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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100152
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】初期急速排気機能を有する排気弁
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/22 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
F16T1/22 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000627
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】福田 剛士
(57)【要約】
【課題】大型化や構成の複雑化を回避することができる初期急速排気機能を有する排気弁の提供。
【解決手段】
自動排気弁1の流入口31は液体配管(図示せず)に連通して接続されており、液体配管から流入口31を通じて水や空気が基本弁室61及び初期用弁室62に矢印91方向に流入する。基本弁室61及び初期用弁室62には、それぞれ基本フロート10及び初期用フロート20が浮動自在に設けられており、弁室(基本弁室61及び初期用弁室62)内の水の水位に従って浮上又は下降する。この自動排気弁1は、初期段階における液体配管内の空気を基本弁孔16及び初期用弁孔26から急速に排出し、その後は初期用弁孔26を境とした圧力差に従って初期用フロート20が初期用弁孔26の閉弁を維持する。そして、通常段階においては、基本弁室61の水位の変化に応じて基本フロート10が浮上又は下降し、基本弁孔16の閉弁又は開弁を繰り返して、適宜、基本弁室61の上部に滞留した空気を排出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象液体又は対象気体が流入する内部空間を有しており、当該内部空間に滞留する当該対象気体を外部に排出する第1弁孔及び第2弁孔が形成された本体、
前記本体に設けられており、前記第1弁孔を開弁又は閉弁する第1開閉手段であって、前記内部空間に滞留する前記対象気体が一定量に達したときに前記第1弁孔を開弁し、一定量を下回ったときに前記第1弁孔を閉弁する第1開閉手段、
前記本体に設けられており、前記第2弁孔を開弁又は閉弁する第2開閉手段であって、前記第2弁孔を開弁して、前記内部空間に滞留する初期段階の前記対象気体を外部に排出し、当該排出後は前記第2弁孔を閉弁して、当該閉弁を維持する第2開閉手段、
を備えたことを特徴とする初期急速排気機能を有する排気弁。
【請求項2】
請求項1に係る初期急速排気機能を有する排気弁において、
前記第2弁孔は前記第1弁孔よりも口径が大きく、
前記2開閉手段は、前記対象液体の滞留量に従って浮動するフロート手段であって、前記第2弁孔に当接して閉弁し、前記第2弁孔から離隔して開弁するフロート手段であり、
前記フロート手段の重量を調整する重量調整手段を備えている、
ことを特徴とする初期急速排気機能を有する排気弁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る初期急速排気機能を有する排気弁において、
前記本体は、第1本体及び第2本体を備えて構成されており、
前記第1開閉手段は当該第1本体に設けられ、
前記第2開閉手段及び第2弁孔は当該第2本体に設けられている、
ことを特徴とする初期急速排気機能を有する排気弁。
【請求項4】
請求項3に係る初期急速排気機能を有する排気弁において、
前記第2本体の底部には、前記第1本体と前記第2本体とを区分する底部障壁が設けられている、
ことを特徴とする初期急速排気機能を有する排気弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る初期急速排気機能を有する排気弁は、初期段階における急速排気機能と、通常時における自動排気機能とを有する排気弁の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
産業プラントには、水等の液体を移送する配管系統が設置されていることがあり、たとえばこのような配管系統に排気弁が設けられる。すなわち、液体の移送を開始する初期段階においては、配管系統内に空気等の気体が充満しているが、このような気体は移送開始にあたって急速に排気する必要がある。
【0003】
また、液体移送を継続している通常時においては、配管系統内に混入する空気等の気体を適宜、繰り返し排気する必要がある。このため配管系統に初期急速排気機能を有する排気弁を設け、初期段階における急速排気と、通常時における自動排気とを行う。
【0004】
このような排気弁として、後記特許文献1に開示されている排気弁ユニットがある。この排気弁ユニット100は、送液時(通常運転時)における空気の排出効率を向上させることを目的として、流路上に第1排気弁10と第2排気弁20とを備えている。
【0005】
第1排気弁10は、送液時に液配管1から気体が流入してくると開弁して気体を排出し、液配管1から液体が流入してくると閉弁するように構成されている。そして、第2排気弁20は、送液の初期時に液配管1から流入してくる気体を排出し、その後、液配管1から流入してきた液体によって閉弁して、以後は閉弁状態を維持するように構成されている。
【0006】
これによって、送液初期時においては、液配管1内の多量の空気を第2排気弁20から急速に排出し、かつ送液時においては、流入路に流入した空気を第1排気弁10から適宜、排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-113600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている排気弁ユニット100は、第1排気弁10と第2排気弁20とを各々、独立した機器によって構成しているため、排気弁が大型化し、構成が複雑化する。特に、狭小のスペースに配管系統が複雑に配置されているような設置環境では、自動弁の大型化は設置の障害になる虞がある。
【0009】
そこで本願に係る初期急速排気機能を有する排気弁は、これらの問題を解決することを課題とし、大型化や構成の複雑化を回避することができる初期急速排気機能を有する排気弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に係る初期急速排気機能を有する排気弁は、
対象液体又は対象気体が流入する内部空間を有しており、当該内部空間に滞留する当該対象気体を外部に排出する第1弁孔及び第2弁孔が形成された本体、
前記本体に設けられており、前記第1弁孔を開弁又は閉弁する第1開閉手段であって、前記内部空間に滞留する前記対象気体が一定量に達したときに前記第1弁孔を開弁し、一定量を下回ったときに前記第1弁孔を閉弁する第1開閉手段、
前記本体に設けられており、前記第2弁孔を開弁又は閉弁する第2開閉手段であって、前記第2弁孔を開弁して、前記内部空間に滞留する初期段階の前記対象気体を外部に排出し、当該排出後は前記第2弁孔を閉弁して、当該閉弁を維持する第2開閉手段、
を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本願に係る初期急速排気機能を有する排気弁においては、第1開閉手段は、内部空間に滞留する対象気体が一定量に達したときに第1弁孔を開弁し、一定量を下回ったときに第1弁孔を閉弁する。また第2開閉手段は、第2弁孔を開弁して、内部空間に滞留する初期段階の対象気体を外部に排出し、排出後は第2弁孔を閉弁して当該閉弁を維持する。
【0012】
このため、内部空間に滞留する初期段階の対象気体は第1弁孔及び第2弁孔の双方を通じて急速に排気され、その後は内部空間に対象気体が滞留する量に応じて第1弁孔が開弁又は閉弁を繰り返し、対象気体が自動排気される。
【0013】
このため、初期段階の対象気体の急速排気と、その後の対象気体の自動排気とが、単一の本体に設けられた内部空間を介して行われる。したがって、初期急速排気機能を有する排気弁の大型化や構成の複雑化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願に係る初期急速排気機能を有する排気弁の第1の実施形態である自動排気弁1を示す全体構成図であり、初期状態の自動排気弁1を示す図である。
図2図1に示す自動排気弁1の作動状態を示す図であり、基本フロート10のみ閉弁(初期用フロート20は開弁)した状態を示す図である。
図3図1に示す自動排気弁1の作動状態を示す図であり、基本フロート10及び初期用フロート20の双方が閉弁した状態を示す図である。
図4図1に示す自動排気弁1の作動状態を示す図であり、基本フロート10のみ開弁(初期用フロート20は閉弁維持)した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る初期急速排気機能を有する排気弁の下記の要素に対応している。
【0016】
自動排気弁1・・・初期急速排気機能を有する排気弁
基本フロート10・・・第1開閉手段
基本弁孔16・・・第1弁孔
初期用フロート20・・・フロート手段、第2開閉手段
初期用弁孔26・・・第2弁孔
調整用ウエイト29、初期用フロートの20の材質や肉厚等・・・重量調整手段
本体部30・・・第1本体
本体部30及びカバー部40・・・本体
カバー部40・・・第2本体
障壁突起48・・・底部障壁
基本弁室61及び初期用弁室62・・・内部空間
水・・・対象液体
空気・・・対象気体
【0017】
[第1の実施形態]
本願に係る初期急速排気機能を有する排気弁の第1の実施形態である自動排気弁1を図1ないし図4に基づいて説明する。本実施形態における自動排気弁1は、水(液体)を利用側に圧送して供給するための液体配管(図示せず)に設けられ、液体配管内に存在する空気(気体)を配管系統の外部に排出する。
【0018】
(全体構成の説明)
まず、自動排気弁1の全体構成を説明する。図1に示すように自動排気弁1は、本体部30およびカバー部40を備えている。本体部30とカバー部40との接続によって、内部には互いに連通して一体化する基本弁室61及び初期用弁室62が形成される。本体部30とカバー部40とはガスケット52を挟んで複数のボルト51で固定され、基本弁室61及び初期用弁室62の機密性を保つ。なお、カバー部40には、基本弁室61及び初期用弁室62を、弁室(基本弁室61及び初期用弁室62)の底部において区分する障壁突起48が設けられている。
【0019】
本体部30には、流入口31及び流出口32が、鉛直方向の同軸上に形成されている。流入口31は液体配管に連通して接続され、液体配管から流入口31を通じて水や空気が矢印91方向に沿って基本弁室61及び初期用弁室62に流入する。また、本体部30の上部には、流出口32に連通する流出路36が形成されている。
【0020】
基本弁室61には、基本フロート10が浮動自在に配置されている。この基本フロート10は中空の球状体で構成されており、基本弁室61内に滞留する水量に応じて浮上する。なお、カバー部40にはストッパー39が固定されており、このストッパー39によって基本フロート10の浮上が規制される。
【0021】
また、初期用弁室62には、初期用フロート20が浮動自在に配置されている。この初期用フロート20は中空の球状体で構成されており、初期用弁室62内に滞留する水量に応じて浮上する。初期用フロート20の直径は、基本フロート10の直径よりも十分に小さく形成されている。本実施形態においては、初期用フロート20の直径は、基本フロート10の直径の約7分の3の長さをもって形成されている。
【0022】
また、初期用フロート20は調整用ウエイト29を内蔵している。後述するように、この調整用ウエイト29は、初期段階における空気の急速排気機能を高めるとともに、初期用フロート20を確実に初期位置に復位させる効果を生じさせる。
【0023】
カバー部40には、内部空間としてカバー室45が形成されており、このカバー室45に基本弁座15がネジ結合によって固定され配置されている。基本弁座15の内部にはカバー室45に連通している基本弁座流路17が形成されており、先端部には基本弁座流路17に連通する小孔の基本弁孔16が形成されている。そして、カバー部40には基本流路11が形成されており、この基本流路11はカバー室45と本体部30側に形成された流出路36とを連通させて接続する。
【0024】
すなわち、基本弁室61から、基本弁孔16、基本弁座流路17、カバー室45、基本流路11、流出路36及び流出口32が連続的に接続されて流路を形成し、基本弁室61内の空気は矢印93方向に沿って排出される。なお、この流路における空気の流れに従い、基本弁孔16を境として、流入口31及び基本弁室61側が上流であり、流出口32側が下流である。
【0025】
図1は自動排気弁1の初期状態を示しており、基本フロート10及び初期用フロート20はそれぞれ基本弁室61及び初期用弁室62の底部に着座している。この初期状態から、基本弁室61に水が流入して貯留された場合、基本フロート10はその水量に応じて浮上する。そして、浮上の限界位置に達したとき、基本フロート10の外周面が基本弁座15の先端に当接して基本弁孔16を閉塞して閉弁するようになっている(図2参照)。
【0026】
これに対し、基本弁室61の空気量の増加に伴って、基本弁室61の水位が押し下げられ水量が減少した場合、基本フロート10は基本弁座15の先端から離れて基本弁孔16を開放して開弁する。基本フロート10が基本弁座15の先端から離れた状態が、基本弁孔16を開放した開弁状態である。
【0027】
カバー部40には、カバー室45に連通する初期用流路21が形成されている。初期用流路21の端部は初期用弁室62に連通しており、この端部に初期用弁孔26が形成された初期用弁座25が固定されている。
【0028】
すなわち、初期用弁室62から、初期用弁孔26、初期用流路21、カバー室45、基本流路11、流出路36及び流出口32が連続的に接続されて流路を形成し、初期用弁室62内の空気は矢印92方向から矢印93方向に排出可能である。この流路における空気の流れに従い、初期用弁室62側が上流であり、流出口32側が下流である。
【0029】
なお、初期用弁孔26の口径は、基本弁孔16の口径よりも十分に大きく形成されている。本実施形態においては、初期用弁孔26の口径は、基本弁孔16の口径の約3倍の長さをもって形成されている。
【0030】
図1に示す初期状態から、初期用フロート20が、初期用弁室61の水量に応じて浮上して限界位置に達したとき、初期用フロート20の外周面が初期用弁座25に当接して初期用弁孔26を閉塞して閉弁するようになっている(図3参照)。この状態が初期用弁孔26を閉塞する閉弁状態である。
【0031】
これに対し、初期用弁室62の空気量の増加に伴って、初期用弁室62の水位が押し下げられ水量が減少した場合、初期用フロート20は初期用弁座25から離れて初期用弁孔26を開放して開弁する。初期用フロート20が初期用弁座25から離れた状態が、初期用弁孔16を開放した開弁状態である。
【0032】
(動作の説明)
次に、自動排気弁1の動作を説明する。液体配管(図示せず)に水が注入されて水の圧送が開始された直後は、液体配管内に空気が充満している。このような初期段階においては、液体配管内の空気を可能な限り急速に自動排気弁1を通じて排出する必要がある。
【0033】
自動排気弁1の基本フロート10及び初期用フロート20は、初期状態においてはいずれも自重によって図1に示すように弁室(基本弁室61及び初期用弁室62)の底部に着座しており、基本弁孔16及び初期用弁孔26は双方とも開弁している。このため液体配管内の空気は、水の圧送の圧力を受け、自動排気弁1の基本弁室61及び初期用弁室62から基本弁孔16及び初期用弁孔26を通じ、矢印91、92、93方向に沿って流出口32から排出される。
【0034】
このとき、前述のように初期用弁孔26の口径は、基本弁孔16の口径よりも十分に大きく形成されているため、大部分の空気は初期用弁孔26から流出する。これによって、液体配管内の空気を急速に排出することができる。
【0035】
初期段階の空気が排出された後、水の圧送に伴って基本弁室61には流入口31から矢印91方向に沿って水が流入し、まず基本弁室61に徐々に水が貯留される。この水の流入によって基本フロート10は浮上し、基本弁室61の水位に従って上昇する。
【0036】
そして、基本弁室61に貯留された水の水位が、障壁突起48を超えたとき以降、水は基本弁室61から初期用弁室62に流入して貯留される。この初期用弁室62における水の貯留によって初期用フロート20は浮上し、初期用弁室62の水位に従って上昇する。
【0037】
ここで、初期用フロート20には前述のように調整用ウエイト29が設けられ、初期用フロート20全体の重量が重くなっている。このため、基本フロート10に比較して水没の度合いが深い。したがって、図2に示すように、弁室(基本弁室61及び初期用弁室62)の水位がレベルL2に達し、基本フロート10が基本弁孔16を閉弁したときであっても、初期用フロート20は深く水没し初期用弁孔26を開弁したままの状態である。
【0038】
このように、基本フロート10が基本弁孔16を閉弁した後、しばらくの間、初期用フロート20は初期用弁孔26を開弁した状態を継続する。このため、弁室(基本弁室61及び初期用弁室62)内に滞留しているより多くの空気を初期用弁孔26から排出することができる。
【0039】
その後、水の水位がさらに上昇し、レベルL3に達した時、図3に示すように初期用フロート20は浮上して初期用弁孔26を閉弁する。すなわち、基本弁孔16及び初期用弁孔26は、それぞれ基本フロート10及び初期用フロート20によって閉弁される。これによって、液体配管を圧送される水が、自動排気弁1から漏出することを防止できる。
【0040】
なお、初期用フロート20が内蔵する調整用ウエイト29の重量を予め調整しておけば、初期用フロート20の浮上具合を制御することができる。これによって、初期用弁孔26の閉弁のタイミングを自在に設定することができる。すなわち、調整用ウエイト29によって初期用フロート20を重く設定し、初期用弁室62内の水により深く沈み込むように調整しておけば、初期用弁孔26の閉弁のタイミングを遅くすることができ、初期段階における空気の急速排気機能をさらに高めることができる。
【0041】
こうして基本弁孔16及び初期用弁孔26が閉弁した状態で、液体配管は水の圧送を継続する(通常段階)が、たとえば配管系統の出口から空気が液体配管内に侵入することがある。このような通常段階において生じる空気は水の圧送効率を低下させるため、適宜、自動排気弁1を通じて排出する必要がある。
【0042】
本実施形態では、液体配管内を圧送される空気は、流入口31から基本弁室61及び初期用弁室62に流入して上昇し、基本弁室61の上部に滞留する。その後、滞留する空気量の増加に従って初期用弁室62の上部にも空気が滞留するに至り、基本弁室61及び初期用弁室62の水位は押し下げられる。
【0043】
ここで、前述のように初期用弁孔26の口径は、基本弁孔16の口径よりも十分に大きく形成されており、かつ初期用フロート20の直径は、基本フロート10の直径よりも十分に小さく形成されている。また、液体配管が水を圧送していることによって、初期用弁孔26を境として下流側の圧力は上流側の圧力よりも低い。
【0044】
このため、図4に示すように、弁室(基本弁室61及び初期用弁室62)内の水位がレベルL1に押し下げられた場合であっても、初期用フロート20は初期用弁孔26を境にした圧力差によって、初期用弁座25に吸着して当接したままである。すなわち、初期用弁室62の水位の低下にかかわらず、初期用フロート20は初期用弁孔26を閉弁した状態を維持する。
【0045】
一方、基本弁座15の基本弁孔16の口径は小さく小孔として形成され、基本フロート10の直径も比較的大きいため、基本弁室61の水位がレベルL1に下降した場合、水位の低下に応じて基本フロート10は自重によって下降する。これによって基本弁孔16は開弁し、基本弁室61の上部に滞留した空気は、基本弁孔16を通じて流出口32から排出される。
【0046】
基本弁室61の上部に滞留した空気が、基本弁孔16を通じて排出されたことによって、基本弁室61及び初期用弁室62の水位は上昇する。そして、これに伴って基本フロート10は浮上し、再び基本弁孔16を閉弁して水の漏出を防止する。こうして基本フロート10は、基本弁室61及び初期用弁室62の水位の上下変化に応じて浮上又は下降を繰り返し、基本弁室61に滞留する空気を適宜、排出する。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る自動排気弁1は、初期段階における液体配管内の空気を基本弁孔16及び初期用弁孔26から急速に排出し、その後は初期用弁孔26を境とした圧力差に従って初期用フロート20が初期用弁孔26の閉弁を維持する。そして、通常段階においては、基本弁室61の水位の変化に応じて基本フロート10が浮上又は下降し、基本弁孔16の閉弁又は開弁を繰り返して、適宜、基本弁室61の上部に滞留した空気を排出する。
【0048】
このため、基本弁孔16及び初期用弁孔26からの初期段階の空気の急速排気と、その後の基本弁孔16からの通常段階の空気の自動排気とが、単一の弁室(基本弁室61及び初期用弁室62)を介して行われる。したがって、自動排気弁1の大型化や構成の複雑化を回避することができる。
【0049】
ところで、液体配管が水の移送を完了して圧送を停止した場合、初期用弁孔26を境にした圧力差が解消されるため初期用フロート20は自重落下によって下降し、初期用弁孔26を開弁して図1に示す初期状態に復位して初期用弁室62の底部に着座する。
【0050】
しかし、初期用フロート20の球面には水が付着しており、その表面張力の影響を受け、液体配管が水の圧送を停止したにもかかわらず、初期用フロート20が初期用弁座25に貼り付いて落下しないことが考えられる。仮に、このような事態が生じた場合、初期用フロート20が初期用弁孔26を閉弁したままで適正に復位せず、次回、液体配管が水の圧送を開始した際、初期段階の空気を初期用弁孔26から急速排気することができないという不都合が生じ得る。
【0051】
この点、本実施形態では前述のように、初期用フロート20に調整用ウエイト29が設けられており、初期用フロート20全体の重量が重く設定されている。このため、液体配管が水の移送を完了して圧送を停止した場合、初期用フロート20は自重によって適正に落下し、図1に示す着座位置に確実に復位することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る自動排気弁1は、本体部30側に流入口31、基本弁室61、基本フロート10、流出路36及び流出口32が設けられており、カバー部40側に初期用弁室62、初期用フロート20、初期用弁孔26、初期用流路21、基本弁孔16及び基本流路11が設けられている。このため、初期急速排気機能を有していない排気弁の本体部に、本実施形態におけるカバー部40を取り付けることで、本体部を交換することなく容易に初期急速排気機能付きの排気弁に転化させることができる。したがって、排出弁の汎用性を高めることができる。
【0053】
なお、前述のように、カバー部40には障壁突起48が設けられているため、カバー部40を本体部に取り付ける際、初期用フロート20の動きは障壁突起48によって係止され、初期用フロート20のカバー部40からの落下を防止することができる。これによって、カバー部40の取り付け作業の作業効率を高めることができる。
【0054】
[その他の実施形態]
前記実施形態においては、本願に係る初期急速排気機能を有する排気弁を自動排気弁1に適用した例を掲げたが、これに限定されるものではなく、他の構成を備えた排気弁に適用することもできる。たとえば、水以外の対象液体の流入を受ける排気弁や、空気以外の対象気体を排出する排気弁に適用してもよい。
【0055】
また、前記実施形態においては、内部空間として基本弁室61及び初期用弁室62を例示したが、対象液体(水等)又は対象気体(空気等)が流入して滞留する空間である限り、他の形状、構造の空間を採用することもできる。
【0056】
さらに、前記実施形態においては、第1開閉手段として基本フロート10を例示したが、内部空間(基本弁室61及び初期用弁室62等)に滞留する対象気体(空気等)が一定量に達したときに第1弁孔(基本弁孔16等)を開弁し、一定量を下回ったときに第1弁孔を閉弁するものであれば、他の構成を採用してもよい。
【0057】
また、前記実施形態においては、第2開閉手段又はフロート手段として初期用フロート20を例示したが、第2弁孔(初期用弁孔26)を開弁して初期段階の対象気体(空気等)を外部に排出し、排出後は第2弁孔の閉弁を維持するものであれば、他の構成を採用してもよい。
【0058】
また、前記実施形態においては、重量調整手段として調整用ウエイト29を例示したが、フロート手段(初期用フロート20等)の重量を調整することができるものであれば他の構成を採用することができる。たとえば、フロート手段(初期用フロート20等)の材質や肉厚を調整することによって、フロート手段の重量を調整してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10:基本フロート 16:基本弁孔 20:初期用フロート 26:初期用弁孔
29:調整用ウエイト 30:本体部 40:カバー部 48:障壁突起
61:基本弁室 62:初期用弁室
図1
図2
図3
図4