(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100015
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】クロック信号生成回路、DC/DCコンバータ、PWM信号生成装置及び車両
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20230710BHJP
H03K 7/08 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
H02M3/155 P
H03K7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000317
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 考幸
(72)【発明者】
【氏名】村上 和宏
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】放射ノイズの低減を図る。
【解決手段】クロック信号生成回路は、三角波信号(S111)を生成するよう構成された三角波生成回路(111)と、擬似乱数信号(S112)を生成するよう構成された擬似乱数生成回路(112)と、単位時間当たりにおける擬似乱数信号の変化量に制限を加える制限処理を実行し、制限処理を経た擬似乱数信号をリミッタ信号(S113)として生成するよう構成されたリミッタ回路(113)と、三角波信号及びリミッタ信号を線形演算することで周波数制御信号(S114)を生成するよう構成された線形演算回路(114)と、周波数制御信号に応じた周波数を有するクロック信号(S122)を生成するよう構成されたオシレータ(120)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三角波信号を生成するよう構成された三角波生成回路と、
擬似乱数信号を生成するよう構成された擬似乱数生成回路と、
単位時間当たりにおける前記擬似乱数信号の変化量に制限を加える制限処理を実行し、前記制限処理を経た前記擬似乱数信号をリミッタ信号として生成するよう構成されたリミッタ回路と、
前記三角波信号及び前記リミッタ信号を線形演算することで周波数制御信号を生成するよう構成された線形演算回路と、
前記周波数制御信号に応じた周波数を有するクロック信号を生成するよう構成されたオシレータと、を備える
、クロック信号生成回路。
【請求項2】
前記擬似乱数生成回路は、前記単位時間を周期に前記擬似乱数信号の値を更新して出力し、
前記リミッタ回路は、前記擬似乱数生成回路の出力に基づく信号であって、且つ、前記単位時間当たりにおける変化量が所定値以下に制限された信号を前記リミッタ信号として生成する
、請求項1に記載のクロック信号生成回路。
【請求項3】
前記線形演算回路は、前記線形演算において、前記三角波信号及び前記リミッタ信号の内、一方に対し他方を加算する、又は、一方から他方を減算する
、請求項1又は2に記載のクロック信号生成回路。
【請求項4】
三角波信号を生成するよう構成された三角波生成回路と、
擬似乱数信号を生成するよう構成された擬似乱数生成回路と、
前記三角波信号及び前記擬似乱数信号を線形演算することで線形演算結果信号を生成するよう構成された線形演算回路と、
単位時間当たりにおける前記線形演算結果信号の変化量に制限を加える制限処理を実行し、前記制限処理を経た前記線形演算結果信号を周波数制御信号として生成するよう構成されたリミッタ回路と、
前記周波数制御信号に応じた周波数を有するクロック信号を生成するよう構成されたオシレータと、を備える
、クロック信号生成回路。
【請求項5】
前記擬似乱数生成回路は、前記単位時間を周期に前記擬似乱数信号の値を更新して出力し、
前記線形演算回路は、前記単位時間を周期に前記線形演算結果信号の値を更新して出力し、
前記リミッタ回路は、前記線形演算回路の出力に基づく信号であって、且つ、前記単位時間当たりにおける変化量が所定値以下に制限された信号を前記周波数制御信号として生成する
、請求項4に記載のクロック信号生成回路。
【請求項6】
前記線形演算回路は、前記線形演算において、前記三角波信号及び前記擬似乱数信号の内、一方に対し他方を加算する、又は、一方から他方を減算する
、請求項4又は5に記載のクロック信号生成回路。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載のクロック信号生成回路と、
第1直流電圧を前記クロック信号に応じたスイッチング周波数にてスイッチングすることを通じて第2直流電圧を生成するよう構成された電力変換回路と、を備える
、DC/DCコンバータ。
【請求項8】
請求項1~6の何れかに記載のクロック信号生成回路と、
前記クロック信号に基づきパルス幅変調信号を生成するよう構成されたパルス幅変調回路と、を備える
、PWM信号生成装置。
【請求項9】
請求項1~6の何れかに記載のクロック信号生成回路を有する半導体装置を搭載した
、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クロック信号生成回路、DC/DCコンバータ、PWM信号生成装置及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
クロック信号を生成するクロック信号生成回路が様々な装置に組み込まれる。例えば、クロック信号の周波数をスイッチング周波数として用いて直流-直流変換を行うDC/DCコンバータがある。多くのクロック信号は周波数が固定された矩形波状の信号である。但し、クロック信号の周波数が固定される場合、当該周波数における放射ノイズが大きくなる。
【0003】
放射ノイズの影響を抑制する技術としてスペクトラム拡散技術がある。スペクトラム拡散技術によりノイズが広い帯域に拡散され、実質的なノイズの影響を抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、クロック信号に関わる現状のスペクトラム拡散技術には改善の余地がある。
【0006】
本開示は、放射ノイズの低減に寄与するクロック信号生成回路、DC/DCコンバータ、PWM信号生成装置及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るクロック信号生成回路は、三角波信号を生成するよう構成された三角波生成回路と、擬似乱数信号を生成するよう構成された擬似乱数生成回路と、単位時間当たりにおける前記擬似乱数信号の変化量に制限を加える制限処理を実行し、前記制限処理を経た前記擬似乱数信号をリミッタ信号として生成するよう構成されたリミッタ回路と、前記三角波信号及び前記リミッタ信号を線形演算することで周波数制御信号を生成するよう構成された線形演算回路と、前記周波数制御信号に応じた周波数を有するクロック信号を生成するよう構成されたオシレータと、を備える。
【0008】
本開示に係る他のクロック信号生成回路は、三角波信号を生成するよう構成された三角波生成回路と、擬似乱数信号を生成するよう構成された擬似乱数生成回路と、前記三角波信号及び前記擬似乱数信号を線形演算することで線形演算結果信号を生成するよう構成された線形演算回路と、単位時間当たりにおける前記線形演算結果信号の変化量に制限を加える制限処理を実行し、前記制限処理を経た前記線形演算結果信号を周波数制御信号として生成するよう構成されたリミッタ回路と、前記周波数制御信号に応じた周波数を有するクロック信号を生成するよう構成されたオシレータと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、放射ノイズの低減に寄与するクロック信号生成回路、DC/DCコンバータ、PWM信号生成装置及び車両を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係るDC/DCコンバータの構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1実施形態に係る三角波信号の波形図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1実施形態に係る擬似乱数信号の波形図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態に係るリミッタ回路の動作説明図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1実施形態に係るリミッタ回路の動作説明図である。
【
図6】
図6は、本開示の第1実施形態に係るリミッタ回路の動作説明図である。
【
図7】
図7は、本開示の第1実施形態に係る周波数制御信号の波形図である。
【
図8】
図8は、本開示の第1実施形態に係り、放射ノイズのパワースペクトルを示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の第2実施形態に係るDC/DCコンバータの構成図である。
【
図10】
図10は、本開示の第2実施形態に係るリミッタ回路の動作説明図である。
【
図11】
図11は、本開示の第2実施形態に係るリミッタ回路の動作説明図である。
【
図12】
図12は、本開示の第2実施形態に係るリミッタ回路の動作説明図である。
【
図13】
図13は、本開示の第3実施形態に係る線形帰還レジスタの構成図である。
【
図14】
図14は、本開示の第4実施形態に係るDC/DCコンバータの構成図である。
【
図15】
図15は、本開示の第4実施形態に係る半導体装置の外観斜視図である。
【
図16】
図16は、本開示の第5実施形態に係るPWM信号生成装置の構成図である。
【
図17】
図17は、本開示の第6実施形態に係り、車両に半導体装置が設置される様子を示す図である。
【
図18】
図18は、第1参考例に係るDC/DCコンバータの構成図である。
【
図19】
図19は、第2参考例に係るDC/DCコンバータの構成図である。
【
図20】
図20は、第1参考例に係り、放射ノイズのパワースペクトルを示す図である。
【
図21】
図21は、第2参考例に係り、放射ノイズのパワースペクトルを示す図である。
【
図22】
図22は、第3参考例に係るDC/DCコンバータの構成図である。
【
図23】
図23は、第4参考例に係り、生成されるクロック信号の周波数が変調領域内の一部領域に偏在する理由を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<参考例>>
図18に第1参考例に係るDC/DCコンバータ1100の構成を示す。DC/DCコンバータ1110はオシレータ1110及び電力変換回路1120を備える。尚、第1参考例を含む各参考例では、DC/DCコンバータの構成要素にオシレータが含まれると考えているが、DC/DCコンバータに対してオシレータが接続されていると考えることもでき、この場合には、電力変換回路そのものがDC/DCコンバータに相当すると解することができる。
【0012】
コンバータ1100では、オシレータ1110から出力される周波数固定の矩形波状の信号1112がクロック信号として電力変換回路1120に供給される。電力変換回路1120は、クロック信号の周波数をスイッチング周波数として用いて入力電圧Vinをスイッチングし、これによって出力電圧Voutを生成する。入力電圧Vin及び出力電圧Voutは互いに異なる直流電圧である。
図18の構成ではクロック信号の周波数に大きなノイズが発生し、当該ノイズはEMI(Electro Magnetic Interference)の特性劣化の要因となる。
【0013】
図19に第2参考例に係るDC/DCコンバータ1200の構成を示す。コンバータ1200は、SSCG制御回路1210、オシレータ1220及び電力変換回路1230を備える。電力変換回路1230は
図18の電力変換回路1120と同様の回路である。制御回路1210に設けられた三角波生成回路1211から三角波信号1212が出力される。三角波信号1212はデジタルの三角波状の信号である。オシレータ1220は三角波信号1212に応じた周波数を持つクロック信号1222を電力変換回路1230に供給する。オシレータ1220には三角波信号1212を受けるDAC(デジタル-アナログ変換器)が設けられており、DACの出力に基づきクロック信号1222の周波数が決定される。クロック信号1222の周波数が三角波信号1212に基づき変調されることで、第2参考例では、スイッチング周波数における放射ノイズが第1参考例と比べて低減される。但し、第2参考例では、三角波の周波数と三角波の高調波の周波数にて新たなノイズが発生し、これがEMIの特性劣化の新たな要因となる。
【0014】
図20にDC/DCコンバータ1100にて発生する放射ノイズのパワースペクトルSPC1を示し、
図21にDC/DCコンバータ1200にて発生する放射ノイズのパワースペクトルSPC2を示す。ここでは、第1参考例においてスイッチング周波数が約4.5MHz(メガヘルツ)で固定されており、且つ、第2参考例においてクロック信号の中心周波数が約4.5MHzに設定されているものとする。また、三角波の周波数は約1kHz(キロヘルツ)に設定されているものとする。
【0015】
図20及び
図21には、特定のパワーを示す破線2100が、便宜上、示されている。
図21に示される破線2210は、スペクトルSPC2における三角波の周波数成分のパワーに対応する。破線2220は、スペクトルSPC2における三角波の第1次高調波成分のパワーに対応する。破線2210及び2220については後にも参照される。第1参考例との比較において第2参考例では、クロック信号の中心周波数近辺のノイズが低減されていることが分かる。一方で、第2参考例では、三角波の周波数と三角波の高調波の周波数にて新たなノイズ(
図21の破線楕円部2110及び2120に対応)が発生していることが分かる。
【0016】
図22に第3参考例に係るDC/DCコンバータ1300の構成を示す。コンバータ1300は、SSCG制御回路1310、オシレータ1320及び電力変換回路1330を備える。電力変換回路1330は
図18の電力変換回路1120と同様の回路である。制御回路1310に設けられた擬似乱数生成回路1311から、デジタルの擬似乱数を示す擬似乱数信号1312が出力される。オシレータ1320は擬似乱数信号1312に応じた周波数を持つクロック信号1322を電力変換回路1330に供給する。オシレータ1320には擬似乱数信号1312を受けるDACが設けられており、DACの出力に基づきクロック信号1322の周波数が決定される。故に、クロック信号1322の周波数が擬似乱数信号1312に基づき変調される。このため、第2参考例との比較において、第3参考例では、三角波の周波数及び三角波の高調波の周波数でのノイズを低減させることができる。
【0017】
但し、第3参考例では、擬似乱数がとり得る数値範囲において、DACへの入力値がランダムに変化する。このため、DACへの入力値が瞬間的に大きく変動することがあり、結果、クロック信号1322の周波数が瞬間的に大きく変動することがある。クロック信号の周波数における急激な変動はノイズ増加の要因となる。
【0018】
DACへの入力値の1回当たりの変化量に制限を加えることで、ノイズの要因を抑制することができる。しかしながら、上記制限を適用すると、生成されるクロック信号の周波数が変調領域内の一部領域に偏在することが懸念される。第3参考例(
図22)に上記制限を適用したものを第4参考例と称し、第4参考例に注目して上記偏在を説明する。
【0019】
図23において折れ線1410は、第4参考例におけるDACへの入力値の時系列変化を表す。クロック信号はDACへの入力値に応じた周波数を持つため、折れ線1410は第4参考例におけるクロック信号の周波数の時系列変化を表すものとも言える。
【0020】
擬似乱数がとり得る数値範囲はクロック信号の周波数の変調領域に対応する。本来、DACへの入力値は、擬似乱数がとり得る数値範囲内でランダムに変化する。しかし、DACへの入力値の1回当たりの変化量に制限が加えられると、DACへの入力値が上記数値範囲の一部に偏在しやすくなる。これは、クロック信号の周波数が変調領域内の一部領域に偏在しやすくなることに相当する。
【0021】
具体的な例として、擬似乱数が1以上255以下の数値範囲内の値を持ち、擬似乱数の値が1から255に増大するにつれて、クロック信号の周波数が第1周波数から第2周波数に増加する場合を考える。この場合において、DACへの入力値の1回当たりの変化量が10以下に制限されたとき、初期のDACへの入力値が128であったならば、次回のDACへの入力値は“128±10”の範囲内に収まる。以後も、DACへの入力値が±10で変動することになる。擬似乱数の発生状況によっては、DACへの入力値が1近辺又は255近辺になることもあるが、確率的に、DACへの入力値は初期値(128)近辺に偏在しやすい。このような偏在が生じると、クロック信号の周波数の拡散度合いが低くなり、結果、EMI性能が高まりにくい。
【0022】
<<参考例との対比における提案技術>>
これらを考慮し、出願人は、三角波による変調と擬似乱数による変調とを組み合わせた上で、変調量に制限を加える手法を開発した。
【0023】
以下、当該手法に関わる本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“S111”によって参照される三角波信号は(
図1参照)、三角波信号S111と表記されることもあるし、信号S111と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0024】
本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体にて形成される。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧はグランドから見た電位を表す。レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジ(或いはライジングエッジ)と称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジ(或いはフォーリングエッジ)と称する。
【0025】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。また、特に記述なき限り、任意のMOSFETにおいて、バックゲートはソースに短絡されていると考えて良い。
【0026】
以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意の回路素子、配線(ライン)、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0027】
<<第1実施形態>>
本開示の第1実施形態を説明する。
図1は第1実施形態に係るDC/DCコンバータ(直流/直流変換装置)100の構成ブロック図である。DC/DCコンバータ100は、SSCG(Spread Spectrum Clock Generator)用の制御回路である制御回路110と、オシレータ120と、電力変換回路130と、を備える。制御回路110及びオシレータ120により、周波数拡散が成されたクロック信号を生成するクロック信号生成回路が形成される。ここでは、クロック信号生成回路と電力変換回路130とでDC/DCコンバータが形成されると考えるが、電力変換回路130そのものがDC/DCコンバータであって、DC/DCコンバータに対してクロック信号生成回路(110、120)が接続されると考えても良い。
【0028】
制御回路110は、三角波生成回路111と、擬似乱数生成回路112と、リミッタ回路113と、線形演算回路114と、を備える。
【0029】
三角波生成回路111は三角波信号S111を生成及び出力する。三角波信号S111は三角波を示すデジタル信号であり、故に三角波信号S111の値はデジタル値である。
図2に三角波信号S111の波形を示す。三角波信号S111の値における最小値、最大値を、夫々、LL1、HH1にて表す。最大値HH1は最小値LL1よりも大きい。三角波生成回路111は、以下の三角波生成単位動作を所定の周期P
TRIにて繰り返し実行する。
【0030】
三角波生成単位動作において、三角波生成回路111は、三角波信号S111の値を所定の最小値LL1と一致させた状態を起点に、三角波信号S111の値を最小値LL1から所定の最大値HH1まで所定の増加率で線形的に単調増加させる。三角波生成単位動作において、三角波信号S111の値が最大値HH1に達すると、三角波生成回路111は、三角波信号S111の値を最大値HH1から最小値LL1まで所定の減少率で線形的に単調減少させる。以後、上述の三角波生成単位動作が繰り返される。1回の三角波生成単位動作は周期PTRI分の時間をかけて行われるので、三角波信号S111の周波数は(1/PTRI)で表される。
【0031】
擬似乱数生成回路112は擬似乱数信号S112を生成及び出力する。擬似乱数信号S112は擬似乱数を示すデジタル信号であり、故に擬似乱数信号S112の値はデジタル値である。線形帰還シフトレジスタにより擬似乱数生成回路112を構成できる。
図3に擬似乱数信号S112の波形例を示す。擬似乱数生成回路112は所定の周期P
PRで擬似乱数信号S112の値を更新する。周期P
PRは上述の周期P
TRIよりも十分に短い。三角波信号S111の値の更新周期は周期P
PRと同じであっても良いし、周期P
PRのm倍又は(1/m)倍であっても良い。ここで、mは2以上の整数である。
【0032】
周期PPRの長さ分の時間を、以下、単位時間PPRと称することもある。そうすると、擬似乱数生成回路112は単位時間PPRを周期に(即ち単位時間PPRが経過するごとに)擬似乱数信号S112の値を更新して出力する、と言える。擬似乱数信号S112の値における最小値、最大値を、夫々、LL2、HH2にて表す。最大値HH2は最小値LL2よりも大きい。擬似乱数生成回路112は、最小値LL2から最大値HH2までの範囲内の値を持つ擬似乱数を発生させ、発生させた擬似乱数の値を持つ擬似乱数信号S112を生成及び出力する。
【0033】
リミッタ回路113に対し、擬似乱数生成回路112から出力された擬似乱数信号S112が入力される。リミッタ回路113は、入力された擬似乱数信号S112に対して制限処理を実行し、制限処理を経た擬似乱数信号S112をリミッタ信号S113として生成及び出力する。擬似乱数信号S112と同様、リミッタ信号S113もデジタル信号である。リミッタ回路113は擬似乱数信号S112の値が更新されるたびに(従って単位時間PPRを周期に)リミッタ信号S113の値を更新して出力する。
【0034】
リミッタ回路113による制限処理は、単位時間PPR当たりにおける擬似乱数信号S112の変化量に制限を加える処理である。擬似乱数生成回路112から出力される擬似乱数信号S112の単位時間PPR当たりの変化量は、最大で(HH2-LL2)である。リミッタ回路113による制限処理では、単位時間PPR当たりにおける擬似乱数信号S112の変化量の大きさを所定の制限値LIM以下に制限し、当該制限が成された後の擬似乱数信号S112をリミッタ信号S113として出力する。ここで、“0<LIM<HH2-LL2”が成立する。
【0035】
制限処理について説明を加える。擬似乱数生成回路112から出力される第n番目の擬似乱数信号S112の値を“S112[n]”にて表し、リミッタ回路113から出力される第n番目のリミッタ信号S113の値を“S113[n]”にて表す(
図4参照)。nは任意の自然数である。リミッタ回路113は、値S112[n]に基づいて値S113[n]を生成する。第n番目の信号S112及びS113の値について“S112[n]=S113[n]”が成立するケースCS1を想定して、値S112[n+1]と値S113[n+1]の関係を説明する。
【0036】
図4に示す如く、ケースCS1において第1不等式“|S112[n+1]-S112[n]|≦LIM”が成立する場合には、“S113[n+1]=S112[n+1]”とされる。第1不等式の成立時には、単位時間P
PR当たりにおける擬似乱数信号S112の変化量の大きさが制限値LIM以下であるため、特に制限が加えられない。尚、ケースCS1において、第1不等式は不等式“|S112[n+1]-S113[n]|≦LIM”と等価である。
【0037】
図5に示す如く、ケースCS1において第2不等式“(S112[n+1]-S112[n])>LIM”が成立する場合には、“S113[n+1]=S113[n]+LIM”とされる。
図6に示す如く、ケースCS1において第3不等式“(S112[n]-S112[n+1])>LIM”が成立する場合には、“S113[n+1]=S113[n]-LIM”とされる。第2又は第3不等式の成立時には、単位時間P
PR当たりにおける擬似乱数信号S112の変化量の大きさが制限値LIMを超えるため、制限が加えられる。尚、ケースCS1において、第2不等式は不等式“(S112[n+1]-S113[n])>LIM”と等価であり、第3不等式は不等式“(S113[n]-S112[n+1])>LIM”と等価である。
【0038】
リミッタ回路113による制限処理は、回路112にて信号S112が生成される段階で信号S112の変化量に制限を加えるものではなく、回路112から出力された後の信号S112の変化量に対して制限を加えるものである。従って、単位時間PPR当たりの信号S112の変化量は制限値LIMを超えることがある一方で、単位時間PPR当たりの信号S113の変化量は制限値LIM以下となる。このため、リミッタ回路113は、擬似乱数生成回路112の出力に基づく信号(即ち擬似乱数生成回路112から出力される擬似乱数信号S112に基づく信号)であって、且つ、単位時間PPR当たりにおける変化量が制限値LIM以下に制限された信号をリミッタ信号S113として生成する、と言える。尚、単位時間PPR当たりにおける変化量とは、単位時間PPR当たりにおける変化の大きさ(絶対値)に相当する。
【0039】
図1を再度参照する。線形演算回路114に対し、三角波生成回路111から出力された三角波信号S111及びリミッタ回路113から出力されたリミッタ信号S113が入力される。線形演算回路114は、三角波信号S111及びリミッタ信号S113を線形演算することで周波数制御信号S114を生成する。生成された周波数制御信号S114はオシレータ120に出力される。線形演算回路114は単位時間P
PRを周期に周波数制御信号S114の値を更新して出力する。
【0040】
ここでは、線形演算回路114による線形演算は加算であるとする。そうすると、線形演算において、線形演算回路114は、三角波信号S111及びリミッタ信号S113の内、一方に対して他方を加算し、加算結果を周波数制御信号S114として生成及び出力する。周波数制御信号S114はデジタル信号であり、任意のタイミングにおいて、周波数制御信号S114の値は、三角波信号S111の値とリミッタ信号S113の値との和で表される。但し、当該和が、周波数制御信号S114で表現可能な数値範囲の最大値を超える場合(所謂オーバーフローが生じる場合)、周波数制御信号S114の値は当該最大値とされる。
【0041】
図7に周波数制御信号S114の例を示す。三角波信号S111及び擬似乱数信号S112の各特性を有しつつ、1回当たりの変化量(単位時間T
PR当たりの変化量)に制限のかかった信号が周波数制御信号S114として生成されることになる。
【0042】
オシレータ120は、DAC121及びVCO122を備え、周波数制御信号S114に応じた周波数を有するクロック信号(後述のクロック信号S122)を生成及び出力する。
【0043】
DAC121はデジタル-アナログ変換器である。DAC121に対し、線形演算回路114から出力される周波数制御信号S114が入力される。DAC121は、入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換処理(デジタル/アナログ変換処理)を行う。故に、DAC121は、DA変換処理によりデジタルの周波数制御信号S114をアナログの周波数制御信号S121に変換して出力する。周波数制御信号S121は電圧信号であり、周波数制御信号S114の値に応じたアナログ電圧値を有する。DAC121におけるDA変換処理の実行周期は周期PPRと同じであって良い。
【0044】
VCO122に対し、DAC121から出力される周波数制御信号S121が入力される。VCO122は電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator)である。VCO122は、周波数制御信号S121を周波数f122に変換し、周波数f122を有するクロック信号S122を生成及び出力する。クロック信号S122はハイレベル及びローレベルの信号レベルを交互にとる信号である。周波数f122は、周波数制御信号S121の電圧値の増大につれて増大し、周波数制御信号S121の電圧値の減少につれて減少する。クロック信号S122の中心周波数を基準に周波数制御信号S121の電圧値に応じて周波数f122が変調(拡散)されることになる。尚、周波数制御信号S121の電圧値の単位変化量に対する周波数f122の変化量は、周波数f122の変化範囲の全体において一定であって良い。
【0045】
電力変換回路130は、図示されない電圧源から入力電圧VINを受け、入力電圧VINを直流/直流変換することで出力電圧VOUTを生成及び出力する。入力電圧VIN及び出力電圧VOUTは互いに異なる電圧値を有する直流電圧である。電力変換回路130に対してクロック信号S122が入力される。DC/DCコンバータ100はスイッチングレギュレータであり、電力変換回路130はクロック信号S122の周波数をスイッチング周波数として用いて入力電圧VINをスイッチングすることにより出力電圧VOUTを得る。
【0046】
図8にDC/DCコンバータ100にて発生する放射ノイズのパワースペクトルSPC3を示す。ここでは、上述の各参考例と同様に、クロック信号の中心周波数が約4.5MHzに設定されているものとする。また、三角波信号S111の周波数は約1kHz(キロヘルツ)に設定されているものとする。
図8に示される破線2210及び2220は、
図21に示されるそれらと同じものであって、
図8と
図21との対比に供される。
【0047】
図8と
図21との対比から理解されるよう、放射ノイズのパワースペクトルにおける三角波の周波数成分及び三角波の高調波成分のパワーが、上述の第4参考例より本実施形態の構成にて低減されていることが分かる。また、スイッチング周波数近辺におけるパワーも各参考例より低減されていることが分かる。このように、本実施形態によれば、クロック信号の周波数を良好に拡散することができ、以って放射ノイズの低減が図られる。この際、三角波による変調に起因する放射ノイズを抑制でき、且つ、擬似乱数の値が急激に変化することで生じ得る放射ノイズも抑制できる。
【0048】
[実施例EX1_1]
第1実施形態に属する実施例EX1_1を説明する。線形演算回路114による線形演算は減算であっても良い。この場合、線形演算において、線形演算回路114は、三角波信号S111及びリミッタ信号S113の内、一方から他方を減算し、減算結果を周波数制御信号S114として生成及び出力する。基本的には、三角波信号S111からリミッタ信号S113を減算すれば良い。以下では線形演算が減算である場合、三角波信号S111からリミッタ信号S113が減算されるものとする(後述の実施例EX1_2でも同様)。任意のタイミングにおいて、周波数制御信号S114の値は、三角波信号S111及びリミッタ信号S113間の差であり、当該差は、三角波信号S111の値からリミッタ信号S113の値を減算して得られる値である。但し、当該差が、周波数制御信号S114で表現可能な数値範囲の最小値を下回る場合(所謂アンダーフローが生じる場合)、周波数制御信号S114の値は当該最小値とされる。
【0049】
[実施例EX1_2]
第1実施形態に属する実施例EX1_2を説明する。実施例EX1_2では、信号S111~S114に関する具体例を挙げる。
【0050】
実施例EX1_2において、三角波信号S111は8ビットのデジタル信号であり、擬似乱数信号S112は4ビットのデジタル信号である。故に、10進数表記で、三角波信号S111は0以上255以下の整数値を持ち、擬似乱数信号S112は10進数表記で0以上15以下の整数値を持つ。即ち、(LL1,HH1)=(0,255)且つ(LL2,HH2)=(0,15)である(
図2及び
図3)。但し、三角波信号S111及び擬似乱数信号S112の各ビット数は任意に変形可能である。“LL2=1”であっても良い。
【0051】
リミッタ回路113における制限値LIMは“0<LIM<HH2-LL2”を満たし、一例として“LIM=8”である。“LIM=8”の場合、単位時間PPR当たりのリミッタ信号S113の変化量、即ち、リミッタ信号S113の値における一回当たりの変化量は、8以下に制限されることになる。
【0052】
実施例EX1_2において、周波数制御信号S114は8ビットのデジタル信号である。故に、10進数表記で、周波数制御信号S114は0以上255以下の整数値を持つ。つまり、周波数制御信号S114で表現可能な数値範囲は0以上255以下の範囲である。
【0053】
線形演算回路114における線形演算が加算である場合、線形演算回路114は、三角波信号S111及びリミッタ信号S113の内、一方に対して他方を加算し、加算結果を周波数制御信号S114として生成及び出力する。三角波信号S111の値とリミッタ信号S113の値との和が、周波数制御信号S114で表現可能な数値範囲の最大値(ここでは255)を超える場合、周波数制御信号S114の値は当該最大値とされる。
【0054】
線形演算回路114における線形演算が減算である場合、線形演算回路114は、三角波信号S111及びリミッタ信号S113の内、一方から他方を減算し、減算結果を周波数制御信号S114として生成及び出力する。三角波信号S111及びリミッタ信号S113間の差(詳細には三角波信号S111の値からリミッタ信号S113の値を減算して得られる値)が、周波数制御信号S114で表現可能な数値範囲の最小値(ここでは0)を下回る場合、周波数制御信号S114の値は当該最小値とされる。
【0055】
尚、周波数制御信号S114のビット数は任意に変形可能であり、周波数制御信号S114のビット数を三角波信号S111のビット数よりも大きくしても良い。
【0056】
<<第2実施形態>>
本開示の第2実施形態を説明する。
図9は第2実施形態に係るDC/DCコンバータ(直流/直流変換装置)200の構成ブロック図である。DC/DCコンバータ200は、SSCG(Spread Spectrum Clock Generator)用の制御回路である制御回路210と、オシレータ220と、電力変換回路230と、を備える。制御回路210及びオシレータ220により、周波数拡散が成されたクロック信号を生成するクロック信号生成回路が形成される。ここでは、クロック信号生成回路と電力変換回路230とでDC/DCコンバータが形成されると考えるが、電力変換回路230そのものがDC/DCコンバータであって、DC/DCコンバータに対してクロック信号生成回路(210、220)が接続されると考えても良い。
【0057】
制御回路210は、三角波生成回路211と、擬似乱数生成回路212と、線形演算回路213と、リミッタ回路214と、を備える。
【0058】
三角波生成回路211は三角波信号を生成及び出力する。三角波生成回路211は第1実施形態に示した三角波生成回路111(
図1参照)と同じものである。但し、三角波生成回路211にて生成され且つ三角波生成回路211から出力される三角波信号を三角波信号S211と称する。三角波信号S211は第1実施形態に示した三角波信号S111と同じ特性を持つ信号であり、故に、所定の周期P
TRIにて最小値LL1及び最大値HH1間で変動する(
図2参照)。
【0059】
擬似乱数生成回路212は擬似乱数信号を生成及び出力する。擬似乱数生成回路212は第1実施形態に示した擬似乱数生成回路112(
図1参照)と同じものである。但し、擬似乱数生成回路212にて生成され且つ擬似乱数生成回路212から出力される擬似乱数信号を擬似乱数信号S212と称する。擬似乱数信号S212は第1実施形態に示した擬似乱数信号S112と同じ特性を持つ信号であり、故に、擬似乱数信号S212の値における最小値、最大値は、夫々、LL2、HH2である(
図3参照)。擬似乱数生成回路212は単位時間P
PRを周期に(即ち単位時間P
PRが経過するごとに)擬似乱数信号S212の値を更新して出力する。
【0060】
線形演算回路213に対し、三角波生成回路211から出力された三角波信号S211及び擬似乱数生成回路212から出力された擬似乱数信号S212が入力される。線形演算回路213は、三角波信号S211及び擬似乱数信号S212を線形演算することで線形演算結果信号S213を生成する。生成された線形演算結果信号S213はリミッタ回路214に出力される。線形演算回路213は、擬似乱数信号S212の値が更新されるたびに線形演算結果信号S213の値を更新する。即ち、線形演算回路213は、単位時間PPRを周期に線形演算結果信号S213の値を更新して出力する。
【0061】
ここでは、線形演算回路213による線形演算は加算であるとする。そうすると、線形演算において、線形演算回路213は、三角波信号S211及び擬似乱数信号S212の内、一方に対して他方を加算し、加算結果を線形演算結果信号S213として生成及び出力する。線形演算結果信号S213はデジタル信号であり、任意のタイミングにおいて、線形演算結果信号S213の値は、三角波信号S211の値と擬似乱数信号S212の値との和で表される。但し、当該和が、線形演算結果信号S213で表現可能な数値範囲の最大値を超える場合(所謂オーバーフローが生じる場合)、線形演算結果信号S213の値は当該最大値とされる。
【0062】
リミッタ回路214に対し、線形演算回路213から出力された線形演算結果信号S213が入力される。リミッタ回路214は、入力された線形演算結果信号S213に対して制限処理を実行し、制限処理を経た線形演算結果信号S213を信号S214として生成及び出力する。信号S214は周波数制御信号である。但し、第1実施形態に倣って、信号S214をリミッタ信号と称することもできる。線形演算結果信号S213と同様、周波数制御信号S214もデジタル信号である。リミッタ回路214は、線形演算結果信号S213の値が更新されるたびに周波数制御信号S214の値を更新する。即ち、リミッタ回路214は、単位時間PPRを周期に周波数制御信号S214の値を更新して出力する。
【0063】
リミッタ回路214による制限処理は、単位時間PPR当たりにおける線形演算結果信号S213の変化量に制限を加える処理である。線形演算結果信号S213の単位時間PPR当たりの変化量は、信号S211の値が不変であると仮定したならば、最大で(HH2-LL2)である。リミッタ回路214による制限処理では、単位時間PPR当たりにおける線形演算結果信号S213の変化量の大きさを所定の制限値LIM以下に制限し、当該制限が成された後の線形演算結果信号S213を周波数制御信号S214として出力する。ここで、“0<LIM<HH2-LL2”が成立する。
【0064】
制限処理について説明を加える。線形演算回路213から出力される第n番目の線形演算結果信号S213の値を“S213[n]”にて表し、リミッタ回路214から出力される第n番目の周波数制御信号S214の値を“S214[n]”にて表す(
図10参照)。nは任意の自然数である。リミッタ回路214は、値S213[n]に基づいて値S214[n]を生成する。第n番目の信号S213及びS214の値について“S213[n]=S214[n]”が成立するケースCS2を想定して、値S213[n+1]と値S214[n+1]の関係を説明する。
【0065】
図10に示す如く、ケースCS2において第4不等式“|S213[n+1]-S213[n]|≦LIM”が成立する場合には、“S214[n+1]=S213[n+1]”とされる。第4不等式の成立時には、単位時間P
PR当たりにおける線形演算結果信号S213の変化量の大きさが制限値LIM以下であるため、特に制限が加えられない。尚、ケースCS2において、第4不等式は不等式“|S213[n+1]-S214[n]|≦LIM”と等価である。
【0066】
図11に示す如く、ケースCS2において第5不等式“(S213[n+1]-S213[n])>LIM”が成立する場合には、“S214[n+1]=S214[n]+LIM”とされる。
図12に示す如く、ケースCS2において第6不等式“(S213[n]-S213[n+1])>LIM”が成立する場合には、“S214[n+1]=S214[n]-LIM”とされる。第5又は第6不等式の成立時には、単位時間P
PR当たりにおける線形演算結果信号S213の変化量の大きさが制限値LIMを超えるため、制限が加えられる。尚、ケースCS2において、第5不等式は不等式“(S213[n+1]-S214[n])>LIM”と等価であり、第6不等式は不等式“(S214[n]-S213[n+1])>LIM”と等価である。
【0067】
リミッタ回路214による制限処理は、回路213にて信号S213が生成される段階で信号S213の変化量に制限を加えるものではなく、回路213から出力された後の信号S213の変化量に対して制限を加えるものである。従って、単位時間PPR当たりの信号S213の変化量は制限値LIMを超えることがある一方で、単位時間PPR当たりの信号S214の変化量は制限値LIM以下となる。このため、リミッタ回路214は、線形演算回路213の出力に基づく信号(即ち線形演算回路213から出力される線形演算結果信号S213に基づく信号)であって、且つ、単位時間PPR当たりにおける変化量が制限値LIM以下に制限された信号を周波数制御信号S214として生成する、と言える。尚、単位時間PPR当たりにおける変化量とは、単位時間PPR当たりにおける変化の大きさ(絶対値)に相当する。
【0068】
周波数制御信号S214は、
図7に示す周波数制御信号S114と同様の信号となる。三角波信号S211及び擬似乱数信号S212の各特性を有しつつ、1回当たりの変化量(単位時間T
PR当たりの変化量)に制限のかかった信号が周波数制御信号S214として生成されることになる。
【0069】
オシレータ220は、DAC221及びVCO222を備え、周波数制御信号S214に応じた周波数を有するクロック信号(後述のクロック信号S222)を生成及び出力する。DAC221及びVCO222は、第1実施形態に示したDAC121及びVCO122(
図1参照)と同じものであって良いが、周波数制御信号S214との関係でDAC221及びVCO222の動作及び構成を説明する。
【0070】
DAC221はデジタル-アナログ変換器である。DAC221に対し、線形演算回路214から出力される周波数制御信号S214が入力される。DAC221は、入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換処理(デジタル/アナログ変換処理)を行う。故に、DAC221は、DA変換処理によりデジタルの周波数制御信号S214をアナログの周波数制御信号S221に変換して出力する。周波数制御信号S221は電圧信号であり、周波数制御信号S214の値に応じたアナログ電圧値を有する。DAC221におけるDA変換処理の実行周期は周期PPRと同じであって良い。
【0071】
VCO222に対し、DAC221から出力される周波数制御信号S221が入力される。VCO222は電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator)である。VCO222は、周波数制御信号S221を周波数f222に変換し、周波数f222を有するクロック信号S222を生成及び出力する。クロック信号S222はハイレベル及びローレベルの信号レベルを交互にとる信号である。周波数f222は、周波数制御信号S221の電圧値の増大につれて増大し、周波数制御信号S221の電圧値の減少につれて減少する。クロック信号S222の中心周波数を基準に周波数制御信号S221の電圧値に応じて周波数f222が変調(拡散)されることになる。尚、周波数制御信号S221の電圧値の単位変化量に対する周波数f222の変化量は、周波数f222の変化範囲の全体において一定であって良い。
【0072】
電力変換回路230は、図示されない電圧源から入力電圧VINを受け、入力電圧VINを直流/直流変換することで出力電圧VOUTを生成及び出力する。入力電圧VIN及び出力電圧VOUTは互いに異なる電圧値を有する直流電圧である。電力変換回路230に対してクロック信号S222が入力される。DC/DCコンバータ200はスイッチングレギュレータであり、電力変換回路230はクロック信号S222の周波数をスイッチング周波数として用いて入力電圧VINをスイッチングすることにより出力電圧VOUTを得る。
【0073】
第2実施形態に係る構成によっても第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0074】
[実施例EX2_1]
第2実施形態に属する実施例EX2_1を説明する。線形演算回路213による線形演算は減算であっても良い。この場合、線形演算において、線形演算回路213は、三角波信号S211及び擬似乱数信号S212の内、一方から他方を減算し、減算結果を線形演算結果信号S213として生成及び出力する。基本的には、三角波信号S211から擬似乱数信号S212を減算すれば良い。以下では線形演算が減算である場合、三角波信号S211から擬似乱数信号S212が減算されるものとする(後述の実施例EX2_2でも同様)。任意のタイミングにおいて、線形演算結果信号S213の値は、三角波信号S211及び擬似乱数信号S212間の差であり、当該差は、三角波信号S211の値から擬似乱数信号S212の値を減算して得られる値である。但し、当該差が、線形演算結果信号S213で表現可能な数値範囲の最小値を下回る場合(所謂アンダーフローが生じる場合)、線形演算結果信号S213の値は当該最小値とされる。
【0075】
[実施例EX2_2]
第2実施形態に属する実施例EX2_2を説明する。実施例EX2_2では、信号S211~S214に関する具体例を挙げる。
【0076】
実施例EX2_2において、三角波信号S211は8ビットのデジタル信号であり、擬似乱数信号S212は4ビットのデジタル信号である。故に、10進数表記で、三角波信号S211は0以上255以下の整数値を持ち、擬似乱数信号S212は10進数表記で0以上15以下の整数値を持つ。即ち、(LL1,HH1)=(0,255)且つ(LL2,HH2)=(0,15)である。但し、三角波信号S211及び擬似乱数信号S212の各ビット数は任意に変形可能である。“LL2=1”であっても良い。
【0077】
実施例EX2_2において、線形演算結果信号S213及び周波数制御信号S214は夫々に8ビットのデジタル信号である。故に、信号S213及びS214の夫々は、10進数表記で0以上255以下の整数値を持つ。つまり、信号S213で表現可能な数値範囲及び信号S214で表現可能な数値範囲は夫々に0以上255以下の範囲である。
【0078】
線形演算回路213における線形演算が加算である場合、線形演算回路213は、三角波信号S211及び擬似乱数信号S212の内、一方に対して他方を加算し、加算結果を線形演算結果信号S213として生成及び出力する。三角波信号S211の値と擬似乱数信号S212の値との和が、線形演算結果信号S213で表現可能な数値範囲の最大値(ここでは255)を超える場合、線形演算結果信号S213の値は当該最大値とされる。
【0079】
線形演算回路213における線形演算が減算である場合、線形演算回路213は、三角波信号S211及び擬似乱数信号S212の内、一方から他方を減算し、減算結果を線形演算結果信号S213として生成及び出力する。三角波信号S211及び擬似乱数信号S212間の差(詳細には三角波信号S211の値から擬似乱数信号S212の値を減算して得られる値)が、線形演算結果信号S213で表現可能な数値範囲の最小値(ここでは0)を下回る場合、線形演算結果信号S213の値は当該最小値とされる。
【0080】
リミッタ回路214における制限値LIMは“0<LIM<HH2-LL2”を満たし、一例として“LIM=8”である。“LIM=8”の場合、単位時間PPR当たりの周波数制御信号S214の変化量、即ち、周波数制御信号S214の値における一回当たりの変化量は、8以下に制限されることになる。
【0081】
尚、線形演算結果信号S213のビット数は任意に変形可能であり、線形演算結果信号S213のビット数を三角波信号S211のビット数よりも大きくしても良い。周波数制御信号S214についても同様である。
【0082】
<<第3実施形態>>
本開示の第3実施形態を説明する。任意の線形帰還レジスタを用いて擬似乱数生成回路112及び212を形成することができる。
図13に、擬似乱数生成回路112又は212の例として擬似乱数生成回路300を示す。擬似乱数生成回路300は、D型フリップフロップ(以下、DFFと称する)310[1]~310[8]と、排他的論理和回路(以下、XORと称する)321~323と、初期値設定部330と、を備えた線形帰還レジスタである。
【0083】
DFFは、夫々に、D入力端子、Q出力端子、クロック入力端子及びリセット入力端子を有する。DFFは、クロック入力端子へ入力される同期クロック信号のアップエッジ(又はダウンエッジ)に同期してD入力端子に供給される信号の値を保持する。DFFは保持した値を示す信号をQ出力端子から出力する。DFF310[1]~310[8]に対して共通の同期クロック信号(不図示)が供給される。DFF310[i]のQ出力端子から出力される信号を記号“X[i]”にて表す。信号X[i]は、“0”又は“1”の値をとる。iは任意の自然数を表す。
【0084】
“1≦i≦7”を満たす整数iについて、DFF310[i]の出力信号X[i]はDFF310[i+1]のD入力端子へ入力される。XOR321は、DFF310[4]の出力信号X[4]とDFF310[5]の出力信号X[5]との排他論理和を示す信号を出力する。XOR322は、XOR321の出力信号とDFF310[6]の出力信号X[6]との排他論理和を示す信号を出力する。XOR323は、XOR322の出力信号とDFF310[8]の出力信号X[8]との排他論理和を示す信号を出力する。XOR323の出力信号は、DFF310[1]のD入力端子へ入力される。
【0085】
信号X[1]~X[8]により8ビットのデジタル信号が形成される。複数ビット分のデジタル信号において、信号X[i+1]が信号X[i]よりも上位側のビットの値を示す。故に、上記8ビットのデジタル信号において、信号X[1]が最下位ビットの値を示し、信号X[8]が最上位ビットの値を示す。初期値設定部330は、上記8ビットのデジタル信号の初期値(ここでは10進数表記で“1”)を設定する。擬似乱数生成回路300への所定の開始トリガの入力を契機に、上記8ビットのデジタル信号に対して初期値が設定され、以後、上記8ビットのデジタル信号の値が同期クロック信号の周期で更新されてゆく。尚、擬似乱数生成回路300における帰還多項式は、“X8+X6+X5+X4+1”で表される。
【0086】
上記8ビットのデジタル信号から抽出される任意のビット数分のデジタル信号を、擬似乱数信号S112又はS212(
図1又は
図9参照)として用いることができる。例えば、上述の実施例EX1_2の如く擬似乱数信号S112を4ビットのデジタル信号とする場合、信号X[1]~X[4]から成るデジタル信号を擬似乱数信号S112として良い。同様に例えば、上述の実施例EX2_2の如く擬似乱数信号S212を4ビットのデジタル信号とする場合、信号X[1]~X[4]から成るデジタル信号を擬似乱数信号S212として良い。
【0087】
<<第4実施形態>>
本開示の第4実施形態を説明する。第4実施形態では第1又は第2実施形態に係るクロック信号生成回路を利用したDC/DCコンバータの構成例を説明する。
【0088】
図14は第4実施形態に係るDC/DCコンバータ400の構成図である。DC/DCコンバータ400は、入力電圧V
INを電力変換することにより入力電圧V
INよりも低い出力電圧V
OUTを生成する降圧型DC/DCコンバータとして構成されている。入力電圧V
IN及び出力電圧V
OUTは正の直流電圧である。DC/DCコンバータ400には、入力電圧V
INが加わる入力端子IN、出力電圧V
OUTが加わる出力端子OUT、グランド電位を有するグランド端子GND、及び、後述のスイッチ電圧V
SWが加わるスイッチ端子SWが設けられる。グランド端子GND及びスイッチ端子SWは入力端子INよりも低電位側に設けられる。
【0089】
DC/DCコンバータ400は、クロック信号生成回路410、スイッチング制御回路420、出力段回路430、整流平滑回路440及び帰還電圧生成回路450を備える。
【0090】
クロック信号生成回路410はクロック信号CLKをスイッチング制御回路420に供給する。クロック信号生成回路410は第1実施形態における制御回路110及びオシレータ120(
図1参照)を備えていて良く、この場合、オシレータ120からのクロック信号S122がクロック信号CLKとなる。或いは、クロック信号生成回路410は第2実施形態における制御回路210及びオシレータ220(
図9参照)を備えていて良く、この場合、オシレータ220からのクロック信号S222がクロック信号CLKとなる。回路420、430、440及び450により上述の電力変換回路130又は230(
図1又は
図9参照)に相当する電力変換回路が構成される。DC/DCコンバータ400において、電力変換回路は、入力電圧V
INをクロック信号CLKに応じたスイッチング周波数にてスイッチングすることを通じて出力電圧V
OUTを生成する。
【0091】
DC/DCコンバータ400を半導体装置を用いて構成することができる。
図15に半導体装置480の外観の例を示す。半導体装置480は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から半導体装置480の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置480が形成される。上記半導体集積回路に、回路410、420及び430を含めておくことができる。回路440及び450は半導体装置480の外部に設けられていて良い。但し、回路450は半導体装置480内に設けられ得る。
【0092】
出力段回路430はハイサイドトランジスタ431及びローサイドトランジスタ432の直列回路から成るハーフブリッジ回路を備える。整流平滑回路440はインダクタ441及び出力コンデンサ442を備える。
【0093】
DC/DCコンバータ400は、トランジスタ431及び432を用いて同期整流方式にて直流/直流変換を行う。トランジスタ431及び432はNチャネル型のMOSFETとして構成されている。尚、トランジスタ431をPチャネル型のMOSFETとして構成する変形も可能である。また、トランジスタ432をダイオードに置きかえることもでき、この場合、DC/DCコンバータ400は非同期整流方式にて直流/直流変換を行うことになる。
【0094】
トランジスタ431のドレインは入力端子INに接続され、従って入力電圧VINの入力を受ける。トランジスタ431のソースとトランジスタ432のドレインはスイッチ端子SWにて共通接続される。トランジスタ432のソースはグランド端子GNDに接続される(即ちグランドに接続される)。スイッチ端子SWに加わる電圧をスイッチ電圧と称し、記号“VSW”にて表す。スイッチ端子SWはインダクタ441の一端に接続され、インダクタ441の他端は出力端子OUTに接続され、出力端子OUTに出力電圧VOUTが生じる。出力端子OUTとグランドとの間に出力コンデンサ442が接続される。
【0095】
図14において、“LD”は、出力端子OUTとグランドとの間に接続される負荷を表す。負荷LDは出力電圧V
OUTに基づき駆動する任意の負荷である。インダクタ441に流れる電流をインダクタ電流と称し、記号“I
L”にて表す。
【0096】
帰還電圧生成回路450は、出力端子OUT及びグランド間に配置された複数の抵抗の直列回路を用いて出力電圧VOUTの分圧を生成し、生成した分圧を帰還電圧VFBとしてスイッチング制御回路420に供給する。但し、出力電圧VOUTそのものを帰還電圧VFBとして用いることも可能であり、この場合、DC/DCコンバータ400から帰還電圧生成回路450は削除される。
【0097】
スイッチング制御回路420により、出力段回路430の状態は、出力ハイ状態、出力ロー状態及び両オフ状態の何れかに制御及び設定される。出力ハイ状態では、トランジスタ431がオン状態であり且つトランジスタ432がオフ状態である。出力ロー状態では、トランジスタ431がオフ状態であり且つトランジスタ432がオン状態である。両オフ状態では、トランジスタ431及び432が共にオフ状態である。トランジスタ431及び432が共にオン状態とされることは無い。
【0098】
スイッチング制御回路420は、出力電圧VOUTの情報(即ち帰還電圧VFB)と、インダクタ電流ILの情報とに基づき、トランジスタ431及び432を交互にオン、オフとする(即ち、出力段回路430の状態を出力ハイ状態及び出力ロー状態間で切り替える)スイッチング制御を行うことで、出力電圧VOUTを所定の目標電圧VTGにて安定化させる。即ち、スイッチング制御回路420は所謂カレントモード制御方式にてトランジスタ431及び432を駆動することが可能となっている。例えば、トランジスタ431のオン期間においてトランジスタ431に流れる電流を、インダクタ電流ILの情報として用いることができる。尚、スイッチング制御回路420によるスイッチング制御において、トランジスタ431及び432を交互にオン、オフとするとは、出力ロー状態及び出力ハイ状態間の遷移の間に、デッドタイム等を考慮した両オフ状態が介在することを含む概念である。
【0099】
上記スイッチング制御により、実質的に入力電圧VINのレベルとグランドのレベルとでレベルが変動する矩形波状の電圧がスイッチ電圧VSWとして現れる。当該スイッチ電圧VSWが整流平滑回路440にて整流及び平滑化されることで直流の出力電圧VOUTが得られる。
【0100】
スイッチング制御回路420は、クロック信号生成回路410から出力されるクロック信号CLKに基づいてトランジスタ431及び432のスイッチング周波数を決定する。具体的には、スイッチング制御回路420は、クロック信号CLKのアップエッジに同期して出力段回路430の状態を出力ロー状態から出力ハイ状態に切り替え、その後、他の信号(不図示)に基づいて出力段回路430の状態を出力ハイ状態から出力ロー状態に切り替える単位動作を行う。この単位動作がスイッチング制御にて繰り返される。スイッチング制御回路420は、上記他の信号を、出力電圧VOUTの情報(即ち帰還電圧VFB)とインダクタ電流ILの情報とに基づいて生成する。即ち、クロック信号CLKに基づいてトランジスタ431及び432のスイッチング周波数を制御し、上記他の信号に基づいて出力デューティを制御する。出力デューティとは、出力段回路430が出力ハイ状態となる期間と出力段回路430が出力ロー状態となる期間との和に対する、出力段回路430が出力ハイ状態となる期間の比を表す。故に、スイッチング制御回路420のスイッチング制御はPWM制御(パルス幅変調制御)に相当する。
【0101】
尚、ここでは、出力電圧VOUTの情報(即ち帰還電圧VFB)とインダクタ電流ILの情報とに基づき、カレントモード制御方式で出力段回路430の状態を制御することを説明した。しかしながら、インダクタ電流ILの情報を参照することなく、出力電圧VOUTの情報(即ち帰還電圧VFB)に基づいて出力段回路430の状態を制御する方式がスイッチング制御回路420にて採用されても良い。
【0102】
また、降圧型DC/DCコンバータとして構成されたDC/DCコンバータ400を例に挙げたが、DC/DCコンバータ400を、昇圧型DC/DCコンバータ又は昇降圧型DC/DCコンバータとして構成することも可能である。
【0103】
<<第5実施形態>>
本開示の第5実施形態を説明する。第1又は第2実施形態にて示したクロック信号生成回路は、DC/DCコンバータに限らず、クロック信号を必要とする任意の装置に適用できる。
【0104】
例えば、
図16に示すPWM信号生成装置500を構成することができる。PWMはパルス幅変調(pulse width modulation)の略称である。PWM信号生成装置500は、クロック信号生成回路510及びPWM回路520を備える。
【0105】
クロック信号生成回路510はクロック信号CLKをPWM回路520に供給する。クロック信号生成回路510は第1実施形態における制御回路110及びオシレータ120(
図1参照)を備えていて良く、この場合、オシレータ120からのクロック信号S122がクロック信号CLKとなる。或いは、クロック信号生成回路510は第2実施形態における制御回路210及びオシレータ220(
図9参照)を備えていて良く、この場合、オシレータ220からのクロック信号S222がクロック信号CLKとなる。
【0106】
PWM回路520はクロック信号CLKに基づきPWM信号を生成及び出力する。PWM信号はクロック信号CLKの1周期を単位にパルス幅が変調された信号である。詳細には、PWM信号は、ハイレベル及びローレベルの信号レベルを交互にとる、所定周波数を有する矩形波信号である。PWM信号の各周期において、PWM信号の信号レベルがハイレベルとなる期間がパルス幅である。PWM回路520は、PWM信号のパルス幅を、クロック信号CLKの1周期分の長さを単位に調整できる。即ち、PWM信号のパルス幅はクロック信号CLKのp周期分の長さに設定され(pは自然数)、PWM回路520はpの値を任意に設定することでPWM信号のパルス幅を調整できる。
【0107】
PWM信号生成装置500を有する任意の装置において、PWM信号を様々な用途で利用できる。一例として、入力電圧から出力電圧を生成する電源装置にPWM信号生成装置500に組み込み、PWM信号のパルス幅に応じて出力電圧を調整するといった利用方法がある。
【0108】
<<第6実施形態>>
本開示の第6実施形態を説明する。
図17に示す如く、第1又は第2実施形態にて示したクロック信号生成回路を有する半導体装置610を、自動車等の車両600に搭載しても良い。
図15の半導体装置480は
図17の半導体装置610の例である。車両600は、半導体装置610に加えて、車両600を走行させるための動力を発生させるエンジン(不図示)、及び、二次電池から成るバッテリ(不図示)などを備える。エンジンは内燃機関又はモータを含む。上記バッテリの出力電圧に基づき半導体装置610が駆動する。半導体装置610は、車両600に搭載されたECU(Electronic Control Unit)に組み込まれてるものであっても良い。半導体装置610が組み込まれたECUは、例えば、車両600の走行を制御する装置であっても良いし、車両600に設置された任意の電装部品(オーディオ装置、空調機など)を制御する装置であっても良い。車両600に設置された任意の電装部品に半導体装置610が組み込まれても良い。
【0109】
<<補足事項>>
上述の事項に対する補足事項等を説明する。尚、本明細書における日本語表記において“擬似”と“疑似”は同義であり、それらを互いに置換可能である。
【0110】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。
【0111】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0112】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0113】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0114】
本開示の一側面に係るクロック信号生成回路(
図1参照)は、三角波信号(S111)を生成するよう構成された三角波生成回路(111)と、擬似乱数信号(S112)を生成するよう構成された擬似乱数生成回路(112)と、単位時間当たりにおける擬似乱数信号の変化量に制限を加える制限処理を実行し、制限処理を経た擬似乱数信号をリミッタ信号(S113)として生成するよう構成されたリミッタ回路(113)と、三角波信号及びリミッタ信号を線形演算することで周波数制御信号(S114)を生成するよう構成された線形演算回路(114)と、周波数制御信号に応じた周波数を有するクロック信号(S122)を生成するよう構成されたオシレータ(120)と、を備える構成(第1の構成)である。
【0115】
第1の構成によれば、クロック信号の周波数を良好に拡散することができ、以って放射ノイズの低減が図られる。この際、擬似乱数を利用することで三角波に起因する放射ノイズを抑制できる。更に、制限処理により、擬似乱数の値が急激に変化することで生じ得る放射ノイズも抑制できる。
【0116】
上記第1の構成に係るクロック信号生成回路において、前記擬似乱数生成回路は、前記単位時間を周期に前記擬似乱数信号の値を更新して出力し、前記リミッタ回路は、前記擬似乱数生成回路の出力に基づく信号であって、且つ、前記単位時間当たりにおける変化量が所定値以下に制限された信号を前記リミッタ信号として生成する構成(第2の構成)であっても良い。
【0117】
上記第1又は第2の構成に係るクロック信号生成回路において、前記線形演算回路は、前記線形演算において、前記三角波信号及び前記リミッタ信号の内、一方に対し他方を加算する、又は、一方から他方を減算する構成(第3の構成)であっても良い。
【0118】
本開示の他の一側面に係るクロック信号生成回路(
図9参照)は、三角波信号(S211)を生成するよう構成された三角波生成回路(211)と、擬似乱数信号(S212)を生成するよう構成された擬似乱数生成回路(212)と、前記三角波信号及び前記擬似乱数信号を線形演算することで線形演算結果信号(S213)を生成するよう構成された線形演算回路(213)と、単位時間当たりにおける前記線形演算結果信号の変化量に制限を加える制限処理を実行し、前記制限処理を経た前記線形演算結果信号を周波数制御信号(S214)として生成するよう構成されたリミッタ回路(214)と、前記周波数制御信号に応じた周波数を有するクロック信号(S222)を生成するよう構成されたオシレータ(220)と、を備える構成(第4の構成)である。
【0119】
第4の構成によれば、クロック信号の周波数を良好に拡散することができ、以って放射ノイズの低減が図られる。この際、擬似乱数を利用することで三角波に起因する放射ノイズを抑制できる。更に、制限処理により、擬似乱数の値が急激に変化することで生じ得る放射ノイズも抑制できる。
【0120】
上記第4の構成に係るクロック信号生成回路において、前記擬似乱数生成回路は、前記単位時間を周期に前記擬似乱数信号の値を更新して出力し、前記線形演算回路は、前記単位時間を周期に前記線形演算結果信号の値を更新して出力し、前記リミッタ回路は、前記線形演算回路の出力に基づく信号であって、且つ、前記単位時間当たりにおける変化量が所定値以下に制限された信号を前記周波数制御信号として生成する構成(第5の構成)であっても良い。
【0121】
上記第4又は第5の構成に係るクロック信号生成回路において、前記線形演算回路は、前記線形演算において、前記三角波信号及び前記擬似乱数信号の内、一方に対し他方を加算する、又は、一方から他方を減算する構成(第6の構成)であっても良い。
【0122】
本開示に係るDC/DCコンバータ(100、200)は、上記第1~第6の構成の何れかに記載のクロック信号生成回路(110及び120、210及び220)と、第1直流電圧を前記クロック信号に応じたスイッチング周波数にてスイッチングすることを通じて第2直流電圧を生成するよう構成された電力変換回路(130、230)と、を備える構成(第7の構成)である。
【0123】
本開示に係るPWM信号生成装置(500)は、上記第1~第6の構成の何れかに記載のクロック信号生成回路(510)と、前記クロック信号に基づきパルス幅変調信号を生成するよう構成されたパルス幅変調回路(520)と、を備える構成(第8の構成)である。
【0124】
本開示に係る車両(600)は、上記第1~第6の構成の何れかに記載のクロック信号生成回路を有する半導体装置(610)を搭載した構成(第9の構成)である。
【符号の説明】
【0125】
100、200 DC/DCコンバータ
110、210 制御回路
111、211 三角波生成回路
112、212 擬似乱数生成回路
113、214 リミッタ回路
114、213 線形演算回路
120、220 オシレータ
121、221 DAC
122、222 VCO
130、230 電力変換回路
300 線形帰還シフトレジスタ
400 DC/DCコンバータ
410 クロック信号生成回路
420 スイッチング制御回路
430 出力段回路
440 整流平滑回路
450 帰還電圧生成回路
500 PWM信号生成装置
510 クロック信号生成回路
520 PWM回路
600 車両
610 半導体装置