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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100131
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20230710BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20230710BHJP
   A61M 25/098 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A61M25/10 530
A61M25/14 512
A61M25/098
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000582
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】村木 康宏
(72)【発明者】
【氏名】永田 達也
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267BB02
4C267BB09
4C267BB10
4C267BB12
4C267BB16
4C267BB40
4C267BB43
4C267BB45
4C267CC08
4C267FF01
4C267GG34
4C267HH11
(57)【要約】
【課題】
超音波エコー下においてバルーンの位置を正確に把握可能であるバルーンカテーテルを提供するとともに、さらに、X線透視下においても、バルーンの位置を正確に把握することが可能なバルーンカテーテルをも提供する。
【解決手段】
本発明にかかるカテーテル100は、インナーシャフト20と、インナーシャフト20の外周に設けられるバルーン50と、を備え、インナーシャフト20は、略中心に形成されたガイドワイヤ等の医療器具を通過させるメインルーメン10と、メインルーメン10の外周に長手方向に形成された空気層からなるサブルーメン23が円周方向に複数形成されてなることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーシャフトと、
前記インナーシャフトの外周に設けられるバルーンと、
を備えたバルーンカテーテルにおいて、
前記インナーシャフトは、略中心に形成された医療器具を通過させるメインルーメンと、
前記メインルーメンの外周に長手方向に形成された空気層からなるサブルーメンが円周方向に複数形成されてなることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記インナーシャフトは、基端端にコネクタを備え、
前記サブルーメンは、前記コネクタを介して空気を注入可能であることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記サブルーメンの一部を閉塞させて、空気の層の体積を小さくした縮小部分又は閉塞させた閉塞部分を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記縮小部分又は前記閉塞部分は、外周を圧縮させて形成されており、
前記縮小部分又は前記閉塞部分の外周には、インナーシャフトの外周と略同一となるように、平板状又はコイル状のX線不透過マーカーが取り付けてあることを特徴とする請求項3に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル治療は、従来、生体内でのカテーテルの位置を把握し、目的部位までカテーテルを到達させるため、血管撮影装置を使用したX線透視下での治療が主流であった。しかし、血管撮影装置は、大型であり、設置される場所が限られることから、治療できる場所が限られてしまうという問題があった。また、治療を受ける患者に加え、医療従事者への放射線の被爆が問題となっていた。
【0003】
そこで、このような問題に対して、超音波エコー装置によるエコーガイド下でのカテーテル治療が増えてきている。しかし、多くのカテーテルに使用されているプラスチック材料は、超音波視認性が不十分であることから、超音波エコー下でカテーテルの位置を把握することは非常に困難であるという問題があった。
【0004】
超音波エコー下における視認性を確保する解決策として、気体の音響インピーダンスが、固体及び人組織に対して大きく異なっているという性質に基づき、気体/固体界面でのインピーダンスの急な変化を利用したものがある。例えば、カテーテルの気質又はコーティングにガスポケット、空洞、孔又は気体を含有するチャンネル又は表面に空気を保持するための微小な表面構造を有するものがある。
【0005】
例えば、エコージェニックマーキングを有する医療デバイスであって、前記医療デバイスは、チューブ状の形状を有する可撓性要素を備え、前記可撓性要素は、外側ポリマー層と、1以上の内側ポリマー層とを備え、少なくとも前記外側ポリマー層は、非常に滑らかな表面を有し、前記医療デバイスは、前記外側ポリマー層が、レーザー光線に対して透過性であり、いずれかの内側ポリマー層が、レーザー吸収剤の形態でレーザー添加剤を含み、前記エコージェニックマーキングが、レーザー光線の作用下で前記レーザー添加剤によって生成される、前記内側ポリマー層中の閉じた空洞又は泡によって形成されていることを特徴とするものが提案されている(特許文献1)。
【0006】
かかる医療デバイスは、改善された超音波視認性と非常に滑らかな表面とを有する医療デバイスを提供し、医療デバイスの超音波視認性を向上させるものとして有効な発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-203076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、超音波エコー下においてバルーンの位置を正確に把握可能であるバルーンカテーテルを提供するとともに、さらに、X線透視下においても、バルーンの位置を正確に把握することが可能なバルーンカテーテルをも提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0010】
本発明にかかるバルーンカテーテルは、
インナーシャフトと、
前記インナーシャフトの外周に設けられるバルーンと、
を備えたバルーンカテーテルにおいて、
前記インナーシャフトは、略中心に形成された医療器具を通過させるメインルーメンと、
前記メインルーメンの外周に長手方向に形成された空気層からなるサブルーメンが円周方向に複数形成されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明にかかるバルーンカテーテルは、ガイドワイヤやステント等を通過させるメインルーメンの周囲に長手方向に伸びた空気層を形成するサブルーメンが形成されている。このサブルーメン内の空気によって、超音波エコー下において視認しやすくすることができる。また、このサブルーメンは円周方向に複数形成されているため、バルーンカテーテルのいずれの方向からでも視認することができる。
【0012】
また、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、
前記インナーシャフトは、基端端にコネクタを備え、
前記サブルーメンは、前記コネクタを介して空気を注入可能であることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
サブルーメンに空気を積極的に注入可能とすることで、サブルーメンが潰れて空気層の体積が小さくなったり、なくなったりすることを防止することができる。また、サブルーメンに積極的に空気を注入可能とすることで、サブルーメンを形成する外周部を柔軟な素材にすることができ、挿入時は、サブルーメン形成部分が巻回された状態で、細いシャフトとし、挿入した後に空気を注入することで、サブルーメンを管腔内で形成することができる。
【0014】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、
前記サブルーメンの一部を閉塞させて、空気の層の体積を小さくした縮小部分又は閉塞させた閉塞部分を有することを特徴とするものであってもよい。
【0015】
空気の層の体積を変化させることによって、超音波エコーによる画像に差異が表れ、視認性に強弱が現れるためバルーンカテーテルの位置を正確に把握することができるようになる。
【0016】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、
前記縮小部分又は前記閉塞部分は、外周を圧縮させて形成されており、
前記縮小部分又は前記閉塞部分の外周には、インナーシャフトの外周と略同一となるように、平板状又はコイル状のX線不透過マーカーが取り付けてあることを特徴とするものであってもよい。
【0017】
縮小部分又は閉塞部分は、インナーシャフトの外周を圧縮させて作製し、この圧縮された部分に圧縮させていない部分の外周とほぼ同様の外周となるようにX線不透過マーカーを設けたものである。かかる構成を採用することによって、X線不透過マーカーの肉厚を薄くすることなく、かつ、インナーシャフトの外周に設けられる段差を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるカテーテルによれば、超音波エコー下においてバルーンの位置を正確に把握可能であるバルーンカテーテルを提供するとともに、さらに、X線透視下においても、バルーンの位置を正確に把握することが可能なバルーンカテーテルをも提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100の側面図である。
図2図2は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100のA-A拡大断面図及びB-B拡大断面図である。
図3図3は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100のサブルーメン23の断面の形態のバリエーションを示す断面図である。
図4図4は、実施形態にかかるインナーシャフト20の縮小部分23a又は閉塞部分23bを表す断面図である。
図5図5は、本発明に係るインナーシャフト20にX線不透過マーカー70を巻回した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明にかかるバルーンカテーテル100の実施形態について、図を参照しつつ詳細に説明する。図1は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100の側面図である。図2は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100のA-A拡大断面図である。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、説明の便宜のため、特許請求の範囲及び明細書において、「基端側」及び「先端側」とは、バルーンカテーテル100に対して、図1に示す手元側(カテーテルコネクタ側)を「基端側」といい、遠位端側を「先端側」という。
【0021】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるバルーンカテーテル100は、図1に示すように、主として、シャフト10、バルーン50およびコネクタ80と、を備えている。
【0022】
シャフト10は、図2に示すように、断面中央に形成されるメインルーメン21と、メインルーメン21の外周に配置され、複数の長手方向に長い空洞で形成されるサブルーメン23と、を備えたインナーシャフト20と、このインナーシャフト20の外周に配置される管状部材であって、インナーシャフト20との間にバルーン50を膨らますための流体を流すバルーン拡張流体用ルーメン45を形成する拡張流体用チューブ40と、を備えている。
【0023】
インナーシャフト20は、生体適合性のある樹脂で作製されており、メインルーメン21を形成するチューブには、長手方向の連通する空洞に形成されたサブルーメン23が複数設けられている。メインルーメン21は、主としてガイドワイヤや、種々の治療に使用されるステント等の医療機具等が挿入されるルーメンである。サブルーメン23は、インナーシャフト20の外周に複数形成されており、基端側から先端近傍まで設けられている。サブルーメン23は、空気層を形成する空洞として機能し、サブルーメン23に充填される空気によって超音波エコーの視認性を高めることができる。サブルーメン23の断面形態は、図2に示すような扇面形に加え、図3A図3Bに示すような弓状、図3Cに示すような円形等、特に限定するものではない。また、サブルーメン23の数も特に限定するものではない。好ましくは、全周に渡って、等間隔となるように配置することが好ましい。なお、バルーン50内のインナーシャフト20の外周には、高圧がかかりやすいので、サブルーメン23の断面は、図3Cのような円形又は図3Bのようにサブルーメンの端面がR形状又は曲線状になっていることが好ましい。また、サブルーメンの数及び大きさは、数が多く断面が小さい方が圧力に対する潰れに強いので、少なくとも4個以上、好ましくは8個以上12個以下であることが好ましい。
【0024】
拡張流体用チューブ40は、インナーシャフト20の外周側に配置されて、インナーシャフト20との間にバルーン拡張流体用ルーメン45を形成するためのチューブであり、バルーン拡張流体用ルーメン45が、シャフト10の先端側に設けられるバルーン50の内側と連通するように設けられる。したがって、後述するコネクタ80からバルーン拡張流体用ルーメン45にバルーン拡張流体を注入することによって、バルーン拡張流体は、バルーン拡張流体用ルーメン45を介してバルーン50に注入され、バルーン50を拡張することができる。
【0025】
バルーン50は、従来、バルーンカテーテルで使用されている既知のバルーンを適宜使用することができる。
【0026】
コネクタ80も、従来から使用されている既知のコネクタを使用することができる。好ましくは、図1に示すように、メインルーメン21、サブルーメン23及びバルーン拡張流体用ルーメン45にそれぞれ連通する3つのコネクタ開口80a、80b、80cを有するものを使用することが好ましい。
【0027】
インナーシャフト20に形成されるサブルーメン23のうち、バルーン50内に配置されるサブルーメン23には、図4に示すように、部分的にサブルーメン23の断面を小さくした縮小部分23a又は完全に閉塞した閉塞部分23bを設けるとよい。これにより、バルーン50内でのインナーシャフト20の超音波エコー下での視認性に強弱を設けることができ、バルーン50の正確な位置を超音波エコー下で認識することができる。サブルーメン23の縮小部分23a又は閉塞部分23bを設ける方法としては、縮小部分23a又は閉塞部分23bを設けたい部分に閉塞用の材料を流し込んで閉塞させてもよいし、図4に示すように、インナーシャフト20を熱により溶融又は柔らかくした状態で外周から圧力を加えてサブルーメン23を潰すようにして形成してもよい。
【0028】
また、本発明においては、インナーシャフト20に形成されるサブルーメン23のうち、バルーン50内に配置されるサブルーメン23に、X線不透過マーカー70を設けても良い。X線不透過マーカー70を設けることによって、先述したサブルーメン23による超音波エコー下での視認性に加え、X線透視下においてもX線不透過マーカー70を確認することでバルーン50の位置を正確に認識することができる。この際に、X線透視下での治療の視認性を向上させるためには、インナーシャフト20に取り付けられるX線不透過マーカー70の肉厚を厚くする必要がある。しかしながら、厚肉のX線不透過マーカー70をインナーシャフト20に巻きつけるとインナーシャフト20の外周と、X線不透過マーカー70との外周との差によって大きな段差が発生する。バルーンカテーテル100のバルーン50内にX線不透過マーカー70が配置される場合、インナーシャフト20とX線不透過マーカー70との段差が大きくなるとバルーン50を損傷させる可能性がある。しかし、X線不透過マーカー70の肉厚を薄くするとX線透視下での視認性が悪くなるという問題がある。そこで、インナーシャフト20の外側から内側に向かって圧力をかけてサブルーメン23を潰して形成した縮小部分23a又は閉塞部分23bには、図4に示すように、インナーシャフト20の外周部分に凹部25が形成される。図5に示すように、かかる凹部25にX線不透過マーカー70を埋没するように取り付けることで、X線不透過マーカー70の厚さを保持したまま、インナーシャフト20との段差を小さくすることができる。この際に、X線不透過マーカー70の外周と、インナーシャフト20の外周が略同一となるように形成するとよい。これにより、インナーシャフト20とX線不透過マーカー70との段差をなくしつつ、X線不透過マーカー70の肉厚を厚くすることが可能であり、X線透視下での視認性を向上させることができる。なお、X線不透過マーカー70としては、図5Aに示すように、平板状のものを巻きつけても良いし、図5Bに示すように、コイル状に巻回してもよい。コイル状にすることによって、凹部25に巻きつける際に、縮経が容易なため取り付けが容易で製造しやすくなるという効果を有する。このように形成することで、超音波エコー下では、縮小部分23a又は閉塞部分23bが視認しづらくなり、前後の空気層による視認性の高さと比較することによって、バルーン50の位置を正確に認識することができるようになり、X線透視下においては、X線不透過マーカー70を認識することによって、バルーン50を認識することができる。この際に、超音波エコー下と、X線透視下のいずれにおいても同じ位置を認識することができるので、バルーン50の位置を同様に認識しやすいバルーンカテーテル100とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
上述した実施の形態で示すように、バルーンカテーテルとして利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10…シャフト、20…インナーシャフト、21…メインルーメン、23…サブルーメン、23a…縮小部分、23b…閉塞部分、25…凹部、40…拡張流体用チューブ、45…バルーン拡張流体用ルーメン、50…バルーン、70…X線不透過マーカー、80…コネクタ、80a,80b,80c…コネクタ開口、100…バルーンカテーテル
図1
図2
図3
図4
図5