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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100115
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】頭皮冷却帽子
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/10 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
A61F7/10 330A
A61F7/10 312
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000554
(22)【出願日】2022-01-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】599127092
【氏名又は名称】株式会社アイスジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 正昭
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA02
4C099CA03
4C099EA13
4C099GA02
4C099HA01
4C099JA05
4C099LA07
4C099LA09
4C099LA11
4C099NA09
(57)【要約】
【課題】保冷剤以外の部材の冷凍を不要にして冷凍庫の容積を小型化できるとともに、頭皮全体を均一且つ十分に冷却することができる頭皮冷却帽を提供する。
【解決手段】頭皮冷却帽10は、前頭部から頭頂部を経て後頭部に至る間に配置される第1保冷剤1であって前頭部から後頭部に沿って複数の領域に折曲可能にされた第1保冷剤1と、左右それぞれの側頭部に配置される第2及び第3保冷剤であって複数の領域に折曲可能にされた第2保冷剤2及び第3保冷剤3と、第1~第3保冷剤をそれぞれ収納する第1~第3収納部を備えた伸縮性のサポータ4と、断熱性及び柔軟性を有し頭部100に装着されたサポータ4を被覆するキャップ5と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前頭部から頭頂部を経て後頭部に至る間に配置される第1保冷剤であって氷点下以下の目標温度で凍結固化しない第1保冷剤と、
左右それぞれの側頭部に配置される第2及び第3保冷剤であって氷点下以下の目標温度で凍結固化しない第2及び第3保冷剤と、
伸縮性を有し、前記第1~第3保冷剤をそれぞれ収納する第1~第3収納部を備えたサポータと、
断熱性及び伸縮性を有し、頭部に装着された前記サポータを被覆するキャップと、
を備えた頭皮冷却帽。
【請求項2】
前記第1保冷剤は前頭部から後頭部に沿って複数の領域に折曲可能にされ、前記第2及び第3保冷剤は複数の領域に折曲可能にされた請求項1に記載の頭皮冷却帽。
【請求項3】
前記第1~第3保冷剤は、それぞれ頭皮側に配置される内側層とその外側に配置される外側層との2層で構成された請求項1又は2に記載の頭皮冷却帽。
【請求項4】
前記第1~第3保冷剤は、少なくとも前記内側層が氷点下以下の目標温度で凍結固化しない内容物を備えた請求項3に記載の頭皮冷却帽。
【請求項5】
前記キャップは、頭部に固定する伸縮性のベルトを備えた請求項1乃至4の何れかに記載の頭皮冷却帽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抗癌剤治療等の化学療法の副作用による頭部の脱毛を防止する頭皮冷却帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
抗癌剤治療等の化学療法の副作用として、薬剤によって毛母細胞が悪影響を受けて脱毛を生じることが知られている。特に、頭部の脱毛は、容姿の変貌を気遣う患者に精神的苦痛を与えることになり、化学療法への積極性を損なう。
【0003】
そこで、頭部の血管の収縮によって毛母細胞への血流を抑制するとともに代謝活性を低下させて薬剤の悪影響を抑制すべく、頭部を冷却する頭部冷却用キャップが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された頭部冷却用キャップは、頭皮表面側から外側に向かってスペーサ、アンダーキャップ、蓄熱材、断熱材から構成され、外部装置を不要にすることで冷却中の移動を可能にしつつ、頭部を一定時間以上冷却できるとされている。
【0005】
なお、特許文献1の蓄熱材は、本願発明の保冷剤に相当するものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6900094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された頭部冷却用キャップは、熱硬化性の素材を頭部に装着できるように成形した非変形性のアンダーキャップの外表面に蓄熱材を接触させるものである。このため、冷凍によって硬化する蓄熱材を冷凍後にアンダーキャップの外表面の広い範囲に接触させようとすると、冷凍前の蓄熱材を外表面に密着させたアンダーキャップを蓄熱材とともに冷凍する必要があり、蓄熱材の冷凍時に非変形性のアンダーキャップをも収容することができる容積の冷凍庫が必要になる。
【0008】
また、化学療法の副作用としての頭部の脱毛を抑制するためには頭皮の広い範囲を均一且つ十分に冷却する必要があるとされている。しかし、特許文献1に記載された頭部冷却用キャップは、使用時に頭皮とアンダーキャップとの間に複数のスペーサを介在させるものである。このため、蓄熱材によって冷却されたアンダーキャップは頭皮に直接接触せず、頭皮の広い範囲に蓄熱材を密着させることができないため、頭皮全体を均一且つ十分に冷却することができないだけでなく、蓄熱材を過剰な低温度に維持する必要が生じる。
【0009】
この発明の目的は、氷点下以下の目標温度で凍結固化しない保冷剤を冷凍後に伸縮性のサポータに収納して頭部に装着するように構成することで、保冷剤以外の部材の冷凍を不要にして冷凍庫の容積を小型化できるとともに、頭皮の広い範囲に保冷剤を密着させることができるようにして保冷剤を過剰な低温度にすることなく頭皮全体を均一且つ十分に冷却することができる頭皮冷却帽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の頭皮冷却帽は、保冷剤、サポータ、キャップを備える。保冷剤は、前頭部から頭頂部を経て後頭部に至る間に配置される第1保冷剤であって氷点下以下の目標温度で凍結固化しない第1保冷剤と、左右それぞれの側頭部に配置される第2及び第3保冷剤であって氷点下以下の目標温度で凍結固化しない第2及び第3保冷剤と、からなる。サポータは、伸縮性を有し、第1~第3保冷剤をそれぞれ収納する第1~第3収納部を備える。キャップは、断熱性及び伸縮性を有し、頭部に装着されたサポータを被覆する。
【0011】
この構成では、第1~第3保冷剤のみが冷凍庫で氷点下以下の目標温度にされる。氷点下以下の目標温度にされた保冷剤をサポータに収納して頭部に装着すると、凍結固化していない第1~第3保冷剤が伸縮性のサポータ内で頭部の形状に合わせて変形し、頭皮の広い範囲にサポータを挟んで保冷剤が密着する。断熱性及び伸縮性を有するキャップでサポータ及び頭部を被覆すると、保冷剤による頭皮の冷却温度が維持される。
【0012】
この構成において、第1保冷剤を前頭部から後頭部に沿って複数の領域に折曲可能にし、前記第2及び第3保冷剤を複数の領域に折曲可能にすることができる。千差万別の頭部の形状に合わせて、第1~第3保冷剤を頭皮の広い範囲にサポータを挟んで保冷剤をより密着させることができる。
【0013】
第1~第3保冷剤は、それぞれ頭皮側に配置される内側層とその外側に配置される外側層との2層で構成することができる。単一層の構成に比較して、冷却温度及び冷却時間の調整を容易にすることができる。
【0014】
キャップを頭部に固定する伸縮性のベルトを備えることもできる。頭部からのキャップの脱落を防止できるとともに、頭皮に対するサポータの密着性を向上できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、保冷剤以外の部材の冷凍を不要にして冷凍庫の容積を小型化できるとともに、伸縮性のサポータに収納された保冷剤が使用者毎に異なる頭部の形状に合わせて変形することで頭皮の広い範囲に保冷剤を密着させることができ、保冷剤を過剰な低温度にすることなく頭皮全体を均一且つ十分に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施形態に係る頭皮冷却帽の使用時における頭頂部に位置する部分の正面端面図である。
図2】同頭皮冷却帽が備える第1保冷剤の平面図である。
図3】同頭皮冷却帽が備える第2保冷剤の平面図である。
図4】(A)及び(B)は、それぞれ同頭皮冷却帽が備えるサポータの平面図及び底面図である。
図5】(A)及び(B)は、それぞれ同サポータの組立状態を示す上面方向の外観図及び底面方向の外観図である。
図6】(A)~(C)は、それぞれ同頭皮冷却帽が備えるキャップの平面図、正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、この発明の実施形態に係る頭皮冷却帽について、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、この発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0018】
図1に示すように、頭皮冷却帽10は、第1保冷剤1、第2保冷剤2、第3保冷剤3、サポータ4、キャップ5を備えている。第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3は、それぞれ頭部100側に配置される第1内側部材11、第2内側部材21及び第3内側部材31と、その外側に配置される第1外側部材12、第2外側部材22及び第3外側部材32と、で構成されている。
【0019】
サポータ4は、前頭部から頭頂部を経て後頭部に至る間に対向する第1収納部41に第1保冷剤1を収納し、左右の側頭部に対向する第2収納部42及び第3収納部43にそれぞれ第2保冷剤2及び第3保冷剤3を収納する。サポータ4は、第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3を収納した状態で頭部100に装着される。
【0020】
キャップ5は、頭部100に装着されたサポータ4を被覆する。キャップ5は、縦ベルト57及び横ベルト58を備えている。縦ベルト57は、頭頂部から下顎部を経由して頭部100を縦方向に巻回するように配置されている。横ベルト58は、額部から側頭部及び後頭部を経由して頭部100を横方向に巻回するように配置されている。キャップ5によってサポータ4を被覆した状態で、手指での押圧、並びに縦ベルト57及び横ベルト58の締着により、頭部100とサポータ4との空間、サポータ4とキャップとの空間は、殆ど消失する。
【0021】
図2(A)及び(B)に示すように、第1保冷剤1は、第1内側部材11及び第1外側部材12からなる。第1内側部材11は、一例として、長さ420mm、幅140mmのポリエチレンフィルムを素材とする矩形を呈する偏平の包袋を、前頭部から後頭部に沿って、3つの領域111~113に折曲可能に分離して構成されている。領域111~113のそれぞれは、例えば、目標温度で凍結固化しないグリス類、ビーズポリマ、尿素、増粘剤及び防腐剤等を、一例として-18℃~-25℃の冷凍庫内に48時間程度収納した際に、凍結固化しない状態で-5℃程度の目標温度を維持する割合で調整された内容物を収納する。
【0022】
第1外側部材12は、一例として、長さ400mm、幅100mmのポリエチレンフィルムを素材とする矩形を呈する偏平の包袋を、前頭部から後頭部に沿って、5つの領域121~125に折曲可能に分離して構成されている。領域121~125のそれぞれは、例えば、水、尿素、ポリアクリル酸ナトリウム及び防腐剤等を、一例として-18℃~-25℃の冷凍庫内に48時間程度収納した際に、凍結固化した状態で-7℃程度の目標温度を維持する割合で調整された内容物を収納する。
【0023】
第1保冷剤1は、必ずしも第1内側部材11及び第1外側部材12の2層に構成する必要はなく、単層又は3層以上で構成することもできる。また、第1内側部材11及び第1外側部材12の大きさ及び領域数は、それぞれの内容物の組成とともに、頭皮の冷却温度及び冷却時間に応じて適宜変更できる。
【0024】
図3(A)及び(B)に示すように、第2保冷剤2は、第2内側部材21及び第2外側部材22からなる。第2内側部材21は、一例として底辺が240mmのポリエチレンフィルムを素材とする略半円形の平面形状を呈する偏平の包袋を、上下方向に沿って2つの領域211及び212に折曲可能に分離して構成されている。領域211及び212のそれぞれは、例えば、目標温度で凍結固化しないグリス類、ビーズポリマ、尿素、増粘剤及び防腐剤等を、一例として-18℃~-25℃の冷凍庫内に48時間程度収納した際に、凍結固化しない状態で-5℃程度の目標温度を維持する割合で調整された内容物を収納する。
【0025】
第2外側部材22は、一例として底辺が240mmのポリエチレンフィルムを素材とする略半円形の平面形状を呈する偏平の包袋である。第2外側部材22は、例えば、水、アルコール、ポリアクリル酸ナトリウム及び防腐剤等を、一例として、-18℃~-25℃の冷凍庫内に48時間程度収納した際に、凍結固化しない状態で0℃程度の目標温度を維持する割合で調整された内容物を収納する。
【0026】
第2保冷剤2は、必ずしも第2内側部材21及び第2外側部材22の2層に構成する必要はなく、単層又は3層以上で構成することもできる。また、第2内側部材21及び第2外側部材22の形状、大きさ並びに領域数及び分割方向は、それぞれの内容物の組成とともに、頭皮の冷却温度及び冷却時間に応じて適宜変更できる。
【0027】
なお、第3内側部材31及び第3外側部材32からなる第3保冷剤3も、第2保冷剤2と同様に構成される。
【0028】
図4(A)及び(B)に示すように、サポータ4は、一例として、ポリエステル等の伸縮性を有する布材を素材とする縫製品である。サポータ4は、第1保冷剤1を収納して頭部100の前頭部から頭頂部を経由して後頭部に至る間に対向する第1収納部41、それぞれ第2保冷剤2及び第3保冷剤3を収納して頭部100の左側頭部及び右側頭部に対向する第2収納部42及び第3収納部43を備えている。
【0029】
第1収納部41は、頭部に対向しない外面側に蓋体412で開閉自在に被覆された開口411を備えている。第1保冷剤1は、第1内側部材11の上に第1外側部材12を重ねた状態で、開口411から第1収納部41内に収納される。開口411は、長手方向における中央部のみに設けるとともに、蓋体412との間に面ファスナ等の閉塞部材を備えることで、第1収納部41からの第1保冷剤1の脱落を防止することもできる。
【0030】
第2収納部42及び第3収納部43は、それぞれ開口421及び開口431を備えている。第2保冷剤2及び第3保冷剤3は、それぞれ第2外側部材22及び第3外側部材32の上に第2内側部材21及び第3内側部材31を重ねた状態で、開口421及び開口431から第2収納部42及び第3収納部43内に収納される。
【0031】
第1収納部41の外側面には、長手方向の両端部に面ファスナ44及び面ファスナ45が縫着されている。第2収納部42の内側面には、開放端側の角部に面ファスナ46及び面ファスナ47が縫着されている。第3収納部43の内側面には、開放端側の角部にファスナ48及び面ファスナ49が縫着されている。
【0032】
第1収納部41、第2収納部42及び第3収納部43にそれぞれ第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3を収納させた状態で、面ファスナ44に面ファスナ46及び面ファスナ48を付着させ、面ファスナ45に面ファスナ47及び面ファスナ49を付着させると、図5(A)及び(B)に示すように、第1収納部41、第2収納部42及び第3収納部43の内側に、頭部100を収納できる凹部が形成され、サポータ4が帽子状に組み上がる。
【0033】
例えば、一方の腕に点滴が刺された抗癌剤治療等の化学療法中の患者が、他方の手のみを使ってサポータ4を容易に頭部に装着できる。第1収納部41の外側面に手を差し込むためのループやポケット等を設けることで、片手でのサポータ4の装着をより容易にすることができる。
【0034】
図6(A)~(C)に示すように、キャップ5は、一例として、伸縮性を有するナイロンを素材とする表地と裏地との間に伸縮性及び断熱性を有するポリウレタンを挟んで、全体として3mm程度の厚さに構成されている。キャップ5は、頭部に装着されたサポータ4を被覆する。サポータ4の表面とキャップ5の内側面とを面ファスナで密着させることもできる。
【0035】
キャップ5の外表面には、ベルトループ51~56が縫着されている。ベルトループ51,52には、キャップ5を頭部に装着した使用者の下顎を経由する縦ベルト57が貫通している。ベルトループ53~56には、キャップ5を頭部に装着した使用者の額部を経由する横ベルト58が貫通している。縦ベルト57及び横ベルト58は、図示しないバックルをそれぞれ備えている。バックルに代えて、面ファスナ等の別の締結部材を用いることもできる。
【0036】
頭部に装着されたサポータ4をキャップ5によって被覆した後、縦ベルト57及び横ベルト58を締め付けることにより、頭部からのキャップ5の脱落を防止できるとともに、サポータ4を頭皮に確実に密着させることができる。縦ベルト57及び横ベルト58の内周面とキャップ5の外表面とを面ファスナで密着させることもできる。
【0037】
ただし、頭部からのキャップ5の脱落防止及びサポータ4の頭皮への密着を確実に維持できることを条件に、縦ベルト57及び横ベルト58の何れか一方又は両方を省略することもできる。
【0038】
上述のように構成された頭皮冷却帽10は、一例として、抗癌剤治療等の化学療法の副作用による脱毛を抑制するために使用される。抗癌剤による脱毛抑制のための頭皮冷却方法としては、薬剤投与開始の30分程度前から薬剤投与終了の90分程度後までの間に頭皮を冷却することが知られている。
【0039】
化学療法の副作用による脱毛を抑制するためには、頭皮全面を19℃程度に維持する必要があるが、そのために過剰に低温度にされた部材を頭皮に近接させることは使用感を損ねるだけでなく凍傷を生じる危険性がある。したがって、適切な低温度に維持された部材を頭皮の広範囲に密着させる必要がある。一方で、頭部100の形状は、使用者毎に異なる。
【0040】
第1内側部材11、第1外側部材12、第2内側部材21及び第2外側部材22のそれぞれを上記の目標温度となるように構成することで、約60分にわたって頭皮の広い範囲を均一に19℃程度に維持することができる。
【0041】
そこで、薬剤投与時間を120分とした場合の合計240分間に、頭皮冷却帽10を構成する第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3を3回交換することとし、4組の第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3を準備し、例えば、-18℃~-25℃の冷凍庫内に48時間程度収納して冷凍する。これらとともに、4枚のサポータ4を準備する。冷凍済みの各組の第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3をそれぞれ別のサポータ4内に収納し、保冷箱に保管しておく。
【0042】
第1保冷剤1における第1内側部材11は、前頭部から後頭部に沿って3つの領域111~113で折曲可能に構成されているとともに、冷凍庫に長時間収納した際にも凍結固化することなく柔軟性を有し、伸縮性を有するサポータ4内の頭皮側に配置される。第1外側部材12は、冷凍庫に長時間収納した際に凍結固化するが、前頭部から後頭部に沿って5つの領域121~125で折曲可能に構成されており、伸縮性を有するサポータ4内において第1内側部材11の外側に配置される。
【0043】
第2保冷剤2における第2内側部材21及び第2外側部材22は、冷凍庫に長時間収納した際にも凍結固化することなく柔軟性を有し、上下方向に沿って2つの領域211及び212に折曲可能に分離して構成された第2内側部材21を頭皮側にし、第2外側部材22を第2内側部材21の外側にして、伸縮性を有するサポータ4内に配置される。第3保冷剤3も第2保冷剤2と同様である。
【0044】
第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3を収納した1つ目のサポータ4を保冷箱から取り出して頭部に装着すると、第1内側部材11は、内側面の全面が、頭部100の形状に拘らず、前頭部から後頭部に至る頭皮の広い範囲の全面にサポータ4を挟んで密着するように変形する。第1外側部材12は、凍結固化した5つの領域121~125が互いに折曲可能であり、第1内側部材11が柔軟性を有することから、頭部100の形状に拘らず、前頭部から後頭部の形状に合わせて内側面を変形させた第1内側部材11の外側面に略全面が密着する。
【0045】
また、第2保冷剤2及び第3保冷剤3は、全体として柔軟性を有するとともに、第2内側部材21及び第3内側部材31は、それぞれ2つの領域211,212,311,312が互いに折曲可能であり、第2保冷剤2及び第3保冷剤3の内側面の全面が、頭部100の形状に拘らず、サポータ4を挟んで左右の側頭部の頭皮の広い範囲の全面に密着する。
【0046】
第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3を収納して頭部100に装着されたサポータ4をキャップ5によって被覆し、縦ベルト57及び横ベルト58を締め付けると、第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3の頭皮に対する密着状態が維持される。また、キャップ5の断熱性により、第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3の室温吸収による温度上昇が抑制される。
【0047】
したがって、前頭部から後頭部に至る頭皮の広い範囲の全面から熱が第1内側部材11に吸収されるとともに、第1内側部材11が第1外側部材12によって冷却され、前頭部から後頭部に至る範囲の頭皮の広い範囲の全面が均等に冷却される。また、左右の側頭部の頭皮の広い範囲の全面から熱が第2外側部材22及び第3外側部材32によって保冷された第2内側部材21及び第3内側部材31に吸収される。これらによって、頭部100全体の頭皮の広い範囲の全面が所定時間にわたって均一に冷却される。
【0048】
サポータ4及びキャップ5を頭部100に装着した後、一例として60分の所定時間が経過した時に、サポータ4及びキャップ5を頭部から外し、新たな第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3を収納した2つ目のサポータ4を保冷箱から取り出して頭部100に装着し、キャップ5で被覆して所定時間の経過を待機する。この交換作業を4つ目のサポータ4まで繰り返す。
【0049】
冷凍済みの4組の第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3のそれぞれが収納された4枚のサポータ4を予め保冷箱に保管しておくことで、所定時間毎の交換作業は、キャップ5の脱着及びサポータ4の交換のみで済み、患者自身が片手で容易かつ短時間で行うことができる。したがって、患者自身による簡単な交換作業を所定時間毎に3回行うだけで、薬剤投与開始の30分程度前から薬剤投与終了の90分程度後までの間に、ほぼ連続して頭皮を冷却することができる。
【0050】
頭部の冷却のための準備に際し、何れも偏平形状の4組の第1保冷剤1、第2保冷剤2及び第3保冷剤3のみを冷凍すればよく、これら以外の部材の冷凍を不要にして冷凍庫の容積を小型化できる。
【0051】
また、頭皮の広い範囲に保冷剤を密着させることができるようにして保冷剤を過剰な低温度にすることなく頭皮全体を均一且つ十分に冷却することができる。
【0052】
なお、頭皮冷却帽10は、抗癌剤治療等の化学療法の副作用による脱毛の抑制以外の目的にも使用できる。
【0053】
また、上記の目標温度は、頭皮冷却帽10を抗癌剤治療等の化学療法時に3回交換することを前提として設定された例に過ぎない。頭皮冷却帽10を化学療法時における別の方法や他の目的に応じて、第1内側部材11、第1外側部材12、第2内側部材21及び第2外側部材22のそれぞれの目標温度を適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0054】
1-第1保冷剤
2-第2保冷剤
3-第3保冷剤
4-サポータ
5-キャップ
10-頭皮冷却帽
11-第1内側部材
12-第1外側部材
21-第2内側部材
22-第2外側部材
31-第3内側部材
32-第3外側部材
57-縦ベルト
58-横ベルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-03-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
前頭部から頭頂部を経て後頭部に至る間に配置される矩形の第1保冷剤であって氷点下の目標温度で凍結固化しない第1保冷剤と、
左右それぞれの側頭部に配置される略半円形の第2及び第3保冷剤であって氷点下の目標温度で凍結固化しない第2及び第3保冷剤と、
伸縮性を有し、前記第1~第3保冷剤をそれぞれ出し入れ自在に収納する第1~第3収納部を備えたサポータと、
断熱性及び伸縮性を有し、頭部に装着された前記サポータを被覆するキャップと、
を備え
前記第1収納部は、前頭部から頭頂部を経て後頭部に至る間に配置される矩形を呈し、前記第2収納部及び前記第3収納部は、それぞれの短辺を前記第1収納部の左右それぞれの長辺に接続されて左右それぞれの側頭部に配置される略台形を呈し、
前記サポータは、前記第1~第3収納部に前記第1~第3保冷剤をそれぞれ収納した状態で、前記第2収納部及び前記第3収納部の長辺側の端部を前記第1収納部の長手方向の両端部に着脱自在に接合して前記第1収納部の内側に頭部を収納する凹部を有する帽子状に組上げ可能にされた頭皮冷却帽。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
この発明の頭皮冷却帽は、保冷剤、サポータ、キャップを備える。保冷剤は、前頭部から頭頂部を経て後頭部に至る間に配置される矩形の第1保冷剤であって氷点下の目標温度で凍結固化しない第1保冷剤と、左右それぞれの側頭部に配置される略半円形の第2及び第3保冷剤であって氷点下の目標温度で凍結固化しない第2及び第3保冷剤と、からなる。サポータは、伸縮性を有し、第1~第3保冷剤をそれぞれ出し入れ自在に収納する第1~第3収納部を備える。第1収納部は、前頭部から頭頂部を経て後頭部に至る間に配置される矩形を呈し、第2収納部及び前記第3収納部は、それぞれの短辺を第1収納部の左右それぞれの長辺に接続されて左右それぞれの側頭部に配置される略台形を呈している。サポータは、第2収納部及び第3収納部の長辺側の端部を第1収納部の長手方向の両端部に着脱自在に接合して第1収納部の内側に頭部を収納する凹部を有する帽子状に組上げ可能にされている。キャップは、断熱性及び伸縮性を有し、頭部に装着されたサポータを被覆する。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
前頭部から頭頂部を経て後頭部に至る間に配置される矩形の第1保冷剤であって氷点下の目標温度で凍結固化しない第1保冷剤と、
左右それぞれの側頭部に配置される略半円形の第2及び第3保冷剤であって氷点下の目標温度で凍結固化しない第2及び第3保冷剤と、
伸縮性を有し、前記第1~第3保冷剤をそれぞれ出し入れ自在に収納する第1~第3収納部を備えたサポータと、
断熱性及び伸縮性を有し、頭部に装着された前記サポータを被覆するキャップと、
を備え、
前記第1収納部は、前頭部から頭頂部を経て後頭部に至る間に配置される矩形を呈し、前記第2収納部及び前記第3収納部は、それぞれの短辺を前記第1収納部の左右それぞれの長辺に縫製によって接続されて左右それぞれの側頭部に配置される略台形を呈し、
前記サポータは、前記第1収納部の外側面における長手方向の両端部、並びに前記第2及び第3収納部のそれぞれの内側面における長辺側の両角部に面ファスナを縫着し、前記第1~第3収納部に前記第1~第3保冷剤をそれぞれ収納した状態で、前記第2収納部及び前記第3収納部のそれぞれの前記長辺側の両角部のそれぞれを前記第1収納部の長手方向の前記両端部にそれぞれ前記面ファスナを介して着脱自在に接合して前記第1収納部の内側に頭部を収納する凹部を有する帽子状に組上げ可能にされた頭皮冷却帽。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
この発明の頭皮冷却帽は、保冷剤、サポータ、キャップを備える。保冷剤は、前頭部から頭頂部を経て後頭部に至る間に配置される矩形の第1保冷剤であって氷点下の目標温度で凍結固化しない第1保冷剤と、左右それぞれの側頭部に配置される略半円形の第2及び第3保冷剤であって氷点下の目標温度で凍結固化しない第2及び第3保冷剤と、からなる。サポータは、伸縮性を有し、第1~第3保冷剤をそれぞれ出し入れ自在に収納する第1~第3収納部を備える。第1収納部は、前頭部から頭頂部を経て後頭部に至る間に配置される矩形を呈し、第2収納部及び第3収納部は、それぞれの短辺を第1収納部の左右それぞれの長辺に縫製によって接続されて左右それぞれの側頭部に配置される略台形を呈している。サポータは、第1収納部の外側面における長手方向の両端部、並びに第2及び第3収納部のそれぞれの内側面における長辺側の両角部に面ファスナを縫着し、第1~第3収納部に第1~第3保冷剤をそれぞれ収納した状態で、第2収納部及び第3収納部のそれぞれの長辺側の両角部のそれぞれを第1収納部の長手方向の両端部にそれぞれ面ファスナを介して着脱自在に接合して第1収納部の内側に頭部を収納する凹部を有する帽子状に組上げ可能にされている。キャップは、断熱性及び伸縮性を有し、頭部に装着されたサポータを被覆する。