(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099949
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】金属膜のALD装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/14 20060101AFI20220628BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C23C16/14
H05H1/46 L
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214038
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】318004501
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブコーティングス
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英児
(72)【発明者】
【氏名】坂本 仁志
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA05
2G084BB27
2G084BB29
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD25
2G084FF02
2G084FF13
4K030AA01
4K030AA03
4K030BA01
4K030EA01
4K030EA05
4K030FA17
4K030JA03
4K030JA05
4K030JA06
(57)【要約】
【課題】 固体金属材料を用いて金属膜を形成するALD装置を提供すること。
【解決手段】 ALD装置(10A,10B)は、処理ガス源(30,31)と連結され、反応容器(20)に供給される第1前駆体を生成する第1前駆体生成部(50A,50B)と、還元ガス源と前記反応容器とに連結され、反応容器に供給される第2前駆体を生成する第2前駆体生成部(60)と、を有する。第1前駆体生成部は、第1プラズマ生成手段(52)により励起される第1プラズマ(P1)によりターゲット(53)をエッチングして、金属成分を含む化合物ガスを第1前駆体として供給する。第2前駆体生成部は、第2プラズマ生成手段(64)により励起される第2プラズマ(P2)中の還元ガス成分のラジカルを、第2前駆体として供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ALDサイクルを実施するための第1前駆体及び第2前駆体が交互に充満されて、加工対象物に金属膜を形成する反応容器と、
処理ガス源と、
還元ガス源と、
前記処理ガス源と連結され、前記反応容器に供給される前記第1前駆体を生成する第1前駆体生成部と、
前記還元ガス源と連結され、前記反応容器に供給される前記第2前駆体を生成する第2前駆体生成部と、
を有し、
前記第1前駆体生成部は、第1プラズマ生成手段と、金属成分を含むターゲットとを、前記反応容器外に含み、前記処理ガス源からの処理ガスを前記第1プラズマ生成手段により励起して得られた第1プラズマにより前記ターゲットをエッチングして、前記金属成分を含む化合物ガスを生成し、前記化合物ガスを前記第1前駆体として前記反応容器に供給し、
前記第2前駆体生成部は、第2プラズマ生成手段を前記反応容器外に含み、前記還元ガス源からの還元ガスを前記第2プラズマ生成手段により励起して得られた第2プラズマ中の還元ガス成分のラジカルを、前記第2前駆体として前記反応容器に供給する金属膜のALD装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1前駆体生成部は、前記処理ガス源と前記反応容器との間を連結し、非金属部分を含む管路を有し、
前記第1プラズマ生成手段は、前記管路の前記非金属部分の周囲に配置され、
前記ターゲットは、前記管路の長手方向に沿って、前記管路の前記非金属部分の内側に配置される棒状ターゲットである金属膜のALD装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1前駆体生成部は、前記処理ガス源と前記反応容器との間を連結し、非金属部分を含む管路を有し、
前記第1プラズマ生成手段は、前記管路の前記非金属部分の周囲に配置され、
前記管路内の前記第1プラズマと前記反応容器との間隔は、前記第1プラズマ中のラジカルの寿命と前記処理ガスの流速との積の値以上である金属膜のALD装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記処理ガス及び前記還元ガスは、ハロゲンガスであり、
前記ターゲットは、前記金属膜と同一の金属であり、
前記第1前駆体は、前記金属成分を含むハロゲン化合物ガスである金属膜のALD装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記ターゲットのターゲット面の面積をSとし、前記ハロゲンガスの濃度と流量とをそれぞれC、Fとしたとき、C×F/S<1×1019が成立する金属膜のALD装置。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記第2前駆体生成部は、前記第2プラズマ生成手段により前記第2プラズマが生成される非金属管と、前記第2プラズマ生成手段の位置よりも下流に、前記第2プラズマ中のハロゲンイオンが有する電荷を利用して前記ハロゲンイオンを選択的に除去する金属管と、を含む金属膜のALD装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記金属管は接地されている金属膜のALD装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記金属管は、交流電圧を印加する交流電源に接続されている金属膜のALD装置。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか一項において、
前記金属管は流路を屈曲する屈曲部を含む金属膜のALD装置。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記ターゲットは、第1部分と第2部分とを含み、前記第1部分が前記金属成分を含む金属酸化物であり、前記第2部分が炭素であり、
前記処理ガスは不活性ガスであり、
前記第1前駆体は、前記金属成分を含む金属アセチリドである金属膜のALD装置。
【請求項11】
請求項1、2、3、4または10において、
前記第1前駆体生成部と前記第2前駆体生成部とに共用される前駆体生成部を有し、
前記前駆体生成部は、
前記第1プラズマ生成手段と前記第2プラズマ生成手段とに共用されるプラズマ生成手段と、
前記プラズマ生成手段により励起されるプラズマが、前記ターゲットをエッチングする状態とエッチングしない状態とに切り換える切換機構と、
を有し、
前記前駆体生成部は、前記プラズマにより前記ターゲットがエッチングされて前記第1前駆体を生成し、前記プラズマにより前記ターゲットがエッチングされないことで前記第2前駆体を生成する金属膜のALD装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体金属材料を用いた金属膜のALD装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、成膜対象に酸化物薄膜を室温で形成することができる原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)が開示されているが、金属膜の成膜については開示されていない。特許文献2~5には、金属膜をALDにより成膜することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5761724号公報
【特許文献2】特開2020―084253号公報
【特許文献3】特開2015―042781号公報
【特許文献4】特開2005―322668号公報
【特許文献5】特開2005―002099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2は、有機金属化合物ガスの供給と還元ガスの供給とをパージを挟んで交互に繰り返して、金属膜を成膜することを記載している。しかし、有機金属化合物ガスとしてチタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)の金属を挙げられているが、アンモニア(NH3)を還元ガスとして用いることで、金属窒化膜例えばTaNを成膜することしか具体的に記載されていない。特許文献4も、金属窒化膜または金属酸化膜の成膜についてしか言及がない。
【0005】
特許文献3は、金属ジヒドロピラジニル錯体を用いて、ルテニウム又はコバルトという特定の金属膜を堆積するためのALDを開示している。特許文献5は、揮発性前駆体として1-アザアリル金属化合物の金属配位錯体を使用して、ALD法で基材上に金属を堆積する方法を開示している。しかし、特許文献3及び5は、特定の金属配位錯体を使用する必要があり、成膜される金属種も特定の金属錯体との関係で限られる。
【0006】
本発明は、固体金属材料を用いて金属膜を形成するALD装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、
ALDサイクルを実施するための第1前駆体及び第2前駆体が交互に充満されて、加工対象物に金属膜を形成する反応容器と、
処理ガス源と、
還元ガス源と、
前記処理ガス源に連結され、前記反応容器に供給される前記第1前駆体を生成する第1前駆体生成部と、
前記還元ガス源に連結され、前記反応容器に供給される前記第2前駆体を生成する第2前駆体生成部と、
を有し、
前記第1前駆体生成部は、第1プラズマ生成手段と、金属成分を含むターゲットとを、前記反応容器外に含み、前記処理ガス源からの処理ガスを前記第1プラズマ生成手段により励起して得られた第1プラズマにより前記ターゲットをエッチングして、前記金属成分を含む化合物ガスを生成し、前記化合物ガスを前記第1前駆体として前記反応容器に供給し、
前記第2前駆体生成部は、第2プラズマ生成手段を前記反応容器外に含み、前記還元ガス源からの還元ガスを前記第2プラズマ生成手段により励起して得られた第2プラズマ中の還元ガス成分のラジカルを、前記第2前駆体として前記反応容器に供給する金属膜のALD装置に関する。
【0008】
本発明の一態様によれば、第1前駆体は、第1プラズマによりターゲットをエッチングして、ターゲット中の金属成分を含む化合物ガスを生成することで得られる。化学的にエッチングされるターゲットの金属種に限定はない。加工対象物に付着された第1前駆体は、第2前駆体である還元ガス成分のラジカルにより還元することで、加工対象物に金属が堆積される。この還元現象は室温でも反応が促進される。よって、成膜中に加工対象物を強制加熱する必要がない。こうして、ターゲットの金属をALDにより室温で加工対象物に成膜することができる。
【0009】
(2)本発明の一態様(1)では、前記第1前駆体生成部は、前記処理ガス源と前記反応容器との間を連結し、非金属部分を含む管路を有することができ、前記第1プラズマ生成手段は、前記管路の前記非金属部分の周囲に配置することができ、前記ターゲットは、前記管路の長手方向に沿って、前記管路の前記非金属部分の内側に配置される棒状ターゲットとすることができる。こうすると、第1プラズマによりエッチングされる棒状ターゲットが、管路中でのガスの流れを阻害することを低減できる。
【0010】
(3)本発明の一態様(1)では、前記第1前駆体生成部は、前記処理ガス源と前記反応容器との間を連結し、非金属部分を含む管路を有することができ、前記第1プラズマ生成手段は、前記管路の前記非金属部分の周囲に配置することができ、前記管路内の前記第1プラズマと前記反応容器との間隔は、前記第1プラズマ中のラジカルの寿命と前記処理ガスの流速との積の値以上とすることができる。こうすると、第1プラズマ中に存在するラジカルは、反応容器に到達する前に寿命を迎え、ラジカルが反応容器に導入されることが低減される。それにより、反応容器内に同時に導入される第1前駆体とラジカルとが反応することが低減されて、CVDにより加工対象物に成膜されることを抑制することができる。
【0011】
(4)本発明の一態様(1)~(3)では、前記処理ガス及び前記還元ガスはハロゲンガスとすることができ、前記ターゲットは前記金属膜と同一の金属とすることができ、前記第1前駆体は、前記金属成分を含むハロゲン化合物ガスとすることができる。こうすると、第1前駆体生成部では、金属ターゲットがエッチングされて第1前駆体としてハロゲン化合物が生成される。反応容器内の加工対象物は、先ずハロゲン化合物が付着され、次にハロゲン化合物が第2前駆体であるハロゲンラジカルにより還元され、加工対象物に金属を堆積することができる。
【0012】
(5)本発明の一態様(4)では、前記ターゲットのターゲット面の面積をS(m2)とし、前記ハロゲンガスの濃度と流量とをそれぞれC(個/m3)、F(m3/min)としたとき、C×F/S<1019の不等式を成立させても良い。こうすると、ハロゲンガスのほぼ全てがハロゲン化合物の生成に費やされる。こうして、反応容器内に第1前駆体と同時に導入される第2前駆体(ハロゲンラジカル)が低減される。それにより、CVDにより加工対象物に成膜されることを抑制することができる。
【0013】
(6)本発明の一態様(4)または(5)では、前記第2前駆体生成部は、前記第2プラズマ生成手段により前記第2プラズマが生成される非金属管と、前記第2プラズマ生成手段の位置よりも下流に、前記第2プラズマ中のハロゲンイオンが有する電荷を利用して前記ハロゲンイオンを選択的に除去する金属管と、を含むことができる。金属管は、電気的に中性なハロゲンラジカルの移動を許容しながら、ハロゲンイオンが有する電荷を利用してハロゲンイオンを選択的に除去することができる。こうして、反応容器を物理的及び化学的にエッチングし易いハロゲンイオンが、反応容器内に導入されることを低減できる。
【0014】
(7)本発明の一態様(6)では、前記金属管は接地されても良い。ここで、ハロゲンイオンは、液体中では陰イオンになりやすいが、気体中ではほとんど、例えば最大90%までが陽イオンとなる。陽イオンは接地された金属管に吸着され、不足した電子がグランドから注入されて中和される。接地された金属管と接触した陰イオンは過剰な電子をグランドに放出して中和される。こうして、陽イオンまたは陰イオンであるハロゲンイオンは、その保有する電荷を利用して除去される。
【0015】
(8)本発明の一態様(6)では、前記金属管は、交流電圧を印加する交流電源と接続されていてもよい。こうすると、負電圧が印加されている時には陽イオンが、負電圧が印加されている時には陽イオンが、それぞれ金属管に吸着されて、かつ、過不足の電子が金属管から放出/注入されて中和される。こうして、陽イオンまたは陰イオンであるハロゲンイオンは、その保有する電荷を利用して除去される。
【0016】
(9)本発明の一態様(6)~(8)では、前記金属管は流路を屈曲する屈曲部を含むことができる。こうすると、ハロゲンイオンが金属管の屈曲部内壁と接触し易くなるので、ハロゲンイオンを除去し易くなる。
【0017】
(10)本発明の一態様(1)~(3)では、前記ターゲットは、第1部分と第2部分とを含むことができ、その場合、前記第1部分が前記金属成分を含む金属酸化物であり、前記第2部分が炭素である。前記処理ガスは不活性ガスとすると、前記第1前駆体は、前記金属成分を含む金属アセチリドとすることができる。第1前駆体である金属アセチリドは、第2前駆体である還元ガスにより還元される。こうして、アルカリ金属以外の金属のアセチドリは、金属酸化物を炭素と加熱して生成することができる。ターゲットは、第2プラズマ生成手段により誘導加熱することができる。それにより、金属アセチリドを形成することができる、アルカリ金属以外の全ての金属を、金属アセチリドを還元することで、金属膜として加工対象物に成膜することできる。
【0018】
(11)本発明の一態様(1)~(4)または(10)では、前記第1前駆体生成部と前記第2前駆体生成部とに共用される前駆体生成部を有することができる。この場合、前記前駆体生成部は、前記第1プラズマ生成手段と前記第2プラズマ生成手段とに共用されるプラズマ生成手段と、前記プラズマ生成手段により励起されるプラズマが、前記ターゲットをエッチングする状態とエッチングしない状態とに切り換える切換機構と、を有することができる。こうして、一つの前駆体生成部を、第1前駆体生成部と第2前駆体生成部とに共用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るALD装置の概略説明図である。
【
図2】第1実施形態のALD方法を説明するめのタイミングチャートである。
【
図3】第1実施形態の変形例を説明するための図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るALD装置の概略説明図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るALD装置の変形例の概略説明図である。
【
図6】
図5のターゲットを移動させた状態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の開示において、提示された主題の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態や実施例を提供する。もちろんこれらは単なる例であり、限定的であることを意図するものではない。さらに、本開示では、様々な例において参照番号および/または文字を反復している場合がある。このように反復するのは、簡潔明瞭にするためであり、それ自体が様々な実施形態および/または説明されている構成との間に関係があることを必要とするものではない。さらに、第1の要素が第2の要素に「接続されている」または「連結されている」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素と第2の要素とが一体的であるもの、あるいは第1の要素と第2の要素とが互いに直接的に接続または連結されている実施形態を含むとともに、第1の要素と第2の要素とが、その間に介在する1以上の他の要素を有して互いに間接的に接続または連結されている実施形態も含む。また、第1の要素が第2の要素に対して「移動する」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素及び第2の要素の少なくとも一方が他方に対して移動する相対的な移動の実施形態を含む。
【0021】
1.第1実施形態
1.1.ALD装置10A
図1に、ALD装置10Aの一例が示されている。ALD装置10Aは、反応容器20と、ハロゲンガス源30と、不活性ガス源40と、第1前駆体生成部50Aと、第2前駆体生成部60と、を含む。ハロゲンガス源30は、第1実施形態の処理ガス源と置換ガス源とを兼ねている。不活性ガス源40は、キャリアガスまたはパージガスとして用いられる。反応容器20は、加工対象物(ワークピース)1に成膜するための容器である。反応容器20は、加工対象物1である例えば基板を載置する載置部21を有することができる。加工対象物が粉体等の場合には、載置部21は要せず、反応容器20内で粉体が分散状態で保持されればよい。反応容器20には第1、第2前駆体生成部50、60が連結され、反応容器20内に第1前駆体、第2前駆体またはクリーニングガスが導入される。反応容器20には排気管70が連結され、排気ポンプ71によって反応容器20内を排気することができる。
【0022】
ハロゲンガス源30は、処理ガス及び還元ガスを兼ねるハロゲンガス例えばCl2ガスを収容する。ハロゲンガス源30には、流量制御器(MFC)80Aとバルブ90Aとが接続される。不活性ガス源40は、不活性ガス例えばArを収容する。不活性ガス源40には、流量制御器(MFC)80Bとバルブ90Bとが接続される。ハロゲンガス源30及び不活性ガス源40は、バルブ90Cを開放しバルブ90Dを閉鎖することで第1前駆体生成部50Aにガス供給可能であり、バルブ90Dを開放しバルブ90Cを閉鎖することで第2前駆体生成部60にガス供給可能である。
【0023】
第1前駆体生成部50Aは、ハロゲンガス源30からのハロゲンガスを処理ガスとして用いて、金属元素例えばCuとハロゲン元素例えばClとのハロゲン化合物例えばCuClを、第1前駆体として生成する。第2前駆体生成部60は、ハロゲンガス源30からのハロゲンガスを用いて、ハロゲンラジカル例えばClラジカルを、第2前駆体(還元ガス)として生成する。
【0024】
第1前駆体生成部50Aは、非金属性の管路51を有する。管路51の周囲には、第1プラズマ生成手段例えば第1誘導コイル22が設けられている。第1誘導コイル52には、図示しない高周波電源が接続される。例えば、第1誘導コイル52によって加えられる電磁エネルギーは20Wで、周波数は13.56MHzである。第1誘導コイル52によって管路51内にはハロゲンガスの誘導結合プラズマ(例えばCl2プラズマ)P1が生成される。
【0025】
管路51内には、金属ターゲット53が配置される。金属ターゲット53は例えば銅Cuで形成される。管路51に導入されたハロゲンガスが第1誘導コイル52により励起されて、金属ターゲット53の近傍に第1プラズマP1が生成される。特に、金属ターゲット53は、管路51の長手方向に沿って、管路51の非金属部分の内側に配置される棒状ターゲットとすることができる。こうすると、金属ターゲット53が管路51内にてガスの流れを阻害することを低減できる。
【0026】
第1プラズマP1により、金属ターゲット53がエッチングされて発生する金属例えばCuイオンと第1プラズマP1中のハロゲン例えばClとが反応して、第1前駆体(ハロゲン化合物である例えばCuCl)が生成される。特に金属ターゲット53が棒状ターゲットであると、金属ターゲット53の全周面を消耗させることができる。
【0027】
第2前駆体生成部60は、管路61を有する。管路61の周囲には第2プラズマ生成手段例えば第2誘導コイル64が設けられる。第2誘導コイル64には、図示しない高周波電源が接続される。例えば、第2誘導コイル64によって加えられる電磁エネルギーは20Wで、周波数は13.56MHzである。第2誘導コイル64によって管路61内にはハロゲンガスの第2プラズマP2が生成される。第2プラズマP2は、第2前駆体である反応性ガスとしてハロゲンラジカル(Cl*)を含む。
【0028】
本実施形態では、第2前駆体生成部60はクリーニングガス生成部として兼用される。この場合、ALDプロセスの終了後に反応容器20をクリーニングするクリーニングガスとしてハロゲンラジカルを用いる。このクリーニングガスとして、ハロゲンガス源30からのハロゲンガスを第2誘導コイル64によって励起することで得られる第2プラズマP2中のハロゲンラジカルを用いることができる。
【0029】
ここで、管路61は、第2誘導コイル64が配置される領域62は、非金属例えば石英により形成される。本実施形態では、管路61は、第2誘導コイル64の位置よりも下流に、イオン除去手段として金属管63を有することができる。本実施形態では、管路61は、石英管62に連結される金属管63として、例えばステンレス鋼配管を用いている。金属管63は、流路を屈曲する屈曲部63Aを有することができる。また、本実施形態では、金属管63は接地されている。
【0030】
1.2.ALD方法
1.2.1.ALDサイクル
図2に示すように、先ず、反応容器20内に加工対象物1が搬入される。次に、ALDサイクルを実施する。
図2に示すように、ALDサイクルとは、第1前駆体(原料ガス)の投入→排気(パージを含む)→第2前駆体(反応性ガスまたは還元ガス)の投入→排気(パージを含む)の最小4ステップを一サイクルとする。なお、排気とは排気ポンプ71による真空排気であり、パージとは不活性ガス源40からの不活性ガス(パージガス)の供給であり、いずれによっても、反応容器20内は、第1又は第2前駆体の雰囲気から、真空またはパージガス雰囲気に置換される。加工対象物1に成膜される膜の厚さはALDサイクルの数Nに比例する。よって、ALDサイクルが必要数Nだけ繰り返し実施される。
【0031】
ALD装置10Aで成膜される膜種は、金属膜であり、以下、金属膜の一例として銅Cuを成膜する一例を説明する。ALDサイクルを実施するにあたり、先ず、排気ポンプ71により反応容器20内が真空引きされ、例えば10-4Paに設定される。次に、ALDサイクルの1ステップ目として、第1前駆体生成部50Aから供給される第1前駆体であるCuClが、反応容器20内に所定の圧力例えば1~10Paで充満される。ALDサイクルの1ステップ目で、加工対象物1の露出表面にCuClが浸透する。所定時間経過後、ALDサイクルの2ステップ目として、反応容器20内にパージガスが導入され、反応容器20内の第1前駆体がパージガスに置換される。
【0032】
次に、ALDサイクルの3ステップ目として、第2前駆体生成部60からの第2前駆体であるClラジカルが、反応容器20内に所定の圧力例えば1~10Paで充満される。ALDサイクルの3ステップ目で、加工対象物1の露出表面にClラジカルが浸透する。その結果、加工対象物1の露出表面では、CuClがClラジカルと反応して、次の還元反応により銅Cuが加工対象物1の露出表面に成膜される。
CuCl+Cl→Cu+Cl2↑
【0033】
特に、加工対象物1の露出表面のCuClとClラジカルとは室温でも還元反応が促進される。よって、成膜中に加工対象物1を強制加熱する必要がない。所定時間経過後、ALDサイクルの4ステップ目として、反応容器20内にパージガスが導入され、反応容器20内のClラジカルがパージガスに置換される。Cu膜は1サイクルでおよそ1オングストローム=0.1nmずつ成膜ができるので、例えば10nmの膜厚にするにはALDサイクルを100回繰り返せばよい。ALDサイクルが終了すると、
図2に示すように、加工対象物1は反応容器20の外に搬出される。
【0034】
1.2.1.1.ALD工程の第1ステップ
ALD工程の第1ステップでは、反応容器20に第1前駆体だけが導入されることが好ましい。なぜなら、他のガス成分が第1前駆体と共に反応容器20に導入されると、他のガス成分が第1前駆体と反応してしまうからである。
【0035】
ここで、ALD工程の第1ステップでは、第1前駆体生成部50Aでは、第1プラズマP1が発生していることから、ハロゲンイオンやハロゲンラジカルが存在する。これらはターゲット53のエッチングで消費されるが、ハロゲンラジカルは第2前駆体であることから、ALD工程の第1ステップで第1、第2前駆体が同時に反応容器20に導入されると、CVDにより加工対象物1が成膜されてしまう。そのために、ALD工程の第1ステップでは、第2前駆体であるハロゲンラジカルが、反応容器20に導入されることを低減することが好ましい。
【0036】
1.2.1.1.1.第1プラズマP1と反応容器20との間隔L
第1プラズマP1と反応容器20との間隔Lは、第1プラズマP1中のハロゲンラジカルの寿命(Life Span)LSと処理ガス(ハロゲンガス)の流速(Flow Rate)FRとの積(LS×FR)の値以上とすることができる。こうすると、第1プラズマP1中に存在するハロゲンラジカルは、反応容器20に到達する前に寿命を迎え、ラジカルが反応容器20に導入されることが低減される。それにより、反応容器20内に同時に導入される第1前駆体とラジカルとが反応することが低減されて、CVDにより加工対象物1に成膜されることを抑制することができる。ここで、Clラジカルの寿命LSは10msecであり、ハロゲンガスの流速FRを例えば100m/secとすると、第1プラズマP1と反応容器20との間隔Lは1m以上とすればよい。
【0037】
1.2.1.1.2.ターゲット面積と処理ガスの濃度・流量との関係
ターゲット53のターゲット面の面積をSとし、ハロゲンガスの濃度と流量とをそれぞれC、Fとしたとき、C×F/S<1×1019の不等式を成立させても良い。こうすると、ハロゲンガスのほぼ全てがハロゲン化合物の生成に費やされる。こうして、反応容器20内に第1前駆体と同時に導入される第2前駆体(ハロゲンラジカル)の量が低減される。それにより、CVDにより加工対象物1に成膜されることを抑制することができる。たとえば、面積S=0.01(m2)のターゲットに対して、濃度(密度)C=1019(個/m3)のハロゲンガスを流量F=10-4(m3/min)で供給すれば、前記不等式が成立する。
【0038】
1.2.1.2.ALD工程の第3ステップ
ALD工程の第3ステップは、上述の通り、第2前駆体生成部60でハロゲンラジカルを生成する。つまり、ハロゲンガス源30からのハロゲンガスを第2誘導コイル64によって励起することで得られる第2プラズマP2に、ハロゲンラジカルを生成することができる。ただし、第2プラズマP2中には第1プラズマP1と同様にハロゲンイオンが含まれる。第1プラズマP1中のハロゲンイオンはターゲット53のエッチングで消費されるが、第2プラズマP2中にはハロゲンイオンが消費されずに残る。このハロゲンイオンは、反応容器20を過度に物理的及び化学的にエッチングし易い。よって、ALD工程の第3ステップでは、ハロゲンイオンが、反応容器20内に導入されることを低減することが好ましい。ALD工程の第3ステップでハロゲンイオンを除去することについて後述する。
【0039】
1.2.2.クリーニング工程
加工対象物1の搬出後に、クリーニング工程を開始することができる。このために、本実施形態では、ハロゲンガス源30からのハロゲンガスが不活性ガス源40からの不活性ガスにより例えば1~10%に希釈されて管路61に供給され、第2誘導コイル64で励起されて、第2プラズマP2中にクリーニングガスであるハロゲンラジカル例えばClラジカルが生成される。ハロゲンラジカルは、反応容器20内壁の薄膜の反応生成物と反応して、反応容器20をクリーニングすることができる。ただし、第2プラズマP2中にはハロゲンイオンが消費されずに残る。このハロゲンイオンは、反応容器20を過度に物理的及び化学的にエッチングし易い。よって、クリーニング工程においても、ハロゲンイオンが、反応容器20内に導入されることを低減することが好ましい。
【0040】
1.2.3.ハロゲンイオンの除去(ALD工程の第3ステップ及びクリーニング工程)
ここで、上述した通り、第2プラズマP2は、ハロゲンイオン及びハロゲンラジカルを含む。ハロゲンイオンは、気体中ではほとんど、例えば最大90%までが陽イオンとなる。陽イオンは接地された金属管63に吸着され、不足した電子がグランドから注入されて中和される。接地された金属管63と接触した陰イオンは過剰な電子をグランドに放出して中和される。こうして、陽イオンまたは陰イオンであるハロゲンイオンは、その保有する電荷を利用して管路61途中で除去される。特に、金属管63が流路を屈曲する屈曲部63Aを有すると、屈曲部63Aの内壁にハロゲンイオンを衝突させることができる。こうすると、ハロゲンイオンが金属管63の屈曲部63Aの内壁と接触し易くなるので、ハロゲンイオンを除去し易くなる。
【0041】
こうして、反応容器20等を過度に物理的及び化学的にエッチングし易いハロゲンイオンは、管路61の途中でハロゲンイオンが有する電荷を利用して選択的に除去される。その一方で、電気的に中性なラジカルは管路61内を通り易く、反応容器20内に導かれる。このため、ALDプロセスの第3ステップでは、ハロゲンラジカルによって主体的に成膜反応を呈することができる。一方クリーニング時には、反応容器20はハロゲンラジカルによって主体的に、化学的エッチングされるので、反応容器20は損傷されずにクリーニングされる。具体的には、ハロゲンラジカルが、反応容器20の内壁に付着した膜(本実施形態では金属膜)と化学的に反応して、塩化物として除去される。
【0042】
ALD工程の実施により反応容器20に堆積される堆積物の膜厚は、他の成膜装置と比較して薄い。よって、例えば1~10%に希釈された低濃度のクリーニングガスでも十分にクリーニングすることが可能である。
【0043】
1.3.変形例
金属管63は、必ずしも接地されるものに限らない。例えば、
図3に示すように、金属管63は、例えば10~100Hzで-100V~+100Vに変化する交流電圧を印加する交流電源65と接続されていてもよい。こうすると、金属管63に負電圧が印加されている時には陽イオンが、金属管63に正電圧が印加されている時には陰イオンが、それぞれ金属管63に吸着されて、かつ、過不足の電子が金属管から放出/注入されて中和される。こうして、陽イオンまたは陰イオンであるハロゲンイオンは、その保有する電荷を利用して除去される。
【0044】
金属管63の屈曲部63Aでは、屈曲前後の各管が成す角度は、鋭角よりも直角や鋭角が好ましく、あるいは螺旋状に屈曲させても良い。ハロゲンイオンが管内壁と接触する機会が増え、ハロゲンイオンの除去効率が高まるからである。
【0045】
さらには、イオン除去手段は、ハロゲンイオンが保有する電荷を利用してハロゲンイオンを除去できれば、金属管63を利用するものに限らない。例えば配管途中に電荷吸着ファイバーで形成されたメッシュを配置しても良い。電荷吸着ファイバーは、接地されても良く、あるいは交流電源が接続されても良い。
【0046】
クリーニング工程の実施時期は、一つの加工対象物1に対するALDサイクルが終了される毎に行っても良く、複数の加工対象物1に対するALDサイクルが終了される毎に行っても良い。加工対象物1への成膜が膜種の異なる複数層となる場合には、一層成膜のためのALDサイクルが終了される毎に行っても良いし、同一加工対象物1への複数層成膜のためのALDサイクルが完了するのを待って行っても良い。
【0047】
また、ALD工程についても、成膜される金属の種別は銅に限らず、ハロゲン化合物を形成する金属であればよい。一方ハロゲンは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)の5種類の元素のいずれかであればよいが、処理ガス及びクリーニングガスとしての好適なハロゲン分子としてCl2またはF2が好適である。
【0048】
2.第2実施形態
2.1.ALD装置10B
次に、本発明の第2実施形態について、
図4を参照して説明する。本発明の第2実施形態は、第1前駆体として金属アセチリドを用いる点で第1実施形態と異なる。このために、
図4に示すALD装置10Bは、第1前駆体生成部50Bとガス源とが第1実施形態のALD装置10Aと異なる。第1前駆体生成部50Bに設けられるターゲット53は、第1部分53Aと第2部分53Bとを含む。この場合、第1部分53Aが金属酸化物例えばCuOであり、第2部分53Bが炭素Cである。第1部分53Aと第2部分53Bとは、
図4のように一体的に連結化されていても良いし、あるいは、別体として分離されていてよい。
【0049】
図4では、処理ガス源31、還元ガス源32、不活性ガス源40及びクリーニングガス源41が設けられている。第1前駆体生成部50Bに供給される処理ガスは不活性ガス例えばAr、N
2とすることができる。このため、第1前駆体を生成する時に導入される処理ガス源31の不活性ガスと、キャリアガスまたはパージガスとして用いられる不活性ガス源40の不活性ガスとが同じであれば、不活性ガス源40は省略することができる。
【0050】
還元ガス源32は、金属アセチリドを還元する還元ガス例えば水素H2を収容している。還元ガス源32からの水素ガスは、第2前駆体生成部60に導入され、第2誘導コイル64で励起されて第2前駆体である水素ラジカルとなる。クリーニングガス源41にはハロゲンガスが収容され、第1実施形態と同様にしてクリーニング工程に供することができる。
【0051】
ここで、第1前駆体生成部50Bでは、処理ガス源31からの不活性ガスが第1誘導コイル52で励起されて第1プラズマP1が生成される。第1プラズマP1中のイオンがターゲット53の第1部分53Aと第2部分53Bとをエッチングする。また、第1誘導コイル52は、ターゲット53を誘導加熱する。そうすると、ターゲット53の第1部分53Aと第2部分53Bとからエッチングされた金属酸化物と炭素とを加熱して、第1前駆体として金属アセチリドを生成することができる。例えば、ターゲット53からエッチングされたCuOとCとにより、銅アセチリド(C2Cu2)が生成される。
【0052】
2.2.ALD方法
第2実施形態でも、第1実施形態と同様に
図2に示すALDサイクルである第1~第4ステップが実施される。ALD装置10Bで成膜される膜種も金属膜であり、以下、金属膜の一例として銅Cuを成膜する一例を説明する。反応容器20内が真空引きされた後、ALDサイクルの1ステップ目として、第1前駆体生成部50Bで第1前駆体である銅アセチリド(C
2Cu
2)が生成されて反応容器20内に所定の圧力で充満される。ALDサイクルの1ステップ目で、加工対象物1の露出表面にC
2Cu
2が浸透する。
【0053】
所定時間経過後、ALDサイクルの2ステップ目として、反応容器20内の第1前駆体がパージガスに置換される。次に、ALDサイクルの3ステップ目として、第2前駆体生成部60からの第2前駆体である水素ラジカルが、反応容器20内に所定の圧力例で充満される。ALDサイクルの3ステップ目で、加工対象物1の露出表面に水素ラジカルが浸透する。その結果、加工対象物1の露出表面では、銅アセチリド(C2Cu2)が水素ラジカルと反応して、次の還元反応により銅Cuが加工対象物1の露出表面に成膜される。
C2Cu2+H2→Cu+C2H2(アセチレン)↑
【0054】
特に、加工対象物1の露出表面のC2Cu2と水素ラジカルとは室温でも還元反応が促進される。よって、成膜中に加工対象物1を強制加熱する必要がない。所定時間経過後、ALDサイクルの4ステップ目として、反応容器20内にパージガスが導入され、反応容器20内のClラジカルがパージガスに置換される。以降、必要な膜厚にするのに必要な回数だけALDサイクルが繰り返えされる。
【0055】
3.第3実施形態
3.1.ALD装置10C
次に、本発明の第3実施形態について
図5及び
図6を参照して説明する。本発明の第3実施形態は、第1または第2実施形態に用いられる第1前駆体生成部50Aまたは50Bと、第2前駆体生成部60とを、一つの前駆体生成部100として共用するものである。
図6は第2実施形態に用いられた第1前駆体生成部50Bと第2前駆体生成部60とを一つの前駆体生成部100として共用する例であるが、第1実施形態についても同様に適用できる。
【0056】
図5に示す前駆体生成部100は、例えば、ターゲット53の全長の少なくとも2以上の長さを有する、非金属製の管路101を有する。管路101の例えば下流領域の周囲に、第1プラズマ生成手段52と第2プラズマ生成手段64とに共用されるプラズマ生成手段102として、例えば誘導コイルが設けられる。前駆体生成部100は、プラズマ生成手段102により励起されるプラズマが、ターゲット53をエッチングする状態とエッチングしない状態とに切り換える切換機構を有することができる。
図5では、管路101の外部に切換機構として、
図5に示す矢印方向に往復移動する磁石110が設けられる。切換機構は、さらに、管路101内でターゲット53を
図5の矢印方向に往復移動案内する案内機構を有することができる。誘導コイル102に通電されていない時に、磁石110が
図5移動すると、その移動に追従してターゲット53が移動される。
【0057】
3.2.ALD方法
ALD工程の第1ステップは、ターゲット53を
図5に示す位置に設定して実施される。こうすると、前駆体生成部100では、誘導コイル102で励起された第1プラズマP1によりターゲット53がエッチングされて、第1前駆体例えば銅アセチリドを生成することができる。ALD工程の第3ステップは、ターゲット53を
図6に示す位置に設定して実施される。こうすると、前駆体生成部100では、誘導コイル102で励起された第2プラズマP2によりターゲット53がエッチングされずに、第2前駆体例えば水素ラジカルを生成することができる。それにより、本発明の第3実施形態においても、第2実施形態と同様にして金属膜を成膜することができる。
【0058】
4.変形例
本発明の第2実施形態でも、本発明の第1実施形態と同様にして、第2前駆体生成部60がイオンを除去することができる。本発明の第3実施形態では、切換機構が、シャッターまたはカバーとターゲットとを相対的に移動させて、ターゲットがプラズマに晒される状態と晒されない状態とに切り換えても良い。こうして、一つの前駆体生成部100を、第1前駆体生成部50Aまたは50Bと第2前駆体生成部60とに共用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…加工対象物、10A、10B、10C…ALD装置、20…反応容器、30…ハロゲンガス源(処理ガス源及び還元ガス源)、31…処理ガス源、32…還元ガス源、40…不活性ガス源、41…クリーニングガス源、50A、50B…第1前駆体生成部、51、54…管路、52…第1プラズマ生成手段(第1誘導コイル)、53…金属ターゲット、53A…第1部分、53B…第2部分、54…ノズル、60…第2前駆体生成部、61…ガス供給部、62…石英管、63…金属管、63A…屈曲部、64…第2プラズマ生成手段(第2誘導コイル)、65…交流電源、70…排気管、71…排気ポンプ、80A~80B…流量制御器、90A~90D…バルブ、100…前駆体生成部(第1前駆体生成部及び第2前駆体生成部)、110…切換機構、P1…第1プラズマ、P2…第2プラズマ
【手続補正書】
【提出日】2022-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2022-05-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
請求項4において、
前記ターゲットのターゲット面の面積をS(m
2
)とし、前記ハロゲンガスの濃度と流量とをそれぞれC(個/m
3
)、F(m
3
/min)としたとき、C×F/S<1×1019が成立する金属膜のALD装置。