(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100124
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
A62B 18/08 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
A62B18/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000568
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(71)【出願人】
【識別番号】591045976
【氏名又は名称】株式会社コクゴ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】周治 愛之
(72)【発明者】
【氏名】平野 宏志
(72)【発明者】
【氏名】立原 丈二
(72)【発明者】
【氏名】庄司 博行
(72)【発明者】
【氏名】田村 健
(72)【発明者】
【氏名】南 明則
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA04
(57)【要約】
【課題】全面マスク内で対象物を保持する保持装置において、全面マスクの気密性の維持と、使用者の視界の確保とを両立する技術を提供する。
【解決手段】保持装置(10)は、磁力によって互いに引き合う第1磁性体(11)及び第2磁性体(12)と、対象物を着脱可能に保持する保持部(15)と、第2磁性体(12)から保持部(15)を吊り下げる吊下部(16)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁力によって互いに引き合う第1磁性体及び第2磁性体と、
対象物を着脱可能に保持する保持部と、
前記第2磁性体から前記保持部を吊り下げる吊下部とを備えることを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置において、
前記吊下部は、少なくとも前記第2磁性体に対する前記保持部の前後方向の位置を変更可能に構成されていることを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の保持装置において、
前記第1磁性体は、樹脂材料で形成され、軸方向の長さが直径より大きい円筒形状のホルダに収容されていることを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の保持装置において、
前記第2磁性体の前記第1磁性体に対面し得る面には、不織布が取り付けられていることを特徴とする保持装置。
【請求項5】
使用者の顔面を気密状態で覆う全面マスクの内側で対象物を保持する保持装置において、
アイピースの内面に着脱可能に取り付けられる取付部と、
対象物を着脱可能に保持する保持部と、
前記取付部から前記保持部を吊り下げる吊下部とを備えることを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全面マスク内で対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の顔面(すなわち、目、鼻、口)を気密状態で覆う全面マスクは、原子力施設、化学施設、生物施設、研究施設、医療施設、防災機関などの様々な分野で広く利用されている。このような分野では、全面マスクを装着した状態で、高い気密性に加えて、良好な視界を確保することが求められる。
【0003】
図6は、JISに基づくNaCl漏れ率測定試験の結果を示す図である。メガネを掛けた場合(“■”)と掛けない場合(“●”)とで、それぞれ9人の被験者について、全面マスク内部の気密性を示す防護係数を計測した。
図6を参照すれば明らかなように、メガネを掛けた状態で全面マスクを装着すると、メガネのテンプルが全面マスクから突出して、気密性が損なわれる。そこで、例えば特許文献1のように、テンプルのないメガネを、面体の内側に磁石で取り付けることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の保持装置は、フレームのブリッジ部分に取り付けた磁石で、アイピースに対してメガネを取り付ける構成である。そのため、この保持装置を全面マスクに採用したとすると、使用者の視野の中央に磁石が配置されて、視界を大きく遮るという課題がある。
【0006】
また、この課題は、全面マスクの内側でメガネを保持する場合に限らず、放射線量を計測するセンサを全面マスク内に取り付ける場合など、全面マスク内で任意の対象物を保持しようとする場合に、同様に生じ得る。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、全面マスク内で対象物を保持する保持装置において、全面マスクの気密性の維持と、使用者の視界の確保とを両立する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る保持装置は、磁力によって互いに引き合う第1磁性体及び第2磁性体と、対象物を着脱可能に保持する保持部と、前記第2磁性体から前記保持部を吊り下げる吊下部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、全面マスク内で対象物を保持する保持装置において、全面マスクの気密性の維持と、使用者の視界の確保とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】保持装置を取り付けた全面マスクの斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る保持装置の分解斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る保持装置の組立斜視図である。
【
図4】保持装置によってメガネが取り付けられた全面マスクを装着した状態を示す図である。
【
図5】保持装置によって放射線計測センサが取り付けられた全面マスクを装着した状態を示す図である。
【
図6】JISに基づくNaCl漏れ率測定試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、保持装置10を説明する。なお、以下に記載する本発明の実施形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲を実施形態の記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。なお、本明細書では、全面マスク1を装着する使用者の視点を基準として前後方向を定義し、全面マスク1及び保持装置10を前方側から見て左右方向を定義する。
【0012】
図1は、保持装置10を取り付けた全面マスク1の斜視図である。全面マスク1は、使用者の顔面(より詳細には、両眼、鼻、口を含む頭部の前面)を気密状態で覆うものである。
図1に示すように、全面マスク1は、接顔パッド2と、ストラップ3と、アイピース4と、吸排気ユニット5と、ノーズピース6とを主に備える。
【0013】
接顔パッド2は、使用者の両眼、鼻、口を含む領域を覆うことができる大きさの枠型の外形を呈する。また、接顔パッド2は、ウレタンゴム等の柔軟弾性材料で形成されている。ストラップ3は、接顔パッド2を使用者の頭部に固定するためのものである。アイピース4は、透明で硬質な材料(例えば、ポリカーボネート樹脂等の樹脂、ガラス)で構成されている。アイピース4は、枠型の接顔パッド2の内側に嵌め込まれる。吸排気ユニット5は、アイピース4の下部に設けられたの切り欠き部分に取り付けられる。
【0014】
吸排気ユニット5は、外気から不純物(例えば、塵埃、汚染物質)を除去して全面マスク1の内側に取り込むと共に、使用者の呼気を全面マスク1の外部に排気する。ノーズピース6は、全面マスク1の内側において、吸排気ユニット5に接続されている。
【0015】
接顔パッド2を使用者の顔面に密着させ、ストラップ3を締め込むことによって、密着部分における空気の流通が阻止される。また、アイピース4は、前後方向に所定の間隔を隔てて使用者の両眼に対面する位置に配置される。さらに、ノーズピース6は、使用者の鼻及び口を覆う。
【0016】
なお、本実施形態に係る保持装置10を取り付けるのに適した全面マスク1は、使用者の両眼を単一のアイピース4で覆う、所謂「全面一眼式」である。一方、吸排気ユニット5は、外気から不純物を除去して取り込む方式に限定されず、空気タンクから圧縮空気を取り込む方式でもよいし、ホースなどを通じて汚染区域外の外気を取り込む方式でもよい。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る保持装置10は、全面マスク1の内側でメガネ7(対象物)を保持する。より詳細には、保持装置10は、全面マスク1を装着した使用者の両眼に対面する位置に、メガネ7のレンズ8L、8Rが配置されるように、全面マスク1の内側でメガネ7を保持する。
【0018】
また、保持装置10は、使用者が全面マスク1を装着した後に、アイピース4の表面に沿ってメガネ7の位置を調整する機能を有する。さらに、保持装置10は、使用者が全面マスク1を装着する際に、使用者の両眼とレンズ8L、8Rとの前後方向の距離を調整する機能を有する。
【0019】
図2は、本実施形態に係る保持装置10の分解斜視図である。
図3は、本実施形態に係る保持装置10の組立斜視図である。
図4は、保持装置10によってメガネ7が取り付けられた全面マスク1を装着した状態を示す図である。
【0020】
図2及び
図3に示すように、保持装置10で保持するの適したメガネ7は、レンズ8L、8Rと、レンズ8L、8Rを保持するフレーム9とで構成される。フレーム9は、レンズ8L、8Rを支持するリム9L、9Rと、リム9L、9Rを接続するブリッジ9Bとで構成される。
【0021】
一方、メガネ7は、フレーム9の両端から後方に延びるテンプルを有していない。すなわち、メガネ7は、全面マスク1の内部(より詳細には、全面マスク1で気密状態にされた空間)に全体が収容可能で、全面マスク1の外部に突出する部分が存在しいない形状である。また、レンズ8L、8Rには、曇り止め加工が施されているのが望ましい。
【0022】
図2及び
図3に示すように、保持装置10は、第1磁石11(第1磁性体)と、第2磁石12(第2磁性体)と、第1ホルダ13と、第2ホルダ14と、クリップ15(保持部)と、吊下リンク16(吊下部)とを主に備える。但し、第1ホルダ13及び第2ホルダ14は、省略可能である。
【0023】
第1磁石11及び第2磁石12は、磁力によって互いに引き合う永久磁石である。第1磁石11及び第2磁石12は、アイピース4を挟んで対向配置される。より詳細には、第1磁石11はアイピース4の外面側に位置し、第2磁石12はアイピース4の内面側に位置する。なお、第1磁性体及び第2磁性体は、一方が永久磁石(硬磁性体)であれば、他方は永久磁石に近接したときだけ磁性を帯びる材料(軟磁性体)であってもよい。
【0024】
第1ホルダ13は、円筒形状の外形を呈する。また、第1ホルダ13は、軸方向の長さが直径より大きく設定されている。さらに、第1ホルダ13は、第1磁石11を収容する内部空間を有する。第1ホルダ13は、軸方向の一端が開口し且つ他端が閉塞された有底円筒形状のホルダ本体13aと、ホルダ本体13aの開口を閉塞する円盤形状の蓋体13bとで構成される。
【0025】
ホルダ本体13aは、例えば、樹脂材料で形成される。蓋体13bは、例えば、樹脂材料または不織布で形成される。そして、ホルダ本体13aの内部に第1磁石11が収容された状態で、ホルダ本体13aの開口が蓋体13bで閉塞されることによって、第1磁石11が外気(汚染雰囲気)に接するのを防止できる。また、第1磁石11を第1ホルダ13で覆うことによって、落下や衝突による衝撃から第1磁石11を保護することができる。
【0026】
第2ホルダ14は、第2磁石12を収容する内部空間を有する。第2ホルダ14は、軸方向の一端が開口し且つ他端が閉塞されたホルダ本体14aと、ホルダ本体14aの開口を閉塞する蓋体14bとで構成される。ホルダ本体14aは、例えば、樹脂材料で形成される。蓋体14bは、例えば、樹脂材料または不織布で形成される。そして、ホルダ本体14aの内部に第2磁石12が収容された状態で、ホルダ本体14aの開口が蓋体14bで閉塞される。
【0027】
クリップ15は、メガネ7を着脱可能に保持する。本実施形態では、メガネ7のブリッジ9Bがクリップ15で挟持(保持)される。但し、保持部の具体例はクリップ15に限定されず、メガネ7を係止(保持)するフックなどでもよい。
【0028】
吊下リンク16は、第2ホルダ14(第2磁石12)からクリップ15を吊り下げる。より詳細には、吊下リンク16は、上端が第2ホルダ14の下面に接続され、下端がクリップ15の上端に接続されている。
【0029】
また、吊下リンク16は、第2ホルダ14に対するクリップ15の姿勢(前後左右の位置及び回転)を変更可能に構成されている。吊下リンク16は、例えば、ロッドの一端に取り付けられた球と、球を回転可能に保持するブラケットとで構成されている。また、ブラケットは第2ホルダ14の下面に接続され、ロッドの他端はクリップ15の上端に接続されている。
【0030】
第1の姿勢変化として、前後方向及び吊下リンク16の延設方向の両方に直交する軸線周りに球が回転すると、クリップ15が前後方向に移動する(すなわち、使用者の両眼とレンズ8L、8Rとの距離が調整される)。また、第2の姿勢変化として、前後方向に延びる軸線周りに球が回転すると、クリップ15が左右方向に移動する。さらに、第3の姿勢変化として、吊下リンク16の延設方向に延びる軸線回りに球が回転すると、クリップ15がその場で回転する。
【0031】
但し、吊下部の具体的な構成は、前述の例に限定されず、例えばユニバーサルジョイントなどを採用してもよい。また、吊下部は、第1~第3の姿勢変化の全てを実現するものに限定されず、少なくとも第1の姿勢変化を実現できればよい。すなわち、吊下部は、少なくとも第2ホルダ14(第2磁石12)に対するクリップ15の前後方向の位置を変更可能に構成されていればよい。
【0032】
以下、保持装置10の使用方法を説明する。まず、クリップ15でメガネ7のブリッジ9Bを挟持する。次に、第1ホルダ13及び第2ホルダ14がアイピース4を挟んで対面するように、第1ホルダ13の蓋体13bをアイピース4の外面に当接させ、第2ホルダ14の蓋体14bをアイピース4の内面に当接させる。これにより、第1磁石11及び第2磁石12の磁力によって、第1ホルダ13及び第2ホルダ14が結合される。その結果、全面マスク1の内側でメガネ7が保持される。
【0033】
次に、全面マスク1を顔面に仮装着し、アイピース4の外面に沿って第1ホルダ13を移動させる。これにより、第2ホルダ14が第1ホルダ13に追従して、アイピース4の内面に沿って移動する。その結果、
図4(A)に示すように、使用者の両眼とレンズ8L、8Rとを対面させることができる。
【0034】
次に、全面マスク1を顔面から取り外し、吊下リンク16を操作して全面マスク1の内部でメガネ7を移動させる。これにより、
図4(B)に示すように、全面マスク1の内部でメガネ7を適切な位置に配置(主に、使用者の両眼とレンズ8L、8Rとの前後方向の距離を調整)することができる。
【0035】
次に、全面マスク1を顔面に装着して、所定の作業(例えば、放射線雰囲気下での作業)を実施する。さらに、作業中にメガネ7の位置がズレた場合は、アイピース4の外面に沿って第1ホルダ13を移動させることによって、全面マスク1を取り外すことなく、ズレを補正することができる。
【0036】
上記の実施形態によれば、テンプルのないメガネ7を全面マスク1の内側で保持することができるので、全面マスク1の気密性を維持することができると共に、メガネ7が汚染雰囲気に曝されるのを防止することができる。また、吊下リンク16で第2ホルダ14に対してクリップ15を吊下することによって、使用者の視界の中心からずれた位置に第1ホルダ13及び第2ホルダ14を配置することができる。その結果、使用者の視界を確保することができる。
【0037】
また、上記の実施形態によれば、第1磁石11及び第2磁石12で保持装置10をアイピース4の内面に取り付けるので、全面マスク1を装着した後にもメガネ7の位置を微調整することができる。すなわち、上記の実施形態によれば、全面マスク1を外さずに対象物を任意の位置に移動させることができる。但し、取付部の具体的な構成は、第1磁石11及び第2磁石12の組み合わせに限定されない。他の例として、取付部は、アイピース4の内面に吸着する吸盤であってもよい。
【0038】
なお、眼科においては、眼鏡の処方箋を作る時の角膜頂点距離は12mmを基本としている。正確に12mmでなくても見えてはいるものの、12mmより大きくなる(レンズ8L、8Rと眼が離れる)と、物が小さく見えてしまう。また、レンズ8L、8Rが眼から離れることにより、矯正される範囲が狭まくなり(レンズ8L、8Rの周辺は裸眼と同じ)、視力の補正が困難となる。
【0039】
そこで、上記の実施形態によれば、少なくとも第1の姿勢変化を実現できる吊下リンク16を採用することによって、使用者の両眼とレンズ8L、8Rとの前後方向の距離を調整することができる。これにより、使用者によって個人差のある角膜頂点距離について、最適な位置に設置できる。さらに、吊下リンク16で第2の姿勢変化及び第3の姿勢変化を実現することによって、より柔軟な位置調整が可能になる。
【0040】
また、上記の実施形態によれば、第1ホルダ13内に第1磁石11を収容することによって、第1磁石11が汚染雰囲気に曝されるのを防止することができる。また、第1ホルダ13の軸方向の長さを長くすることによって、第1ホルダ13を把持しやすくなる。その結果、アイピース4の外面に沿って第1ホルダ13を移動させることによる位置の微調整が容易になる。
【0041】
また、上記の実施形態によれば、蓋体14bを不織布で構成することによって、アイピース4の内面に沿って第2ホルダ14が移動する際に、アイピース4の内面が傷つくのを防止することができる。同様に、蓋体13bを不織布で構成することによっても、アイピース4の外面が傷つくのを防止することができる。
【0042】
但し、第1ホルダ13に第1磁石11を収容することに限定されず、第1磁石11を樹脂被膜でコーティングしてもよい。また、第2ホルダ14に第2磁石12を収容することに限定されず、第2磁石12の表面に不織布を貼付すると共に、第2磁石12に吊下リンク16を直接取り付けてもよい。
【0043】
また、上記の実施形態に係る保持装置10において、装着する製品(例えば、アイピース4の厚み、対象物の重さ)に合せて第1磁石11及び第2磁石12の磁力を任意に変更できる。また、クリップ15についても、対象物の大きさや形状に合せて、大きさや保持力を変更することができる。さらに、吊下リンク16についても、関節部分の継手用の部品を付け足すことにより、長さを調節することが可能である。
【0044】
また、上記の実施形態に係る保持装置10は、対象物を全面マスク1の内側のみならず、第1磁石11及び第2磁石12の位置を入れ替えることによって外側にも固定することが可能である。全面マスク1の内側に収まらない大きさの物、例えば、放射線防護用フェイスシールド等も、本発明により、全面マスク1の外側に簡単に固定することが可能である。
【0045】
また、上記の実施形態に係る保持装置10は、対象物(取り付けたいもの)自体に対し、直接的に磁気手段を用いることはなく、吊下リンク16によって第2磁石12から吊り下げられたクリップ15で多種多様の製品を把持するものである。したがって、対象物自体に磁石や金属を取付ける必要がなく、把持できる物であれば、全て固定可能である。また、上記の実施形態に係る保持装置10では、第1磁石11及び第2磁石12が額の位置に配置されるので、視野を阻害することもない。
【0046】
また、上記の実施形態によれば、アイピース4に接する第1磁石11及び第2磁石12の表面をシリコン等で覆っている。これにより、第1磁石11及び第2磁石12によるアイピース4の損傷を防止している。また、第1磁石11及び第2磁石12の表面をシリコン等で覆うことにより、対象物を任意の位置に移動させることが可能となる。さらに、第1磁石11及び第2磁石12全体を覆っているため、第1磁石11及び第2磁石12の落下時における破損防止、第1磁石11及び第2磁石12のコーティング材の剥がれや酸化を防止している。
【0047】
また、特許文献1の眼鏡用保持装置は、ゴーグル自体に改良を加えることなく視力矯正用レンズをゴーグル内部に保持するが、顔全面を覆うことができる防塵マスクのような透光部が顔面から離れた構造の防具では、角膜頂点距離が大きくなり十分な矯正効果が得られないばかりか、作業の安全性が著しく低下するこという不都合がある。すなわち、仮に、特許文献1の眼鏡用保持装置を全面マスク1に適用しても、本発明と同等の作用効果を得ることはできない。
【0048】
また、特許文献1の図面に示されているのはゴーグルであり、ゴーグルが多種多様とは言え、ゴーグルと眼との距離が大きく異なることはないと考えられる。一方、全面マスク1は各メーカから多くの種類が市場に出ており、製品ごとにアイピース4と眼との間隔が異なる。すなわち、上記の実施形態におけるアイピース4と眼の間の空間に適切な位置でメガネ7を把持させる機構は、非常に有効である。
【0049】
さらに、上記の実施形態では、作業によって全面マスク1の内側の湿度上昇によるメガネ7の曇りを防止するために、曇り止め加工が施されているメガネ7を挙げているが、仮に、曇り止め加工が施されていないメガネ7であっても、メガネ7用ではない、別の保持装置10に除湿剤を保持させて全面マスク1内で固定することにより、メガネ7の曇りを防止することも可能である。
【0050】
図5は、保持装置10によって放射線計測センサ20が取り付けられた全面マスク1を装着した状態を示す図である。
図5に示すように、放射線量を計測する放射線計測センサ20をクリップ15で挟持してもよい。これにより、全面マスク1の気密性を維持したまま、全面マスク1内(例えば、眼の水晶体)の放射線量を計測することができる。
【0051】
また、
図5に示すように、第1ホルダ13及び第2ホルダ14をアイピース4の隅にずらすことによって、保持装置10及び放射線計測センサ20を、使用者の視界の隅に配置することができる。これにより、使用者の視界を確保した状態で、全面マスク1内の放射線量を計測することができる。
【0052】
さらに、吊下リンク16を操作して放射線計測センサ20を後方に移動(すなわち、第1の姿勢変化)させることによって、放射線計測センサ20を使用者の眼の近傍に配置することができる。これにより、眼の水晶体の放射線量を適切に計測することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態等について説明したが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【符号の説明】
【0054】
1…全面マスク、2…接顔パッド、3…ストラップ、4…アイピース、5…吸排気ユニット、6…ノーズピース、7…メガネ、8L,8R…レンズ、9…フレーム、9B…ブリッジ、9L,9R…リム、10…保持装置、11…第1磁石、12…第2磁石、13…第1ホルダ、13a,14a…ホルダ本体、13b,14b…蓋体、14…第2ホルダ、15…クリップ、16…吊下リンク、20…放射線計測センサ