳波に定常状態視覚誘発電位(Steady State Visual Evoked Potentials:SSVEP)が含まれる場合にユーザの視線が空中像に向いていることを検出する。
【0018】
SSVEPは、4Hz~60Hz程度の周波数で点滅する光刺激を被験者の眼に加えたとき、被験者の大脳皮質の視覚野で発生する光刺激の周波数と同一又はその整数倍の周波数の電位である。SSVEPは、被験者の視覚野の脳波を計測し、計測された脳波から周波数成分を抽出することで、その発生の有無を判別できる。
【0019】
操作検出システム1は、空中像を生成する空中像生成装置10と、空中像生成装置10により生成される空中像と重なる位置で周期的に点滅する光刺激をユーザの眼に加える光刺激印加装置20と、ユーザの頭部に装着され、ユーザの脳波を計測する脳波計30と、脳波計30に接続され、計測された脳波の周波数成分からSSVEPが一定時間継続して検出された場合に操作信号を出力する操作検出装置40と、を備える。
【0020】
空中像生成装置10は、何もない空中に空中像を生成する装置である。空中像は、ユーザが注視して焦点を合わせる注視対象の一例である。空中像生成装置10は、空中像の元となる二次元画像を表示するディスプレイ11と、ディスプレイ11の正面側に配置され、ディスプレイ11と面対称の位置にディスプレイ11の画像に基づく空中像を生成する透明なクロスミラーアレイ12と、を備える。
【0021】
ディスプレイ11は、文字、数字、記号又は図形を含む各種の画像を表示する装置であり、例えば、液晶ディスプレイである。
【0022】
クロスミラーアレイ12は、内部にマイクロオーダーのピッチで配置され、互いに直交する微細なミラーを備える透明な板状部材である。クロスミラーアレイ12は、入射した光を直交するミラーで2回反射することで、ディスプレイ11と面対称の位置に空中像を生成する。クロスミラーアレイ12は、透明であるため、ユーザから見て光刺激印加装置20がクロスミラーアレイ12の奥側に配置されたとしても、光刺激印加装置20からクロスミラーアレイ12の手前側への光の伝搬を妨げない。
【0023】
図2は、実施の形態1に係る光刺激印加装置20の構成を示す図である。光刺激印加装置20は、ユーザに向けて周期的な光刺激を加える。光刺激印加装置20は、光源21と、光源21から放射された光を散乱させる光拡散素子22と、光拡散素子22で散乱された光を所定のパターンで透過させる透過パネル23と、光源21に接続され、光源21の点滅を制御する信号を発生する信号発生器24と、を備える。
【0024】
光源21は、例えば、LED(light emitting diode)である。光源21は、信号発生器24からの通電により発光する。
【0025】
光拡散素子22は、例えば、光拡散シート、光拡散フィルムである。光拡散素子22は、光源21からの光を均質に拡散させる板状の光学素子である。
【0026】
透過パネル23は、光拡散素子22で散乱された光を所定のパターンで透過させる板状の部材である。透過パネル23は、例えば、透明なガラス板に周期的なパターンがエッチングされたフォトマスクである。透過パネル23は、例えば、チェッカーパターンを備え、チェッカーパターン状に光を透過する。チェッカーパターンは、光を透過させる透過部分と光を遮る遮光部分とが同一寸法の正方形のマスを構成し、透過部分と遮光部分とが縦横に交互に配置されたパターンである。各マスの寸法は、例えば、1.0mm~5.0mmの範囲内である。
【0027】
信号発生器24は、予め設定された点滅周波数で光源21が点滅するように光源21へ間欠的に電流を供給する。光刺激の点滅周波数は、4Hz~60Hz、好ましくは10Hz~40Hzである。点滅周波数は、後述する操作検出処理を考慮すると、整数値であることが好ましい。
【0028】
光刺激の強度は、脳波の計測やSSVEPの検出を考慮すると強いほどよいが、他方で光刺激の強度が強すぎると、ユーザにちらつきによる不快感を誘発し、光過敏性発作や光てんかんを引き起こすおそれもある。このため、光刺激の強度は、ユーザが不快に感じることなく光刺激を見続けられる程度に設定するとよい。なお、光刺激の強度を設定する際には、各ユーザの光に対する感受性や照明のような周囲環境の影響を考慮する必要もある。
【0029】
図1に戻り、脳波計30は、ユーザの脳波を計測する装置である。脳波計30は、ユーザの頭部に装着される一対の電極31と、一対の電極31及び操作検出装置40に接続され、一対の電極31からの電気信号を増幅すると共に、増幅した電気信号(脳波)を操作検出装置40に送信する脳波計本体32と、を備える。
【0030】
電極31は、ユーザの視覚野に対応する頭部の位置に貼り付けられ、視覚野からの電気信号を取得する。貼り付け位置は、国際的な共通の取り決めである国際10-20法に従って設定される。国際10-20法では、被験者の頭皮を等間隔で区切り、合計21個の貼り付け位置が設定されている。電極31の一方は、例えば、国際10-20法のOzに貼り付けられ、電極31の他方はPzに貼り付けられる。これにより、Oz-Pzにおける電位差の変動を観察する双極導出を行う。
【0031】
操作検出装置40は、脳波計30で計測された脳波の周波数成分からSSVEPを検出した場合に、ユーザの視線が空中像生成装置10により生成された空中像に向けていると判定し、操作信号を出力する。操作検出装置40は、例えば、汎用コンピュータである。
【0032】
図3は、実施の形態1に係る操作検出装置40のハードウェア構成を示すブロック図である。操作検出装置40は、操作部41と、表示部42と、通信部43と、記憶部44と、制御部45と、を備える。操作検出装置40の各部は、内部バス(図示せず)を介して互いに通信可能に接続されている。
【0033】
操作部41は、ユーザの指示を受け付け、受け付けた操作に対応する信号を制御部45に供給する。操作部41は、例えば、マウス、キーボードを備える。操作部41は、例えば、操作検出処理を開始させたり停止させたりする旨のユーザの指示を受け付ける。
【0034】
表示部42は、制御部45から供給される画像データに基づいて、操作検出装置40を操作するユーザに向けて各種の画像を表示する。表示部42は、例えば、脳波の時間波形及びパワースペクトルを表示する。
【0035】
通信部43は、脳波計30及びその他の外部機器と通信可能に接続されるインターフェースである。
【0036】
記憶部44は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブを備える。記憶部44は、制御部45に実行されるプログラムや各種のデータ、例えば、後述する脳波の抽出周期、脳波抽出時の時間幅、SSVEPの検出継続時間に関するデータを記憶する。また、記憶部44は、制御部45が処理を実行するためのワークメモリとして機能する。
【0037】
制御部45は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを備え、操作検出装置40の各部の制御を行う。制御部45は、記憶部44に記憶されているプログラムを実行することにより、
図5の操作検出処理を実行する。制御部45は、機能的には、取得部451と、抽出部452と、パワースペクトル解析部453と、判定部454と、を備える。
【0038】
取得部451は、脳波計30から脳波に関するデータを取得し、記憶部44に記憶させる。
【0039】
抽出部452は、取得部451で取得した脳波データから予め設定された時間幅(例えば、0.5秒間~1秒間の範囲内、好ましくは0.5秒間)の波形データを抽出する。具体的には、抽出部452は、脳波の取得開始時点又は前回脳波を抽出した時点から抽出周期が経過したかどうかを判定する。そして、脳波の取得開始時点又は前回脳波を抽出した時点から抽出周期が経過している場合に、
図4(a)に示すように、取得部451で取得した脳波データから予め設定された時間幅Δtの最新の波形データを抽出する。最新の波形データは、波形の抽出時点tから時間幅Δtだけ前の時点から、波形の抽出時点tまでの波形データである。なお、抽出周期は、時間幅Δtよりも長く設定されてもよいが、時間幅Δtと同一であることが好ましい。
【0040】
図3に戻り、パワースペクトル解析部453は、抽出部452で抽出された脳波の時間波形に対してFFT(Fast Fourier Transform)を実行することにより、周波数バンド幅毎のパワーを求めるパワースペクトル解析を実行する。
図4(a)に示す脳波の時間波形から抽出された時間幅Δtの波形に対してパワースペクトル解析を実行すると、
図4(b)に示すようにパワースペクトルが得られる。
【0041】
再び
図3に戻り、判定部454は、パワースペクトル解析部453で得られた脳波の周波数成分からSSVEPを検出し、SSVEPの検出が一定時間(例えば、1秒間)継続している場合に外部機器に操作信号を出力する。操作信号は、例えば、外部機器の電源をオンオフする操作信号、外部機器の扉を開閉する操作信号である。
以上が、操作検出システム1の構成である。
【0042】
(操作検出処理)
以下、
図5のフローチャートを参照して、実施の形態1に係る操作検出装置40が実行する操作検出処理を説明する。操作検出処理は、ユーザの脳波の周波数成分からSSVEPが一定時間継続して検出された場合に、外部機器に操作信号を出力する処理である。操作検出処理は、ユーザが操作検出装置40を起動した時点で開始される。
【0043】
まず、取得部451は、脳波計本体32で計測された脳波に関するデータの取得を開始する(ステップS11)。
【0044】
次に、抽出部452は、脳波の取得開始時点又は前回脳波を抽出した時点から予め設定された脳波の抽出周期が経過すると、ステップS11の処理で取得した脳波データから予め設定された時間幅の最新の波形データを抽出する(ステップS12)。
【0045】
次に、パワースペクトル解析部453は、ステップS12の処理で抽出された脳波の波形データに対してパワースペクトル解析を実行する(ステップS13)。
【0046】
次に、判定部454は、ステップS13の処理で得られた脳波の周波数成分からSSVEPが検出されたかどうかを判定する(ステップS14)。判定部454は、
図4(b)に示すように、例えば、脳波の周波数成分に光刺激の周波数と同一又は整数倍の周波数(同期周波数)が存在し、かつ、当該周波数のパワーが閾値以上である場合にSSVEPを検出すればよい。
【0047】
脳波の周波数成分からSSVEPが検出されたと判定された場合(ステップS14;Yes)、処理をステップS15に移動する。他方、脳波の周波数成分からSSVEPが検出されていないと判定された場合(ステップS14;No)、抽出周期が経過するまで処理を待機し、処理をステップS12に戻す。
【0048】
ステップS14の処理でYesの場合、判定部454は、最初にSSVEPを検出した時点から一定時間(例えば、1秒間)継続してSSVEPを検出したかどうかを判定する(ステップS15)。判定部454は、例えば、SSVEPを連続して検出した回数をカウントすることで、一定時間継続してSSVEPを検出したかどうかを判別すればよい。
【0049】
SSVEPの検出を一定時間継続したと判定された場合(ステップS15;Yes)、判定部454は、外部機器に向けて操作信号を出力し(ステップS16)、処理をステップS12に戻す。他方、SSVEPの検出を一定時間継続していないと判定された場合(ステップS15;No)、抽出周期が経過するまで処理を待機し、処理をステップS12に戻す。
以上が、操作検出処理の流れである。
【0050】
以上説明したように、実施の形態1に係る操作検出システム1は、空中に浮かぶ空中像を生成する空中像生成装置10と、ユーザから見て空中像生成装置10により生成される空中像と重なる位置で周期的に点滅する光を放射し、ユーザの眼に向けて光刺激を加える光刺激印加装置20と、ユーザの頭部に装着され、ユーザの視覚野の脳波を計測する脳波計30と、脳波計30に通信可能に接続され、脳波計30で計測された脳波の周波数成分からSSVEPが検出された場合に操作信号を出力する操作検出装置40と、を備える。このため、ユーザが空中像に一定時間継続して視線を向けるだけで、ユーザの操作を検出でき、操作検出システム1に接続された外部機器を非接触で操作できる。また、外部機器の操作の際にユーザのジェスチャー操作が不要であるため、肢体不自由者による操作も容易である。
【0051】
また、実施の形態1に係る操作検出システム1では、光刺激印加装置20がユーザから見て空中像生成装置10で生成される空中像の奥側に配置されている。このため、ユーザは光刺激に焦点を合わせる必要がなく、光刺激を見続けることによる疲労やストレスを低減できる。
【0052】
(実施の形態2)
図6を参照して、実施の形態2に係る操作検出システム1及び操作検出方法を説明する。実施の形態1に係る操作検出システム1では、ユーザから見て空中像の奥側からユーザの眼に光刺激を加えていたが、実施の形態2に係る操作検出システム1では、ユーザから見て表示装置10Aの手前側から光刺激を加えている。以下、両者の異なる点を中心に説明する。
【0053】
図6は、実施の形態2に係る操作検出システム1の構成を示す図である。操作検出システム1は、空中像生成装置10の代わりにユーザが焦点を合わせる画像を表示する表示装置10Aを備える。表示装置10Aは、例えば、液晶ディスプレイである。表示装置10Aが表示する画像は、ユーザが焦点を合わせて注視する注視対象の一例である。
【0054】
光刺激印加装置20は、透過パネル23で生成された周期的なパターン、例えば、チェッカーパターンの光に基づいて空中像を生成するクロスミラーアレイ25をさらに備える。クロスミラーアレイ25は、クロスミラーアレイ12と同一又は同等の構成を備え、ユーザから見て表示装置10Aの手前側に配置され、表示装置10Aと重なる位置で周期的に点滅する空中像を生成し、ユーザの眼に光刺激を印加する。
以上が、操作検出システム1の構成である。
【0055】
以上説明したように、実施の形態2に係る操作検出システム1は、表示装置10Aと、ユーザから見て表示装置10Aの手前側に配置され、表示装置10Aと重なる位置で周期的に点滅する空中像を生成し、ユーザの眼に向けて周期的な光刺激を加える光刺激印加装置20と、を備える。このため、ユーザが焦点を合わせて注視する注視対象を任意に選択できる。また、光刺激印加装置20が表示装置10Aの手前側にあるため、操作検出システム1をコンパクトに構成できる。
【0056】
(実施の形態3)
次に、
図7~
図10を参照して、実施の形態3に係る操作検出システム1及び操作検出方法を説明する。実施の形態1に係る操作検出システム1では、1つの空中像に向かうユーザの視線を検出していたが、実施の形態3に係る操作検出システム1では、複数の空中像のいずれにユーザの視線が向かっているかを検出する。以下、両者の異なる点を中心に説明する。
【0057】
図7は、実施の形態3に係る操作検出システム1の構成を示す図であり、
図8は、実施の形態3に係る空中像生成装置10が生成する空中像の一例を示す図である。
図7では、図面の見やすさを考慮して、空中像生成装置10が生成する空中像や光刺激印加装置20の数を簡略化して図示している。
【0058】
空中像生成装置10は、
図8に示すように、文字A、B、C、…を示す複数の空中像を並べて配置する。操作検出システム1は、複数の光刺激印加装置20を備え、各光刺激印加装置20は、ユーザから見て各空中像と重なる位置で周期的に点滅する光刺激をユーザの眼に加える。各光刺激印加装置20は、ユーザが視線を向けた空中像を識別するため、空中像毎に異なる値の周波数でユーザに光刺激を印加する。例えば、文字Aの背後の光刺激印加装置20は、周波数7Hzの光刺激をユーザに印加し、文字Bの背後の光刺激印加装置20は、周波数11Hzの光刺激をユーザに印加する。空中像毎に重ね合わせる光刺激の周波数は、テキスト入力装置50における計算を考慮すると、いずれも素数にすることが好ましく、7以上の素数であることがより好ましい。
【0059】
操作検出システム1は、空中像生成装置10及び操作検出装置40に接続されるテキスト入力装置50をさらに備える。操作検出装置40は、脳波の周波数成分からSSVEPが一定時間継続して検出された場合にSSVEPの周波数に関するデータを含む操作信号をテキスト入力装置50に向けて出力する。テキスト入力装置50は、空中像生成装置10に文字を含む複数の空中像を生成させると共に、操作検出装置40からの操作信号に含まれる周波数に関するデータに基づいてユーザが選択した文字を判別し、判別された文字をテキストに入力する。
【0060】
図9(a)は、実施の形態3に係るテキスト入力装置50のハードウェア構成を示すブロック図である。テキスト入力装置50は、例えば、汎用コンピュータであり、操作部51と、表示部52と、通信部53と、記憶部54と、制御部55と、を備える。テキスト入力装置50の各部は、内部バス(図示せず)を介して互いに通信可能に接続されている。
【0061】
操作部51は、ユーザの指示を受け付け、受け付けた操作に対応する信号を制御部55に供給する。操作部51は、例えば、マウス、キーボードを備える。操作部51は、ユーザに注視させる空中像を選択する管理者の操作を受け付ける。
【0062】
表示部52は、制御部55から供給される画像データに基づいて、テキスト入力装置50を管理する管理者に向けて各種の画像を表示する。表示部52は、例えば、ユーザが選択した文字が表示される。
【0063】
通信部53は、空中像生成装置10のディスプレイ11及び操作検出装置40の通信部43と通信可能に接続されるインターフェースである。
【0064】
記憶部54は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブを備える。記憶部54は、制御部55に実行されるプログラムや各種のデータ、例えば、空中像の画像データを記憶する。また、記憶部54は、制御部55が処理を実行するためのワークメモリとして機能する。さらに、記憶部54は、画像データベース541を記憶する。
【0065】
図9(b)は、実施の形態3に係る画像データベース541のデータテーブルの一例を示す図である。画像データベース541では、文字A、B、C、…と、各文字A、B、C、…の画像データと、各文字A、B、C、…の空中像に対応する光刺激印加装置20からユーザの眼に印加される光刺激の周波数7Hz、11Hz、13Hz、…とを対応付けて記憶する。なお、画像データベース541には、管理者により各光刺激印加装置20に設定された周波数が予め記憶させられるものとする。
【0066】
制御部55は、CPUのようなプロセッサを備え、テキスト入力装置50の各部の制御を行う。制御部55は、記憶部54に記憶されているプログラムを実行することにより、
図10の操作検出処理を実行する。制御部55は、機能的には、空中像生成部551と、取得部552と、判定部553と、出力部554と、を備える。
【0067】
空中像生成部551は、画像データベース541に記憶された画像データを空中像生成装置10に送信し、空中像生成装置10に空中像を生成させる。具体的には、操作部51が受け付けたユーザの指示に基づいて、ディスプレイ11に表示させる画像に関する画像データ、例えば、文字A、B、C、…に関する画像データを記憶部54から読み出し、当該画像データを各光刺激印加装置20の並びに合わせたルールで並べ、ディスプレイ11に向けて送信すればよい。
【0068】
取得部552は、操作検出装置40から出力された周波数に関するデータを含む操作信号を取得する。
【0069】
判定部553は、画像データベース541を参照して、取得部552で取得された操作信号に含まれる周波数に関するデータに基づいて、ユーザが空中像に表示されたどの文字を選択したかを判定する。例えば、
図8の画像データベース541を参照するとして、操作信号に含まれる周波数に関するデータが11Hzを示す場合、ユーザが文字Bを選択したと判定する。
【0070】
出力部554は、判定部553でユーザが選択したと判定された文字をテキストに追加し、更新されたテキストを表示するように表示部52の表示を更新する。
以上が、操作検出システム1の構成である。
【0071】
(操作検出処理)
以下、
図10のフローチャートを参照して、実施の形態3に係る操作検出装置40及びテキスト入力装置50が実行する操作検出処理を説明する。操作検出処理は、ユーザが操作検出装置40及びテキスト入力装置50を起動した時点で開始される。
【0072】
図10(b)を参照して、テキスト入力装置50が実行する操作検出処理の流れを説明する。まず、空中像生成部551は、ユーザの指示に基づいて空中像生成装置10に複数の空中像を生成させ、空中像生成装置10に空中像を生成させたことを操作検出装置40に通知する(ステップS21)。
【0073】
次に、
図10(a)を参照して、操作検出装置40が実行する操作検出処理を説明する。操作検出装置40は、空中像生成装置10が空中像を生成したことを検知すると、ステップS11~S14の処理を順番に実行する。そして、ステップS14の処理でYesの場合、判定部553は、検出したSSVEPの周波数に関するデータを含む操作信号を出力する(ステップS15A)。
【0074】
再び
図10(b)を参照して、テキスト入力装置50が実行する操作検出処理の流れを説明する。取得部552は、操作検出装置40からの操作信号を取得する(ステップS22)。
【0075】
次に、判定部553は、記憶部54の画像データベース541を参照して、ステップS22の処理で取得された操作信号に含まれる周波数に関するデータに基づいて、ユーザが空中像に表示されたどの文字を選択したかを判定する(ステップS23)。
【0076】
次に、出力部554は、ステップS23の処理でユーザが選択したと判定された文字をテキストに入力し、表示部52の表示を更新し(ステップS24)、処理をステップS21に戻す。
以上が、操作検出処理の流れである。
【0077】
以上説明したように、実施の形態3に係る操作検出システム1は、空中の異なる位置に複数の空中像を生成する空中像生成装置10と、ユーザから見て空中像生成装置10により生成される各空中像とそれぞれ重なる位置で、互いに異なる周波数で周期的に点滅する光を放射する光刺激印加装置20と、を備える。このため、ユーザが複数の空中像のうちどの空中像に視線を向けているかを検出できる。
【0078】
本発明は上記実施の形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0079】
(変形例)
上記実施の形態では、光刺激印加装置20がユーザから見て空中像の奥側からユーザに光刺激を加えていたが、本発明はこれに限られない。例えば、ユーザから見て空中像の手前側から光刺激を加えてもよく、空中像と同じ位置から光刺激を加えてもよい。この場合、ユーザによる空中像の注視を妨げることがないように、光刺激印加装置20をできるだけコンパクトに構成することが好ましい。
【0080】
上記実施の形態では、光刺激印加装置20から放射される光がチェッカーパターンであったが、本発明はこれに限られない。光刺激印加装置20から放射される光は、ユーザの視覚野にSSVEPを誘発することができれば、他のパターンであってもよく、例えば、単なる点であってもよい。
【0081】
上記実施の形態では、光源21は信号発生器24で設定された周波数でオンオフする電流より点滅していたが、本発明はこれに限られない。例えば、信号発生器24と操作検出装置40とを通信可能に接続しておき、操作検出装置40からの信号に基づいて信号発生器24で設定される周波数が調整されるように構成してもよい。
【0082】
上記実施の形態では、脳波計30と操作検出装置40とはケーブルを介して互いに接続されていたが、本発明はこれに限られない。脳波計30と操作検出装置40とは、インターネットのような通信回線を介して接続されてもよく、近距離無線通信技術を利用して接続されてもよい。
【0083】
上記実施の形態2では、表示装置10Aの画像をユーザに注視させていたが、本発明はこれに限られない。例えば、ポスター、看板をユーザに注視させてもよい。
【0084】
上記実施の形態3では、空中像生成装置10が複数の空中像を生成し、複数の光刺激印加装置20が各空中像と重なる位置でユーザに向けて光刺激を印加していたが、本発明はこれに限られない。例えば、各空中像はそれぞれ別個の空中像生成装置10が生成してもよい。また、一つの光刺激印加装置20から各空中像に対応する別個の光刺激をユーザの眼に向けて印加するように構成してもよい。
【0085】
上記実施の形態3では、操作検出装置40がSSVEPの検出が一定時間継続しているかどうかを判定したが、本発明はこれに限られない。例えば、操作検出装置40がSSVEPを検出すると、テキスト入力装置50に向けて操作信号を出力し、テキスト入力装置50が操作信号を一定時間継続して取得した場合に、ユーザによる文字入力操作がなされたと判定してもよい。
【0086】
上記実施の形態3では、操作検出装置40とテキスト入力装置50とが別体であり、両者が通信可能に接続されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、操作検出装置40及びテキスト入力装置50の機能を一つのコンピュータで実現してもよい。
【0087】
上記実施の形態3では、文字を選択して入力する場合を例に説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、数字、記号又は図形を選択して入力するように構成してもよい。
【0088】
上記実施の形態では、注視対象に向かうユーザの視線が検出することで、外部機器の電源のオンオフを実行したり、テキスト入力を実行したりしていたが、本発明はこれに限られない。注視対象に向かうユーザの視線が検出することで任意の機器を操作することが可能であり、例えば、拡張現実におけるインタラクションに適用してもよい。
【0089】
上記実施の形態では、操作検出装置40及びテキスト入力装置50の記憶部44、54に各種データが記憶されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各種データは、その全部又は一部が通信ネットワークを介して外部のサーバやコンピュータに記憶されていてもよい。
【0090】
上記実施の形態では、操作検出装置40及びテキスト入力装置50は、それぞれ記憶部44、54に記憶されたプログラムに基づいて動作していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、プログラムにより実現された機能的な構成をハードウェアにより実現してもよい。
【0091】
上記実施の形態では、操作検出装置40及びテキスト入力装置50は、例えば、汎用コンピュータであったが、本発明はこれに限られない。例えば、操作検出装置40及びテキスト入力装置50は、クラウド上に設けられたコンピュータで実現してもよい。
【0092】
上記実施の形態では、操作検出装置40及びテキスト入力装置50が実行する処理は、上述の物理的な構成を備える装置が記憶部44、54に記憶されたプログラムを実行することによって実現されていたが、本発明は、プログラムとして実現されてもよく、そのプログラムが記録された記憶媒体として実現されてもよい。
【0093】
また、上述の処理動作を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical Disk)のようなコンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理動作を実行する装置を構成してもよい。
【0094】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【0095】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
(実施例1)
実施例1では、被験者が空中像を注視している際に、焦点外にある背景位置からの周期的な光刺激により被験者の視覚野にSSVEPが誘発されるかどうかを検証した。
【0097】
実施例1における実験装置は、実施の形態1に係る操作検出システム1と同一又は同等の構成を備える。実験装置では、液晶ディスプレイから表示した文字を、クロスミラーアレイ(Crossed Mirror Array:CMA)を通すことで空中像として投影した。また、被験者から見て空中像の奥側20cmの位置に光刺激印加装置20を設置し、光刺激印加装置20からチェッカーパターン状に緑色の光を周期的に点滅させた。光刺激印加装置20は、緑色LEDから放射される光の点滅周波数を信号発生器24で制御し、LEDからの光を散乱体及びチェッカーパターン(2.8mm周期)のフォトマスクに通すことで、緑色の光をチェッカーパターン状に点滅させた。
【0098】
被験者は、空中像から60cm離れた位置に着席し、投影される空中像を注視した。被験者が空中像の文字を注視する間、14Hz又は30Hzの光刺激を空中像の背後で12秒間点滅させ、その後10秒間休憩するという試行を6試行実施した。このとき、被験者には、国際10-20法におけるOz及びPzの位置に電極を貼り付け、脳波計を用いて脳波を計測した。脳波計で計測された12秒間の脳波から、前半2秒間のデータをカットし、残りの10秒間のデータをパワースペクトル解析し、脳波の周波数成分にSSVEPが見られるかどうかを確認した。
【0099】
以下に実験結果を示す。
図11(a)は、光刺激の周波数が14Hzの場合の脳波のパワースペクトルを示すグラフであり、
図11(b)は、光刺激の周波数が30Hzの場合の脳波のパワースペクトルを示すグラフである。
図11(a)の点線で囲んだ領域は、SSVEPの誘発が顕著に表れている部分である。光刺激の周波数が14Hzの場合において被験者の脳波からSSVEPを検出できた。被験者が注視していた空中像の背景からの光刺激でも被験者の視覚野にSSVEPが発生することが確認できた。光刺激は被験者から見て焦点外であり、被験者が直接光刺激を注視する場合に比べると、光刺激による被験者への負荷を低減できることも確認できた。
【0100】
(実施例2)
実施例2では、被験者に周期的に点滅する空中像を投影し、被験者が空中像を注視することで空中像の光刺激により被験者の視覚野にSSVEPが誘発されるかどうか検証を行った。
【0101】
図12は、実施例2における実験装置の模式図である。実験装置では、緑色のLEDを光源とした光刺激印加装置から出力した光のチェッカーパターンを、CMAを通して空中像として投影した。被験者は、表示される空中像から60cm離れた位置に着席し、周期的に点滅する空中像を注視した。その他の条件は、実施例1の条件と同一である。
【0102】
以下、実験結果を示す。
図13(a)は、光刺激の周波数が14Hzの場合の脳波のパワースペクトルを示すグラフであり、
図13(b)は、光刺激の周波数が30Hzの場合の脳波のパワースペクトルを示すグラフである。
図13(a)、(b)の点線で囲んだ領域は、SSVEPの誘発が顕著に表れている部分である。光刺激の周波数が14Hzの場合及び30Hzの場合の両方で、被験者にSSVEPが発生することが確認できた。以上から、周期的に点滅する空中像を注視することで、被験者の視覚野にSSVEPを誘発できることを確認できた。
【0103】
(実施例3)
実施例3は、実施例2における実験結果を踏まえ、被験者が背景の画像を注視しているときに焦点外で周期的に点滅する空中像の光刺激により被験者の視覚野にSSVEPが誘発されるかどうか検証を行った。
【0104】
実施例3における実験装置は、実施の形態2に係る操作検出システム1と同一又は同等の構成を備える。実験装置では、緑色のLEDを光源とした光刺激印加装置から出力した光のチェッカーパターンを、CMAを通して空中像として空中に投影した。被験者から観察して空中像の奥側20cmの位置に液晶ディスプレイを設置した。被験者は、表示される空中像から60cm離れた位置に着席し、奥側にある液晶ディスプレイに表示された文字に焦点を合わせて注視した。その他の条件は、実施例1の条件と同一である。
【0105】
以下に実験結果を示す。
図14(a)は、光刺激の周波数が14Hzの場合の脳波のパワースペクトルを示すグラフであり、
図14(b)は、光刺激の周波数が30Hzの場合の脳波のパワースペクトルを示すグラフである。
図14(a)、(b)の点線で囲んだ領域は、SSVEPの誘発が顕著に表れている部分である。周波数が14Hzの場合及び30Hzの場合の両方で、被験者にSSVEPが発生することが確認できた。以上から、焦点の手元側に位置する空中像による光刺激でも被験者の視覚野にSSVEPを誘発できることを確認できた。
【符号の説明】
【0106】
1 操作検出システム
10 空中像生成装置
10A 表示装置
11 ディスプレイ
12 クロスミラーアレイ
20 光刺激印加装置
21 光源
22 光拡散素子
23 透過パネル
24 信号発生器
25 クロスミラーアレイ
30 脳波計
31 電極
32 脳波計本体
40 操作検出装置
41 操作部
42 表示部
43 通信部
44 記憶部
45 制御部
451 取得部
452 抽出部
453 パワースペクトル解析部
454 判定部
50 テキスト入力装置
51 操作部
52 表示部
53 通信部
54 記憶部
541 画像データベース
55 制御部
551 空中像生成部
552 取得部
553 判定部
554 出力部