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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100056
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】視聴率調査方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0203 20230101AFI20230710BHJP
   G06Q 30/0204 20230101ALI20230710BHJP
   H04N 17/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
G06Q30/02 312
G06Q30/02 314
H04N17/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000422
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】591101434
【氏名又は名称】株式会社ビデオリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 孝治
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 真粧美
(72)【発明者】
【氏名】西山 春香
【テーマコード(参考)】
5C061
5L049
【Fターム(参考)】
5C061BB03
5L049BB02
(57)【要約】
【課題】調査対象地域における個々人の属性に応じたテレビ放送の視聴率の調査を、各テレビデバイスの視聴者の構成要員毎の視聴データを含まない視聴ログ情報を用いて適正に行うことを可能とする視聴率調査方法を提供する。
【解決手段】調査対象地域でデバイス別世帯20bから複数の対象世帯20cを選定する第1ステップと、対象世帯20cの視聴ログ情報を取得する第2ステップと、視聴ログ情報から各対象世帯20cの構成要員の属性別視聴情報を生成する第3ステップと、属性別視聴情報に基づき視聴率調査を行う第4ステップとを備える。第1ステップでは、調査対象地域の複数のデバイス別世帯20bのテレビデバイス23bの視聴ログ情報から各デバイス別世帯20bの構成要員の属性を推定し、対象世帯20cの全体の属性の分布が所定の基準分布に一致するように対象世帯20cを選定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレビ放送の受信機と、どのチャンネル又は放送局系列のテレビ放送が何時、該受信機を介して視聴されたかを示す視聴ログ情報を出力可能な視聴データ出力装置とを各々備え、且つ、所定の調査対象地域に属する複数のテレビデバイスから、複数の対象デバイスを選定する第1ステップと、
該第1ステップで選定された複数の対象デバイスのそれぞれの前記視聴データ出力装置から出力された視聴ログ情報を取得する第2ステップと、
該第2ステップで取得した各対象デバイス毎の視聴ログ情報から、各対象デバイスの視聴者の構成要員の属性毎に、あらかじめ機械学習処理により作成された第Aモデルを用いて、どのチャンネル又は放送局系列のテレビ放送を何時視聴したかを示す属性別視聴情報を生成する第3ステップと、
前記複数の対象デバイスのそれぞれ毎に、前記第3ステップで得られた属性別視聴情報に基づいて、視聴率調査を行う第4ステップとを備えており、
前記第1ステップは、前記複数のテレビデバイスのそれぞれの視聴データ出力装置から出力される視聴ログ情報を収集する第1aステップと、該第1aステップで収集した視聴ログ情報から、あらかじめ機械学習処理により作成された第Bモデルを用いて、各テレビデバイスの視聴者の構成要員の属性を推定する第1bステップと、該第1bステップで推定された各テレビデバイスの視聴者の構成要員の属性を用いて、前記複数の対象デバイスの全体の視聴者の構成要員の属性の分布が所定の基準の分布に一致するように前記複数のテレビデバイスから前記複数の対象デバイスを選定する第1cステップとを備えることを特徴とする視聴率調査方法。
【請求項2】
請求項1記載の視聴率調査方法において、
前記第1cステップにおける前記基準の分布は、視聴率調査の対象地域における前記属性に応じた実際の分布であることを特徴とする視聴率調査方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の視聴率調査方法において、
前記第Aモデル及び前記第Bモデルを、前記調査対象地域と同じ地域に属する複数のサンプル世帯においてテレビ放送の視聴に関して取得された視聴データを学習データとして用いる機械学習処理により作成する第5ステップをさらに備えることを特徴とする視聴率調査方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の視聴率調査方法において、
前記第Aモデル及び前記第Bモデルを、前記視聴率調査の対象地域と異なる地域に属する複数のサンプル世帯においてテレビ放送の視聴に関して取得された視聴データを学習データとして用いる機械学習処理により作成する第5ステップをさらに備えることを特徴とする視聴率調査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテレビ放送の視聴率を調査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ放送の視聴率の調査対象地域において、世帯毎の視聴率や、年齢や性別等に応じて区分される個人毎の視聴率を調査する場合、その調査対象地域であらかじめ選出した複数のサンプル世帯のそれぞれに、何時、誰が、どのテレビ放送を視聴していたかを検知するための視聴情報検知装置を設置すると共に、その視聴情報検知装置を介して各サンプル世帯の視聴データを収集し、その視聴データから調査対象地域におけるテレビ放送の視聴率調査を行うことが従来より一般に行われている(例えば、特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-283191号公報
【特許文献2】特許第6433615号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように専用的な視聴情報検知装置をサンプル世帯に設置することで視聴データを収集する手法では、サンプル世帯の選出や、サンプル世帯への視聴情報検知装置の設置、サンプル世帯への報酬が必要になるために、視聴率調査が高コストになりやすい。
【0005】
一方、テレビ放送の受信機を備える近年のテレビや録画装置では、どのチャンネル(又は放送局系列)のテレビ放送が何時視聴されたかを示す視聴ログ情報を自動的に取得し、該視聴ログ情報を、インターネット等の外部ネットワークを介して該テレビや録画装置のメーカのサーバ等に送信する機能をあらかじめ備えたものが一般的に普及してきている。以降の説明では、上記の機能を有するテレビ、あるいは、上記の機能を有する録画装置と該録画装置が接続されたテレビとの組を、テレビデバイス(又は単にデバイス)と称することがある。
【0006】
そして、この種のテレビデバイスの上記の機能を利用することで、テレビ放送の視聴ログ情報を収集することが可能である。ただし、この種のテレビデバイスから取得し得る視聴ログ情報は、該テレビデバイス毎の視聴ログ情報であり、該テレビデバイスの視聴者(詳しくは、該テレビデバイスを介してテレビ放送を視聴し得る視聴者)の構成要員のそれぞれ毎の視聴データを含むものではない。
【0007】
ここで、例えば、上記特許文献2には、各世帯の視聴ログ情報から、各世帯の構成要員の属性や、その属性毎の視聴の有無を機械学習処理により作成したモデルを用いて推定する技術が本願出願人より提案されている。そして、上記のように視聴ログ情報を送信する機能を有するテレビデバイスを備える世帯に対して、特許文献2に見られる技術を適用することで、該テレビデバイスの視聴者の構成要員の属性や、その属性毎の視聴の有無を推定することが可能である。
【0008】
しかるに、特許文献2では、調査対象地域における個人の属性毎の視聴率を適正に推定する上で、該調査対象地域のどのような世帯のテレビデバイスの視聴ログ情報を使用すべきかの検討が十分になされていない。
【0009】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、調査対象地域における個々人の属性に応じたテレビ放送の視聴率の調査を、各テレビデバイスの視聴者の構成要員毎の視聴データを含まない視聴ログ情報を用いて適正に行うことを可能とする視聴率調査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の視聴率調査方法は、上記の目的を達成するために、テレビ放送の受信機と、どのチャンネル又は放送局系列のテレビ放送が何時、該受信機を介して視聴されたかを示す視聴ログ情報を出力可能な視聴データ出力装置とを各々備え、且つ、所定の調査対象地域に属する複数のテレビデバイスから、複数の対象デバイスを選定する第1ステップと、
該第1ステップで選定された複数の対象デバイスのそれぞれの前記視聴データ出力装置から出力された視聴ログ情報を取得する第2ステップと、
該第2ステップで取得した各対象デバイス毎の視聴ログ情報から、各対象デバイスの視聴者の構成要員の属性毎に、あらかじめ機械学習処理により作成された第Aモデルを用いて、どのチャンネル又は放送局系列のテレビ放送を何時視聴したかを示す属性別視聴情報を生成する第3ステップと、
前記複数の対象デバイスのそれぞれ毎に、前記第3ステップで得られた属性別視聴情報に基づいて、視聴率調査を行う第4ステップとを備えており、
前記第1ステップは、前記複数のテレビデバイスのそれぞれの視聴データ出力装置から出力される視聴ログ情報を収集する第1aステップと、該第1aステップで収集した視聴ログ情報から、あらかじめ機械学習処理により作成された第Bモデルを用いて、各テレビデバイスの視聴者の構成要員の属性を推定する第1bステップと、該第1bステップで推定された各テレビデバイスの視聴者の構成要員の属性を用いて、前記複数の対象デバイスの全体の視聴者の構成要員の属性の分布が所定の基準の分布に一致するように前記複数のテレビデバイスから前記複数の対象デバイスを選定する第1cステップとを備えることを特徴とする(第1発明)。
【0011】
なお、本発明では、「テレビデバイスの視聴者」というのは、詳しくは、該テレビデバイスを介してテレビ放送を視聴し得る一人以上の視聴者を意味する。また、「基準分布に一致する」というのは、基準分布に正確に一致する場合に限らず、ほぼ一致する(近似する)場合を含む。このことは、後述の実施形態の説明における「一致」についても同様である。
【0012】
かかる第1発明によれば、前記第1bステップでは、第Bモデルを適切に作成しておくことで、調査対象地域の各テレビデバイスの視聴ログ情報が該テレビデバイスの視聴者の構成要員毎の視聴データを含んでいなくとも、該視聴ログ情報から、調査対象地域の各テレビデバイスの視聴者の構成要員の属性を適切に推定することができる。
【0013】
また、第3ステップでは、第Aモデルを適切に作成しておくことで、調査対象地域の各テレビデバイスの視聴ログ情報が該テレビデバイスの視聴者の構成要員毎の視聴データを含んでいなくとも、該視聴ログ情報から、調査対象地域の各テレビデバイスの視聴者の構成要員の属性毎に(第1bステップで推定される属性毎に)、属性別視聴情報を生成することができる。
【0014】
そして、本発明では、前記第1cステップにおいて、調査対象地域の複数のテレビデバイスの全体の視聴者の構成要員の属性の分布が所定の基準の分布に一致する(ほぼ一致する場合を含む)ように調査対象地域の複数のテレビデバイスから前記複数の対象デバイスを選定する。この場合、本願発明者の様々な検討によれば、該基準の分布を適切に設定しておくことで、調査対象地域の対象デバイスに係る属性別視聴情報(対象デバイスの視聴ログ情報から生成された属性別視聴情報)に基づいて推定される視聴状況データが該調査対象地域での実際の視聴率に極力整合する視聴状況データになるようにすることができる。
【0015】
よって、第1発明によれば、調査対象地域における個々人の属性に応じたテレビ放送の視聴率の調査を、各テレビデバイスから得られる視聴ログ情報であって、各テレビデバイスの視聴者の構成要員毎の視聴データを含まない視聴ログ情報を用いて適正に行うことが可能となる。
【0016】
本発明では、一つの態様として、前記第1cステップにおける前記基準の分布は、視聴率調査の対象地域における前記属性に応じた実際の分布であるという態様を採用し得る(第2発明)。
これによれば、基準の分布として既知の分布を使用することができる。
【0017】
また、上記第1発明又は第2発明では、前記第Aモデル及び前記第Bモデルを、前記調査対象地域と同じ地域に属する複数のサンプル世帯においてテレビ放送の視聴に関して取得された視聴データを学習データとして用いる機械学習処理により作成する第5ステップをさらに備えるという態様を採用し得る(第3発明)。
これによれば、第Aモデル及び第Bモデルを適正に作成し、さらに対象デバイスを選定した後は、調査対象地域と同じ地域に属するサンプル世帯の視聴データを使用せずとも、視聴率調査を行うことが可能となるため、視聴率調査のコストを低減できる。
【0018】
また、上記第1発明又は第2発明では、前記第Aモデル及び前記第Bモデルを、前記視聴率調査の対象地域と異なる地域に属する複数のサンプル世帯においてテレビ放送の視聴に関して取得された視聴データを学習データとして用いる機械学習処理により作成する第5ステップをさらに備えるという態様を採用することもできる(第4発明)。
これによれば、調査対象地域にサンプル世帯が選定されていない場合であっても、基準分布に基づいて、対象デバイスを選定することが可能となるので、視聴率調査のコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態における全体システムを示す図。
図2図1に示す視聴率調査装置の第1モデル作成部で作成する第1モデルを説明するためのブロック線図。
図3図1に示す視聴率調査装置の第2モデル作成部で作成する第2モデルを説明するためのブロック線図。
図4図1に示す視聴率調査装置の対象世帯選定部の処理を説明するためのブロック線図。
図5図1に示す視聴率調査装置の属性別視聴情報生成部の処理を説明するためのブロック線図。
図6図1に示す視聴率調査装置による視聴率調査の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態を以下に図1図6を参照して説明する。図1を参照して、本実施形態で説明するシスムは、テレビ放送の視聴率調査等に関する処理を実行する視聴率調査装置1を有する。該視聴率調査装置1は、例えば一つ以上のコンピュータにより構成される。該コンピュータは、図示しないCPU等のプロセッサ、メモリ(記憶装置)、インターフェース回路、通信装置等を含む。そして、該視聴率調査装置1は、一つ又は複数の地域(例えば都道府県単位の地域、あるいは、関東圏、近畿圏等、複数の都府県を合わせた地域)の複数の世帯20から、各世帯20でのテレビ放送の視聴に関する視聴データを取得可能である。該視聴データは、どのチャンネル(もしくはどの放送局系列)のテレビ放送が何時視聴されたかを示す視聴ログ情報等を含むデータである。
【0021】
ここで、本実施形態では、各「世帯20」は、サンプル世帯20aとデバイス別世帯20bとに大別される。各デバイス別世帯20bは、テレビ放送の受信機21と、テレビ放送の視聴に関する視聴データを出力可能な視聴データ出力装置22bとを含むテレビデバイス23bを備えると共に、該テレビデバイス23bの一人以上の視聴者(詳しくは、該テレビデバイス23bの受信機21で受信されたテレビ放送を視聴し得る一人以上の視聴者)を構成要員として含む世帯を意味する。換言すれば、デバイス別世帯20bは、テレビデバイス23bと、該テレビデバイス23bの視聴者との組として構成されるものを意味する。
【0022】
この場合、個々のテレビデバイス23b毎に、一つのデバイス別世帯20bが対応付けられる。従って、ある住戸に、複数のテレビデバイス23bが備えられている場合であっても、該複数のテレビデバイス23bのそれぞれ毎に、一つのデバイス別世帯20bが対応付けられる。この場合、当該複数のテレビデバイス23bのそれぞれに対応する各デバイス別世帯20bは、同一の構成要員を視聴者として含んでいてもよい。換言すれば、いずれかのデバイス別世帯20bの一人以上の構成要員が、他のデバイス別世帯20bの構成要員であってもよい。
【0023】
各デバイス別世帯20bのテレビデバイス23bは、テレビにより構成され、あるいは、テレビとこれに接続された録画装置とにより構成され得る。該テレビデバイス23bの視聴データ出力装置22bは、本発明における視聴データ出力装置に相当するものであり、例えば図示しないマイコン等のプロセッサ、メモリ、インターフェース回路、通信装置等により構成される。該視聴データ出力装置22bは、これを含むテレビデバイス23bを介して視聴されたテレビ放送のチャンネルを検知することが可能であると共に、該チャンネルのテレビ放送が視聴された日時(詳しくは、該チャンネルのテレビ放送の視聴開始及び視聴終了の日時)を検知することが可能であり、これらの検知情報から、該デバイス別世帯20bの視聴ログ情報(以降、デバイス別視聴ログ情報という)を生成することが可能である。該デバイス別視聴ログ情報は、換言すれば、デバイス別世帯20bに含まれる構成要員の全体の視聴ログ情報である。また、該デバイス別視聴ログ情報は、本発明における視聴ログ情報に相当するものである。
【0024】
そして、視聴データ出力装置22bは、生成したデバイス別視聴ログ情報を含む視聴データを、インターネットや電話回線網等により構成される外部ネットワークNWを介して、テレビデバイス23bを構成するテレビ又は録画装置のメーカのサーバ(図示省略)に定期的に(又は該サーバからの要求に応じて)送信することが可能である。この場合、視聴データ出力装置22bから送信される視聴データには、デバイス別視聴ログ情報の他、テレビデバイス23bを構成するテレビ又は録画装置であらかじめ登録された所在地域情報(例えば、郵便番号の上3桁を示す情報)と、テレビデバイス23bの識別情報とが含まれる。なお、テレビデバイス23bの識別情報は、該テレビデバイス23bを有するデバイス別世帯20bの識別情報としても利用し得る。
【0025】
各サンプル世帯20aは、一つ以上のテレビ放送の受信機21と、テレビ放送の視聴に関する視聴データを出力可能な視聴データ出力装置22aとを備えると共に、受信機21で受信されたテレビ放送を視聴し得る一人以上の視聴者を構成要員として含み、且つ、視聴データ出力装置22aから出力可能な視聴データが、該構成要員(視聴者)のそれぞれ毎の視聴ログ情報(以降、個人視聴ログ情報)を含む世帯を意味する。受信機21は、サンプル世帯20aに備えられた図示しないテレビ又録画装置に搭載され、視聴データ出力装置22aは、該テレビ又は録画装置に接続されている。
【0026】
視聴データ出力装置22aは、デバイス別世帯20bの視聴データ出力装置22bとは異なり、所謂、ピープルメータとしての機能を有する装置であり、例えば図示しないマイコン等のプロセッサ、メモリ、インターフェース回路、通信装置等により構成される。この視聴データ出力装置22aは、それが属するサンプル世帯20aの構成要員のそれぞれ毎に、各構成要員が視聴したテレビ放送のチャンネルを検知することが可能であると共に、該チャンネルのテレビ放送を該構成要員が視聴した日時(詳しくは、該チャンネルのテレビ放送の視聴開始及び視聴終了の日時)を検知することが可能であり、これらの検知情報から個人視聴ログ情報を生成することが可能である。この場合、テレビ放送を視聴している構成要員がどの構成要員であるかは、例えば、各構成要員による所定の端末装置の操作、あるいは、カメラの撮像画像に基づく人認証処理等を通じて特定され得る。
【0027】
さらに、視聴データ出力装置22aは、各構成要員毎の個人視聴ログ情報を統合することで、サンプル世帯20aの構成要員の全体の視聴ログ情報(以降、世帯視聴ログ情報という)を生成することも可能である。そして、視聴データ出力装置22aは、生成した個人視聴ログ情報及び世帯視聴ログ情報を含む視聴データを、外部ネットワークNWを介して、視聴率調査装置1に定期的に(又は該視聴率調査装置1からの要求に応じて)送信することが可能である。この場合、視聴データ出力装置22aから送信される視聴データには、個人視聴ログ情報及び世帯視聴ログ情報の他、サンプル世帯20aの識別情報、各個人視聴ログ情報に対応する構成要員の識別情報、サンプル世帯20aの所在地、並びに、サンプル世帯20aの各構成要員の属性等の情報(年齢、性別等)が含まれ得る。
【0028】
なお、サンプル世帯20aの所在地や、各構成要員の情報は、視聴率調査装置1にあらかじめ登録されていてもよい。その場合には、視聴データ出力装置22aから送信される視聴データは、サンプル世帯20aの所在地や、各構成要員の情報が含まれていなくてもよい。
【0029】
また、サンプル世帯20aは、視聴データ出力装置22aに加えて、デバイス別世帯20bと同様の視聴データ出力装置22bを備えていてもよい。この場合、視聴データ出力装置22aは、世帯視聴ログ情報を視聴データ出力装置22bを介して取得してもよい。また、サンプル世帯20aの世帯視聴ログ情報は、視聴率調査装置1で個人視聴ログ情報から生成することも可能である。この場合には、視聴データ出力装置22aから送信される視聴データは、世帯視聴ログ情報を含んでいなくてもよい。
【0030】
補足すると、サンプル世帯20aにおける世帯視聴ログ情報は、デバイス別視聴ログ情報と同等の視聴ログ情報として利用することも可能である。このため、以降の説明では、便宜上、サンプル世帯20aの世帯視聴ログ情報をデバイス別視聴ログ情報と称する場合がある。
【0031】
視聴率調査装置1は、実装されたハードウェア構成とプログラム(ソフトウェア構成)とにより実現される機能として、第1モデル学習処理部11、第2モデル学習処理部12、視聴データ取得部13、対象世帯選定部14、属性別視聴情報生成部15、及び視聴率推定部16を備える。
【0032】
視聴データ取得部13は、複数のサンプル世帯20aのそれぞれの視聴データ出力装置22aと外部ネットワークNWを介して通信を行うことが可能であり、その通信を行うことで、視聴データ出力装置22aから送信される視聴データを取得することが可能である。なお、視聴データ取得部13は、各サンプル世帯20aの視聴データを適宜の記憶装置を介して取得してもよい。
【0033】
また、視聴データ取得部13は、デバイス別世帯20bのそれぞれのテレビデバイス23bのメーカのサーバ(図示しない)と通信を行うことが可能であり、その通信を行うことで、該メーカの各テレビデバイス23bの視聴データを取得することが可能である。なお、視聴率調査装置1がデバイス別世帯20bの視聴データ出力装置22bと通信を行うことができる場合には、視聴データ取得部13は、デバイス別世帯20bのテレビデバイス23bの視聴データを該テレビデバイス23bの視聴データ出力装置22bから直接的に取得するようにしてもよい。また、視聴率調査装置1は、各メーカから適宜の記憶装置を介してテレビデバイス23bの視聴データを取得してもよい。
【0034】
第1モデル学習処理部11は、視聴率調査の対象地域(以降、調査対象地域という)に属する各デバイス別世帯20bの所定期間分(例えば、1カ月分、数カ月分、1年分等)のデバイス別視聴ログ情報から、該デバイス別世帯20bにどの属性の構成要員が含まれるかを推定するための第1モデルを機械学習処理により作成する処理部である。
【0035】
ここで、各デバイス別世帯20bの構成要員の属性は、例えば、構成要員の年齢や性別に応じて複数種類の属性に分類される。例えば、y1歳未満の子供、y1歳以上、且つy2歳未満の男性、y1歳以上、且つy2歳未満の女性、y2歳以上の男性、y2歳以上の女性、というように複数種類の属性に分類される。以降、属性の種類数をN種類とし、そのN種類の属性のそれぞれを適宜、At(i)(i=1,2,…,N)というように表記する。なお、各デバイス別世帯20bの構成要員の属性は、年齢や性別だけでなく、例えば、職業、学歴等、様々なパラメータに応じて分類され得る。
【0036】
第1モデルは、例えば図2に示すように、調査対象地域の各デバイス別世帯20b(図2では識別情報IDがx1であるデバイス別世帯20b)の所定期間分のデバイス別視聴ログ情報から、該デバイス別世帯20bにおけるN種類の属性At(i)(i=1,2,…、N)の構成要員のそれぞれの存在の有無を示す目的変数を決定し得るように作成される。なお、図2及び後述の図3図5に示すブロック図では、処理の実行部を太線枠で示し、データの出力部又はデータを細線枠で示している。
【0037】
第1モデルに入力する説明変数としては、例えば、視聴されたテレビ放送のチャンネル(もしくは放送局系列)、視聴されたテレビ放送の内容の特徴(ジャンル等)、該テレビ放送が視聴された日時に関する日時データ(月、曜日、時間帯等を示すデータ)等に応じて分類される複数の視聴パターン(視聴傾向を分類するパターン)のそれぞれ毎の適合度合いを表す指標値(詳しくは、複数の視聴パターンのそれぞれに対して、各デバイス別世帯20bの所定期間分の世帯視聴ログ情報が適合する度合いを表す指標値)が使用され得る。該指標値は、換言すれば、その値が大きいほど、該指標値に対応する視聴パターンでの視聴が行われる傾向が高いことを表す指標値である。
【0038】
該指標値としては、例えば、所定期間分のデバイス別視聴ログ情報において、複数の視聴パターンのそれぞれに該当するパターンでの視聴が行われたトータルの視聴時間幅、あるいは、該当するパターンでの視聴が行われた平均の視聴時間幅、あるいは、これらの視聴時間幅の基準の時間幅に対する割合等を使用し得る。
【0039】
一例として、7月の各週の水曜日の18:00~19:00の時間帯で、第nチャンネルにてニュース番組が放送されていると共に、7月の水曜日が4週分の日数(4日)である場合において、あるデバイス別世帯20bにおいて、7月の各水曜日の18:00~19:00の時間帯で、第nチャンネルのニュース番組が視聴された時間が、第1水曜日、第2水曜日、第3水曜日、第4水曜日のそれぞれで、30分、40分、30分、50分であったことが該デバイス別世帯20bのデバイス別視聴ログ情報から推定された場合を想定する。
【0040】
この場合、7月の水曜日の18:00~19:00の時間帯で、第nチャンネルのニュース番組を視聴するという視聴パターンに対する適合度合いを表す指標値として、該ニュース番組のトータルの視聴時間幅(=30分+40分+30分+50分=150分)、あるいは、該ニュース番組の平均の視聴時間幅(=150分/4=37.5分)、あるいは、7月の水曜日の上記時間帯の合計時間幅(=4時間)に対する上記トータルの視聴時間幅(=150分)の割合(=0.625),あるいは、7月の水曜日の上記時間帯の時間幅(=1時間)に対する上記平均の視聴時間幅(=37.5分)の割合(=0.625)等を使用し得る。
【0041】
そして、第1モデル学習処理部11は、あらかじめ選定したサンプル地域に属する複数のサンプル世帯20aのそれぞれの所定期間分のデバイス別視聴ログ情報(世帯視聴ログ情報)と、該複数のサンプル世帯20aのそれぞれの構成要員の実際の属性(At(1)~At(N)のいずれか)とを学習データとして用いる機械学習処理により、第1モデルを作成する。この場合、各サンプル世帯20aのデバイス別視聴ログ情報(世帯視聴ログ情報)は、視聴データ取得部13を介して取得される。また、各サンプル世帯20aの構成要員の実際の属性は、該サンプル世帯20aの各構成要員の既知の情報から特定される。また、第1モデル学習処理部11の機械学習処理のアルゴリズムとしては、公知のアルゴリズムを使用し得る。
【0042】
なお、学習データを得るサンプル世帯20aは、上記サンプル地域に属する全てのサンプル世帯20aに限らず、サンプル地域に属する全てのサンプル世帯20aのうちの一部のサンプル世帯20aであってもよい。また、サンプル地域としては、例えば、前記調査対象地域が選定され得る。ただし、サンプル地域として、調査対象地域と異なる地域が選定されてもよい。例えば、調査対象地域が青森県である場合、サンプル地域として、青森県に限らず、青森県に比較的近い東北地方の地域(例えば仙台市等)、あるいは、関東圏を選定してもよい。また、第1モデルは、例えば前記特許文献2における世帯構成の判定用の数理モデルと同様のモデルであってもよい。
【0043】
補足すると、作成された第1モデルが、調査対象地域の各デバイス別世帯20bの構成要員の属性を推定するために適正なモデルであるか否かは、例えば、調査対象地域の各サンプル世帯20aから得られるデバイス別視聴ログ情報(世帯視聴ログ情報)から第1モデルにより推定される構成要員の属性が、該サンプル世帯20aの実際の構成要員の属性に一致するか否かを確認することによって検証し得る。また、適正な第1モデルを作成するために、第1モデルの説明変数の種類や個数を変更したり、サンプル地域内で学習データを得るサンプル世帯20aの集合、もしくはサンプル地域を適宜、変更してもよい。このような検証及び変更を適宜行うことで、適正な第1モデルを作成することが可能である。
【0044】
第2モデル学習処理部12は、調査対象地域の各デバイス別世帯20bにおいて、該デバイス別世帯20bの構成要員の属性毎に、どのチャンネル(又は放送局系列)のテレビ放送が何時、視聴されたかを推定するための第2モデルを機械学習処理により作成する処理部である。
【0045】
該第2モデルは、例えば、テレビ放送のチャンネル(又は放送局系列)と、テレビ放送の視聴の日時に関する日時データ(月、、曜日、時間帯等のデータ)との組み合わせのそれぞれ毎に、各組み合わせに対応するテレビ放送が、該デバイス別世帯20bのどの属性の構成要員により視聴されたかを、該デバイス別世帯20bの所定期間分のデバイス別視聴ログ情報から推定し得るように構成される。この場合、第2モデルは、構成要員の属性の種類毎に、各別のモデルとして作成される。すなわち、N種類の属性At(i)(i=1,2,…,N)のそれぞれに対応するN個の第2モデルが作成される。
【0046】
なお、上記の各組み合わせに対応するテレビ放送というのは、例えば、該組み合わせにおけるチャンネルが第1チャンネル、日時データが7月の水曜日の18:00~19:00の時間帯であるとした場合、該組み合わせに対応するテレビ放送は、7月の水曜日の18:00~19:00の時間帯における第1チャンネルのテレビ放送を意味する。チャンネル(又は放送局系列)と日時データとの他の組み合わせについても同様である。また、上記日時テータにおける時間帯は、例えば1時間、30分等、所定の時間幅単位での時間帯である。
【0047】
より具体的には、各属性At(i)に対応する第2モデルは、例えば図3に示すように、調査対象地域のデバイス別世帯20bのうち、該属性At(i)の構成要員を有する各デバイス別世帯20b(図3では属性At(n)の構成要員を有するデバイス別世帯20b)の所定期間分の世帯視聴ログ情報から、該デバイス別世帯20bの属性At(i)の構成要員が、チャンネル(又は放送局系列)及び日時データの組み合わせのそれぞれ毎に、各組み合わせ)に対応するテレビ放送の視聴を行ったか否かの推定結果を示す目的変数を決定し得るように構築される。この場合、各属性At(i)に対応する第2モデルに入力する説明変数としては、例えば、第1モデルの説明変数と同様に、複数の視聴パターンのそれぞれ毎の適合度合いを表す指標値が使用され得る。
【0048】
なお、図3では、2つの放送局系列X,Yについて、それぞれの放送局系列X,Yと日時データとの組み合わせを4つ例示すると共に、その4つの組み合わせのそれぞれに対応するテレビ放送を、属性At(n)の構成要員が視聴したか否かの判定結果を例示している。
【0049】
そして、第2モデル学習処理部12は、前記したサンプル地域に属する複数のサンプル世帯20aのそれぞれでのテレビ放送の視聴に関する視聴データとして、該複数のサンプル世帯20aのそれぞれの所定期間分のデバイス別視聴ログ情報(世帯視聴ログ情報)及び個人視聴ログ情報を学習データとして用いる機械学習処理により、各属性At(i)に対応する第2モデルを作成する。
【0050】
この場合、各サンプル世帯20aの世帯視聴ログ情報及び個人視聴ログ情報は、視聴データ取得部13を介して取得される。また、第1モデル学習処理部11の機械学習処理のアルゴリズムとしては、公知のアルゴリズムを使用し得る。なお、学習データを得るサンプル世帯20aは、サンプル地域に属する全てのサンプル世帯20aに限らず、サンプル地域に属する全てのサンプル世帯20aのうちの一部のサンプル世帯20aであってもよい。また、第2モデルは、例えば前記特許文献2における個人視聴判定用の数理モデルと同様のモデルであってもよい。
【0051】
補足すると、作成された第2モデルが、調査対象地域の各デバイス世帯20bの構成要員の属性毎に、チャンネル(又は放送局系列)及び日時データの組み合わせのそれぞれに対応するテレビ放送の視聴を行ったか否かを推定するために適正なモデルであるか否かは、調査対象地域の各サンプル世帯20aから得られるデバイス別視聴ログ情報(世帯視聴ログ情報)から第2モデルにより得られる視聴の有無の推定結果が、該サンプル世帯20aの個人視聴ログ情報から特定される実際の視聴の有無に一致するか否かを確認することによって検証し得る。また、適正な第2モデルを作成するために、第2モデルの説明変数の種類や個数を変更したり、サンプル地域内で学習データを得るサンプル世帯20aの集合、もしくはサンプル地域を適宜、変更してもよい。このような検証及び変更を適宜行うことで、適正な第2モデルを作成することが可能である。
【0052】
対象世帯選定部14は、前記調査対象地域で視聴率調査を行う場合に、該調査対象地域に属する複数のデバイス別世帯20bから、視聴率調査の対象とする複数の対象デバイス別世帯20c(以降、単に対象世帯20cという)を選定する処理部である。なお、各デバイス別世帯20bには、個々のテレビデバイス23bが対応付けられているので、対象世帯20cを選定するということは、該対象世帯20cに対応するテレビデバイス23bを選定することと等価である。そして、対象世帯20cに対応するテレビデバイス23bが本発明における対象デバイスに相当する。
【0053】
対象世帯選定部14は、図4に示すように、まず、調査対象地域の各デバイス別世帯20bの構成要員の属性を、各デバイス別世帯20bについて視聴データ取得部13を介して取得された所定期間分のデバイス別視聴ログ情報から、第1モデル学習処理部11により作成された第1モデル(調査対象地域の各デバイス別世帯20bの構成要員の属性を適正に推定し得ることが検証された第1モデル)を用いて推定する。
【0054】
そして、対象世帯選定部14は、選定する複数の対象世帯20cの全体の構成要員の属性の分布(At(1)~At(N)のそれぞれの属性毎の構成要員の人数の分布)が、所定の基準分布に一致するように、デバイス別世帯20b(構成要員の属性を推定したデバイス別世帯20b)の全体から複数の対象世帯20cを選定する。この場合、上記基準分布は、該基準分布に基づいて選定される対象世帯20cのデバイス別視聴ログ情報から、適正な(信頼性の高い)視聴率調査を行い得るように、調査対象地域で実施した視聴率調査(例えば、調査対象地域のサンプル世帯20aの視聴データに基づく視聴率調査)の結果を反映させて決定され得る。
【0055】
具体的には、調査対象地域のデバイス別世帯20bのデバイス別視聴ログ情報のうち、実施した視聴率調査の時期を含む所定期間のデバイス別視聴ログ情報を取得し、そのデバイス別視聴ログ情報から第1モデルにより推定した世帯毎の構成要員の属性を用いて、適当な基準分布に基づいて対象世帯20cを選定する。
【0056】
さらに、その対象世帯20cのデバイス別視聴ログ情報を用いて、後述の属性別視聴情報生成部15及び視聴率推定部16の処理を行うことで、各属性毎の視聴状況データ(視聴率に相当するデータ)を推定し、その視聴状況データが、実施した視聴率調査による実際の視聴率に整合するものとなったか否かを検証する。そして、その検証結果に応じて、基準分布を適宜変更することで適正な基準分布を決定することが可能である。
【0057】
上記基準分布の一例としては、例えば、調査対象地域の居住者の属性の実際の分布が使用され得る。この場合、対象世帯選定部14は、複数の対象世帯20cの全体の構成要員の総数に対する各属性At(i)(i=1,2,…,N)の構成要員の比率が、調査対象地域の居住者の総数に対する該属性A(i)の居住者の人数の実際の比率に一致するように、複数の対象世帯20cを選定する。
【0058】
なお、対象世帯20cの総数は、例えば所定の下限値以上で任意に設定し得る。また、対象世帯20cは、デバイス別世帯20bに加えて、調査対象地域のサンプル世帯20aの全体もしくは一部を含んでいてもよい。このことは、適正な基準分布を決定する過程で選定する対象世帯20cについても同様である。この場合、対象世帯20cの選定のために参照する各サンプル世帯20aの構成要員の属性としては、該サンプル世帯20aの構成要員の既知の情報に基づく実際の属性を使用し得るが、該サンプル世帯20aのデバイス別視聴ログ情報(世帯視聴ログ情報)から第1モデルにより推定されたものを使用してもよい。
【0059】
属性別視聴情報生成部15は、対象世帯選定部14により選定された各対象世帯20cにおいて、テレビ放送のチャンネル(又は放送局系列)と、テレビ放送の視聴の日時に関する日時データ(月、曜日、時間帯等のデータ)との組み合わせのそれぞれに対応するテレビ放送のうち、視聴率調査の対象とするテレビ放送(以降、調査対象放送という)を、該対象世帯20cの各属性の構成要員が視聴したか否かを示す属性別視聴情報を生成する処理部である。なお、調査対象放送は、所定のニュース、ドラマ等の番組放送に限らず、調査対象のチャンネルもしくは放送局系列での所定の時間帯の任意のテレビ放送(例えば広告放送等)も含まれ得る。
【0060】
この属性別視聴情報生成部15は、図5に示すように、まず、対象世帯選定部14により選定された各対象世帯20c(図5では、識別情報IDがx1、x4、x5である対象世帯20c)について、視聴データ取得部13を介して取得された所定期間分のデバイス別視聴ログ情報から、該対象世帯20cの構成要員の属性毎に、第2モデル学習処理部12により作成された第2モデル(詳しくは、調査対象地域の各デバイス別世帯20bの構成要員の属性毎に、チャンネル(又は放送局系列)及び日時データの組み合わせのそれぞれに対応するテレビ放送の視聴を行ったか否かを適正に推定し得ることが検証された第2モデル)を用いて、調査対象放送の視聴が行われたか否かを推定する(以降、この推定処理を属性別視聴推定処理という)。なお、図5では、調査対象放送として、例えば、7月7日の水曜日の18:00-19:00に、放送局系列xで放送されたテレビ放送を例示している。また、図5では、識別情報IDがx1、x4、x5である対象世帯20cのそれぞれが、同じ属性At(n)の構成要員を有する場合を例示している。
【0061】
また、属性別視聴情報生成部15は、各対象世帯20cの所定期間分のデバイス別視聴ログ情報から、調査対象放送の時間帯(図5では7月7日の水曜日の18:00-19:00の時間帯)で、調査対象放送のチャンネル又は放送局系列(図5では放送局系列x)のテレビ放送の視聴(対象世帯20cでの視聴)が実際に行われたか否かを判定する(以降、この判定処理をデバイス別視聴判定処理という)。
【0062】
そして、属性別視聴情報生成部15は、各対象世帯20c毎に、上記属性別視聴推定処理の結果と、デバイス別視聴判定処理の結果とから、各対象世帯20cに属する各属性の構成要員が、調査対象放送を視聴したか否かを確定し、その確定結果を属性別視聴情報として生成する。この場合、対象世帯20cのある属性の構成要員について属性別視聴推定処理により、調査対象放送の視聴が有ったと推定され、且つ、デバイス別視聴判定処理により、調査対象放送の時間帯で、該調査対象放送と同じチャンネル(又は放送局系列)での視聴が有ったと判定された場合に、当該属性の構成要員が、調査対象放送を視聴したと確定される。
【0063】
例えば、図5では、識別情報IDがx1である対象世帯20cに関し、属性At(n)の構成要員についての属性別視聴推定処理により、調査対象放送の視聴が有ったと推定され、且つ、デバイス別視聴判定処理により、調査対象放送の時間帯で、該調査対象放送と同じ放送局系列での視聴が有ったと判定されるため、該属性At(n)の構成要員が調査対象放送を視聴したと確定される。
【0064】
また、対象世帯20cのある属性の構成要員について属性別視聴推定処理により、調査対象放送の視聴が無いと推定された場合には、デバイス別視聴判定処理の結果によらずに、当該属性の構成要員が、調査対象放送を視聴しなかったと確定される。
【0065】
例えば、図5では、識別情報IDがx4である対象世帯20cに関し、属性At(n)の構成要員についての属性別視聴推定処理により、調査対象放送の視聴が無かったと推定されるため、デバイス別視聴判定処理の結果によらずに、該属性At(n)の構成要員が調査対象放送を視聴しなかったと確定される。
【0066】
また、対象世帯20cについて、デバイス別視聴判定処理により、調査対象放送の時間帯で、該調査対象放送と同じ放送局系列での視聴が無かった判定された場合(すなわち、該調査対象放送の時間帯でテレビ放送の視聴が行われていないか、又は、調査対象放送と異なるチャンネル(又は異なる放送局系列)のテレビ放送が視聴された場合)には、属性別視聴推定処理の結果によらずに、当該対象世帯20cの任意の属性の構成要員が、調査対象放送を視聴しなかったと確定される。
【0067】
例えば、図5では、識別情報IDがx5である対象世帯20cに関し、デバイス別視聴判定処理により、調査対象放送の時間帯で、該調査対象放送と同じ放送局系列での視聴が無かった判定されるので、属性別視聴推定処理の結果によらずに、該対象世帯20cの任意の属性の構成要員(属性At(n)の構成要員を含む)について、調査対象放送を視聴しなかったと確定される。
【0068】
視聴率推定部16は、上記属性別視聴情報生成部15の処理により得られた属性別視聴情報に基づいて、対象世帯20cの全体の構成要員の属性毎に、調査対象放送の視聴状況データ(視聴率に相当するデータ)を推定する処理部である。この場合、対象世帯20cの全体における属性At(i)(i=1,2,…,N)のそれぞれ毎の構成要員の総数をM(i)とおくと共に、属性At(i)のそれぞれ毎に、調査対象放送を視聴したと確定された構成要員の総数をm(i)と表記すると、視聴率推定部16は、属性At(i)のそれぞれ毎の調査対象放送の視聴状況データを、次式(1)により算出する。
属性At(i)に関する視聴状況データ=m(i)/M(i) ……(1)
【0069】
例えば、図5において、対象世帯20cの全体のうち、属性At(n)の構成要員を有する対象世帯20cが、ID=x1、ID=x4、ID=x5の3世帯であるとした場合、属性At(n)の構成要員が調査対象放送を視聴したと確定された対象世帯20cは、ID=x1の対象世帯20cだけであるので、属性At(n)について式(1)により算出される調査対象放送の視聴状況データは、1/3(≒0.33)となる。
本実施形態では、視聴率調査装置1の各機能部は上記の如く処理を実行するように構成されている。
【0070】
次に、任意の調査対象放送の視聴率調査を行う場合の視聴率調査装置1の全体の処理を図6を参照して説明する。なお、この場合、調査対象地域用の適正な第1モデル及び第2モデルは、既に作成済であるとする。
【0071】
視聴率調査装置1は、STEP1~3の処理を対象世帯選定部14により実行する。この場合、対象世帯選定部14は、STEP1において、調査対象地域の各デバイス別世帯20bの所定期間分のデバイス別視聴ログ情報を視聴データ取得部13を介して取得する。なお、この場合、取得するデバイス別視聴ログ情報に、調査対象地域のサンプル世帯20aの世帯視聴ログ情報を含んでいてもよい。この場合には、該サンプル世帯20aは、デバイス別世帯20bと見なされる。
【0072】
次いで、STEP2において、対象世帯選定部14は、調査対象地域の各デバイス別世帯20bの構成要員の属性を、該デバイス別世帯20bのデバイス別視聴ログ情報から第1モデルを用いて推定する。なお、デバイス別世帯20bとみなしたサンプル世帯20aについては、その構成要員の属性を第1モデルを用いて推定してもよいが、その推定の代わりに、該サンプル世帯20aの各構成要員の既知の情報から各構成要員の属性を特定してもよい。
【0073】
次いで、STEP3において、対象世帯選定部14は、調査対象地域についてあらかじめ定められた属性の基準分布に基づいて、調査対象地域のデバイス別世帯20bから対象世帯20cを選定する。この場合、対象世帯選定部14は、前記したように、対象世帯20cの全体の構成要員の属性の分布が基準分布に一致する(ほぼ一致する場合を含む)ように対象世帯20cを選定する。なお、選定する対象世帯20cは、デバイス別世帯20bと見なしたサンプル世帯20aを含んでいてもよい。
【0074】
次に、視聴率調査装置1は、STEP4,5の処理を属性別視聴情報生成部15により実行する。この場合、属性別視聴情報生成部15は、STEP4において、各対象世帯20cのデバイス別視聴ログ情報を取得する。該デバイス別視聴ログ情報は、視聴データ取得部13を介して取得される。あるいは、STEP1で対象世帯選定部14が取得したデバイス別世帯20bのデバイス別視聴ログ情報の全体から対象世帯20cのそれぞれに対応するデバイス別視聴ログ情報が取得される。
【0075】
次いでSTEP5において、属性別視聴情報生成部15は、対象世帯20cのそれぞれについて、構成要員の属性毎に調査対象放送の視聴が有ったか否かを示す属性別視聴情報を生成することをデバイス別視聴ログ情報と第2モデルとを用いて実行する。この場合、属性別視聴情報生成部15は、図5を参照して前記したように、各対象世帯20cのデバイス別視聴ログ情報から、該対象世帯20cの構成要員の属性毎に、第2モデルを用いて調査対象放送の視聴の有無を推定する処理(属性別視聴推定処理)と、調査対象放送の時間帯で該対象世帯20cでの調査対象放送の視聴が実際に有ったか否かを判定する処理(デバイス別視聴判定処理)とを実行し、これらの処理の結果に基づいて、該対象世帯20cの構成要員の属性毎に、調査対象放送の視聴の有無を確定する。
【0076】
次いで、STEP6において、視聴率調査装置1は、視聴率推定部16により、対象世帯20cの全体での調査対象放送の視聴状況データを、構成要員の属性毎に推定する。この場合、視聴率推定部16は、前記したように、属性別視聴情報生成部15で生成された属性別視聴情報から前記式(1)に基づいて、属性毎の視聴状況データを推定する。
【0077】
補足すると、本実施形態では、上記STEP1~3が本発明における第1ステップに相当し、STEP1、2、3がそれぞれ、本発明における第1aステップ、第1bステップ、第1cステップに相当する。また、STEP4、5、6がそれぞれ本発明における第2ステップ、第3ステップ、第4ステップに相当する。また、第1モデル、第2モデルがそれぞれ本発明における第Bモデル、第Aモデルに相当し、第1モデル学習処理部11の処理が本発明における第5ステップに相当する。
【0078】
以上説明した実施形態によれば、調査対象地域に対応する適正な第1モデル及び第2モデルを作成しておくと共に、該調査対象地域に対応する基準分布を適切に設定しておくことで、調査対象地域のサンプル世帯20aの個人視聴ログ情報を必要とせずに、調査対象地域の属性毎の視聴状況データを高い信頼性で適切に推定することができる。また、サンプル世帯20aの視聴データを使用せずに視聴率調査を行うことができるので、視聴率調査を低コストで行うことができる。
【符号の説明】
【0079】
20a…サンプル世帯、21…受信機、22b…視聴データ出力装置、23b…テレビデバイス、対象世帯20cのテレビデバイス23b…対象デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6