(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010017
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】音響変換装置及びこれを備えるヘッドセット
(51)【国際特許分類】
H04R 9/04 20060101AFI20230113BHJP
H04R 9/08 20060101ALI20230113BHJP
H04R 9/06 20060101ALI20230113BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20230113BHJP
H04R 9/02 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H04R9/04 102
H04R9/08
H04R9/06 Z
H04R1/10 101A
H04R9/02 102A
H04R9/04 105A
H04R9/04 104A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113760
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 潤
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 今日子
(72)【発明者】
【氏名】小池 千秋
【テーマコード(参考)】
5D012
【Fターム(参考)】
5D012BA03
5D012BA06
5D012BB03
5D012BB04
5D012CA02
5D012CA04
5D012GA01
5D012GA03
(57)【要約】
【課題】発音機能と集音機能を備える製品の小型化を図る。
【解決手段】音響変換装置10は、振動板20と、振動板20の振動方向を軸方向として配置され、直接又は部材を介して振動板20に支持された第1ボイスコイル50及び第2ボイスコイル60と、を備え、第1ボイスコイル50は、音響信号の入力により駆動され振動板20を振動させる発音用のボイスコイルとして構成され、第2ボイスコイル60は、外部の音により振動する振動板20と一体に振動され音響信号を出力する集音用のボイスコイルとして構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、
前記振動板の振動方向を軸方向として配置され、直接又は部材を介して前記振動板に支持された第1ボイスコイル及び第2ボイスコイルと、を備え、
前記第1ボイスコイルは、音響信号の入力により駆動され前記振動板を振動させる発音用のボイスコイルとして構成され、
前記第2ボイスコイルは、外部の音により振動する前記振動板と一体に振動され音響信号を出力する集音用のボイスコイルとして構成されている、
音響変換装置。
【請求項2】
前記第1ボイスコイルと前記第2ボイスコイルは、互いに同一の内径を有し、軸方向に並んで配置されている請求項1に記載の音響変換装置。
【請求項3】
前記第1ボイスコイルと前記第2ボイスコイルは、互いに異なる内径を有し、一方のボイスコイルが、他方のボイスコイルの径方向の内側に配置されている、請求項1に記載の音響変換装置。
【請求項4】
前記第1ボイスコイル及び前記第2ボイスコイルのうち、外側のボイスコイルは、ボイスコイルボビンを介して前記振動板に支持されており、内側のボイスコイルは、前記振動板に直接支持されている請求項3に記載の音響変換装置。
【請求項5】
前記ボイスコイルボビンは、当該ボイスコイルボビンの内外を連通させる開口部を有し、
前記内側のボイスコイルは、前記開口部を通って配線される配線部を有する請求項4に記載の音響変換装置。
【請求項6】
前記外側のボイスコイルは、発音用ボイスコイルを構成する前記第1ボイスコイルであり、
前記内側のボイスコイルは集音用のボイスコイルを構成する前記第2ボイスコイルである、請求項3~請求項5の何れか1項に記載の音響変換装置。
【請求項7】
磁性体で構成され、前記第1ボイスコイル及び前記第2ボイスコイルの軸方向に沿って対向して配置されたトッププレート及びボトムプレートと、前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に配置されるマグネットと、
を有する磁気回路を備え、
前記トッププレートは、前記第1ボイスコイル及び前記第2ボイスコイルを各々配置する磁気ギャップを有し、
前記マグネットは、前記磁気ギャップの両側に配置され、互いに逆向きの磁界を形成する複数のマグネットを有する、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の音響変換装置。
【請求項8】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容された請求項1~請求項7の何れか1項に記載の音響変換装置と、
を有するヘッドセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響変換装置及びこれを備えるヘッドセットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発音用のスピーカと集音用のマイクを備えるイヤフォンマイクが開示されている。このイヤフォンマイクでは、筐体としてのハウジングにスピーカが収容されており、ハウジングと一体をなす音筒部にマイクが収容されている。音筒部は、装着時に外耳道内に延び、外耳道内で発生した音がマイクで集音される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術では、ハウジングの内部においてスピーカとマイクとが別々に設けられている。このため、各部品の収容スペースを別々に確保すると、ハウジングが大型化し、ヘッドセット等の製品の小型化に対応することが難しいという課題がある。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、発音機能と集音機能を備える製品の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る音響変換装置は、振動板と、前記振動板の振動方向を軸方向として配置され、直接又は部材を介して前記振動板に支持された第1ボイスコイル及び第2ボイスコイルと、を備え、前記第1ボイスコイルは、音響信号の入力により駆動され前記振動板を振動させる発音用のボイスコイルとして構成され、前記第2ボイスコイルは、外部の音により振動される前記振動板と一体に振動され音響信号を出力する集音用のボイスコイルとして構成されている。
【0007】
第1の態様に係る音響変換装置では、振動板と、振動板に支持された第1ボイスコイル及び第2ボイスコイルを備えている。第1ボイスコイル及び第2ボイスコイルは、振動板の振動方向を軸方向として配置され、直接又は部材を介して振動板に支持されている。
【0008】
ここで、第1ボイスコイルは、発音用のボイスコイルとして構成されている。従って、第1ボイスコイルは音響信号の入力により駆動され、振動板を振動させることで音響変換装置が発音する。また、第2ボイスコイルは、集音用のボイスコイルとして構成されており、振動板が外部の音の空気振動を受け止めて振動するのと同時に振動し、その音を電気信号に変換する。従って、第2ボイスコイルは振動板の振動により振動し、第2ボイスコイルを流れる電気信号を音響信号として出力することで、音響変換装置は振動板の外部の音を集音する。
【0009】
このように、本開示の音響変換装置では、発音用のボイスコイルと集音用のボイスコイルとが、共通の振動板を介して一体に設けられ、従来、互いに独立して構成された音響変換装置であったスピーカの発音機能とマイクの集音機能とを一体化している。このため、スピーカとマイクを別々に配置した構成と比較して省スペース化を図ることができ、その結果、音響変換装置が搭載されるヘッドセット等の製品の小型化を図ることができる。
【0010】
また、発音用のボイスコイルと集音用のボイスコイルとは別々のコイルで構成され、コイル毎に巻き数や線材を使い分けることができる。これにより、発音及び集音の性能を必要に応じて最適化させることができる。
【0011】
ところで、従来、集音用のマイクでノイズを集音し、集音されたノイズと逆位相の音波をスピーカで発生させ、ノイズを打ち消す技術が知られている(アクティブノイズキャンセリング(ANC))。このような技術において、集音用のマイクと発音用のスピーカとを離間した位置に設けると、マイクで集音する音波と、スピーカから発せられた逆位相の音波との間に少なからず位相差が生じる。従って、マイクで集音した音波に対して、理想的な逆位相の音波を生成しても、マイクとスピーカとの間に距離があると、距離に応じた位相差が生じ、完全にノイズを打ち消すことが難しい。
また、個々のマイクやスピーカの位相特性は完全に一致しているものではなく、個体差がある。このため、マイクとスピーカの位相がずれた箇所においてノイズを打ち消そうとした場合、ノイズを打ち消すことができず、最悪の場合はノイズを増幅させるおそれがある。
【0012】
ここで、本開示では、集音機能と発音機能とが共通の振動板で構成され、一体化されている。このため、集音位置と発音位置が一致しており、集音と発音とが1つの音響変換装置で構成されているため、集音位置と発音位置との距離による位相差をなくすことができる。また、集音用のマイクと発音用のスピーカとが別々に構成されることによる固体差の問題を解決できる。したがって、ノイズキャンセリングの性能を高めることが可能となる。
【0013】
本開示の第2の態様に係る音響変換装置は、第1の態様に記載の構成において、前記第1ボイスコイルと前記第2ボイスコイルは、互いに同一の内径を有し、軸方向に並んで配置されている。
【0014】
第2の態様に係る音響変換装置では、第1ボイスコイルと第2ボイスコイルとが互いに同一の内径を有し、軸方向に並んでいるため、音響変換装置を径方向に小型化することができる。
【0015】
本開示の第3の態様に係る音響変換装置は、第1の態様に記載の構成において、前記第1ボイスコイルと前記第2ボイスコイルは、互いに異なる内径を有し、一方のボイスコイルが、他方のボイスコイルの内側に配置されている。
【0016】
第3の態様に係る音響変換装置では、第1ボイスコイルと第2ボイスコイルとが互いに異なる内径を有し、一方のボイスコイルが他方のボイスコイルの内側に配置されている。このように、二つのボイスコイルを径方向に並べて配置することにより、音響変換装置を軸方向に小型化させることができる。
【0017】
本開示の第4の態様に係る音響変換装置は、第3の態様に記載の構成において、第1ボイスコイル及び前記第2ボイスコイルのうち、外側のボイスコイルは、ボイスコイルボビンを介して前記振動板に支持されており、内側のボイスコイルは、前記振動板に直接支持されている。
【0018】
第4の態様に係る音響変換装置では、内側のボイスコイルは、振動板に直接支持されており、軽量化されている。このため、外側のボイスコイルを発音用とした場合、その出力に対し振動系の負荷が低減されるので、振動板の振幅(音圧)が低下することを抑制する。
【0019】
ボイスコイルの有効長とは、磁気ギャップにおけるボイスコイルの平均径の円周長と巻数の積によって示される。また、力係数とは、磁気ギャップにおける磁束密度とボイスコイルの有効長との積によって示される。
【0020】
磁気回路の中央側では配置スペースの制約から大きなマグネットを配置することが難しく、内側のボイスコイルの磁気ギャップでは外側のボイスコイルの磁気ギャップに比べて大きな磁束を確保することが難しい。内側のボイスコイルは、外側のボイスコイルに比べて小径になるが、ボイスコイルボビンを備えない構成とすることで、磁気ギャップ内の巻き線の層数を増やすことができ、ボイスコイルの有効長を長く設定することが可能になる。例えば、内側のボイスコイルを発音用とし、外側のボイスコイルを集音用とした場合、ボイスコイルボビンを備えない構成とすることで小径の内側のボイスコイルであっても、力係数を充分に確保することができ、振動板の振幅の低下を補うことが可能な駆動力を得ることができる。このように、内側のボイスコイルの有効長を長くすることで、力係数を向上させることができるため、内側のボイスコイルにおいても、所望の駆動力を確保することができ、スピーカとしての出力音圧を充分に確保できる。また、内側のボイスコイルを集音用とし、外側のボイスコイルを発音用とした場合においても、内側のボイスコイルの有効長を長くして力係数を向上させることができるため、所望の起電力を確保することができる。
【0021】
本開示の第5の態様に係る音響変換装置は、第4の態様に記載の構成において、前記ボイスコイルボビンは、当該ボイスコイルボビンの内外を連通させる開口部を有し、前記内側のボイスコイルは、前記開口部を通って配線される配線部を有している。
【0022】
第5の態様に係る音響変換装置では、内側のボイスコイルは、外側のボイスコイルが巻き付けられたボイスコイルボビンの開口部を通って配線部を引き出すことができる。これにより、内側のボイスコイルの配線部の引き回しを簡単にすることができ、製造工程を容易にすることができる。
【0023】
本開示の第6の態様に係る音響変換装置は、第3の態様~第5の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記外側のボイスコイルは、発音用ボイスコイルを構成する前記第1ボイスコイルであり、前記内側のボイスコイルは集音用のボイスコイルを構成する前記第2ボイスコイルである。
【0024】
第6の態様に係る音響変換装置では、集音用の第2ボイスコイルを発音用の第1ボイスコイルの内側に配置して、発音用のボイスコイルを大径化させている。これにより、入力された音響信号に対する振動板の振幅を高め、スピーカとしての出力音圧を確保することができる。
【0025】
本開示の第7の態様に係る音響変換装置は、第1の態様~第6の態様の何れか1態様に記載の構成において、磁性体で構成され、前記第1ボイスコイル及び前記第2ボイスコイルの軸方向に沿って対向して配置されたトッププレート及びボトムプレートと、前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に配置されるマグネットと、を有する磁気回路を備え、前記トッププレートは、前記第1ボイスコイル及び前記第2ボイスコイルを各々配置する磁気ギャップを有し、前記マグネットは、前記磁気ギャップの両側に配置され、互いに逆向きの磁界を形成する複数のマグネットを有する。
【0026】
第7の態様に係る音響変換装置では、磁性体で構成されたトッププレートとボトムプレートの間にマグネットが配置されることで磁気回路が形成されている。ここで、トッププレートは、第1ボイスコイル及び第2ボイスコイルを各々配置する磁気ギャップを有しており、当該磁気ギャップの両側には、互いに逆向きの磁界を形成する複数のマグネットが配置されている。従って、これらのマグネットの形成する磁界により、トッププレートにおける磁気ギャップの磁束密度が高まり、磁気ギャップの内側に配置されたボイスコイルに充分な磁束を付与することができる。
【0027】
本開示の第8の態様に係るヘッドセットは、ハウジングと、前記ハウジングに収容された第1の態様~第7の態様の何れか1態様に記載の音響変換装置と、を有する。
【0028】
第8の態様に係るヘッドセットでは、利用者の耳に装着されるヘッドセットのハウジングに発音用の第1ボイスコイルと集音用の第2ボイスコイルとを一体に構成する振動板を有する音響変換装置が配置される。これにより、ハウジング内において、発音用のスピーカと集音用のマイクとを個別に設ける必要がなく、ハウジング内における音響変換装置の収容スペースを省スペース化することができるため、ヘッドセットの小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、発音機能と集音機能を備えるヘッドセット等の製品の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る音響変換装置を適用したヘッドセットの側面図である。
【
図2】
図1の2-2線に沿って切断した状態を示すヘッドセットの断面図であり、ヘッドセットの装着状態を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る音響変換装置を振動板の正面から見た斜視図である。
【
図4】
図3の4-4線に沿って切断した状態を示す音響変換装置の断面図である。
【
図5】本実施形態に係る音響変換装置の振動板を背面側から見た斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る音響変換装置の磁気回路を示す模式図である。
【
図7】本実施形態に係る音響変換装置の第1の変形例を示す
図3に対応する断面図である。
【
図8】本実施形態に係る音響変換装置の第2の変形例を示す
図3に対応する断面図である。
【
図9】本実施形態に係る音響変換装置の第3の変形例を示す
図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本実施形態に係る音響変換装置10を適用したヘッドセット1について
図1~
図6を参照して説明する。なお、説明の便宜上、ヘッドセット1の装着時に外耳道の鼓膜側を前方側、外耳道の入口側又は耳介側を後方側という。
【0032】
(全体構成)
図1に示されるように、ヘッドセット1は、内部に機能部品を収容した中空のハウジング2を有している。ハウジング2は、ハウジング2の前部を構成するフロントハウジング2Aとハウジング2の後部を構成するリアハウジング2Bが前後方向に嵌合して形成されている。
【0033】
図2に示されるように、ヘッドセット1は、一例として、カナル型のイヤフォンとされており、フロントハウジング2Aの前端部には、装着時に利用者の外耳道E内に挿入される外耳道挿入部2Cが設けられている。外耳道挿入部2Cは、略円筒状に形成されており、外耳道E内とハウジング2の内部とを連通させている。
【0034】
外耳道挿入部2Cの外周には、イヤピース3が装着されている。イヤピース3は、イヤチップ、イヤパッド、イヤキャップとも呼ばれており、例えば、シリコーンゴムなどの弾性材料からなる。イヤピース3は、外耳道挿入部2Cの外周に嵌め込まれる円筒部3Aと、円筒部3Aの先端に設けられた半球カバー状の密着部3Bを有している。ヘッドセット1の装着状態では、イヤピース3の密着部3Bが外耳道Eの壁面に密着して外耳道を密閉する。
【0035】
ハウジング2において、外耳道挿入部2Cの後方には、空間部4が形成されている。空間部4には、発音機能と集音機能を備える音響変換装置10が収容されている。
【0036】
(音響変換装置)
図3及び
図4に示されるように、音響変換装置10は、振動板20と、振動板20を支持するフレーム30を有している。
【0037】
本実施形態の振動板20は、一例として、ドーム型の振動板であり、合成樹脂や布、紙、金属材料等で形成することができる。振動板20は、前方側を向く正面側に凸をなすように湾曲したドーム状のキャップ部22と、キャップ部22の径方向外側に形成されたリング状の連結部24と、連結部24の径方向外側に形成されたコーン状のコーン部26を有している。そして、コーン部26の周縁部には、リング状のエッジ部28が接合されている。また、エッジ部28において、周縁部の下面側には、フレーム30に接合する接合部28Aが形成されている。
【0038】
フレーム30は、円筒状に形成されており、合成樹脂や金属材料等で形成することができる。フレーム30において軸方向の前端には、円形枠状の振動板支持部32が形成されている。振動板支持部32は、振動板20のエッジ部28に設けた接合部28Aに接着等の方法で接合され、振動板20の外縁を保持している。これにより、振動板20の正面側の空間と背面側の空間が区画されている。
【0039】
また、
図3に示されるように、振動板支持部32には、フレーム30の内外を連通させるフレーム開口部34が形成されている。本実施形態では、振動板支持部32において、径方向に対向する位置に二つのフレーム開口部34が形成されている。フレーム開口部34は、一例として、振動板支持部32の側面を径方向に貫通し、前方側に開口した切り欠き部で構成されている。二つのフレーム開口部34からは、フレーム30の内側に収容された第1ボイスコイル50の配線部50Aと第2ボイスコイル60の配線部60Aがそれぞれ引き出されている。
【0040】
フレーム30は、振動板支持部32の軸方向の後端に一体形成された大径筒部36を有する。この大径筒部36は、振動板20の背面側に空間部を形成する筐体を構成し、第1ボイスコイル50と第2ボイスコイル60が収容されている。
【0041】
更に、フレーム30は、大径筒部36後方側に小径筒部38を有している。小径筒部38は、大径筒部36よりも小径の空間部であり、大径筒部36の後端から径方向内側に張り出した段差部40を介して大径筒部36と一体に形成されている。この小径筒部38には、磁気回路70が収容されている。
【0042】
なお、
図3に示すように、フレーム30の段差部40は、大径筒部36の底壁を構成している。段差部40には、軸方向(板厚方向)に貫通する複数の空気孔42が形成されており、空気孔42を通って振動板20の背面側の空気が外部と連通される。
【0043】
上述したように、上記構成のフレーム30には、第1ボイスコイル50、第2ボイスコイル60、及び磁気回路70が収容されている。
【0044】
(第1ボイスコイル)
図3及び
図4に示されるように、第1ボイスコイル50は、連結部24とコーン部26との接続部に支持されている。第1ボイスコイル50は、振動板20の振動方向(前後方向)を軸方向として巻回されており、ボイスコイルボビン52を介して振動板20に支持されている。
【0045】
ボイスコイルボビン52は一例として、合成樹脂や紙、アルミニウム合金等の軽量な素材から成る矩形のシート材を筒状に丸めて形成する。また、ボイスコイルボビン52は、シート材の端部同士を離間させた開口部54を有しており、開口部54を通じてボイスコイルボビン52の内外が連通されている。ボイスコイルボビン52は、軸方向の前端が接着等の方法で振動板20の背面に固定されている。これにより、ボイスコイルボビン52を介して第1ボイスコイル50が振動板20に支持されている。
【0046】
第1ボイスコイル50の軸方向の長さは、ボイスコイルボビン52の軸方向の長さに対して充分に短く設定されており、第1ボイスコイル50の軸方向の両端部からは、第1ボイスコイル50によって巻回されていないボイスコイルボビン52の非巻回部が露出している。なお、第1ボイスコイル50は、径方向に多層構造を成すように巻回することが好ましい。これにより、第1ボイスコイル50の軸方向の長さを短く設定した場合でも、ボイスコイルの有効長を確保することができる。
【0047】
本実施形態において、第1ボイスコイル50は、発音用のボイスコイルとして構成され、上述した振動板20に結合され、後述する磁気回路70の第1磁気ギャップG1に配置されることにより、音響変換装置10の発音機能部(スピーカ)を構成する。即ち、第1ボイスコイル50には、図示しない制御部の制御により、音響信号に相当する電気信号が入力される。電気信号は、第1ボイスコイル50と磁気回路70との間に磁気反発及び吸引作用を発生させ、第1ボイスコイル50を駆動(振動)させると同時に振動板20を振動させて発音する。
【0048】
ここで、第1ボイスコイル50の端部には、フレーム30の外部に引き出された配線部50Aが形成されている。配線部50Aは、振動板20の背面に沿って振動板20の外縁に至り、フレーム開口部34を通って外部に引き出されている。配線部50Aの先端は、フレーム30の外面に沿って後方側に延在し、端子板90に接続されている。
【0049】
(第2ボイスコイル)
第1ボイスコイル50の径方向の内側には、第1ボイスコイル50よりも小径の第2ボイスコイル60が配置されている。この第2ボイスコイル60は、キャップ部22と連結部24との接続部に支持されており、第1ボイスコイル50に対して同心円状に配置されている。
【0050】
ここで、第2ボイスコイル60は、軸方向の前端が、接着等の方法により振動板20の背面に直接固定されている。従って、ボイスコイルボビンを介さずに直接固定しているので、第1ボイスコイル50と比較して小径であっても、磁気ギャップ内の巻き線の層数を増やすことができ、ボイスコイルの有効長を確保することができる。このように、ボイスコイルの有効長を確保する観点では、第2ボイスコイル60は、径方向に多層構造を成すように巻回することが好ましい。
【0051】
なお、第2ボイスコイル60は、ボイスコイルボビンを備えない構成とすることで、ボイスコイルボビンに巻回する構成と比較して軽量化されているが、軽量化を一層促進する観点では、第2ボイスコイル60の線材は、第1ボイスコイル50の線材よりも断面積の小さな線材にすることが好ましい。
【0052】
第2ボイスコイル60の端部には、フレーム30の外部に引き出された配線部60Aが形成されている。配線部60Aは、ボイスコイルボビン52の開口部54を通ってボイスコイルボビン52の外部に引き出されている。そして、配線部60Aは、振動板20の背面に沿って振動板20の外縁に至り、フレーム開口部34を通って外部に引き出されている。配線部60Aの先端は、フレーム30の外面に沿って後方側に延在し、端子板90に接続されている。
【0053】
上記構成の第2ボイスコイル60は、集音用のボイスコイルとして構成されている。第2ボイスコイル60は、振動板20に結合され、後述する磁気回路70の第2磁気ギャップG2に配置されることにより、音響変換装置10の集音機能部(マイク)を構成する。即ち、振動板の外部(本実施形態では外耳道E内)の空気の振動を受けて振動板20が振動すると同時に、磁気回路の中で第2ボイスコイル60が振動し、ボイスコイルの両端に起電力を生じさせる。これにより、第2ボイスコイル60を流れる電気信号を音響信号として出力することで、振動板20の外部の音を集音する。
【0054】
第2ボイスコイル60は、第1ボイスコイル50の内側に配置されており、第1ボイスコイルよりも小径となっている。しかし、上述したように、ボイスコイルの有効長を長く設定することで、力係数を向上させ、起電力を確保している。従って、集音用のマイクとして所望の感度を得ることができる。
【0055】
上述のように、集音機能を有する第2ボイスコイル60によって、ヘッドセット1のアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を実現することができる。即ち、第2ボイスコイル60による集音機能でノイズを集音し、集音されたノイズと逆位相の音波を第1ボイスコイル50による発音機能で発音させ、ノイズを打ち消すことができる。
【0056】
ここで、従来、ヘッドセットにアクティブノイズキャンセリング機能を実装する場合、集音用のマイクと発音用のスピーカとがハウジング内の離間した位置に設けられることが一般的であった。しかし、マイクとスピーカとを離間した位置に設けると、マイクで集音する音波と、スピーカから発せられた逆位相の音波との間に少なからず位相差が生じる。このため、マイクで集音した音波に対して、理想的な逆位相の音波を生成しても、マイクから離れた位置にあるスピーカで出力することで距離に応じた位相差が生じ、完全にノイズを打ち消すことが難しいという課題があった。
また、個々のマイクやスピーカの位相特性は完全に一致しているものではなく、固体差がある。このため、マイクとスピーカの位相がずれた箇所においてノイズを打ち消そうとした場合、ノイズを打ち消すことができず、最悪の場合はノイズを増幅させるおそれがあった。
【0057】
そこで、発明者らは、発音用の第1ボイスコイル50と集音用の第2ボイスコイル60とを、共通の振動板20を介して一体に設ける構成を考案した。これにより、発音位置と集音位置の間の距離に基づく位相のずれを考慮しなくてもよく、マイクとスピーカの個体差に基づく位相特性を考慮しなくてもよいため、ノイズキャンセリング性能の精度を向上させることが可能となる。
【0058】
また、集音機能を有する第2ボイスコイル60によって、ノイズキャンセリング機能だけでなく、生体認証機能を実現することができる。第2ボイスコイル60による集音機能で利用者の外耳道E内の空気の振動を収集し、これらの音響特性を生体識別信号として生体認証を行うことができる。
【0059】
(磁気回路)
図4に示されるように、フレーム30の小径筒部38には、磁気回路70が収容されている。磁気回路70は、トッププレート72、ボトムプレート74、及びマグネット80を主要部として構成されている。本実施形態では、トッププレート72及びボトムプレート74は、フレーム30内で前後方向に対向配置されており、トッププレート72とボトムプレート74との間にマグネット80が配置されている。
【0060】
トッププレート72は、第1~第3プレート72A,72B,72Cを備える。第1~第3プレート72A,72B,72Cは、磁性体で形成されており、磁気回路70のヨークを構成している。第1プレート72Aは、リング状の板材であり、トッププレート72の外周部を構成する。第2プレート72Bは、第1プレート72Aよりも小径のリング状の板材であり、第1プレート72Aの径方向の内側に配置されている。第3プレート72Cは、第2プレート72Bよりも小径の円盤状の板材であり、第2プレート72Bの径方向の内側に配置されている。第1~第3プレート72A,72B,72Cは、径方向に所定の間隔を空けて同心円状に配置されている。第1プレート72Aと第2プレート72Bの間の空隙が第1磁気ギャップG1を構成し、第2プレート72Bと第3プレート72Cとの間の空隙が第2磁気ギャップG2を構成している。
【0061】
本実施形態では、第1磁気ギャップG1に第1ボイスコイル50が配置されている。また、第2磁気ギャップG2に第2ボイスコイル60が配置されている。
【0062】
第1プレート72Aは、外周縁部がフレーム30の段差部40に配置されており、第1プレート72Aを基準に磁気回路70の位置決めが行われる。第1プレート72Aには、周方向に沿って複数の切り欠き部76が形成されており、複数の切り欠き部76は、フレーム30の段差部40に形成された空気孔42に対応している。これにより、フレーム30の空気孔42を回避した位置で、第1プレート72Aが段差部40に支持されている。
【0063】
ボトムプレート74は、円盤状の板材であり、トッププレート72と対向して配置されている。ボトムプレート74は、トッププレート72と同様に磁性体で形成され、磁気回路70のヨークを構成している。
【0064】
マグネット80は、同心円状に配置された第1~第3マグネット82,84,86を備える。第1マグネット82は、リング状であり、第1プレート72Aとボトムプレート74との間に配置されている。第2マグネット84は、第1マグネット82よりも小径のリング状であり、第2プレート72Bとボトムプレート74との間に配置されている。第3マグネット86は、第2マグネット84よりも小径の円柱状であり、第3プレート72Cとボトムプレート74との間に配置されている。
【0065】
図6では、磁気回路70の磁力線を模式的に示している。この
図6に示されるように、本実施形態の磁気回路70では、トッププレート72に形成された第1磁気ギャップG1及び第2磁気ギャップG2の両側にそれぞれマグネットが配置されている。また、隣接するマグネット同士は、互いに逆向きの磁界を形成する。
【0066】
従って、例えば、第1磁気ギャップG1では、第2マグネット84によって、ボトムプレート74と第1マグネット82を経て、第1磁気ギャップG1を通る磁力線の磁気回路が形成されている。当該磁気回路では、第1マグネット82が反発マグネットとなり、第2マグネット84の磁気漏洩を抑制している。これにより、第1磁気ギャップG1の磁束密度が高まり、第1磁気ギャップG1の内側に配置された第1ボイスコイル50の駆動力を高めることができる。また、第2磁気ギャップG2では、第3マグネット86によって、第2磁気ギャップG2と第2マグネット84を経て、ボトムプレート74を通る磁力線の磁気回路が形成されている。当該磁気回路では、第2マグネット84が第3マグネット86の反発マグネットとなっている。
【0067】
上記構成の磁気回路70の後方には、端子板90が設けられている。端子板90には、第1ボイスコイル50及び第2ボイスコイル60の配線部50A,60Aに加えて、端子板90と図示しない制御部とを電気的に接続するコード92(
図1参照)が接続されている。
【0068】
(作用並びに効果)
以上説明したように、本実施形態に係る音響変換装置10では、振動板20と、振動板20に支持された第1ボイスコイル50及び第2ボイスコイル60を備えている。第1ボイスコイル50及び第2ボイスコイル60は、振動板20の振動方向を軸方向として配置され、直接又はボイスコイルボビン52等の部材を介して振動板20に支持されている。
【0069】
ここで、第1ボイスコイル50は、発音用のボイスコイルとして構成されている。また、第2ボイスコイル60は、集音用のボイスコイルとして構成されている。即ち、音響変換装置10では、発音用のボイスコイルと集音用のボイスコイルとが、共通の振動板20を介して一体に設けられているため、従来のスピーカとマイクのように、発音機能を備える音響変換装置と集音機能を備える音響変換装置とを別々に配置した構成と比較して省スペース化を図ることができる。このため、音響変換装置10が搭載されるヘッドセット1の小型化を図ることができる。
【0070】
また、発音用のボイスコイルと集音用のボイスコイルとを別々のボイスコイル50,60で構成したため、ボイスコイル毎に巻き数や線材を使い分けることができる。従って、ボイスコイルの用途に応じて性能を最適化させることができる。
【0071】
更に、上記実施形態では、集音用のボイスコイルと発音用のボイスコイルとが共通の振動板20で支持されているため、集音位置と発音位置が一致しているこれにより、集音用のボイスコイルを使用して集音した音に対して逆位相の音波を生成し、発音用のボイスコイルで出力すると、集音位置と発音位置との距離による位相差をなくすことができる。従って、ノイズを打ち消す理想的な逆位相の音波の位相と振動板から出力される音波の位相とのずれをなくすことができるため、ヘッドセット1のノイズキャンセリング機能を向上させることが可能である。
【0072】
また、本実施形態では、第1ボイスコイル50と第2ボイスコイル60とが互いに異なる内径を有し、第1ボイスコイル50の内側に第2ボイスコイル60が配置されている。このように、二つのボイスコイルを径方向に並べて配置する構成としたので、音響変換装置10を軸方向に小型化させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、ボイスコイルボビン52を介して第1ボイスコイル50が振動板20に支持されている。また、内側の第2ボイスコイル60は、振動板20に直接支持されており、ボイスコイルボビンを備えずに軽量化されている。このため、発音用のボイスコイルを構成する第1ボイスコイル50の出力に対し振動系の負荷が低減されるので、振動板20の振幅(音圧)が低下することを抑制できる。
【0074】
ところで、磁気回路70の中央側では配置スペースの制約から大きなマグネットを配置することが難しく、内側の第2ボイスコイル60が配置された磁気ギャップG2では外側の第1ボイスコイル50が配置される磁気ギャップG1に比べて大きな磁束を確保することが難しい。また、内側の第2ボイスコイル60は、外側の第1ボイスコイル50よりも小径のボイスコイルとなるため、ボイスコイルの有効長が短くなり、振動板20の振幅が低下し易い。このように、集音用の第2ボイスコイル60を第1ボイスコイル50の径方向の内側に配置すると、構造的には、内側の第2ボイスコイル60の起電力が低下し易い。しかしながら、本実施形態の第2ボイスコイル60では、ボイスコイルボビンを備えない構成とすることで、ボイスコイルの有効長を長く設定し、力係数を向上させることができる。その結果、小径の第2ボイスコイル60においても、所望の起電力を確保することができる。
【0075】
また、本実施形態では、ボイスコイルボビン52の開口部54を通って、第2ボイスコイル60の配線部60Aを引き出すことができる。これにより、第2ボイスコイル60の配線部60Aの引き回しを簡単にすることができ、製造工程を容易にすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、集音用の第2ボイスコイル60を発音用の第1ボイスコイル50の径方向の内側に配置することにより、集音用の第2ボイスコイル60よりも発音用の第1ボイスコイル50を大径化させている。これにより、第1ボイスコイル50の磁気回路を形成するマグネットを大型化させ、磁気ギャップG1で大きな磁束を確保することができるため、入力された音響信号に対する振動板の振幅を高めることができる。その結果、発音用の第1ボイスコイル50で、所望の出力音圧を確保することができる。
【0077】
更に、本実施形態に係る磁気回路70によれば、トッププレート72は、第1ボイスコイル50を配置する第1磁気ギャップG1と第2ボイスコイル60を配置する第2磁気ギャップG2を有しており、第1磁気ギャップG1及び第2磁気ギャップG2の両側には、互いに逆向きの磁界を形成するマグネット(第1~第3マグネット82,84,86)がそれぞれ配置されている。従って、マグネット80の形成する磁界により、第1磁気ギャップG1及び第2磁気ギャップG2の磁束密度が高まるため、第1ボイスコイル50に充分な駆動力を付与し、第2ボイスコイル60に充分な起電力を付与することができる。
[補足説明]
【0078】
以上、本開示の実施形態について説明したが、各構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせや変更を行うことができる。例えば、上記実施形態では、第1ボイスコイルがボイスコイルボビンを介して振動板に支持される構成としたが、これに限らない。
図7に示す第1の変形例に係る音響変換装置100のように、第1ボイスコイル102と第2ボイスコイル104が振動板20に直接支持される構成としてもよい。この場合、第2ボイスコイル104の配線部は、第1ボイスコイル102の径方向内側で振動板20に設けた第1貫通孔から正面側に引き出され、その後、第1ボイスコイル102を跨いで第1ボイスコイル102の径方向外側で振動板20に設けた第2貫通孔から背面側に引き出され、振動板20の背面側でフレーム開口部から外部に引き出すことが可能である。
【0079】
若しくは、第1ボイスコイルと第2ボイスコイルとが、別々のボイスコイルボビンを介して振動板に支持される構成としても良い。
【0080】
また、第1の変形例に係る音響変換装置100の磁気回路106では、円盤状の底壁部108Aと底壁部108Aの周縁部から立設する側壁部108Bと、側壁部108Bの上端から径方向外側に突出したフランジ部108Cとを有するポット型のヨーク108を備える。ヨーク108の内部には、リング状の第2マグネット84と円柱状の第3マグネット86が収容され、ヨーク108の側壁部108Bと第2プレート72Bとの間の空隙に第1磁気ギャップG1が形成されている。このように、本発明は、上記実施形態に係る円盤状のボトムプレート74に替えて、ポット型のヨーク108を適用しても実施可能である。この場合、ポット型のヨーク108をフレーム30と一体に形成してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、同心円状に配置された第1ボイスコイルと第2ボイスコイルとが、振動板の背面に別々に固定される構成としたがこれに限らない。例えば、
図8に示す第2の変形例に係る音響変換装置200のように、共通のボイスコイルボビン202を介して振動板204に支持される構成としてもよい。音響変換装置200では、振動板204に支持されたボイスコイルボビン202に第1ボイスコイル206と第2ボイスコイル208とを径方向に重ねて巻回することで同心円状に配置している。なお、音響変換装置200では、発音用の第1ボイスコイル206の径方向の内側に集音用の第2ボイスコイル208が巻回されている。この場合、磁気回路は、ポット型のヨーク212と円盤状のトッププレート214、及び円柱状のマグネット216を有する内磁型の磁気回路210を適用することができる。磁気回路210では、ヨーク212の側壁部とトッププレート214との間に形成された磁気ギャップG3に、第1ボイスコイル206と第2ボイスコイル208が配置されている。
【0082】
なお、
図8に示す第2の変形例では、磁気ギャップG3の外側にマグネットが配置されない構成としたが、磁気回路の構成は適宜変更可能である。例えば、円柱状のマグネット216の径方向外側にリング状のマグネットを配置して、磁気ギャップG3の両側にマグネットが配置される磁気回路としてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、第1のボイスコイルと第2ボイスコイルが同心円状に配置される構成としたが、本発明はこれに限らない。
図9に示す第3の変形例に係る音響変換装置300に示されるように、同一の内径を有する第1ボイスコイル302と第2ボイスコイル304が、軸方向に並んで配置される構成としてもよい。音響変換装置300では、第1ボイスコイル302及び第2ボイスコイル304が、筒状のボイスコイルボビン306を介して振動板308に支持されており、発音用の第1ボイスコイル302の軸方向上方側(前方側)に集音用の第2ボイスコイル304が配置されている。
【0084】
第3の変形例に係る磁気回路310は、ポット型のヨーク312と、ヨーク312の底壁部に積層された円柱状の第1マグネット314及び第2マグネット316を有する。上方側の第1マグネット314の上面には、円盤状のトッププレート318が配置され、ヨーク312の側壁部とトッププレート318との間に第2ボイスコイル302を配置した磁気ギャップG4が形成される。また、第1マグネット314と第2マグネット316の間には、円盤状のミドルプレート320が配置され、ヨーク312の側壁部とミドルプレート320との間に第1ボイスコイル304を配置した磁気ギャップG5が形成される。
【0085】
また、本発明は、上記実施形態及び各変形例のように、第1ボイスコイルと第2ボイスコイルとが同軸的に配置されている構成に限らない。例えば、第1ボイスコイルに対して偏心した位置に第2ボイスコイルを配置してもよい。
【0086】
また、上記実施形態及び変形例では、発音用の第1ボイスコイルの内側に集音用の第2ボイスコイルを配置する構成としたが、これに限らず、集音用の第2ボイスコイルの内側に発音用の第1ボイスコイルを配置してもよい。
【0087】
また、上記実施形態及び変形例の振動板はドーム型の振動板で構成したが、振動板の形態は適宜変更して実施することができる。例えば、コーン型振動板や、平面振動板でもよい。
【0088】
また、上記実施形態及び変形例のように、各ボイスコイルの形状は円形の構成に限らない。例えば、トラック形(長円形)や角形等に適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 ヘッドセット
2 ハウジング
10 音響変換装置
20 振動板
50 第1ボイスコイル
50A 配線部
52 ボイスコイルボビン
54 開口部
60 第2ボイスコイル
60A 配線部
70 磁気回路
72 トッププレート
74 ボトムプレート
80 マグネット
100 音響変換装置
102 第1ボイスコイル
104 第2ボイスコイル
106 磁気回路
200 音響変換装置
206 第1ボイスコイル
208 第2ボイスコイル
300 音響変換装置
302 第1ボイスコイル
304 第2ボイスコイル
E 外耳道
G1 第1磁気ギャップ(磁気ギャップ)
G2 第2磁気ギャップ(磁気ギャップ)