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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099986
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】脱臭調湿器
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/014 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
A61L9/014
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214092
(22)【出願日】2020-12-23
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】513133642
【氏名又は名称】株式会社倉絆
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 桂治
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA16
4C180BB11
4C180BB13
4C180BB15
4C180CC04
4C180CC15
4C180EA13X
4C180HH05
(57)【要約】
【課題】手軽に利用でき、炭の利用効率の高めた脱臭調湿装置を提供すること。
【解決手段】 略角筒状の筐体10と、筐体10の筒底側に固定ないし係止させる、通気性を有するフィルタないし網からなる底フィルタ20と、外形が筐体10内側と同形であって底フィルタ20の上に敷設する、木炭粒32を不織布31にて封入した炭袋30と、炭袋30と所定高さ隔てて筐体10の筒上側に固定ないし係止させる、底フィルタ20から上側へと空気を吸い上げるファン42を備えた扇風蓋40と、を具備し、底フィルタ20は、筐体10の接地面に対して上げ底の位置関係にあり、筐体10下部側周は切り欠いた形状を有する、空気の取込口11が形成されたことを特徴とする脱臭調湿器1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略角筒状の筐体と、
筐体の筒底側に固定ないし係止させる、通気性を有するフィルタないし網からなる底体と、
外形が筐体内側と同形であって底体の上に敷設する、木炭粒を不織布にて封入した炭袋と、
炭袋と所定高さ隔てて筐体の筒上側に固定ないし係止させる、底側から上側へと空気を吸い上げるファンを備えた蓋体と、
を具備し、
底体は、筐体の接地面に対して上げ底の位置関係にあり、筐体下部側周は切り欠いた形状を有する通気口が形成されたことを特徴とする脱臭調湿器。
【請求項2】
炭袋は二枚の矩形の不織布の周縁を所定幅をもって貼り合わせてあり、ファンによる陰圧により、当該縁部分が弁となり、炭袋の全部または一部が浮き上がり元に戻ることを繰り返す請求項1に記載の脱臭調湿器。
【請求項3】
平面視において炭袋の略中心部分の上下の不織布を貼り合わせつつ所定径の孔をあけ、
底体または筐体には、当該孔に挿通し、上方が拡径した規制棒を設けたことを特徴とする請求項2に記載の脱臭調湿器。
【請求項4】
筐体は木製であり、木炭は針葉樹由来の炭としたことを特徴とする請求項1、2または3に記載の脱臭調湿器。
【請求項5】
筐体側面に、持ち運びの際に使用する取っ手を設けたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の脱臭調湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内環境を向上させる脱臭調湿器に関し、特に、炭の吸着力を定常的に長時間、効率的に発揮させる脱臭調湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭においてはペット臭や室内臭、病院や介護施設においてはカルキ臭や糞尿臭が気になる場合があり、これらに限らず、気になる臭いを除去する様々な技術が存在している。例えば、炭の比表面積の大きさと物質吸着力を生かした脱臭炭も存在している。
【0003】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
たとえば、特許文献1、特許文献2、このほか、喫煙室に置かれる脱臭装置にように、装置規模が大がかりであるという問題点があった。
反対に、家庭で用いる脱臭炭は、小型の据え置き型であるものの、炭の表面部分しか脱臭作用を十全に発揮しないという問題点があった。
なお、上記文献のように、動力を用いて空気を送り込めば、炭の利用効率が高まるものの、空気の定常的な通り道が形勢され、通り道にない炭の利用効率が悪いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-213852
【特許文献2】特開2020-25828
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、手軽に利用でき、炭の利用効率の高めた脱臭調湿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の脱臭調湿器は、略角筒状の筐体と、筐体の筒底側に固定ないし係止させる、通気性を有するフィルタないし網からなる底体と、外形が筐体内側と同形であって底体の上に敷設する、木炭粒を不織布にて封入した炭袋と、炭袋と所定高さ隔てて筐体の筒上側に固定ないし係止させる、底側から上側へと空気を吸い上げるファンを備えた蓋体と、を具備し、底体は、筐体の接地面に対して上げ底の位置関係にあり、筐体下部側周は切り欠いた形状を有する通気口が形成されたことを特徴とする。
【0007】
すなわち、請求項1にかかる発明は、湿度の高い下側から吸い込み、陰圧により炭全体に空気をふれさせ、効果的な除湿および脱臭を実現する。
【0008】
筐体は、側周面の四隅に内側からあてがった脚を突き出した構造でもよく(これにより通気口が形成される)、別体として脚を設けず、四隅からアーチ形状を切り欠いて通気口を形成しつつ自立する様な構造でもよい。
底体を係止させる場合には、筐体内側に桟を設ける例を挙げることができる。
蓋体は、効率的な陰圧を実現すべく、筒体の上部を覆うものとする。
炭袋の形状は、座布団様に、上下に潰れた態様とすることが好ましい。外形が筐体内側と同形であるとは、炭袋が筐体内壁に全周にわたり当接している様子を表したものである。
炭の粒径は、不織布から粉炭が漏出しない程度とする。たとえば、長径が2mm~7mmとすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の脱臭調湿器において、炭袋は二枚の矩形の不織布の周縁を所定幅をもって貼り合わせてあり、ファンによる陰圧により、当該縁部分が弁となり、炭袋の全部または一部が浮き上がり元に戻ることを繰り返すことを特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項2にかかる発明は、動きにより炭全体に空気が接触し(よどみが生じず)、脱臭効果、調湿効果をより高めることが可能となる。
炭袋の全部または一部が浮き上がり元に戻ることを繰り返す、との様相は、はためく、と表現することもできる。不織布と炭粒による炭袋の変形は一様とならない結果、非定常的かつ非周期的な動きを演じ、内部の炭粒同士も互いに位置が変わっていくので、この点も脱臭調湿に好適に作用する。
なお、炭袋とファンとは、このような炭袋が踊るようなファンの排気力、または、炭粒の封入量の関係にある。また、木炭の封入量は、炭袋が折れ曲がることができるように、稠密とはせず(パンパンにせず)、反対に、簡単に折り癖ができて炭袋のそこばかりが折れ曲がってしまうような、粗ともしない(スカスカでない)、中間的な量とする。
周縁の縁部分は、筐体内側より若干大きく、しなるように筐体内側に当接する態様であってもよい。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の脱臭調湿器において、平面視において炭袋の略中心部分の上下の不織布を貼り合わせつつ所定径の孔をあけ、底体または筐体には、当該孔に挿通し、上方が拡径した規制棒を設けたことを特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項3にかかる発明は、炭袋の位置ずれや過度の持ち上がりを防止し、長期にわたる動作安定性を実現することができる。換言すれば、一方向に寄ってしまい、あいた隙間から定常的な空気流れに変質してしまうことを防止し、円滑かつランダムな上下運動やはためき運動を実現する。また、炭袋が蓋体に張り付くようなことも防止できる。
拡径の態様は特に限定されず、棒体上部が90°折れ曲がっていてもよく、ビスのような頭が張った形状でもよい。
なお、規制棒を中央以外にも設けてもよい。
なお、中心部分が最低限張り合わさっておればよく、たとえば、日の字の様に、中心を通る帯線状の貼り合わせが形成されていることを妨げない。
【0013】
請求項4に記載の脱臭調湿器は、請求項1、2または3に記載の脱臭調湿器において、筐体は木製であり、木炭は針葉樹由来の炭としたことを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項4にかかる発明は、家庭でも、オフィスでも、病院でも、介護施設でも、違和感なく設置できる。針葉樹とすることで、比表面積の大きく、効果的な吸着も実現する。
筐体の材料としては、吉野杉その他の杉、木炭の材料としては檜の例を挙げることができる。檜炭は、微視的なハニカム構造が形成され、吸着性を良好に発揮する。なお、木炭は、複数の木炭をブレンドして用いることができる。
また、蓋体の上に、更に木製のスリット体や、組子板をのせ、ファンを見えにくくして、和室等との親和性を高めるようにしてもよい。
【0015】
請求項5に記載の脱臭調湿器は、請求項1~4のいずれか1つに記載の脱臭調湿器において、筐体側面に、持ち運びの際に使用する取っ手を設けたことを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項5にかかる発明は、簡便に移動でき、必要時に必要箇所の脱臭・除湿が可能となる。
例えば全体の大きさを、縦×横×高さ=(18cm~30cm)×(30cm×50cm)×(20cm×38cm)、炭の封入量を70g~520gとする例を挙げることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、手軽に利用でき、炭の利用効率の高めた脱臭調湿装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の脱臭調湿器の外観構成を示した説明図である。
図2】本発明の脱臭調湿器の部分断面を示した、構成概念図である。
図3】本発明の脱臭調湿器の上内枠より下を平面視した構成概要図である。
図4】本発明の脱臭調湿器において、炭袋を外した状態で上内枠より下を平面視した構成概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の脱臭調湿器の外観構成を示した説明図である。図2は、本発明の脱臭調湿器の部分断面を示した、構成概念図である。図3は、本発明の脱臭調湿器の上内枠より下を平面視した構成概要図である。図4は、本発明の脱臭調湿器において、炭袋を外した状態で上内枠より下を平面視した構成概要図である。
なお、各図の構成要素は説明の便宜上、縮尺を実際のものと異ならせて描画している。
【0020】
脱臭調湿器1は、筐体10と、底フィルタ20と、炭袋30と、扇風蓋40と、を主要な構成としている。
【0021】
筐体10は、外形の大きさが、縦約18cm×横25cm×高さ17cmであり、約2cm厚の吉野杉の間伐材の板を利用して形成した角筒体である。横面下部は弧状に切り欠いてあり、空気の取込口11を形成している。切欠高さは約3cmである。
【0022】
筐体10上部には枠淵12が外側にせり出すように形成され、デザイン性を高めた外形としている。
筐体10の内側上部には、扇風蓋40をはめ込み係止させる、上内枠13が形成され、同様に、筐体10の内側下部には、底フィルタ20をはめ込み係止させる、下内枠14が形成されている。なお、下内枠14は取込口11より上にあり、底フィルタ20は脱臭調湿器1の接地面に対して底上げの位置関係となっている。
また、下内枠14には、平面視において「日」の字を形成するように下内枠14を二等分する中央に中桟15が合着されている。中桟15中央(すなわち、平面視における筐体10中央位置)には、上方に向けてビス151がねじ込まれている。ビス151の太さは、平均2mmφであり、頭は5mmΦである。なお、頭は中桟15から3cm浮いた位置にある。
【0023】
筐体10の縦面上部の両外側には、取っ手16を設け、脱臭調湿器1の持ち運びを容易としている。なお、脱臭調湿器1の重量は約1kg程度であり、簡単に移動ができる。これにより、所望の場所ないし部屋を簡便に脱臭または調湿できる。
【0024】
底フィルタ20は、筐体10の内側形状に沿った形状であり、5mm角のメッシュが形成されたプラスチック製のフィルタ板である。
目をこのように大きくすることにより、取込口11からの空気の上方への流れを邪魔することなく炭袋30を下支えする。底フィルタ20は下内枠14により位置が決まり、筐体10内に嵌め込まれる。
【0025】
炭袋30は、不織布31にヒノキの木炭粒32を封入した座布団様の袋であって、外形は筐体10の内側形状に沿ったものとなっており、底フィルタ20の上に敷かれる。
不織布31は、二枚の不織布の周りを貼り合わせたもので、周縁には1cm幅の縁311が形成される。また、袋を二つ割りするように、中央にも2cm幅の貼り合せ312が形成されている。
木炭粒32は檜炭であり、炭化する際、または、炭化した後、破砕をおこない、概ね長径が2mm~7mmのものとなるように篩がけしたものを封入する。特に、不織布31の目を通り抜けるような粉炭は取り除いたものとしている。封入量は、100gである。
【0026】
なお、貼り合わせ312中央には、直径5mmの孔313を空けてあり、ここに、ビス151を挿通し、炭袋30の姿勢安定性を高めている。
【0027】
扇風蓋40は、上内枠13にのせて筐体10の上面を蓋する所定厚みの扁平な蓋部41と、蓋部41内に収まる大径のファン42を有する(電源や駆動ユニットの図示は省略する)。なお、安全上の観点から蓋部41には、ガード411が形成されている。
ファン42は、空気を筐体10の内部から外側(下側から上側)に吹き出す方向に回転する。
炭袋30の上面と扇風蓋40下面との距離、すなわち、筐体10の中空部分の高さは、約10cmである。
ファン42の風量(回転数)は、後述するように、炭袋30が筐体10内でゆるやかに踊る程度とする。
【0028】
脱臭調湿器1は以上の構成であって、ファン42により取込口11から空気が取り込まれ、炭袋30を通過して、上方に排気される。
分子量の大きな臭気物質や湿度の高い空気は、室内下方によどみやすく、下方吸気、上方排気により、効果的な脱臭、調湿(除湿)が可能となる。また、空気の流れが形成されるので、室内に浮遊拡散している臭気物質が結局のところ分子量に関係なく取り込まれ、連続運転により順次脱臭されていく。同様に、部屋全体の調湿(除湿)も実現される。
【0029】
ここで、縁311が全周にわたり筐体10内側に当接しているので、弁の役割を果たし、ファン42の陰圧によって炭袋30の全体または一部が浮き上がる。炭袋30は縁311を含めて変形するためその後にできる隙間により圧力解放され、炭袋30は再び底フィルタ20上に倒伏する。
【0030】
ここで、ビス151によって炭袋30が事実上位置決めされているので、下に落ちても再び縁311が筐体10内側に当接する。よって炭袋30の上下移動が繰り返されることとなる。
なお、ファン42の陰圧が大きな場合も、ビス151の頭により炭袋30の上昇が規制され、炭袋30は、ビス151高さまでを往復する。
【0031】
この上下移動(往復)は、炭袋が微視的には不定形であるため、非定常的、非周期的な運動となる。また、倒伏の際の衝撃等により中の木炭粒32同士も少しずつ位置を変える。従って、袋としての「動き」、粒としての「動き」があることにより、効率的な脱臭または調湿が実現される。
すなわち、炭に通気させる従来の脱臭方法、調湿方法にあっては、炭は静止しているので、空気の通り道が形成され、その通り道に触れている炭の利用効率は高いものの、空気の流れがよくないところにある炭や炭粒の接触部分の利用効率は高くない。
一方、脱臭調湿器1は、炭袋30が上下し、中の木炭粒32も少しずつ動く(接触箇所や接触相手が変わっていく)ので、空気の流れが固定化せず、原理的に総ての炭粒およびそれぞれの炭粒表面が利用されることとなる。しかも、ビス151により位置決めがされているので、炭袋30が一方にずれて、平面視にて筐体10内側との間で大きな口が開いてしまうようなことがない。したがって、長期間にわたって安定的かつ効率的な脱臭、調湿が実現される。
【0032】
以上、脱臭調湿器1によれば、手軽に利用でき、炭の利用効率の高めた効果的な脱臭および調湿が実現可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
脱臭調湿器1は、家庭の各部屋で利用できることはもちろんのこと、介護施設、病院、ペットショップ等でも利用できる。また、焼き肉店のような飲食店でも利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 脱臭調湿器
10 筐体
11 取込口
12 枠淵
13 上内枠
14 下内枠
15 中桟
151 ビス
16 取っ手
20 底フィルタ
30 炭袋
31 不織布
311 縁
312 貼り合わせ
313 孔
32 木炭粒
40 扇風蓋
41 蓋部
411 ガード
42 ファン

図1
図2
図3
図4