(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100217
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】風速測定装置、焼結機及び焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
F27B 21/14 20060101AFI20230710BHJP
C22B 1/20 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
F27B21/14 B
C22B1/20 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000743
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉原 あずさ
(72)【発明者】
【氏名】岩見 友司
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 寿幸
(72)【発明者】
【氏名】谷本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆英
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001CA40
(57)【要約】
【課題】横風の影響を低減して定点において風速を測定することができる風速測定装置及び当該風速測定装置を有する焼結機を提供すること。
【解決手段】焼結機のパレットに焼結原料が装入されて形成される装入層上にて鉛直方向の風速を測定する風速測定装置であって、風速測定部と、風速測定部を囲む竪型の筒部と、一端部が前記装入層の上表面に接触し、前記パレットとともに移動する前記装入層に対して相対的に移動可能であり、他端部が前記筒部に接続して、前記筒部の下端と前記装入層の上表面との距離を保持する移動部と、を有し、前記筒部は、前記パレット上方を幅方向に横断して設けられる支持部に、上下方向に移動可能に支持される、風速測定装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結機のパレットに焼結原料が装入されて形成される装入層上にて鉛直方向の風速を測定する風速測定装置であって、
風速測定部と、
風速測定部を囲む竪型の筒部と、
一端部が前記装入層の上表面に接触し、前記パレットとともに移動する前記装入層に対して相対的に移動可能であり、他端部が前記筒部に接続して、前記筒部の下端と前記装入層の上表面との距離を保持する移動部と、
を有し、
前記筒部は、前記パレット上方を幅方向に横断して設けられる支持部に、上下方向に移動可能に支持される、風速測定装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記筒部に対して前記パレットの移動方向の上流側に設けられる、請求項1に記載の風速測定装置。
【請求項3】
前記風速測定部は、前記筒部の径方向中心に設けられる、請求項1または2に記載の風速測定装置。
【請求項4】
前記風速測定部は、前記筒部の高さ方向の中央よりも下方に設けられる、請求項1から3の何れか一項に記載の風速測定装置。
【請求項5】
前記筒部の断面形状は直径が50mm以上100mm以下の円形であり、前記筒部の長さは200mm以上400mm以下である、請求項1から4の何れか一項に記載の風速測定装置。
【請求項6】
前記移動部は、前記筒部の下端が、前記装入層の上表面との距離が0mm超20mm以下になるように前記筒部を保持する、請求項1から5の何れか一項に記載の風速測定装置。
【請求項7】
前記風速測定部は熱式質量流量計である、請求項1から6の何れか一項に記載の風速測定装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の風速測定装置を有する焼結機であって、
焼結原料を供給する給鉱装置と、
前記焼結原料が装入されて装入層が形成される循環移動式のパレットと、
前記給鉱装置の下流側に設けられ、前記装入層に点火する点火炉と、
前記点火炉の下流側に設けられる前記風速測定装置と、
前記パレット上方を幅方向に横断して設けられ、前記筒部を支持する前記支持部と、
前記パレットの下方に設けられ前記装入層内の空気を吸引する風箱と、
を有する、焼結機。
【請求項9】
前記風速測定装置は、前記パレットの幅方向における異なる位置に3つ以上設けられる、請求項8に記載の焼結機。
【請求項10】
請求項1から7の何れか一項に記載の風速測定装置を用いた焼結鉱の製造方法であって、
前記風速測定装置を用いて前記装入層上にて鉛直方向の風速を測定し、測定される風速が前記パレットの幅方向において一定になるように、焼結鉱の製造条件を定める、焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風速測定装置、焼結機及び焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結機における焼結速度は、焼結機の循環移動式のパレットに装入された装入層を通過する風速に大きく左右される。したがって、焼結機上における均一焼成等を目指す上では、装入層上の風速を測定し、当該風速分布を把握することが重要である。
【0003】
装入層上の風速を測定する技術として、特許文献1には風速計を装入層上に直接置いて、パレットと共に移動させつつ風量の変化を計測する方法が提案されている。
【0004】
一方、特許文献2には、装入層に対して相対的に移動可能な風速計が開示されている。特許文献2に開示された風速計は、装入層に対して相対的に移動できるので装入層上の定点における風速を測定できる。また、装入層の凹凸に合わせて風速測定部を上下方向に移動させることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-121348号公報
【特許文献2】特開2011-033266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法を用いることで、装入層上の風速を測定することができる。しかしながら、パレットと共に風速計が移動してしまうため、定点における風速の測定は難しい。
【0007】
特許文献2によると、装入層の上表面の凹凸に合わせて風速測定部の高さを変更すれば横風の影響が防げるとしている。しかしながら、風速測定部が横風に起因する乱流内にある場合、横風の影響を排除することなく正確な風速を測定することは困難である。
【0008】
本開示は上記従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、横風の影響を低減して定点において風速を測定することができる風速測定装置及び当該風速測定装置を有する焼結機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の要旨構成は以下のとおりである。
【0010】
[1] 焼結機のパレットに焼結原料が装入されて形成される装入層上にて鉛直方向の風速を測定する風速測定装置であって、
風速測定部と、
風速測定部を囲む竪型の筒部と、
一端部が前記装入層の上表面に接触し、前記パレットとともに移動する前記装入層に対して相対的に移動可能であり、他端部が前記筒部に接続して、前記筒部の下端と前記装入層の上表面との距離を保持する移動部と、
を有し、
前記筒部は、前記パレット上方を幅方向に横断して設けられる支持部に、上下方向に移動可能に支持される、風速測定装置。
【0011】
[2] 前記移動部は、前記筒部に対して前記パレットの移動方向の上流側に設けられる、前記[1]に記載の風速測定装置。
【0012】
[3] 前記風速測定部は、前記筒部の径方向中心に設けられる、前記[1]または[2]に記載の風速測定装置。
【0013】
[4] 前記風速測定部は、前記筒部の高さ方向の中央よりも下方に設けられる、前記[1]から[3]の何れか一つに記載の風速測定装置。
【0014】
[5] 前記筒部の断面形状は直径が50mm以上100mm以下の円形であり、前記筒部の長さは200mm以上400mm以下である、前記[1]から[4]の何れか一つに記載の風速測定装置。
【0015】
[6] 前記移動部は、前記筒部の下端が、前記装入層の上表面との距離が0mm超20mm以下になるように前記筒部を保持する、前記[1]から[5]の何れか一つに記載の風速測定装置。
【0016】
[7] 前記風速測定部は熱式質量流量計である、前記[1]から[6]の何れか一つに記載の風速測定装置。
【0017】
[8] 前記[1]から[7]の何れか一つに記載の風速測定装置を有する焼結機であって、
焼結原料を供給する給鉱装置と、
前記焼結原料が装入されて装入層が形成される循環移動式のパレットと、
前記給鉱装置の下流側に設けられ、前記装入層に点火する点火炉と、
前記点火炉の下流側に設けられる前記風速測定装置と、
前記パレット上方を幅方向に横断して設けられ、前記筒部を支持する前記支持部と、
前記パレットの下方に設けられ前記装入層内の空気を吸引する風箱と、
を有する、焼結機。
【0018】
[9] 前記風速測定装置は、前記パレットの幅方向における異なる位置に3つ以上設けられる、前記[8]に記載の焼結機。
【0019】
[10] 前記[1]から[7]の何れか一つに記載の風速測定装置を用いた焼結鉱の製造方法であって、
前記風速測定装置を用いて前記装入層上にて鉛直方向の風速を測定し、測定される風速が前記パレットの幅方向において一定になるように、焼結鉱の製造条件を定める、焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、横風の影響を低減して定点において風速を測定することができる風速測定装置及び当該風速測定装置を有する焼結機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】実施例における風速の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、本開示は以下の実施形態に限定されない。
【0023】
図1は、本実施形態に係る焼結機200の一例を示す模式図である。焼結機200は、一例においては、ドワイトロイド式の焼結機であり得る。焼結機200は、給鉱装置20と、循環移動式(無端移動式)のパレット21と、点火炉22と、支持部23と、風箱24と、風速測定装置100と、を有する。造粒された焼結原料は、給鉱装置20からパレット21に装入され、パレット21上にて焼結原料の装入層が形成される。装入層は、パレット21上を図の矢印方向に移動し、給鉱装置20の下流側に設けられた点火炉22にて点火される。パレット21の下方に設けられている風箱24を介して、装入層内の空気を下方に吸引することにより、装入層中の炭材を順次燃焼させる。この燃焼は、パレット21の移動につれて次第に下層にかつ下流側に向かって進行する。このときに発生する燃焼熱によって、焼結原料が燃焼、溶融し、燃焼帯及び溶融帯が形成される。燃焼帯及び溶融帯が装入層の下層にかつ下流側に向かって進行して、焼結ケーキが生成される。その後、得られた焼結ケーキは破砕され、クーラーで冷却され、整粒されて成品焼結鉱となる。
【0024】
点火炉22の下流側には、パレット21上方を幅方向に横断して設けられる支持部23によって支持された、風速測定装置100が設けられている。風速測定装置100は、装入層上にて鉛直方向(上下方向)の風速を測定する。上述したように、風箱24を通じて装入層内の空気が下方に吸引されるので、減圧となった装入層内に装入層上の空気が引き込まれる。このため、装入層においては下方に向かう空気の流れが生じる。この空気の流れは、装入層の通気性に相関がある。すなわち、装入層の通気性が高い場合には装入層内の空気の多くが下方に吸引されるので、装入層上において測定される鉛直方向の風速が速くなる。一方、風箱24の負圧が同じであっても、装入層の通気性が低い場合には下方に吸引される装入層の空気が少なくなるので、装入層上において測定される鉛直方向の風速が遅くなる。したがって、装入層上の風速を把握することができれば、装入層の通気性を評価することができる。
【0025】
装入層の通気性は、焼結原料の燃焼帯及び溶融帯の移動速度に影響を及ぼす。装入層の通気性が高くなると、燃焼帯、溶融帯の移動速度が速くなる。装入層の通気性が低くなると、燃焼帯、溶融帯の移動速度は遅くなる。焼結鉱の生産性を高めるには、パレット21の幅方向において燃焼帯、溶融帯の移動速度が一定であることが好ましい。
【0026】
パレット21の幅方向において燃焼帯、溶融帯の移動速度が異なると、焼結鉱の歩留又は生産速度が低下する。パレット21の幅方向において燃焼帯、溶融帯の移動速度が最も早い位置の燃焼帯、溶融帯が、焼結機200の機端において装入層の下端に到達するようにパレット21の移動速度を定めた場合、燃焼帯、溶融帯の移動速度がより遅い位置の装入層が未焼結となり、焼結鉱の歩留が低下する。一方、パレット21の幅方向において燃焼帯、溶融帯の移動速度が最も遅い位置の燃焼、溶融帯が、焼結機200の機端において装入層の下端部に到達するようにパレット21の移動速度を定めると、パレット21の移動速度が遅くなって焼結鉱の生産速度が低下する。
【0027】
これに対し、パレット21の幅方向において燃焼帯、溶融帯の移動速度を一定にすることができれば、焼結機200の機端に到達するタイミングで燃焼、溶融帯の装入層の下端部に到達するようにパレット21の移動速度を定めることで、焼結鉱の歩留を低下させることなくパレット21の移動速度を速めることができ、高い生産性で焼結鉱を製造することができる。
【0028】
本実施形態に係る焼結鉱の製造方法では、装入層上における鉛直方向の風速を風速測定装置100を用いて測定し、風速測定装置100で測定された風速がパレットの幅方向において一定になるように、焼結鉱の製造条件を定める。焼結鉱の製造条件としては、例えば装入層の層厚が挙げられる。例えば、装入層上の風速が速い位置に対しては装入層の層厚を厚くし、風速が遅い位置に対しては装入層の層厚を薄くする。これにより、パレット21の幅方向において風速が一定に近づくので、装入層の通気性及び燃焼、溶融帯の移動速度も一定に近づけることができ、より高い生産性の焼結鉱の製造を実現することができる。
【0029】
次に、風速測定装置100の詳細について
図2を用いて説明する。
図2は、風速測定装置100の一例を示す模式図である。
図2(a)は風速測定装置100の側面図であり、(b)は風速測定装置100の上面図である。風速測定装置100は、風速測定部10と、風速測定部10を囲む竪型の筒部11と、移動部12とを有する。筒部11は、風速測定部10の水平方向を囲む、すなわち焼結機に対して竪型に配置された筒部11である。
【0030】
風速測定部10は、装入層上において、鉛直方向の風速を測定する。風速測定部10としては、熱式質量流量計又はプロペラ式の風速測定器を用いることができる。可動部がなく粉塵の影響を受けづらいことから、風速測定部10としては、熱式質量流量計を用いることが好ましい。
【0031】
筒部11としては、風速測定部10に対する横風の影響が排除できる筒状の部材を用いればよいが、断面形状が直径50mm以上の円形である円筒状の部材を用いることが好ましく、また断面形状が直径100mm以下の円形である円筒状の部材を用いることが好ましい。直径が50mm以上円筒状の部材を用いることで圧損の影響を受けることなく風速を測定できる。また、直径が100mm以下の円筒状の部材を用いることで、横風の影響を受けることなく風速を測定することができる。
【0032】
さらに、筒部11の長さは200mm以上であることが好ましく、また400mm以下であることが好ましい。当該長さの筒部11を用いることで、横風の影響を排除しつつ風速測定装置100の大型化を抑制することができる。
【0033】
筒部11は、パレット21の上方を幅方向に横断して設けられる支持部23に上下方向に移動可能に支持される。支持部23の形状は特に限定されず、例えば、梁、配管、フード、オーバーブリッジ等であり得る。支持部23は、パレット21と切り離されてパレット21の上方を横断して設けられている。そのため、支持部23はパレット21とともに移動せずに焼結機200内にて固定される。このため、支持部23に上下方向に移動可能に支持される筒部11は、支持部23に支持されてパレット21の移動方向には移動しないが、後述するように、筒部11に接続された移動部12がパレットとともに移動する前記装入層に対して相対的に移動することで、装入層の上表面の高さの変動に応じて、筒部11の下端と装入層の上表面との距離を保持するように、筒部11が支持部23に対して上下方向(鉛直方向)に移動する。支持部23と筒部11との接続部13の構成は特に限定されないが、一方にレール、他方にスライダーが設けられ、レール上をスライダーが動くような構成であってもよい。
【0034】
上述したように、特許文献2に記載の技術によっては、横風の影響を排除することなく正確な風速を測定することは困難である。また、横風の影響を排除するために筒部11の中に風速測定部10を設けると、装入層の上表面の凹凸により筒部11の下端が装入層の上表面に接触したり、筒部の下端が装入層の上表面から離れ過ぎたりして、風速を正確に測定することができないおそれがあることが、本発明者らの独自の検討により明らかとなった。本発明者らは、筒部11を支持部23に上下方向に移動可能に支持させ、かつ一端部が装入層の上表面に接触し、パレット21とともに移動する装入層に対して相対的に移動可能な移動部12の他端部に筒部11を接続することで、筒部11の下端と装入層の上表面との距離を維持することができることを知見して、本風速測定装置100の構成に到達するに至った。
【0035】
風速測定部10は、筒部11の径方向中心に設けられることが好ましい。筒部11内部の空気の流れは筒部11の壁面に影響を受ける。このため、風速測定部10を径方向の中心に設けることで、壁面の影響を抑制しながら装入層上の風速を測定することができる。さらに、風速測定部10は、筒部11の長さ方向の中央よりも下方に設けられることが好ましい。空気などの流体が筒部11の内側に入る場合、助走区間を経たのちに当該流体が定常速度になる。このため、筒部11の長さ方向の中央よりも下方に風速測定部10を設けることで、より定常速度に近づいた風速を測定することができ、風速の測定値の変動を少なくすることができる。
【0036】
移動部12は、一端部が装入層の上表面に接触し、パレット21とともに移動する装入層に対して相対的に移動可能であり、他端部が筒部11に接続して、筒部11の下端と装入層の上表面との距離を保持する。移動部12の構成は特に限定されないが、
図2の例では、装入層の上表面に接触する一端部に車輪14を有し、該車輪14を回転可能に軸支する回転軸15を有し、さらに、回転軸15を支持する軸支持部16を有し、該軸支持部16が他端部において筒部11に接続している。移動部12の装入層の上表面に接触する一端部と筒部11の下端との鉛直方向における距離は固定されている。
図2の例においては、筒部11と軸支持部16との間の角度は固定されている。これにより、筒部11の下端と装入層の上表面との距離を保持することができる。
【0037】
移動部12は、他端部が筒部11を介して支持部23に接続されているため、装入層がパレット21の移動方向に移動するのに対し、移動部12はパレット21の移動方向に移動しない。すなわち、移動部12は、移動するパレットに対して相対的に移動することで、パレット21の移動方向に移動せず、焼結機内にて所定位置に留まる。一方、筒部11は支持部23に対して上下方向に移動することができる。このため、筒部11及び風速測定部10は、装入層の上表面の高さ(鉛直方向位置)に対応して、移動部12の他端部に接続された筒部11の下端と装入層の上表面との距離を保持するように上下方向に移動できる。このように、本実施形態に係る風速測定装置100は、装入層の上表面に対応して上下方向に移動するので、筒部11の下端と装入層の上表面との距離を一定に維持することができ、装入層の上表面の高さが変動しても、筒部11の下端が装入層の上表面に接触したり装入層の上表面から離れ過ぎたりすることを抑制することができる。
【0038】
また、移動部12は、筒部11に対してパレット21の移動方向の上流側に設けられることが好ましい。移動部12を筒部11に対してパレット21の移動方向の上流側に設けることで、筒部11よりも先に移動部12が装入層の上表面に接触するようになるので、装入層の上表面の高さが変動しても、筒部11の下端が装入層の上表面に接触したり装入層の上表面から離れ過ぎたりすることをより確実に抑制することができる。
【0039】
また、風速測定部10はパレット21の幅方向における異なる位置に3つ以上設けることが好ましい。これにより、パレット21の幅方向における装入層の通気性の変動を把握でき、当該通気性の変動が少なくなるように焼結鉱の製造条件を調整することができる。
【0040】
次に、鍋試験装置により装入層上の風速測定を行った結果を説明する。直径300mm、高さ400mmの鍋に造粒後の焼結原料を装入して装入層を形成させ、当該装入層上の所定の位置に風速計(風速測定部)の端子を設置し、一部条件では端子を円筒部(筒部)の中心に設置した。ブロワーにより、1.3Nm3/min(線流速:0.3m/s相当)の空気を吸引し、途中から扇風機により約5m/sの風を当てた。
【0041】
各実施例における円筒部、風速計の端子、焼結原料の上表面との位置関係を
図3に示す。比較例1では端子に円筒部を取り付けず、剥き出しの状態とした。発明例1では円筒部(φ65、高さ300mm)により端子を囲み、円筒部の下端と焼結原料の上表面との距離は30mmとした。発明例2~4においても、発明例1と同様の円筒部を用いた。発明例2では円筒部により端子を囲み、円筒部の下端を焼結原料の上表面に接触させ、端子は円筒部の下端から200mmの位置に設置した。発明例3では円筒部により端子を囲み、円筒部の下端を焼結原料の上表面に接触させ、端子は円筒部の下端から30mmの位置に設置した。発明例4では円筒部により端子を囲み、円筒部の下端と焼結原料の表面との距離は20mmとし、端子は円筒部の下端から30mmの位置に設置した。なお、発明例1~4において、端子は円筒部の径方向中心に設けた。
【0042】
図4及び表1に風速の計測結果を示す。計測結果は、それぞれの条件において2秒ごとに出力される結果を2分で平均化したものである。該計測結果を、ブロワーによる吸引風速0.3m/sと比較した。
【0043】
【0044】
比較例1では、横風を与えていない条件においても若干の風の影響を受け、計測風速は吸引風速よりもかなり高くなった。また、横風を与えた条件では風速計の計測範囲(3m/s)をオーバーしてしまい、正確な風速を測定できなかった。
【0045】
発明例1~4では、横風を与えていない条件では、計測風速と吸引風速とにほとんど差なく、風速を正確に測定できることが確認された。発明例1~4では、比較例1に対して円筒部を設けたので、横風を与えていない条件における若干の風の影響を排除でき、これにより、正確な風速を測定できたものと考えられる。
【0046】
一方、発明例1と発明例2とでは、横風を与えた条件では計測風速が吸引風速よりも高くなった。発明例1は、装入層と円筒部材下端との距離が30mmと長いので、この部分で横風の影響を受け、計測風速が吸引風速よりも高くなったものと考えられる。発明例2では、円筒部材の高さ方向の中央よりも高い位置に計測端子を設けたため、非定常状態での風速測定となり、これにより、計測風速と吸引風速とに差が生じたものと考えられる。
【0047】
発明例3、4では横風を与えた条件であっても計測風速と吸引風速との差はなく、強い横風が生じた場合であっても装入層上の風速が正確に測定できることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
100 風速測定装置
200 焼結機
20 給鉱装置
21 パレット
22 点火炉
23 支持部
24 風箱
10 風速測定部
11 筒部
12 移動部
13 接続
14 車輪
15 回転軸
16 軸支持部