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特開2023-100031視力検査プログラム、視力検査システム、及び視力検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100031
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】視力検査プログラム、視力検査システム、及び視力検査方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/032 20060101AFI20230710BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A61B3/032
A61B3/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000365
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】597039984
【氏名又は名称】学校法人 川崎学園
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 剛
(72)【発明者】
【氏名】大内 達央
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AA21
4C316FA01
4C316FA19
4C316FB07
4C316FB12
4C316FZ01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハードウェア資源を利用した検査により、検者による視力評価のばらつきを排し、選好注視法による視力検査に比して検査時間を短縮し、視力検査の精度を向上させた視力検査プログラム、視力検査システム、視力検査方法を提供する。
【解決手段】コンピュータを、視標を表示させるための手段と、被験者が視標を注視しているかどうか判定する手段として機能させるための視力検査プログラムであり、当該視力検査プログラムは、被験者の視線が視標に所定の時間以上停留しているかどうか判断する第1正誤判断と、被験者の視線が視標と視標以外の領域とに累積して停留している時間を比較して判断する第2正誤判断とを行わせるものであり、第1正誤判断、及び第2正誤判断のいずれか一方において、正答と判断された場合に、視標が視認されていると判断させる視力検査プログラム、それを利用した視力検査システム、及び視力検査方法である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
視標を表示させるための手段と、
被験者が視標を注視しているかどうか判定する手段として機能させるための視力検査プログラムであり、
当該視力検査プログラムは、被験者が視標を注視しているかどうか判断する第1正誤判断と、被験者が視標を注視しているかどうか判断する第2正誤判断とを行わせるものであり、
第1正誤判断は、被験者の視線が視標に所定の時間以上連続して停留している場合(第1条件)、及び被験者の視線が視標に所定の時間以上累積して停留している場合(第2条件)のうち、少なくともいずれか一方を満たす場合を正答と判断させて、いずれも満たさない場合を誤答と判断させるステップであり、
第2正誤判断は、視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを比較して、正誤判断させるステップであり、
第1正誤判断、及び第2正誤判断の両方において、誤答と判断された場合に、視標が視認されていないと判断させ、
第1正誤判断、及び第2正誤判断のいずれか一方において、正答と判断された場合に、視標が視認されていると判断させる視力検査プログラム。
【請求項2】
視標は、画像表示部の任意の位置にランダムに表示される請求項1に記載の視力検査用プログラム。
【請求項3】
視標を表示する前に、画像表示部に、視標とは異なる印を表示させる請求項1又は2に記載の視力検査用プログラム。
【請求項4】
視標は、縞模様の印であり、高視力用の視標は、低視力用の視標に比して、縞模様の間隔が小さく構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の視力検査用プログラム。
【請求項5】
前記視力検査プログラムは、
第1正誤判断及び第2正誤判断のうちの一方が誤答の場合に、第1正誤判断及び第2正誤判断のうちの他方を行わせて、
第1正誤判断及び第2正誤判断のうちの一方が正答の場合に、第1正誤判断及び第2正誤判断のうちの他方を行わせないものである請求項1ないし4のいずれかに記載の視力検査用プログラム。
【請求項6】
被験者が視標を注視しているかどうか判定するための演算と情報の記録とを行う演算部及び記憶部を備える視力検査システムであり、
当該システムは、視線評価部で取得された情報を基に、被験者が視標を注視しているかどうか判断する第1正誤判断と、被験者が視標を注視しているかどうか判断する第2正誤判断とを行い、
第1正誤判断は、被験者の視線が視標に所定の時間以上連続して停留している場合(第1条件)、及び被験者の視線が視標に所定の時間以上累積して停留している場合(第2条件)のうち、少なくともいずれか一方を満たす場合を正答と判断し、いずれも満たさない場合を誤答と判断するステップであり、
第2正誤判断は、視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを比較して、正誤判断させるステップであり、
第1正誤判断、及び第2正誤判断の両方において、誤答と判断された場合に、視標が視認されていないと判断し、
第1正誤判断、及び第2正誤判断のいずれか一方において、正答と判断された場合に、視標が視認されていると判断する視力検査システム。
【請求項7】
被験者が視標を注視しているかどうか判定するための演算と情報の記録とを行う演算部及び記憶部を備えるコンピュータを用いて視力を検査する方法であり、
当該方法は、視線評価部で取得された情報を基に、被験者が視標を注視しているかどうかコンピュータに判断させる第1正誤判断と、被験者が視標を注視しているかどうかコンピュータに判断させる第2正誤判断とを行い、
第1正誤判断は、被験者の視線が視標に所定の時間以上連続して停留している場合(第1条件)、及び被験者の視線が視標に所定の時間以上累積して停留している場合(第2条件)のうち、少なくともいずれか一方を満たす場合を正答と判断させて、いずれも満たさない場合を誤答とコンピュータに判断させるステップであり、
第2正誤判断は、視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを比較して、正誤判断させるステップであり、
第1正誤判断、及び第2正誤判断の両方において、誤答と判断された場合に、視標が視認されていないとコンピュータに判断させて、
第1正誤判断、及び第2正誤判断のいずれか一方において、正答と判断された場合に、視標が視認されているとコンピュータに判断させる視力検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視力検査プログラムと、視力検査システムと、視力検査方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、以下の特許文献1に開示されているように、被験者の注視点を検出する装置が知られている。特許文献1の装置は、2台のカメラと、画像処理装置とを備えており、2台のカメラで被験者の顔の画像を撮影し、被験者の顔の画像に基づいて、被験者の角膜の反射点と瞳孔の中心の座標を計算し、これに基づいて光軸の方向を計算するとされている。所定の条件により、光軸の方向を補正して被験者の視軸の方向を計算し、視軸の方向に基づいて注視点を検出するとされている。
【0003】
特許文献2には、被験者の注視点の位置を検出する注視点検出部と、注視点検出部の検出結果に基づいて、指標提示部に提示される複数の視標の1つである特定指標に対応する特定領域に注視点が存在するか否かを判定する判定部と、判定部の判定結果に基づいて、被験者の視力を評価する評価部とを備える視力の評価装置が開示されている。当該評価装置では、指標の表示時間に対して、特定指標の周囲に設定された特定領域に注視点が存在する時間の割合である存在割合を求めるとされている。存在割合が所定値以上であれば、被験者が特定指標、すなわち、開環したランドルト環を認識できていると判断するとされている。また、存在割合に替えて、特定領域における注視点の存在時間を基準としてもよいとされている。そして、同一サイズの指標について、被験者に複数回提示して、複数回のうち指標、すなわちランドルト環を識別できていると判定された回数が先に50%以上となった場合には、当該サイズの指標に対応する視力を有すると評価するとされている。複数回のうち指標、すなわちランドルト環を識別できていないと判定された回数が先に50%以上となった場合には、当該サイズの指標に対応する視力を有していないと評価するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-166101号公報
【特許文献2】特開2015-169959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
口頭での応答が困難である乳幼児、又は口頭での応答な困難な症状を有する患者に対して、視力検査を実施する際には、検者が、被験者の前にTeller acuity cards(TAC)と呼ばれるカードを提示し、被験者の眼球の動きや顔の傾きなどにより被験者の注視方向を判断し、被験者が視標を視認しているか否かを判断する。このような視力検査は選好注視法と呼ばれている。選好注視法による視力検査では、検者によって判断のばらつきがあり、検査結果に対する信頼性に疑問が生じる場合がある。また、1回の検査に長い時間を要する点で問題があった。
【0006】
上記の特許文献1や特許文献2のような視点の検知装置を利用して、特許文献2に示されているように、複数のランドルト環のうちの1つだけを開環させた特定指標として、視力検査を実施する方法も知られている。本発明者が検証したところでは、このような試験方法では、特定領域に指標が存在する割合に基づいてのみ正誤判断を実施するため、視力の測定精度が十分でないことがあった。
【0007】
本発明は、ハードウェア資源を利用した検査により、検者による視力評価のばらつきを排し、選好注視法による視力検査に比して検査時間を短縮し、視力検査の精度を向上させた視力検査プログラム、視力検査システム、視力検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
コンピュータを、視標を表示させるための手段と、被験者が視標を注視しているかどうか判定する手段として機能させるための視力検査プログラムであり、当該視力検査プログラムは、被験者が視標を注視しているかどうか判断する第1正誤判断と、被験者が視標を注視しているかどうか判断する第2正誤判断とを行わせるものであり、第1正誤判断は、被験者の視線が視標に所定の時間以上連続して停留している場合(第1条件)、及び被験者の視線が視標に所定の時間以上累積して停留している場合(第2条件)のうち、少なくともいずれか一方を満たす場合を正答と判断させて、いずれも満たさない場合を誤答と判断させるステップであり、第2正誤判断は、視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを比較して、正誤判断させるステップであり、第1正誤判断、及び第2正誤判断の両方において、誤答と判断された場合に、視標が視認されていないと判断させ、第1正誤判断、及び第2正誤判断のいずれか一方において、正答と判断された場合に、視標が視認されていると判断させる視力検査プログラムにより、上記の課題を解決する。
【0009】
被験者が視標を注視しているかどうか判定するための演算と情報の記録とを行う演算部及び記憶部を備える視力検査システムであり、当該システムは、視線評価部で取得された情報を基に、被験者が視標を注視しているかどうか判断する第1正誤判断と、被験者が視標を注視しているかどうか判断する第2正誤判断とを行い、第1正誤判断は、被験者の視線が視標に所定の時間以上連続して停留している場合(第1条件)、及び被験者の視線が視標に所定の時間以上累積して停留している場合(第2条件)のうち、少なくともいずれか一方を満たす場合を正答と判断し、いずれも満たさない場合を誤答と判断するステップであり、第2正誤判断は、視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを比較して、正誤判断させるステップであり、第1正誤判断、及び第2正誤判断の両方において、誤答と判断された場合に、視標が視認されていないと判断し、第1正誤判断、及び第2正誤判断のいずれか一方において、正答と判断された場合に、視標が視認されていると判断する視力検査システムにより、上記の課題を解決する。
【0010】
被験者が視標を注視しているかどうか判定するための演算と情報の記録とを行う演算部及び記憶部を備えるコンピュータを用いて視力を検査する方法であり、当該方法は、視線評価部で取得された情報を基に、被験者が視標を注視しているかどうかコンピュータに判断させる第1正誤判断と、被験者が視標を注視しているかどうかコンピュータに判断させる第2正誤判断とを行い、第1正誤判断は、被験者の視線が視標に所定の時間以上連続して停留している場合(第1条件)、及び被験者の視線が視標に所定の時間以上累積して停留している場合(第2条件)のうち、少なくともいずれか一方を満たす場合を正答と判断させて、いずれも満たさない場合を誤答とコンピュータに判断させるステップであり、第2正誤判断は、視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを比較して、正誤判断させるステップであり、第1正誤判断、及び第2正誤判断の両方において、誤答と判断された場合に、視標が視認されていないとコンピュータに判断させて、第1正誤判断、及び第2正誤判断のいずれか一方において、正答と判断された場合に、視標が視認されているとコンピュータに判断させる視力検査方法により、上記の課題を解決する。
【0011】
上記の視力検査プログラム、視力検査システム、及び視力検査方法においては、検者の主観が介入しないため、客観的な視力検査の結果を得ることができる。また、第1正誤判断、及び第2正誤判断の両方において、誤答と判断された場合に、視標が視認されていないと判断し、第1正誤判断、及び第2正誤判断のいずれか一方において、正答と判断された場合に、視標が視認されていると判断するため、検査の精度を向上させることができる。
【0012】
上記の視力検査プログラム、視力検査システム、及び視力検査方法においては、指標は画像表示部の任意の位置にランダムに表示されるものとすることができる。
【0013】
上記の視力検査プログラム、視力検査システム、及び視力検査方法においては、視標を表示する前に、画像表示部に、視標とは異なる印を表示させることができる。これにより、被験者の視線を所定の位置にリセットすることができる。
【0014】
上記の視力検査プログラム、視力検査システム、及び視力検査方法においては、視標は、例えば、縞模様の印であり、高視力用の視標は、低視力用の視標に比して、縞模様の間隔が小さく構成されたものを使用することができる。
【0015】
上記の視力検査プログラム、視力検査システム、及び視力検査方法においては、第1正誤判断及び第2正誤判断のうちの一方が誤答の場合に、第1正誤判断及び第2正誤判断のうちの他方を行わせて、第1正誤判断及び第2正誤判断のうちの一方が正答の場合に、第1正誤判断及び第2正誤判断のうちの他方を行わせないようにすることができる。これによって、視力検査処理を早めて、コンピュータへの負荷を軽減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハードウェア資源を利用した検査により、検者による視力評価のばらつきを排し、選好注視法による視力検査に比して検査時間を短縮し、視力検査の精度を向上させた視力検査プログラム、視力検査システム、視力検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】視力検査システムの構成例を示すブロック図である。
図2】視力検査プログラムの処理の流れの一例を示すフロー図である。
図3】視標の例と視標とは異なる印の一例を示す説明図である。
図4】視標の表示位置の一例を示す説明図である。
図5】第1正誤判断の流れの一例を示すフロー図である。
図6】第2正誤判断の流れの一例を示すフロー図である。
図7】視力検査方法の一例を示す説明図である。
図8】視力検査方法の他の例を示す説明図である。
図9】視標の他の例を示す説明図である。
図10図9の視標よりもレベルを上昇させた視標の例を示す説明図である。
図11】視標の他の例を示す説明図である。
図12】視標の表示位置をランダムに変更させた例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の視力検査システム、視力検査プログラム、視力検査方法の一実施形態について説明する。以下に示す各実施形態と使用例は、本発明の一例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。
【0019】
<視力検査システムの構成例>
図1に、視力検査システムの構成の一例を示す。図1の視力検査システム1は、入力部13と、視線評価部14と、画像表示部15とを含む。
【0020】
視力検査システム1は、例えば、コンピュータに後述する視力検査プログラムをインストールすることにより、構築することができる。コンピュータには、デスクトップ型、画面表示部が一体化されたラップトップ型、若しくはタブレット型の電子計算機、又はスマートフォンなどの電子計算機、後述する視線の位置を評価するためのハードウェアを搭載した専用の電子計算機が含まれるものとする。
【0021】
図1に示した視力検査システム1は、パーソナルコンピュータに後述する視力検査プログラムをインストールしたものであり、演算部11と、記憶部12と、入力/出力インターフェイス16と、演算部11、記憶部12、及び入力/出力インターフェイス16を繋いで、各部の間で情報交換を可能にする経路となるバス17と、上述の入力部13と、上述の視線評価部14と、画像表示部15と、を備える。
【0022】
図1に示したように、入力部13と視線評価部14と画像表示部15とは、それぞれ入力/出力インターフェイス16に繋げられており、バス17を介して演算部11及び記憶部12と情報の交換が可能になっている。図1において、双方向の矢印は、双方向に情報の交換が可能なことを示し、一方向の矢印は、一方向にのみデータの交換が可能なことを示す。
【0023】
演算部11としては、例えば、CPUを使用することができる。記憶部12としては、情報を記憶することができる装置であればよく、例えば、比較的に高速での情報の読み書きが可能なRAMなどの主記憶装置と、HDD、若しくはSSDなどの不揮発性の補助記憶装置とを使用することができる。情報の読み書きが高速であり、不揮発性の規則装置が利用可能であれば、記憶部は単一の記憶装置で構成されてもよい。
【0024】
画像表示部15は、視標、印等を表示する。画像表示部としては、例えば、ディスプレイ、画像を投影するプロジェクタなどが挙げられる。
【0025】
入力部13は、視力検査システムのオペレーターが行うクリック、キー入力、タップ、フリックなどの所定の操作により、視力検査システムに情報を入力するための部分である。入力部13としては、特に限定されないが、例えば、マウス、キーボード、マイクなどの入力装置が挙げられる。入力部13は、例えば、プログラムによる処理を開始したり、必要であれば、後述する第1閾値、第2閾値、第3閾値、第4閾値等の設定をする際に使用する。
【0026】
画像表示部14と入力部13とは、両者の機能を兼ねるタッチディスプレイなどの兼用装置にしてもよい。
【0027】
視線評価部は、被験者の視点の位置を検出することができる公知の装置を使用することができる。例えば、視線評価部は、第1光源と、第2光源と、第1撮像部と、第2撮像部とを含み、第1光源及び第2光源から、被験者の角膜に向けて光線を照射し、その反射像を第1撮像部及び第2撮像部で撮像し、演算部で空間ベクトルを計算して被験者の視点の位置を求めることができる。第1光源、又は第2光源としては、例えば、赤外光を発するLEDを使用することができる。第1撮像部、又は第2撮像部としては、公知のカメラを使用することができる。
【0028】
以上のように構成されている視力検査システム1は、例えば、記憶部12に記憶されている後述する視力検査用プログラムを起動し、演算部11、記憶部12、及び画像表示部15に視力を検査するのに必要なプロセスを実行させて、被験者の視力を検査する。
【0029】
スマートフォン、タブレット型コンピュータ、デスクトップ型コンピュータなどの汎用のコンピュータに、有線又は無線により、上述の画像表示部、入力部、又は視線評価部を接続し、記憶部に後述する視力検査用プログラムをインストールすることにより、視線検査システムを構築してもよい。
【0030】
また、視点の位置を評価するためのハードウェアを組み込んだ専用の電子計算機が市販されているので、そのような専用の電子計算機の記憶部に後述する視力検査用プログラムをインストールすることにより、視線検査システムを構築してもよい。そのような専用の電子計算機としては、例えば、株式会社JVCケンウッド製の装置(GazeFinder(登録商標))を使用することができる。当該装置は、特開2019-166101号公報に記載の装置と同様の構成を備えており、第1光源、第2光源、第1撮像部、第2撮像部、ディスプレイ、記憶部、演算部が筐体に組み込まれた一体型の装置である。当該装置には、被験者の視点の位置を検知及び評価するプロセスを装置に実行させるプログラムが付属する。
【0031】
[視力検査プログラム、視力検査方法]
図2ないし図8を参照して、視力検査プログラムの一実施形態とそれにより視力を検査する方法の一実施形態について説明する。
【0032】
図2に、視力検査プログラムがコンピュータに実行させるプロセスの全体の流れを示す。そして、図5には図2に示した第1正誤判断の一例を示し、図6には図2に示した第2正誤判断の一例を示す。
【0033】
本実施形態の視力検査プログラム(以下、プログラムと称する。)は、コンピュータを、視標を表示させるための手段と、被験者が視標を注視しているかどうか判定する手段として機能させるためのものである。
【0034】
プログラムを起動させると、図1に示したように、プログラムは、現在のレベルを、最低の難易度であるレベル1に設定する処理を実行させる(s1)。設定されたレベルは、記憶部に保存される。なお、入力部により、現在のレベルを任意のレベルに設定することができるようにしてもよい。
【0035】
次いで、プログラムは、記憶部に予め保存されているBlank(ブランク)の画像を、画像表示部に表示させる(s2)。Blankの画像とは、後述する「視標」とは異なる印であり、視標を表示させる前に、被験者の視線の位置をリセットする目的で、画像表示部に表示される。本実施形態では、図3に示したように、被験者の注意を惹きやすい豚の画像を使用し、テストを開始する前において毎回、画像表示部の決まった位置である中央部に表示されるようにされている。
【0036】
Blankの画像、すなわち、視標とは異なる印は、豚の画像に限られず、視標とは異なる印であればよい。印は、例えば、任意の文字、図形、記号、又はこれらの組み合わせなどを使用することができる。Blankの画像を表示させる位置は、特に限定されないが、被験者に視認されやすくする目的で、画像表示部の中央に表示させるようにすることが好ましい。
【0037】
次いで、プログラムは、記憶部に予め保存されている複数の視標の画像のうち現在のレベルに対応する視標を検索させて、画像表示部のランダムな位置に視標を1つ表示させる(s3)。
【0038】
視標の例を、図3に示す。図3には、レベル1からレベル4の視標21の一例を示す。レベル5以降の視標は省略する。レベルの値が小さいほど、難易度が低く、比較的に低い視力の被験者によっても視認されやすい。レベルの値が大きいほど、難易度が高く、比較的に高い視力の被験者によっても視認されにくい。図3に示した視標21では、任意の色を有する第1の線と、前記第1の線とは異なる色を有する第2の線とが交互に配列された縞模様を有する円形の画像を視標とする。線の太さと線の間隔によって、難易度を表現しており、高難易度の視標ほど線が細く、間隔が小さくなる。例えば、各レベルの視標に紐づけて視力を示す数値を設定したデータベースを記憶部に格納しておき、視認された視標に基づいて、データベースを検索して、視力を数値化することができる。なお、視標の構成は上記の例に限定されず、難易度が高いほど被検者に視認されにくくなる構成であればよい。
【0039】
図4の例では、視標21においては、画像表示部に表示させる画像23、すなわち背景の色と、視標21の縞模様を構成する第1の線及び第2の線のうちの一方の色とが、紛れやすい色とされている。紛れやすい色の組み合わせは特に限定されないが、例えば、白と灰色の組み合わせ、白と白の組み合わせ、黒と黒の組み合わせが挙げられる。色覚異常の場合は、赤と緑の組み合わせ、黄と青との組み合わせが挙げられる。視標21の縞模様を構成する第1の線及び第2の線のうちの他方の色は、一方の色とは異なる色とされる。なお、画像23と視標21とは、記憶部に予め記憶させた画像であってもよい。また、視標の位置がランダムになるように、記憶部に記憶された画像23と記憶部に記憶させた視標の画像とを合成したものであってもよい。
【0040】
現在のレベルに対応する視標を検索するには、例えば、各視標のファイル名にレベルの数値を含むように設定しておき、ファイル名を現在のレベルの値で検索するなどの方法により、実行することができる。
【0041】
次いで、プログラムは、後述する第1正誤判断を実行させる(s4)。
【0042】
上記の(s4)の第1正誤判断で正答と判断された場合には、プログラムは、現在のレベルが最終レベルか否かを判断させる(s5-1)。プログラムは、現在のレベルが最終レベルであれば、最終レベルに対応する視力値を被検者の視力値とする(s6-1)。プログラムは、現在のレベルが最終レベルでなければ、現在のレベルを基準として1つ次のレベルを設定し、「現在のレベル+1」を現在のレベルに設定して、記憶部に変更された現在のレベルを記憶し、上記の(s2)のステップに戻り、(s2)以降のプロセスを実行させる。
【0043】
上記の(s5-1)において、現在のレベルが最終レベルであるか否かを判断するに際しては、例えば、最終レベルの値を予め設定するか入力部で最終レベルを設定して、記憶部に記憶させておき、現在のレベルの値と最終レベルの値とが一致するか否か判断させればよい。
【0044】
上記の(s4)の第1正誤判断で誤答と判断された場合には、プログラムは画像表示部に再びBlankの画像を表示させる(s5-2)。次いで、プログラムは、上記の(s3)で表示したのと同じ、現在のレベルに応じた視標を、画像表示部のランダムな位置に1つだけ表示させる(s6-3)。このとき、直前の(s3)で表示した位置以外の位置に、視標を表示させる。これによって、視力検査の精度を向上させることができる。例えば、図4に示したように、1回目の視標21の表示位置が上であれば、2回目の視標21の表示位置は直前の第1回目の表示位置である上以外の位置である左にするというようにする。図4の例では、3回目の表示においては、下の位置にされているが、直前の2回目の表示位置、すなわち左の位置でない限り、1回目と同じ上の位置であってもよい。ただし、表示位置には規則性を持たせずランダムにする。
【0045】
次いで、プログラムは、s6-3で表示させた視標を被検者が注視しているかどうかを後述する第2正誤判断において判断させる(s7)。
【0046】
第2正誤判断において正答と判断された場合は、プログラムは、上記の現在のレベルが最終レベルか否かを判断させる(s5-1)を行わせる。以降の処理は、上記と同様であるので説明を省略する。
【0047】
第2正誤判断において誤答と判断された場合は、プログラムは、最後に正答したレベルに対応する視力値を被検者の視力値とする(s8)。このとき、正答したことが一度もなければ、最低難易度であるレベル1に対応する視力値未満の視力値であるとする(s8)。
【0048】
プログラムは、上記の(s6-1)、又は上記の(s8)で求めた被験者の視力値を画像表示部に表示させて(s9)、計測を終了させる。上記の(s9)において、画像表示部に被験者の視力値を表示させる際に、プリンターなどの出力部により被験者の視力値を印字してもよいし、画像表示部に被験者の視力値を表示させずに、プリンターなどの出力部により被験者の視力値を印字してもよい。
【0049】
・第1正誤判断
図5に第1正誤判断の一例を示す。
【0050】
プログラムは、上記の(s3)において画像表示部に表示された視標を被検者に見せて、被験者の視線の位置を示す座標を経時的に取得させる(a1)。例えば、座標は、横方向をx、縦方向をyとし、x軸とy軸の交点を原点として、原点からx軸方向へ離隔した距離の値、原点からy軸方向へ離隔した距離の値で表現することができる。原点は、特に限定されないが、例えば、画像表示部に表示させる画像23(図4)の角にすることができる。被験者の視線の位置を示す座標を検知するには、視線評価部に被験者の視点の位置を経時的に検知させることにより実現することができる。
【0051】
次いで、プログラムは、被験者の視線が所定の時間以上連続して停留している場合(第1条件)、及び被験者の視線が視標に所定の時間以上累積して停留している場合(第2条件)のうちいずれか一方を満たす場合を正答と判断させて、第1条件及び第2条件のいずれも満たさない場合を誤答と判断させる(a2)。なお、正答とは、被験者が表示された視標を正しく注視していることを想定しており、誤答とは、被験者が表示された視標を注視していことを想定している。
【0052】
上記の(a-2)による正誤判断のステップが終わると、第1正誤判断は終了する。
【0053】
視標に被験者の視線が存在するかどうかは、視標を含む画像において、視標が存在する領域の座標の範囲を予め記憶部に記憶させておき、演算部により、視線評価部で検知された被験者の視線の位置を示す座標が予め記憶させた視標が存在する領域の座標の範囲に含まれるか否かにより判断させることができる。すなわち、前記範囲に被験者の視線の位置を示す座標が含まれる場合は、被験者の視線は視標に存在すると判断させて、前記範囲に被験者の視線の位置を示す座標が含まれない場合は、被験者の視線は視標にはないと判断させる。
【0054】
被検者の視線の位置を示す座標は、経時的に記憶部に記録させる。これにより、予め記憶部に記憶させた視標が存在する領域の座標の範囲に、被験者の視線がどの程度の時間にわたり存在したのか評価することが可能になる。なお、座標を記録する時間的な間隔は、特に限定されず、適宜定めることができるが、例えば、0.01~0.8秒間隔で、座標を記録すればよい。
【0055】
被験者の視線が視標に所定の時間以上連続して停留しているか否か判断させる場合には(第1条件)、被験者の視線が視標に存在する時間を計測して、当該計測値と予め設定した閾値とを比較させて、被験者の視線が視標に所定の時間以上連続して停留しているか否か直接的に判断させてもよいし、被験者の視線が視標に連続して停留した時間と、被験者に視標を提示した時間との比率に基づいて間接的に判断させてもよい。すなわち、第1条件における被験者の視線が視標に所定の時間以上連続して停留している場合、上記のように直接的又は間接的に所定の時間以上視標に視線が存在するか否かを判断する場合が含まれるものとする。
【0056】
同様に、被験者の視線が視標に所定の時間累積して停留しているか否か判断させる場合には(第2条件)、被験者の視線が視標に存在する時間を計測し、当該計測値と予め設定した閾値とを比較させて、被験者の視線が視標に所定の時間以上累積して停留しているか否か直接的に判断させてもよいし、被験者の視線が視標に累積して停留した時間と、被験者に視標を提示した時間との比率に基づいて間接的に判断させてもよい。すなわち、第2条件における被験者の視線が視標に所定の時間累積して停留している場合には、上記のように直接的又は間接的に所定の時間以上視標に視線が存在するか否かを判断する場合が含まれるものとする。
【0057】
直接的に判断させるには、例えば、上記の(s3)のプロセスで、視標を含む画像を被検者に5秒提示し、被験者の視線が視標に2秒以上にわたり連続して停留している場合(第1条件)、及び被験者の視線が視標に3秒以上にわたり累積して停留している場合(第2条件)のうち、少なくともいずれか一方を満たす場合を正答と判断させて、いずれも満たさない場合を誤答と判断させる例が挙げられる。
【0058】
この例の場合、プログラムは、被験者の視線が2秒以上連続して視標に停留している場合は第1条件を満たすと判断させる。また、プログラムは、被験者の視線が視標に3秒以上累積して停留している場合は第2条件を満たすと判断させる。そして、前記第1条件、及び前記第2条件の少なくともいずれか一方を満たせば、正答であると判断させる。前記第1条件、及び前記第2条件のいずれも満たさなければ、誤答であると判断させる。なお、累積して視線が視標に停留することを正答の基準としているのは、被験者に視標を含む画像を提示している間において、被験者の注視点が視標と視標以外の部分とを移動することがあるためである。なお、視線が視標に累積して存在した時間は、被験者の視線を示す座標が視標の座標範囲に存在した時間を合計することにより求められる。
【0059】
また、間接的に判断させるには、例えば、上記の(s3)のプロセスで、被験者の視線が視標に連続して停留している時間を、被験者に視標を提示した時間で除して求めた比率が、40%以上(0.4以上)の場合(第1条件)、及び被験者の視線が視標に累積して停留している時間を、被験者に視標を提示した時間で除して求めた比率が、60%以上(0.6以上)の場合(第2条件)のうち、少なくともいずれか一方を満たす場合を正答と判断させて、いずれも満たさない場合を誤答と判断させる例が挙げられる。なお、上記の第1条件の比率である40%以上(0.4以上)は、視標に連続して視線が存在する時間である2秒を、視標の提示時間である5秒で除した数値を基準とする例である。また、上記の第2条件の比率である60%以上(0.6以上)は、視標に累積して視線が存在する時間である3秒を、視標の提示時間である5秒で除した数値を基準とする例である。
【0060】
また、間接的に判断させるには、例えば、上記の(s3)のプロセスで、被験者に視標を提示した時間を、被験者の視線が視標に連続して停留している時間で除して求めた比率が、250%以下(2.5以下)の場合(第1条件)、及び被験者に視標を提示した時間を、被験者の視線が視標に累積して停留している時間で除して求めた比率が、167%以下(1.67以下)の場合(第2条件)のうち、少なくともいずれか一方を満たす場合を正答と判断させて、いずれも満たさない場合を誤答と判断させる例が挙げられる。なお、上記の第1条件の比率である250%以下(2.5以下)は、視標の提示時間である5秒を、視標に連続して視線が存在する時間である2秒で除した数値を基準とする例である。また、上記の第2条件の比率である167%以上(1.67以下)は、視標の提示時間である5秒を、視標に累積して視線が存在する時間である3秒で除した数値を基準とする例である。
【0061】
上述の第2条件の正誤判断の合否を分ける閾値、すなわち第2閾値は、特に限定されないが、例えば、被検者に視標を提示した時間の50~80%に相当する時間以上にわたり累積して視標に被験者の視線が存在していた場合を正答することができる。例えば、上記のように視標の提示時間が5秒であれば、2.5~4秒を基準とする。また、上述の第1条件の正誤判断の合否を分ける閾値、すなわち第1閾値は、特に限定されないが、例えば、被検者に視標を提示した時間の20~55%に相当する時間以上にわたり連続して視標に被検者の視線が存在していた場合を正答とすることが可能であり、第2閾値よりも短い時間を基準とすることができる。例えば、上記のように視標の提示時間が5秒であれば、1~2.75秒を基準とする。上述の通り、上記の閾値以上となるか否かは、時間を示す数値又は比率を用いて直接的又は間接的に判断させることができる。
【0062】
視標を提示する時間、第1閾値、又は第2閾値は、入力部を用いて入力し、記憶部に記憶させることで、任意に設定を変更にできるようにしてもよい。また、記憶部に視標を提示する時間、第1閾値、又は第2閾値を予め記憶させておいてもよい。
【0063】
なお、本実施形態における第1正誤判断では、被験者の視線が画像表示部に表示された画像の外にあるときには、被験者の視線の座標が計測されず、エラーとなる。目を閉じているときも同様であり、被験者の視線の座標が計測されず、エラーとなる。これらのエラーは直接には考慮されず、視標に視線が存在する時間が判断の基準とされる。また、第1正誤判断では、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に被験者の視点が存在する時間も、直接には考慮されない
【0064】
・第2正誤判断
図6に第2正誤判断の一例を示す。
【0065】
上記の(s6-3)のステップにおいて、現在のレベルに応じた視標を、画像表示部のランダムな位置に1つ表示させた後、前記位置に前記視標がされた状態を一定の時間維持する(b-1)。視標を提示する時間は、特に限定されないが、例えば5~10秒間とすることができる。
【0066】
次いで、プログラムは、視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを比較して、正誤判断を行わせる(b2)。図6の例では、視標に視線が累積して停留している時間(T1)が、画像表示部に表示された画像内の視標以外に視線が累積して停留している時間(T2)より長い場合を正答と判断させて、視標に視線が累積して停留している時間(T1)が、画像表示部に表示された画像内の視標以外に累積して停留している時間(T2)以下の場合を誤答と判断させる。視標に視線が滞留しているか否かは、上述の通り、視線評価部で検知された被験者の視線を示す座標が予め記憶させた視標が存在する領域の座標の範囲に含まれるか否かにより評価させることができる。
【0067】
なお、被験者の視線が画像表示部に表示された画像以外の部分、例えば、画像表示部の縁や画像表示部が設置された部屋にあるときは、上記T2の時間を計測しない。換言すると、上記T2の時間には、被験者の視線が画像表示部に表示された画像以外の領域に存在する時間は含まれない。同様に、被験者が目を閉じている時間も、上記のT2の時間には含まれない。
【0068】
視標に視線が累積して停留している時間(T1)は、被験者の視線を示す座標が視標の座標範囲に存在した時間を合計して求める。視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)は、被験者の視線を示す座標が画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域の座標範囲に累積して停留している時間を合計して求める。なお、上述の通り、目を閉じている時間と、画像表示部に表示された画像以外に視線が存在する時間とは、T2に含まれない。例えば図7の例で説明すると、T1は視標21の範囲内に視線が存在した時間の合計値であり、T2は視標21を除く、画像23の領域内に視線が存在した時間の合計である。
【0069】
視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを比較して、正誤判断させるには、例えば、視標に視線が累積して停留している時間(T1)を表す数値と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)を表す数値とを比較して直接的に行ってもよい。また、例えば、視標に視線が累積して停留している時間(T1)を表す数値と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)を表す数値との比率を求めることにより間接的に比較してもよい。このように、「第2正誤判断における、視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを比較して、正誤判断させる」には、T1とT2とを、上述のように直接的又は間接的に比較する場合が含まれるものとする。
【0070】
上記の(b2)において直接的にT1とT2とを比較するには、例えば、視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを比較して、T1の値がT2の値以上である場合を正答とし、T1の値がT2の値未満の場合を誤答であると判断させてもよいし、T1の値がT2の値よりも大きい場合を正答とし、T2の値がT1の値以下の場合を誤答であると判断させてもよい。
【0071】
また、上記の(b-2)において、視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを間接的に比較して、正誤判断させるには、例えば、視標に視線が累積して停留している時間(T1)を表す数値を、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)の値で除して求めた比率が、第3閾値を上回るか否かを判断させることで、視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを間接的に比較させてもよい。そして、前記比率が、第3閾値を超える場合を正答とし、前記比率が第3閾値以下である場合を誤答としてもよい。第3閾値は、特に限定されないが、例えば、90%(0.9)、又は100%(1.00)などの値にすることができる。すなわち、この例では、T1÷T2>90%(0.9)の場合が正答であり、又はT1÷T2>100%(1.00)の場合が正答である。
【0072】
また、上記の(b-2)において、(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを間接的に比較して、正誤判断させるには、T2をT1で除して得た数値が、第4閾値未満となる場合を正答とし、第4閾値以上となる場合を誤答としてもよい。第4閾値は、特に限定されないが、例えば、110%(1.1)、又は100%(1.00)などの値にすることができる。すなわち、この例では、T2÷T1<110%(1.1)の場合が正答であり、T2÷T1<100%(1.00)の場合が正当である。
【0073】
視標を提示する時間、第3閾値、又は第4閾値は、入力部を用いて入力し、記憶部に記憶させることで、任意に設定を変更にできるようにしてもよい。また、記憶部に視標を提示する時間、第3閾値、又は第4閾値を予め記憶させておいてもよい。
【0074】
上記の(b-2)による正誤判断のステップが終わると、第2正誤判断は終了する。
【0075】
上記のプログラムにおいては、第1正誤判断で誤答となった場合に、さらに第1正誤判断とは異なる基準で正誤判断を行う2正誤判断を行うことにより、第1正誤判断において被験者が視標を注視しているものの、目移りや瞬目(まばたき)の過多や目を閉じるなどの動作によって第1正誤判断で誤答とされた症例を正答として拾い上げて、検査の精度を向上させることができる。
【0076】
被験者がまばたきなどにより目を閉じている間においては、被験者の視線を示す座標は取得されず、被験者の視線を示す座標が喪失する。第1正誤判断において、視標を注視しているものの、目を閉じているために、第1正誤判断において正答と判断されないことがある。また、検査の途中で画像表示部の外にある物や人に目移りした場合などには、1正誤判断において、視標を注視しているものの、目移りにより、第1正誤判断において正答と判断されないことがある。第1正誤判断とは異なる基準による、すなわち視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に視線が累積して停留している時間(T2)とを比較する第2正誤判断を行うことにより、こうした症例を正答として拾い上げることができる。
【0077】
図2のフローチャートにおいて、第1正誤判断と第2正誤判断とを入れ替えて、第2正誤判断を先に実施して、第2正誤判断において誤答となった場合に、第1正誤判断を実施させるようにしても、同様に高い検査の精度を得ることができる。このように、このように、第1正誤判断および第2正誤判断の第1、第2は、正誤判断を実施する順序を示すものではない。第2正誤判断を先に実施した場合おいては、第2正誤判断で誤答とされた症例を、第2正誤判断とは異なる基準で正誤判断を行う第1正誤判断において、正答として拾い上げることができる。
【0078】
第1正誤判断、及び第2正誤判断のうちのいずれか一方で誤答と判断された場合のみ、第1正誤判断、及び第2正誤判断のうちの他方を実施するようにすることで、前記一方の判断において正答と判断された場合に、前記他方の判断を省略することができる。これによって、視力検査処理を早めて、コンピュータへの負荷を軽減することができる。
【0079】
[視力検査方法]
図7に示した画像表示部に表示される画像を参照して、上記プログラムをインストールした上記システムを用いて、視力を検査する方法を説明する。なお、図7及び図8は、画像表示部に表示された画像のみを示すものである。
【0080】
図7に示した例は、被験者が計2回実施された第1正誤判断で何れも正解した場合の例である。この例では、コンピュータの記憶部にインストールされたプログラムは、記憶部に予め保存されているBlank画像、すなわち視標とは異なる印22である豚の画像を、画像表示部の中央部に表示させる。次いでプログラムは、現在のレベルをレベル1に設定して記憶部に現在のレベルを記憶すると共に、記憶部に予め記憶されている視標の中からレベル1に対応する視標21を画像表示部のランダムな位置に表示させる。視線評価部で取得した被験者の視点の座標を基に、プログラムは、記憶部に予め記憶された視標の位置の座標に被験者の現在の座標が含まれるか判断させる。
【0081】
図7に示したように、被験者の視線の位置の座標から、第1正誤判断においてコンピュータに上述の第1条件、及び第2条件のうち、少なくともいずれか一方を満たす場合を正答と判断させて、正答と判断された場合は、プログラムは、記憶部に予め保存されているBlank画像(印22)である豚の画像を、画像表示部の中央部に再び表示させる。次いでプログラムは、現在のレベルを、1つ上のレベル、つまりレベル2に設定して記憶部に改めて設定した現在のレベルを記憶すると共に、記憶部に予め記憶されている視標の中からレベル2に対応する視標21を画像表示部のランダムな位置に表示させる。
【0082】
図7の例では、2回目の第1正誤判断でも正答し、以降、第3回目の第1正誤判断も上記と同様にして実施される。
【0083】
次に、図8により、第1正誤判断、及び第2正誤判断で共に誤答であった例について説明する。コンピュータの記憶部にインストールされたプログラムは、記憶部に予め保存されているBlank画像である豚の画像(印22)を、画像表示部の中央部に表示させる。次いでプログラムは、現在のレベルをレベル1に設定して記憶部に現在のレベルを記憶すると共に、記憶部に予め記憶されている視標の中からレベル1に対応する視標21を画像表示部のランダムな位置に表示させる。視線評価部で取得した被験者の視点の座標を基に、プログラムは、記憶部に予め記憶された視標の位置の座標に被験者の現在の座標が含まれるか判断させる。
【0084】
図8に示したように、被験者の視線の位置の座標から、第1正誤判断においてコンピュータに上述の第1条件、及び第2条件のうち、少なくともいずれか一方を満たす場合を正答と判断させて、誤答と判断された場合は、プログラムは、記憶部に予め保存されているBlank画像である豚の画像(印22)を、画像表示部の中央部に再び表示させる。次いでプログラムは、先に設定した現在のレベルと同一のレベル、つまりレベル1に対応する視標21を画像表示部のランダムな位置に表示させる。
【0085】
プログラムは、被験者の視線の位置の座標から、第2正誤判断においてコンピュータに視標に視線が累積して停留している時間(T1)と、視標以外に累積して停留している時間(T2)とを比較することにより判断させて、第2正誤判断においても誤答と判断された場合は、最も低い難易度であるレベル1に対応する視力値未満であることを記憶部に記憶すると共に画像表示部に表示して計測を終了する。
【0086】
[変形例]
入力部、視線評価部、画像表示部は、通信部を介した無線によりコンピュータに接続してもよいし、有線によりコンピュータに接続してもよい。
【0087】
通信部は、特に限定されないが、例えば、IEEE1394等の規格に準拠したインターフェイスカード、LAN接続用ネットワークインターフェイスカード、IEEE802.11a、802.11b、802.11gなどの規格に準拠した無線LANルーター、Bluetooth(登録商標)準拠のインターフェイスユニットなどが挙げられる。
【0088】
図4の例では、表示位置は、上、下、左、右の4パターンであるが、表示位置のパターンはより多くなるように適宜、変更してもよい。
【0089】
視標は上記の例に限定されず、例えば、図9に示した眼のあるウサギなどの動物にしてもよい。画像表示部には、図9に示したように、視標として、眼のあるウサギ81と、眼のないウサギ82を表示させる。視標は眼のあるウサギ81に設定し、眼のないウサギ82は、視標には設定しない。
【0090】
被検者には、眼のあるウサギを見るように指示をしておく。プログラムは、視標である眼のあるウサギ81の図案に対応する座標の範囲内に、被験者の視線の座標が含まれるか判断させる。眼のあるウサギ81と眼のないウサギ82の表示位置はランダムに変更させる。あとは、上記と同様の要領により、第1正誤判断と、第2正誤判断とを実施することにより、被験者の視力を検査することができる。なお、上記の例では、眼のないウサギ82は、一体のみであるが、複数体としてもよい。
【0091】
図10に示したように、ウサギの眼の大きさを変更することにより、難易度、すなわちレベルを変更して、被験者の視力を検査することができる。眼の大きさが大きいほど難易度は低く、眼の大きさが小さいほど難易度は高い。
【0092】
また、図11及び図12に示したように、例えば、視標を動物の眼に設定し、動物の眼以外の部分は視標以外の領域として設定してもよい。図11及び図12に示したように、画像表示部には、ウサギの眼83の位置をランダムに変更してウサギの顔に表示させる。被験者には、ウサギの眼83を見るように指示しておく。
【0093】
プログラムは、視標であるウサギの眼83の範囲内に、被験者の視線の座標が含まれるか判断させる。あとは、上記と同様の要領により、第1正誤判断と、第2正誤判断とを実施することにより、被験者の視力を検査することができる。
【0094】
ウサギの眼83の大きさを変更することにより、難易度、すなわちレベルを変更することで、被験者の視力を検査することができる。眼の大きさが大きいほど難易度は低く、眼の大きさが小さいほど難易度は高い。
【0095】
指標としては、その他、点、点群視標、線視標、ひらがな視標、カタカナ視標、アルファベット視標、絵視標、ランドルト環、又はガボール視標を使用することができる。
【実施例0096】
[実施例1]
図2図5図6に示したプログラムを、株式会社JVCケンウッド製の装置(GazeFinder(登録商標))にインストールして、実施例1に係る視力検査システムを構築した。このシステムを使用して、被験者の視力を検査した。第1正誤判断における視標の提示時間は5秒に設定し、第1条件の正答の基準は2秒以上にわたり連続して視標に被験者の視線が停留していることに設定し、2秒未満の場合を誤答とし、第2条件の正答の基準は3秒以上にわたり累積して被検者の視線が視標に停留していることに設定し、3秒未満を誤答とした。第2正誤判断における視標の提示時間は5秒に設定し、被験者の視点が視標に累積して停留している時間(T1)と、被験者の視点が画像表示部に表示された画像内の視標以外の領域に累積して停留している時間(T2)とを比較して、T1がT2以下である場合を誤答と判断させた。
【0097】
実施例1の視力検査システムを用いて3名の被験者の視力を検査した。また、同じ3名の被験者について、近見視力表(Landolt環)で平均視力値(logMAR)を測定して、基準値とした。実施利1の視力検査システムで測定した平均視力値から、上記基準値を差し引いて、視力値検査の精度の差を求めた。また、実施例1の視力検査システムを1回実施するのに要した所要時間を調べた。結果を以下の表1にまとめた。
【0098】
[比較例1]
上記の被験者3名について、teller acuity cards(TAC)により、視力を検査した。TACによる検査では検者は2名とした。実施例1と同様の方法により、基準値を求めて、比較例1のTACによる検査で測定した平均視力値から、上記基準値を差し引いて、視力値検査の精度の差を求めた。また、比較例1の視力検査を1回実施するのに要した所要時間を調べた。結果を以下の表1にまとめた。
【0099】
[比較例2]
株式会社JVCケンウッド製の装置(GazeFinder(登録商標))に、3つの円形の視標と1つの開環したランドルト環と描画した画像を被検者に5秒間提示し、被験者の視線が1.5秒以上、開環したランドルト環を累積して存在している場合は、ランドルト環を注視していると判断させるプログラムをインストールして、比較例2に係る視力検査システムを構築した。
【0100】
前記プログラムは、被験者が開環したランドルト環を注視している、すなわち正答であると判断した場合には、3つの円と1つのランドルト環とのそれぞれについて径を小さくした画像を、被験者に提示して、検査の難易度を徐々に上昇させる。前記プログラムは、被検者が先に2回正答した場合は開環したランドルト環を視認していると判断させて、被検者が先に2回誤答した場合は開環したランドルト環を視認していないと判断させる。プログラムは、誤答した場合には、直前に正解した視力値を測定結果として採用させる。プログラムは、最終レベルまで正答した場合は、正答した最終レベルの視力値を測定結果として採用させる。
【0101】
被検者は上記の3名である。実施例1と同様の方法により、基準値を求めて、比較例2の視力検査システムによる検査で測定した平均視力値から、上記基準値を差し引いて、視力値検査の精度の差を求めた。また、比較例2の視力検査を1回実施するのに要した所要時間を調べた。結果を以下の表1にまとめた。
【0102】
【表1】
【0103】
表1の結果から明らかなように、実施例1の視力検査システムを用いた視力検査方法では、1回の試験に要する時間を、比較例1、又は比較例2に比較して、より短くすることができる。また、実施例1の視力検査システムを用いた視力検査方法では、比較例2に比較して、視力検査の精度が高いことがわかる。
【符号の説明】
【0104】
11 演算部
12 記憶部
21 視標
22 印
s4 第1正誤判断
s7 第2正誤判断


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12