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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100128
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】楽器の譜面板支持構造
(51)【国際特許分類】
   G10C 3/00 20190101AFI20230710BHJP
   G10B 3/00 20190101ALI20230710BHJP
   G10H 1/32 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
G10C3/00 200
G10B3/00 150
G10H1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000575
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】松下 和弘
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478JJ15
(57)【要約】
【課題】譜面板を前板よりも演奏者側の位置で適切な姿勢にする。
【解決手段】譜面板20と、楽器本体101の前板16に対して譜面板20を移動可能に支持する支持機構部SL、SRと、を有する楽器の譜面板支持構造が提供される。支持機構部SL、SRは、連結片31L、31Rと前板16とを相対的に回動自在に連結する第1の回動部H1L、H1Rと、連結片31L、31Rと譜面板20とを相対的に回動自在に連結する第2の回動部H2L、H2Rとを有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
譜面板と、
楽器本体の前板に対して前記譜面板を移動可能に支持する支持機構部と、を有し、
前記支持機構部は、
前記譜面板と前記楽器本体とを連結するための連結部と、
前記連結部と前記前板とを相対的に回動自在に連結する第1の回動部と、
前記連結部と前記譜面板とを相対的に回動自在に連結する第2の回動部と、
を有する、楽器の譜面板支持構造。
【請求項2】
前記譜面板は、前記前板および前記譜面板に対する前記連結部の相対的な回動によって、少なくとも、初期位置である第1位置と、主として譜面置きとして使用する第2位置と、に移動可能であり、
前記第2位置で前記譜面板の移動を規制する移動規制部を有する、請求項1に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項3】
前記第1位置においては、前記第1の回動部の回動中心と前記第2の回動部の回動中心とは上下方向に並び、前記第2位置においては、前記第1の回動部の回動中心よりも前記第2の回動部の回動中心の方が前後方向において前側に位置する、請求項2に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項4】
左右方向から見て、前記第2位置における前記譜面板の前面の延長線に対し、前記楽器本体の天板の前端が一致するかまたは突出しない、請求項2または3に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項5】
ガイド溝を有し、前記楽器本体に固定されたガイド部と、
前記譜面板に一端が固定され且つ他端が前記ガイド溝と係わり合う支持棒と、を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項6】
前記移動規制部は、
ガイド溝を有し、前記楽器本体に固定されたガイド部と、
前記譜面板に一端が固定され且つ他端が前記ガイド溝と係わり合う支持棒と、を含み、
前記ガイド溝の途中に引っ掛かり部が設けられ、
前記支持棒の前記他端が前記引っ掛かり部に引っ掛かることで、前記第2位置で前記譜面板の移動が規制される、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項7】
前記ガイド部および前記支持棒は、前記楽器本体の左右方向における中央に1組設けられる、請求項5または6に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項8】
前記第1の回動部の回動中心と前記第2の回動部の回動中心とがとり得る最長距離は、前記譜面板の厚みよりも長い、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項9】
前記支持機構部は、前記前板における下端よりも上端に近い位置と前記譜面板における下端よりも上端に近い位置とを連結する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項10】
前記第1の回動部および前記第2の回動部はトルクヒンジ部を含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項11】
前記第1の回動部および前記第2の回動部はトルクヒンジ部を含み、
前記譜面板は、前記前板および前記譜面板に対する前記連結部の相対的な回動によって、少なくとも、初期位置である第1位置と、主として譜面置きとして使用する第2位置と、に移動可能であり、
前記前板および前記譜面板に対して前記連結部を相対的に回動させる力に対して前記第1の回動部および前記第2の回動部が抗力を発生させることによって、前記第2位置で前記譜面板の移動が規制される、請求項1に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の楽器の譜面板支持構造を備える、楽器。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器の譜面板支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、譜面を支持する譜面板支持構造として、ピアノなどの楽器に適用されるものが知られている。例えば、特許文献1、2、3では、楽器本体の天板に対して譜面板が回動し、立設または倒設される。譜面板が回動する際、天板等に設けたガイド溝を、譜面板に設けた棒状部材の先端部が移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-181905号公報
【特許文献2】特開平6-237825号公報
【特許文献3】特許5212083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2、3に開示される譜面板支持構造が適用されるのは、いずれもグランドピアノであり、アップライト型等の他の形態の楽器への適用を想定していない。
【0005】
本発明の一つの目的は、譜面板を前板よりも演奏者側の位置で適切な姿勢にすることができる楽器の譜面板支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態によれば、譜面板と、楽器本体の前板に対して前記譜面板を移動可能に支持する支持機構部と、を有し、前記支持機構部は、前記譜面板と前記楽器本体とを連結するための連結部と、前記連結部と前記前板とを相対的に回動自在に連結する第1の回動部と、前記連結部と前記譜面板とを相対的に回動自在に連結する第2の回動部と、
を有する、楽器の譜面板支持構造が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一形態によれば、譜面板を前板よりも演奏者側の位置で適切な姿勢にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】譜面板支持構造が適用される楽器の斜視図である。
図2】楽器の正面図である。
図3】譜面板およびその周辺構成を示す上面図である。
図4】ガイド部の斜視図である。
図5】前板に譜面板を支持させるための機構の斜視図である。
図6図3のA-A線に沿う楽器の部分断面図である。
図7図3のA-A線に沿う楽器の部分断面図である。
図8図3のA-A線に沿う楽器の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態に係る譜面板支持構造が適用される楽器の斜視図である。この楽器100は、アップライト型の楽器であり、例えば、電子アップライトピアノである。楽器100は楽器本体101および鍵盤蓋14を有し、不図示の鍵盤部が鍵盤蓋14によって覆われている。以降、楽器100の左右方向については、演奏者から見た方向を基準とし、前後方向については演奏者側を前側とする。
【0011】
楽器本体101は、天板12、前板16、左側の側板11Lおよび右側の側板11R、左側の化粧板13Lおよび右側の化粧板13Rを有する。天板12は側板11Lの上端から側板11Rの上端に亘って設けられる。前板16は、側板11Lの前部と側板11Rの前部との間に配置される。また、楽器本体101に対して譜面板20が移動可能に設けられる。譜面板20には、譜面や電子パッドなどを支持可能である。以降、譜面板20に支持される譜面や電子パッドなどを総称して譜面等15と記す。図1では、支持される譜面等15として電子パッドが表されている。譜面板20は、背板21、譜面受け22および複数の譜面押さえ23を有する。譜面受け22は譜面等15の下端を支え、背板21は譜面等15の背面を支える。
【0012】
図2は、楽器100の正面図である。図3は、譜面板20およびその周辺構成を示す上面図である。図3では、前板16、譜面板20、化粧板13L、13Rのほか、ガイド部60などが表されている。化粧板13Lおよび化粧板13Rは前板16の前面に接着等で固定されている。左右方向において譜面板20は化粧板13Lと化粧板13Rとの間に位置する。
【0013】
演奏者は、譜面押さえ23を起立させたり、後方に倒したりすることができる。譜面押さえ23を起立させることで、譜面受け22に載せられた譜面等15の下端が前方にずれないように保持することができる。また、楽器100は、前板16に譜面板20を支持させるための機構200を有する。
【0014】
図4は、ガイド部60の斜視図である。図5は、機構200の斜視図である。図6図8は、図3のA-A線に沿う楽器100の部分断面図である。
【0015】
図4に示すように、ガイド部60は中空部60aを有する箱形に構成され、前板16に固定される。ガイド部60は、フランジ部61、62、63、64を有し、これらフランジ部61、62、63、64に締結用穴65が形成されている。前板16には、中空部60aに対応する穴16aが形成されている(図6図8参照)。中空部60aと穴16aとが一致するように、前板16の背面にフランジ部61~64が突き当てられた状態で、締結用穴65を介してネジによってフランジ部61~64が前板16の背面に締結されている。このことにより、中空部60aと穴16aとが繋がった状態で、ガイド部60が前板16に固定されている。
【0016】
中空部60aには、一対の溝部材66L、66Rが設けられている。溝部材66L、6Rには、一対のガイド溝67が形成されている(溝部材66Lのガイド溝67のみ図示)(図6図8も参照)。溝部材66Lのガイド溝67と溝部材66Rのガイド溝67とは左右対称であり、互いに向き合っている。
【0017】
図6図8に示すように、譜面板20の背板21における下部に近い位置には支持棒24が固定されている。支持棒24の一端24aが譜面板20の背板21の裏面にネジで固定され、支持棒24の他端24bが穴16aを貫通してガイド部60の中空部60aに挿入されている。他端24bには、左右方向に突出したピン25が固定されている(図3も参照)。ピン25の左右の先端が、溝部材66L、66Rのガイド溝67に係わり合うように配置されている。なお、天板12の下方にはスピーカ26が配置されている。
【0018】
図5に示すように、機構200は、左側の支持機構部SLと、右側の支持機構部SRと、支持機構部SLと支持機構部SRとを接続するブリッジ部34とから構成される。機構200によって、譜面板20は前板16に対して、少なくとも、初期位置である収納位置(第1位置)と、主として譜面置きとして使用する主使用位置(第2位置)と、に移動可能である。図2図3図6では譜面板20が収納位置にあり、図1図7では譜面板20が主使用位置にある。
【0019】
支持機構部SLは次のように構成される。支持機構部SLは、前板取付部40Lと連結金具30Lと譜面板取付部50Lとを含む。これらはいずれも金属製の板状部材である。前板取付部40Lは取り付け片41Lと前板側回動軸部42Lとを含む。連結金具30L(連結部)は連結片31Lと前板側軸受け部32Lと譜面板側軸受け部33Lとを含む。譜面板取付部50Lは取り付け片51Lと譜面板側回動軸部52Lとを含む。
【0020】
前板側回動軸部42Lと前板側軸受け部32Lとが蝶番構造を構成するように接続されることで、第1の回動部H1Lが構成される。従って、第1の回動部H1Lの回動中心C1Lを中心として、取り付け片41Lと連結片31Lとが相対的に回動自在になっている。
【0021】
譜面板側回動軸部52Lと譜面板側軸受け部33Lとが蝶番構造を構成するように接続されることで、第2の回動部H2Lが構成される。従って、第2の回動部H2Lの回動中心C2Lを中心として、取り付け片51Lと連結片31Lとが相対的に回動自在になっている。
【0022】
支持機構部SRは支持機構部SLに対して左右対称に同様に構成される。従って、前板取付部40R、取り付け片41R、前板側回動軸部42R、譜面板取付部50R、取り付け片51R、譜面板側回動軸部52Rは、それぞれ、前板取付部40L、取り付け片41L、前板側回動軸部42L、譜面板取付部50L、取り付け片51L、譜面板側回動軸部52Lと同様に構成される。また、連結金具30R、連結片31R(連結部)、前板側軸受け部32R、譜面板側軸受け部33Rは、それぞれ、連結金具30L、連結片31L、前板側軸受け部32L、譜面板側軸受け部33Lと同様に構成される。
【0023】
支持機構部SRにおいては、前板側回動軸部42Rと前板側軸受け部32Rとによって第1の回動部H1Rが構成される。従って、第1の回動部H1Rの回動中心C1Rを中心として、取り付け片41Rと連結片31Rとが相対的に回動自在になっている。また、譜面板側回動軸部52Rと譜面板側軸受け部33Rとによって第2の回動部H2Rが構成される。第2の回動部H2Rの回動中心C2Rを中心として、取り付け片51Rと連結片31Rとが相対的に回動自在になっている。
【0024】
ブリッジ部34の左右の端部に連結片31Lと連結片31Rとが固定されている。連結片31Lと連結片31Rとは平行である。従って、回動中心C1Lと回動中心C1Rとは同一直線上にあり、回動中心C2Lと回動中心C2Rとは同一直線上にある。回動中心C1L、C1Rと回動中心C2L、C2Rとは互いに平行である。なお、各回動部を構成する回動軸部と軸受け部との関係は、上記例示したものとは逆であってもよい。
【0025】
支持機構部SL、SRは協働して、前板16に対して譜面板20を移動可能に支持する。支持機構部SLと支持機構部SRとで、譜面板20および前板16に対する取り付けの態様は共通する。
【0026】
図7図8に示すように、取り付け片41Lが前板16の前面にネジで固定される。同様に、取り付け片41Rも前板16の前面にネジで固定される。従って、第1の回動部H1L、H1Rは、連結片31L、31Rと前板16とを相対的に回動自在に連結する。また、取り付け片51Lが譜面板20の背板21の裏面にネジで固定される。同様に、取り付け片51Rも背板21の裏面にネジで固定される。従って、第2の回動部H2L、H2Rは、連結片31L、31Rと譜面板20とを相対的に回動自在に連結する。前板16および譜面板20に対する連結片31L、31Rの相対的な回動によって、譜面板20は、収納位置および主使用位置を含む複数の位置に移動可能であり、その姿勢を変化させることができる。
【0027】
図8等に示すように、ガイド溝67は、閉ループを形成するように構成される。ガイド溝67の後部には、弾性片69が設けられている。弾性片69は、支持棒24のピン25を上方向にだけ通過させる。従って、ピン25は、ガイド溝67が形成する閉ループを図8の反時計方向に移動する。ガイド溝67における上側経路の溝部の途中には、下方に落ち込んだ引っ掛かり部68が設けられている。
【0028】
譜面板20の移動行程について説明する。
【0029】
まず、収納位置(図6)においては、ピン25は、ガイド溝67の最後部に位置する。第1の回動部H1L、H1Rの各回動中心C1L、C1Rと第2の回動部H2L、H2Rの各回動中心C2L、C2Rとは上下方向に並ぶ。譜面板20の背板21は上下方向(鉛直方向)と平行になり且つ、背板21の背面が前板16の前面と平行になっている。背板21は、左右方向において化粧板13Lと化粧板13Rとの間に収まっている。背板21の背面は、前板16の前面に対して前側から対向している。背板21の前面21aは側板11L、11Rに対して前方へ突出していない。
【0030】
収納位置から、演奏者が譜面板20の下部などを持って譜面板20を手前に引くと、第1の回動部H1L、H1Rでの回動および第2の回動部H2L、H2Rでの回動によって、譜面板20が回動を伴って前方に移動する。その際、ピン25は、ガイド溝67の上側経路(ガイド溝67の最後部から弾性片69の上側を経由して前板16側に向かう経路)を辿り、譜面板20の姿勢はピン25の位置に依存して変化する。
【0031】
やがて、ピン25が引っ掛かり部68付近に達すると、譜面板20の自重によってピン25が引っ掛かり部68に落ち込んで止まる。図7に示すように、ピン25が引っ掛かり部68に引っ掛かることで、主使用位置で譜面板20の移動が規制される。従って、手を離したとしても、譜面板20の姿勢は変わらずに安定する。
【0032】
主使用位置から、演奏者が譜面板20の下部などを持って譜面板20をさらに手前に引くと、譜面板20は回動を伴ってさらに前方に移動する。図8に示すように、ピン25がガイド溝67の最前部に達すると、譜面板20はそれ以上前方へ移動できない。この状態から演奏者が譜面板20を手前へ引く力を弱めるかまたは譜面板20から手を離すと、譜面板20は自重によって回動を伴って後方に移動する。その際、ピン25はガイド溝67の下側経路(ガイド溝67の最前部から弾性片69の下側に向かう経路)を辿る。やがて、ピン25は弾性片69を上方へ通過して、ガイド溝67の最後部に達し、譜面板20は収納位置に復帰する(図6)。
【0033】
主使用位置(図7)では、譜面板20は、下部だけでなく上部も化粧板13L、13Rから前方へせり出している。従って、収納位置に比べて、背板21が全体的に演奏者側に近づく。これは、主使用位置においては、第1の回動部H1L、H1Rの各回動中心C1L、C1Rよりも第2の回動部H2L、H2Rの各回動中心C2L、C2Rの方が前後方向において前側に位置することで実現されている。仮に、譜面板20の上部が単一の回動部によって前板16に連結される構成であったならば、譜面板20の下部が単純に手前に回動するだけであり、背板21の上部の位置はあまり変わらず、演奏者に対して近くならない。本実施の形態では、主使用位置で譜面板20が演奏者に近くなるので、譜面等15が見やすくなっている。
【0034】
なお、図8に示すように、第1の回動部H1L、H1Rの回動中心C1L、C1Rと第2の回動部H2L、H2Rの回動中心C2L、C2Rとがとり得る最長距離L2を、譜面板20の厚みB1よりも長くすることで、譜面板20がせり出す量を十分に確保することが容易となる。
【0035】
また、主使用位置(図7)においては、左右方向から見て、譜面板20の背板21の前面21aの延長線L1に対し、天板12の前端12aが一致するかまたは突出しないよう設計されている。従って、上下方向に長い譜面等15であっても天板12が邪魔にならず、安定して保持することができる。
【0036】
また、主使用位置において譜面板20は下端の方が上端よりも前方へ多くせり出しており、適切な角度で譜面等15を置くことができる。このように、主使用位置において譜面板20を適切な角度に保持するためには、支持機構部SL、SRは、前板16における下端よりも上端に近い位置と譜面板20における下端よりも上端に近い位置とを連結するのが望ましい。
【0037】
本実施の形態によれば、支持機構部SL、SRは、楽器本体101の前板16に対して譜面板20を移動可能に支持する。支持機構部SL、SRにおいて、第1の回動部H1L、H1Rは、連結片31L、31Rと前板16とを相対的に回動自在に連結し、第2の回動部H2L、H2Rは、連結片31L、31Rと譜面板20とを相対的に回動自在に連結する。譜面板20と前板16とが、前板16側の第1の回動部および譜面板20側の第2の回動部という2つの回動部を介して連結されるので、譜面板20を前板16よりも演奏者側の位置で適切な姿勢にすることができる。
【0038】
また、ピン25が引っ掛かり部68に引っ掛かることで、主使用位置で譜面板20が止まる。すなわち、引っ掛かり部68が、主使用位置で譜面板20の移動を規制する移動規制部の役割を果たすので、主使用位置での使用時に譜面板20を適切な姿勢で安定維持することができる。
【0039】
また、収納位置(図6)においては、第1の回動部H1L、H1Rの各回動中心C1L、C1Rと第2の回動部H2L、H2Rの各回動中心C2L、C2Rとは上下方向に並ぶので、譜面板20の背板21を化粧板13L、13R間に収めることができる。一方、主使用位置においては、第1の回動部H1L、H1Rの各回動中心C1L、C1Rよりも第2の回動部H2L、H2Rの各回動中心C2L、C2Rの方が前後方向において前側に位置する。従って、使用時には譜面板20を前方へ大きくせり出させて譜面等15を演奏者に近くすることができる。
【0040】
また、主使用位置(図7)においては、左右方向から見て、譜面板20の背板21の前面21aの延長線L1に対し、天板12の前端12aが一致するかまたは突出しない。従って、上下方向に長い譜面等15であっても安定して保持することができる。
【0041】
また、支持棒24のピン25がガイド溝67と係わり合うので、譜面板20の姿勢の可変を円滑にすることができる。また、ガイド部60および支持棒24は、楽器本体101の左右方向における中央に1組設けられる(図3)。このことによっても、譜面板20の姿勢可変を円滑にすることができる。
【0042】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。例えば、以下のような変形例を採用してもよい。
【0043】
まず、第1の回動部H1L、H1R、第2の回動部H2L、H2Rはそれぞれ、取り付け片41L、41Rを介して前板16、譜面板20に固定されたが、これらの回動部は前板16、譜面板20に直接固定されてもよい。その場合は、回動部H1L、H1R、H2L、H2R、および連結片31L、31Rで、支持機構部SL、SRが構成される。
【0044】
なお、支持機構部SL、SRは、前板16側の回動部と譜面板20側の回動部の2つを有したが、3つ以上の回動部を有してもよい。すなわち、前板16と譜面板20とが3つ以上の回動部を介して連結されてもよい。例えば、連結片31Lを例にとれば、2つの片が第3の回動部で連結されることで連結片31Lに相当する部分が構成されてもよい。このようにすれば、ピン25が引っ掛かり部68に引っ掛かった状態であっても、譜面板20の姿勢(傾斜角度)を多彩に選択することができる。なお、この構成において、主使用位置で譜面板20が前方へせり出す量を十分に確保するためには、前板16側の回動部の回動中心と譜面板20側の回動部の回動中心とがとり得る最長距離L2を、譜面板20の厚みB1よりも長くすればよい。
【0045】
なお、回動部H1L、H1R、H2L、H2Rを、トルクヒンジ部を含む構成としてもよい。すなわち、各回動部に、前板16または譜面板20に対して連結片31L、31Rを相対的に回動させる力に対して抗力を発生させるトルクヒンジ機能を持たせてもよい。特に、抗力の大きさを適切に設定すれば、任意の位置・姿勢で譜面板20の移動を規制することができ、譜面板20の停止が維持された位置を、譜面置きとして使用する使用位置とすることができる。つまり、ピン25が引っ掛かり部68に位置しない状態でも、譜面板20に譜面等15を置いて使用することが可能となる。
【0046】
さらには、上記抗力の大きさを大きくし、適切に設定すれば、ガイド部60および支持棒24を設けなくても譜面板20を任意の位置・姿勢に維持することが可能となり、譜面板20の位置・姿勢を一層多彩に選択することができる。この観点では、トルクヒンジ部が、使用位置で譜面板20の移動を規制する移動規制部としての役割を果たす。
【0047】
なお、トルクヒンジ部を有しない場合の移動規制部の他の例として、例えば、引っ掛かり部68に代えて、起立操作可能な支柱を前板16または譜面板20に設け、前板16に対して譜面板20を支柱で支えるようにしてもよい。
【0048】
なお、本実施の形態では、支持機構部SL、SRの2つを設けたが、支持機構部は1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0049】
なお、本発明が適用される楽器100は、ピアノや鍵盤楽器に限定されない。また、電子楽器に限定されない。
【符号の説明】
【0050】
16 前板、 20 譜面板、 31L、31R 連結片、 100 楽器、 101 楽器本体、 SL、SR 支持機構部、 H1L、H1R 第1の回動部、 H2L、H2R 第2の回動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8