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特開2023-10025製パン用粉末組成物、及びパンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010025
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】製パン用粉末組成物、及びパンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 6/00 20060101AFI20230113BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20230113BHJP
   A21D 13/30 20170101ALI20230113BHJP
   A23L 7/10 20160101ALN20230113BHJP
【FI】
A21D6/00
A21D2/36
A21D13/30
A23L7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113774
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】508046362
【氏名又は名称】西岡 昭博
(71)【出願人】
【識別番号】509003977
【氏名又は名称】香田 智則
(71)【出願人】
【識別番号】521301312
【氏名又は名称】株式会社アルファテック
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昭博
(72)【発明者】
【氏名】香田 智則
(72)【発明者】
【氏名】井堀 希唯
(72)【発明者】
【氏名】福井 勝
【テーマコード(参考)】
4B023
4B032
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE26
4B023LG06
4B023LP07
4B023LP20
4B032DB02
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK55
4B032DP02
4B032DP15
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、簡便な製パン技術、又は、モチモチ感、ふわふわ感、及び甘みに優れるパンを提供することである。
【解決手段】本発明は、非晶化小麦粉及び結晶性小麦粉を含む、製パン用粉末組成物を提供する。さらに、本発明は、非晶化小麦粉、結晶性小麦粉及び水を混練することで生地を得る生地作製工程と、前記生地を焼成する焼成工程と、を含む、パンの製造方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶化小麦粉及び結晶性小麦粉を含む、製パン用粉末組成物。
【請求項2】
非晶化小麦粉、結晶性小麦粉及び水を混練することで生地を得る生地作製工程と、
前記生地を焼成する焼成工程と、
を含む、パンの製造方法。
【請求項3】
前記生地作製工程において、前記非晶化小麦粉及び水の混練物を、前記結晶性小麦粉と混練する工程を含む、請求項2に記載のパンの製造方法。
【請求項4】
前記混錬物は、前記非晶化小麦粉及び水を混錬した後、2時間以内のものである、請求項3記載のパンの製造方法。
【請求項5】
前記生地作製工程において、請求項1記載の製パン用粉末組成物を水と混錬する工程を含む、請求項2記載のパンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製パン用粉末組成物、及びパンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年着目されている製パン法として「湯種法」が挙げられる。この方法は、パンの材料である小麦粉の一部に湯を加え、澱粉を糊化させた「湯種」を用いる方法である。
湯種法によれば、パンの老化を抑制でき、良好なモチモチ感や甘み等を有するパンを得られることが知られる(例えば、非特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi, 64(2), 90-97, 2017
【非特許文献2】Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi, 62(11), 547-554, 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、湯種は、小麦粉への加水及び混練後、小麦粉へ水分の浸透や、糊化澱粉と内在性酵素との反応による糖生成等のために一晩寝かせる必要がある。そのため、湯種法による製パンには長時間を要し、簡便さに劣るという問題がある。
【0005】
さらに、湯種法から得られるパンは、ふわふわ感に劣るため、より良好な風味(特にモチモチ感、ふわふわ感、及び甘み)を有するパンへのニーズがある。
【0006】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、簡便な製パン技術の提供、又は、モチモチ感、ふわふわ感、及び甘みに優れるパンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが検討した結果、パンの材料として、従来知られる結晶性小麦粉とともに非晶化小麦粉を用いることで上記課題のいずれも解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0008】
(1) 非晶化小麦粉及び結晶性小麦粉を含む、製パン用粉末組成物。
【0009】
(2) 非晶化小麦粉、結晶性小麦粉及び水を混練することで生地を得る生地作製工程と、
前記生地を焼成する焼成工程と、
を含む、パンの製造方法。
【0010】
(3) 前記生地作製工程において、前記非晶化小麦粉及び水の混練物を、前記結晶性小麦粉と混練する工程を含む、(2)に記載のパンの製造方法。
【0011】
(4) 前記混錬物は、前記非晶化小麦粉及び水を混錬した後、2時間以内のものである、(3)記載のパンの製造方法。
【0012】
(5) 前記生地作製工程において、(1)記載の製パン用粉末組成物を水と混錬する工程を含む、(2)記載のパンの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡便な製パン技術、又は、モチモチ感、ふわふわ感、及び甘みに優れるパンが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0015】
<製パン用粉末組成物>
本発明の製パン用粉末組成物は、非晶化小麦粉及び結晶性小麦粉を含む。
【0016】
非晶化小麦粉は、結晶性小麦粉を、例えば加熱粉砕することで得られる。このような非晶化小麦粉における澱粉は少なくとも部分的に糊化(α化)している。
これに対し、従来の湯種法に使用される小麦粉は結晶性小麦粉である。結晶性小麦粉を湯種にするためには、通常、熱湯と混練し、寝かせることで澱粉を糊化させる必要がある。
【0017】
本発明者らが検討した結果、非晶化小麦粉を水と混合した生地種は、湯種と同等以上の機能を有し、モチモチ感や甘みに優れるパンが得られることがわかった。
そして、この生地種の作製においては、従来の湯種法のような、湯の使用や寝かせ工程を要さない(ただし、これらを含む態様は本発明から除外されない。)。
そのため、非晶化小麦粉を使用することで、湯による小麦粉中グルテンの変性に伴うパンのふわふわ感の低下や、寝かせ工程による製造時間の長期化やコスト増加を抑制することができる。
よって、非晶化小麦粉を材料とすることで、簡便にパンを製造できるだけではなく、モチモチ感、ふわふわ感、及び甘みに優れるパンが得られる。
【0018】
本発明において、「製パン用」とは、パンの製造のために材料として用いられることを意味する。
パンの種類としては特に限定されず、任意のパン(食パン等)を包含する。
【0019】
本発明において、「粉末組成物」とは、水分を実質的に含まない粉末状の組成物を意味する。したがって、本発明の製パン用粉末組成物は、ドライブレンド組成物やレディトゥユースの組成物であるともいえる。
なお、粉末組成物を構成する粉末の形状や大きさは特に限定されない。
【0020】
本発明において、「水分を実質的に含まない」とは、水分の含有量が、粉末組成物に対して、好ましくは常温(例えば、6℃以上40℃以下)の飽和蒸気圧未満の湿度の条件において粉末組成物を放置した場合に平衡に達する粉末組成物の水分含有量以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下であることを意味する。
【0021】
(非晶化小麦粉)
非晶化小麦粉は、例えば結晶性小麦粉を加熱粉砕することで得られる。
【0022】
小麦粉の加熱粉砕温度は、通常、80℃以上200℃以下である。
【0023】
小麦粉の加熱粉砕時間は、グルテンの変性を抑制する観点から過度でなくともよく、通常、1秒~2分以内である。
【0024】
小麦粉の加熱粉砕は、通常、剪断条件下で行われる。剪断速度は30sec-1以上が好ましい。
【0025】
小麦粉の加熱粉砕は、市販の温度制御型臼式粉砕装置を使用して行ってもよい。
【0026】
小麦粉の加熱粉砕は、日本国特許4767128号明細書に記載された方法を採用できるがこれに限られない。
【0027】
小麦粉が非晶化小麦粉であるかどうかは、広角X線回折によって特定できる。広角X線回折とは、試料にX線を照射し、結晶の格子面によって回折(散乱)された回折線の回折角度及びその回折強度から試料の結晶構造等を特定する方法である。
【0028】
(結晶性小麦粉)
結晶性小麦粉は、小麦を挽いて得られる穀粉(薄力粉、中力粉、強力粉等)である。
【0029】
小麦粉が結晶性小麦粉であるかどうかは、上述の広角X線回折によって特定できる。
【0030】
(その他の成分)
本発明の製パン用粉末組成物には、パンに配合し得る任意の成分をさらに配合してもよく、配合しなくともよい。このような成分として、砂糖、塩、ドライイースト、油脂(ショートニング、バター等)抗酸化剤(アスコルビン酸等)、イーストフード等が挙げられる。
これらの成分の種類や含量は得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。
【0031】
(配合比)
本発明の製パン用粉末組成物における各成分の配合比は特に限定されない。
【0032】
非晶化小麦粉の含有量の下限は、本発明の効果が得られやすいという観点から、製パン用粉末組成物に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。
非晶化小麦粉の含有量の上限は、その他の材料を充分に配合するため過度でなくともよく、製パン用粉末組成物に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0033】
結晶性小麦粉の含有量の下限は、製パン用粉末組成物に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
結晶性小麦粉の含有量の上限は、製パン用粉末組成物に対して、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0034】
(製パン用粉末組成物の製造方法)
本発明の製パン用粉末組成物の製造方法は特に限定されず、上記の成分を適宜混合する方法等を採用できる。
【0035】
<パンの製造方法>
本発明は、非晶化小麦粉を用いたパンの製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)も包含する。
具体的に、本発明の製造方法は、非晶化小麦粉、結晶性小麦粉及び水を混練することで生地を得る生地作製工程と、該生地を焼成する焼成工程と、を含む。
【0036】
(生地作製工程)
生地作製工程は、生地の材料として、非晶化小麦粉、結晶性小麦粉及び水を少なくとも用いる点以外、従来知られる生地の作製方法を採用できる。
【0037】
非晶化小麦粉の含有量の下限は、本発明の効果が得られやすいという観点から、生地に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。
非晶化小麦粉の含有量の上限は、その他の材料を充分に配合するため過度でなくともよく、生地に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0038】
結晶性小麦粉の含有量の下限は、生地に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。
結晶性小麦粉の含有量の上限は、生地に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0039】
水の含有量の下限は、生地に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。
水の含有量の上限は、その他の材料を充分に配合するため過度でなくともよく、生地に対して、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0040】
水の温度は、好ましくは常温(例えば、6℃以上40℃以下)である。
従来の湯種方法では、澱粉の糊化のために、湯種の作製時に糊化を充分に進行させることができる熱湯が通常使用される。かかる場合、小麦粉中のグルテンの変性や、生地粘度の増加による製パン性の低下が生じ得る。
これに対し、非晶化小麦粉を用いる本発明によれば、熱湯による澱粉の糊化工程を要さないため、常温の水を使用できるため、上記のような問題が生じにくい。
ただし、水が熱湯(例えば、40℃超の水)である態様は本発明から排除されない。
【0041】
生地には、パンに配合し得る任意の成分を配合してもよく、配合しなくともよい。このような成分として、砂糖、塩、ドライイースト、油脂(ショートニング、バター等)抗酸化剤(アスコルビン酸等)、イーストフード等が挙げられる。
これらの成分の種類や含量は得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。
【0042】
[生地作製工程における混練]
混練により、材料を一様に分散させ、さらにはグルテンを成長させ、粘りがある生地が得られる。このような生地からはモチモチ感やふわふわ感に優れたパンが得られやすい。
【0043】
混練手段については特に限定されないが、例えば、混練機(ニーダー等)等を採用できる。
本発明によれば、上記のとおり熱湯を使用しなくともよい。かかる場合、小麦粉中のグルテン変性が抑制されやすいため、過度の混錬をしなくともよい。例えば、混練は、混練機を用いて、50℃以下、250rpm以下、15分以下の条件で行ってもよい。
【0044】
混練は、生地中の材料を小分けにして複数回行ってもよく、生地中の全材料に対して1度に行ってもよい。
【0045】
生地中の材料を小分けにして混練を複数回行う場合、非晶化小麦粉及び水の混練物(以下、該混練物を「本発明における生地種」ともいう。)を作製し、次いで該混練物を結晶性小麦粉と混練することが好ましい。
この工程を含む製パン方法は、従来の湯種法において、湯種の代わりに本発明における生地種を用いた方法であるともいえる。
【0046】
本発明における生地種に含まれる非晶化小麦粉及び水の割合は特に限定されず、目的とする生地に含まれる全て又は一部であってもよい。
例えば、本発明における生地種には、非晶化小麦粉及び水が、質量比で非晶化小麦粉:水=1:5~5:1含まれ得る。
例えば、本発明における生地種に含まれる非晶化小麦粉は、目的とする生地に含まれる非晶化小麦粉の3質量%以上、6質量%以上、8質量%以上であり得る。
【0047】
本発明における生地種には、目的とする生地組成に含まれる結晶性小麦粉の一部や、目的とする生地組成に含まれるその他成分の一部又は全てが含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
【0048】
本発明における生地種と混練される対象は、結晶性小麦粉だけではなくその他の成分(非晶化小麦粉、水等)が含まれるものでもよく、非晶化小麦粉のみでもよい。
【0049】
本発明における生地種は、従来の湯種法における湯種のように寝かせる工程(2時間以上静置する工程)を要さない。
例えば、本発明における生地種は、非晶化小麦粉及び水を混錬した後、好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内、さらに好ましくは0.5時間以内のものであり、該時間内に結晶性小麦粉と混練される。
したがって、本発明における生地種を用いる製パン法は、湯種法と比較して顕著に簡便である。さらに、本発明における生地種を用いる製パン法によれば、湯種法から得られるパンと比較して、同等のモチモチ感や甘みを有するうえ、ふわふわ感に優れる。
ただし、本発明において、本発明における生地種を寝かせる工程は排除されない。
【0050】
さらに、本発明は、上記生地種を作製せず、非晶化小麦粉、結晶性小麦粉及び水を混練する態様も包含する。
かかる態様は、本発明における生地種を用いる態様よりもより簡便な製パン法である。さらに、かかる態様から得られるパンは、モチモチ感、ふわふわ感、及び甘みに優れる。
【0051】
混練は、本発明の製パン用粉末組成物を水と混錬する工程であってもよい。
かかる場合、目的とする生地組成となるように、本発明の製パン用粉末組成物と水との割合を設定し、複数回にわけて混練してもよく、1度に混練してもよい。
【0052】
(焼成工程)
生地作製工程で得られた生地を焼成することでパンが得られる。
焼成により、生地中の気泡の熱による膨張や、澱粉の糊化が進む。通常、糊化によってクラム(パンの内相)中の気泡の構造が固定され、クラスト(パンの表皮)が固くなる。
【0053】
焼成工程における条件は特に限定されず、生地の量、得ようとするパンの種類及び大きさ等に応じて適宜設定できる。
【0054】
焼成温度の下限は、例えば、50℃以上であり得る。
焼成温度の上限は、例えば、200℃以下であり得る。
【0055】
焼成時間の下限は、例えば、5分以上であり得る。
焼成時間の上限は、例えば、120分以下であり得る。
【0056】
(その他の工程)
本発明の製造方法は、上記の工程のほか、製パンにおいて採用され得る任意の工程が含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
このような工程としては、生地の発酵工程、生地やパンの保存工程等が挙げられる。
これらの工程の条件、順序、回数、タイミング等は特に限定されない。
【0057】
生地の発酵工程においては、菌(イースト菌)の作用によって生成した二酸化炭素により、生地中に気泡が生じ、生地を膨張させることができる。
このような発酵工程を経ると、ふわふわ感に優れたパンが得られやすい。
【0058】
発酵温度の下限は、例えば、10℃以上であり得る。
発酵温度の上限は、例えば、100℃以下であり得る。
【0059】
発酵時間の下限は、例えば、5分以上であり得る。
発酵時間の上限は、例えば、120分以下であり得る。
【0060】
生地やパンの保存工程においては、冷蔵保存や冷凍保存のいずれも採用できる。
保存の際には、必要に応じて生地やパンを包装してもよい。
【実施例0061】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
<湯種法に基づく製パン-1>
以下の方法で、従来知られる湯種法に基づき、食パンを作製した。
本方法で得た食パンを「湯種パン(寝かせ有り)」ともいう。
【0063】
(1-1)湯種の作製
結晶性小麦粉と、湯(74℃の水)とを質量比1:1で混錬し、一晩冷蔵庫で寝かせ、湯種を得た。
【0064】
(1-2)生地の作製
結晶性小麦粉(200g、品種:「春よ恋」)、水(200g)、砂糖(10g)、ドライイースト(4g)、塩(4g)を混練した。
得られた混練物に対し、湯種(90.5g)を加え、料理用混練機「Kitchen Aid」(株式会社エフ・エム・アイ製)を用いて混練し、生地を得た。
なお、混練条件は、25℃、8速、10分に設定した。
【0065】
(1-3)発酵
パン型に生地(300g)を流し込み、電子発酵機(大正電気社製)を用いて、40℃で30分間発酵させた。
【0066】
(1-4)焼成
発酵後の生地を、ガスオーブン「OZ100BOEC」(オザキ社製)を用いて、180℃で30分間焼成し、食パンを得た。
【0067】
<湯種法に基づく製パン-2>
上記<湯種法に基づく製パン-1>の「(1-1)湯種の作製」において湯種を寝かせずに用いた点以外は、上記<湯種法に基づく製パン-1>同様の方法で食パンを作製した。
本方法で得た食パンを「湯種パン(寝かせ無し)」ともいう。
【0068】
<湯種を用いない方法に基づく製パン>
上記<湯種法に基づく製パン-1>において湯種を用いない点以外は、上記<湯種法に基づく製パン-1>同様の方法で食パンを作製した。
本方法で得た食パンを「湯種無しパン」ともいう。
【0069】
<本発明の製造方法に基づく製パン-1>
以下の方法で、本発明の製造方法に基づき、食パンを作製した。
本方法で得た食パンを「本手法パン(生地種有り)」ともいう。
【0070】
(2-1)小麦粉の非晶化
結晶性小麦粉(品種:「春よ恋」)を用いて、温度制御型臼式粉砕装置で粉砕し、非晶化し、非晶性小麦粉を得た。
粉砕条件は、直径9cmの臼を用いて、粉砕温度100℃、臼間距離0μm、臼回転数150rpmに設定した。
【0071】
(2-2)生地種の作製
非晶性小麦粉と、水(常温)とを質量比1:1で混錬した生地種を、そのまま以下の工程に供した(すなわち、生地種を寝かせずに用いた。)。
【0072】
(2-3)生地の作製、発酵、及び焼成
上記「(2-2)生地種の作製」で得られた生地種を湯種の代わりに用いた点以外は、上記<湯種法に基づく製パン-1>同様の方法で生地の作製、発酵、及び焼成を行い、食パンを作製した。
【0073】
<本発明の製造方法に基づく製パン-2>
以下の方法で、本発明の製造方法に基づき、食パンを作製した。
本方法で得た食パンを「本手法パン(生地種無し)」ともいう。
なお、本方法は、生地種を作製しない点で上記<本発明の製造方法に基づく製パン-1>における方法と異なる。
【0074】
(3-1)小麦粉の非晶化
上記<本発明の製造方法に基づく製パン-1>の「(2-1)小麦粉の非晶化」と同様の方法で非晶性小麦粉を作製した。
【0075】
(3-2)生地の作製
非晶性小麦粉(45.25g)、結晶性小麦粉(200g、品種:「春よ恋」)、水(200g)、砂糖(10g)、ドライイースト(4g)、塩(4g)を、料理用混練機「Kitchen Aid」(株式会社エフ・エム・アイ製)を用いて10分間撹拌し、生地を得た。
【0076】
(3-3)生地の発酵、及び焼成
上記<湯種法に基づく製パン-1>同様の方法で生地の発酵、及び焼成を行い、食パンを作製した。
【0077】
表1に、本例で作製した各食パンの生地組成を示す。なお、表1中の数値の単位は「g」である。
【0078】
【表1】
【0079】
<食パンの評価>
以下の基準で、各食パンを摂食した際の風味(モチモチ感、ふわふわ感、甘み)を評価した。一部の食パンについては比容積も測定した。
また、食パンの製造工程の簡便性についてもあわせて評価した。
その結果を表2に示す。
【0080】
(モチモチ感の評価基準)
A:良好なモチモチ感を感じられる。
B:モチモチ感を感じられる。
C:モチモチ感を感じられない。
【0081】
(ふわふわ感の評価基準)
A:良好なふわふわ感を感じられる。
B:ふわふわ感を感じられる。
C:ふわふわ感を感じられない。
【0082】
(甘みの評価基準)
A:非常に良好な甘みを感じられる。
B:良好な甘みを感じられる。
C:甘みを感じられる。
D:甘みを感じられない。
【0083】
(製造工程の簡便性の評価基準)
A:湯種又は生地種の作製工程、及び湯種又は生地種の寝かせ工程のいずれも要さない。
B:湯種又は生地種の作製工程、及び湯種又は生地種の寝かせ工程のいずれかを要さない。
C:湯種又は生地種の作製工程、及び湯種又は生地種の寝かせ工程のいずれも要する。
【0084】
【表2】
【0085】
表2に示されるとおり、本発明の製造方法から得られる食パンは、モチモチ感、ふわふわ感、甘みのいずれにも優れていた。
【0086】
さらに、本発明の製造方法によれば、湯種を製造しなくとも、従来の湯種法から得られる食パンと同等以上の風味を有していた。