(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100044
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】変位量算出装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000388
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【弁理士】
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】實成 優馬
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】池田 大造
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA03
2F065AA07
2F065AA09
2F065BB05
2F065BB27
2F065CC14
2F065DD03
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM02
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065QQ42
2F065RR07
(57)【要約】
【課題】撮影した画像に基づいて正確に観測対象物の変位量を算出することができる変位量算出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】変位量算出装置100において、動画像取得部101は、マーカ401である観測対象部分を含んだ複数の画像データを取得して、変位量算出部103は、複数の画像データからマーカ401(観測対象部分)の変位量を算出する。そして、変位量補正部103aは、マーカ401における画素ごとの変位量に対して、そのマーカ401(観測対象部分)における画素位置に応じた重み付け処理を行った変位量を算出する。算出結果出力部104は、算出された変位量を出力する。例えば、この重み付け処理は、重み付け平均処理である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象部分を含んだ複数の画像データを取得する画像データ取得部と、
前記複数の画像データから前記観測対象部分の変位量を算出する算出部と、
前記画素ごとの変位量に対して、前記観測対象部分における画素位置に応じた重み付け処理を行った変位量を算出する統計処理部と、
前記算出された変位量を出力する出力部と、
を備える変位量算出装置。
【請求項2】
前記観測対象部分は、所定の幾何学模様からなるマーカの一部分である、請求項1に記載の変位量算出装置。
【請求項3】
前記統計処理部は、
前記画素位置に応じて重み付け平均処理をした変位量の平均値を算出する、
請求項1または2に記載の変位量算出装置。
【請求項4】
前記統計処理部は、
前記観測対象部分の中心部分の重みを大きく、前記観測対象部分の周辺部分の重みを小さくして、重みづけ平均処理を行う、
請求項1~3のいずれか一項に記載の変位量算出装置。
【請求項5】
前記観測対象部分の近傍に配置され、前記観測対象部分の照度を計測する照度計の照度値を取得する取得部を、
さらに備え、
前記統計処理部は、
前記照度値に応じて、重み付け処理における重み係数を変える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の変位量算出装置。
【請求項6】
時刻を計時するタイマ部、
をさらに備え、
前記統計処理部は、前記時刻に応じて、重み付け平均処理における重み係数を変える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の変位量算出装置。
【請求項7】
前記統計処理部は、
前記画素ごとの変位量に基づいて、当該変位量の頻度分布を求め、当該頻度分布に基づいて、統計処理の対象とする変位量を用いる、
請求項1~6のいずれか一項に記載の変位量算出装置。
【請求項8】
前記頻度分布に基づいて、所定頻度以下の変位量については、統計処理の対象としない、請求項7に記載の変位量算出装置。
【請求項9】
前記頻度分布から分散を求め、当該分散に基づいて、統計処理の対象とする変位量の画素を決定する、請求項7または8に記載の変位量算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測対象物の変位量を算出する変位量算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ビデオカメラが観測対象物を撮影し、当該観測対象物を認識して画素単位での変位を算定することで、観測対象物の変位観測を行う技術が記載されている。特許文献2には、構造物の変位量を確実に測定して算出する変位量算出方法についての記載があり、データの平均値を算出して、その平均値を構造物の変位量の代表値とすることの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-7624号公報
【特許文献2】特開2016-109450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明のように、2値化処理など画像処理により、観測対象物を認識する場合、環境に応じた条件でケース分けした処理を構築する必要があり、その処理が複雑になるという問題がある。
【0005】
また、観測したい箇所にセンサを取り付けて橋梁上に負荷をかけデータを観測して解析する方法もあるが、複数点観測したい箇所にセンサを設置する必要がある。したがって、その設置に時間がかかったり、コスト面に課題がある。
【0006】
そこで、あらかじめ用意した画像(マーカ)を用いて画像処理することにより、一または複数の画素の変位量を求める方法が考えられている。しかしながら、計測した一または複数の画素のへ飲料の計測に失敗すると、正しい変位量を求めることができない。特許文献2に記載の通りに、変位量の平均値を算出することも考えられるが、構造物の変位の位置に応じてその影響が変わり、単なる平均値とすることも好ましくない。
【0007】
そこで、上述した課題を解決するために、センサ等を用いることなく、計測処理のブレの影響を受けることなく観測対象物の変位量を簡易な処理で算出することができる変位量算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の変位量算出装置は、観測対象部分を含んだ複数の画像データを取得する画像データ取得部と、前記複数の画像データから前記観測対象部分の変位量を算出する算出部と、前記画素ごとの変位量に対して、前記観測対象部分における画素位置に応じた重み付け処理を行った変位量を算出する算出部と、前記算出された変位量を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、観測対象物の変位量を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示における変位量算出装置100を含む構造物判定システム10を示すシステム構成図を示す。
【
図2】変位量算出装置100の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】変位量算出装置100の動作を示すフローチャートである。
【
図4】処理S104における詳細処理を示すフローチャートである。
【
図6】処理S104の変形例を模式的に示した図である。
【
図7】変位量算出モデル100aの学習処理を模式的に示した図である。
【
図8】各画素の変位量の頻度分布を説明する模式図である。
【
図9】計測不良の変位量を外すときの処理を示す模式図である。
【
図10】重み付け平均処理を行うときの模式図を示す。
【
図11】照度センサ310を利用したときの重み付け係数の設定についての説明図である。
【
図13】他の管理テーブルの具体例を示す図である。
【
図14】本開示の一実施の形態に係る変位量算出装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照しながら本開示の実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本開示における変位量算出装置100を含む構造物判定システム10を示すシステム構成図を示す。この構造物判定システム10は、変位量算出装置100および構造物判定装置200を含む。
【0013】
橋梁400が、構造物判定システム10による判定対象の構造物である。この橋梁400の柱には、マーカ401が添付されている。このマーカ401は、所定の模様が付されており、RGB値の変化の検出を容易にするための画像である。この模様は、例えば、市松模様のように黒と白の矩形の組合せからなるものである。矩形の組み合わせに限るものではなく、幾何学模様などそのほか模様としてもよい。なお、本開示において、マーカ401は橋梁400の柱に添付されているが、これに限らず、橋梁400の構造状態を判定するために適した箇所であればよい。マーカ401は、橋梁400の側面または底面などに添付されてもよい。
【0014】
マーカ401の周囲には、一または複数の照度計320が配置されている。照度計320は、太陽光などの照度を計測する部分である。カメラ300は、マーカ401を撮影する際に、太陽光などの光の影響を受け、正確にマーカ401の画像を撮影することができない場合がある。照度計320は、その影響を補正するために、どれぐらいマーカ401に光が当たっているかをカメラ300が判断するための照度情報を提供することができる。この照度計320およびその補正の仕方については後述する。
【0015】
橋梁400の上には、車両が走行しており、その走行に応じて、橋梁400は振動する。構造物判定システム10は、カメラ300が撮影したマーカ401の画像データを取得することとで、橋梁400の振動による変位量を算出し、その構造物の状態を判定する。
【0016】
すなわち、変位量算出装置100は、カメラ300が撮影した動画データと変位量算出モデル100aとを用いて、橋梁400の変位量を算出する。なお、
図1においては、カメラ300一台につき、マーカ401が対応付けられているが、これに限るものではない。一台のカメラ300が、複数のマーカ401を撮影してもよい。
【0017】
構造物判定装置200は、変位量に基づいて橋梁400の状態を判定する。構造物判定装置200は、変位量算出装置100が算出した変位量と、所定の閾値に基づいて、構造物の状態を判定してもよいし、予め公知の機械学習により学習していた状態推定モデルを用いて、構造物の状態を判定してもよい。状態推定モデルは、例えば、複数の時系列の変位量を説明変数とし、構造物の状態を目的変数として学習される。目的変数となる構造物の状態については、予め目視など人手によりなされてもよいし、その他機械的な手法により得られた学習データとしてもよい。
【0018】
また、本発明者により出願された特願2020-076594号に記載の発明により判定されてもよい。この発明においては、構造物判定装置200は、抽出された情報に基づいて判定対象の構造物である橋梁30の状態を判定する機能部である。判定部13は、抽出された変位量の情報をオートエンコーダによって圧縮して、圧縮した情報に基づいて橋梁30の状態を判定する。即ち、構造物判定装置200は、AI(人工知能)によって橋梁30の状態を判定する。構造物判定装置200は、橋梁400の所定の状態における当該橋梁400の時系列の変位を示す情報に基づいて予め設定された基準を用いて、橋梁30の状態を判定する。
【0019】
つぎに、変位量算出装置100について説明する。
図2は、変位量算出装置100の機能構成を示すブロック図である。図に示されるとおり、変位量算出装置100は、動画像取得部101、トリミング部102、変位量算出部103、算出結果出力部104、および変位量算出モデル100aを含んで構成されている。
【0020】
動画像取得部101は、カメラ300が撮影したマーカ401を含んだ静止画像データを取得する部分(画像データ取得部)である。すなわち、動画像取得部101は、カメラ300から動画像データをネットワークを介して受信する。動画像データは、複数のフレームごとの静止画像データからなるものである。動画像取得部101は、この複数のフレームの静止画像データを取得する。
【0021】
トリミング部102は、動画像取得部101が取得した複数のフレームの静止画像データからマーカ401の部分を切り取る処理を行う部分である。このとき、トリミング部102は、マーカ401外の画像を含まないように内側を切り取る。トリミング部102は、複数の静止画像データに対して、それぞれ切り取り処理を行う。
【0022】
変位量算出部103は、切り取ったマーカ401の複数の画像データにおけるRGB値の変化に基づいて、画像データに含まれているマーカの動きを算出する部分である。具体的には、変位量算出部103は、マーカ401の画像データである複数の静止画像データそれぞれに対して、画素ごとにRGB値を算出する。そして、変位量算出部103は、変位量算出モデル100aに画素ごとのRGB値を入力し、変位量算出モデル100aから変位量を受け取る。
【0023】
変位量補正部103aは、統計処理部として機能する部分であって、変位量算出部103により算出された各画素における変位量に対して重み付け平均処理を行う部分である。例えば、変位量補正部103aは、トリミング部102が切り取ったマーカ401の画像の各部分において与えられている重み係数に基づいて、変位量の重み付け平均値を算出する。ほか、変位量補正部103aは、照度センサ310の照度値に基づいて、重み係数を導出して、重み付け平均値を算出するようにしてもよい。
【0024】
なお、本開示においては、重み付け平均値を算出しているが、これに限るものではなく、マーカ401の画像の位置に応じて設定された重み係数を利用する統計的手法であれば、他の数値でもよい。マーカ401が白四角と黒四角との幾何学模様からなる場合においては、当該マーカ401から切り取られた画像(ROI:Region of Interest)の白四角の数、黒四角の数、およびそれぞれの画像内における白四角・黒四角の割合を利用してもよい。例えば、白四角・黒四角の数から画像内のそれぞれ割合が求められ、画像内における一の白画素の変位量、一の黒画素の変位量、それぞれ白画素位置・黒画素位置に対応する重み係数、および白四角・黒四角の密度とを乗算した和を、その画像における変位量としてもよい。
【0025】
取得部103bは、照度センサ310の照度値を取得する部分である。取得部103bは、必須の構成ではなく、照度センサ310の照度値を、変位量補正部103aが利用する場合に用いられる構成である。
【0026】
タイマ103cは、時間を計時する部分である。変位量補正部103aは、あらかじめ用意しているマッピングテーブルを利用して、時間に応じた加重平均の重み情報を利用して重み情報を利用した統計処理を行う。
【0027】
管理テーブル103dは、重み情報を記憶するマッピングテーブルである。この管理テーブル103dについては、後述する。
【0028】
算出結果出力部104は、変位量補正部103aが算出した重み付け平均処理された変位量を構造物判定装置200に出力する部分である。算出結果出力部104は、画素ごとの変位量を出力するが、本開示においては、重み付け平均処理された平均値を算出しているため、画素ごとに同じ値を出力する。
【0029】
変位量算出モデル100aは、静止画像ごとにおけるその画素ごとのRGB値を説明変数とし、変位量補正部103aが算出した変位量を目的変数として学習された機械学習モデルである。本開示においては、静止画像データは、複数枚(複数のフレーム)用意されており、変位量算出モデル100aは、その画素ごと(座標ごと)のRGB値の変化を見ることにより、観測対象物の変位量を出力することができる。変位量算出モデル100aの学習については、後述する。
【0030】
つぎに、本開示の変位量算出装置100の動作について説明する。
図3は、その動作を示すフローチャートである。本開示においては、例えば、20秒間の動画データ(静止画像データが600フレーム)およびその変位量を算出する処理を示す。この動画データは、車両が橋梁400に進入したタイミングで撮影が開始され、20秒後にその車両が通過したものとするが、後述する通り、長時間撮影し続けて、車両の進入タイミングおよび退出タイミングを計測することによりその静止画像データの先頭位置を逐一リセットするようにしてもよい。
【0031】
カメラ300は、橋梁400の観測対象部分(例えば、柱)に貼り付けられている二次元マーカ401を拡大して撮影する。動画像取得部101は、カメラ300が撮影した動画像データを取得する(S101)。上述したとおり、動画像取得部101は、複数フレーム(例えば600フレーム/20秒間)の静止画像データを取得する。
【0032】
トリミング部102は、静止画像データからマーカ401の画像データを切り取る処理を行う(S102)。例えば2次元マーカの中から1辺256ピクセル以上の正方形で切り取る。なお、256ピクセルは、例示であり、それ以外のピクセル数で切り取ってもよい。
【0033】
変位量算出部103は、マーカサイズが画像データ内で何ピクセルで描画されているかの情報から、ピクセル単位からmm単位への変換式を構築する(S103)。ここでは、変位量算出部103は、マーカ401のサイズを事前に把握(記憶)している。
【0034】
変位量算出部103は、トリミングした画像データを変位量算出モデル100aに入力し、当該変位量算出モデル100aからその結果となる出力値を得る(S104)。ここでは、変位量算出モデル100aは、2フレームずつ画像データを入力し、その変位量を出力する。変位量算出部103は、動画像データから得た600フレームの画像データから順次2フレームずつ取り出して入力することにより、垂直/水平方向の時間軸方向における観測対象物の変位量(ピクセル単位)を取得する。この詳細処理については後述する。
【0035】
変位量算出部103は、事前に構築したピクセルからmm単位への変換式を適用して、ピクセル単位の変位量からmm単位の変位量を算出する(S105)。変位量補正部103aは、算出した各画素における変位量に対して、重み付け処理を行った変位量を算出する(S105a)そして、算出結果出力部104は、構造物判定装置200算出した変位量を出力する(S106)。算出結果出力部104は、画素ごとの変位量を出力するが、これらは重み付け平均された変位量であり、同じ値を出力する。
【0036】
ここまでが、20秒間の動画データに対する処理である。これを動画像データをかえて繰り返し行うことで、複数の変位量を算出することができる。
【0037】
このようにして、変位量算出装置100は、動画像データから微少に変動する変位量を正確に算出することができる。画像データにおけるRGB値の変化によってその変位を見ることにより、画像処理を行うことなく、観測対象物の外郭等を正確に認識する必要が無く、その処理を簡易なものにすることができる。また、逆光やそのほか天候等の外乱による影響を考慮した処理を考える必要が無い。
【0038】
ここで、処理S104における詳細処理について説明する。
図4は、その詳細処理を示すフローチャートである。変位量算出モデル100aは、基準画像データtと、対象画像データtnとを入力し(S201)、その変位量Dnを算出する(S202)。対象画像tnがなくなるまで(例えば、入力された静止画像データが終わるまで)、これら処理を繰り返す(S203、S204)。すべてのフレームに対して変位量Dnを算出すると、時系列の変位量Dを算出する(S205)。
【0039】
図5は、処理S104を模式的に示した図である。
図5(a)に示される通り、変位量算出部103は、基準画像データt1を基準とし、その基準画像データt1と対象画像データtnの間の変位量を求める。例えば、変位量算出部103は、基準画像データt1と対象画像データt2とを変位量算出モデル100aに入力し、変位量n1を算出する。同様に、基準画像データt1と対象画像データt3とを変位量算出モデル100aに入力し、変位量n2を算出する。以降、同様に基準画像データt1と対象画像データtn(nは2~600)との間の変位量が求められ、
図5(b)に示される時系列の変位量Dが求められる。
【0040】
図5(b)に示される時系列の変位量Dの横軸は、時間軸であり、観測対象となる観測時間である。縦軸は、ピクセル単位の変位量を示す。このように、基準画像データt1を基準とし、それとの変位量を求めることにより、
図5(b)に示されるように、メリハリのついた時系列の変位量Dを求めることができる。
【0041】
図6は、処理S104の変形例を示す。
図6においては、隣接する画像データ間の変位量を求める例である。
図6(a)に示される通り、画像データt1から画像データt600が示されている。変位量n1は、画像データt1と画像データt2とが変位量算出モデル100aに入力されることにより算出される。変位量n2は、画像データt2と画像データt3とが、変位量算出モデル100aに入力されることにより算出される。以降、同様に隣接する画像データとの間の変位量が求められ、
図6(b)に示される時系列の変位量Dが求められる。
図6(b)に示される時系列の変位量Dの横軸は、時間軸であり、観測対象となる観測時間である。縦軸は、ピクセル単位の変位量を示す。
【0042】
なお、
図6のように、隣接する画像データ間の変位量を求める場合には、学習時においても、隣接する画像データおよびその変位量を用いる。一方で、
図5のように、基準となる基準画像データとの間の変位量を求める場合には、基準画像データ、比較対象となる画像データおよびその変位量を学習時に用いる。
【0043】
つぎに、本開示における変位量算出モデル100aの学習処理について説明する。
図7は、その学習処理を模式的に示した図である。図に示されるとおり、初期学習部201は、学習用動画データおよびその変位量(教師データ)に基づいて、機械学習を行うことにより、初期算出モデル100bを学習する。本開示においては、FlowNet2.0と呼ばれるアルゴリズムを用いて学習される。FlowNet2.0は、オプティカルフローと呼ばれる隣接する画像データ間の物体の移動を推定するアルゴリズムのひとつである。FlowNet2.0においては、隣接する2枚の画像データに含まれる物体(椅子)の画像並びにその移動方向および変位量を入力することで、二枚の画像データからその変位量を推定するためのモデルを構築することができる。
【0044】
本開示においては、この初期算出モデル100bをファインチューニング(Fine Tuning)することにより、変位量算出モデル100aを学習する。すなわち、学習部202は、センサ値データと学習用マーカデータとを用いて変位量算出モデル100aを学習する。例えば、まず学習部202は、画像データ(2フレーム分の静止画像データ)を説明変数として入力する。一方で、学習部202は、その2フレームに対応するセンサ値データを取得する。学習部202は、センサ値データに基づいて実際の変位量を算出し(または与えられ)、それを目的変数(教師データ)として入力する。例えば、学習部202は、橋梁400にセンサを配置し、そのセンサのセンサ値データから公知の技術により変位量を求める。
【0045】
このようにして、実際の橋梁400の振動における変位量に基づいて、ファインチューニングを行うことにより、より精度のよい変位量算出モデル100aを学習することができる。
【0046】
なお、上述した通り、学習部202が、基準画像データを用いて変位量を算出する場合には(
図5に示した方法)、隣接した2枚の画像データを用いることなく、一つの基準となる基準画像データと、それとの比較対象であるm枚目(mは2~600とする)の画像データおよびそのセンサ値データとを順次取り出し、学習する。
【0047】
ところで、FlowNetは、隣接する画像データ間の変位量に基づいて学習されている。一方で、本開示においては、基準画像データを一つに決めて、その基準画像データと比較対象となる画像データとの間の変位量に基づいて、さらに学習(ファインチューニング)する。ファインチューニング前の学習データと、ファインチューニングをするための学習データとは、変位量を算出するための比較対象となる2つ画像データが異なっているが、データの変位量を求める点では同じであり、その精度に影響はないと考えられている。
【0048】
初期学習部201および学習部202は、ピクセル単位で変位量を扱っている。一方で、教師データに相当するセンサ値データは、mm単位である。そのため、mm単位からピクセル単位に事前に変換しておく必要がある。
【0049】
つぎに、
図5に示される基準となる基準画像データを更新するときの処理について説明する。カメラ300が橋梁400の観測対象部分(二次元マーカ)を撮影するが、車両の通行によってカメラ300が傾いたり、ズレたりすることが考えられる。そのため、変位量算出モデル100aに基準となる基準画像データを入力する場合、その車両の通行にあわせて基準となる基準画像データを変えてもよい。上述
図3の処理フローでは、動画データの開始位置に基準画像データとなるよう調整したことを前提にしたものであるが、以下に示すとおり、それを事前に基準画像データの位置(時間)を登録しておくことで、自動的に切り替えることもできる。
【0050】
カメラ300による観測対象部分の撮影時において、撮影オペレータは、車両通行時の時間(撮影開始からの経過時間)を車両が通行する度に計測している。例えば、撮影オペレータは、撮影開始から10秒後に車両が橋梁400に進入したら、その10秒を記録する。同様に、撮影開始から40秒後に車両が進入したら、40秒と記録する。なお、橋梁400から車両が通過し終わった時間も合わせて計測してもよい。
【0051】
撮影終了後、変位量算出装置100は、計測した時間とともに、撮影した画像データを取得する。そして、変位量算出装置100は、計測した時間ごとに、基準画像データをリセットする。例えば、
図3に示す処理フローが、長時間にわたって撮影した動画データを処理する場合を想定する。
【0052】
その場合、処理S104において、変位量算出モデル100aに画像データを入力する際、計測した経過時間(車両の進入時間)に対応する画像データを基準画像データとして入力する。そして、変位量算出モデル100aは、その基準画像データおよび対象画像データを用いて、変位量を算出する。
【0053】
例えば、事前準備として、撮影オペレータが、撮影開始の操作をしてから、車両が通行する度に、10秒、100秒・・・などと計測して、その経過時間をメモ帳などに記録していたとする。そして、変位量算出装置100に撮影した動画像データを処理させる際、その経過時間を合わせて登録する。登録は、変位量算出装置100の動作処理を実行するためのプログラムに経過時間を書き込むことにより行われる。
【0054】
変位量算出装置100は、経過時間を開始位置とする動画像データ(静止画像データ)を取得する。そして、その開始位置における基準画像データ(静止画像データ)を基準とし、その次のフレームである画像データ(静止画像データ)を比較対象である対象画像データとして、変位量算出モデル100aに入力する。比較対象となる対象画像データのみを順次代えていって、基準画像データとの変位量を求めるために変位量算出モデル100aに入力する。これを所定時間分の画像データ、または車両が通行し終えたタイミングまで繰り返し行う。
【0055】
動画像データが、長時間にわたって、撮影されて得られた場合、これら処理を車両が通行する経過時間ごとに(登録した時間)、基準画像データを入れ替えることで、通行に際して発生するカメラ300のズレ等を考慮した変位量を求めることができる。
【0056】
なお、
図3の処理フローでは、車両通行にあわせて20秒間動画を撮影することとして説明した。その場合には、20秒間の動画像データから得られた複数の静止画像データのうち、一番目のフレームを基準画像データとし、順次フレームを代えた画像データを対象画像データとなる。
【0057】
つぎに、本開示における重み付け平均処理について説明する。
図8は、マーカ401における画素の変位量を示す模式図である。マーカ401は、トリミング部102により切り取られ、画像401aが取得される。変位量算出部103は、この画像401aに含まれる画素ごとに変位量を取得する。符号401b~符号401dに示される通り、画素ごとにその変位量が異なっている。符号401xは、座標(j,k)における変位量を示しているが、このような変位量が少ない場合は、計測の失敗と予測される。
【0058】
本開示のように変位量補正部103aが重み付け平均処理を行うことにより、変位量が失敗した計測を含んだとしても、その影響は少ない。本開示においては、画像401aの各画素の変位量を、重み付け平均処理された値とする。
【0059】
また、変位量補正部103aが重み付け平均処理をする場合において、計測不良である変位量の画素を外すことが好ましい。
図9は、計測不良の変位量を外すときの処理を示す模式図である。
図9は、縦軸が画像401aに含まれる画素における変位量の個数、横軸に当該各画素の変位量をとったヒストグラムである。理想的には
図9(a)に示されるように、各画素における変位量は同じであり、その場合、一の変位量にその個数が集中する。
【0060】
しかしながら、実際には、太陽光等の光の関係、および学習モデルにおける誤差から各画素の計測結果は異なる場合がある。よって、頻度の少ない変位量は、誤差または計測誤り等と判断してもよい。
図9(b)において、所定個数の変位量の画素は、変位量補正部103aにおける重み付け平均処理から除外することが好ましい。
図9(b)においては、結果的に、グラフを構成する曲線の両端部分を除外することがよい。
【0061】
このように、各時刻TにおけるNxN個の画素の変位量の分布を見たときに外れ値(例えば、両端部分)を不採用画素群とする。また、変位量のばらつき具合(例えば分散σ)を求め、その±2σ以内の画素を採用画素群としてもよい。
【0062】
図10は、重み付け平均処理を行うときの模式図を示す。
図10においては、
図9(b)で示された計測不良の画素を除いた画素における変位量を重み付け平均処理の対象とする。
【0063】
図10(a)では、マーカ401がトリミング部102によりNxN画素が切り取られて画像401aが取得される。
図10(b)は、その画像401aを示す。
図10(c)では、その画像401aにおける変位量と、あらかじめ定めた重み付け係数とをかけ合わせて、重み付け平均処理を示している。
図10(c)に示される通り、変位情報を示す符号401yは、画像401aの変位量を模式的に示している。この符号401yは、時刻tからt+1までの各画素(NxN画素)の変位量を含むものとする。変位量補正部103aは、これに画像401aの位置に応じて定められた重み付け情報401zをかけ合わせて、その平均値を算出することで、時刻tからt+1における変位量の重み付け平均値を算出する。
【0064】
なお、図において、重み付け情報401zは、画像401aの画素位置に応じたNxNの行列で表されており、その一つ一つは重み係数を示す。この重み付け情報401zにおいて、画像401aにおける中心部分にある重み係数は大きく設定され、画像401aの終端部に行くほど小さくなるよう設定されている。
図10(c)では、画像401aの中心部分を大きく、その上下左右方向にある周辺部分の画素については、それより小さい値に重み係数が設定されている。さらに、中心部分から斜め方向にある周辺部分においては、さらに小さい値に重み係数が設定されている。なお、
図10(c)は、説明の便宜上、3x3の行列を表現しているが、実際は、もっと多くのマトリクスからなる行列である。
【0065】
上記の通り、重み係数は、中心位置からの距離(遠さ、画素数)に応じて、大きい値が設定され、例えば2次元ガウス分布に従った値とする。
【0066】
図11は、照度センサ310を利用したときの重み付け係数の設定についての説明図である。
図11(a)において、マーカ401の設置場所の上下左右に照度センサ310が設置されている。この照度センサ310は、マーカ401のどの部分に光がよくあたっているかを計測することができる。例えば、
図11(a)の例では上と右が照度センサ310の照度値が大きいことを示す。照度値が大きいとは、明るいことを示す。
【0067】
図11(b)は、トリミングされた画像401aを示す。
図11(c)は、照度センサ310が計測した照度値に基づいて設定された重み情報401z1が生成されている。
図11(c)に示される通り、変位量補正部103aは、照度センサ310の照度値からサイズNxNの加重平均の重み情報401z1を生成する。この加重平均の重み情報401z1は、照度センサ310の照度値に基づいて設定されており、明るいほど重み係数が大きくなるよう設定される。
図11(c)では、加重平均の重み情報401z1は、画像401aの右上に向けてその重み係数が大きくなるよう設定されている。これは、照度センサ310の照度値に基づいて設定されている。例えば、変位量補正部103aは、各照度センサ310の照度値(4つの照度値の組み合わせ)と加重平均の重み情報401z1の各行列に記述される重み係数とを対応付けた管理テーブル103d(
図2参照)からその照度値に組み合わせに応じて加重平均の重み情報401z1を取得する。
【0068】
この管理テーブル103dは、例えば、照度と、重み情報とを対応付けて記憶する。
図12は、その具体例を示す図である。図に示される通り、照度センサ310(照度センサ1~4)に応じて画像401a(NxN画素)に対する重み係数11~重み係数nnが定義されている。照度センサ1~4は、マーカ401の四方の照度を計測するセンサである。変位量補正部103aは、照度センサ1~4の組み合わせと、重み係数11~nnとを用いて、変位量の重み付け平均値を算出する。
【0069】
そのほか、加重平均の重み情報は、時間と方角とに基づいてヒューリスティックに定義してもよい。すなわち、マーカ401の配置されている方角と、時間とによって、マーカ401にあたる太陽光の明るさが異なる。したがって、変位量補正部103aは、計測した時間によって、重み情報を変えてもよい。この場合、変位量補正部103aは、時間と、各画素における重み情報(重み係数)とを対応付けた管理テーブル103dから、タイマ103cが計時している時間に対応する重み情報を取得する。管理テーブル103dは、時間と、重み係数11~重み係数nnを記憶している(
図13参照)。
【0070】
つぎに、本開示における変位量算出装置100の作用効果について説明する。本開示における変位量算出装置100は、観測対象部分であるマーカ401を含んだ複数の画像データを取得する動画像取得部101と、複数の画像データのそれぞれのマーカ401の変位量を算出する変位量算出モデル100aと、を備える。
【0071】
ここで、動画像取得部101は、動画データから複数の静止画像である画像データを取得する。本開示においては、20秒間に600フレームからなる動画像データであることから、600枚の画像データを取得するが、当然にこれに限定されるものではない。また、動画像取得部101が動画データを得てそこから静止画像を得ているが、これに限らず、カメラ300が連射機能を備え、連射されて得られた静止画像をそのまま取得してもよい。
【0072】
この構成により、画像データを変位量算出モデル100aに入力して、画像データから変位量を求めることができる。2画像データを変位量算出モデル100aに入力することで、2値化などの画像処理を行うことなく、画像データのRGB変化をみることで変位量を求めることができる。このような変位量算出モデル100aを用いる場合、天候等の変化による軽微なRGB値の変化に対して有効である。すなわち、変位量算出モデル100aに対しては、天候または環境に応じた処理のためのパラメータ設定およびソースコードによる制御への考慮をする必要が無い。本開示のように変位量算出モデル100aを利用したいわゆる深層学習系の手法は、対応した天候または環境下での撮影のみで済むため相対的に観測コストをかけることなく、正確に変位量の算出を可能にする。
【0073】
また、センサ等を利用することなく、その設置に時間またはコストをかけることなく、観測対象物における変位量を求めることができる。
【0074】
また、本開示において、観測対象部分は、当該観測対象物(橋梁400の柱)に対して予め定められた模様が付されたマーカ401が添付された部分である。動画データは、ビデオカメラが観測対象物を撮影することにより得られる。
【0075】
このように、マーカ401を用いることでその変位量の算出を容易にすることができる。
【0076】
また、本開示において、変位量算出モデル100aは、予め定められた複数の学習用画像データにより学習された機械学習モデルを含み、この機械学習モデルは、複数の学習用画像データにおける画素単位における変化情報を説明変数とし、予め指定された変位量を目的変数として、学習される。例えば、学習用画像データは、FlowNetなどにおいて用いられた画像データであったり、実際の橋梁400を撮影して得られたデータである。機械学習モデルは、このFlowNetにより提供されるモデルであるが、当然にこれに限るものではなく、他の学習用データを利用してもよい。本開示において、変化情報とは、RGB値の変化を示しているが、白黒処理の場合、その白黒の変化に基づいてもよい。また、これら変化情報以外のものを含んでもよい。例えば、画像に何が写っているかの情報を含めてもよい。その場合、そのような何が写っているかの情報を含めて学習する必要がある。
【0077】
また、本開示において、変位量算出モデル100aは、観測対象物(橋梁400の柱)に対して添付されたマーカ401を含む画像データと、観測対象物に対して付されたセンサ(図示せず)より計測されたセンサ値と、に基づいてさらに学習されたモデルとしてもよい。すなわち、上記機械学習モデルを、実際のセンサ値等を利用してファインチューニングしてもよい。なお、ファインチューニングではなく、実際のセンサ値等を用いて変位量算出モデル100aを学習してもよいが、FlowNetにより提供される初期算出モデル100bは、数十万フレームからなる画像データを利用して学習されたものである。よって、これを利用する方が学習処理を簡易することができる。
【0078】
また、本開示において、センサ値に基づいて、目的変数となる変位量が求められ、変位量算出モデル100aは、当該変位量に基づいて学習される。
【0079】
ここでは、学習用データとしてセンサを利用している。このセンサによるセンサ値は、mm単位の変位量を示しており、必要に応じて、ピクセル単位に変換する等の処理を行う。
【0080】
本開示において、
図5に示されるように、変位量算出モデル100aは、動画像データから取り出された画像データにおいて、基準となる一の基準画像データと、当該一の基準画像データ以降の画像データとの変位量を目的変数として学習される。また、
図6に示されるように、変位量算出モデル100aは、動画像データから取り出された画像データにおいて、隣接する画像データ同士の変位量を目的変数として学習されてもよい。
【0081】
図5に示されるように基準画像データとの対比を行うことでその変位量を大きくすることができる。
【0082】
また、本開示の変位量算出装置100において、動画像取得部101は、マーカ401である観測対象部分を含んだ複数の画像データを取得して、変位量算出部103は、複数の画像データからマーカ401(観測対象部分)の変位量を算出する。そして、変位量補正部103aは、マーカ401における画素ごとの変位量に対して、そのマーカ401(観測対象部分)における画素位置に応じた重み付け処理を行った変位量を算出する。算出結果出力部104は、算出された変位量を出力する。例えば、この重み付け処理は、重み付け平均処理である。
【0083】
この構成により、マーカ401を撮影した画像データ(トリミングした後のデータが好ましい)の画素位置に応じて重み付け処理をすることができる。よって、マーカ401に対する計測失敗の影響を低減して、その変位量を求めることができる。特に、重み付け処理をすることで、マーカ401の画素位置に応じて計測の精度が変わる。したがって、精度が高い位置の画素についてはその重み係数を大きくすることで、より正確な変位量を算出することができる。
【0084】
このマーカ401は、幾何学模様が付されている。これにより、変位量を求めやすくなる。
【0085】
また、変位量算出装置100は、時刻を計時するタイマ103cをさらに備える。そして、変位量補正部103aは、時刻に応じて、重みづけ平均処理における重み係数を変えて、変位量を算出する。
【0086】
時刻に応じてマーカ401にあたる太陽光の照度が変わる場合がある。したがって、時刻に応じて重み係数を変えることで、太陽光等の光の影響を低減して変位量を算出することができる。
【0087】
また、変位量算出装置100は、マーカ401の近傍に配置され、マーカ401の照度を計測する照度センサ310の照度値を取得する取得部103bをさらに備える。変位量補正部103aは、照度値に応じて、重み付け処理における重み係数を変えて、変位量を算出する。
【0088】
マーカ401にあたる光によって、変位量の計測に影響がある。その影響を低減できるように重み係数を変えることで、正確な変位量を算出することができる。
【0089】
また、変位量算出装置100において、変位量補正部103aは、画素ごとの変位量に基づいて、頻度分布を求め、その頻度分布が所定条件を満たさない変位量については、統計処理の対象とはしない。すなわち、変位量補正部103aは、
図9に示される通り、検出時刻ごとの変位量の頻度を算出し、所定頻度以下の変位量を加重平均処理の対象としない。また、変位量の頻度の分散を求め、その分散から大きく外れた変位量を加重平均処理の対象としないようにしてもよい。変位量の頻度が極端に多いまたは少ない場合には、計測ミスである可能性が高い。
【0090】
上記実施形態の説明に用いたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェアおよびソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的または論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的または論理的に分離した2つ以上の装置を直接的または間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、上記1つの装置または上記複数の装置にソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0091】
機能には、判断、決定、判定、計算、算出、処理、導出、調査、探索、確認、受信、送信、出力、アクセス、解決、選択、選定、確立、比較、想定、期待、見做し、報知(broadcasting)、通知(notifying)、通信(communicating)、転送(forwarding)、構成(configuring)、再構成(reconfiguring)、割り当て(allocating、mapping)、割り振り(assigning)などがあるが、これらに限られない。たとえば、送信を機能させる機能ブロック(構成部)は、送信部(transmitting unit)や送信機(transmitter)と呼称される。いずれも、上述したとおり、実現方法は特に限定されない。
【0092】
例えば、本開示の一実施の形態における変位量算出装置100などは、本開示の変位量算出方法の処理を行うコンピュータとして機能してもよい。
図14は、本開示の一実施の形態に係る変位量算出装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。上述の変位量算出装置100は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、バス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0093】
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。変位量算出装置100のハードウェア構成は、図に示した各装置を1つまたは複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0094】
変位量算出装置100における各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信を制御したり、メモリ1002およびストレージ1003におけるデータの読み出しおよび書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0095】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。例えば、上述のトリミング部102、変位量算出部103などは、プロセッサ1001によって実現されてもよい。
【0096】
また、プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、データなどを、ストレージ1003および通信装置1004の少なくとも一方からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態において説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、変位量算出装置100のトリミング部102および変位量算出部103は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001において動作する制御プログラムによって実現されてもよく、他の機能ブロックについても同様に実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001によって実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ1001により同時または逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップによって実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されても良い。
【0097】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本開示の一実施の形態に係る変位量算出方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0098】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ1002およびストレージ1003の少なくとも一方を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0099】
通信装置1004は、有線ネットワークおよび無線ネットワークの少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。通信装置1004は、例えば周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex)および時分割複信(TDD:Time Division Duplex)の少なくとも一方を実現するために、高周波スイッチ、デュプレクサ、フィルタ、周波数シンセサイザなどを含んで構成されてもよい。例えば、上述の動画像取得部101、算出結果出力部104などは、通信装置1004によって実現されてもよい。
【0100】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005および出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0101】
また、プロセッサ1001、メモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007によって接続される。バス1007は、単一のバスを用いて構成されてもよいし、装置間ごとに異なるバスを用いて構成されてもよい。
【0102】
また、変位量算出装置100は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部または全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
【0103】
情報の通知は、本開示において説明した態様/実施形態に限られず、他の方法を用いて行われてもよい。例えば、情報の通知は、物理レイヤシグナリング(例えば、DCI(Downlink Control Information)、UCI(Uplink Control Information))、上位レイヤシグナリング(例えば、RRC(Radio Resource Control)シグナリング、MAC(Medium Access Control)シグナリング、報知情報(MIB(Master Information Block)、SIB(System Information Block)))、その他の信号またはこれらの組み合わせによって実施されてもよい。また、RRCシグナリングは、RRCメッセージと呼ばれてもよく、例えば、RRC接続セットアップ(RRC Connection Setup)メッセージ、RRC接続再構成(RRC Connection Reconfiguration)メッセージなどであってもよい。
【0104】
本開示において説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本開示において説明した方法については、例示的な順序を用いて様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0105】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルを用いて管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、または追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0106】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:trueまたはfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0107】
本開示において説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0108】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく修正および変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0109】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0110】
また、ソフトウェア、命令、情報などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、有線技術(同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL:Digital Subscriber Line)など)および無線技術(赤外線、マイクロ波など)の少なくとも一方を使用してウェブサイト、サーバ、または他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術および無線技術の少なくとも一方は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0111】
本開示において説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、またはこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0112】
なお、本開示において説明した用語および本開示の理解に必要な用語については、同一のまたは類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。例えば、チャネルおよびシンボルの少なくとも一方は信号(シグナリング)であってもよい。また、信号はメッセージであってもよい。また、コンポーネントキャリア(CC:Component Carrier)は、キャリア周波数、セル、周波数キャリアなどと呼ばれてもよい。
【0113】
本開示で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up、search、inquiry)(例えば、テーブル、データベースまたは別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。また、「判断(決定)」は、「想定する(assuming)」、「期待する(expecting)」、「みなす(considering)」などで読み替えられてもよい。
【0114】
「接続された(connected)」、「結合された(coupled)」という用語、またはこれらのあらゆる変形は、2またはそれ以上の要素間の直接的または間接的なあらゆる接続または結合を意味し、互いに「接続」または「結合」された2つの要素間に1またはそれ以上の中間要素が存在することを含むことができる。要素間の結合または接続は、物理的なものであっても、論理的なものであっても、或いはこれらの組み合わせであってもよい。例えば、「接続」は「アクセス」で読み替えられてもよい。本開示で使用する場合、2つの要素は、1またはそれ以上の電線、ケーブルおよびプリント電気接続の少なくとも一つを用いて、並びにいくつかの非限定的かつ非包括的な例として、無線周波数領域、マイクロ波領域および光(可視および不可視の両方)領域の波長を有する電磁エネルギーなどを用いて、互いに「接続」または「結合」されると考えることができる。
【0115】
本開示において使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0116】
本開示において、「含む(include)」、「含んでいる(including)」およびそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本開示において使用されている用語「または(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0117】
本開示において、例えば、英語でのa, anおよびtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、本開示は、これらの冠詞の後に続く名詞が複数形であることを含んでもよい。
【0118】
本開示において、「AとBが異なる」という用語は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。「離れる」、「結合される」などの用語も、「異なる」と同様に解釈されてもよい。
【符号の説明】
【0119】
10…構造物判定システム、100…変位量算出装置、200…構造物判定装置、400…橋梁、401…マーカ、300…カメラ、100a…変位量算出モデル、101…動画像取得部、102…トリミング部、103…変位量算出部、104…出力部。