(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099957
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】半導体基板の製造方法及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
H01L21/308 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214051
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀野 和彦
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA15
5F043BB08
5F043DD07
5F043DD10
5F043DD13
5F043EE07
(57)【要約】
【課題】エッチング液の使用量を削減することができる半導体基板の製造方法及びエッチング装置を提供する。
【解決手段】半導体基板の製造方法は、半導体層が形成された主面と、主面に対向する裏面とを有する半導体基板の温度を、液体を裏面に噴射することにより調整するとともに、エッチング液を用いて半導体層の表面をエッチングする工程を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層が形成された主面と、前記主面に対向する裏面とを有する半導体基板の温度を、液体を前記裏面に噴射することにより調整するとともに、エッチング液を用いて前記半導体層の表面をエッチングする工程を備える半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記エッチングする工程では、前記液体を前記裏面の第1領域及び前記第1領域を挟んで位置する又は囲んで位置する複数の第2領域に噴射することにより前記半導体基板の温度を昇温し、
前記第1領域に噴射される液体の温度は、前記第2領域に噴射される液体の温度よりも10℃以上低く調整される、請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】
前記液体の温度は、前記エッチング液の温度よりも高い、請求項1又は請求項2に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項4】
前記半導体層は、InPを含む層であり、
前記エッチング液は、アンモニア水と過酸化水素水との混合液であり、
前記エッチングする工程では、温度が40℃以上かつ50℃以下の前記エッチング液を、前記半導体層の前記表面にかけ流す、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項5】
前記半導体層は、InPを含む層であり、
前記エッチング液は、塩酸と過酸化水素水との混合液であり、
前記エッチングする工程では、温度が20℃以上かつ30℃以下の前記エッチング液を、前記半導体層の前記表面にかけ流す、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項6】
前記エッチングする工程では、前記半導体基板の平均温度と前記エッチング液の温度との差が40℃以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項7】
前記半導体層は、InP、InGaAs及びInGaAsPのうち少なくともいずれか一つを含む層である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項8】
半導体層が形成された主面と、前記主面に対向する裏面とを有する半導体基板の前記裏面に、液体を噴射することにより前記半導体基板の温度を調整する昇温部と、
前記半導体層の表面にエッチング液をかけ流してエッチング処理を行うエッチング処理槽と、を備えるエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体基板の製造方法及びエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プリント配線基板の製造方法に関する技術が開示されている。この製造方法では、エッチング処理槽内を移動するプリント基板に対して、エッチング処理槽の上部に設けられたスプレーノズルからエッチング液がかけ流される。かけ流されたエッチング液によってプリント基板上の回路を構成しない金属部分が除去され、配線が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているようなエッチング液をかけ流す方法を用いて、半導体基板に形成された半導体層にエッチング処理を施す場合、エッチングが完了するまでの間、エッチング液をかけ流し続ける必要がある。つまり、上記方法では、エッチング液を貯めた槽内に半導体基板を浸けおくことによりエッチングを行う方法などと比較して、多量のエッチング液を使用する必要がある。
【0005】
そこで、本開示は、エッチング液の使用量を削減することができる半導体基板の製造方法及びエッチング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体基板の製造方法は、半導体層が形成された主面と、主面に対向する裏面とを有する半導体基板の温度を、液体を裏面に噴射することにより調整するとともに、エッチング液を用いて半導体層の表面をエッチングする工程を備える。
【0007】
本開示のエッチング装置は、半導体層が形成された主面と、主面に対向する裏面とを有する半導体基板の裏面に、液体を噴射することにより半導体基板の温度を調整する昇温部と、半導体層の表面にエッチング液をかけ流してエッチング処理を行うエッチング処理槽と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、エッチング液の使用量を削減することができる半導体基板の製造方法及びエッチング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、エッチング処理が施されるウエハの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すウエハのエッチング処理後の状態を示す図である。
【
図3】
図3は、エッチング処理が施されるウエハの他の例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すウエハのエッチング処理後の状態を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るエッチング装置の概略図である。
【
図6】
図6は、エッチング処理が行われているウエハを上側から視認した図である。
【
図7】
図7は、支持部、アーム部及びウエハを
図6に示すVII-VII線に沿って切断した際の模式図である。
【
図8】
図8は、エッチング処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、ウエハへの温水加熱の有無とエッチングレートとの関係を示す図である。
【
図10】
図10は、ウエハにおける面内位置とエッチングレートとの関係を示す図である。
【
図11】
図11は、温水の噴射口を三つ有するエッチング装置の概略図である。
【
図12】
図12は、
図11に示すエッチング装置を用いてエッチング処理を行ったときのエッチングレートの測定結果を示す図である。
【
図13】
図13は、噴射口から噴射された温水の流れを模式的に表した図である。
【
図14】
図14は、噴射口から噴射された温水の流れを模式的に表した図である。
【
図15】
図15は、水温調整部を有するエッチング装置の概略図である。
【
図16】
図16は、温水の温度を調整してエッチング処理を行ったときのエッチングレートの測定結果を示す図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係るエッチング装置の概略図である。
【
図18】
図18は、変形例に係るエッチング装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る半導体基板の製造方法は、半導体層が形成された主面と、主面に対向する裏面とを有する半導体基板の温度を、液体を裏面に噴射することにより調整するとともに、エッチング液を用いて半導体層の表面をエッチングする工程を備える。
【0011】
この半導体基板の製造方法では、半導体基板が室温よりも高い温度まで昇温された状態においてエッチング処理を行うことが可能である。この場合、室温の半導体基板に対してエッチング処理を行う場合と比べて、エッチングレートが向上する。これにより、エッチングに要する時間(エッチング液を半導体層にかけ流す場合には、かけ流し時間)が短縮され、エッチング液の使用量を削減することができる。また、半導体層が形成されていない半導体基板の裏面が加熱される。これにより、半導体層へのエッチング処理を妨げることなく半導体基板の加熱処理を並行して行うことができ、エッチング処理の効率が向上する。
【0012】
一実施形態として、エッチングする工程では、液体を裏面の第1領域及び第1領域を挟んで位置する又は囲んで位置する複数の第2領域に噴射することにより半導体基板の温度を昇温し、第1領域に噴射される液体の温度は、第2領域に噴射される液体の温度よりも10℃以上低く調整されてもよい。これにより、第1領域の温度が第2領域の温度よりも過度に高温になることが抑制されるので、エッチングレートの均一化を図ることができる。
【0013】
一実施形態として、液体の温度は、エッチング液の温度よりも高くてよい。この態様によれば、エッチング液の温度よりも低い温度の液体を用いて半導体基板を昇温したときと比べて、半導体基板の温度を高温にすることができる。これにより、エッチングレートがより一層向上し、エッチング液の使用量をさらに削減することができる。
【0014】
一実施形態として、半導体層は、InPを含む層であり、エッチング液は、アンモニア水と過酸化水素水との混合液又は塩酸と過酸化水素水との混合液であってもよい。このとき、アンモニア水と過酸化水素水との混合液でエッチングする工程では、温度が40℃以上かつ50℃以下のエッチング液を、半導体層の表面にかけ流してもよい。エッチング液の温度を50℃以下とすることにより、アンモニアの気化が抑制される。この態様によれば、エッチング液に含まれるアンモニア又は塩酸の気化を抑制しつつ、高いエッチングレートにおいてエッチングを行うことができる。また、塩酸と過酸化水素水との混合液でエッチングする工程では、温度が20℃以上かつ30℃以下のエッチング液を、半導体層の表面にかけ流してもよい。エッチング液の温度を30℃以下とすることにより、塩素の気泡の発生が抑制される。
【0015】
一実施形態として、エッチングする工程では、半導体基板の平均温度とエッチング液の温度との差が40℃以下であってもよい。この態様によれば、半導体基板の平均温度とエッチング液の温度との差が小さいので、エッチング液が半導体基板に接触した場合であっても、半導体基板の温度の低下が抑制される。これにより、エッチング処理を行っている間、高いエッチングレートを維持することができる。
【0016】
一実施形態として、半導体層は、InP、InGaAs及びInGaAsPのうち少なくともいずれか一つを含む層であってもよい。この態様によれば、発光素子に適した半導体部品を製造することができる。
【0017】
一実施形態に係るエッチング装置は、半導体層が形成された主面と、主面に対向する裏面とを有する半導体基板の裏面に、液体を噴射することにより半導体基板の温度を調整する昇温部と、半導体層の表面にエッチング液をかけ流してエッチング処理を行うエッチング処理槽と、を備える。
【0018】
このエッチング装置では、昇温部によって室温よりも高い温度まで昇温された半導体基板に対してエッチング処理を行うことが可能である。この場合、室温の半導体基板に対してエッチングを行う場合と比べて、エッチングレートが向上する。これにより、エッチングに要する時間が短縮されるので、エッチング液の使用量を削減することができる。また、昇温部は、半導体層が形成されていない裏面を加熱する。これにより、半導体層へのエッチング処理を妨げることなく半導体基板の加熱処理を並行して行うことができるので、エッチング処理の効率が向上する。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示に係る半導体基板の製造方法及びエッチング装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1及び
図2を用いて、本実施形態に係るエッチング装置100によってエッチング処理が施されるウエハの一例を説明する。
図1は、エッチング処理前のウエハ1の部分断面図である。
図2は、エッチング処理後のウエハ1の部分断面図である。ウエハ1はチップ状に切断された後、例えばレーザ又はLED(Light Emitting Diode)といった発光素子の製造に使用される。
図1及び
図2には、ウエハ1から切り出される複数のチップのうち一つのチップに相当する部分の断面が示されている。
【0021】
ウエハ1は、半導体基板10、n型クラッド層11、活性層12、p型クラッド層13、InP層14及び絶縁膜17を備える。半導体基板10は、例えばn型InP基板である。半導体基板10は、主面10aと、主面10aに対向する裏面10bとを有する。主面10a上には、n型クラッド層11、活性層12、p型クラッド層13及びInP層14を含む半導体層が形成されている。
【0022】
n型クラッド層11は、半導体基板10の主面10a上にエピタキシャル成長した層である。n型クラッド層11は、例えば、InP、InGaAs又はInGaAsPを含む。活性層12は、n型クラッド層11上にエピタキシャル成長した層であり、n型クラッド層11とp型クラッド層13との間に設けられている。活性層12は、n型クラッド層11及びp型クラッド層13のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを有し、量子井戸構造を構成する。p型クラッド層13は、活性層12上にエピタキシャル成長した層であり、活性層12と絶縁膜17との間に設けられている。p型クラッド層13は、例えば、InP、InGaAs又はInGaAsPを含む。
【0023】
InP層14は、活性層12及びp型クラッド層13を挟んで設けられた層である。InP層14には、抵抗値を高めるために不純物、例えばFeがドープされていても良い。また、InP層14の代わりに、InGaAs又はInGaAsPを含む層が設けられていてもよい。絶縁膜17は、p型クラッド層13およびInP層14の上にまたがって設けられた膜である。絶縁膜17は、例えばSiNから形成された膜であってもよい。ウエハ1を発光素子の部品として使用する場合、絶縁膜17を除去した後に、p型クラッド層13およびInP層14の上部にコンタクト層を成長処理によって形成する。その後、コンタクト層の表面及び半導体基板10の裏面10bに、一組の電極がウエハ1を挟んで設けられる。当該電極間に電圧を印加しp型クラッド層13からn型クラッド層11へと電流を流すことにより活性層12から光が放出される。InP層14が高い抵抗値を有するので電極間に流れる電流が絞り込まれ、活性層12に効率良く流し込まれる。
【0024】
InP層14の上部にコンタクト層を成長させるための前処理として、InP層14の表面14aにエッチング処理を施す。エッチング処理によって表面14a上に生じている化学的に変質した又は格子構造が乱れた半導体結晶(ダメージ層)が除去され、ウエハ1の品質を高めることできる。
図2は、エッチング処理後のウエハ1を示している。エッチング処理後のウエハ1では、InP層14の表面14aのうち、絶縁膜17が積層されていない部分が除去されている。エッチング処理は、
図5に示すエッチング装置100を用いて行われる。
【0025】
次に、
図3及び
図4を用いてエッチング処理が施されるウエハの他の例について説明する。
図3は、ウエハ2のエッチング処理前の断面図である。
図4は、ウエハ2のエッチング処理後の断面図である。ウエハ2は、半導体基板10、n型クラッド層11、活性層12、p型クラッド層13、InP層15、InGaAsP層16及び絶縁膜17を備える。半導体基板10、n型クラッド層11、活性層12、p型クラッド層13及び絶縁膜17は、
図1及び
図2を用いて上述したウエハ1の構成と同様であるので説明を省略する。
【0026】
InP層15は、n型クラッド層11上にエピタキシャル成長したp型半導体層である。InP層15は、活性層12及びp型クラッド層13を挟んで設けられている。InGaAsP層16は、InP層15上にエピタキシャル成長したn型半導体層である。InGaAsP層16は、p型クラッド層13を挟んで設けられている。絶縁膜17は、p型クラッド層13およびInGaAsP層16の上にまたがって設けられた絶縁膜である。ウエハ2を発光素子の部品として使用する場合、絶縁膜17を除去した後にInGaAsP層16の上部にコンタクト層を成長処理によって形成する。その後、コンタクト層の表面及び半導体基板10の裏面10bに、一組の電極がウエハ2を挟んで設けられる。当該電極間に電圧を印加しp型クラッド層13からn型クラッド層11へと電流を流すことにより活性層12から光が放出される。このとき、n型半導体層であるInGaAsP層16及びp型半導体であるInP層15の間には電流が流れない。これにより、InGaAsP層16及びInP層15によって電極間の電流が絞り込まれ、活性層12に効率良く流し込まれる。
【0027】
p型クラッド層13およびInGaAsP層16の上部にコンタクト層を成長させるための前処理として、InGaAsP層16の表面16aにエッチング処理を施す。エッチング処理によって表面16a上に生じているダメージ層が除去され、ウエハ2の品質を高めることできる。
図4は、エッチング処理後のウエハ2を示している。エッチング処理後のウエハ2では、InGaAsP層16の表面16aのうち、絶縁膜17が積層されていない部分が除去されている。エッチング処理は、ウエハ1と同様に、
図5に示すエッチング装置100を用いて行われる。
【0028】
図5は、第1実施形態に係るエッチング装置100の概略図である。以下、エッチング装置100を用いてウエハ1にエッチング処理を行う場合を例に説明するが、同様の方法によりウエハ2及び他の半導体ウエハにエッチング処理を施すことが可能である。エッチング装置100は、エッチング処理槽20、エッチング液タンク40及び温水タンク50を備える。
【0029】
エッチング処理槽20は、エッチング液を用いたウェットエッチングが行われる槽である。エッチング処理槽20には、エッチング液吐出器21、温水噴射器22、排出管23、支持部30及びアーム部35が設けられている。
【0030】
エッチング液吐出器21は、エッチング液41を吐出する装置である。エッチング液吐出器21は、配管42によってエッチング液タンク40と接続されている。エッチング液吐出器21は、エッチング液タンク40から配管42を介して供給されたエッチング液を吐出する。吐出されたエッチング液41は、エッチング液吐出器21の下方に配置されたウエハ1にかけ流される。かけ流されたエッチング液によって、ウエハ1が有するInP層14の表面14aがエッチングされる。エッチング液吐出器21は、エッチング液41を吐出する吐出口を一つ又は複数有している。エッチング液吐出器21が複数の吐出口を有している場合、例えば表面14aの中心領域及び当該中心領域を中心とする一つまたは複数の円周上に等間隔に位置する領域に対してエッチング液が吐出されてもよい。
【0031】
エッチング液に含まれる薬剤の種類は、エッチング処理を施す半導体層の種類に応じて選択される。例えば、InPを含む半導体層に対してエッチング処理を施す場合、エッチング液は、アンモニア水と過酸化水素水との混合液又は塩酸と過酸化水素水との混合液であってもよい。
【0032】
温水噴射器22は、温水51を噴射する装置である。温水噴射器22は、配管52によって温水タンク50と接続されている。温水噴射器22は、温水タンク50から配管52を介して供給された温水をウエハ1に噴射する。ウエハ1に噴射される液体は温水に限定されず、半導体基板10の裏面10bを侵食しにくい液体から任意に選択可能である。例えば半導体基板10の裏面10bがInPからなる場合には、硫酸、硝酸又は弗酸のいずれかを用いることができる。噴射された温水(例えば約60℃の温水)は、ウエハ1が有する半導体基板10の裏面10bに接触する。ウエハ1は、温水51の熱によって加熱され、室温(約26℃以上)よりも高い温度まで昇温される。温水噴射器22は、温水51を噴射する噴射口を一つ又は複数有している。温水噴射器22が複数の噴射口を有している場合、例えば裏面10bの中心領域及び当該中心領域を中心とする一つ又は複数の円周上に等間隔に位置する領域に対して温水が噴射されてもよい。また、当該中心領域を中心とする複数の円周上に等間隔に位置する領域に対して温水が噴射される場合には、温水の条件によっては中心領域の温度が特異的に上がってしまうことがある。そこで、温水の条件によっては中心領域以外の複数の円周上に位置する領域に対して温水が噴射されてもよい。
【0033】
排出管23は、使用済みのエッチング液41及び温水51を外部へと排出するための管である。排出管23は、エッチング処理槽20の下部において、エッチング処理槽20の内部と外部とを接続する。使用済みのエッチング液41及び温水51は、例えば自重又はポンプの自重又はポンプの吸引等による圧力差によって排出管23を介して外部に排出される。
【0034】
支持部30は、ウエハ1を支持する部品である。アーム部35は、ウエハ1を支持部30に対して押さえる部品である。ここで、
図6及び
図7を用いて、支持部30及びアーム部35の構成について説明する。
【0035】
図6は、エッチング処理が行われているウエハ1を上側から視認した図である。
図7は、支持部30、アーム部35及びウエハ1を
図6に示すVII-VII線に沿って切断した際の模式図である。支持部30は、底部31及び支柱部32を備える。底部31は、二つの棒状部材が直交した形状を呈しており、中心に貫通孔33が設けられている。貫通孔33には、温水噴射器22(
図5を参照)と温水タンク50とを接続する配管52が挿通される。支柱部32は、底部31の端部を起点として立ち上がる棒状部材である。支柱部32は、底部31の四つの端部それぞれに設けられている。支柱部32の先端には段差が形成されている。この段差は、水平かつ平坦な載置面34を有する。載置面34に、ウエハ1の縁部が載置される。また、支持部30は、例えばモータを含む回転機構(不図示)を備え、貫通孔33を貫通する軸を中心とした円周方向(
図6に示す矢印X方向)に回転可能に構成されている。
【0036】
アーム部35は、ヒンジ36を介して支柱部32に取り付けられている。アーム部35は、ヒンジ36を起点として揺れ動くことが可能となっている。アーム部35は、先端部に押圧部37を有する。押圧部37は、アーム部35の先端領域である。押圧部37がウエハ1と接触し、ウエハ1を支持部30に向かって押圧する。
【0037】
図5に戻り、エッチング装置100の全体構成について説明を続ける。エッチング液タンク40は、エッチング液41が貯められたタンクである。エッチング液タンク40は、配管42を介してエッチング処理槽20のエッチング液吐出器21と接続されている。配管42には、ポンプ43が設けられている。ポンプ43が駆動することにより、エッチング液タンク40内のエッチング液41がエッチング液吐出器21へと圧送される。エッチング液タンク40は、エッチング液41の温度を昇温するヒータ(不図示)を有している。エッチング液41は、含まれる薬剤の種類に応じた適切な温度まで昇温される。例えば、エッチング液41がアンモニア水と過酸化水素水との混合液である場合、40℃以上かつ50℃以下の温度になるまで昇温される。エッチング液タンク40は、エッチング液41の温度を検出するセンサを有し、センサが検出した温度に基づいてヒータの温度及び加熱時間が調整されてもよい。
【0038】
温水タンク50は、温水51が貯められたタンクである。温水タンク50は、配管52を介してエッチング処理槽20の温水噴射器22と接続されている。配管52には、ポンプ53が設けられている。ポンプ53が駆動することにより、温水タンク50内の温水51が温水噴射器22へと圧送される。温水タンク50は、温水51の温度を昇温するヒータ(不図示)を有している。温水タンク50は、温水51の温度を検出するセンサを有し、センサが検出した温度に基づいてヒータの温度及び加熱時間が調整されてもよい。
【0039】
図8は、エッチング処理の流れを示すフローチャートである。
図8を参照して、エッチング装置100を用いたエッチング処理について説明する。まず、ウエハ1を支持部30にセットする(ステップS1)。具体的には、
図7に示したように、支柱部32が有する載置面34にウエハ1の縁部を載せることによりウエハ1をセットする。このとき、エッチングされるInP層14(
図1を参照)を上側(エッチング液吐出器21側)に位置させる。
【0040】
次に、半導体基板10の温度を昇温しつつエッチングを行う(ステップS2)。半導体基板10の昇温は、半導体基板10の裏面10bを加熱することにより行う。具体的には、
図5に示すように、温水噴射器22からウエハ1に温水51を噴射する。噴射された温水51は半導体基板10の裏面10bに接触する。温水51の熱によって半導体基板10の温度が昇温される。半導体基板10は、室温より高い温度まで昇温される。このとき、半導体基板10は、その平均温度が40℃以上かつ90℃以下になるまで昇温されてもよい。ここで、「平均温度」とは、半導体基板10の裏面10b内において均等に分散した複数の点(例えば5点以上)を測定点として選択し、これらの測定点において半導体基板10の温度を測定したときの平均値である。また、エッチング処理を行っている間は、温水加熱によって半導体基板10の温度が室温より高い温度に保たれていてもよい。
【0041】
エッチング処理は、支持部30にセットされたウエハ1に対してエッチング液吐出器21からエッチング液41をかけ流すことにより行われる。かけ流されたエッチング液41によって、InP層14の表面14aがエッチングされる。エッチング処理が行われている間、支持部30はウエハ1を支持しつつ回転する。回転によってエッチング液41がウエハ1の全域に広がる。また、支持部30の回転によってアーム部35の押圧部37がウエハ1を押圧する。
【0042】
半導体基板10の加熱処理は、InP層14のエッチング処理と同時に行われてもよいし、同時に行われなくともよい。例えば、半導体基板10の温度が室温より高い温度まで昇温された時点において温水噴射器22による温水51の噴射を停止し、その後、エッチング液吐出器21からエッチング液41をかけ流してもよい。また、エッチング液41のかけ流しを継続して行いつつ温水51の噴射を断続的に行ってもよい。反対に、温水51の噴射を継続して行いつつエッチング液41のかけ流しを断続的に行ってもよい。
【0043】
最後に、ウエハ1に付着したエッチング液41を除去する(ステップS3)。エッチング液41の除去は、ウエハ1を水洗することによって行われる。例えば、エッチング処理槽20の内部にノズルを取り付け、当該ノズルから純水を噴射することによってウエハ1を水洗してもよい。
【0044】
図9を参照して、温水加熱によるエッチングレートの変化について説明する。
図9は、ウエハ1への温水加熱の有無とエッチングレートとの関係を示す図である。
図9において、横軸はエッチング液の温度(単位:℃)を示し、縦軸はエッチングレート(単位:nm/min)を示す。ここで、「エッチングレート」とは、単位時間あたりに除去される半導体層の厚みである。
【0045】
温水加熱有りの測定では、まず、InP層14が形成された4インチのウエハ1の裏面10bに約60℃の温水51を約2分間噴射した。次に、エッチング液41(アンモニア過水)を約2分間かけ流しエッチング処理を行った。その後、ウエハ1に対して約5分間の水洗処理を行った。最後に、ウエハ1に対して約1500rpmで1分間回転させる乾燥処理を行い、エッチングレートを測定した。以下の説明では、上述したエッチングレートの測定条件を「条件1」と記す。温水加熱無しの測定は、温水51の噴射の有無を除き条件1と同様の条件によって行われた。
【0046】
図9のプロットP1は、ウエハ1への温水加熱を行わずにエッチング処理をした場合のエッチングレートを表し、プロットP2は、温水加熱を行ってエッチング処理をした場合のエッチングレートを表している。
図9に示すように、エッチング液41の温度が高くなるほど、エッチングレートも高くなる傾向がある。しかしながら、温水51による加熱を行わない場合、エッチング液41の温度を約55℃付近まで高めても、エッチングレートは20nm/minを超えない値にとどまる。一方、温水51による加熱を行った場合、エッチング液41の温度が30℃を若干下回る場合であっても、エッチングレートは20nm/min以上となる結果が得られた。さらに、温水51による加熱を行った場合では、エッチング液41の温度を約55℃まで高めると、エッチングレートは30nm/min~45nm/minの間の値まで高まった。つまり、ウエハ1を温水加熱した状態においてエッチング処理を行った場合、加熱をしなかった場合と比較してエッチングレートが向上した。
【0047】
ところで、
図9に示した測定結果では、エッチング液41の温度が同一であってもエッチングレートの値にバラつきが生じている。例えば、エッチング液の温度が約55℃のときのエッチングレートの値は、30nm/min~45nm/minの間に点在している。これは、ウエハ1の面内においてエッチングレートが高い領域と低い領域とが存在することを示している。ウエハ1のいかなる領域においてエッチングレートが高くなるかについて
図10を参照して説明する。
【0048】
図10は、ウエハ1における面内位置とエッチングレートとの関係を示す図である。
図10において、横軸は面内位置(単位:mm)を示し、縦軸はエッチングレート(単位:nm/min)を示す。ここで、「面内位置」とは、ウエハ1における位置を、ウエハ1の中心との離間距離によって表したものである。例えば、面内位置が20mmとは、ウエハ1の中心から特定方向に20mm離れた位置を示しており、面内位置が-20mmとは、ウエハ1の中心から特定方向とは逆方向に20mm離れた位置を示している。約50℃のエッチング液41を用いてウエハ1にエッチングを行い、面内位置ごとのエッチングレートを測定した。他の条件は、
図9に関する説明において述べた条件1と同様である。
【0049】
図10のプロットによって示されているように、面内位置が20mm及び-20mmである2点においてエッチングレートが高くなっている。この2点は、温水噴射器22から噴射された温水が直接接触する点である。本測定結果によって、温水が直接接触する領域では他の領域と比べてエッチングレートが高くなっていることが判明した。そこで、ウエハ1において温水が当たる箇所を増やし、エッチングレートの均一化を試みた。具体的には、ウエハ1の中心領域及び当該中心領域を中心とする円周上において等間隔に位置する領域に対して温水51を噴射することとした。
【0050】
図11は、エッチング装置101の概略図である。エッチング装置101の温水噴射器22は複数の噴射口を有し、各噴射口から噴射された温水51は、ウエハ1の中心領域及び当該中心領域を中心とする円周上において等間隔に位置する領域に接触する。
図11では、温水噴射器22が有する複数の噴射口のうち、三つの噴射口22a~22cを図示している。エッチング装置101が有する配管52は、複数の配管に分岐している。そのうち三本の配管52a~52cは、それぞれ噴射口22a~22cと接続されている。温水タンク50から供給された温水は、配管52a~52cを含む複数の配管のうちいずれかを通り対応する噴射口から噴射される。
【0051】
噴射口22aから噴射された温水51は、ウエハ1の中心領域に接触する。具体的には、ウエハ1の面内位置0mmの点及びその近傍領域に接触する。噴射口22b及び噴射口22cから噴射された温水51は、ウエハ1の中心領域を中心とした円周上に位置する領域にそれぞれ接触する。具体的には、噴射口22bから噴射された温水51は、ウエハ1の面内位置-20mmの点及びその近傍領域に接触する。また、噴射口22bから噴射された温水51は、ウエハ1の面内位置20mmの点及びその近傍領域に接触する。つまり、噴射口22b及び22cから噴射された温水は、中心領域を挟んで位置する領域にそれぞれ接触する。
【0052】
さらに、エッチング装置101は流量調整部54を有する。エッチング装置101の他の構成については、
図5に示したエッチング装置100と同様であるので説明を省略する。なお、
図11においては説明の都合上、ウエハ1が支持される支持部30及びアーム部35の図示を省略している。
【0053】
図12は、エッチング装置101を用いてウエハ1にエッチング処理を行ったときのエッチングレートの測定結果を示す図である。
図12において、横軸は面内位置(単位:mm)を示し、縦軸はエッチングレート(単位:nm/min)を示す。本測定では、エッチング液41の温度は約50℃とし、温水51の温度は約70℃とした。他の条件は、
図9に関する説明において述べた条件1と同様である。測定結果は、
図12のプロットP3によって表されている。
図12に示すように、面内位置0mmでのエッチングレートが他の面内位置でのエッチングレートと比べて高くなっている。そこで、エッチングレートのさらなる均一化が望まれる。
【0054】
そこで、中心領域に噴射される温水の流量を減少させてエッチングレートを均一化することを試みた。
図11に示すように、エッチング装置101は、温水噴射器22から噴射される温水51の流量を調整可能とする流量調整部54を有する。流量調整部54は、三本の配管52a~52cを含む複数の配管に設けられている。噴射口22a~22cから噴射される温水51の流量を、それぞれ流量Fa~Fcとする。流量調整部54によって、中心領域に噴射される温水51の流量Fbを、流量Fa及び流量Fcよりも少なく調整した。言い換えると、プロットP3の測定では流量Fa=流量Fb=流量Fcであった各流量の関係を、流量Fb<流量Fa=流量Fcへと変更した。この条件下において、ウエハ1に温水加熱及びエッチング処理を行い、エッチングレートを測定した。なお、他の条件はプロットP3の測定と同様である。
【0055】
測定結果は、
図12のプロットP4によって表されている。
図12に示すように、面内位置0mmにおけるエッチングレートが若干低下し、エッチングレートの最大値と最小値とのギャップがプロットP3の示す結果と比べて小さくなっている。このように、中央領域に噴射される温水51の流量を少なくすることにより、エッチングレートのバラつきを低減することができた。
【0056】
ここで、噴射口22a~22cから噴射される温水51の流れを模式的に表した
図13及び
図14を示す。
図13は、各噴射口22a~22cから同じ流量の温水51が噴射される場合の図である。
図14は、噴射口22bから噴射される温水51の流量が少ない場合の図である。これらは、ウエハ1が設置されていない状態における温水51の流れが示された図であり、ウエハ1は本来設置される位置に破線を用いて示されている。
図13に示すように各噴射口22a~22cから噴射される温水51の流量Fa~Fcが等しい場合では、噴射されたそれぞれの温水51がほぼ同じ高さまで到達する。一方、
図14に示すように噴射口22bから噴射される温水51の流量Fbが少ない場合、噴射口22bから噴射される温水51の到達点は、他の噴射口22a及び22cから噴射される温水51の到達点と比べて低くなる。したがって、噴射される温水51の流量を減らし過ぎるとウエハ1に温水51が接触しなくなってしまうおそれがある。一方、流量を増やし過ぎるとウエハ1に大きな衝撃が加わり、ウエハ1の破損及び位置ずれが生じるおそれがある。したがって、温水51の流量を変更することによってエッチングレートを調整することは難しく、より容易な方法が望まれる。
【0057】
そこで、噴射される温水51の温度を変化させてエッチングレートを均一化することを試みた。
図15は、エッチング装置102の概略図である。エッチング装置102は、配管52a~52cのそれぞれに、水温調整部55を有する。水温調整部55は、各噴射口22a~22cから噴射される温水51の温度を調整する装置である。水温調整部55は、配管52a~52cを流れる温水51を加熱するヒータを有する。また、水温調整部55は、温水51の温度を検出するセンサを有し、当該センサが検出した温度に基づいてヒータの温度及び加熱時間が調整されてもよい。エッチング装置102の水温調整部55以外の構成については、
図11に示したエッチング装置101と同様であるので説明を省略する。
【0058】
図16は、エッチング装置102を用いてウエハ1にエッチング処理を行ったときのエッチングレートの測定結果を示す図である。
図16のプロットP5は、各噴射口22a~22cから噴射される温水51を同じ温度(約70℃)に調整したときの測定結果を示している。プロットP6は、水温調整部55を用いて、噴射口22a及び22cから噴射される温水51の温度を約80℃、噴射口22bから噴射される温水51の温度を約70℃に調整したときの測定結果を示している。エッチング液41の温度は約50℃とし、他の条件は、
図9に関する説明において述べた条件1と同様である。
図16において、横軸は面内位置(単位:mm)を示し、縦軸はエッチングレート(単位:nm/min)を示す。
【0059】
図16のプロットP6によって示す測定結果では、エッチングレートが45nm/min~60nm/minの範囲内に収まっており、プロットP5によって示す測定結果と比較して、エッチングレートのバラつきが抑制された。この測定結果から、ウエハ1におけるある領域(第1領域)及び第1領域を挟んで位置する又は囲んで位置する複数の領域(第2領域)に温水51が噴射される場合、第1領域に噴射される温水51の温度を第2領域に噴射される温水51の温度よりも低く調整することにより、エッチングレートの均一化が図られることがわかる。
【0060】
本実施形態に係る半導体基板の製造方法では、半導体基板10が室温よりも高い温度まで昇温された状態においてエッチング処理を行うことが可能である。この場合、半導体基板10が室温の状態においてエッチングが行われる場合と比べてエッチングレートが向上する。これにより、エッチングに要する時間(本実施形態では、エッチング液41を半導体層にかけ流す時間)が短縮され、エッチング液41の使用量を削減することができる。また、半導体層が形成されていない半導体基板10の裏面10bが加熱される。これにより、半導体層へのエッチング処理を妨げることなく半導体基板の加熱処理を並行して行うことができ、エッチング処理の効率が向上する。
【0061】
また、本実施形態のように、温水51(液体)を半導体基板10の裏面10bにおける第1領域及び第1領域を挟んで位置する又は囲んで位置する複数の第2領域に噴射することにより半導体基板10の温度を昇温してもよい。このとき、第1領域に噴射される温水51の温度は、第2領域に噴射される温水51の温度よりも10℃以上低く調整されてもよい。この場合、第1領域の温度が第2領域の温度よりも過度に高温になることが抑制されるので、エッチングレートの均一化を図ることができる。
【0062】
また、本実施形態のように、半導体基板10に噴射される温水51(液体)の温度が、エッチング液41の温度よりも高くてよい。この場合、エッチング液41の温度よりも低い温度の温水51を用いて半導体基板10を昇温したときと比べて、半導体基板10の温度を高温にすることができる。これにより、エッチングレートがより一層向上し、エッチング液41の使用量をさらに削減することができる。
【0063】
また、本実施形態のように、半導体基板10の平均温度が40℃以上かつ90℃以下に保たれつつ、エッチング処理が行われてもよい。半導体基板10の平均温度が40℃以上に昇温されることによりエッチングレートが大きく向上する。また、半導体基板の平均温度が40℃以上に保たれることにより、高いエッチングレートが維持されたままエッチングが行われることとなる。これにより、エッチング液41の使用量がより一層削減される。また、半導体基板10の平均温度が90℃以下の状態においてエッチングが行われる。これにより、半導体基板10に接触したエッチング液41に気泡が発生しないのでエッチング処理が適切に行われる。
【0064】
また、本実施形態のように、半導体基板10上に形成された半導体層は、InPを含む層であり、エッチング液41は、アンモニア水と過酸化水素水との混合液又は塩酸と過酸化水素水との混合液であってもよい。エッチング液41がアンモニア水と過酸化水素水との混合液である場合、温度が40℃以上かつ50℃以下のエッチング液41を、半導体層の表面にかけ流すことによりエッチングが行われてもよい。エッチング液41の温度を50℃以下とすることにより、アンモニアの気化が抑制される。すなわち、エッチング液41に含まれるアンモニア又は塩酸の気化を抑制しつつ、高いエッチングレートにおいてエッチングを行うことができる。また、エッチング液41が塩酸と過酸化水素水との混合液である場合、温度が20℃以上かつ30℃以下のエッチング液41を、半導体層の表面にかけ流すことによりエッチングが行われてもよい。エッチング液41の温度を30℃以下とすることにより、塩素の気泡の発生が抑制される。
【0065】
また、本実施形態のように、半導体基板10の平均温度とエッチング液41の温度との差が40℃以下の状態においてエッチング処理が行われてもよい。この場合、半導体基板10の平均温度とエッチング液41の温度との差が大きくない。したがって、エッチング液41が半導体基板10に接触した場合であっても、半導体基板10の温度が大きく低下しない。これにより、エッチング処理を行っている間、高いエッチングレートを維持することができる。
【0066】
また、本実施形態のように、半導体層は、InP、InGaAs及びInGaAsPのうち少なくともいずれか一つを含む層であってもよい。この場合、発光素子に適した半導体部品を製造することができる。
【0067】
また、本実施形態のように、エッチング装置100は、半導体基板10を支持しつつ回転可能な支持部30と、支持部30が回転している状態において半導体基板10を支持部30に向かって押圧する押圧部37を有するアーム部35と、を備えていてもよい。この場合、支持部30が回転するとともに、支持部30に支持された半導体基板10が併せて回転する。これにより、かけ流されたエッチング液41が半導体層の表面に広がり、エッチングの仕上がりのムラが抑制される。また、支持部30が回転している状態では、押圧部37が半導体基板10を支持部30に向かって押圧するので、半導体基板10の浮き上がり及び位置ずれが防止される。
【0068】
(第2実施形態)
図17を参照して、第2実施形態に係るエッチング装置103について説明する。
図17は、エッチング装置103の概略図である。以下の説明では、前述した第1実施形態との相違点を主に説明し、共通する構成については説明を省略する場合がある。
【0069】
第2実施形態に係るエッチング装置103は、エッチング処理槽20、エッチング液タンク40及び純水タンク70を備える。エッチング処理槽20には、エッチング液吐出器21、排出管23、赤外線照射部24、純水噴射器26が設けられている。
図17では、図示を省略しているが、
図5を用いて説明したエッチング装置100と同様に、エッチング処理槽20にはウエハ1が支持される支持部30及びアーム部35が設けられていてもよい。
【0070】
赤外線照射部24は、赤外線25を照射する装置である。赤外線25は、ウエハ1が有する半導体基板10の裏面10bに照射される。第1実施形態に係るエッチング装置100では、温水51の熱によって半導体基板10が加熱されたが、第2実施形態に係るエッチング装置103では、赤外線25のエネルギーによって半導体基板10が加熱される。赤外線25によって半導体基板10の温度が昇温されるとともに、エッチング液吐出器21からエッチング液41がウエハ1にかけ流されてエッチング処理が行われる。
【0071】
エッチング装置103は、一つ又は複数の赤外線照射部24を有している。エッチング装置103が複数の赤外線照射部24を有している場合、例えばウエハ1の裏面10bの中心領域及び当該中心領域を中心とする円周上に等間隔に位置する領域に対して赤外線が照射されてもよい。このとき、中心領域に照射される赤外線25の強度は、他の領域に照射される赤外線25の強度よりも小さく調整されていてもよい。そうすることにより、半導体基板10における各領域の温度差を小さくでき、エッチングレートの均一化が図られる。
【0072】
純水噴射器26は、純水を噴射する装置である。純水噴射器26は、配管72によって純水タンク70と接続されている。純水噴射器26は、純水タンク70から配管72を介して供給された純水をウエハ1に噴射する。純水の噴射は、ウエハ1のリンス処理として行われる。純水の噴射によって例えばウエハ1の表面に付着した微細な粉塵を除去することができる。
【0073】
純水タンク70は、純水71が貯められたタンクである。純水タンク70は、配管72を介してエッチング処理槽20の純水噴射器26と接続されている。配管72には、ポンプ73が設けられている。ポンプ73が駆動することにより、純水タンク70内の純水71が純水噴射器26へと圧送される。
【0074】
本実施形態に係るエッチング装置103では、半導体基板10が赤外線25によって昇温されエッチングレートが向上する。これにより、エッチングに要する時間(本実施形態では、エッチング液41を半導体層にかけ流す時間)が短くなりエッチング液41の使用量を削減することができる。また、赤外線25の照射は、照射対象の半導体基板10に対して強い衝撃を与えるものではない。したがって、昇温時における半導体基板10の破損及び位置ずれを防止することができる。さらに、ウエハ1から離れた位置に赤外線照射部24を配置した場合であっても、赤外線照射部24から照射される赤外線によってウエハ1が適切に昇温される。すなわち、赤外線以外の加熱手段(例えば温水噴射)を用いた場合と比べて、加熱装置(赤外線照射部24)の配置自由度をより高めることができる。
【0075】
(変形例)
図18を参照して、エッチング装置103の変形例について説明する。
図18は、変形例に係るエッチング装置104の概略図である。以下の説明では、
図17を用いて前述したエッチング装置103との相違点を主に説明し、共通する点については説明を省略する場合がある。
【0076】
エッチング装置104では、赤外線照射部24がエッチング処理槽20の外部に配置されている。また、エッチング処理槽20は、窓部27及び純水噴射器80、ブロー82を備える。窓部27は、エッチング処理槽20の外壁に設けられており、赤外線照射部24から照射された赤外線25を透過する。窓部27は、例えば赤外線25を透過する樹脂又はガラスからなる。赤外線25は、窓部27を透過した後に、エッチング処理槽20の内部に配置されたウエハ1に到達し、半導体基板10の温度を昇温する。
【0077】
純水噴射器80は、純水81を噴射する装置である。純水噴射器80は、純水81が貯められたタンク(不図示)と配管によって接続されていてもよい。純水噴射器80は、純水81を窓部27に対して噴射し、窓部27に付着したエッチング液41及び汚れを除去する。ブロー82は、窒素83を吹き出す装置である。ブロー82は、窒素83を窓部27に向かって吹き付け、窓部27の乾燥処理を行う。
【0078】
本変形例に係るエッチング装置104では、赤外線照射部24はエッチング処理槽20の外部に配置される。これにより、赤外線照射部24に対してエッチング液41が付着せず、エッチング装置104の清掃作業及びメンテナンスが容易となる。
【0079】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態に適用することができる。例えば、半導体基板10の裏面10bは、温水51及び赤外線25に限られず、ヒータといった他の加熱手段によって加熱されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1、2…ウエハ
10…半導体基板
10a…主面
10b…裏面
11…n型クラッド層
12…活性層
13…p型クラッド層
14…InP層
14a…表面
15…InP層
16…InGaAsP層
16a…表面
17…絶縁膜
20…エッチング処理槽
21…エッチング液吐出器
22…温水噴射器
22a、22b、22c…噴射口
23…排出管
24…赤外線照射部
25…赤外線
26…純水噴射器
27…窓部
30…支持部
31…底部
32…支柱部
33…貫通孔
34…載置面
35…アーム部
36…ヒンジ
37…押圧部
40…エッチング液タンク
41…エッチング液
42…配管
43…ポンプ
50…温水タンク
51…温水
52、52a、52b、52c…配管
53…ポンプ
54…流量調整部
55…水温調整部
70…純水タンク
71…純水
72…配管
73…ポンプ
80…純水噴射器
81…純水
82…ブロー
83…窒素
100、101、102、103、104…エッチング装置