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特開2023-100169電気鉄道車両及び電気鉄道車両のフレーム構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100169
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】電気鉄道車両及び電気鉄道車両のフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/10 20060101AFI20230710BHJP
   B61D 49/00 20060101ALI20230710BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
B61D17/10
B61D49/00 A
B61D37/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000658
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福増 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】パオレッティ ウンベルト
(72)【発明者】
【氏名】松島 清人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 俊彰
(72)【発明者】
【氏名】布川 将之
(57)【要約】
【課題】鉄道車両の地上側と通信する車上側アンテナに対して、車体に伝搬するノイズの影響を低減する電気鉄道車両及び電気鉄道車両のフレーム構造を提供することを目的とする。
【解決手段】金属製の車体と、地上側のアンテナと通信する車上アンテナと、前記車上アンテナ周辺において前記車体を覆うための非金属製のカバーと、前記カバーを固定するために前記車上アンテナを左右方向両側で挟むように配置するレール方向に延びる第1の金属フレームとを備え、前記第1の金属フレームは、前記車上アンテナに対して左右方向が対称に配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の車体と、地上側のアンテナと通信する車上アンテナと、前記車上アンテナ周辺において前記車体を覆うための非金属製のカバーと、前記カバーを固定するために前記車上アンテナを左右方向両側で挟むように配置するレール方向に延びる第1の金属フレームとを備え、
前記第1の金属フレームは、前記車上アンテナに対して左右方向が対称に配置されていることを特徴とする電気鉄道車両。
【請求項2】
金属製の車体と、地上側のアンテナと通信する車上アンテナと、前記車上アンテナ周辺において前記車体を覆うための非金属製のカバーと、前記カバーを固定するために前記車上アンテナを左右方向両側で挟むように配置するレール方向に延びる第1の金属フレームと、前記第1の金属フレームよりも前記車体の幅方向外側でレール方向に延びる第2の金属フレームとを備え、
前記第2の金属フレームは、レールの直上に配置されることを特徴とする電気鉄道車両。
【請求項3】
請求項2に記載の電気鉄道車両において、
前記第1の金属フレームは、アンテナに対して対称に配置されることを特徴とする電気鉄道車両。
【請求項4】
請求項1に記載の電気鉄道車両において、
前記第1の金属フレームは、レールの直上に配置されることを特徴とする電気鉄道車両。
【請求項5】
請求項1に記載の電気鉄道車両において、
前記第1の金属フレームと前記車体との間は高インピーダンス材を介して接続されていることを特徴とする電気鉄道車両。
【請求項6】
請求項1に記載の電気鉄道車両において、
前記車上アンテナは、当該電気鉄道車両の床下に配置され、レールの幅方向の中心に設けられた地上側のアンテナからの信号を受信することを特徴とする電気鉄道車両。
【請求項7】
電気鉄道車両のフレーム構造であって、
前記電気鉄道車両の床下に設けられる車上アンテナ周辺において前記電気鉄道車両の車体を覆うための非金属製のカバーと、前記カバーを固定するために前記車上アンテナを左右方向両側で挟むように配置しレール方向に延びる第1の金属フレームとを備え、
前記第1の金属フレームは、前記車上アンテナに対して左右方向が対称に配置されていることを特徴とする電気鉄道車両のフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気鉄道車両及び電気鉄道車両のフレーム構造に関し、特に、車体に伝搬するノイズの影響を低減する電気鉄道車両及び電気鉄道車両のフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道には、様々なノイズが発生する。例えば、変電所の電力変換器が発生する電磁ノイズ、鉄道車両の駆動用インバータが発生する電磁ノイズ等である。さらには、パンタグラフの架線からの離線に伴い発生する電磁ノイズや、車輪がレールと接触・離れることによるノイズ等も発生する。これらの様々なノイズは重畳することがある。
【0003】
電気鉄道において、問題となるノイズ要因の一つとして、電力変換装置のスイッチング動作に起因して発生するノイズが有る。さらに、電力変換装置の小型・低損失化のため、近年、パワーデバイスにSiC(炭化ケイ素)といった新しい半導体材料が採用されつつある。この結果、電力変換装置はさらなる高速・高周波スイッチング動作可能となり、小型・低損失化を満たす一方で、スイッチング動作により生じる高周波ノイズ電流は、より高周波まで高調波成分を持つようになってきており、MHz帯といった高周波信号を扱う装置にも影響を与えるようになってきた。
【0004】
一方、高速鉄道車両において、一般的に車体表面で生じる摩擦抵抗を低減させるため、金属体である車体の床下に設置される床下機器を金属フサギ板で覆っている。金属フサギ板は車体から構成される金属フレームなどに取り付けられ、車体と金属フサギ板の間に車上アンテナや、床下機器、床下機器に接続される車両配線などが配置されている。
【0005】
また、高周波信号を扱う装置の一つとして、鉄道における信号保安システムの一種である自動列車制御装置(ATC:Automatic Train Control)がある。ATC装置は地上側から送信される信号を受信する車上アンテナが車両に設けられており、その車上アンテナは鉄道車両の先頭車の先頭部床下に設置される。
【0006】
例えば特許文献1では、ATC受電器に対する高周波ノイズを抑制する方法として、電力変換装置の接地線の接続位置を台車両側または中央に配置することで、レールに流れる高周波ノイズ影響を打ち消す方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-68309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方式ではレールを流れる高周波ノイズによる電流の影響のみ考慮しており、車体部品を流れるノイズを考慮するものではなく、十分なノイズ抑制効果を得られていなかった。
【0009】
また、高速鉄道車両において、駆動用インバータの動作中に誤検知が発生するケースがあったが、そのノイズの伝搬経路は、詳細には分かっていなかった。このため、従来の高速鉄道車両の金属フサギ板や金属フレームは、機器の配置等の設計上の都合が優先されていた。これにより車上アンテナ近辺の金属フレームは左右対称の構造とはなっていなかった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みて、鉄道車両の地上側と通信する車上側アンテナに対して、車体に伝搬するノイズの影響を低減する電気鉄道車両及び電気鉄道車両のフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、代表的な本発明の電気鉄道車両の一つは、金属製の車体と、地上側のアンテナと通信する車上アンテナと、前記車上アンテナ周辺において前記車体を覆うための非金属製のカバーと、前記カバーを固定するために前記車上アンテナを左右方向両側で挟むように配置するレール方向に延びる第1の金属フレームとを備え、前記第1の金属フレームは、前記車上アンテナに対して左右方向が対称に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電気鉄道車両及び電気鉄道車両のフレーム構造において、鉄道車両の地上側と通信する車上側アンテナに対して、車体に伝搬するノイズの影響を低減することができる。
なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明を適用可能な車両の一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明を適用可能な車両用駆動回路の一例を示す概略構成図である
図3図3は、本発明を適用可能な車両床下の一例を示す回路構成図である。
図4図4は、本発明の実施例1の鉄道車両の車上アンテナ周辺の車両床下の構成を示す上面図である。
図5図5は、図4のAA断面を示す図である。
図6図6は、本発明の実施例2の鉄道車両の車上アンテナ周辺の車両床下の構成を示す上面図である。
図7図7は、図6のBB断面を示す図である。
図8図8は、本発明の実施例3の鉄道車両の車上アンテナ周辺の車両床下の構成を示す上面図である。
図9図9は、図8のCC断面を示す図である。
図10図10は、本発明の実施例4の鉄道車両の車上アンテナ周辺の車両床下の構成を示す上面図である。
図11図11は、図10のDD断面を示す図である。
図12図12は、本発明の実施例5の鉄道車両の車上アンテナ周辺の車両床下の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明を適用可能な車両の一例を示す概略図である。図1では、左の駆動車両1と右の先頭車両2の2つの車両を示している。図1は説明のため2両の車両のみを示しているが、さらに車両を連結することが可能である。なお、図1の左右方向が車両の前後方向となる。
【0016】
各車両は、客室を覆うように金属製の構体等で構成された車体20を備えている。車体20は、台車枠40や車輪19を備える前後2つの台車に支持され、車輪19はレール21上で転動する。また、前後2つの台車の間の車体20の下部には、床下100が備えられ金属フサギ板106等で下面が覆われている。また、駆動車両1の上部には、パンタグラフ12を備え、架線11と接触可能に構成されている。
【0017】
図2は、本発明を適用可能な車両用駆動回路の一例を示す概略構成図であり、鉄道車両に搭載される電力変換装置の一構成例を示している。図2の構成は、主に図1の駆動車両1に備えることができる構成である。
【0018】
電力は変電所から架線11、パンタグラフ12、VCB(真空遮断器)13を介してトランス(変圧器)14の一次側に供給される。トランス14の一次巻線の一端はパンタグラフ12を介して架線11に接続され、他端は車両接地線22から車輪19を介して接地されているレール21に接続されている。車両接地線22は車両との間に接地抵抗器23が接続され、この車両接地線22から車輪軸を経由してレール21に帰路電流が流れるようになっている。
【0019】
架線11から供給される電力はパンタグラフ12を介してトランス14の一次巻線に入力されるとともに、トランス14の2次巻線に生じた電力が電力変換装置16に入力される。トランス14の3次巻線に生じた電力は、換気空調装置等の補機類に入力される。
【0020】
電力変換装置16はコンバータとインバータから構成され、コンバータは入力された交流電圧を所望の直流電圧に変化する。インバータはコンバータで変換された直流電圧を任意の電圧および周波数の交流電圧に変換し、3相出力線17を介して主電動機18へ出力する。
【0021】
主電動機18のフレームは車体20を支えている台車の台車枠40(図1参照)に固定されており、台車は1車両に2台配置されている。なお、車体20は金属で構成され、車両接地線22と車体20の間には接地抵抗器23が接続されている。
【0022】
図3は、本発明を適用可能な鉄道車両の床下の回路構成一例を示す概略構成図である。図3では、左が駆動車両1、右が先頭車両2に対応している。
【0023】
高速鉄道車両は、車体20の表面で生じる摩擦抵抗を低減させることを目的に、床下機器の側面および底面を覆う金属フサギ板106や側フサギ板107等を有している。これらのフサギ板は車体20や、車体20から構成される金属フレーム等に固定されている。
【0024】
台車は鉄道車両の足まわり装置であり、レール21上に配置され車体20を支持している。台車は、台車枠40に車輪19、(図示を省略した)ブレーキやTC(路面清掃装置)等が取り付けられている。機械的な接続部分は全てゴム等の弾性部品を介しているため、台車枠40は車体20と電気的に絶縁されている。また、車輪19の軸を受ける軸受の電蝕発生を防ぐため、台車枠40と車輪19との間は電気的に絶縁されている。しかし、この軸受は台車枠40を弾性支持するコイルばね等の金属部品と接続されているため、電気的な接続が生じ台車枠40と車輪19との間には寄生容量41が存在する。また、車輪19はレール21と接触する。
【0025】
先頭車両2には、床下100に車上アンテナ103を備えている。車上アンテナ103は、地上側のアンテナ(地上子)からの信号を受け取る。この地上子はレール21の幅方向の中心に設けられ、車上アンテナ103に信号を送信する。例えば、鉄道車両が走行中に地上側のアンテナから出ている信号を受けて現在の位置等の情報を受信する。また、先頭車両2には、信号装置101を備えており、信号装置101は車上アンテナ103からの情報を用いて鉄道車両の制御に利用する。信号装置101は床下100に配置しなくてもよく、運転台の近傍など、適した場所に配置できる。
【0026】
ここで、鉄道車両のノイズ電流の伝搬経路について調べた結果について図2、3を用いて説明する。
【0027】
鉄道車両の場合、例えば、図2に示す車両駆動用の電力変換装置16は、主電動機18に駆動電流を流す。その際、主電動機18内の巻線と主電動機フレーム間に寄生容量30が存在するため、駆動電流の一部が、この寄生容量30から高周波ノイズ電流が流れる。この高周波ノイズ電流は、主電動機18のフレーム、車両接地線22、接地抵抗器23、車体20を通って電力変換装置16へ戻る経路を主に流れる。
【0028】
しかしながら、接地抵抗器23自体が高周波的には高いインピーダンスを持っていることや、車両接地線22と3相出力線17との間を完全に並走させることが難しいなどの理由により、高周波ノイズ電流の一部が、寄生容量30からレール21を通って隣接車両までノイズが伝播する。図3であると、高周波ノイズ電流は、駆動車両1から隣接する先頭車両2へ流れる。
【0029】
そして、先頭車両2の寄生容量41、台車枠40を経由して、車体20や金属フサギ板106やそれを支える金属フレームを通ることになる。ここで、車上アンテナ103付近に配置される金属フレームは車上アンテナ103と距離が近いため、車上アンテナ103は金属フレームに流れる高周波ノイズ電流による生じる磁束の影響を受けやすいことが判明した。このため、車上アンテナ103にノイズが混入して、信号装置の誤動作・誤検知等を引き起こす恐れがある。
【0030】
また、電力変換装置16の小型・低損失化のため、近年、パワーデバイスにSiC(炭化ケイ素)といった新しい半導体材料が採用されつつある。この結果、電力変換装置16はさらなる高速・高周波スイッチング動作可能となり、小型・低損失化を満たす。一方で、スイッチング動作により生じる高周波ノイズ電流は、より高周波まで高調波成分を持つようになる。そのため、さらなる高周波ノイズ電流の影響は大きくなる。
【0031】
以下の実施例1~5では、上記ノイズ電流の伝搬経路を考慮して、ノイズ電流の車上アンテナ103の影響を低減させる車上アンテナ周辺の車両床下の構成例を説明する。各実施例では、鉄道車両の形態を例に説明するが、この例に限定されるものではない。
【0032】
<実施例1>
図4は、本発明の実施例1の鉄道車両の車上アンテナ周辺の車両床下の構成を示す上面図である。図5は、図4のAA断面を示す図である。図4の上下方向が鉄道車両の前後方向(レール方向)であり、図4の左右方向が鉄道車両の左右方向(幅方向)となる。図5の上下方向が鉄道車両の上下方向(高さ方向)であり、図5の左右方向が鉄道車両の左右方向(幅方向)となる。
【0033】
図4、5に示すように、車体20と金属フレーム200との間は、上下方向に延びる支柱102で支えられている。車上アンテナ103はレール21を挟んだ車両の左右方向の中心に配置される。地上側との通信を遮らないようにするため、車上アンテナ103の直下には樹脂などの非金属製で構成される樹脂カバー105が設置されている。車上アンテナ103の周囲には、金属フサギ板106と、樹脂カバー105や金属フサギ板106を固定するための金属フレーム200が設置されている。金属フレーム200には、車上アンテナ103を挟むようにレール方向に延びる第1の金属フレーム201を有する。ここで、第1の金属フレーム201は車上アンテナ103に対して左右対称となる位置に配置する。
【0034】
すなわち、車上アンテナ103から左側の一番近い第1の金属フレーム201までの距離と、車上アンテナ103から右側の一番近い第1の金属フレーム201までの距離は等しい。また、左右の第1の金属フレーム201間は、樹脂カバー105が設けられている。車上アンテナ103は、車体20から上下に延びる取付棒により上側で固定されている。
【0035】
図2、3で説明したように、高周波ノイズ電流は、駆動車両1から先頭車両2へ伝搬する。駆動車両1では、高周波ノイズ電流は、電力変換装置16から、主電動機18付近に存在する寄生容量30、レール21を通って隣接の先頭車両2まで伝搬する。そして、先頭車両2では、高周波ノイズ電流は、レール21から、寄生容量41、台車枠40を経由して、車体20や車上アンテナ103付近の金属フサギ板106と金属フレーム200を主に流れる。そして、駆動車両1の電力変換装置16に戻る経路をたどる。すなわち車体20や金属フサギ板106と金属フレーム200は、レール21を流れるノイズ電流の帰路となるため、レール21方向に向かって流れる。
【0036】
金属フレーム200に流れる高周波ノイズ電流は周囲に磁束を発生させる。この発生磁束を車上アンテナ103が受けることで、信号とは関係のないノイズとして信号装置101が受信してしまい、誤検知する恐れがある。
【0037】
実施例1では、車上アンテナ103へのノイズ結合を抑制するため、車上アンテナ103を挟むように配置される第1の金属フレーム201を車上アンテナ103に対して対称に配置する。このことで、第1の金属フレーム201に生じる磁束は第1の金属フレーム201の間では打ち消される。これは、同じ方向に流れる電流によって発生する磁界は、時計回りの方向なので、左右中心の位置では、それぞれの電流による磁界が逆向きとなり、互いに打ち消すためである。特に、第1の金属フレーム201から等間隔の位置では打ち消し効果が最大となるため、車上アンテナ103に近い位置に配置される第1の金属フレーム201を車上アンテナ103に対して対称となる位置に配置する。このことで、車上アンテナ103が受けるノイズを低減することができる。
【0038】
<実施例2>
図6は、本発明の実施例2の鉄道車両の車上アンテナ周辺の車両床下の構成を示す上面図である。図7は、図6のBB断面を示す図である。実施例2では、実施例1と異なる点について主に説明し、同一の箇所には同一の符号を付してあり、特に説明がない部分は同じ説明を省略している。なお、図6、7の方向は図4、5とそれぞれ同様である。
【0039】
実施例2では、実施例1に対して第2の金属フレーム202を追加している点が異なる。また、第1の金属フレーム201は、車上アンテナ103に対して左右対称とすることは前提としていない。
【0040】
車上アンテナ103の周囲には、車上アンテナ103を挟むようレール方向に延びる第1の金属フレーム201と、第2の金属フレーム202を有している。左右の第2の金属フレーム202は左右のレール21のそれぞれの直上の位置に配置する。このとき、左右の第1の金属フレーム201は、レール21よりも内側に位置しているため、第2の金属フレーム202の方が、第1の金属フレーム201よりも、レール21に近い位置となる。また、第1の金属フレーム201の方が、第2の金属フレーム202よりも車上アンテナ103に近い位置となる。車上アンテナ103は車両の幅方向の中心であり、レール21に対して対称となる位置に設置される。そのため、第2の金属フレーム202は必然的に車上アンテナ103に対して対称に配置される。
【0041】
ここで、金属フサギ板106は腐食等を防止するため、塗装により全体が被膜されており、金属フサギ板106と車体20やフレームとの間の電気的接続が不安定になる恐れがある。このため、主に前述した電力変換装置16から漏洩する高周波ノイズ電流は、レール21から車体20や金属フレーム200を主に流れることになる。金属フレーム200には、第1の金属フレーム201と第2の金属フレーム202が含まれる。ここで、第2の金属フレーム202は、追加で設けた金属フレームのため、下記の機能を果たせれば、第1の金属フレーム201よりも細い形状であってもよい。
【0042】
図2、3でも説明したように、電力変換装置16からの高周波ノイズ電流は、寄生容量30、レール21を通って隣接の先頭車両2まで伝搬する。そして、先頭車両2では、高周波ノイズ電流は、レール21から、寄生容量41、台車枠40を経由して、車体20や車上アンテナ103付近の金属フサギ板106と金属フレーム200を主に流れる。そして、電力変換装置16に戻る経路をたどる。
【0043】
ここで、第2の金属フレーム202をレール21の直上に配置することで、第2の金属フレーム202とレール21は電磁結合し、レール21のノイズ電流の帰路として第2の金属フレーム202に高周波ノイズ電流が流れやすくなる。そのため、アンテナ周囲の第1の金属フレーム201と、第2の金属フレーム202を流れるノイズ電流は、レール方向に一様には流れず、レール21に近い第2の金属フレーム202を集中して流れることになる。これにより、車上アンテナ103から離れた位置にある第2の金属フレーム202に高周波ノイズ電流が主に流れる。このことで、車上アンテナ103に近い位置に配置される第1の金属フレーム201に流れるノイズ電流量は低減し、車上アンテナ103が受けるノイズを低減することができる。
【0044】
<実施例3>
図8は、本発明の実施例3の鉄道車両の車上アンテナ周辺の車両床下の構成を示す上面図である。図9は、図8のCC断面を示す図である。実施例3では、実施例1、2と異なる点について主に説明し、同一の箇所には同一の符号を付してあり、特に説明がない部分は同じ説明を省略している。なお、図8、9の方向は図4、5とそれぞれ同様である。
【0045】
実施例3では、第2の金属フレーム202を含む実施例2の構成に対して、実施例1で示したように、左右の第1の金属フレーム201は車上アンテナ103に対して、左右対称に配置したものである。
【0046】
実施例3の構成により、実施例2と同様に第2の金属フレーム202に高周波ノイズ電流が主に流れる。さらに、第1の金属フレーム201にも、高周波ノイズ電流の一部が流れるが、左右対称の構成により、発生磁束が車上アンテナ103の位置において打ち消される。このため、車上アンテナ103が受けるノイズをさらに低減できる。
【0047】
<実施例4>
図10は、本発明の実施例4の鉄道車両の車上アンテナ周辺の車両床下の構成を示す上面図である。図11は、図10のDD断面を示す図である。実施例4では、実施例1、2と異なる点について主に説明し、同一の箇所には同一の符号を付してあり、特に説明がない部分は同じ説明を省略している。なお、図10、11の方向は図4、5とそれぞれ同様である。
【0048】
実施例4では、実施例1に対して、第1の金属フレーム201を実施例2の第2の金属フレーム202の位置に設置する構成である。このため、第2の金属フレーム202は有さず、第1の金属フレーム201がレール21の直上に配置される。車上アンテナ103はレール21に対して対称となる車両の中心位置に設置される。そのため、第1の金属フレーム201は必然的に車上アンテナ103に対して対称に配置される。このため、第1の金属フレーム201の間は発生磁束が打ち消されるため、車上アンテナが受けるノイズを低減することができる。
【0049】
<実施例5>
図12は、本発明の実施例5の鉄道車両の車上アンテナ周辺の車両床下の構成を示す上面図である。実施例5では、実施例1と異なる点について主に説明し、同一の箇所には同一の符号を付してあり、特に説明がない部分は同じ説明を省略している。なお、図12の方向は図4と同様である。
【0050】
実施例5では、車上アンテナ103周辺に配置される左右方向で一番近い第1の金属フレーム201は、車体20との間に非金属の樹脂などの高インピーダンス材108を介して接続されている。具体的には、車上アンテナ103の左右でレール方向に配置される第1の金属フレーム201の両端部に高インピーダンス材108を介して、他の金属フレーム200と接続する。このため、第1の金属フレーム201は、車体20とは電気的に絶縁されるように設置される。これにより、車上アンテナ103に近い位置に配置される第1の金属フレーム201に流れる高周波ノイズ電流を低減できるため、車上アンテナ103が受けるノイズを低減することができる。なお、車上アンテナ103に前後方向で一番近い左右方向に延びる金属フレーム201’は、第1の金属フレーム201と接続されているため、車体20とは電気的に絶縁されている。
【0051】
実施例5では、左右の第1の金属フレーム201の位置は、車上アンテナ103に対して左右対称であることは特定していないが、実施例1のように左右対称としてもよい。また、実施例2のように第2の金属フレーム202を追加してもよい。
【0052】
以上のように、各実施例に示す構成によれば、電力変換装置16は主電動機18に駆動電流を流して主電動機18を駆動させる時に、主電動機18の巻線部と主電動機ケース間の寄生容量30を介して発生する高周波ノイズ電流に対し、車上アンテナ103が受けるノイズを抑制する車両構成を提供することができる。
【0053】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…駆動車両、2…先頭車両、11…架線、12…パンタグラフ、14…トランス、16…電力変換装置、17…3相出力線、18…主電動機、19…車輪、20…車体、21…レール、22…車両接地線、23…接地抵抗器、30…寄生容量、40…台車枠、41…寄生容量、100…床下、101…信号装置、102…支柱、103…車上アンテナ、105…樹脂カバー、106…金属フサギ板、107…側フサギ板、108…高インピーダンス材、200…金属フレーム、201…第1の金属フレーム、201’:金属フレーム、202…第2の金属フレーム
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