(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099996
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】送信源位置標定装置及び送信源位置標定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20220628BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20220628BHJP
G01S 3/48 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G01S7/02 216
G01S3/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214103
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】越後貫 智也
【テーマコード(参考)】
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062CC14
5J070AC01
5J070AC13
5J070AC15
5J070AD06
5J070AD10
5J070AH19
5J070AJ06
5J070BB06
5J070BB16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】送信源の位置を標定するにあたり、送信源の真位置が移動するときや、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、送信源の標定位置と送信源の真位置との間の標定誤差を減らす。
【解決手段】標定された送信源の位置の分散値が小さいときに、標定された送信源の位置を選択する。そして、選択された送信源の位置に基づいて、過去から現在への送信源の移動方向及び移動速度を算出し、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度を予測する。さらに、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度に基づいて、現在から将来への送信源の位置を予測して最終出力とするにあたり、位置標定処理を通じて予測された送信源の位置を直線的かつ連続的に繋げる。そのうえで、最終出力された送信源の位置に基づいて、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルを更新する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信源からの受信波の到来方向の実測値と、前記送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、前記送信源の位置を標定する位置標定部と、
前記送信源の位置の標定の開始後に標定された前記送信源の位置の分散値が極小値に到達するたびに、標定された前記送信源の位置を選択する位置選択部と、
前回に選択されると予測された前記送信源の位置と今回に選択された前記送信源の位置とを結ぶ線分を、今回に選択されると予測された前記送信源の位置から外挿することにより、次回に選択されると予測される前記送信源の位置の方向を算出するとともに、次回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置を補間する位置予測部と、
各回に選択されると予測された前記送信源の位置の方向の算出結果と、各回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置の補間結果と、を前記送信源の位置の最終出力とする位置出力部と、
前記位置出力部において最終出力された前記送信源の位置に基づいて、前記送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルを更新するモデル更新部と、
を備えることを特徴とする送信源位置標定装置。
【請求項2】
送信源からの受信波の到来方向の実測値と、前記送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、前記送信源の位置を標定する位置標定部と、
前記送信源の位置の標定の開始後に標定された前記送信源の位置の分散値が初めて所定分散値より小さくなったときに、及び、その後に所定時間間隔が経過するたびに、標定された前記送信源の位置を選択する位置選択部と、
前回に選択されると予測された前記送信源の位置と今回に選択された前記送信源の位置とを結ぶ線分を、今回に選択されると予測された前記送信源の位置から外挿することにより、次回に選択されると予測される前記送信源の位置を算出するとともに、次回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置を補間する位置予測部と、
各回に選択されると予測された前記送信源の位置の算出結果と、各回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置の補間結果と、を前記送信源の位置の最終出力とする位置出力部と、
前記位置出力部において最終出力された前記送信源の位置に基づいて、前記送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルを更新するモデル更新部と、
を備えることを特徴とする送信源位置標定装置。
【請求項3】
前記モデル更新部は、更新前の前記送信源運動モデルを用いて標定された前記送信源の位置が所定程度に収束する前に、更新後の前記送信源運動モデルを適用開始させる
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の送信源位置標定装置。
【請求項4】
前記モデル更新部は、更新前後の前記送信源運動モデルを並列適用させ、更新後の前記送信源運動モデルを用いて標定された前記送信源の位置が前記所定程度に収束した後に、更新前の前記送信源運動モデルを用いて最終出力された前記送信源の位置に代えて、更新後の前記送信源運動モデルを用いて最終出力された前記送信源の位置を採用開始させる
ことを特徴とする、請求項3に記載の送信源位置標定装置。
【請求項5】
送信源からの受信波の到来方向の実測値と、前記送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、前記送信源の位置を標定する位置標定ステップと、
前記送信源の位置の標定の開始後に標定された前記送信源の位置の分散値が極小値に到達するたびに、標定された前記送信源の位置を選択する位置選択ステップと、
前回に選択されると予測された前記送信源の位置と今回に選択された前記送信源の位置とを結ぶ線分を、今回に選択されると予測された前記送信源の位置から外挿することにより、次回に選択されると予測される前記送信源の位置の方向を算出するとともに、次回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置を補間する位置予測ステップと、
各回に選択されると予測された前記送信源の位置の方向の算出結果と、各回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置の補間結果と、を前記送信源の位置の最終出力とする位置出力ステップと、
前記位置出力ステップにおいて最終出力された前記送信源の位置に基づいて、前記送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルを更新するモデル更新ステップと、
を順にコンピュータに実行させるための送信源位置標定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信源の位置を標定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
送信源の位置を標定する技術が、特許文献1、2等に開示されている。特許文献1、2では、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、カルマンフィルタ等による送信源からの受信波の到来方向の予測値(位置標定システムを搭載する移動体の位置と、前回の送信源の標定位置と、に基づいて算出。)と、が一致するように、送信源の位置を標定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5730473号明細書
【特許文献2】特許第5730506号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の送信源の真位置の移動に伴なう課題を
図1に示す。ここで、送信源の標定位置の収束指標として、送信源の標定位置を中心とし送信源の真位置が存在する確率が高い円内の半径の大きさ(以下では、送信源の「標定指標」という。)等が採用される。そして、送信源の標定指標は、標定初期段階から位置収束段階へと、徐々に小さくなるのであって、再び大きくなるわけではない(位置標定処理が異常に動作する場合を除く。)。
【0005】
図1では、送信源の真位置が移動している。しかし、送信源の移動のデータを得られないため、送信源の真位置を固定点として取り扱っている。最初に、送信源の標定指標が大きい標定初期段階では、送信源の標定位置の前回値から今回値への修正量を大きくすることができ、送信源の標定位置を移動する送信源の真位置に追従させることができる。最後に、送信源の標定指標が小さい位置収束段階では、送信源の標定位置の前回値から今回値への修正量を大きくすることができず、送信源の標定位置を移動する送信源の真位置に追従させることができない。よって、送信源の真位置が長時間移動したときには、送信源の標定位置と移動する送信源の真位置との間の標定誤差を生じさせる。
【0006】
従来技術の受信波の到来方向の乱れに伴なう課題を
図2に示す。ここで、位置標定システムを搭載する移動体の姿勢変化等に応じて、送信源と移動体との間の受信波の到来経路にマルチパス等が生じて、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じる。
【0007】
図2では、送信源の真位置は移動していない。最初に、移動体がほぼ直線移動する初期段階((1)の移動体位置)では、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じていないため、送信源の標定位置を移動しない送信源の真位置の近傍に固定することができる((1)の標定位置)。その後、移動体が180°旋回する中期段階((2)の移動体位置)では、送信源と移動体の姿勢の関係でブラインド等が生じ、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じているため、送信源の標定位置に飛びが生じてしまい、送信源の標定位置を移動しない送信源の真位置の近傍に固定することができない((2)の標定位置)。最後に、移動体が再び直線移動する終期段階((3)の移動体位置)では、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じていなくても、送信源の標定位置を移動しない送信源の真位置の近傍になかなか復帰することができない((3)の標定位置)。よって、到来方向が一度でも乱れると、送信源の標定位置と移動しない送信源の真位置(移動する送信源の真位置でもよい。)との間の標定誤差を生じさせる。
【0008】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、送信源の位置を標定するにあたり、送信源の真位置が移動するときや、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、送信源の標定位置と送信源の真位置との間の標定誤差を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、標定された送信源の位置の分散値が極小値に到達するたびに、標定された送信源の位置を選択する。ここで、標定された送信源の位置の分散値が小さいことは、標定された送信源の位置が送信源の真位置に近いことの目安となる。そして、選択された送信源の位置に基づいて、過去から現在への送信源の移動方向及び移動速度を算出し、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度を予測する。さらに、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度に基づいて、現在から将来への送信源の位置を予測して最終出力とするにあたり、位置標定処理を通じて予測された送信源の位置を直線的かつ連続的に繋げる。そのうえで、最終出力された送信源の位置に基づいて、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデル(固定点又は直線移動等)を更新する。
【0010】
具体的には、本開示は、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、前記送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、前記送信源の位置を標定する位置標定部と、前記送信源の位置の標定の開始後に標定された前記送信源の位置の分散値が極小値に到達するたびに、標定された前記送信源の位置を選択する位置選択部と、前回に選択されると予測された前記送信源の位置と今回に選択された前記送信源の位置とを結ぶ線分を、今回に選択されると予測された前記送信源の位置から外挿することにより、次回に選択されると予測される前記送信源の位置の方向を算出するとともに、次回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置を補間する位置予測部と、各回に選択されると予測された前記送信源の位置の方向の算出結果と、各回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置の補間結果と、を前記送信源の位置の最終出力とする位置出力部と、前記位置出力部において最終出力された前記送信源の位置に基づいて、前記送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルを更新するモデル更新部と、を備えることを特徴とする送信源位置標定装置である。
【0011】
また、本開示は、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、前記送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、前記送信源の位置を標定する位置標定ステップと、前記送信源の位置の標定の開始後に標定された前記送信源の位置の分散値が極小値に到達するたびに、標定された前記送信源の位置を選択する位置選択ステップと、前回に選択されると予測された前記送信源の位置と今回に選択された前記送信源の位置とを結ぶ線分を、今回に選択されると予測された前記送信源の位置から外挿することにより、次回に選択されると予測される前記送信源の位置の方向を算出するとともに、次回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置を補間する位置予測ステップと、各回に選択されると予測された前記送信源の位置の方向の算出結果と、各回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置の補間結果と、を前記送信源の位置の最終出力とする位置出力ステップと、前記位置出力ステップにおいて最終出力された前記送信源の位置に基づいて、前記送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルを更新するモデル更新ステップと、を順にコンピュータに実行させるための送信源位置標定プログラムである。
【0012】
これらの構成によれば、送信源の真位置が移動するときに、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルを更新することにより、送信源の出力位置と送信源の真位置との間の出力誤差を減らすことができる。そして、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、予測された送信源の位置を直線的かつ連続的に繋げることにより、送信源の出力位置と送信源の真位置との間の出力誤差を減らすことができる。
【0013】
前記課題を解決するために、標定された送信源の位置の分散値が初めて所定分散値より小さくなったときに、及び、その後に所定時間間隔が経過するたびに(分散値は通常は小さい。)、標定された送信源の位置を選択する。ここで、標定された送信源の位置の分散値が小さいことは、標定された送信源の位置が送信源の真位置に近いことの目安となる。そして、選択された送信源の位置に基づいて、過去から現在への送信源の移動方向及び移動速度を算出し、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度を予測する。さらに、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度に基づいて、現在から将来への送信源の位置を予測して最終出力とするにあたり、位置標定処理を通じて予測された送信源の位置を直線的かつ連続的に繋げる。そのうえで、最終出力された送信源の位置に基づいて、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデル(固定点又は直線移動等)を更新する。
【0014】
具体的には、本開示は、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、前記送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、前記送信源の位置を標定する位置標定部と、前記送信源の位置の標定の開始後に標定された前記送信源の位置の分散値が初めて所定分散値より小さくなったときに、及び、その後に所定時間間隔が経過するたびに、標定された前記送信源の位置を選択する位置選択部と、前回に選択されると予測された前記送信源の位置と今回に選択された前記送信源の位置とを結ぶ線分を、今回に選択されると予測された前記送信源の位置から外挿することにより、次回に選択されると予測される前記送信源の位置を算出するとともに、次回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置を補間する位置予測部と、各回に選択されると予測された前記送信源の位置の算出結果と、各回に前記送信源の位置が選択されるまでの前記送信源の位置の補間結果と、を前記送信源の位置の最終出力とする位置出力部と、前記位置出力部において最終出力された前記送信源の位置に基づいて、前記送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルを更新するモデル更新部と、を備えることを特徴とする送信源位置標定装置である。
【0015】
この構成によれば、送信源の真位置が移動するときに、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルを更新することにより、送信源の出力位置と送信源の真位置との間の出力誤差を減らすことができる。そして、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、予測された送信源の位置を直線的かつ連続的に繋げることにより、送信源の出力位置と送信源の真位置との間の出力誤差を減らすことができる。
【0016】
また、本開示は、前記モデル更新部は、更新前の前記送信源運動モデルを用いて標定された前記送信源の位置が所定程度に収束する前に、更新後の前記送信源運動モデルを適用開始させることを特徴とする送信源位置標定装置である。
【0017】
この構成によれば、更新前の送信源運動モデルに基づく完全収束前に、更新後の送信源運動モデルを適用開始させることにより、更新後の送信源運動モデルの適用開始を遅延させないことができるとともに、更新前の送信源運動モデルに基づく出力位置のデータ数が十分であることから、更新後の送信源運動モデルの構築精度を向上させることができる。
【0018】
また、本開示は、前記モデル更新部は、更新前後の前記送信源運動モデルを並列適用させ、更新後の前記送信源運動モデルを用いて標定された前記送信源の位置が前記所定程度に収束した後に、更新前の前記送信源運動モデルを用いて最終出力された前記送信源の位置に代えて、更新後の前記送信源運動モデルを用いて最終出力された前記送信源の位置を採用開始させることを特徴とする送信源位置標定装置である。
【0019】
この構成によれば、更新後の送信源運動モデルに基づく完全収束後に、更新前の送信源運動モデルを適用終了させるとともに、更新後の送信源運動モデルへと切り替えることにより、標定された送信源の位置の分散値を実効的に再び大きくするとともに、更新後の送信源運動モデルに基づく高精度処理へと位置標定処理を続行することができる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本開示は、送信源の位置を標定するにあたり、送信源の真位置が移動するときや、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、送信源の標定位置と送信源の真位置との間の標定誤差を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来技術の送信源の真位置の移動に伴なう課題を示す図である。
【
図2】従来技術の受信波の到来方向の乱れに伴なう課題を示す図である。
【
図3】本開示の位置標定システムの構成を示す図である。
【
図4】本開示の第1の位置標定処理の手順を示す図である。
【
図5】本開示の第1の位置標定処理の内容を示す図である。
【
図6】本開示の第2の位置標定処理の手順を示す図である。
【
図7】本開示の第2の位置標定処理の内容を示す図である。
【
図8】本開示のモデル更新処理の概要を示す図である。
【
図9】本開示のモデル更新処理の改良を示す図である。
【
図10】本開示のモデル更新処理の手順を示す図である。
【
図11】本開示のモデル更新処理の手順を示す図である。
【
図12】本開示の送信源の真位置の移動に対する解決を示す図である。
【
図13】本開示の受信波の到来方向の乱れに対する解決を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0023】
(本開示の位置標定システムの概要)
本開示の位置標定システムの構成を
図3に示す。位置標定システムPは、到来方向測定装置1及び送信源位置標定装置2から構成される。送信源位置標定装置2は、位置標定部21、位置選択部22、位置予測部23、位置出力部24及びモデル更新部25から構成される。送信源位置標定装置2は、
図4、
図6、
図10及び
図11に示す送信源位置標定プログラムを、コンピュータにインストールすることにより実現される。
【0024】
到来方向測定装置1は、移動体が搭載するアンテナが受信した送信源からの受信波を取得し、送信源からの受信波の到来方向のスペクトルを算出し、到来方向スペクトル結果に基づいて、送信源からの受信波の到来方向を算出する。ここで、送信源からの受信波の到来方向のスペクトルとして、MUSIC(Multiple Signal Classification)スペクトル等が挙げられる。そして、到来方向測定装置1は、MUSICスペクトルを算出したうえで、MUSICスペクトル結果に基づいて、送信源からの受信波の到来方向を算出するために、各アンテナ間の受信位相差の情報、各アンテナの搭載位置の情報及び送信源の送信周波数の情報を取得する。
【0025】
位置標定部21は、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、送信源からの受信波の到来方向の予測値(位置標定システムPを搭載する移動体の位置と、前回の送信源の標定位置と、に基づいて算出。)と、が一致するように、送信源の位置を標定する。ここで、位置標定部21として、カルマンフィルタ等が挙げられ、カルマンフィルタ等の状態方程式として、固定点モデル(送信源が固定)又は直線移動モデル(送信源が直線移動)等が挙げられ、カルマンフィルタ等の観測方程式として、三角測量方程式等が挙げられる。そして、位置標定部21は、送信源の位置を標定するために、送信源からの受信波の到来方向の情報、移動体の位置姿勢の情報及び前回の送信源の標定位置の情報を取得する。
【0026】
位置選択部22、位置予測部23及び位置出力部24について、
図4~
図7を用いて説明する。モデル更新部25について、
図8~
図13を用いて説明する。
【0027】
(本開示の第1の位置標定処理)
本開示の第1の位置標定処理の手順及び内容を
図4及び
図5に示す。位置選択部22は、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が極小値に到達するたびに、標定された送信源の位置を選択する。ここで、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が小さいことは、標定された送信源の位置が送信源の真位置に近いことの目安となる。
【0028】
位置予測部23は、選択された送信源の位置に基づいて、過去から現在への送信源の移動方向及び移動速度を算出し、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度を予測する。そして、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度に基づいて、現在から将来への送信源の位置を予測して最終出力とするにあたり、位置標定処理を通じて予測された送信源の位置を直線的かつ連続的に繋げる。以下に具体的に説明する。
【0029】
位置標定部21は、時刻t1以前から時刻t4以降まで等しい時間間隔をおいて、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、送信源からの受信波の到来方向の予測値(位置標定システムPを搭載する移動体の位置と、前回の送信源の標定位置と、に基づいて算出。)と、が一致するように、送信源の位置を標定する(ステップS1)。
【0030】
時刻t1以前では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、送信源の位置の標定の開始後に未だ所定分散値より大きい(ステップS2、NO)。そこで、位置選択部22は、カルマンフィルタ等と同様、標定された送信源の位置をそのまま選択する(ステップS3)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置を送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0031】
時刻t1以前でも、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、送信源の位置の標定の開始後に初めて所定分散値より小さくなるが(ステップS2、YES)、極小値に到達していない(ステップS4、NO)。そこで、位置選択部22は、カルマンフィルタ等と同様、標定された送信源の位置をそのまま選択する(ステップS5)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置を送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0032】
時刻t
1では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達している(ステップS4、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図5の時刻t
1の黒丸)を選択する(ステップS6)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置(
図5の時刻t
1の黒丸)を送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0033】
時刻t1から時刻t2まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達していない(ステップS4、NO)。そこで、位置選択部22は、カルマンフィルタ等と同様、標定された送信源の位置をそのまま選択する(ステップS5)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置を送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0034】
時刻t
2では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達している(ステップS4、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図5の時刻t
2の黒丸)を選択する(ステップS6)。そして、位置予測部23は、時刻t
1及び時刻t
2に選択された送信源の位置を結ぶ線分を、時刻t
2に選択された送信源の位置から外挿することにより、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t
3に選択されると予測される送信源の位置の方向(
図5の時刻t
3の白丸への方向)を算出する(ステップS6)。さらに、位置出力部24は、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t
3に選択されると予測される送信源の位置の方向(
図5の時刻t
3の白丸への方向)を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0035】
時刻t2から時刻t3まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達していない(ステップS4、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置を選択しない(ステップS5)。そして、位置予測部23は、時刻t1及び時刻t2に選択された送信源の位置を結ぶ線分の長さ及び方向に基づいて、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t3に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置を補間する(ステップS5)。さらに、位置出力部24は、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t3に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置の補間結果を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0036】
時刻t
3では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達している(ステップS4、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図5の時刻t
3の黒丸)を選択する(ステップS6)。そして、位置予測部23は、時刻t
2及び時刻t
3に選択された送信源の位置を結ぶ線分を、時刻t
3に選択されると予測された送信源の位置から外挿することにより、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t
4に選択されると予測される送信源の位置の方向(
図5の時刻t
4の白丸の方向)を算出する(ステップS6)。さらに、位置出力部24は、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t
4に選択されると予測される送信源の位置の方向(
図5の時刻t
4の白丸の方向)を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0037】
時刻t3から時刻t4まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達していない(ステップS4、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置を選択しない(ステップS5)。そして、位置予測部23は、時刻t2及び時刻t3に選択された送信源の位置を結ぶ線分の長さ及び方向に基づいて、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t4に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置を補間する(ステップS5)。さらに、位置出力部24は、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t4に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置の補間結果を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0038】
時刻t
4では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達している(ステップS4、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図5の時刻t
4の黒丸)を選択する(ステップS6)。そして、位置予測部23は、時刻t
3に選択されると予測された送信源の位置と時刻t
4に選択された送信源の位置とを結ぶ線分を、時刻t
4に選択されると予測された送信源の位置から外挿することにより、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t
5に選択されると予測される送信源の位置の方向(
図5の時刻t
5の白丸の方向)を算出する(ステップS6)。さらに、位置出力部24は、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t
5に選択されると予測される送信源の位置の方向(
図5の時刻t
5の白丸の方向)を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0039】
時刻t4から時刻t5まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS2、YES)、極小値に到達していない(ステップS4、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置を選択しない(ステップS5)。そして、位置予測部23は、時刻t3に選択されると予測された送信源の位置と時刻t4に選択された送信源の位置とを結ぶ線分の長さ及び方向に基づいて、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t5に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置を補間する(ステップS5)。さらに、位置出力部24は、次回に標定指標が極小値に到達する時刻t5に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置の補間結果を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS7)。
【0040】
なお、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が一時的に所定分散値より大きくなったとしても、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が以前に所定分散値より小さかったときの送信源の移動方向及び移動速度の予測結果に基づいて、滑らかに移動するとともに真位置から大きくずれない出力位置を最終出力することができる。
【0041】
(本開示の第2の位置標定処理)
本開示の第2の位置標定処理の手順及び内容を
図6及び
図7に示す。位置選択部22は、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が初めて所定分散値より小さくなったときに、及び、その後に所定時間間隔が経過するたびに(標定指標は通常は小さい。)、標定された送信源の位置を選択する。ここで、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が小さいことは、標定された送信源の位置が送信源の真位置に近いことの目安となる。
【0042】
位置予測部23は、選択された送信源の位置に基づいて、過去から現在への送信源の移動方向及び移動速度を算出し、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度を予測する。そして、現在から将来への送信源の移動方向及び移動速度に基づいて、現在から将来への送信源の位置を予測して最終出力とするにあたり、位置標定処理を通じて予測された送信源の位置を直線的かつ連続的に繋げる。以下に具体的に説明する。
【0043】
位置標定部21は、時刻t1以前から時刻t4以降まで等しい時間間隔をおいて、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、送信源からの受信波の到来方向の予測値(位置標定システムPを搭載する移動体の位置と、前回の送信源の標定位置と、に基づいて算出。)と、が一致するように、送信源の位置を標定する(ステップS11)。
【0044】
時刻t1以前では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、送信源の位置の標定の開始後に未だ所定分散値より大きい(ステップS12、NO)。そこで、位置選択部22は、カルマンフィルタ等と同様、標定された送信源の位置をそのまま選択する(ステップS13)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置を送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0045】
時刻t
1では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、送信源の位置の標定の開始後に初めて所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されていない(ステップS14、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図7の時刻t
1の黒丸)を選択する(ステップS15)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置(
図7の時刻t
1の黒丸)を送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0046】
時刻t1から時刻t2まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t1から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過していない(ステップS16、NO)。そこで、位置選択部22は、カルマンフィルタ等と同様、標定された送信源の位置をそのまま選択する(ステップS17)。そして、位置出力部24は、標定された送信源の位置を送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0047】
時刻t
2では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t
1から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過している(ステップS16、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図7の時刻t
2の黒丸)を選択する(ステップS18)。そして、位置予測部23は、時刻t
1及び時刻t
2に選択された送信源の位置を結ぶ線分を、時刻t
2に選択された送信源の位置から外挿することにより、次回に所定時間間隔が経過する時刻t
3に選択されると予測される送信源の位置(
図7の時刻t
3の白丸)を算出する(ステップS18)。さらに、位置出力部24は、次回に所定時間間隔が経過する時刻t
3に選択されると予測される送信源の位置(
図7の時刻t
3の白丸)を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0048】
時刻t2から時刻t3まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t2から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過していない(ステップS16、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置を選択しない(ステップS17)。そして、位置予測部23は、時刻t1及び時刻t2に選択された送信源の位置を結ぶ線分の長さ及び方向に基づいて、次回に所定時間間隔が経過する時刻t3に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置を補間する(ステップS17)。さらに、位置出力部24は、次回に所定時間間隔が経過する時刻t3に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置の補間結果を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0049】
時刻t
3では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t
2から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過している(ステップS16、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図7の時刻t
3の黒丸)を選択する(ステップS18)。そして、位置予測部23は、時刻t
2及び時刻t
3に選択された送信源の位置を結ぶ線分を、時刻t
3に選択されると予測された送信源の位置から外挿することにより、次回に所定時間間隔が経過する時刻t
4に選択されると予測される送信源の位置(
図7の時刻t
4の白丸)を算出する(ステップS18)。さらに、位置出力部24は、次回に所定時間間隔が経過する時刻t
4に選択されると予測される送信源の位置(
図7の時刻t
4の白丸)を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0050】
時刻t3から時刻t4まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t3から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過していない(ステップS16、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置を選択しない(ステップS17)。そして、位置予測部23は、時刻t2及び時刻t3に選択された送信源の位置を結ぶ線分の長さ及び方向に基づいて、次回に所定時間間隔が経過する時刻t4に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置を補間する(ステップS17)。さらに、位置出力部24は、次回に所定時間間隔が経過する時刻t4に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置の補間結果を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0051】
時刻t
4では、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t
3から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過している(ステップS16、YES)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置(
図7の時刻t
4の黒丸)を選択する(ステップS18)。そして、位置予測部23は、時刻t
3に選択されると予測された送信源の位置と時刻t
4に選択された送信源の位置とを結ぶ線分を、時刻t
4に選択されると予測された送信源の位置から外挿することにより、次回に所定時間間隔が経過する時刻t
5に選択されると予測される送信源の位置(
図7の時刻t
5の白丸)を算出する(ステップS18)。さらに、位置出力部24は、次回に所定時間間隔が経過する時刻t
5に選択されると予測される送信源の位置(
図7の時刻t
5の白丸)を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0052】
時刻t4から時刻t5まででは、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)は、所定分散値より小さく(ステップS12、YES)、位置予測処理は開始されており(ステップS14、YES)、時刻t4から所定時間間隔(位置標定間隔より長い)が経過していない(ステップS16、NO)。そこで、位置選択部22は、標定された送信源の位置を選択しない(ステップS17)。そして、位置予測部23は、時刻t3に選択されると予測された送信源の位置と時刻t4に選択された送信源の位置とを結ぶ線分の長さ及び方向に基づいて、次回に所定時間間隔が経過する時刻t5に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置を補間する(ステップS17)。さらに、位置出力部24は、次回に所定時間間隔が経過する時刻t5に送信源の位置が選択されるまでの送信源の位置の補間結果を、送信源の位置の最終出力とする(ステップS19)。
【0053】
なお、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が一時的に所定分散値より大きくなったとしても、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が以前に所定分散値より小さかったときの送信源の移動方向及び移動速度の予測結果に基づいて、滑らかに移動するとともに真位置から大きくずれない出力位置を最終出力することができる。
【0054】
又は、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が一時的に所定分散値より大きくなったとしても、送信源の位置の分散値(標定指標)が所定分散値より小さい状態から大きい状態へと遷移するまでの送信源の移動方向及び移動速度の算出結果に基づいて、滑らかに移動するとともに真位置から大きくずれない出力位置を最終出力することもできる。
【0055】
なお、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が再び所定分散値より小さくなったときには、送信源の位置の分散値(標定指標)が所定分散値より大きい状態から小さい状態へと遷移してからの送信源の移動方向及び移動速度の算出結果に基づいて、滑らかに移動するとともに真位置から大きくずれない出力位置を最終出力することができる。
【0056】
(本開示のモデル更新処理)
本開示のモデル更新処理の概要を
図8に示す。モデル更新部25は、位置出力部24において最終出力された送信源の位置に基づいて、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデル(固定点モデル又は直線運動モデル等)を更新する。
【0057】
図8の左側では、位置出力部24は、更新前の送信源運動モデルとして固定点モデルに基づいて、時刻t
1~t
4における送信源の出力位置を最終出力する。そして、モデル更新部25は、時刻t
1~t
4における送信源の出力位置に基づいて、更新後の送信源運動モデルとして直線運動モデルを構築する。
図8の右側では、位置出力部24は、更新後の送信源運動モデルとして直線運動モデルに基づいて、時刻t
4~t
7における送信源の出力位置を最終出力する。そして、モデル更新部25は、時刻t
4~t
7における送信源の出力位置に基づいて、更なる更新後の送信源運動モデルとして新たな直線運動モデルを構築する。
【0058】
なお、モデル更新部25は、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が極小値に到達する時刻のうち、毎回の時刻に又は数回おきの時刻に、送信源運動モデルを更新することができる。また、モデル更新部25は、標定された送信源の位置の分散値(標定指標)が初めて所定分散値より小さくなった後に所定時間間隔が経過する時刻のうち、毎回の時刻に又は数回おきの時刻に、送信源運動モデルを更新することができる。
【0059】
このように、送信源の真位置が移動するときに、送信源の位置が標定されるための送信源運動モデルを更新することにより、送信源の出力位置と送信源の真位置との間の出力誤差を減らすことができる。そして、位置標定システムPを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、予測された送信源の位置を直線的かつ連続的に繋げることにより、送信源の出力位置と送信源の真位置との間の出力誤差を減らすことができる。
【0060】
本開示のモデル更新処理の改良を
図9に示す。モデル更新部25は、更新前の送信源運動モデル(固定点モデル等)を用いて標定された送信源の位置が所定程度に収束する前に、更新後の送信源運動モデル(直線運動モデル等)を適用開始させる。
【0061】
図9の左欄では、モデル更新部25は、さらに、更新前後の送信源運動モデルを順次適用させ、更新前の送信源運動モデルを用いて標定された送信源の位置が所定程度に収束する前に、更新前の送信源運動モデルを用いて最終出力された送信源の位置に代えて、更新後の送信源運動モデルを用いて最終出力された送信源の位置を採用開始させる。
【0062】
このように、更新前の送信源運動モデルに基づく完全収束前に、更新後の送信源運動モデルを適用開始させることにより、更新後の送信源運動モデルの適用開始を遅延させないことができるとともに、更新前の送信源運動モデルに基づく出力位置のデータ数が十分であることから、更新後の送信源運動モデルの構築精度を向上させることができる。
【0063】
図9の右欄では、モデル更新部25は、さらに、更新前後の送信源運動モデルを並列適用させ、更新後の送信源運動モデルを用いて標定された送信源の位置が所定程度に収束した後に、更新前の送信源運動モデルを用いて最終出力された送信源の位置に代えて、更新後の送信源運動モデルを用いて最終出力された送信源の位置を採用開始させる。
【0064】
このように、更新後の送信源運動モデルに基づく完全収束後に、更新前の送信源運動モデルを適用終了させるとともに、更新後の送信源運動モデルへと切り替えることにより、標定された送信源の位置の分散値を実効的に再び大きくするとともに、更新後の送信源運動モデルに基づく高精度処理へと位置標定処理を続行することができる。
【0065】
本開示のモデル更新処理の手順を
図10及び
図11に示す。以下では、
図9の右欄に示したモデル更新処理について説明する。とはいえ、
図9の左欄に示したモデル更新処理も本開示に含まれる。
図9の左欄に示したモデル更新処理でも、
図9の右欄に示したモデル更新処理と同様に、従来技術と比べて優れた効果を発揮するからである。
【0066】
図10では、モデル適用開始処理について説明する。モデル更新部25は、位置標定部21に、第1の運動モデルを適用開始させる(ステップS21)。ここで、送信源の運動方向・速度の確定前であり、第1の運動モデルは、固定点モデルである。そして、モデル更新部25は、第1の標定位置が完全に収束しない程度に収束したかどうかを判定する(ステップS22)。ここで、モデル更新部25は、ステップS22でNOと判定したときには、ステップS22でYESと判定するまでは、モデル適用開始処理をしばらく停止する。
【0067】
一方で、モデル更新部25は、ステップS22でYESと判定したときには、第1の最終的な出力位置に基づいて、第2の運動モデルを構築する(ステップS23)。ここで、送信源の運動方向・速度の確定後であり、第2の運動モデルは、直線運動モデル(又は曲線運動モデル)である。そして、モデル更新部25は、位置標定部21に、第2の運動モデルを適用開始させる(ステップS24)。そして、モデル更新部25は、第2の標定位置が完全に収束しない程度に収束したかどうかを判定する(ステップS25)。ここで、モデル更新部25は、ステップS25でNOと判定したときには、ステップS25でYESと判定するまでは、モデル適用開始処理をしばらく停止する。
【0068】
一方で、モデル更新部25は、ステップS25でYESと判定したときには、第2の最終的な出力位置に基づいて、第3の運動モデルを構築する(ステップS26)。ここで、送信源の運動方向・速度の確定後であり、第3の運動モデルは、直線運動モデル(又は曲線運動モデル)である。そして、モデル更新部25は、位置標定部21に、第3の運動モデルを適用開始させる(ステップS27)。そして、モデル更新部25は、第3の標定位置が完全に収束しない程度に収束したかどうかを判定する(ステップS28)。ここで、モデル更新部25は、ステップS28でNOと判定したときには、ステップS28でYESと判定するまでは、モデル適用開始処理をしばらく停止する。第4以降の運動モデルでも、第1~第3の運動モデルと同様に、モデル適用開始処理が実行される。
【0069】
図11では、位置採用開始処理について説明する。モデル更新部25は、第1の最終的な出力位置を採用開始する(ステップS31)。そして、モデル更新部25は、第2の標定位置が完全に収束する程度に収束したかどうかを判定する(ステップS32)。ここで、モデル更新部25は、ステップS32でNOと判定したときには、ステップS32でYESと判定するまでは、位置採用開始処理をしばらく停止する。一方で、モデル更新部25は、ステップS32でYESと判定したときには、第2の最終的な出力位置が第1の最終的な出力位置とほぼ一致するかどうかを判定する(ステップS33)。ここで、モデル更新部25は、ステップS33でYESと判定したときには、第1の最終的な出力位置に代えて、第2の最終的な出力位置を採用開始する(ステップS34)。一方で、モデル更新部25は、ステップS33でNOと判定したときには、採用位置に飛びがないように、第2の最終的な出力位置を破棄し、第1の最終的な出力位置を採用続行する(ステップS35)。
【0070】
ステップS34が実行されたときを説明する。モデル更新部25は、第3の標定位置が完全に収束する程度に収束したかどうかを判定する(ステップS36)。ここで、モデル更新部25は、ステップS36でNOと判定したときには、ステップS36でYESと判定するまでは、位置採用開始処理をしばらく停止する。一方で、モデル更新部25は、ステップS36でYESと判定したときには、第3の最終的な出力位置が第2の最終的な出力位置とほぼ一致するかどうかを判定する(ステップS37)。ここで、モデル更新部25は、ステップS37でYESと判定したときには、第2の最終的な出力位置に代えて、第3の最終的な出力位置を採用開始する(ステップS38)。一方で、モデル更新部25は、ステップS37でNOと判定したときには、採用位置に飛びがないように、第3の最終的な出力位置を破棄し、第2の最終的な出力位置を採用続行する(ステップS39)。
【0071】
ステップS35が実行されたときを説明する。モデル更新部25は、第3の標定位置が完全に収束する程度に収束したかどうかを判定する(ステップS40)。ここで、モデル更新部25は、ステップS40でNOと判定したときには、ステップS40でYESと判定するまでは、位置採用開始処理をしばらく停止する。一方で、モデル更新部25は、ステップS40でYESと判定したときには、第3の最終的な出力位置が第1の最終的な出力位置とほぼ一致するかどうかを判定する(ステップS41)。ここで、モデル更新部25は、ステップS41でYESと判定したときには、第1の最終的な出力位置に代えて、第3の最終的な出力位置を採用開始する(ステップS42)。一方で、モデル更新部25は、ステップS41でNOと判定したときには、採用位置に飛びがないように、第3の最終的な出力位置を破棄し、第1の最終的な出力位置を採用続行する(ステップS43)。第4以降の運動モデルでも、第1~第3の運動モデルと同様に、位置採用開始処理が実行される。
【0072】
本開示の送信源の真位置の移動に対する解決を
図12に示す。
図12でも
図1と同様に、送信源の真位置が移動している。最初に、送信源の移動のデータを得られないため、送信源の真位置を固定点として取り扱っている。しかし、送信源の標定指標が大きい標定初期段階では、送信源の標定位置の前回値から今回値への修正量を大きくすることができるため、送信源の出力位置を移動する送信源の真位置に追従させることができる。最後に、送信源の移動のデータを得られるため、送信源の真位置を移動点として取り扱っている。すると、送信源の標定指標が小さい位置収束段階では、送信源の標定位置の前回値から今回値への修正量を大きくすることができなくても、送信源の出力位置を移動する送信源の真位置に追従させることができる。よって、送信源の真位置が長時間移動したときにも、送信源の出力位置と移動する送信源の真位置との間の出力誤差を生じさせない。
【0073】
本開示の受信波の到来方向の乱れに対する解決を
図13に示す。
図13でも
図2と同様に、送信源の真位置は移動していない。最初に、移動体がほぼ直線移動する初期段階((1)の移動体位置)では、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じていないため、送信源の出力位置を移動しない送信源の真位置の近傍に固定することができる((1)の出力位置)。その後、移動体が180°旋回する中期段階((2)の移動体位置)では、送信源と移動体の姿勢の関係でブラインド等が生じ、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じているが、運動モデルを最適化するため、送信源の出力位置を移動しない送信源の真位置の近傍に固定することができる((2)の出力位置)。最後に、移動体が再び直線移動する終期段階((3)の移動体位置)では、送信源と移動体との間の受信波の到来方向に乱れが生じていないため、送信源の出力位置を移動しない送信源の真位置の近傍に固定することができる((3)の出力位置)。よって、到来方向が乱れたときにも、初期段階、中期段階及び終期段階のすべての段階において、送信源の出力位置と移動しない送信源の真位置(移動する送信源の真位置でもよい。)との間の出力誤差を生じさせない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示の送信源位置標定装置及び送信源位置標定プログラムは、送信源の真位置が移動するときや、位置標定システムを搭載する移動体が姿勢変化等するときに、送信源の標定位置と送信源の真位置との間の標定誤差を減らすことができる。
【符号の説明】
【0075】
P:位置標定システム
1:到来方向測定装置
2:送信源位置標定装置
21:位置標定部
22:位置選択部
23:位置予測部
24:位置出力部
25:モデル更新部