(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100119
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】充電システム及び充電車
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20230710BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20230710BHJP
B60L 53/53 20190101ALI20230710BHJP
B60L 53/57 20190101ALI20230710BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/00 303C
H02J7/02 A
H02J7/00 301A
B60L53/53
B60L53/57
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000560
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大倉 由喜路
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA10
5G503DA07
5G503FA01
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5H125AA20
5H125AC12
5H125AC23
5H125BC24
5H125BE02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】更なる急速充電を実現できる充電システム及び充電車を提供する。
【解決手段】充電車100において、充電システム110は、交流電源300から供給される交流を直流に変換する定格出力が50kW以下の第1電力変換部6と、第1電力変換部から出力される直流を蓄電池8に供給する機能及び蓄電池から出力される直流を用いて50kWを超える直流電力を生成し接触子(パンタグラフ1、プラグ3、コネクタ5)経由で電動車に供給する機能を有する第2電力変換部7と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される交流を直流に変換する定格出力が50kW以下の第1電力変換部と、
前記第1電力変換部から出力される直流を蓄電池に供給する機能と、前記蓄電池から出力される直流を用いて50kWを超える直流電力を生成し接触子経由で電動車に供給する機能とを有する第2電力変換部と、
を備える充電システム。
【請求項2】
前記第1電力変換部は、50kWの定格出力を有する充電機である、請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記第1電力変換部は、CHAdeMO方式に対応した充電器である、請求項1に記載の充電システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の充電システムを備えた充電車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、充電システム及び充電車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行用蓄電池を搭載したEV(Electric Vehicle)バス、EVトラックなどの電動車両に電力を供給する充電車が開示されている。特許文献1の充電車は、充電対象の車両に搭載されている走行用蓄電池を充電するための二次電池と、50kW未満の定格電力を有し交流電力を供給する発電機と、当該交流電力を直流電力に変換して二次電池を充電するAC/DC(Analog-to-digital)変換器と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年では電動車両への高速充電のニーズに鑑みて、定格出力が50kWのCHAdeMO(登録商標)方式に準拠した急速充電器が広く普及している。更なる高速充電を実現するためには定格出力が50kWを超える特殊な充電器が必要になる。ただし特殊な充電器の導入には、電気主任技術者の選任、保安規程の届出などを要する場合がある。従って充電時間の更なる短縮へのニーズに対応する上で改善の余地がある。
【0005】
本開示の一態様の目的は、更なる急速充電を実現できる充電システム及び充電車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る充電システムは、交流電源から供給される交流を直流に変換する定格出力が50kW以下の第1電力変換部と、前記第1電力変換部から出力される直流を蓄電池に供給する機能と、前記蓄電池から出力される直流を用いて50kWを超える直流電力を生成し接触子経由で電動車に供給する機能とを有する第2電力変換部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係る充電車は、上記の充電システムを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、更なる急速充電を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係る充電車の構成例を示す図
【
図2】本開示の実施の形態に係る充電車と充電車の隣に駐車している電動車とを示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0011】
図1は本開示の実施の形態に係る充電車100の構成例を示す図、
図2は充電車100から電動車200に給電している状態を示す図である。
【0012】
充電車100は、電動車200に搭載されている高圧バッテリ201を急速充電する充電システム110を備えたトラック、バスなどである。充電システム110の構成の詳細は後述する。なお、充電車100は、充電システム110を搭載可能な車両であればよく、トラック及びバス以外にも、バン、ワゴン、乗用車などでもよい。
【0013】
電動車200は、少なくとも、走行用の主電動機と、当該主電動機を駆動する高圧バッテリ201とを搭載したトラック、バスなどである。なお、電動車200は、高圧バッテリ201などを搭載可能な車両であればよく、トラック及びバス以外にも、バン、ワゴン、乗用車などでもよい。
【0014】
(充電システム110)
充電システム110は、パンタグラフ1、パンタ制御部2、プラグ3、プラグ制御部4、コネクタ5、第1電力変換部6、第2電力変換部7、蓄電池8、及び交流発電機9を備えている。
【0015】
(パンタグラフ1及びパンタ制御部2)
パンタグラフ1は、電動車200の荷台に設置されている導電性の集電部202に接触することで、直流電力を電動車200に給電する接触子の一例である。パンタグラフ1は、電動車200の集電部202の相対的な位置が変わっても、集電部202の位置に追随して給電可能なように、複数のリンク、複数のリンクを連結する複数の連結軸などを有して構成されている。集電部202は、人の手が届き難い箇所、例えば荷台の天井に設置されている。
【0016】
パンタグラフ1の定格出力は例えば480kW、パンタグラフ1の定格電圧は例えばDC750Vである。パンタグラフ1はパンタ制御部2によって駆動される。パンタ制御部2は、パンタグラフ1を充電車100の荷台120から電動車200の集電部202へ移動させ、又はパンタグラフ1を電動車200の集電部202から充電車100の荷台120へ移動させる。
【0017】
具体的には、停車中の電動車200にパンタグラフ1を移動させる操作が実行されると、パンタ制御部2は、不図示のアクチュエータを駆動することで、パンタグラフ1を充電車100の荷台120から電動車200の集電部202へ移動させる。これにより、パンタグラフ1が集電部202に接触し、充電車100から電動車200への充電が可能な状態になる。
【0018】
電動車200への充電が完了した後にパンタグラフ1を格納する操作が実行されると、パンタ制御部2は、不図示のアクチュエータを駆動することにより、パンタグラフ1を電動車200の集電部202から充電車100の荷台120へ移動させる。これにより、パンタグラフ1が集電部202から離れて充電車100の荷台120に移動するため、充電車100を走行させることができる。
【0019】
(プラグ3及びプラグ制御部4)
プラグ3は、電動車200に設けられている充電口203(ジャック)に接触することで直流電力を電動車200に給電する接触子の一例である。プラグ3は、水平方向に進退移動が可能な状態で、電動車200の荷台120に収納されている。
【0020】
プラグ3の定格出力は例えば480kW、プラグ3の定格電圧は例えばDC750Vである。プラグ3はプラグ制御部4によって駆動される。プラグ制御部4は、プラグ3を充電車100から電動車200の充電口203に向かって前進させ、又はプラグ3を電動車200の充電口203から後退させる。
【0021】
具体的には、停車中の電動車200に設けられている充電口203にプラグ3を挿入する操作が実行されると、プラグ制御部4は、不図示のアクチュエータを駆動することで、プラグ3を充電車100から電動車200の充電口203に向かって前進させる。これにより、プラグ3が充電口203に挿入され、電動車200への充電が可能な状態になる。
【0022】
電動車200への充電が完了した後にプラグ3を収納する操作が実行されると、プラグ制御部4は、不図示のアクチュエータを駆動することにより、プラグ3を電動車200の充電口203から充電車100に向かって後退させる。これにより、プラグ3が充電口203から離れて充電車100に収納され、充電車100を走行させることができる。またプラグ3が雨で濡れること、プラグ3が塵埃で汚れることなどを防止できる。
【0023】
(コネクタ5)
コネクタ5は、例えばチャオジ(ChaoJi)規格に基づく雄型コネクタであり、電動車200に設けられている充電口204に接触することで直流電力を電動車200に給電する接触子の一例である。コネクタ5は、例えばロボットアームなどを利用して、電動車200の充電口204に接続される。これにより、電動車200への充電が可能な状態になる。コネクタ5の定格出力は例えば240kW、コネクタ5の定格電圧は例えばDC750Vである。
【0024】
(第1電力変換部6)
第1電力変換部6は、系統電源300または交流発電機9から供給される交流電力を最大50kWの直流電力に変換して、第2電力変換部7に出力するAC/DC変換装置である。系統電源300と交流発電機9は、本開示の実施の形態に係る交流電源の一例である。系統電源300は、例えば220Vの交流電圧を供給する商用電源などである。交流発電機9は、例えば変速機10の回転力を利用して220Vの交流電圧を発生する回転電機である。
第1電力変換部6は、
【0025】
第1電力変換部6には、例えば定格出力が50kW_(400V/125A)のCHAdeMO仕様適合の充電器が利用される。なお、第1電力変換部6は当該充電器に限定されず、定格出力が50kW以下の充電器であればよく、CHAdeMO仕様適合の充電器以外の充電器などを利用してもよい。
【0026】
ここで、電力契約が50kWを超える場合、高圧供給となるため電気主任技術者の選任、保安規程の届出が必要となる。これに対して、低圧で電力契約をしている場合、充電器の容量が50kW以下であれば、電気主任技術者の選任、保安規程の届出などが不要になる。このため、第1電力変換部6を充電システム110に導入する際の初期費用は、充電器の購入費用、充電器の取り付け費用、配線工事費用などで済む。
【0027】
また、CHAdeMO仕様適合の充電器は、日本国内の充電インフラに広く利用されているため、信頼性が高く安価に調達することができる。特に定格出力が50kW_のCHAdeMO仕様適合の充電器は、定格出力が50kW_を超えるCHAdeMO仕様適合の充電器に比べて生産台数が多いため、品質が安定しており、また大量購買による調達コストの低減も可能である。また定格出力が50kW_のCHAdeMO仕様適合の充電器は、汎用の部品で構成されているため、故障時の修繕も容易である。また、定格出力が50kW_未満(例えば20kwなど)のCHAdeMO仕様適合の充電器を利用する場合に比べて、蓄電池8への充電時間を短縮することができる。
【0028】
このため、定格出力が50kW_のCHAdeMO仕様適合の充電器を、第1電力変換部6に利用することで、電気主任技術者の選任届けなどの煩雑な手続きを経ることなく、信頼性の高い充電システム110を安価にかつ早期に構築することが可能である。従って、第1電力変換部6には、定格出力が50kW_のCHAdeMO仕様適合の充電器を用いることが好ましい。
【0029】
(第2電力変換部7)
第2電力変換部7は、例えばスイッチング回路、スイッチング回路の駆動を制御する制御回路、及びHVJB(High Voltage Junction Box)などを備えている。第2電力変換部7は、第1電力変換部6から出力される直流を昇圧して蓄電池8に供給する第1機能と、蓄電池8から出力される直流を用いて50kWを超える直流電力を生成して接触子経由で電動車200に供給する第2機能とを有するDC/DC(Direct Current to Direct Current)変換装置である。
【0030】
具体的には、第2電力変換部7は、充電車100に搭載されている蓄電池8を充電する際、第1電力変換部6が出力する直流電圧を例えば400Vから750Vに昇圧して蓄電池8に供給する。第2電力変換部7は、蓄電池8の温度をモニタしながら充電電流を制御して、蓄電池8のSOC(State Of Charge)が設定値又は100%になったとき、充電を終了する。
【0031】
また第2電力変換部7は、電動車200に搭載されている高圧バッテリ201を充電する際、蓄電池8が出力する直流を用いて、高圧バッテリ201の仕様などに対応した電力、例えば480kW(750V/640A)、240kW(750V/320A)、256kW(400V/640A)、128kW(400V/320A)などの電力を生成して、パンタグラフ1、プラグ3、又はコネクタ5を介して、電動車200に供給する。
【0032】
なお、第2電力変換部7は、上記の機能の他、充電車100の車載機器(電装品、冷凍サイクル装置など)に電力を供給するため、蓄電池8から出力される直流を用いて直流24Vの電力を生成して出力するように構成してもよい。
【0033】
(蓄電池8)
蓄電池8は、電動車200に搭載されている高圧バッテリ201の容量に見合った電力を賄うことが可能な大容量バッテリである。蓄電池8の容量は例えば240kWhである。
【0034】
(蓄電池8への充電動作)
このように構成されている充電システム110において、蓄電池8への充電を行う場合、例えば系統電源300の交流が第1電力変換部6によって直流に変換され、当該直流が第2電力変換部7によって昇圧されて蓄電池8に供給される。そして、蓄電池8のSOCが所定の値に到達したところで蓄電池8への充電が終了する。
【0035】
(高圧バッテリ201への充電動作)
例えばパンタグラフ1を利用して高圧バッテリ201への充電を行う場合、パンタグラフ1が電動車200の集電部202に接触した状態で、充電開始操作が実行されると、蓄電池8から高圧バッテリ201に直流電力が供給される。このとき、第2電力変換部7は、第1電力変換部6の定格出力を超える直流電力(例えば480kW)が電動車200に供給される。このようにして電動車200への超高速充電を行うことができる。
【0036】
以上に説明したように、本開示の実施の形態に係る充電システム110は、交流電源から供給される交流を直流に変換する定格出力が50kW以下の第1電力変換部6と、第1電力変換部6から出力される直流を蓄電池8に供給する機能と、蓄電池8から出力される直流を用いて50kWを超える直流電力を生成し接触子経由で電動車200に供給する機能とを有する第2電力変換部7とを備えている。
【0037】
この構成により、電気主任技術者の選任届けなどの煩雑な手続きを経ることなく、安価で超高速充電が可能な充電システム110を構築することが可能である。
【0038】
また当該充電システム110を備えた充電車100によれば、停車中の電動車200まで充電システム110を移動させることができるため、例えば工場の敷地内に複数の電動車200が駐車している場合でも、それぞれの電動車200を停車させたまま充電が可能になる。特に、複数の電動車200の駐車場所が広範囲に分布している場合でも、それぞれの電動車200を移動させる運転者の負担を大幅に軽減することが可能である。また、給電が完了した電動車200を再び所定の駐車場所まで移動させる手間を省くことも可能である。
【0039】
また、充電システム110の機能をバージョンアップして更なる超高速充電を実現する場合、電動車200に搭載されている第1電力変換部6、第2電力変換部7及び、これらに繋がる配線などを改修するだけで済む。このため、地上設置型の充電器を改修する場合に比べて、基礎の改修、埋設配管の改修といった工事が不要になり、更なる超高速充電のシステムを短期間でかつ安価に構築することが可能である。
【0040】
また充電車100は、移動式の非常用電源として利用することも可能である。また、不図示のインバータにコネクタ5を接続することで、充電車100から供給される直流電力を交流電力に変換することができるため、交流電力で駆動する機器(照明設備、ヒータなど)を動作させることも可能である。
【0041】
例えば、以下のような態様も本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0042】
(1)本開示の充電システムは、交流電源から供給される交流を直流に変換する定格出力が50kW以下の第1電力変換部と、前記第1電力変換部から出力される直流を蓄電池に供給する機能と、前記蓄電池から出力される直流を用いて50kWを超える直流電力を生成し接触子経由で電動車に供給する機能とを有する第2電力変換部と、を備える。
(2)前記第1電力変換部は、50kWの定格出力を有する充電機である。
(3)第1電力変換部は、CHAdeMO方式に対応した充電器である
(4)本開示の充電車は、上記の充電システムを備えている。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示の充電システム及び充電車は、更なる急速充電を実現できる技術に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 パンタグラフ
2 パンタ制御部
3 プラグ
4 プラグ制御部
5 コネクタ
6 第1電力変換部
7 第2電力変換部
8 蓄電池
9 交流発電機
10 変速機
100 充電車
110 充電システム
120 荷台
200 電動車
201 高圧バッテリ
202 集電部
203 充電口
204 充電口
300 系統電源