(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009999
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】凍結保存生体サンプルの温度監視用の方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220106BHJP
G01N 1/42 20060101ALI20220106BHJP
G01N 1/04 20060101ALI20220106BHJP
C12N 1/04 20060101ALI20220106BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20220106BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
G01N1/42
G01N1/04 G
C12M1/00 A
C12N1/04
C12N5/07
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021180188
(22)【出願日】2021-11-04
(62)【分割の表示】P 2018556936の分割
【原出願日】2017-03-31
(31)【優先権主張番号】102016005133.7
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・アール・フュール
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ・ツィマーマン
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AA33
2G052AD09
2G052AD29
2G052AD52
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4B029AA07
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4B065CA46
(57)【要約】
【課題】本発明は、凍結保存生体サンプルの温度監視用のデバイスを提供する。
【解決手段】本デバイスは、生体サンプルを収容するための収容空間を有するサンプル容器と、少なくとも一つのチャンバとを備え、そのチャンバの内部空間は、収容空間と流体的に接続されておらず、指標物質で部分的にのみ充填されていて、その指標物質の融点は-20℃から-140℃の範囲内にある。本発明は、凍結保存生体サンプルの温度監視用の方法にも関し、本方法は、(a)上記温度監視用のデバイスを提供するステップと、(b)指標物質を凍結させるステップとを備え、指標物質の凍結の際には少なくとも一つのチャンバが第一位置に移動され、次いで、指標物質の融解が重力の影響の結果として少なくとも一つのチャンバ内での指標物質の少なくとも部分的な変位及び/又は形状変化をもたらす第二位置に移動される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結保存生体サンプル(6)の温度監視用のデバイス(10、20、30、30c、40、50、60)であって、
(a)生体サンプル(6)を収容するための収容空間(2)を有するサンプル容器(1、51)と、
(b)少なくとも一つのチャンバとを備え、該チャンバの内部空間が前記収容空間(2)と流体的に接続されておらず且つ指標物質(7)で部分的にのみ充填されていて、該指標物質(7)の融点が-20℃から-140℃の範囲内にある、デバイス。
【請求項2】
それぞれ指標物質(7、26)で部分的にのみ充填されている複数のチャンバを備え、該指標物質(7、26)の融点が-20℃から-140℃の範囲内にあり、異なるチャンバ内の指標物質(7、26)が異なる融点を有することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
チャンバ壁が少なくとも一点において透明又は半透明であることを特徴とする請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記少なくとも一つのチャンバ内の指標物質(7)の位置を検出するように構成された測定装置を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記指標物質が、前記指標物質の物理的特性の検出性を向上させる指標添加剤を備え、前記指標添加剤が例えば染料であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも一つのチャンバが、前記サンプル容器(1)に脱着可能に又は旋回可能に取り付けられる一つのキャビティ(14、34、44、64)又は複数のキャビティ(24a、24b)を有する容器(11、21、31、41、61)によって形成されていることを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記容器(11、31、41、61)が、前記サンプル容器(1)の長手方向端部に旋回可能に取り付けられることを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記容器(41)が屈曲部(46)を用いて前記サンプル容器(1)に旋回可能に取り付けられることを特徴とする請求項6又は7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記容器(31、41、61)が、前記サンプル容器(1)の長手軸に垂直な回転軸(D)周りに旋回可能に前記サンプル容器(1)に取り付けられることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
(a)前記容器(31、61)が半環状又は環状であり、
(b)前記容器(31、61)が、前記サンプル容器の長手軸と同軸に配置される第一旋回位置と、前記第一旋回位置に対して少なくとも45°、好ましくは90°回転した第二旋回位置とに移動するように構成されていることを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
(a)前記容器(41)が、前記サンプル容器(1)の長手方向端部において前記サンプル容器(1)に直接又は間接に旋回可能に取り付けられる細長の中空体であり、及び/又は、
(b)前記容器(41)が、前記容器の長手軸が前記サンプル容器の長手軸に平行となる第一旋回位置と、前記第一旋回位置に対して少なくとも45°回転した第二旋回位置とに移動するように構成されていることを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記少なくとも一つのチャンバが二重壁の押し込み部(11、21)によって形成されていることを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【請求項13】
前記二重壁の押し込み部(11)が、前記サンプル容器(1)の長手方向端部において前記サンプル容器(1)に押し込まれるように構成されている二重壁のキャップであることを特徴とする請求項12に記載のデバイス(10)。
【請求項14】
前記サンプル容器(1)が、前記収容空間(2)を閉じるためのカバー(3)を有し、前記容器(11、31、41、61)が前記カバー(3)に脱着可能に又は旋回可能に取り付けられることを特徴とする請求項6から13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記少なくとも一つのチャンバを形成するための前記サンプル容器(51)の収容空間が、内壁(53)と外壁(52)とを有する二重壁とされ、前記内壁(53)と前記外壁(52)との間の中間空間(54)が前記指標物質(7)で部分的に充填されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記サンプル容器(1、51)がクライオチューブであることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記二重壁の押し込み部(21)が、前記クライオチューブ(1)の外面に押し込まれ又は付着され又はスライドして押し込まれた状態で該クライオチューブ(1)に少なくとも部分的に嵌め込まれるように構成されていることを特徴とする請求項16を介して請求項12に記載のデバイス。
【請求項18】
凍結保存サンプルの温度監視用の方法であって、
(a)請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイスを提供するステップ(S1)と、
(b)前記指標物質を凍結させるステップとを備え、
前記指標物質の凍結の際に前記少なくとも一つのチャンバを第一位置に移動させ(S2)、
次いで、前記少なくとも一つのチャンバを、前記指標物質の融解が重力の影響の結果として前記少なくとも一つのチャンバ中での前記指標物質の少なくとも部分的な変位及び/又は形状変化をもたらすことになる第二位置に移動させる(S3)、方法。
【請求項19】
前記指標物質として選択される物質が、超過が監視される所定の閾値温度に対応する融点を有するか、又は融解した指標物質の粘度が所定の設定値を超えることになる閾値温度を有することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(a)前記少なくとも一つのチャンバが前記サンプル容器に対して前記第二位置で配置されるように、前記サンプル容器中に凍結保存サンプルを有する前記デバイスを保管するステップ(S4)と、
(b)前記指標物質の融点を一時的に超えたことによって前記指標物質の少なくとも部分的な変位及び/又は形状変化が生じたかどうかを確認するステップ(S5)とを備えることを特徴とする請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記指標物質が、1‐オクタノール、1‐ノナノール、プロパン‐1,2‐ジオール、プロパン‐1,3‐ジオール、ブタン‐1,2‐ジオール、ブタン‐1,3‐ジオール、2‐ブタノール、ペンタン‐1,5‐ジオール、1‐ペンタノール、シクロペンタノール、及びベンジルアルコールから成る群から選択された少なくとも一種のアルコールと、任意で少なくとも一種の染料とを備えることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイス又は請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記染料が、トリフェニルメタン染料、ローダミン染料、特にキサンテン、アゾ染料、フェナジン染料、及び、フェノチアジン染料から成る群から選択されることを特徴とする請求項21に記載のデバイス又は方法。
【請求項23】
前記指標物質が、1‐オクタノール、1‐ノナノール、プロパン‐1,2‐ジオール、プロパン‐1,3‐ジオール、ブタン‐1,2‐ジオール、ブタン‐1,3‐ジオール、2‐ブタノール、ペンタン‐1,5‐ジオール、1‐ペンタノール、シクロペンタノール、及びベンジルアルコールから成る群から選択された少なくとも二種のアルコール成分を備え、及び/又は、前記指標物質が、オイルレッド、メチルレッド、ブリリアントグリーン、ローダミンB、ニュートラルレッド、メチレンブルー、及び細胞学において細胞を着色するのに用いられる他の染料から成る群から選択された少なくとも一種の染料を備えることを特徴とする請求項21又は22に記載のデバイス又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結保存生体サンプルの温度監視用の方法に関する。本発明は、更に、凍結保存生体サンプルの温度監視用のデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の低温保存(凍結保存)は、生理的温度に温めた後に再始動可能なように細胞レベルにおいて生命活動を可逆的に停止させる(生命力を維持する)ことができる現状で唯一の可能性である。凍結保存は、大型のバイオバンクによって最近数十年にわたって開発されてきて、病院、製薬会社、種の保存、環境保護、健康対策にとって重要な要素となっている。生体物質は、多様なサイズの低温適合性サンプル容器(クライオ容器)、例えば、チューブ、ストロー、バッグに保管される。凍結保存の場合、保管された生体物質は、そのサンプル物質の生命力を維持しながら凍結され、通常は-80℃未満の温度で、生体収集用には-140℃未満から液体窒素の温度で凍結される。以下では、「低温サンプル(クライオサンプル)」との用語が、凍結保存されたサンプルや、凍結保存されるサンプルに対して使用される。
【0003】
低温でのサンプル保管については、巨視的サンプル、例えば血液や組織用に多数の方法が開発されている。最近の医薬、遺伝子工学、生物学では、小型サンプルを凍結保存させることが益々多くなっている傾向にある。例えば、懸濁させた細胞や細胞集団を有する僅かな体積の懸濁液(ミリリットル単位以下)を凍結させる。in‐vitro(インビトロ,体外)培養の細胞の凍結保存は、主に懸濁液中において行われる。しかしながら、生物医学的に重要な細胞の多くは、その伝播及び適切な発達のために基質との接触を要する。従って、サンプルは、例えば培養後に、基質に結合された状態で凍結される。
【0004】
サンプルは国家資源として病院での細胞治療や、製薬やバイオテクノロジー製品の開発、他の多数の事柄において使用されるものであるので、サンプルの質は極めて重要なものである。保管期間は数日から数十年と様々であるが、長期保管の傾向にある。サンプルは冷却容器に保管され、通常は金属の引き出しやラック内に置かれるが、これによって、新たに入れる際や取り出す際にサンプルが温度変動を受ける。生体保管(細胞、細胞懸濁液、組織片)の場合、途切れない連続的な冷却チェーンだけではなくて、深冷段階において大きな温度ジャンプを防止することが、極めて重要な役割を果たす。低温容器(クライオ容器)から取り出す間にサンプルが凍結したままではあるが、気付かぬままに-80℃から-20℃の温度に温められると、質の低下が気付かぬままに生じ、サンプルの価値を低下させるだけではなくて、臨床分野で用いられる際には生命を脅かす事態に繋がり得る。サンプルが短時間解けただけの場合であっても、その再凍結状態においてサンプルが元々の状態に最早一致していないかどうかを見て取ることはできない。生体物質の解凍を特定するだけではなくて、-140℃から-20℃の間の範囲内の閾値温度を超えたことを記録実証することが特に重要である。各サンプルに対する温度の制御及び記録実証は、現状では満たされることが稀な要件であり、満たされるとしても高い技術的コストを伴う。また、解凍後の広範な臨床試験も、貴重なサンプル物質を使用するものであって、低温サンプルがその間に無用なものになった場合であってもコストを発生させることに留意されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の一つの目的は、従来の方法の欠点を回避することができ、単純な方法の実行を特徴とする凍結保存生体サンプルの温度監視用の改善された方法を提供することである。更なる目的は、従来の方法の欠点を回避することができる凍結保存生体サンプルの温度監視用のデバイスを提供することである。
【0006】
更なる目的は、低温サンプルが僅かな時間であっても所定の閾値温度を超えて温められたかどうかをマーカーから可能な限り単純に特定することができる可能性を提供することである。凍結に先立って-20℃から-140℃までの間の範囲内で閾値温度を設定することができなければならない。これは、数百万個のサンプルに対し、その個別の低温サンプルにおいて素早く簡単に可能とされなければならず、生体物質を変化させてはならず、深冷状態において為されたものでなければならない。サンプルが保管場所から取り出され戻される度に一般的にはラック全体が引き出されるので、複数のサンプルにサンプル変化の危険性があるため、可能であれば、保管容器内においてもサンプルの状態を検出できることが望ましい。本デバイス及び方法は取り扱いが簡単で、低温耐性があり、調整可能であることが望ましい。冷却状態での生体サンプルの保管が総支出において数ユーロしか掛からないことが望ましいので、エネルギーがほとんど又は全く消費されず、コストを最小にしなければならない。また、使用される物質がこの要求を満たさなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、独立請求項に記載の特徴を有するデバイス及び方法によって達成される。本発明の有利な実施形態及び応用は従属請求項から明らかとなるものであり、図面を部分的に参照する以下の説明においてより詳細に説明されるものである。
【0008】
本発明の第一態様によると、上記目的が、凍結保存生体サンプルの温度監視用の方法によって達成される。凍結保存生体サンプルの温度監視用のデバイスが本方法を実行するために提供される。
【0009】
本発明の第二態様によると、凍結保存生体サンプルの温度監視用の本デバイスは特許請求可能なものとして開示される。デバイスに関する実施形態、特にその有利な実施形態の変形例については、繰り返しを避けるために、本デバイスに関するデバイスの特徴、また本方法に従って関係するデバイスの特徴として開示されているとみなされるべきものであり、特許請求可能なものである。
【0010】
凍結保存生体サンプルの温度監視用の本デバイスは、サンプル(特に生体サンプル)を収容するための収容空間を有するサンプル容器を備える。収容キャビティが凍結保存サンプルを含むことができる。
【0011】
本デバイスは少なくとも一つのチャンバを更に備え、チャンバの内部空間は収容空間と流体的に接続されず、指標物質が、収容空間内に配置されたサンプルと直接接触することができないようにされる。更に、チャンバは部分的にのみが指標物質で充填され、指標物質の常圧(つまり、1013.25mbar)での融点は-20℃から-140℃の範囲内にある。融点は好ましくは-20℃から-100℃の範囲内にある。
【0012】
追加の区画が、指標物質で部分的に充填されていることの結果としての指標要素として用いることができるように、本発明に係るデバイスのチャンバによって提供され、閾値温度を望ましくなく超えたことを表示するようにする。
【0013】
サンプル容器は、凍結保存(低温保存)に適した容器、例えば、血液や幹細胞の保管用のバッグ(袋)、チューブ、ストロー(シードチューブとも称される)や、凍結保存に適した箱や他の容器である。そのため、このような容器は、低温チューブ(クライオチューブ)、低温ストロー(クライオストロー)、低温バッグ(クライオバッグ)、低温箱(クライオボックス)、まとめて低温容器(クライオ容器)とも称される。
【0014】
低温チューブ(クライオチューブ)はバイオバンクチューブや低温バンク(精子バンク)チューブとも称される。低温チューブは、生体サンプルを収容するための内部キャビティを形成する収容空間を有する。更に、低温チューブは、通常は、収容空間を閉じるためのカバーを有する。カバーは嵌め込み部を有することができて、ツールを用いその嵌め込み部を介してカバーを回転させることができる。また、低温チューブは、マーク、例えば機械可読コードを有する基部要素を有することもできる。
【0015】
本方法は、指標物質を凍結させることを更に備え、ここで、指標物質を凍結させるためにチャンバは第一位置に移動されて、液体状態の指標物質がチャンバの第一部分空間に流れてそこで凍結するようにする。その後、特に低温保管の監視段階の前と間において、凍結した指標物質を有するチャンバを、指標物質の融解が重力の影響の結果としてチャンバ内での指標物質の少なくとも部分的な形状構成変化をもたらす第二位置に移動させる。
【0016】
形状構成変化は、少なくとも部分的な指標物質の位置変化及び/又は指標物質の形状変化(例えば表面形状の変化)であり得る。指標物質は、第二位置で融解すると重力の影響下で第二部分空間に流れ、温度が融点未満に戻るとそこで再び凍結する。
【0017】
つまり、指標物質が、そのような幾何学的特性や位置において凍結され、チャンバが、深冷状態において、例えば保管温度や少なくとも指標物質の設定閾値温度や融点未満でその位置が変更されるので、指標物質の融解は、その位置の変化後に、液体の眼に見える変位やその区別可能な幾何学的特性をもたらす。この液体の変化(例えば、染色されていたり、他の方法で一目瞭然にされたりし得る)に基づいて、閾値温度を超えたかどうかを目視で又は技術的に自動化された方法でも直ちに確認することができる。
【0018】
本方法によると、凍結保存サンプルを有するサンプル容器と、凍結指標物質を有する少なくとも一つのチャンバとを有するデバイスを凍結保存用に保管することができ、温度監視用の少なくとも一つのチャンバは第二位置においてサンプル容器に対して配置される。
【0019】
後の時点において、凍結指標物質の形状構成変化、例えば、指標物質の少なくとも部分的な変位及び/又は形状変化が生じたかどうかを調べることができる。
【0020】
これが当てはまる場合には、指標物質の融点、つまりは監視される閾値温度を、特に短時間であっても超えたと、結論付けることができる。
【0021】
本発明特有の利点の一つは、指標物質の形状構成変化が、低温サンプルが、短時間であっても、所定の閾値温度を超えて温まったかどうかを直接示すという点である。これは、目視によっても、これに応じて構成された測定装置を用いた技術的に自動化された方法であっても、サンプル容器からサンプルを取り出したり、サンプルを解凍したりせずに、確かめることができる。
【0022】
特定の好ましい一実施形態によると、本デバイスは複数のチャンバを有することができ、各チャンバは指標物質で部分的にのみ充填され、それら指標物質の融点は-20℃から-140℃の範囲内にあり、異なるチャンバ内の指標物質は異なる融点を有する。従って、異なる温度閾値を監視することができ、監視したい温度閾値に融点が対応するように各指標物質が選択されて、及び/又は混合比が調整される。本実施形態は、サンプルが達した到達温度範囲をより正確に限定することができるという利点を有する。
【0023】
更に、チャンバ壁は少なくとも一点において透明又は半透明であり、指標物質の形状構成変化、例えば位置変化が生じたかどうかを外部から視ることができる。好ましくは、チャンバ壁全体が透明又は半透明で実現される。
【0024】
検出性能を改善するため、指標物質は、指標物質の物理的特性の検出性能を向上させる指標添加剤を含有することができる。例えば、指標添加剤は染料であり、指標物質が着色又は染色されて透明ではなくなり、その形状及び/又は位置が光学的により明らかになる。
【0025】
原理的には、少なくとも以下の条件を満たすものが染料として可能である:
‐ 少量低濃度であっても強力な染色性能(例えば、<1体積%(一般的には1000分の1又はそれ以下の範囲)の範囲で飽和染料溶液に追加することから始める);
‐ 不凍性;
‐ 取り出し温度及び関連する低温における耐光性;
‐ 指標物質の全成分における可溶性;
‐ 凍結中に分離しないこと;
‐ 指標物質と接触することになるプラスチック物質に反応しないこと。
【0026】
好ましくは、染料は、トリフェニルメタン染料、ローダミン染料、特にキサンテン、アゾ染料、フェナジン染料、フェノチアジン染料から成る群から選択される。
【0027】
より具体的な実施形態では、染料は、オイルレッド、メチルレッド、ブリリアントグリーン、ローダミンB、ニュートラルレッド、メチレンブルー、及び細胞学において細胞を染色するのに用いられる他の染料から成る群から選択される。
【0028】
指標添加剤は、指標物質に当たる電磁放射に対する指標物質の散乱作用及び/又は偏光作用を増大させる粒子、特にナノ粒子であり得る。結果として、光透過測定、散乱測定及び/又は偏光測定を用いて、指標物質の形状構成変化をより確実に検出することができる。指標添加剤は導電性粒子であり得る。指標物質の導電性又はインピーダンスは導電性粒子を加えることによって影響され得る。このようにして、指標物質の形状構成変化を導電性測定又はインピーダンス測定を用いて検出することができる。
【0029】
好ましい一実施形態によると、本デバイスは、チャンバ内の指標物質の位置を検出するように形成された測定装置を有することができる。測定装置は、光学的又は光電気的な測定装置であり得て、指標物質の形状構成変化を、例えば、光透過、散乱光又は反射の測定で確かめることができる。
【0030】
指標物質として選択可能な物質は、その融点が所定の閾値温度に対応し、それを超過することを監視したいというものである。指標物質は一種の液体又は異なる液体の混合物であり、その融点が所望の閾値温度に対応する。単に例として、水(H2O)とエタノール(C2H6O)の混合物、水(H2O)と水酸化カリウム(KOH)の混合物、又は、水と不凍剤の混合物が指標物質として選択可能である。混合比は、混合比の関数として融点のプロファイルを示す各場合の融点図に従って調整されて、液体混合物の融点が所望の値、つまりは監視される閾値温度を有するようにされる。
【0031】
好ましい一実施形態によると、指標物質は、1‐オクタノール、1‐ノナノール、プロパン‐1,2‐ジオール、プロパン‐1,3‐ジオール、ブタン‐1,2‐ジオール、ブタン‐1,3‐ジオール、2‐ブタノール、ペンタン‐1,5‐ジオール、1‐ペンタノール、シクロペンタノール、及びベンジルアルコールから成る群から選択された少なくとも一種のアルコールを備える。少なくとも一種のアルコールは、特に好ましくは、プロパン‐1,3‐ジオール、プロパン‐1,2‐ジオール、及び、2‐ブタノールから選択される。
【0032】
好ましい他の実施形態によると、指標物質は、以下の少なくとも二種の異なるアルコール成分を備える:
(a)1‐オクタノール、1‐ノナノール、プロパン‐1,2‐ジオール、プロパン‐1,3‐ジオール、ブタン‐1,2‐ジオール、ブタン‐1,3‐ジオール、2‐ブタノール、ペンタン‐1,5‐ジオール、1‐ペンタノール、シクロペンタノール、及びベンジルアルコールから成る群から選択されたアルコール;
(b)1‐オクタノール、1‐ノナノール、プロパン‐1,2‐ジオール、プロパン‐1,3‐ジオール、ブタン‐1,2‐ジオール、ブタン‐1,3‐ジオール、2‐ブタノール、ペンタン‐1,5‐ジオール、1‐ペンタノール、シクロペンタノール、及びベンジルアルコールから成る群から選択され、(a)のアルコール成分よりも低い融点を有するアルコール;
ここで、(a)の成分と(b)の成分の混合比は、混合物の融点が、-20℃から-160℃、特に-25℃から-160℃、又は-50℃から-150℃の範囲内にあるように調整される。
【0033】
より具体的な実施形態は、指標物質が(a)の成分と(b)の成分の以下の組み合わせのうち一つを備えることを特徴とする:
‐ 5体積%から95体積%の混合比の1‐オクタノールと2‐ブタノール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比の1‐オクタノールと1‐ペンタノール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比の1‐オクタノールとプロパン‐1,2‐ジオール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比の1‐ノナノールと2‐ブタノール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比の1‐ノナノールとプロパン‐1,2‐ジオール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比の1‐ノナノールと1‐ペンタノール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比のプロパン‐1,2‐ジオールと2‐ブタノール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比のプロパン‐1,2‐ジオールとプロパン‐1,3‐ジオール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比のプロパン‐1,2‐ジオールとブタン‐1,2‐ジオール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比のプロパン‐1,3‐ジオールと2‐ブタノール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比のプロパン‐1,3‐ジオールとブタン‐1,2‐ジオール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比のペンタン‐1,5‐ジオールと2‐ブタノール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比のベンジルアルコールと2‐ブタノール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比の1‐ペンタノールと2‐ブタノール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比の1‐ペンタノールとメタノール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比のシクロペンタノールと2‐ブタノール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比のシクロペンタノールとプロパン‐1,2‐ジオール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比のシクロペンタノールと1‐ペンタノール;
‐ 5体積%から95体積%の混合比のシクロペンタノールとブタン‐1,2‐ジオール;
ここで、示されている混合比の値は、それぞれ、両成分の混合物中の前者の成分の比に関する。
【0034】
特に好ましい実施形態によると、この指標混合物は、例えば、40体積%から60体積%の混合比のプロパン‐1,2‐ジオールと2‐ブタノール(略-90℃の融点となる)、30体積%から70体積%の混合比のプロパン‐1,2‐ジオールとプロパン‐1,3‐ジオール、又は、30体積%から70体積%の混合比のプロパン‐1,3‐ジオールと2‐ブタノールを備える。
【0035】
また、指標物質は、好ましくは、少なくとも一種のアルコールに加えて、上述のような少なくとも一種の染料も備える。この染料は、特に好ましくは、オイルレッド、メチルレッド、ブリリアントグリーン、及びローダミンBから成る群から選択される。
【0036】
より具体的な実施形態では、指標物質が、プロパン‐1,3‐ジオール、プロパン‐1,2‐ジオール、及び2‐ブタノールから選択された二種のアルコール(a)及び(b)を備え、好ましくは上述の混合比で備え、また、オイルレッド、メチルレッド、ブリリアントグリーン、及びローダミンBから成る群から選択された染料を備えることを特徴とする。
【0037】
アルコール成分中の染料の濃度は、染料とアルコールとに応じて、大きく異なり得る。
【0038】
強力な着色の場合には、一般的に、濃度は可能な限り低く保たれることが望ましく、染料分子が、それが溶解されるアルコールの凝固及び融解の特性を変化させたり、粘度を増大させたりしないようにする。染料の濃度は、典型的には、<10体積%、特に<1体積%又は<0.1体積%の範囲、つまり、1000分の1又はそれ以下の範囲内にある。
【0039】
本発明の一変形例では、監視される閾値温度は、指標物質の融点に直接対応せず、融点を超える温度に対応し、その温度において、必要とされる液体の移動を可能とする程度にまで融解した物質の粘度が下がるものとする。
【0040】
この温度も閾値温度と称され、典型的には、公称の融点より3~30℃、又は5~30℃、例えば3~10℃、3~20℃、5~10℃、又は5~20℃高い温度範囲にある。
【0041】
従って、有利な一実施形態では、指標物質は、その融点より3~30℃又は5~30℃高い温度範囲において液体混合物が、10から106mPa×s、好ましくは10から104mPa×sの範囲内の粘度を有することを特徴とする。
【0042】
本デバイスの少なくとも一つのチャンバは、サンプル容器の外部に配置可能な及び/又は配置されている一つ以上のキャビティを有する容器によって形成可能である。「配置可能及び/又は配置されている」との用語は、「取り付け可能及び/又は取り付けられている」、「結合可能及び/又は結合されている」、「接続可能及び/又は接続されている」を含むものである。従って、指標物質で部分的に充填される少なくとも一つのチャンバを形成するための容器は、サンプル容器とは区別可能なものである。
【0043】
本発明を実現する一つの可能性では、少なくとも一つのチャンバを形成するための容器が、サンプル容器に脱着可能に取り付けられるものとされる。脱着可能な取り付けは、特に、サンプル容器に対して容器をスライドさせること又は押し込むことを含む。これは、容器を、サンプル容器とは空間的に個別に保管又は準備すること(例えば、第一位置において指標物質を凍結させること)を可能にするという利点を有する。
【0044】
更なる実施形態によると、少なくとも一つのチャンバは、サンプル容器に旋回可能に取り付けられる一つ以上のキャビティを備える容器によって形成可能である。旋回性は、容器をサンプル容器に対して二つの異なる位置に直接移動させて、指標物質を第一位置において凍結させ、その後、第二位置において温度監視用に保管することができるという利点を有する。
【0045】
本実施形態の有利な一変形例では、容器は、サンプル容器の長手方向端部に旋回可能に取り付けられる。これは、特に複数のそのようなサンプル容器を低温バンクに保管する際に、利用可能な空間を有利に使用することを可能にする。
【0046】
屈曲部を用いて容器をサンプル容器に旋回可能に取り付ける場合には、特に取り扱いが簡単な低コストの旋回機構を提供することができる。
【0047】
サンプル容器は、例えば、収容空間に保管されている生体サンプルの汚染を防止するために、収容空間を閉じるためのカバーを有することができる。本願発明においては、サンプル容器のカバーに脱着可能又は旋回可能に少なくとも一つのチャンバを形成するための容器を取り付けることができる。これは、一方では、指標物質を有する容器を収容するためには従来の低温容器のカバーのみを便利に適応させればよいという利点を有し、他方では、サンプル容器に生体サンプルを入れることを、容器内で指標物質を凍結させること及びサンプル容器のカバーに容器を取り付けることとは空間的及び時間的に個別に行うことができるという利点を有する。
【0048】
サンプル容器に対して容器を可能な限り空間を節約して配置するために、更なる変形例に係る容器は、サンプル容器の長手軸に垂直な回転軸周りで旋回可能にサンプル容器に取り付け可能である。
【0049】
サンプル容器に旋回可能に取り付けられ少なくとも一つのチャンバを形成する容器は、例えば、半環状又は環状の中空体として実現可能であり、サンプル容器の長手軸に対して同軸に位置する第一旋回位置と、第一旋回位置から少なくとも45°、好ましくは90°回転した第二旋回位置とに移動可能である。第一旋回位置は水平位置であり得る。第二旋回位置は垂直位置であり得る。この変形例は、特に、容器がサンプル容器の長手方向端部に旋回可能に取り付けられるシリンダ状のサンプル容器、例えば、低温チューブ(クライオチューブ)の場合に特に有利である。本デバイスの特に小型の実施形態は、半環状又は環状の容器の直径がシリンダ状のサンプル容器の直径に対応している場合に実現可能である。何故ならば、第一旋回位置におけるサンプル容器と容器との側面が互いに同軸上で面一に配置可能だからである。
【0050】
「環状」又は「半環状」との用語は、平坦な環状や平坦な半環状の形状、つまり、下側及び上側が平坦な環状や半環状の形状も含むものである。更なる変形例の実施形態によると、半環状又は環状の容器の一方の側はその内側がミラー状にされ得る。これは、測定装置の測定ビームを用いて指標物質の位置変化を単純に検出することを可能にする。例えば、測定ビームを透明又は半透明の容器の内部空間に向けて、測定ビームがミラー状の内面のみに当たり、融解過程の結果として指標物質の位置が変化している場合には、そのミラーによって反射されるようにする。指標物質の位置が変化していない場合には、対照的に、測定ビームは指標物質によって吸収される。
【0051】
サンプル容器に旋回可能に取り付けられ少なくとも一つのチャンバを形成する容器は、長手方向に中空な中空体、例えばチューブでもあり得て、サンプル容器に対して直接又は間接にそのサンプル容器の長手方向端部において旋回可能に取り付けられる。
【0052】
サンプル容器に容器を旋回可能に取り付けることは、更に、容器の長手軸がサンプル容器の長手軸に平行になる第一旋回位置と、第一旋回位置に対して少なくとも45°回転した第二旋回位置とに容器を移動可能にすることでも実現可能である。この変形例の実施形態は、容器内の指標物質の位置及び/又は形状を光学的に検出するのに特に適している。
【0053】
上述のように、指標物質を含む容器を、サンプル容器に脱着可能に取り付けることもできる。これについて可能な一実施形態では、容器又は少なくとも一つのチャンバを二重壁の押し込み部として実現する。これは、サンプル容器に素早く取り付けることを可能にし、従来通りの方法で実現可能である。更に、押し込み部はサンプル容器に付着可能である。
【0054】
この実施形態の第一変形例によると、二重壁の押し込み部は、サンプル容器の長手方向端部においてサンプル容器に押し込み可能な二重壁のキャップであり得る。更に、この変形例は、サンプル容器をその保管場所から取り外す必要なく、指標物質の形状又は位置の変化を素早く視覚的に調べることを可能にする。
【0055】
第二変形例によると、二重壁の押し込み部は、サンプル容器の外側のケース表面に対して押し込み又はスライド可能であり、押し込まれた状態でサンプル容器の周りに少なくとも部分的に嵌め込まれる。この変形例は、シリンダ状のサンプル容器、特に低温チューブ(クライオチューブ)の場合に特に有利である。二重壁の押し込み部は、中空のシリンダ又は部分的に中空のシリンダとして実現可能であり、その内径がサンプル容器の外径に対応して、シリンダ状のサンプル容器の周りに押し込み部がカラーやクランプのようにはまる。
【0056】
本発明の更なる実施形態によると、少なくとも一つのチャンバはサンプル容器自体に統合され、つまり、サンプル容器自体が、その内部に、一つ又は複数のそのようなチャンバを有することができる。この結果として、少なくとも一つのチャンバを形成するためにサンプル容器の外部に配置される別途の構成要素が省略可能となる。例えば、少なくとも一つのチャンバを形成するためのサンプル容器の収容空間は内壁と外壁とを有する二重壁として実現可能であり、内壁と外壁との間の中間空間が指標物質で部分的に充填される。複数のチャンバを形成するために、中間空間を、分離壁によって複数の部分空間に分割することができる。
【0057】
サンプル容器との用語は、特に、凍結保存用に構成された容器のことを称する。好ましくは、サンプル容器は、-140℃未満の温度の低温適合性プラスチック物質を用いて製造される。プラスチック物質は、変化したり損傷したりせずに繰り返しの温度変化に耐えることができる。プラスチック物質は、好ましくは、正味質量の<1%(1%未満)、特に正味質量の<0.1%(0.1%未満)の吸水性能のものが使用される。本発明に係る低温保管要素は、例えば、ポリウレタンやポリエチレンに基づく。
【0058】
「生体サンプル」との用語は、サンプル容器中で凍結保存され、適切な場合には、懸濁液中にあり及び/又は基質物質と組み合わせられる細胞、組織、細胞成分、生体高分子等の生体物質のことを称する。生体サンプルの一部である生体細胞に付着して受容するように構成されている基質を収容空間内に配置することができる。
【0059】
上記本発明の好ましい実施形態及び特徴は互いに組み合わせ可能である。以下、添付図面を参照して、本発明の更なる詳細及び利点について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】凍結保存生体サンプルの温度監視用のデバイスの多様な例示的な実施形態の模式図を示す。
【
図2】凍結保存生体サンプルの温度監視用のデバイスの多様な例示的な実施形態の模式図を示す。
【
図3】凍結保存生体サンプルの温度監視用のデバイスの多様な例示的な実施形態の模式図を示す。
【
図4】凍結保存生体サンプルの温度監視用のデバイスの多様な例示的な実施形態の模式図を示す。
【
図5】凍結保存生体サンプルの温度監視用のデバイスの多様な例示的な実施形態の模式図を示す。
【
図6】凍結保存生体サンプルの温度監視用のデバイスの多様な例示的な実施形態の模式図を示す。
【
図7】凍結保存生体サンプルの温度監視用の方法の例示的な実施形態を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
同一の要素や機能的に等価な要素は全図面において同じ参照番号で指称され、一部は個別に記載されていない。
【0062】
図1Aは、低温バイオバンクで使用されているような典型的な低温チューブ(クライオチューブ)1の形態のサンプル容器を示す。低温チューブは生体サンプル用の収容空間2を備え、その収容空間内に生体物質が配置される。ここでは、生体サンプルは細胞懸濁液6である。低温チューブは、更に、容器を閉じるカバー3と、頂部の嵌め込み部4とを備え、自動化の場合には、ツール(図示せず)を用いてその嵌め込み部を介して、カバー3を回転させることができる。また、低温チューブ1は、基部(底部)5を含みことができ、その基部5には任意選択的にバーコードや他のマークが入れられる。この形態では通常は低温コンテナの格納部に垂直に立てて、低温チューブ1が保管される。
【0063】
図1に示される実施形態によると、深冷状態の二重壁の透明キャップ11が低温チューブ1の上に押し込まれる。キャップ11は
図1Bに示されている。二重壁のキャップ13は内壁13と外壁12とを有する。内壁13と外壁12との間の壁空間つまり中間空間14は、液体又は液体混合物の形態の指標物質7で部分的に充填され、その凝固点/融点は、混合比によって、-20℃から-100℃の範囲内に選択される。これについては、
図8から
図10に基づいて以下でより詳細に説明する。
【0064】
キャップ11は、
図1Bに示されるキャップ11の回転位置に対して180°回転させた第一位置において、閾値温度未満に冷却されて、液体が重力の影響下で中間空間14内をキャップ先端15に向けて下方に流れてそこで凍結する。そして、キャップ12を回転させると、
図1Bに示される状態を示す。指標物質7はキャップ先端15において固体に凍結している。
【0065】
指標物質7の凝固点/融点未満の温度において、
図1Cに示されるようにキャップ11が低温チューブ1の上に押し込まれる。このようにして温度監視用に形成されたデバイス10を低温保管、例えば低温タンク内に保管することができる。
【0066】
サンプル6並びに指標物質7が或る時点において指標物質7の融点を超える温度範囲に達した場合には、融解した指標物質7が壁空間14内を下方に流れて、キャップ下部16に集まる。その状態は
図1Dに示されている。他方、サンプル6が指標物質7の凝固点未満に常に保たれていたのであれば、
図1Eに示される状態となる。このようにして、サンプル6が許容不能に温まったことが簡単に見て取れる。外観上自動化された方法においても、また、適切に形成された測定装置を用いても、キャップ11内での指標物質の位置を光学的、光電気的に検出することができる。指標物質7が染色されている場合には、位置の決定が容易になる。また、指標物質の位置の決定は保管温度において冷却タンクでも容易に実行可能である。デバイス10の更なる利点は、キャップ11の再利用性と、自由に選択可能な凝固点を有する指標物質7として用いられるマーカー液体の使用である。生体用ラックの場合、-80℃付近の融点が推奨される。何故ならば、この場合、細胞内及びその付近での氷の明らかな再結晶化が生じて、低温サンプルの質を低下させるからである。-80℃で保管される遺伝物質や体液の保管の場合には、-30℃付近の融点が推奨される。
【0067】
図2は、
図2Bに示されるように透明物質で構成される押し込み可能部21の形態の二相構成の変形例を示し、
図2Dに示されるように、この部分を
図2Aに示されるような低温チューブ(クライオチューブ)1に押し込むことができる。
【0068】
押し込み部21は、壁空間24を形成する内壁23と外壁22とを有する二重壁となるように実現される。壁空間24は分離壁25によって、互いに分離されている二つの部分空間24aと24bとに分割される。このようにして、押し込み部は二つのチャンバ24a、24bを形成する。チャンバ24aは第一指標物質7で部分的に充填され、チャンバ24bは第二指標物質26で部分的に充填される。指標物質7と26とは異なる融点を有し、それらの融点未満では、
図2Bに示される第一位置において凝固する。次いで、押し込み部21を180°回転させて、凍結した低温チューブ1に押し込む。低温チューブ1と押し込み部21とを備えるデバイスは参照番号20で指称される。押し込み部21は低温チューブ1の寸法に合わせられて、低温チューブの外面上に押し込まれてその周りに嵌め込むことができるようにされる。
【0069】
-80℃付近の凝固点を有する液体を第一指標物質7として選択し、-60℃付近の凝固点を有する液体を第二指標物質26として選択する場合、取り出しと再保管とのいずれかの過程においてや、タンク内において、低温チューブを1が押し込み部21と共に-80℃より高いが-60℃より低い温度になると、
図2Dに示される状態になる。指標物質26が一時的に融解して壁空間24bの下方領域に流れる一方で、指標物質7は壁空間24aの上方領域に位置したままである。このようにして、保管温度の変化を制限することができる。デバイス20が少なくとも一時的に-60℃よりも高く温められると、両方の指標物質7、26が押し込み部の下方空間に位置する(図示せず)。サンプルが適切に保管されていると、押し込み部21は
図2Cに示される状態を示す。
【0070】
図3は、部分的に液体で充填された二重壁の透明な環状体31の二つの変形例を示し、その環状体は、指標物質7を収容するための内部空間34を形成し、低温チューブ(クライオチューブ)1に旋回可能に取り付けられる。
図3A及び
図3Bに示される変形例のデバイス30の場合、環状体31は低温チューブ1のカバー3に旋回可能に取り付けられる。
図3C及び
図3Dに示される変形例のデバイス30cの場合、環状体31は低温チューブ1の基部5に旋回可能に取り付けられる。旋回軸Dは低温チューブ1の長手軸に垂直である。環状体は、
図3A及び
図3Cに示されるような垂直位置と、また
図3B及び
図3Dに示されるような水平位置とに旋回可能である。
【0071】
低温チューブ1と環状体31とで構成されるデバイス30、30cはそれぞれ、
図3A、
図3Cに示されるように環が垂直位置で凍結される。指標液体7は環状体31の下半分の部分空間33内で凝固する。指標物質は図示されているように内部環状空間の半分を占めなければならないというものではなく、半分よりも上又は下に存在してもよいことを強調しておく。指標液体7の凝固後に、
図3B及び
図3Dに示されるように環状体31を付着部36において水平位置に回転させる。これら図の状態が維持されている限り、デバイス30、30c又はそこに保管されているサンプル6は、指標液体7の融点よりも高く温まったものではない。そうでなければ、液体が広がって部分空間32内に部分的に位置し、これは、目視検査で又は光学測定によっても確かめることができるものとなる。
【0072】
図4は、細長の容器41の場合の更なる例示的な実施形態を示し、その細長の容器の内部空間44は指標物質7で部分的に充填され、回転軸D周りで低温チューブ1(旋回可能)に旋回可能に取り付けられる。指標物質7は容器41の傾斜位置又は垂直位置において凍結される。次いで、
図4Bに示されるように、凍結した指標物質7を有する容器41を下方に屈曲させる。このため、屈曲部46を介して容器を低温チューブ1に取り付ける。指標物質7が上方の部分空間42内で凍結したままである限り、融点を超えてはいない。デバイス40が低温保管後に
図4Bに示される状態であれば、指標物質の融点を超えてはいないと結論付けられる。このデバイス40は光学検出に特に適している。つまり、測定装置(図示せず)を用いて、その測定ビーム経路45(破線)を透明容器41の下方の部分空間43に向けることで、指標物質7が融解過程の結果として液体になり、結果として下方の部分空間43に流れているかどうかを調べることができる。この場合、測定ビーム45が指標物質によって吸収され、その指標物質を、測定ビーム45が遮られることによって検出することができる。
【0073】
図5は、更なる例示的な実施形態の凍結保存生体サンプルの温度監視用のデバイス50の模式的な断面図を示す。この例示的な実施形態では、指標物質7を収容するためのチャンバ54は低温チューブ(クライオチューブ)51に統合(一体化)される。低温チューブ51は、生体サンプル6が入れられる収容空間(収容シリンダ)2と、カバー3とを有する。カバーは、収容空間2内に嵌め込まれるシャフト8を有する。収容シリンダ2の壁は、指標物質7が配置される壁空間54を形成する外壁52と内壁53とを有する二重壁になるように実現される。サンプル6を有するデバイス50は以下のように凍結される。
【0074】
生体サンプル6の凝固点(一般的には-20℃)未満の温度への冷却は、
図5Aに示されるような低温チューブ51の位置において行われる。そして、
図5Bに示されるような状態になる。そして、凍結した生体サンプル6を液体のままの指標物質7と共に、
図5Bに示される位置から
図5Cに示される位置へと180°回転させて、指標物質7の凝固点未満の温度に更に冷却する。指標物質7の融点が例えば-60℃に選択される場合、両液体の凝固後に、その温度未満においてサンプル6を
図5Aの開始位置に戻すことができ、
図5Dの状態になる。凍結した指標物質7は低温チューブ51の上部にあり、凍結した生体サンプル6は底部にある。-60℃の融点に届かない場合、これは、両液体が再び
図5Aに示されるように下方のシリンダ領域に位置することから明らかとなる。これも、
図5Dの破線のビーム経路45に示されるように、光透過や散乱光の測定等を介して検出可能である。手動の場合には、指標物質7の着色が役に立つ。
【0075】
図6は、更なる凍結保存生体サンプルの温度監視用のデバイス60の模式図を示す。本実施形態の一特徴は、指標物質7で部分的に充填された容器が半環状の中空体61として具現化されている点である。半環状体61の両端は、低温チューブ(クライオチューブ)1のカバー3に旋回可能に、特に低温チューブ1の長手軸に垂直な回転軸D周りで旋回可能に取り付けられる。半環状体61が垂直位置に旋回された
図6Aの位置において、デバイス60を保管温度に凍結させる。指標物質7は液体状態のままで、重力の結果として、垂直な半環状体61の二つの底部へと流れ、回転軸Dの真上の右側と左側とに位置する。そこで指標物質が凍結する。深冷状態において、半環状体61を
図6Bに示されるような水平位置に動かす。
【0076】
半環状体61に対しては光学測定を上方から極めて簡単に行うことができ、その光学測定は、指標物質7が元々の位置にあるままであるか、
図6Cに示すように環状基部62に広がってしまっているかを示す。この場合、或る時点において指標物質7の融点を超えてしまっている。また、半環状体61の平坦面をミラーにして、指標物質が広がってしまっていない場合には光学測定ビーム45が反射されるようにすることもできる。
【0077】
図7は、凍結保存生体サンプルの温度監視用の方法のフローチャートを示す。ステップS1では、温度監視用のデバイスを、例えば、デバイス10、20、30、30c、40、50、60のいずれかを提供する。この場合、低温保管において監視される温度の閾値に応じて、適切な液体又は液体混合物が使用物質7として選択される。
【0078】
適切な液体と液体混合比との選択を介して、その融点は、-20℃から-140℃の範囲内の所望の値に設定可能である。
【0079】
例えば、
図8Aは、アルコールと水との混合比の関数として融点のプロファイルを示し、温度低下と共に粘度が適度に増大し、0℃から-118℃までの温度範囲をカバーすることができる。例えば、-118℃の温度閾値を監視する場合、エタノール比が93.5%に設定され得る。-60℃を僅かに下回る値までの融点は、水に水酸化カリウム(KOH)を加えることによっても設定可能である、その融点図は
図8Bに示されている。また、水と不凍剤との混合物を指標物質として用いることもでき、これは
図9Aの融点図に示されている。
図9Bの表は、単体で又は他の液体との混合物として指標物質に使用可能な更なる純液体の凝固点/融点を列挙している。指標物質に適した更なる液体混合物として、クロロホルム/シクロヘキサンの混合物や、例えば、
図10の溶媒の混合可能性のマトリクスから推測可能な他の混合可能な液体が挙げられる。
【0080】
低温において優れた濡れ性と低い粘性とを有する液体及びプラスチック物質は、主に、位置変化を可能な限り広範なものにして、追加の区画を可能な限り小さくするように選択される。
【0081】
低温保管中に複数の温度閾値が監視される場合や、サンプルが達する到達温度範囲をより正確に限定することが望まれる場合には、それに応じて、融点の異なる複数の異なる指標物質を用いて、サンプル容器の異なるチャンバ内に配置することができる。
【0082】
ステップS2では、チャンバ中の指標物質を凍結させるが、指標物質の凍結の際には、チャンバを第一位置に移動させる。異なる複数の指標物質と複数のチャンバの場合、それぞれ同様に第一位置に移動させて、凍結させる。
【0083】
その後、ステップS3では、凍結した指標物質を有する少なくとも一つのチャンバを第二位置に移動させ、チャンバがサンプル容器に対して未だ配置されていない場合には、サンプル容器に対して配置する。第二位置は、凍結した指標物質の空間位置を変化させるが、これは、少なくとも、位置変化後の融解が、眼に見える液体の変位、又はその液体のチャンバ中で区別可能な幾何学的特性をもたらすようにされる。
【0084】
この状態において、融点未満の保管温度で、デバイスを、サンプル容器の収容空間内の低温サンプルと共に保管することができる(ステップS4)。
【0085】
その後、保管プロセス中の所望の時点において、指標物質を用いて、望ましくなく一時的であっても低温サンプルが温まったかどうかを調べることができる。このため、融解過程に起因して指標物質の少なくとも部分的な変位及び/又は形状変化が生じたかどうかを調べる。これが当てはまる場合には、監視される閾値温度を超えたと結論付けることができる。
【0086】
具体的な例示的な実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者には、本発明の範囲を逸脱せずに多様な変更が可能であり、また等価物との置換が可能であることは明らかである。従って、本発明は開示されている例示的な実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に落とし込まれる全ての例示的な実施形態を含むものである。特に、本発明は、引用先の請求項に関係なく、従属請求項の特徴及び主題の保護も請求するものである。
【符号の説明】
【0087】
1 サンプル容器、例えば低温チューブ(クライオチューブ)
2 収容空間
3 カバー
4 嵌め込み部
5 基部
6 生体サンプル、例えば細胞懸濁液
7 指標物質
8 シャフト
10 温度監視用のデバイス
11 キャップ
12 外壁
13 内壁
14 壁空間
15 キャップ先端
16 キャップ下部
20 温度監視用のデバイス
21 二重壁の押し込み部
22 外壁
23 内壁
24 壁空間
24a 部分空間
24b 部分空間
25 分離壁
26 第二指標物質
30 温度監視用のデバイス
30c 温度監視用のデバイス
31 環状体
32 第一部分空間
33 第二部分空間
34 内部空間
36 付着部
40 温度監視用のデバイス
41 容器
42 第一部分空間
43 第二部分空間
44 内部空間
45 測定ビーム
46 屈曲部
50 温度監視用のデバイス
51 容器、例えば低温チューブ(クライオチューブ)
52 外壁
53 内壁
54 壁空間
60 温度監視用のデバイス
61 半環状体
62 半環状基部
63 回転軸
64 内部空間
D 回転軸
【手続補正書】
【提出日】2021-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結保存生体サンプル(6)の温度監視用のデバイス(10、20、30、30c、40、50、60)であって、
(a)生体サンプル(6)を収容するための収容空間(2)を有するサンプル容器(1、51)と、
(b)少なくとも一つのチャンバとを備え、該チャンバの内部空間が前記収容空間(2)と流体的に接続されておらず且つ指標物質(7)で部分的にのみ充填されていて、該指標物質(7)の融点が-20℃から-140℃の範囲内にあり、
前記少なくとも一つのチャンバが二重壁の押し込み部(11、21)によって形成され、該二重壁の押し込み部(11、21)が前記サンプル容器に脱着可能に取り付けられるか又は前記サンプル容器に付着されている特徴(i)、又は、
前記少なくとも一つのチャンバを形成するための前記サンプル容器(51)の収容空間が、内壁(53)と外壁(52)とを有する二重壁とされ、前記内壁(53)と前記外壁(52)との間の中間空間(54)が前記指標物質(7)で部分的に充填されている特徴(ii)、を有するデバイス。
【請求項2】
それぞれ指標物質(7、26)で部分的にのみ充填されている複数のチャンバを備え、該指標物質(7、26)の融点が-20℃から-140℃の範囲内にあり、異なるチャンバ内の指標物質(7、26)が異なる融点を有することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
チャンバ壁が少なくとも一点において透明又は半透明であることを特徴とする請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記少なくとも一つのチャンバ内の指標物質(7)の位置を検出するように構成された測定装置を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記指標物質が、前記指標物質の物理的特性の検出性を向上させる指標添加剤を備え、前記指標添加剤が例えば染料であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記二重壁の押し込み部(11)が、前記サンプル容器(1)の長手方向端部において前記サンプル容器(1)に押し込まれるように構成されている二重壁のキャップであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項7】
前記サンプル容器(1、51)がクライオチューブであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記特徴(i)を有し、
前記二重壁の押し込み部(21)が、前記クライオチューブ(1)の外面に押し込まれ又は付着され又はスライドして押し込まれた状態で該クライオチューブ(1)に少なくとも部分的に嵌め込まれるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
凍結保存サンプルの温度監視用の方法であって、
(a)請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイスを提供するステップ(S1)と、
(b)前記指標物質を凍結させるステップとを備え、
前記指標物質の凍結の際に前記少なくとも一つのチャンバを第一位置に移動させ(S2)、
次いで、前記少なくとも一つのチャンバを、前記指標物質の融解が重力の影響の結果として前記少なくとも一つのチャンバ中での前記指標物質の少なくとも部分的な変位及び/又は形状変化をもたらすことになる第二位置に移動させる(S3)、方法。
【請求項10】
前記指標物質として選択される物質が、超過が監視される所定の閾値温度に対応する融点を有するか、又は融解した指標物質の粘度が所定の設定値を超えることになる閾値温度を有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(a)前記少なくとも一つのチャンバが前記サンプル容器に対して前記第二位置で配置されるように、前記サンプル容器中に凍結保存サンプルを有する前記デバイスを保管するステップ(S4)と、
(b)前記指標物質の融点を一時的に超えたことによって前記指標物質の少なくとも部分的な変位及び/又は形状変化が生じたかどうかを確認するステップ(S5)とを備えることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記指標物質が、1‐オクタノール、1‐ノナノール、プロパン‐1,2‐ジオール、プロパン‐1,3‐ジオール、ブタン‐1,2‐ジオール、ブタン‐1,3‐ジオール、2‐ブタノール、ペンタン‐1,5‐ジオール、1‐ペンタノール、シクロペンタノール、及びベンジルアルコールから成る群から選択された少なくとも一種のアルコールと、任意で少なくとも一種の染料とを備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス又は請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記染料が、トリフェニルメタン染料、ローダミン染料、特にキサンテン、アゾ染料、フェナジン染料、及び、フェノチアジン染料から成る群から選択されることを特徴とする請求項12に記載のデバイス又は方法。
【請求項14】
前記指標物質が、1‐オクタノール、1‐ノナノール、プロパン‐1,2‐ジオール、プロパン‐1,3‐ジオール、ブタン‐1,2‐ジオール、ブタン‐1,3‐ジオール、2‐ブタノール、ペンタン‐1,5‐ジオール、1‐ペンタノール、シクロペンタノール、及びベンジルアルコールから成る群から選択された少なくとも二種のアルコール成分を備え、及び/又は、前記指標物質が、オイルレッド、メチルレッド、ブリリアントグリーン、ローダミンB、ニュートラルレッド、メチレンブルー、及び細胞学において細胞を着色するのに用いられる他の染料から成る群から選択された少なくとも一種の染料を備えることを特徴とする請求項12又は13に記載のデバイス又は方法。
【外国語明細書】