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特開2023-100021高周波コイルユニット及び磁気共鳴イメージング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100021
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】高周波コイルユニット及び磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
A61B5/055 355
A61B5/055 390
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000342
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠中 宏之
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB12
4C096AB39
4C096AC01
4C096AD10
4C096AD19
4C096CA70
4C096CC40
4C096EB07
(57)【要約】
【課題】局所コイルに対する撮像部位の位置合せ時の操作者の作業効率を向上させるとともに、被検体の位置ずれに伴う再撮像を抑制すること。
【解決手段】実施形態に係るコイルユニットは、コイルと、フォームとを備える。フォームは、コイルの筐体の被検体と接触する位置に設けられ、脱気により圧縮され、かつ、大気開放により膨張することが可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルの筐体の被検体と接触する位置に設けられ、脱気により圧縮され、かつ、大気開放により膨張することが可能なフォームと、
を備える高周波コイルユニット。
【請求項2】
前記フォームの患者側の面は反対側の面に比べて柔らかい材料からなる、
請求項1に記載の高周波コイルユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記高周波コイルユニットと、
前記フォーム内を脱気するための脱気用ポンプと、
前記フォームの開口部と前記脱気用ポンプとを接続するチューブと、
を備える磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記脱気用ポンプは、磁石架台の外部に設けられる、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記フォームの複数の開口部にそれぞれ複数のチューブが接続される、
請求項3又は4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記フォームは、厚さ方向に複数段のフォーム要素により構成される、
請求項3乃至5のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記複数段のフォーム要素のうち、前記コイルが装着される撮像部位側のフォーム要素から順に膨張させる、
請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記フォーム内の脱気を撮像の終了に連動させるように前記脱気用ポンプの動作を制御する脱気制御部、
をさらに有する請求項3乃至7のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
入力部からの入力信号に基づいて前記フォーム内を大気開放するように前記脱気用ポンプの動作を制御する開放制御部、
をさらに有する請求項3乃至8のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、高周波コイルユニット及び磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:Radio Frequency)信号で励起し、励起に伴って被検体から発生する磁気共鳴信号(MR(Magnetic Resonance)信号)を再構成して画像を生成する撮像装置である。磁気共鳴イメージング装置では、被検体からの磁気共鳴信号を非侵襲で収集することができる。
【0003】
従来のMRI装置では、患者の撮像部位、例えば頭部を局所コイルとしての頭部コイルに固定するため、患者頭部と頭部コイルとの間等に柔軟性のあるパッド等の固定具を挿入して患者頭部を頭部コイルに固定する必要がある。パッドは、頭部コイルへの患者頭部の位置が決められた後に操作者により患者頭部と頭部コイルの筐体の内壁面との間に差し込まれるため、その作業の際に、患者頭部の位置ずれが生じてしまう場合がある。また、パッドの差し込み作業により操作者の患者頭部への接触が生じると患者頭部に装着されたヘッドフォンがずれこともあるので、パッドの差し込み作業は、操作者にとって手間のかかる作業である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014‐73294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、局所コイルに対する撮像部位の位置合せ時の操作者の作業効率を向上させるとともに、被検体の位置ずれに伴う再撮像を抑制することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るコイルユニットは、コイルと、フォームとを備える。フォームは、コイルの筐体の被検体と接触する位置に設けられ、脱気により圧縮され、かつ、大気開放により膨張することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る高周波コイルユニットを備えたMRI装置の全体構成を示すブロック図。
図2図2(A)は、実施形態に係る高周波コイルユニットに設けられるフォームの圧縮状態を示す正面図、図2(B)は、患者に装着された、実施形態に係る高周波コイルユニットのフォームの圧縮状態を示す正面図、図2(C)は、患者に装着された、実施形態に係る高周波コイルユニットのフォームの膨張状態を示す正面図。
図3図3は、実施形態に係る高周波コイルユニットを備えるMRI装置の機能を示すブロック図。
図4図4は、実施形態に係る高周波コイルユニットを備えるMRI装置の動作をフローチャートとして示す図。
図5図5(A)は、患者に装着された、実施形態の第1変形例に係る高周波コイルユニットのフォームの圧縮状態を示す正面図、図5(B)は、患者に装着された、実施形態の第1変形例に係る高周波コイルユニットのフォームの膨張状態を示す正面図。
図6図6(A)は、患者に装着された、実施形態の第2変形例に係る高周波コイルユニットのフォームの圧縮状態を示す正面図、図6(B)は、患者に装着された、実施形態の第2変形例に係る高周波コイルユニットのフォームの膨張状態を示す正面図。
図7図7(A)は、第1患者に装着された、実施形態の第3変形例に係る高周波コイルユニットのフォームの圧縮状態を示す正面図、図7(B)は、第1患者に装着された、実施形態の第3変形例に係る高周波コイルユニットのフォームの膨張状態を示す正面図、図7(C)は、第2患者に装着された、実施形態の第3変形例に係る高周波コイルユニットのフォームの膨張状態を示す正面図。
図8図8(A)は、実施形態の第4変形例に係る高周波コイルユニットに設けられるフォームの圧縮状態を示す正面図、図8(B)は、患者に装着された、実施形態の第4変形例に係る高周波コイルユニットのフォームの圧縮状態を示す正面図、図8(C)は、患者に装着された、実施形態の第4変形例に係る高周波コイルユニットのフォームの膨張状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、高周波コイルユニット及び磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る高周波コイルユニットを備えたMRI装置の全体構成を示すブロック図である。
【0010】
図1は、実施形態に係るMRI装置1を示す。MRI装置1は、磁石架台10と、局所コイルユニット(例えば、頭部コイルユニット20)と、寝台30と、制御キャビネット40と、画像処理装置(例えば、コンソール)50と、脱気用ポンプ60と、チューブ70等を備える。脱気用ポンプ60としては真空ポンプ又はハンドポンプなど脱気が可能であればいかなるポンプであってもよい。磁石架台10と、頭部コイルユニット20と、寝台30とは、通常、シールドルームとしての検査室に配置される。一方、制御キャビネット40と、脱気用ポンプ60としての真空ポンプとは、例えば、機械室と呼ばれる部屋に配置され、コンソール50は操作室に配置される。そのため、機械室に配置される脱気用ポンプ60は、MRI装置1に必須の構成ではないが、特に言及しない限り、MRI装置1の一構成であるものとして説明する。なお、脱気用ポンプ60がハンドポンプである場合、脱気用ポンプ60は検査室に配置されることとしてもよい。
【0011】
図1において、MRI装置1が、被検体、例えば患者Uの頭部側から磁石架台10に挿入される方式(Head First)を採用する場合について図示するがその場合に限定されるものではない。例えば、MRI装置1は、患者Uの足部側から磁石架台10に挿入される方式(Foot First or Feet First)を採用してもよい。
【0012】
磁石架台10は、静磁場磁石11と、傾斜磁場コイル12と、WB(Whole Body)コイル13等を備える。磁石架台10の静磁場磁石11は、磁石が円筒形状の磁石構造であるトンネルタイプと、撮像空間を挟んで上下に一対の磁石が配置された開放型(オープン型)とに大別される。ここでは、静磁場磁石11がトンネル型である場合について説明するが、その場合に限定されるものではない。
【0013】
静磁場磁石11は、概略円筒形状をなしており、患者Uが搬送されるボア内に静磁場を発生する。ボアとは、磁石架台10の円筒内部の空間のことである。静磁場磁石11は、例えば、液体ヘリウムを保持するための筐体と、液体ヘリウムを極低温に冷却するための冷凍機と、筐体内部の超伝導コイルとによって構成される。なお、静磁場磁石11は、永久磁石によって構成されてもよい。以下、静磁場磁石11が、超伝導コイルを有する場合について説明する。
【0014】
静磁場磁石11は、超伝導コイルを内蔵し、液体ヘリウムによって超伝導コイルが極低温に冷却されている。静磁場磁石11は、励磁モードにおいて静磁場電源から供給される電流を超伝導コイルに印加することで静磁場を発生する。その後、永久電流モードに移行すると、静磁場電源は切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、静磁場磁石11は、長時間、例えば1年以上に亘って、静磁場を発生し続ける。
【0015】
傾斜磁場コイル12は、静磁場磁石11と同様に概略円筒形状をなし、静磁場磁石11の内側に設置される。傾斜磁場コイル12は、後述する傾斜磁場電源41から供給される電流(電力)により傾斜磁場を発生し患者Uに印加する。傾斜磁場コイル12は、X軸方向について傾斜磁場を発生させるXchコイルと、Y軸方向について傾斜磁場を発生させるYchコイルと、Z軸方向の傾斜磁場を発生させるZchコイルとを備える。ここで、Z軸方向は静磁場に沿った方向、Y軸方向は垂直方向、X軸方向はZ軸とY軸それぞれに直交する方向である。
【0016】
ここで、傾斜磁場の生成に伴って発生する渦電流により発生する渦磁場がイメージングの妨げとなることから、傾斜磁場コイル12として、例えば、渦電流の低減を目的としたASGC(Actively Shielded Gradient Coil)が用いられてもよい。ASGCは、X軸、Y軸、及びZ軸方向の各傾斜磁場をそれぞれ形成するためのメインコイルの外側に、漏れ磁場を抑制するためのシールドコイルを設けた傾斜磁場コイルである。
【0017】
WBコイル13は、全身用コイルとも呼ばれ、傾斜磁場コイル12の内側に患者Uを取り囲むように概略円筒形状に設置されている。WBコイル13は、送信コイルとして機能する。つまり、WBコイル13は、後述するRF送信器42から伝送されたRFパルス信号に従ってRFパルスを患者Uに向けて送信する。一方、WBコイル13は、RFパルスを送信する送信コイルとしての機能に加え、受信コイルとしての機能を備える場合もある。その場合、WBコイル13は、受信コイルとして、原子核の励起によって患者Uから放出されるMR信号を受信する。なお、WBコイル13は、RFコイルの一例である。
【0018】
頭部コイルユニット20は、頭部コイル(コイル本体)21と、フォーム22とを備える。頭部コイル21は、患者Uの頭部の体表面に近接して配置される。頭部コイル21は、複数のコイル要素を備えてもよい。これら複数のコイル要素をアレイ状に配列したコイルは、PAC(Phased Array Coil)と呼ばれることもある。なお、本実施形態では、局所コイルが、頭部コイルである場合について説明するが、その場合に限定されるものではない。局所コイルは、患者の撮像部位を固定して使用されるコイルであればよい。局所コイルの他の例としては、足関節又は手関節用のフレックスコイル等が挙げられる。
【0019】
頭部コイル21は、受信コイルとして機能する。つまり、頭部コイル21は、前述のMR信号を受信する。ただし、頭部コイル21は、MR信号を受信する受信コイルとしての機能に加え、RFパルスを送信する送信コイルとしての機能を備える送受信コイルでもよい。例えば、頭部コイル21の中には、送受信コイルも存在する。つまり、頭部コイル21は、送信専用、受信専用、送受信兼用の種別を問わない。なお、少なくとも送信コイルとしての機能を備える頭部コイル21は、RFコイルの一例である。
【0020】
本実施形態において、頭部コイルユニット20の頭部コイル21はMRI装置1の構成品の1つであるもとして説明するが、頭部コイル21がMRI装置1の構成に含まれない場合もあり得る。この場合、頭部コイル21はMRI装置1の構成には含まれないものの、頭部コイル21とMRI装置1とは互いに接続可能に構成されている。より具体的には、頭部コイル21と、MRI装置1の寝台天板32とが互いに接続可能に構成される。
【0021】
ここで、MRI装置では、患者Uの頭部を頭部コイル21に固定するため、患者Uの頭部と頭部コイル21との間等に柔軟性のあるパッド等の固定具を挿入して患者頭部を頭部コイルに固定することも考えられる。パッドは、頭部コイル21への患者Uの頭部の位置が決められた後に操作者により患者Uの頭部と頭部コイル21の筐体の内壁面との間に差し込まれるため、その作業の際に、患者Uの頭部の位置ずれが生じてしまう場合がある。また、パッドの差し込み作業により操作者の患者Uへの接触が生じると患者Uの頭部に装着されたヘッドフォンがずれこともあるので、パッドの差し込み作業は、操作者にとって手間のかかる作業である。
【0022】
そこで、MRI装置1は、頭部コイルユニット20と、脱気用ポンプ60に繋がるチューブ70とを備える。頭部コイルユニット20は、前述の頭部コイル21の他、フォーム22を備える。フォーム22は、頭部コイル21の筐体の、患者Uの頭部と接触する位置に設けられる。フォーム22は、脱気により圧縮され、かつ、ウレタン等の発泡フォームの反発力により膨張する。フォーム22は、チューブ70を介して脱気用ポンプ60に接続される。脱気用ポンプ60は、磁石架台10の外部に設けられる。脱気用ポンプ60は、脱気用ポンプ本体と、一端がチューブ70に接続される真空バルブと、一端が大気開放される開放バルブと、真空バルブの他端と開放バルブの他端とを合流させて脱気用ポンプ本体に接続するラインとを含む。チューブ70は、寝台天板32の上面表側から上面裏側に回され、寝台天板32の長手方向(z軸方向)に沿って延設されて脱気用ポンプ60に接続される。寝台天板32がz軸方向に移動すると、寝台天板32に配置された頭部コイルユニット20のフォーム22と脱気用ポンプ60との距離が変動するので、フォーム22と脱気用ポンプ60とを接続するチューブ70は、長さに余裕をもって設置される。
【0023】
そして、フォーム22は、脱気用ポンプ60による脱気により圧縮される。つまり、脱気用ポンプ60の真空バルブの開放と、開放バルブの遮蔽と、脱気用ポンプ本体の稼働とにより、フォーム22内の空気をチューブ70と、真空バルブとを介して脱気用ポンプ本体に吸引させることで、フォーム22を圧縮させる。また、フォーム22は、脱気用ポンプ60による大気開放により膨張する。つまり、脱気用ポンプ60の真空バルブの開放と、開放バルブの開放とにより、開放バルブから流入する空気を真空バルブと、チューブ70とを介してフォーム22に吸引させることで、フォーム22を膨張させる。
【0024】
なお、MRI装置1が、音を発生させる傾斜磁場コイル12を真空に封入するための脱気用ポンプ(図示省略)を設ける場合、その脱気用ポンプにフォーム22を接続することで、脱気用ポンプを兼用するようにしてもよい。その場合、MRI装置1に脱気用ポンプ60は必要ない。
【0025】
図2(A)は、頭部コイルユニット20に設けられるフォーム22の圧縮状態を示す正面図である。図2(B)は、患者Uに装着された頭部コイルユニット20のフォーム22の圧縮状態を示す正面図である。図2(C)は、患者Uに装着された頭部コイルユニット20のフォーム22の膨張状態を示す正面図である。
【0026】
図2(A)に示すように、頭部コイルユニット20には、患者Uの左右方向の頭部のずれを抑えるために、頭部コイル21の筐体の左右の内壁面であって患者Uの頭部への接触面に、2個のフォーム22が設けられる。例えば、左右に2個のフォーム22は、頭部コイルユニット20が装着された患者Uの左右の耳付近にそれぞれ当接可能な位置に設けられる。なお、頭部コイル21の筐体の上下の内壁面等にフォームが設けられてもよい。
【0027】
フォーム22には、開口部Hが設けられる。フォーム22の開口部Hには、脱気及び大気開放用のチューブ70が接続される。脱気用ポンプ60によりチューブ70を介してフォーム22内を脱気することで、図2(A)に示すように、フォーム22が圧縮状態となる。フォーム22の圧縮状態で、寝台天板(図1に図示)32に載置された患者Uの頭部に頭部コイルユニット20が装着される(図2(B)に図示)。そして、頭部コイル21に対する患者Uの頭部位置が確定した時点で、チューブ70を介してフォーム22内を大気開放することでフォーム22が膨張状態となる(図2(C)に図示)。つまり、ポンプからの吸気ではなくフォーム22の圧縮が戻る力を利用してフォーム22を膨張させる。フォーム22の膨張により、患者Uの頭部を頭部コイル21に固定することができる。フォーム22の膨張状態で患者Uの頭部の撮像が実行される。
【0028】
また、撮像終了後、図2(C)に示すフォーム22の膨張状態から、脱気用ポンプ60によりチューブ70を介してフォーム22内を脱気することで、フォーム22が圧縮状態に戻る(図2(B)に図示)。フォーム22の圧縮状態で、患者Uの頭部から頭部コイルユニット20を取り外すことができる。
【0029】
図1の説明に戻る。寝台30は、寝台本体31と寝台天板32とを備える。寝台本体31は寝台天板32を上下方向及び水平方向に移動可能であり、撮像前に寝台天板32に載った被検体を所定の高さまで移動させる。その後、撮像時には寝台天板32を水平方向に移動させて被検体をボア内に移動させる。
【0030】
続いて、制御キャビネット40の説明に移る。制御キャビネット40は、傾斜磁場電源41(X軸用41x、Y軸用41y、Z軸用41z)と、RF送信器42と、RF受信器43と、シーケンスコントローラ44とを備える。
【0031】
傾斜磁場電源41は、X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とについて傾斜磁場を発生するコイルそれぞれを駆動する各チャンネル用の傾斜磁場電源41x,41y,41zを備える。傾斜磁場電源41x,41y,41zは、シーケンスコントローラ44の指令により、必要な電流を各チャンネル独立に出力する。それにより、傾斜磁場コイル12は、X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とにおける傾斜磁場(「勾配磁場」とも呼ばれる)を患者Uに印加することができる。
【0032】
RF送信器42は、シーケンスコントローラ44からの指示に基づいてRFパルス信号を生成する。RF送信器42は、生成したRFパルス信号をRFコイル(WBコイル13又は頭部コイル21)に伝送する。
【0033】
WBコイル13や頭部コイル21で受信したMR信号、より具体的には、頭部コイル21内の各コイル要素で受信したMR信号は、RF受信器43に伝送される。各コイル要素の出力線路や、WBコイル13の出力線路はチャンネルと呼ばれる。このため、各コイル要素やWBコイル13から出力されるMR信号をそれぞれチャンネル信号と呼ぶこともある。WBコイル13で受信したチャンネル信号もRF受信器43に伝送される。
【0034】
RF受信器43は、WBコイル13や頭部コイル21からのチャンネル信号、すなわち、MR信号をAD(Analog to Digital)変換して、シーケンスコントローラ44に出力する。デジタルに変換されたMR信号は、生データ(Raw Data)と呼ばれることもある。
【0035】
シーケンスコントローラ44は、コンソール50による制御により、傾斜磁場電源41と、RF送信器42と、RF受信器43とをそれぞれ駆動することによって患者Uの撮像を行う。撮像によってRF受信器43から生データを受信すると、シーケンスコントローラ44は、その生データをコンソール50に送信する。
【0036】
シーケンスコントローラ44は、処理回路(図示を省略)を具備する。この処理回路は、例えば所定のプログラムを実行するプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成される。
【0037】
続いて、コンソール50の説明に移る。コンソール50は、処理回路51と、メモリ52と、入力インターフェース53と、ディスプレイ54とを備える。
【0038】
処理回路51は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)等のプロセッサの他、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び、プログラマブル論理デバイス等の処理回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の回路が挙げられる。処理回路51は、メモリ52に記憶された、又は、処理回路51内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで、シーケンスコントローラ44の動作を制御し、パルスシーケンスに従った撮像を実行してMR画像を生成する機能を実現する。なお、処理回路51は、処理部の一例である。
【0039】
また、処理回路51は、単一の処理回路によって構成されてもよいし、複数の独立した処理回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、複数のメモリ52が複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムをそれぞれ記憶するものであってもよいし、1個のメモリ52が複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0040】
メモリ52は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、及び光ディスク等を備える。メモリ52は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアを備えてもよい。メモリ52は、処理回路51において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータや、医用画像を記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ54への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース53によって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。なお、メモリ52は、記憶部の一例である。
【0041】
入力インターフェース53は、操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力デバイス、及び音声入力デバイス等によって実現される。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路はその操作に応じた信号を生成して処理回路51に出力する。なお、入力インターフェース53は、入力部の一例である。
【0042】
ディスプレイ54は、例えば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ54は、処理回路51の制御に従って各種情報を表示する。なお、ディスプレイ54は、表示部の一例である。
【0043】
コンソール50は、処理回路51による制御の下、シーケンスコントローラ44から送信される生データをk空間に配置し、メモリ52に記憶する。コンソール50は、処理回路51による制御の下、メモリ52に記憶されたk空間データに対して、逆フーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、患者U内の所望のMR画像を生成する。そして、コンソール50は、処理回路51による制御の下、生成した各種MR画像をメモリ52に格納する。
【0044】
続いて、MRI装置1の機能について図3を用いて説明する。
【0045】
図3は、MRI装置1の機能を示すブロック図である。
【0046】
処理回路51は、メモリ52に記憶された、又は、処理回路51内に直接組み込まれたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、図3に示すように、開放制御機能F1と、撮像機能F2と、脱気制御機能F3とを実現する。以下、機能F1~F3がコンピュータプログラムの実行によりソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、機能F1~F3の全部又は一部の機能は、ASIC等の回路により実現されてもよい。
【0047】
開放制御機能F1は、入力インターフェース53からの入力信号に基づいてフォーム22内を大気開放するように脱気用ポンプ60の動作を制御する機能を含む。具体的には、開放制御機能F1は、入力インターフェース53からの入力信号に基づいて、脱気用ポンプ60の真空バルブを開放し、脱気用ポンプ60の開放バルブを開放することで、開放バルブから流入する空気を真空バルブと、チューブ70とを介してフォーム22に吸引させることで、フォーム22を膨張させる。なお、開放制御機能F1は、開放制御部の一例である。
【0048】
撮像機能F2は、磁石架台10と、頭部コイルユニット20と、寝台30等を制御することにより、患者Uの頭部に関する撮像を実行する機能と、頭部コイル21からのMR信号に基づいて患者U内の所望のMR画像を生成する機能とを含む。ここで、撮像は、位置決め撮像(又は、プリスキャン)や、1又は複数のパルスシーケンスに沿った撮像を意味し、寝台天板32の移動(ボアへの挿入/ボアからの退避)動作をも含み得る。なお、撮像機能F2は、撮像部の一例である。
【0049】
脱気制御機能F3は、フォーム22内の脱気を撮像の終了に連動させるように脱気用ポンプ60の動作を制御する機能を含む。具体的には、脱気制御機能F3は、フォーム22内の脱気を撮像の終了に連動させるように、脱気用ポンプ60の真空バルブを開放し、脱気用ポンプ60の開放バルブを遮蔽し、脱気用ポンプ60の脱気用ポンプ本体を稼働させることで、フォーム22内の空気をチューブ70と、真空バルブとを介して脱気用ポンプ本体に吸引させることで、フォーム22を圧縮させる。なお、脱気制御機能F3は、脱気制御部の一例である。
【0050】
続いて、MRI装置1の動作について図4を用いて説明する。
【0051】
図4は、MRI装置1の動作をフローチャートとして示す図である。図4において、「ST」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0052】
まず、ステップST1において、脱気制御機能F3は、脱気用ポンプ60の動作を制御して、チューブ70を介してフォーム22内を脱気することでフォーム22を圧縮させる(図2(A)に図示)。患者Uより前の患者の撮像においてステップST8によりフォーム22の圧縮がされているが、ステップST8により十分な圧縮がなされていない可能性や、ステップST8によるフォーム22の圧縮状態から患者Uの撮像までにフォーム22内に空気が流入してフォーム22の圧縮状態が不十分になっている可能性があるからである。
【0053】
続いて、ステップST2において、寝台30の寝台天板32に患者Uが載置される。ステップST2では、下降された位置の寝台天板32に対して患者Uが臥位で載置され、患者Uが載置された寝台天板32を上昇させることで、寝台天板32の高さが調整される。
【0054】
続いて、ステップST3において、寝台天板32に載置された患者Uに、フォーム22が圧縮状態である局所コイルユニット、例えば、頭部コイルユニット20が装着される。ステップST3において、患者Uの頭部に、フォーム22が圧縮状態である頭部コイルユニット20が装着され(図2(B)に図示)、頭部コイル21のケーブルがコイルポートに接続される。
【0055】
続いて、ステップST4において、頭部コイル21に対して、寝台天板32に載置された患者Uの頭部を位置合せする。
【0056】
頭部コイル21に対する患者Uの位置合せが完了すると、開放制御機能F1は、ステップST5において、入力インターフェース53からの入力信号に基づいてフォーム22内を大気開放するように脱気用ポンプ60の動作を制御することでフォーム22を膨張させる(図2(C)に図示)。ステップST5により、患者Uの頭部の形状に沿ってフォーム22を膨張されることで、頭部が頭部コイル21に対して固定される。このように、圧縮状態のフォーム22を膨張させて患者Uの頭部を頭部コイル21に固定することができるので、患者Uの頭部の位置決め後にパッドを挿入する必要が無い。また、患者Uは、膨張時のフォーム22から、一般的なパッドと同等のクッション性、肌触りを得ることができる。
【0057】
撮像機能F2は、ステップST6において、患者Uが載置された寝台天板32を磁石架台10のボアに挿入する。そして、撮像機能F2は、ステップST7において、患者Uの頭部に関する撮像を実行してMR画像を生成する。
【0058】
脱気制御機能F3は、フォーム22内の脱気を撮像の終了に連動させるように脱気用ポンプ60の動作を制御して、チューブ70を介してフォーム22内を脱気することでフォーム22を圧縮させる(図2(B)に図示)。例えば、脱気制御機能F3は、撮像の終了直後に、フォーム22内の脱気を行うように脱気用ポンプ60の動作を制御して、フォーム22内を脱気する。ステップST7により、患者Uの頭部の頭部コイル21への固定が解除される。
【0059】
撮像機能F2は、ステップST8において、患者Uが載置された寝台天板32を磁石架台10のボアから退避させる。なお、ステップST8とST9との順序は問わないし、同時並行で実行されてもよい。ステップST10において、頭部コイル21のケーブルがコイルポートから取り外され、患者Uの頭部から、フォーム22が圧縮状態である頭部コイルユニット20が取り外される。
【0060】
以上のように、頭部コイルユニット20(及びそれを備えたMRI装置1)によれば、圧縮状態で装着されたフォーム22を膨張させるだけで患者Uの頭部を頭部コイル21に固定できるので、頭部コイル21に対する患者Uの頭部の位置合せ時の操作者の作業効率を向上させることができる。また、頭部コイルユニット20及びMRI装置1によれば、患者Uの頭部と頭部コイル21の筐体の内壁面との間に固定具を差し込む必要なく、頭部の形状に沿って頭部が固定されるため、差し込み作業時の頭部の位置ずれが生じることがないので、頭部の位置ずれに伴う再撮像を抑制することができる。また、頭部コイルユニット20及びMRI装置1によれば、患者Uの頭部と頭部コイル21の筐体の内壁面との間に固定具を差し込む必要なく、頭部の形状に沿って頭部が固定されるため、位置合せ時の患者Uの負担が軽減される。
【0061】
(第1変形例)
第1変形例に係る頭部コイルユニット20Aは、上述で説明したフォーム22を面で均等に圧縮するために、フォーム22と頭部コイル21との間に、硬い材料で形成される接触側部材23を設ける。つまり、フォーム22の患者Uの頭部側の面は、反対側の面(頭部コイル21の筐体との接触側)に比べて柔らかい材料からなる。
【0062】
図5(A)は、患者に装着された頭部コイルユニット20Aのフォーム22の圧縮状態を示す正面図である。図5(B)は、患者に装着された頭部コイルユニット20Aのフォーム22の膨張状態を示す正面図である。
【0063】
図5(A),(B)に示すように、頭部コイルユニット20Aは、頭部コイル21と、開口部Hを備えるフォーム22と、接触側部材23とを備える。頭部コイルユニット20Aには、頭部コイルユニット20(図2に図示)と同様に、患者Uの左右方向の頭部のずれを抑えるために、左右に2個のフォーム22が設けられる。また、フォーム22の開口部Hには、脱気及び大気開放用のチューブ70が接続される。なお、図5(A),(B)において、図2(A)~(C)と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0064】
接触側部材23は、フォーム22を面で均等に圧縮するために、フォーム22の頭部コイル21の硬い材料で形成される。
【0065】
脱気用ポンプ60によりチューブ70を介してフォーム22内を脱気することで、フォーム22が圧縮状態となる。フォーム22の外側の硬い接触側部材23により、フォーム22を面で均等に圧縮することができる。フォーム22の圧縮状態で、寝台天板32に載置された患者Uの頭部に頭部コイルユニット20Aが装着される(図5(A)に図示)。そして、頭部コイル21に対する患者Uの頭部位置が確定した時点で、チューブ70を介してフォーム22内を大気開放することでフォーム22が膨張状態となる(図5(B)に図示)。ポンプからの吸気ではなくフォーム22の圧縮が戻る力を利用してフォーム22を膨張させる。フォーム22の膨張により、患者Uの頭部を頭部コイル21に固定することができる。フォーム22の膨張状態で患者Uの頭部の撮像が実行される。
【0066】
また、撮像終了後、図5(B)に示すフォーム22の膨張状態から、脱気用ポンプ60によりチューブ70を介してフォーム22内を脱気することで、フォーム22が圧縮状態に戻る(図5(A)に図示)。フォーム22の圧縮状態で、患者Uの頭部から頭部コイルユニット20Aを取り外すことができる。
【0067】
以上のように、頭部コイルユニット20A(及びそれを備えたMRI装置1)によれば、上述の効果に加え、フォーム22の外側の硬い接触側部材23により、フォーム22を面で均等に圧縮することができる。
【0068】
(第2変形例)
第2変形例に係る頭部コイルユニット20Bは、上述で説明したフォーム22を面で均等に圧縮するために、複数の開口部を備えるフォーム22Bを備える。また、フォーム22Bの複数の開放部にそれぞれチューブ70Bが接続される。複数の開口部は、フォーム22Bの頭部コイル21との接触面において均等に拡がった複数位置に配置されることが好適である。
【0069】
図6(A)は、患者に装着された頭部コイルユニット20Bのフォーム22の圧縮状態を示す正面図である。図6(B)は、患者に装着された頭部コイルユニット20Bのフォーム22の膨張状態を示す正面図である。
【0070】
図6(A),(B)に示すように、頭部コイルユニット20Bは、頭部コイル21と、複数の開口部HBn(例えば、2個のHB1,HB2)を備えるフォーム22Bとを備える。頭部コイルユニット20Bには、頭部コイルユニット20(図2に図示)と同様に、患者Uの左右方向の頭部のずれを抑えるために、左右に2個のフォーム22Bが設けられる。また、フォーム22Bの開口部HB1,HB2にはそれぞれ、脱気及び大気開放用のチューブ70Bが接続される。なお、図6(A),(B)において、図2(A)~(C)と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
脱気用ポンプ60によりチューブ70Bを介してフォーム22B内を脱気することで、フォーム22Bが圧縮状態となる。フォーム22B内を開口部HB1,HB2から脱気することにより、フォーム22Bを面で均等に圧縮することができる。フォーム22Bの圧縮状態で、寝台天板32(図1に図示)に載置された患者Uの頭部に頭部コイルユニット20Bが装着される(図6(A)に図示)。そして、頭部コイル21に対する患者Uの頭部位置が確定した時点で、チューブ70Bを介してフォーム22B内を大気開放することでフォーム22Bが膨張状態となる(図6(B)に図示)。ポンプからの吸気ではなくフォーム22Bの圧縮が戻る力を利用してフォーム22Bを膨張させる。フォーム22Bの膨張により、患者Uの頭部を頭部コイル21に固定することができる。フォーム22Bの膨張状態で患者Uの頭部の撮像が実行される。
【0072】
また、撮像終了後、図6(B)に示すフォーム22Bの膨張状態から、脱気用ポンプ60によりチューブ70Bを介してフォーム22B内を脱気することで、フォーム22Bが圧縮状態に戻る(図6(A)に図示)。フォーム22Bの圧縮状態で、患者Uの頭部から頭部コイルユニット20Bを取り外すことができる。
【0073】
以上のように、頭部コイルユニット20B(及びそれを備えたMRI装置1)によれば、上述の効果に加え、フォーム22B内を均等に拡がった複数位置の開口部から脱気することにより、フォーム22Bを面で均等に圧縮することができる。
【0074】
(第3変形例)
第3変形例に係る頭部コイルユニット20Cは、撮像部位のサイズの変化に対応するために、厚さ方向に複数段のフォーム要素を備えるフォーム22Cを設ける。
【0075】
図7(A)は、第1患者に装着された頭部コイルユニット20Cのフォーム22Cの圧縮状態を示す正面図である。図7(B)は、第1患者に装着された頭部コイルユニット20Cのフォーム22Cの膨張状態を示す正面図である。図7(C)は、第2患者に装着された頭部コイルユニット20Cのフォーム22Cの膨張状態を示す正面図である。
【0076】
図7(A)~(C)に示すように、頭部コイルユニット20Cは、頭部コイル21と、フォーム22Cとを備える。頭部コイルユニット20Cには、頭部コイルユニット20(図2に図示)と同様に、患者Uの左右方向の頭部のずれを抑えるために、左右に2個のフォーム22Cが設けられる。また、フォーム22Cには、脱気及び大気開放用のチューブ70Cが接続される。なお、図7(A)~(C)において、図2(A)~(C)と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0077】
フォーム22Cは、厚さ方向に複数段のフォーム要素から構成される。例えば、フォーム22Cは、厚さ方向に2段の内段フォーム221と、外段フォーム222とを備える。チューブ70Cは、内段フォーム221に対応する内段チューブ701と、外段フォーム222に対応する外段チューブ702とを備える。そして、内段フォーム221は開口部HC1を有し、その開口部HC1を介して内段チューブ701に接続される。外段フォーム222は開口部HC2を有し、その開口部HC2を介して外段チューブ702に接続される。なお、厚さ方向に複数段のフォーム要素は、2段のフォーム要素に限定されるものではなく、3以上のフォーム要素であってもよい。
【0078】
脱気用ポンプ60によりチューブ701,702を介してフォーム221,222内をそれぞれ脱気することで、フォーム221,222がそれぞれ圧縮状態となる。患者Uが頭部の大きい第1患者(例えば、大人)U1である場合、フォーム221,222の圧縮状態で、寝台天板32(図1に図示)に載置された大人U1の頭部に頭部コイルユニット20Cが装着される(図7(A)に図示)。そして、大人U1の頭部位置が確定した時点で、複数段のフォーム221,222のうち、頭部コイルユニット20Cが装着される撮像部位である頭部側から順に膨張させる。頭部に接触する側のフォーム要素を優先的に膨張させることで、頭部の形状に合わせて頭部を固定することが可能であるし、頭部への負荷も小さくて済むからである。
【0079】
まず、内段チューブ701を介して内段フォーム221内を大気開放することで内段フォーム221が膨張状態となる(図7(B)に図示)。ポンプからの吸気ではなく内段フォーム221の圧縮が戻る力を利用して内段フォーム221を膨張させる。内段フォーム221の膨張により、頭部サイズの大きい大人U1の頭部を頭部コイル21に固定することができる。そのため、外段フォーム222の膨張させる必要はない。内段フォーム221の膨張状態で大人U1の頭部の撮像が実行される。
【0080】
また、撮像終了後、図7(B)に示す内段フォーム221の膨張状態から、脱気用ポンプ60により内段チューブ701を介して内段フォーム221内を脱気することで、内段フォーム221が圧縮状態に戻る(図7(A)に図示)。フォーム221,222の圧縮状態で、大人U1の頭部から頭部コイルユニット20Cを取り外すことができる。
【0081】
一方で、患者Uが頭部の小さい第2患者(例えば、子供)U2である場合、子供U2の頭部位置が確定した時点で、複数段のフォーム221,222のうち、頭部コイルユニット20Cが装着される撮像部位である頭部側から順に膨張させる。まず、内段チューブ701を介して内段フォーム221内を大気開放することで内段フォーム221が膨張状態となる。ポンプからの吸気ではなく内段フォーム221の圧縮が戻る力を利用して内段フォーム221を膨張させる。しかし、その段階では、頭部サイズの小さい子供U2の頭部を頭部コイル21に固定することはできない。そこで、外段チューブ702を介して外段フォーム222内を大気開放することで外段フォーム222が膨張状態となる(図7(C)に図示)。ポンプからの吸気ではなく外段フォーム222の圧縮が戻る力を利用して外段フォーム222を膨張させる。フォーム221,222の両方の膨張により、頭部サイズの小さい子供U2の頭部を頭部コイル21に固定することができる。フォーム221,222の膨張状態で子供U2の頭部の撮像が実行される。
【0082】
また、撮像終了後、図7(C)に示すフォーム221,222の膨張状態から、脱気用ポンプ60によりチューブ701,702を介してフォーム221,222内を脱気することで、フォーム221,222が圧縮状態に戻る。フォーム221,222の圧縮状態で、子供U2の頭部から頭部コイルユニット20Cを取り外すことができる。
【0083】
以上のように、頭部コイルユニット20C(及びそれを備えたMRI装置1)によれば、上述の効果に加え、撮像部位のサイズの変化に対応せることができる。
【0084】
(第4変形例)
MRI装置1は、撮像に連動してフォーム内の脱気や大気開放をするものに限定されるものではない。MRI装置1は、操作者による脱気操作、大気開放操作によりフォーム内の脱気や大気開放がなされてもよい。その場合、第4変形例に係る頭部コイルユニット20Dは、開閉自在の開閉部HDを備えるフォーム22Dを設ける。
【0085】
図8(A)は、頭部コイルユニット20Dに設けられるフォーム22Dの圧縮状態を示す正面図である。図8(B)は、患者Uに装着された頭部コイルユニット20Dのフォーム22Dの圧縮状態を示す正面図である。図8(C)は、患者Uに装着された頭部コイルユニット20Dのフォーム22Dの膨張状態を示す正面図である。
【0086】
図8(A)~(C)に示すように、頭部コイルユニット20Dは、頭部コイル21と、フォーム22Dとを備える。頭部コイルユニット20Dには、頭部コイルユニット20(図2に図示)と同様に、患者Uの左右方向の頭部のずれを抑えるために、左右に2個のフォーム22Dが設けられる。なお、図8(A)~(C)において、図2(A)~(C)と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0087】
フォーム22Dには、開閉部HDが設けられる。操作者により、フォーム22Dの開閉部HDに、脱気及び大気開放用で着脱可能なチューブ(図示省略)が接続される。脱気用ポンプ60によりチューブを介してフォーム22D内を脱気することで、図8(A)に示すように、フォーム22Dが圧縮状態となる。操作者によりフォーム22Dからチューブが取り外され、フォーム22Dの開閉部HDが閉じられる。フォーム22Dの圧縮状態で、寝台天板32(図1に図示)に載置された患者Uの頭部に頭部コイルユニット20Dが装着される(図8(B)に図示)。
【0088】
そして、頭部コイル21に対する患者Uの頭部位置が確定した時点で、操作者によりフォーム22Dの開閉部HDが開かれ、フォーム22D内を大気開放することでフォーム22Dが膨張状態となる(図8(C)に図示)。ポンプからの吸気ではなくフォーム22Dの圧縮が戻る力を利用してフォーム22Dを膨張させる。フォーム22Dの膨張により、患者Uの頭部を頭部コイル21に固定することができる。フォーム22Dの膨張状態で患者Uの頭部の撮像が実行される。
【0089】
また、撮像終了後、操作者により、フォーム22Dの開閉部HDに、チューブ(図示省略)が接続される。図8(C)に示すフォーム22Dの膨張状態から、脱気用ポンプ60によりチューブを介してフォーム22D内を脱気することで、フォーム22Dが圧縮状態に戻る(図8(B)に図示)。フォーム22Dの圧縮状態で、患者Uの頭部から頭部コイルユニット20Dを取り外すことができる。
【0090】
以上のように、頭部コイルユニット20D(及びそれを備えたMRI装置1)によれば、上述の効果に加え、着脱可能なチューブ(図示省略)を用いてフォーム22Dの脱気及び大気開放を行うことができるので、チューブ70(図1に図示)の取り回しを考慮する必要がなくなる。
【0091】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、局所コイルに対する撮像部位の位置合せ時の操作者の作業効率を向上させることができるとともに、被検体の位置ずれに伴う再撮像を抑制することができる。
【0092】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0093】
1…磁気共鳴イメージング(MRI)装置
20,20A,20B,20C,20D…局所コイルユニット(例えば、頭部コイルユニット)
21…局所コイル(例えば、頭部コイル)
22,22B,22C,22D…フォーム
221…内段フォーム
222…外段フォーム
51…処理回路
60…脱気用ポンプ
70,70B,70C…チューブ
701…内段チューブ
702…外段チューブ
F1…開放制御機能
F2…撮像機能
F3…脱気制御機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8