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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100194
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】安全継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/30 20060101AFI20230710BHJP
   F16K 1/32 20060101ALN20230710BHJP
【FI】
F16L37/30
F16K1/32 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000701
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 正浩
【テーマコード(参考)】
3H052
3J106
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA32
3H052CA12
3H052CA24
3H052CB02
3H052CD03
3H052EA01
3H052EA16
3J106AA02
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC12
3J106BE13
3J106CA16
3J106GA03
3J106GA04
3J106GA11
3J106GA23
3J106GB01
3J106GB10
(57)【要約】
【課題】安全継手内の流路を高速で流れる超高圧の水素による安全継手のOリングが脱落、水素内の異物によるOリングの破損を防止出来る安全継手の提供。
【解決手段】本発明の安全継手(100)は、流路(1A、11A)が形成されたプラグ本体(1、11)と、弾性体により押圧配置される弁体(2、12)を有し、弁体は弁座に着脱するテーパ部によって構成される第1のシール手段(2S1、12S1)と、小径部(2C、12C)に設けられる第2のシール手段(2S2、12S2:例えばOリング)を備え、弁体を包囲する中空形状のカバー部材(5、15)を有し、弁体のテーパ部が弁座に座着していない場合に第2のシール手段から大径部側の領域の少なくとも一部を包囲する様に構成され、カバー部材の外周部には突起(5A、15A)が形成され、突起と、カバー部材の外周部と、流路の内周面により水素流路を形成している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路が形成された筒状のプラグ本体と、該プラグ本体に同一直線上に弾性体により押圧配置される弁体とを有し、
前記弁体は、大径部と、該大径部の一端に形成されて弁座に当接するテーパ部と、該テーパ部より延在した小径部とを有し、
弁体とプラグ本体は金属製であり、
前記プラグ本体に流路が形成され、当該流路は内径が大きい領域と内径が小さい領域を有し、
前記弁体は、前記プラグ本体に形成された弁座に着脱するテーパ部によって構成される第1のシール手段と、前記小径部に設けられ且つ前記プラグ本体に形成された流路の内径が小さい領域の内壁に着脱する第2のシール手段と備え、
前記流路の内径が大きい領域に配置されて前記弁体を包囲する中空形状のカバー部材を有し、当該カバー部材の中空部には少なくとも弁体の一部が収容され、弁体のテーパ部が弁座に座着していない場合に第2のシール手段から大径部側の領域の少なくとも一部を包囲する様に構成されており、
前記カバー部材の外周部には複数の突起が形成され、隣接する前記突起と、カバー部材の外周部と、流路の内径が大きい領域の内周面により水素流路を形成することを特徴とする安全継手。
【請求項2】
前記弁体は、
小径部から離隔した側の端部における先端棒状領域と、
段部を介して前記先端棒状領域に連続する前記大径部と前記小径部を有し、当該大径部は円盤状に構成されており、
前記小径部は前記テーパ部を介して円盤状の前記大径部に連続しており且つ大径部よりも外径寸法は小さく、
前記大径部の外径寸法は前記流路の内径が小さい領域の内径よりも大きく、前記小径部は前記流路の内径が小さい領域に侵入可能である請求項1の安全継手。
【請求項3】
前記カバー部材の中空部は、前記流路の内径が小さい領域側に形成された内径寸法が大きい領域と、前記流路の内径が大きい領域側に形成された内径寸法が小さい領域を有し、
前記弁体は前記カバー部材の中空部における内径寸法が大きい領域に侵入可能であり、前記弁体の前記円板状の大径部は前記カバー部材の中空部における内径寸法が小さい領域の内径には侵入することが出来ず、前記弁体の前記先端棒状領域は前記カバー部材の中空部における内径寸法が小さい領域の内径に侵入可能である請求項1、2の何れかの安全継手。
【請求項4】
内部に流路が形成された筒状のプラグ本体と、該プラグ本体に同一直線上に弾性体により押圧配置される弁体とを有し、
前記弁体は、大径部と、該大径部の一端に形成されて弁座に当接するテーパ部と、該テーパ部より延在した小径部とを有し、
弁体とプラグ本体は金属製であり、
前記プラグ本体に流路が形成され、当該流路は内径が大きい領域と内径が小さい領域を有し、
前記弁体は、前記プラグ本体に形成された弁座に着脱するテーパ部によって構成される第1のシール手段を有し、
前記流路の内径が小さい領域の内壁には凹部が形成され、当該凹部には第2のシール手段が収容されており、且つ、前記流路の内径が小さい側の内壁面を摺動して前記凹部を開放し或いは遮断するシャッター部材を設けていることを特徴とする安全継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料(例えば水素ガス)を供給する燃料供給装置(例えば、水素ガス充填装置)で用いられる管継手であって、緊急時に燃料供給装置と充填用ホースとを分離する機能を有する安全継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題意識の高まりに同調して、水素ガスを燃料に用いた燃料電池自動車、水素自動車等と、その様な車両の車載タンクに対して安定して効率良くガス燃料を充填する水素充填装置が普及している。その様な水素充填装置においては、水素充填中に車両の急発進や車両の衝突等の予期せぬ事象が生じた際に、充填装置側ホース部と車両側ホース部を確実に且つ安全に分離する安全継手が必要である。
出願人は、その様な安全継手として、低圧から高圧までの全圧力域においてシール性を向上した弁体を備えた安全継手であって、内部に流路が形成された筒状のプラグ本体と、該プラグ本体に同一直線上に弾性体により押圧配置される弁体(プラグ本体内の流路中に配置され、弾性材によりプラグ本体に形成された弁座に押圧される弁体)とより構成され、前記弁体は、前記プラグ本体に形成された弁座に着脱する第1のシール手段(弁体のテーパ部)と、前記プラグ本体に形成された流路に接する第2のシール手段(例えばOリング)と備える安全継手を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
係る安全継手(特許文献1)は有益であるが、充填時には超高圧の水素が高速で安全継手内の流路を流れるため、プラグ本体内の弁体において第2のシール手段を構成するOリングが脱落するおそれが存在することが判明した。
また、充填するべき水素中に仮に異物が混入していた場合には、当該異物が前記Oリングに接触して、前記Oリングを破損する恐れが存在することも判明した。
しかし、前記安全継手(特許文献1の安全継手)が新しい技術であるため、上述したOリングの脱落や破損を防止するための技術については、現状では提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-101115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、安全継手内の流路を高速で流れる超高圧の水素により安全継手のOリングが脱落することを防止すると共に、仮に水素内に異物が混入していた場合に当該異物がOリングに接触してOリングを破損することを防止出来る安全継手の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の安全継手(100)は、
内部に流路(1A、11A)が形成された筒状のプラグ本体(1、11)と、該プラグ本体(1、11)に同一直線上に弾性体(3、13)により押圧配置される弁体(2、12:プラグ本体1、11内の流路中に配置され、弾性材3、13によりプラグ本体1、11に形成された弁座1B、11Bに押圧される弁体)とを有し、
前記弁体(2、12)は、大径部(2A、12A)と、該大径部(2A、12A)の一端に形成されて弁座(1B、11B)に当接するテーパ部(2B、12B)と、該テーパ部(2B、12B)より延在した小径部(2C、12C)とを有し、
弁体(2、12)とプラグ本体(1、11)は金属製であり、
前記プラグ本体(1、11)に流路(1A、11A)が形成され、当該流路(1A、11A)は内径が大きい領域(1A-2、11A-2)と内径が小さい領域(1A-3、11A-3)を有し、
前記弁体(2、12)は、前記プラグ本体(1、11)に形成された弁座(1B、11B)に着脱するテーパ部(2B、12B)によって構成される第1のシール手段(2S1、12S1:弁体のテーパ部2B、12B)と、前記小径部(2C、12C)に設けられ且つ前記プラグ本体(1、11)に形成された流路(1A、11A)の内径が小さい領域(1A-3、11A-3)の内壁に着脱する第2のシール手段(2S2、12S2:例えばOリング4、14)と備え、
前記流路の内径が大きい領域(1A-2、11A-2)に配置されて前記弁体(2、12)を包囲する中空形状のカバー部材(5、15)を有し、当該カバー部材(5、15)の中空部(5C、15C)には少なくとも弁体(2、12)の一部が収容され、弁体(2、12)のテーパ部(2B、12B)が弁座(1B、11B)に座着していない場合に第2のシール手段(2S2、12S2:例えばOリング4、14)から大径部側の領域の少なくとも一部を包囲する様に構成されており、
前記カバー部材(5、15)の外周部には複数の突起(5A、15A:ガイド或いはフィン)が形成され、隣接する前記突起(5A、15A)と、カバー部材(5、15)の外周部(5B、15B)と、流路の内径が大きい領域(1A-2、11A-2)の内周面により水素流路を形成することを特徴としている。
【0007】
本発明の安全継手(100)において、前記弁体(2、12)は、
小径部(2C、12C)から離隔した側の端部(先端側)における先端棒状領域(2D、12D)と、
段部を介して前記先端棒状領域(2D、12D)に連続する前記大径部(2A、12A)と前記小径部(2C、12C)を有し、当該大径部(2A、12A)は円盤状に構成されており、
前記小径部(2C、12C)は前記テーパ部(2B、12B)を介して円盤状の前記大径部(2A、12A)に連続しており且つ大径部(2A、12A)よりも外径寸法は小さく、
前記大径部(2A、12A)の外径寸法は前記流路の内径が小さい領域(1A-3、11A-3)の内径よりも大きく、前記小径部(2C、12C)は前記流路の内径が小さい領域(1A-3、11A-3)に侵入可能であるのが好ましい。
また本発明において、前記カバー部材(5、15)の中空部(5C、15C)は、前記流路の内径が小さい領域(1A-3、11A-3)側に形成された内径寸法が大きい領域(5C-1、15C-1)と、前記流路の内径が大きい領域(1A-2、11A-2)側に形成された内径寸法が小さい領域(5C-2、15C-2)を有し、
前記弁体(2、12)は前記カバー部材(5、15)の中空部(5C、15C)における内径寸法が大きい領域(5C-1、15C-1)に侵入可能であり、前記弁体(2、12)の前記円板状の大径部(2A、12A)は前記カバー部材(5、15)の中空部(5C、15C)における内径寸法が小さい領域(5C-2、15C-2)の内径には侵入することが出来ず、前記弁体(2、12)の前記先端棒状領域(2D、12D)は前記カバー部材(5、15)の中空部における内径寸法が小さい領域(5C-2、15C-2)の内径に侵入可能であるのが好ましい。
【0008】
さらに本発明の安全継手(100-1)は、内部に流路(1A、11A)が形成された筒状のプラグ本体(1、11)と、該プラグ本体(1、11)に同一直線上に弾性体(3、13)により押圧配置される弁体(2、12:プラグ本体1、11内の流路中に配置され、弾性材3、13によりプラグ本体1、11に形成された弁座1B、11Bに押圧される弁体)とを有し、
前記弁体(2、12)は、大径部(2A、12A)と、該大径部(2A、12A)の一端に形成されて弁座(1B、11B)に当接するテーパ部(2B、12B)と、該テーパ部(2B、12B)より延在した小径部(2C、12C)とを有し、
弁体(2、12)とプラグ本体(1、11)は金属製であり、
前記プラグ本体(1、11)に流路(1A、11A)が形成され、当該流路(1A、11A)は内径が大きい領域(1A-2、11A-2)と内径が小さい領域(1A-3、11A-3)を有し、
前記弁体(2、12)は、前記プラグ本体(1、11)に形成された弁座(1B、11B)に着脱するテーパ部(2B、12B)によって構成される第1のシール手段(2S1、12S1:弁体のテーパ部2B、12B)を有し、
前記流路の内径が小さい領域(1A-3、11A-3)の内壁には凹部(1D、11D)が形成され、当該凹部(1D、11D)には第2のシール手段(2S2-1、12S2-1:例えばOリング4、14)が収容されており、且つ、前記流路の内径が小さい側(1A-3、11A-3)の内壁面を摺動して前記凹部(1D、11D)を開放し或いは遮断するシャッター部材(6、16)を設けていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上述の構成を具備する本発明によれば、弁開時にOリング(4、14)を被覆する部材(カバー部材5、15)を設けて、水素流入によるOリング(4、14)の脱落や破損を防止している。
ここで、充填装置側の継手(10)と充填ホース側の継手(20)が分離した場合には、弁体(2、12)が弁座(1B、11B)に座着して弁(2、2)が閉鎖され、水素はプラグ(10、20)内を流れないので、Oリング(4、14)が脱落する怖れはなく、水素内の異物によりOリング(4、14)が損傷する恐れもない。
一方、充填装置側の継手(10)と充填ホース側の継手(20)が結合している場合には、弁体(2、12)が弁座(1B、11B)から離隔して弁が開放しており、水素は高速でプラグ(10、20)内の流路を流れ、Oリング(4、14)の脱落や損傷が生じる可能性がある。
しかし本発明によれば、例えば、カバー部材(5、15)でOリング(4、14)を覆うので、高圧の水素流は直接Oリング(4、14)には作用せず、当該Oリング(4、14)が脱落することが防止される。そして水素はカバー部材(5、15)内を流れないので、仮に水素内に異物が混入しても、異物がOリング(4、14)を破損する事態は防止される。
【0010】
ここで、前記カバー部材(5、15)は中空に構成されており、その中空部(5C、15C)に弁体(2、12)を収容するが、カバー部材(5、15)に弁体(2、12)を収容した際には中空部(5、15)は弁体(2、12)と係合する。そのため、カバー部材(5、15)の中空部(5C、15C)の流体抵抗が大きくなる。その結果、水素は当該中空部(5、15C)に流入せず、抵抗の小さいカバー部材(5、15)の外周部(5B、15B)を流れる。
そのため、カバー部材(5、15)の中空部(5、15C)には高速の水素流が発生せず、弁体(2、12)に取り付けられたOリング(4、14)が高速の水素流に曝されることはない。その結果、カバー部材中空部(5、15C)に収容された弁体(2、12)のOリング(4、14)は、水素流により脱落することはなくなる。そして、カバー部材内部空間(5、15C)では水素流の流速が遅くなるため、異物が混入して異物がOリング(4、14)と衝突しても、当該Oリング(4、14)は破損しない。
【0011】
或いは本発明によれば、水素流路の内径が小さい領域(1A-3、11A-3)に溝(凹部1D、11D)を形成して、当該凹部(1D、11D)にOリング(4、14)を嵌合してシール機構(第2のシール機構2S2-1、12S2-1)を構成し、前記凹部(1D、11D)を被覆し或いは開放するシャッター(6、16)を設け、安全継手(100-1)が結合している時(平常時:開放時)は前記シャッター(6、16)により水素流路のOリング嵌合用の凹部(1D、11D)を被覆する。
そのため、シャッター(6、16)に被覆されたOリング(4、14)は超高圧で高速の水素流れに曝されることがなく、当該Oリング(4、14)が脱落することはない。また、仮に水素に異物が混入しても、前記シャッター(6、16)により、水素中の異物がOリング(4、14)に接触することが防止されるので、Oリング(4、14)の破損も防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】先行技術の説明図の説明図である。
図2図1で示す先行技術に係る安全継手が組み立てられた状態を示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る安全継手が分離して、弁体が弁座に座着して弁が閉鎖した状態を示す説明断面図である。
図4】第1実施形態で用いられる弁体の側面図である。
図5】第1実施形態で用いられるカバー部材の斜視図である。
図6図5のカバー部材の断面図である。
図7】第1実施形態に係る安全継手が分離しておらず、弁体は弁座から離隔して弁が開放した状態を示す説明断面図である。
図8】本発明の第2実施形態の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態の理解を容易にするため、最初に図1図2を参照して、先行技術(特許文献1)の概要を説明する。
図1は、先行技術(特許文献1)において、水素ガス充填装置側の継手10及び充填ホース側の継手20(図2)により構成された安全継手100の継手A側を示している。なお、添付図面において、水素ガス充填装置、充填ホースの図示は省略する。図1では、充填装置側の継手10が、充填ホース側の継手20と分離した状態を示している。
充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20は同様な構成部材(プラグ本体1、11、弁体2、12、弾性部材3、13その他)を有しているが、継手10、20における同様の構成部材も異なる符号で表示している。なお、弁体2、12とプラグ本体1、11は金属製である。そして、充填ホース側の継手20も充填装置側の継手10と同様に構成されている。
【0014】
図1において、プラグ本体1には流路1Aと弁体2を収容する弁体収容部1Cが形成されている。流路1Aは、充填装置側(図1では上方)に連通する小径の領域1A-1と、弁体収容部1Cに対応する大径の領域1A-2と、充填ホース側(図1で下方)に連通する小径の領域1A-3を有している。
弁体収容部1Cは領域1A-1を介して充填装置側に接続され、領域1A-3を介して充填ホース側に接続されている。なお、弁体収容部1Cは流路1Aの一部を構成している。
図1において、プラグ本体1の弁体収容部1Cには、弁体2が流路1Aの流路方向(図1では上下方向)に移動可能に収容されており、弁体2よりも充填装置側(図1で上方)にはスプリング3が配置されている。スプリング3は、弁体2を、充填ホース側(図1で下方)に付勢しており、以て、弁体2を弁体収容部1Cの下端に形成されたテーパ状の弁座1B側に常時押圧している。
【0015】
図1において、弁体収容部1Cに配置される弁体2は、大径部2Aと、テーパ部2Bと、小径部2Cとにより構成される。テーパ部2Bは、大径部2Aの一端(図1では下端)に形成され、プラグ本体1に形成されたテーパ状の弁座1Bに当接可能に形成されている。
弁体2の小径部2Cには溝部2Gが形成されており、溝部2Gにはシール部材であるOリング4が収容されている。
弁体2の小径部2Cは流路1Aの充填ホース側(図1の下方)の領域1A-3に挿入可能であり、充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20が分離している場合(図1示す場合)は、小径部2Cは領域1A-3に挿入している。一方、充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20が結合している場合(図2の場合)は、小径部2Cは領域1A-3よりも充填装置側(図1では上方)に位置しており、領域1A-3には挿入されていない。
【0016】
図1において、弁体収容部1Cに形成されたテーパ状の弁座1Bと弁体2の大径部2Aの一端に形成されたテーパ部2Bにより、第1のシール手段2S1が構成されている。弁体2のテーパ部2Bがプラグ本体1の弁座1Bに座着することにより、弁(第1のシール手段2S1)が閉鎖され、図1に示す状態となる。一方、弁体2のテーパ部2Bがプラグ本体1の弁座1Bから離隔すると、第1のシール手段2S1(弁)は開放されて、図2に示す状態となる。
第1のシール手段2S1においては、弁体2とプラグ本体1は共に金属製なので、弁体2が弁座1に座着するとメタルシールを構成し、密閉性を確保することが出来る。特に、流体燃料の高圧時には、第1のシール手段2S1は、耐圧強度と共に優れた密封性を発揮する。
【0017】
図1において、弁体2の小径部2Cの溝部2Gに収容されたOリング4は、充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20が分離した時(図1)、流路1Aの充填ホース側の領域1A-3の内壁面と接する様に構成されており、Oリング4と領域1A-3(の内壁面)により、第2のシール手段2S2が構成される。
Oリング4が領域1A-3と接触することにより、第2のシール手段2S2が密封性を発揮する。一方、小径部2Cがプラグ本体1の弁体収容部1C側に移動しOリング4が充填ホース側の領域1A-3と接しない状態(図2の状態)では、第2のシール手段2S2は密封性を発揮することが出来ない。
第2のシール手段2S2において、充填ホース側の領域1A-3の内壁面とOリング4の接触(或いは摺動状態で接触)することにより、低圧時のシール性が向上する。
【0018】
図2に示す安全継手100の組み立て時、すなわち、充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20が結合した場合には、充填装置側の継手10、充填ホース側の継手20の間にはロッド8が介在しており、ロッド8の充填装置側(図2では上方)の端部が充填装置側の弁体2を押圧し、スプリングの弾性力に抗して弁体2を弁座1Bから離隔させる。一方、ロッド8の充填ホース側(図2では下方)の端部が充填ホース側の弁体12を押圧して弁体12を弁座11Bから離隔させる。そのため、第1のシール手段2S1、12S1(弁体2のテーパ部2Bと弁座1Bにより構成される弁と、弁体12のテーパ部12Bと弁座11Bにより構成される弁)は開放される。
同時に第2のシール手段2S2、12S2では、小径部2Cが領域1A-3に挿入されておらず、小径部12Cが領域11A-3に挿入されていないので、Oリング4Oリング14は領域1A-3、11A-3の内壁面に接触しておらず、シール機能は発揮されない。
そのため、水素ガスはシールされることなく、充填装置側から、安全継手100(継手10、20の流路1A、11A)を通過して充填ホース側(車両の燃料タンク側)に流過出来る。
【0019】
水素ガス充填中に水素充填用ホース(図示せず)に想定以上の引張力が負荷された場合、図示しない公知の機構により、充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20とが分離する。
充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20が分離すると、ロッド8は継手10と継手20から外れるため、弁体2、12は、それぞれ、スプリング3、13により押圧されてプラグ本体1、11の弁座1B、11B側に移動し、弁体2、12のテーパ部2B、12Bが弁座1B、11Bに座着し、第1のシール手段2S1、12S1が閉鎖される。
また充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20が分離すると、弁体2、12の小径部2C、12Cが領域1A-3、11A-3に挿入されるのでOリング4と充填ホース側の領域1A-3により構成される第2のシール手段2S2と、Oリング14と充填ホース側の領域11A-3により構成される第2のシール手段12S2は、シール機能を発揮する。
その結果、充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20が分離した時には、充填装置側の水素ガス(流体燃料)が継手10を介して外部に流出することが防止され、充填ホース側の水素ガスが継手20を介して外部に流出することが防止される。
【0020】
次に、図3図7を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
上述した様に、充填時には超高圧の水素が高速で安全継手内の流路1A-2、11A-2を流れるため、第2のシール手段を構成するOリング4、14が脱落する怖れがある。また、充填するべき水素中に仮に異物が混入していた場合には、当該異物がOリング4、14に接触して、Oリング4、14を破損する恐れも存在する。
それに対して本発明では、弁開時にOリング4、14を被覆する部材を設けて、水素流入によるOリング4、14の脱落や破損を防止している。
【0021】
図1図2で従来技術の概要を説明した際には、充填装置側の継手10側を図示して説明したが、図3図7の第1実施形態の説明では、充填ホース側の継手20側を図示して説明する。
上述した様に、充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20は同様な構成部材を有している。そして、第1実施形態に係る継手10或いは20は、弁開時にOリング4、14を被覆する部材としてカバー部材15(或いは5:図1図2の従来技術には設けられていない構成)を備えている。そしてカバー部材15(5)を備えており且つ機能させるため、図3図7の第1実施形態における弁体12(2)等の形状は、図1図2の従来技術とは異なっている。ただし、図3図7において、図1図2で示す従来技術に対応する部材の符号については、図1図2と同様の符号を用いている。
図3図7については、充填ホース側の継手20側の部材を示しており、充填装置側の継手10に関する部材は示していない。
【0022】
図3は、図示しない充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20が分離した状態を示している。
図3において、継手20のプラグ本体11には、流路11Aと弁体収容部11Cが形成されており、弁体収容部11Cには弁体12が収容されている。流路11Aは、充填装置側(図3では上方)に連通する小径の領域11A-3と、弁体収容部11Cを構成する大径の領域11A-2と、充填ホース側(図3で下方)に連通する小径の領域11A-1により構成されている。
弁体収容部11Cは領域11A-3を介して充填装置(図示せず)側に接続され、領域11A-1を介して充填ホース(図示せず)側に接続されている。
水素流の流れる方向は図3図7において矢印Yで示される。ただし、図示しない充填装置側の継手10と分離した状態の図3では水素は流れず、水素が泣かれた場合の仮想的な水素流の方向が矢印Yで示されている。
水素流は充填装置側の継手10(プラグ本体1、図1参照)から充填ホース側の継手20(プラグ本体11)に向かって流れ(矢印Y1)、充填ホース側の継手20(プラグ本体11)から図示しない充填ホースに流れる(矢印Y2)。なお、図示しない充填装置側の継手10(図1参照)においては、水素ガスの流れる方向は、図3に示す方向Y1、Y2とは逆方向となる。
【0023】
図3において、プラグ本体11の弁体収容部11Cには、弁体12が流路11Aの方向(流路11Aの長手方向:図3では上下方向)に移動可能に収容されており、弁体12よりも充填ホース側(図3で下方)にはスプリング13が配置されている。スプリング13は、弁体12を、充填装置側(図3で上方)に付勢しており、以て、弁体12を弁体収容部11Cの上端に形成されたテーパ状の弁座11B側に常時押圧している。
弁体12とプラグ本体11は金属製である。
弁体12の小径部12Cには溝部12Gが形成されており、溝部12Gにはシール部材であるOリング14が嵌合(収容)されている。
弁体12の小径部12Cは流路11Aの充填装置側(図3の上方)の領域11A-3に挿入可能であり、充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20が分離した場合(図3で示す場合)は、小径部12Cは領域1A-3に挿入されており、弁体12は弁体収容部11Cの上端に形成されたテーパ状の弁座11Bに座着している。一方、図7で示す場合、すなわち充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20が結合している場合は、小径部12Cは領域11A-3には挿入されておらず、領域11A-3よりも充填ホース側(図3では下方)に位置している。
【0024】
上述した様に弁体12は、図3においては弁体収容部1C(領域11A-2)に位置しているが、弁体12の詳細は図4に示されている。以下、図4(及び図3)を参照して弁体12を説明する。
図4において、弁体12は、大径部12Aと、大径部12Aの一端に形成されて弁座11Bに当接するテーパ部12Bと、テーパ部12Bより図4の上方へ延在した小径部12Cを有している。さらに弁体12は、小径部12Cから離隔した側(図4の下方)の端部近傍(先端側)の先端棒状領域12Dを有している。
大径部12Aは、段部を介して先端棒状領域12Dに連続しており、円盤状に構成されている。大径部12Aの外径寸法は領域11A-3の内径よりも大きい。
小径部12Cはテーパ部12Bを介して大径部12Aに連続しており、且つ大径部12Aよりも外径寸法は小さい。小径部12Cの外径寸法は領域11A-3の内径寸法が小さく、領域11A-3に侵入可能に構成されている。
先端棒状領域12Dの先端側(充填ホース側、図3図4で下側)は水素流に対する抵抗減少のため、テーパ部12DTが形成されている。図示はされていないが、逆方向の水素流に対する抵抗を減少するため、弁本体12の小径部12Cの充填装置側の端部(図3で上側)にテーパを付けて尖らせることが出来る。
【0025】
図4及び図3において、弁体12の大径部12Aの一端に形成されたテーパ部12Bと、プラグ本体11に形成された弁座11Bにより第1のシール手段12S1が構成されている。弁体12のテーパ部12Bがプラグ本体11の弁座11Bに座着することにより、第1のシール手段12S1が閉鎖される(図3に示す状態)。一方、弁体12のテーパ部12Bがプラグ本体11の弁座11Bから離隔すると、第1のシール手段12S1は開放される(図7に示す状態)。
共に金属製の弁体12とプラグ本体11により構成される第1のシール手段12S1は、弁体12のテーパ部12Bが弁座11Bに座着するとメタルシールを構成し、特に、流体燃料の高圧時には、耐圧強度と共に優れた密封性を発揮する。
【0026】
図4及び図3において、弁体12の小径部12Cに形成された溝部12Gに収容されたOリング14は、充填装置側の継手10(図1)と充填ホース側の継手20が分離した時(図3の状態)、流路11Aの充填装置側の領域11A-3の内壁面と接する様に構成されている。Oリング14と領域11A-3の内壁面により、第2のシール手段12S2が構成される。Oリング14が領域11A-3の内壁面と接触することにより密封性を発揮し、第2のシール手段12S2が閉鎖状態となる。図4では、Oリング14が弁体12に組み込まれた状態が表示されている。
一方、小径部12Cがプラグ本体11の弁体収容部11C側に移動しOリング14が充填装置側の領域11A-3と接しない状態(図7の状態)では、第2のシール手段12S2も開放状態であり、密封性を発揮しない。
第2のシール手段12S2において、充填装置側の領域11A-3の内壁面とOリング14の接触(或いは摺動状態で接触)することにより、低圧時のシール性が向上する。
【0027】
図3において、弁体収容部1C(領域11A-2)に位置している弁体12は、中空形状のカバー部材15により包囲されている。カバー部材15の詳細が図5図6に示されている。図5図6及び図3図4を参照してカバー部材15の構成、機能を説明する。
図6で示す様に、カバー部材15は中空部15C(15C-1、15C-2)を有している。中空部15C-1、15C-2を包括的に中空部15Cと記載する場合がある。
図6で明示されている様に、カバー部材15の中空部15Cは内径寸法が大きい領域15C-1と内径寸法が小さい領域15C-2を有している。内径寸法が大きい領域15C-1は、図3及び図7の組み立てられた状態では、流路の内径が小さい領域11A-3側に形成される。内径寸法が大きい領域15C-1には、弁体12の円板状の大径部12Aが進入可能である。内径寸法が小さい領域15C-2は、図3及び図7の組み立てられた状態では、流路の内径が大きい領域11A-2側に形成される。内径寸法が小さい領域15C-2には、弁体12の大径部12Aが進入不可能である。ただし、内径寸法が小さい領域15C-2には、弁体12の先端棒状領域12Dが侵入可能である。
【0028】
カバー部材15の中空部15Cには少なくとも弁体12の一部が収容される。すなわち、弁体12のテーパ部12Bが弁座11Bから離間して弁座11Bに座着していない場合、すなわち弁(第1のシール部材12S1)が開放されている場合(図7の場合)、内径寸法が大きい領域15C-1は、第2のシール手段12S2(Oリング14)から弁体12の大径部12A側の領域の少なくとも一部を包囲している。
一方、弁体12のテーパ部12Bが弁座11Bに座着している場合、すなわち弁が閉鎖されている場合(図3の場合)、中空部15Cにおける内径寸法が大きい領域15C-1は、弁体12の大径部12Aと小径部12Cの少なくとも一部を包囲している。
【0029】
図5で示す様に、カバー部材15の外周部15Bには複数の突起15A(ガイド或いはフィン、図5)が形成されており、複数の突起15Aの各々は、カバー部材15の流路方向に概略全長に亘って延在している。突起15Aと、カバー部材15の外周部15Bと、流路の内径が大きい領域11A-2の内周面により、水素流路が形成される。当該水素流路に水素ガスが流れるのは、図7で示す様に、充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20が結合している場合である。図3で示す場合、すなわち継手10と継手20が分離している場合には、突起15Aとカバー部材15の外周部15Bと領域11A-2の内周面により構成される水素流路には水素ガスは流れない。
図5図6には示されていないが、カバー部材15が流路方向に移動する際にカバー部材15の突起15Aをガイドするためのガイド溝を、流路11Aの内径が大きい領域11A-2の内周面に形成することが出来る。ただし、その様なガイド溝を省略しても良い。換言すれば、カバー部材15がプラグ本体11の流路11Aの内径が大きい領域11A-2の内部で回転(自転)可能であっても良い。また、突起15Aの一部のみがガイド溝に嵌合していれば良く、全ての突起15Aがガイド溝に嵌合していなくても良い。
【0030】
図示の第1実施形態では、図3で示す弁の閉鎖時において、カバー部材15の充填装置側の端部に形成されたストッパー部15D(図6)が、流路の内径が大きい領域11A-2の充填装置側の底部に係止し、空間K(図3)が形成される。
ただし、空間Kは無くても良く、カバー部材15の充填装置側の端部が、内径の大きい領域11A-2の充填装置側の底部に接触しても良い。換言すれば、カバー部材15が内径の大きい領域11A-2の充填装置側の底部と干渉して、Oリング14を被覆しない状態にならなければ、図3で示す空間Kの有無を限定するものではない。
図5図6で示す様に、カバー部材15には、組付時における充填ホース側(図5の右斜め下方:図6の下方)の端部に、抵抗減少のためのテーパ部15Eが形成されている。図示はされていないが、カバー部材15に、組付時における充填装置側(図5の左斜め上方:図6の上方)の端部にも、抵抗減少用のテーパを形成することが出来る。上述したテーパ部15Eは、充填装置側の継手10のカバー部材に適用した場合に、水素流と対向するので有効である。一方、図示しないテーパは、充填ホース側の継手20のカバー部材15に適用した場合に、水素流と対向するので有効である。
【0031】
図7には、充填装置側の継手10と充填ホース側の継手20が結合した場合において、充填ホース側の継手20が示されている。図7における水素ガスの流れる方向は矢印Y(Y1、Y2)で示される。
図7において、充填装置側の継手と充填ホース側の継手20の間にはロッド8が介在しており、ロッド8の充填ホース側(図7では下方)の端部が充填ホース側の弁体12を押圧し、スプリング13の弾性力に抗して弁体12のテーパ部12Bを弁座11Bから離隔している。図示はされていないが、ロッド8の充填装置側(図7では上方)の端部が充填装置側の継手10の弁体2(図7では図示せず)を押圧し、充填装置側の継手10においても、弁体2のテーパ部2Bを弁座1B(図1図2)から離隔している。
そのため、充填ホース側の継手20の第1のシール手段12S1(弁体12のテーパ部12Bと弁座11Bにより構成される弁)は開放され、充填装置側の継手10(図示せず)の第1のシール手段2S1(図1図2、弁体2のテーパ部2Bと弁座1Bにより構成される弁)も開放される。
【0032】
なお、図7において、第1のシール手段2S1が開放されるのと同時に、充填ホース側の継手20における第2のシール手段12S2では、小径部12Cが領域11A-3に挿入されておらず、Oリング14は領域11A-3の内壁面に接触していないので、Oリング14はシール機能を発揮しない。同様に、図示しない充填装置側の継手10(図1図2)における第2のシール手段2S2もOリング4は領域1A-3の内壁面に接触しないので、シール機能は発揮しない。
第1のシール手段12S1、2S1が開放状態であり、第2のシール手段12S2、2S2はシール機能を発揮しないため、高圧の水素ガスは、水素ガス充填装置側から、安全継手100(継手10、20の流路1A、11A)を通過して充填ホース側(車両の燃料タンク側)に流過する。
【0033】
図7で示す状態では、カバー部材15の中空部15Cにおける内径寸法が大きい領域15C-1は、第2のシール手段12S2(Oリング14)から弁体12の大径部12A側の領域のすくなとも一部の領域を包囲している。そのため、カバー部材15の外周部15Bに形成された流路を通過する高圧の水素ガス流に対して、第2のシール手段12S2(Oリング14)を保護することが出来る。
カバー部材15により第2のシール手段12S2(Oリング14)を保護する機能については、後述する。
【0034】
図3で示す様に、弁体12のテーパ部12Bが弁座11Bに座着して弁(第1のシール手段12S1)が閉鎖され、第1のシール手段12S1と第2のシール手段12S2で水素ガスの漏洩を防止している状態では、プラグ本体11の流路11Aには高圧の水素ガスは流れないので、第2のシール手段12S2を構成するOリング14が脱落する怖れはなく、水素ガス内の異物によりOリング14が損傷する恐れもない。Oリング14の脱落や損傷は、図7で示す様に、弁が開放して流路11Aを水素ガスが流れる場合に生じる。
図3図7で示す第1実施形態によれば、弁体12の溝部12Gに収容されたOリング14をカバー部材15で包囲して保護するので、Oリング14が溝部12Gから脱落することが防止される。また、後述する様に、水素ガスはカバー部材15よりも半径方向外方に構成される複数の水素流路(複数の突起15A、外周部15B、流路の内径が大きい領域11A-2の内周面により構成される水素流路)を流れ、カバー部材15の内部空間内15Cを流れないので、異物が混入しても、異物はOリング14とは接触せずOリング14は破損しない。
【0035】
カバー部材15における水素ガスの流れについて説明する。
弁が開放状態にある図7において、弁体12とカバー部材15は、符号Fで示す様に当接している。具体的には、弁体12の大径部12Aの先端棒状領域12D側の端面と、カバー部材15の中空部15Cの段部が、符号Fで示す箇所で当接する。
弁体12の大径部12Aの端面とカバー部材15の段部が当接することにより、カバー部材15の内部(中空部15C)には弁体12の一部が収容され、そのため、中空部15Cにおける流体抵抗が大きくなり、カバー部材15内の中空部15Cには水素ガスが流れ難くなる。そして、弁体12の外表面とカバー部材15の中空部15Cの内表面の間には環状の空間が形成されるが、当該環状空間における半径方向の間隔が小さいため、流体抵抗が大きく水素ガスは流れ難い。
それに対して、カバー部材15よりも半径方向外方に構成される複数の水素流路(複数の突起15A、外周部15B、流路の内径が大きい領域11A-2の内周面により構成される水素流路)における流体抵抗は、(カバー部材15の中空部15Cにおける流体抵抗に対して)遥かに小さい。すなわち、中空部15Cにおいては、符号Fで示す箇所よりも下流側(充填ホース側)には水素が流れず、弁体12の外表面とカバー部材15の中空部15Cの内表面の間の環状空間における流体抵抗が大きいため、水素ガスはほとんど流れない。
水素ガスは、抵抗の少ないカバー部材15外側の流路、すなわち、カバー部材15の隣接する突起15A、外周部15B、流路の内径が大きい領域11A-2の内周面により構成される水素流路を流れる。水素ガスは、流体抵抗が少ない流路を流れ、図7の場合、流体抵抗が少ない流路は、カバー部材15の外周部側の流路だからである。
【0036】
水素ガスは流体抵抗の大きいカバー部材15内の中空部15Cにはほとんど流れない。ただし、カバー部材15の中空部15Cを流れる水素ガスの流量は、必ずしもゼロ(0)である必要は無い。中空部15Cの流体抵抗が、カバー部材15外側の流路(隣接する突起15A、外周部15B、流路の内径が大きい領域11A-2の内周面により構成される水素流路)よりも有意に大きければ良い。
なお、符号Fで示される当接箇所(弁体12の大径部12Aの端面とカバー部材15の中空部15Cの段部が当接する箇所)にシール材を配置して、カバー部材15の中空部15Cを流れる水素ガスの流量をゼロにすることができる。
【0037】
カバー部材15の中空部15Cを流れる水素ガスの流量が少なく(或いは流れず)、抵抗が少ないカバー部材15の外周部側の流路(カバー部材15の突起15A、外周部15B、流路の内径が大きい領域11A-2の内周面により構成される水素流路)を水素ガスは流れる。そのため、カバー部材15の中空部15Cの水素流の流速は非常に低いか或いはゼロとなり、カバー部材15の中空部15Cに収容された弁体12のOリング14は、中空部15Cを流れる水素流により脱落することはない。そして、中空部15Cでは水素流の流速が遅くなる(或いは流速はゼロになる)ため、異物が混入た水素ガスがOリング14と衝突しても、Oリング14は破損しない。
【0038】
次に、図8を参照して本発明の第2実施形態を説明する。
図8の第2実施形態の安全継手100-1では、充填装置側の継手10、充填ホース側の継手20のそれぞれのプラグ本体1、11における水素流路1A、11A側に、溝(凹部)を形成して、当該溝(凹部)にOリング4、14を嵌合している。その点で、図3図7の第1実施形態と異なっている。図8の第2実施形態において、図3図7の第1実施形態と同様な構成については、重複説明は回避する。
図3図7の第1実施形態と同様に、図8の第2実施形態は、充填ホース側の継手20に関して説明する。充填装置側の継手10には図示しない。
【0039】
図8は、図3図7の第1実施形態と異なる第2実施形態の構成を示している。
図8において、充填ホース側プラグ本体11の流路の内径が小さい領域11A-3の内壁には、凹部11D(溝)が形成されている。凹部11Dには第2のシール手段を構成するOリング14が嵌合(或いは収容)されている。
充填ホース側の継手20と充填装置側の継手10が分離して、弁が閉鎖した状態(第1実施形態の図3の状態)において、Oリング14と弁体12(小径部12C)の外周面により第2のシール手段12S2-1を構成するが、弁開放時を示す図8では第2のシール手段12S2-1は構成されていない。
流路11Aの内径が小さい領域11A-3には、領域11A-3の内壁面を摺動して凹部11Dを開放し或いは閉鎖するシャッター16が設けられている。シャッター16は、弁体12の軸方向の動作に連動し、弁開放時(第1実施形態の図7の状態:充填ホース側の継手20と充填装置側の継手10が結合している状態)では凹部11Dを閉鎖(遮断)し、弁閉鎖時(第1実施形態の図3の状態)には凹部11Dを開放する機能を有している。図8では、弁開放時に凹部11Dを閉鎖する位置にあるシャッターを符号16(A)で示す。そして、弁閉鎖時に凹部11Dを開放する位置にあるシャッターを符号16(B)で示す。シャッター16を(例えば弁体12の移動と連動して)移動する機構については、従来公知の機構を採用することが出来る。
【0040】
図8において、充填装置側及び充填ホース側の継手10、20が結合している状態(弁開放時:第1実施形態の図7の状態)では流路11Aの領域11A-3のOリング嵌合用の凹部11Dは位置16(A)のシャッター16により閉鎖されるので、凹部11Dに収容されたOリング14は保護される。その結果、流路11Aを流れる高圧高速の水素ガスによりOリング14が脱落することが防止され、水素ガス中に異物が混入しても、Oリング14は異物と接触せず、破損しない。
一方、継手10、20が分離された時(弁閉鎖時:第1実施形態の図3の状態)は、弁体12が移動して弁を閉鎖する動作と連動して、シャッター16を符号16(B)で示す位置に移動して凹部11Dを開放し、Oリング14を露出させる。露出されたOリング14は、弁体12の小径部12Cの外周面と協働して、第2のシール手段12S2-1として、低圧時におけるシール性能を発揮する。
図8の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図3図7の第1実施形態と同様である。
【0041】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0042】
1、11・・・プラグ本体
1A、11A・・・流路
1A-2、11A-2・・・内径が大きい領域
1A-3、11A-3・・・内径が小さい領域
1B、11B・・・弁座
1C、11C・・・弁体収容部
1D、11D・・・凹部
2、12・・・弁体
2A、12A・・・弁体の大径部
2B、12B・・・弁体のテーパ部
2C、12C・・・弁体の小径部
2D、12D・・・先端棒状領域
2S1、12S1・・・第1のシール手段
2S2、12S2、2S2-1、12S2-1・・・第2のシール手段
3、13・・・弾性体
4、14・・・Oリング
5、15・・・カバー部材
5A、15A・・・突起(ガイド或いはフィン)
5B、15B・・・カバー部材の外周部
5C、15C・・・カバー部材の中空部
5C-1、15C-1・・・カバー部材の中空部で内径寸法が大きい領域
5C-2、15C-2・・・カバー部材の中空部で内径寸法が小さい領域
6、16・・・シャッター部材
100、100-1・・・安全継手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8