(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100251
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】オーディオシステムを自動的に調整するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H04S 7/00 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
H04S7/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193273
(22)【出願日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】17/569,013
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】592051453
【氏名又は名称】ハーマン インターナショナル インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル チュー ミン リム
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA17
5D162CA21
5D162CA26
5D162CC04
5D162CC18
5D162CC22
5D162EG02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】聴取環境においてオーディオシステムを自動的に調整するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】オーディオシステムを調整する方法おいて、聴取環境内の各聴取位置について、所定の周波数範囲内の周波数毎に、位相シフトを最適化する位相オプティマイザは、可能な位相シフト値毎に合成位相値を特定し、可能な位相シフト値毎の合成位相値を配列に格納し、配列に格納された合成位相の平均及び標準偏差を計算し、配列に格納された平均及び標準偏差を比較して、最小の平均及び標準偏差を有する合成位相値を生じる位相シフト値を選択し、メモリに格納し、所定の位相シフト値範囲内のすべての可能な位相シフト値について所定の周波数範囲内の各周波数を最適化し、位相シフト目標曲線を生成し、位相シフト目標曲線を出力する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のラウドスピーカを有するオーディオシステムを調整するための自動位相最適化システムであって、前記オーディオシステムは、1つ以上の聴取位置を有する聴取環境に設置され、前記システムは、
所定の周波数範囲内のすべての可能な周波数に関して測定された、各聴取位置からの各ラウドスピーカのインパルス応答(IR)データ測定値のテキストファイル入力を受信するプロセッサと、
前記プロセッサにより、前記所定の周波数範囲内の各周波数を最適化することを実行可能な位相オプティマイザと、
を備え、前記位相オプティマイザは、
a.所定の位相シフト値範囲内の位相シフト値を、各IRデータ測定値に適用することと、
a.可能な位相シフト値ごとに、合成位相値を特定することと、
b.前記合成位相値を配列に格納することと、
c.前記配列に格納された前記合成位相値の平均及び標準偏差を計算することと、
d.前記配列に格納された前記平均及び標準偏差を比較することと、
e.最小の平均及び標準偏差を有する前記合成位相値を生じる位相シフト値を選択して、メモリに格納することと、
f.前記所定の位相シフト値範囲内のすべての可能な位相シフト値に関して、「a」~「e」を繰り返すことと、
g.前記所定の周波数範囲内のすべての可能な周波数に関して、「f」を繰り返すことと、
を実行するように構成され、
前記位相オプティマイザにより位相シフト目標曲線が生成及び出力され、前記位相シフト目標曲線は、周波数ごとに、最小の平均及び標準偏差を有する合成位相を生じる位相シフト値を選択することにより生成される、
前記システム。
【請求項2】
前記位相シフト目標曲線はさらに、前記所定の周波数範囲内の可能な周波数ごとに理想的な位相シフト値を選択することを、前記プロセッサにより実行可能な前記位相オプティマイザが生成した位相シフト目標曲線を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記理想的な位相シフト値は、最小の平均及び標準偏差を有する前記位相シフト値である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記位相シフト目標曲線は、前記オーディオシステムと互換性のあるフォーマットである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
変換モジュールをさらに備え、前記変換モジュールは、
前記位相オプティマイザから前記位相シフト目標曲線を受信することと、
前記位相シフト目標曲線を、前記オーディオシステムのデジタル信号プロセッサのフィルタ構成と整合性のあるオーディオパラメータに変換することと、
を前記プロセッサにより実行可能である、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記変換モジュールは、前記オーディオシステムを調整するために、前記オーディオシステムのデジタル信号プロセッサに前記オーディオパラメータをインポートすることを、前記プロセッサにより実行可能である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
位相シフト目標曲線を自動的に生成する方法であって、前記位相シフト目標曲線は、オーディオシステムを調整するために、デジタル信号プロセッサに適用され、前記方法は、不揮発性メモリに格納されたコンピュータ実行可能命令を有する1つ以上のプロセッサで実行され、前記1つ以上のプロセッサは、
前記オーディオシステムの各聴取位置から各ラウドスピーカに関して取得されたインパルス応答測定値を含むテキストファイルを、オプティマイザモジュールで受信することと、
a.前記テキストファイル内の各インパルス応答測定値に、所定の位相シフト値範囲内のすべての可能な位相シフト値を適用することと、
b.可能な位相シフト値ごとに、合成位相値を特定することと、
c.前記合成位相値を配列に格納することと、
d.前記配列に格納された前記合成位相値の平均及び標準偏差を特定することと、
e.前記配列に格納された前記平均及び標準偏差を比較することと、
f.最小の平均及び標準偏差を有する前記合成位相値を生じる位相シフト値を選択して、メモリに格納することと、
g.すべての可能な位相シフト値に関して、「a」~「f」のステップを繰り返すことと、
h.すべての可能な周波数が最適化されるまで、「g」のステップを繰り返すことと、
前記オプティマイザモジュールで、可能な周波数ごとに、最小の平均及び標準偏差を有する前記合成位相値を生じる位相シフト値から、位相シフト目標曲線を生成することと、
前記オプティマイザモジュールで、前記位相シフト目標曲線を出力することと、
のステップを実行するように構成される、
前記方法。
【請求項8】
変換モジュールで、前記位相シフト目標曲線を受信することと、
前記変換モジュールで、前記オーディオシステムの前記デジタル信号プロセッサが要する前記位相シフト目標曲線のフォーマットを特定することと、
前記位相シフト目標曲線を出力する前に、前記位相シフト目標曲線を、前記オーディオシステムの前記デジタル信号プロセッサが要する前記フォーマットに変換することと、
のステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記変換された位相シフト目標曲線を、前記デジタル信号プロセッサにインポートするステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記デジタル信号プロセッサは、非一時的メモリに格納された命令を有し、
前記位相シフト目標曲線を受信することと、
前記位相シフト目標曲線を前記オーディオシステムのパラメータに適用して、前記オーディオシステムを調整することと、
のステップを実行するように構成される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
オーディオシステムを調整するためにデジタル信号プロセッサに適用され得る位相シフト目標曲線を生成するための位相最適化システムであって、前記位相最適化システムは、
前記オーディオシステムのインパルス応答測定値のセットを含むテキストファイルであって、前記インパルス応答測定値は、前記位相最適化システムから分離された測定システムにより取得され、前記測定システムから受信される、前記テキストファイルと、
所定の周波数範囲内のすべての可能な周波数を最適化するための位相オプティマイザモジュールであって、前記位相オプティマイザモジュールは、不揮発性メモリに格納されたコンピュータ実行命令を有するプロセッサで実行され、
a.前記テキストファイル内の各インパルス応答測定値に、シフト値を適用することと、
b.前記所定範囲内の可能な位相シフト値ごとに、合成位相値を特定することと、
c.可能な位相シフト値ごとの前記合成位相値を、配列に格納することと、
d.前記配列に格納された前記合成位相値の平均及び標準偏差を特定することと、
e.前記配列に格納された前記平均及び標準偏差を比較することと、
f.最小の平均及び標準偏差を有する前記合成位相値を生じる前記位相シフト値を選択して、メモリに格納することと、
g.所定の位相シフト値範囲内のすべての可能な位相シフト値に関して、「a」~「f」を繰り返すことと、
h.すべての可能な周波数に関して、「f」を繰り返すことと、
を実行するように構成された、前記位相オプティマイザモジュールと、
前記所定の周波数範囲内の可能な周波数ごとの最小の平均及び標準偏差を有する前記合成位相値から成る位相シフト目標曲線であって、前記オーディオシステムに出力される、前記位相シフト目標曲線と、
を備える、前記位相最適化システム。
【請求項12】
前記プロセッサにより実行可能な変換モジュールをさらに備え、前記変換モジュールは、
前記位相オプティマイザモジュールから、前記位相シフト目標曲線を受信することと、
前記位相シフト目標曲線を前記オーディオシステムに出力する前に、調整対象の前記オーディオシステムと互換性のあるフォーマットに、前記位相シフト目標曲線を変換することと、
を実行するように構成される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記変換モジュールは、前記オーディオシステムのデジタル信号プロセッサと通信し、前記変換モジュールは、前記変換した位相シフト目標曲線を、前記オーディオシステムの前記デジタル信号プロセッサにインポートするように構成される、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、聴取環境におけるオーディオシステムの調整に関し、より具体的には、聴取環境内の複数の聴取位置に対してオーディオシステムを自動的に調整するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホームシアターシステム、ホームオーディオシステム、車載オーディオシステムなどのオーディオシステムは、複数のコンポーネントを有し、複数のコンポーネントは、増幅されたオーディオ信号で1つ以上のスピーカを駆動する音響プロセッサを含む。オーディオシステムは、様々なコンポーネントを有し得、これらは、聴取環境においてほぼ無限の数の構成で設置できる。さらに、コンポーネントが設置された聴取環境は、聴取環境でオーディオシステムが生成する音響に大きな影響を与える。オーディオシステムは、設置されると、聴取環境内で望ましい、すなわち最適化された音場を生成するように調整される。
【0003】
オーディオシステムを調整することは、コンポーネント及び/または聴取環境を補正するために、イコライゼーション、遅延、及び/またはフィルタリングを調整してオーディオ信号を処理するようにシステムを構成することを含み得る。調整することは、イコライゼーション、遅延、及び位相の最適化を含むがこれに限定されない、いくつかのステップを伴う。位相最適化は含まれないが、これらのステップの多くには、自動最適化ソフトウェアが存在する。位相最適化は複雑であることから、通常、このステップは完全に省かれ、または音響エンジニアにより手動で実行される。
【0004】
マルチチャネル自動車及びホームオーディオシステムなどの多くのオーディオシステムでは、オーディオシステムを完全に最適化するために、人間の能力をはるかに超える多数のフィルタ組み合わせが存在する。可能なフィルタ置き換えの数は、オーディオシステム内のスピーカの数に応じて指数関数的に増加する。従って、人間の経験則及び主観的聴取の結果であるいずれの出力も、それが本当に最適化されたソリューションであるか否かという点では曖昧であることが予想される。
【0005】
ソフトウェアベースの調整により、手動調整プロセスの速度及び精度は向上し得る。しかしながら、既存のソフトウェアベースの調整器は、オーディオシステムに完全に統合されている。さらに、自動イコライザは、イコライゼーション及び遅延のみを最適化し、位相は最適化しない。ソフトウェアベースの調整は、様々なレガシーシステム、現行の製品、及び将来の製品のすべてに互換性を有するものではない。より具体的には、このような完全に統合されたシステムは、製造業者固有のシステムにオプティマイザを適合させる大規模な変更を加えなければ、様々な製造業者のオーディオシステムにわたり使用することはできない。
【0006】
オーディオシステムを自動的に調整するためのソフトウェアベースのシステム及び方法が求められている。より具体的には、複数の聴取位置がある聴取環境に複数のスピーカを有するオーディオシステムを自動的に調整するためのソフトウェアベースのシステム及び方法であって、常に最適な調整結果を生成し、オーディオシステムのレガシーコンポーネント、現行のコンポーネント、及び将来のコンポーネントを調整するのに使用可能であるソフトウェアベースのシステム及び方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つ以上の実施形態は、1つ以上の聴取位置がある聴取環境に1つ以上のスピーカを有するオーディオシステムを調整するためのソフトウェアベースの自動プロセスを説明する。システム及び方法は、常に最適な調整結果を生成し、あらゆる製造業者のオーディオシステムのレガシーコンポーネント、現行のコンポーネント、及び将来のコンポーネントにも適用できる。
【0008】
1つ以上のラウドスピーカを有するオーディオシステムを調整するための自動位相最適化システム及び方法であって、オーディオシステムは、1つ以上の聴取位置を有する聴取環境に設置される。プロセッサは、所定の周波数範囲内のすべての可能な周波数に関して測定された、各聴取位置からの各ラウドスピーカのインパルス応答(IR)データ測定値のテキストファイル入力を受信する。インパルス応答測定は、位相オプティマイザから分離された測定システムにより行われる。位相オプティマイザは、所定の周波数範囲内で各周波数を最適化する。各聴取位置に関して、位相オプティマイザは、各IRデータ測定値に位相シフト値を適用することにより、所定の位相シフト値範囲内の可能な位相シフト値ごとに、合成位相を特定する。位相オプティマイザは、合成位相値を特定して、配列に格納する。位相オプティマイザは、配列に格納された合成位相値の平均及び標準偏差を計算する。配列に格納された平均及び標準偏差が比較され、最小の平均及び標準偏差を有する合成位相値を生じる位相シフト値が選択され、メモリに格納される。位相オプティマイザは、これらのステップを繰り返して、所定の位相シフト値範囲内のすべての可能な位相シフト値に関して、所定の周波数範囲内の各周波数を最適化する。位相オプティマイザは、周波数ごとに、最小の平均及び標準偏差を有する合成位相値を生じる位相シフト値を選択することにより、位相シフト目標曲線を生成する。
【0009】
1つ以上の実施形態では、位相シフト目標曲線は、オーディオシステムのデジタル信号プロセッサのフィルタ構成と互換性のあるフォーマットに変換される。変換は、位相オプティマイザから分離されたモジュールで行われ得る。変換は、オーディオシステムのデジタル信号プロセッサからも分離されたモジュールで行われ得る。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
1つ以上のラウドスピーカを有するオーディオシステムを調整するための自動位相最適化システムであって、上記オーディオシステムは、1つ以上の聴取位置を有する聴取環境に設置され、上記システムは、
所定の周波数範囲内のすべての可能な周波数に関して測定された、各聴取位置からの各ラウドスピーカのインパルス応答(IR)データ測定値のテキストファイル入力を受信するプロセッサと、
上記プロセッサにより、上記所定の周波数範囲内の各周波数を最適化することを実行可能な位相オプティマイザと、
を備え、上記位相オプティマイザは、
a.所定の位相シフト値範囲内の位相シフト値を、各IRデータ測定値に適用することと、
a.可能な位相シフト値ごとに、合成位相値を特定することと、
b.上記合成位相値を配列に格納することと、
c.上記配列に格納された上記合成位相値の平均及び標準偏差を計算することと、
d.上記配列に格納された上記平均及び標準偏差を比較することと、
e.最小の平均及び標準偏差を有する上記合成位相値を生じる位相シフト値を選択して、メモリに格納することと、
f.上記所定の位相シフト値範囲内のすべての可能な位相シフト値に関して、「a」~「e」を繰り返すことと、
g.上記所定の周波数範囲内のすべての可能な周波数に関して、「f」を繰り返すことと、
を実行するように構成され、
上記位相オプティマイザにより位相シフト目標曲線が生成及び出力され、上記位相シフト目標曲線は、周波数ごとに、最小の平均及び標準偏差を有する合成位相を生じる位相シフト値を選択することにより生成される、
上記システム。
(項目2)
上記位相シフト目標曲線はさらに、上記所定の周波数範囲内の可能な周波数ごとに理想的な位相シフト値を選択することを、上記プロセッサにより実行可能な上記位相オプティマイザが生成した位相シフト目標曲線を含む、上記項目に記載のシステム。
(項目3)
上記理想的な位相シフト値は、最小の平均及び標準偏差を有する上記位相シフト値である、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目4)
上記位相シフト目標曲線は、上記オーディオシステムと互換性のあるフォーマットである、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目5)
変換モジュールをさらに備え、上記変換モジュールは、
上記位相オプティマイザから上記位相シフト目標曲線を受信することと、
上記位相シフト目標曲線を、上記オーディオシステムのデジタル信号プロセッサのフィルタ構成と整合性のあるオーディオパラメータに変換することと、
を上記プロセッサにより実行可能である、
上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目6)
上記変換モジュールは、上記オーディオシステムを調整するために、上記オーディオシステムのデジタル信号プロセッサに上記オーディオパラメータをインポートすることを、上記プロセッサにより実行可能である、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目7)
位相シフト目標曲線を自動的に生成する方法であって、上記位相シフト目標曲線は、オーディオシステムを調整するために、デジタル信号プロセッサに適用され、上記方法は、不揮発性メモリに格納されたコンピュータ実行可能命令を有する1つ以上のプロセッサで実行され、上記1つ以上のプロセッサは、
上記オーディオシステムの各聴取位置から各ラウドスピーカに関して取得されたインパルス応答測定値を含むテキストファイルを、オプティマイザモジュールで受信することと、
a.上記テキストファイル内の各インパルス応答測定値に、所定の位相シフト値範囲内のすべての可能な位相シフト値を適用することと、
b.可能な位相シフト値ごとに、合成位相値を特定することと、
c.上記合成位相値を配列に格納することと、
d.上記配列に格納された上記合成位相値の平均及び標準偏差を特定することと、
e.上記配列に格納された上記平均及び標準偏差を比較することと、
f.最小の平均及び標準偏差を有する上記合成位相値を生じる位相シフト値を選択して、メモリに格納することと、
g.すべての可能な位相シフト値に関して、「a」~「f」のステップを繰り返すことと、
h.すべての可能な周波数が最適化されるまで、「g」のステップを繰り返すことと、
上記オプティマイザモジュールで、可能な周波数ごとに、最小の平均及び標準偏差を有する上記合成位相値を生じる位相シフト値から、位相シフト目標曲線を生成することと、
上記オプティマイザモジュールで、上記位相シフト目標曲線を出力することと、
のステップを実行するように構成される、
上記方法。
(項目8)
変換モジュールで、上記位相シフト目標曲線を受信することと、
上記変換モジュールで、上記オーディオシステムの上記デジタル信号プロセッサが要する上記位相シフト目標曲線のフォーマットを特定することと、
上記位相シフト目標曲線を出力する前に、上記位相シフト目標曲線を、上記オーディオシステムの上記デジタル信号プロセッサが要する上記フォーマットに変換することと、
のステップをさらに含む、上記項目に記載の方法。
(項目9)
上記変換された位相シフト目標曲線を、上記デジタル信号プロセッサにインポートするステップをさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
上記デジタル信号プロセッサは、非一時的メモリに格納された命令を有し、
上記位相シフト目標曲線を受信することと、
上記位相シフト目標曲線を上記オーディオシステムのパラメータに適用して、上記オーディオシステムを調整することと、
のステップを実行するように構成される、
上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
オーディオシステムを調整するためにデジタル信号プロセッサに適用され得る位相シフト目標曲線を生成するための位相最適化システムであって、上記位相最適化システムは、
上記オーディオシステムのインパルス応答測定値のセットを含むテキストファイルであって、上記インパルス応答測定値は、上記位相最適化システムから分離された測定システムにより取得され、上記測定システムから受信される、上記テキストファイルと、
所定の周波数範囲内のすべての可能な周波数を最適化するための位相オプティマイザモジュールであって、上記位相オプティマイザモジュールは、不揮発性メモリに格納されたコンピュータ実行命令を有するプロセッサで実行され、
a.上記テキストファイル内の各インパルス応答測定値に、シフト値を適用することと、
b.上記所定範囲内の可能な位相シフト値ごとに、合成位相値を特定することと、
c.可能な位相シフト値ごとの上記合成位相値を、配列に格納することと、
d.上記配列に格納された上記合成位相値の平均及び標準偏差を特定することと、
e.上記配列に格納された上記平均及び標準偏差を比較することと、
f.最小の平均及び標準偏差を有する上記合成位相値を生じる上記位相シフト値を選択して、メモリに格納することと、
g.所定の位相シフト値範囲内のすべての可能な位相シフト値に関して、「a」~「f」を繰り返すことと、
h.すべての可能な周波数に関して、「f」を繰り返すことと、
を実行するように構成された、上記位相オプティマイザモジュールと、
上記所定の周波数範囲内の可能な周波数ごとの最小の平均及び標準偏差を有する上記合成位相値から成る位相シフト目標曲線であって、上記オーディオシステムに出力される、上記位相シフト目標曲線と、
を備える、上記位相最適化システム。
(項目12)
上記プロセッサにより実行可能な変換モジュールをさらに備え、上記変換モジュールは、
上記位相オプティマイザモジュールから、上記位相シフト目標曲線を受信することと、
上記位相シフト目標曲線を上記オーディオシステムに出力する前に、調整対象の上記オーディオシステムと互換性のあるフォーマットに、上記位相シフト目標曲線を変換することと、
を実行するように構成される、
上記項目に記載のシステム。
(項目13)
上記変換モジュールは、上記オーディオシステムのデジタル信号プロセッサと通信し、上記変換モジュールは、上記変換した位相シフト目標曲線を、上記オーディオシステムの上記デジタル信号プロセッサにインポートするように構成される、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(摘要)
位相オプティマイザは、聴取環境内の各聴取位置に関して、所定の周波数範囲内の周波数ごとに、位相シフトを最適化する。位相オプティマイザは、可能な位相シフト値ごとに合成位相値を特定し、可能な位相シフト値ごとの合成位相値を配列に格納する。位相オプティマイザは、配列に格納された合成位相の平均及び標準偏差を計算する。配列に格納された平均及び標準偏差が比較され、最小の平均及び標準偏差を有する合成位相値を生じる位相シフト値が選択され、メモリに格納される。位相オプティマイザは、所定の位相シフト値範囲内のすべての可能な位相シフト値に関して、所定の周波数範囲内の各周波数を最適化し、位相シフト目標曲線を生成し、位相シフト目標曲線は、位相オプティマイザにより出力される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】位相オプティマイザシステムのブロック図である。
【0011】
【
図2】例示的なオーディオシステムのブロック図である。
【0012】
【0013】
【
図4A】第1の聴取位置における生の未調整位相応答の差を表すグラフである。
【0014】
【
図4B】第2の聴取位置における生の未調整位相応答の差を表すグラフである。
【0015】
【0016】
【
図5】位相最適化を行う方法のフローチャートである。
【0017】
【0018】
【
図7】オプションの変換モジュールを含む方法のフローチャートである。
【0019】
【
図8A】第1の聴取位置における予測される調整位相応答を表すグラフである。
【0020】
【
図8B】第2の聴取位置における予測される調整位相応答を表すグラフである。
【0021】
【0022】
【
図9】未調整インパルス応答の測定値の部分的なテキストファイルの実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図中の要素及びステップは、簡潔かつ明瞭に示されており、必ずしもいずれかの順序に従って描かれてはいない。例えば、ステップは、同時に、または異なる順序で実行される場合があるが、図中では本開示の実施形態の理解の向上に役立つように示される。
【0024】
本開示の様々な態様が位相オプティマイザを参照して説明されるが、本開示は、このような実施形態に限定されず、本開示から逸脱することなく追加の変更、応用、及び実施形態が実施されてもよい。図中では、同一の構成要素を示すために、同様の参照番号が使用される。本明細書で示される様々な構成要素は、本開示の範囲と異なることなく変更されてもよいことが、当業者には認識されよう。
【0025】
発明を実施するための形態は、オーディオシステム、及びオーディオシステムの調整を向上させる方法を対象とする。
図1は、聴取環境においてオーディオシステムを調整するためのシステム100のブロック図である。測定システム102、位相オプティマイザ104、及びオプションの変換モジュール106は、互いに分離されており、オーディオシステム110のDSP108からも分離されている。位相オプティマイザ104は、測定システム102から分離されており、オーディオシステムからも分離されていることから、いずれのレガシーオーディオシステム構成、現行のオーディオシステム構成、または将来のオーディオシステム構成とも互換性がある。従って、位相オプティマイザ104の出力を使用するために、オーディオシステムに変更を加える必要はない。位相オプティマイザ104は、測定システム102から生の未調整データを受信する。位相オプティマイザ104及びオーディオシステムから同様に分離されたオプションの変換モジュール106は、必要に応じて、オーディオシステム110のフィルタ構成に基づいて、位相オプティマイザの出力を変換し得る。最後に、変換モジュールから分離されたオーディオシステム110のDSP108は、(位相オプティマイザ104から、またはオプションで変換モジュール106から)位相シフトオプティマイザ出力を受信し、適用する。
【0026】
分離とは、必ずしも各モジュールまたは各システムが別個のプロセッサで実行されなければならないという意味ではない。そのような場合もあり得るが、各モジュールまたは各システムは1つのプロセッサを使用して実行されてもよい。分離とは、モジュールとDSPとの間のいずれの相互関係または依存関係も絶つことである。各モジュール/システムは他から独立して実行されるが、システム/モジュールのそれぞれにおいて基本フォーマットのデータ及び情報が入出力されるため、各モジュール/システムは、互いに互換性があり、相互通信が可能である。
【0027】
コンピュータ可読命令は、コンピューティングシステムのメモリに格納される。コンピューティングシステムは、生データを処理して分析する命令を実行し、分析されたデータを、位相シフト目標曲線にフォーマット化する。コンピューティングシステムは、オーディオシステムにより使用されるフィルタシステムのタイプに関係なく、オーディオシステムのDSPにより実施される位相シフト目標曲線を出力する命令も実行する。例えば、目標曲線は、FIRフィルタを有するDSPシステムに適用され得、またはバイカッドオールパスフィルタを有するDSPシステムに適用され得る。
【0028】
1つ以上の実施形態では、測定システム102、位相オプティマイザ、変換モジュール106はそれぞれ、モジュールまたはシステムと見なされ得る。位相オプティマイザは、位相シフト目標曲線を出力し、これはDSPと互換性のあるDSPパラメータに変換され得、DSPはパラメータを実行する。各モジュールまたは各システムは、個別のコンピューティングシステムで実行され得、DSPはモジュールから独立している。
【0029】
1つ以上の実施形態では、各モジュールまたは各システムは、他のモジュール及びシステムから分離された状態で、オーディオシステムに組み込まれたDSPによりすべて実行され得る。あるいは、各モジュールまたは各システムは、他のモジュールから分離された状態で、1つ以上のプロセッサの任意の組み合わせで実行され得る。モジュール及びシステムを実行するためのコンピューティングシステムの組み合わせは、各モジュールまたは各システムが他のモジュールまたはシステムから分離される場合に、本発明の主題の範囲から逸脱することなく実施され得る。
【0030】
図2は、単純なオーディオシステム200のブロック図である。オーディオシステム200は、オーディオ入力204を提供するソース202を有する。ソース202は、いくつかの例を挙げると、チューナ、CDプレーヤ、DVDプレーヤ、テレビを含み得るが、これらに限定されない。オーディオ入力204は、音響プロセッサ206により受信される。
【0031】
音響プロセッサ206は、デジタル信号プロセッサ(DSP)108及びメモリ210を含み得る。DSP108は、シングルコアまたはマルチコアであり得、DSP108により実行されるプログラムは、並列処理または分散処理を行うように構成され得る。メモリ210は、プログラミング命令が格納される任意の有形の非一時的コンピュータ可読媒体を含み得る。コンピュータ可読命令は、フラッシュメモリ、ROM、RAM、キャッシュなどの非一時的コンピュータ可読媒体に格納される。メモリ210は、コンピュータ可読プログラム命令を格納するための揮発性媒体、不揮発性媒体、取り外し可能媒体、または取り外し不可能媒体、あるいはコンピュータ可読記憶媒体のモジュールを含み得る。
【0032】
オーディオシステム200はまた、増幅器212及び1つ以上のスピーカコンポーネント214を含む。スピーカコンポーネント214のそれぞれは、異なる周波数帯域で作動する複数の変換器を有し得る。オーディオシステムを調整することは、通常、インパルス応答(IR)を測定して、IR測定値に基づいてシステムを最適化することを含み、これにより、各スピーカは、聴取環境内の各聴取位置に対して、特定の音響周波数範囲で作動する。
【0033】
図3は、例示的な聴取環境例300のブロック図である。
図3では車内が例示されているが、聴取環境300は、いくつかの例を挙げると、録音スタジオ、家庭生活空間、コンサートホール、または映画館であってもよいことに留意されたい。スピーカ設置位置とは、聴取環境内でスピーカが配置された物理的場所である。例えば、設置位置は、車両、すなわち車両内部の車室の隅、壁、床、天井、またはパネル(内部または外部)に存在し得る。
図3に示される実施例では、聴取環境300は、第1のスピーカ設置位置310a及び第2のスピーカ設置位置310bを含む。
図3の第1のスピーカ設置位置310aは、車両内の運転者(Dr)の位置に近い設置位置であり、以下、左前方スピーカ設置位置310aとも称され得る。第2のスピーカ設置位置310bは、車両内の同乗者(Ps)の位置に近い設置位置であり、以下、右前方スピーカ設置位置310bとも称され得る。簡潔にするために、2つの設置位置が示される。しかしながら、より少ないまたはより多い設置位置が可能であり得、当業者は、本発明の主題の範囲から逸脱することなく、3つ以上のスピーカ設置位置を有するオーディオシステム及び聴取環境に、本発明の主題を変換できることに、留意されたい。
【0034】
聴取位置とは、聴取環境でリスナーが着座し得る物理的領域である。
図3に示される聴取環境300には、第1の聴取位置320aと第2の聴取位置320bの2つの聴取位置が存在する。前述と同様に、より少ないまたはより多い聴取位置が可能であり得、当業者は、本明細書に記載される本発明の主題の範囲から逸脱することなく、3つ以上の聴取位置に対して、IRの測定を実行できることに、留意されたい。
図3に示される実施例では、第1の聴取位置320aは、以下、運転者(Dr)聴取位置320aとも称され得、第2の聴取位置320bは、以下、同乗者(Ps)聴取位置320bとも称され得る。
【0035】
オーディオシステムを調整する場合、所定目標が設定され、複数の聴取位置で同時にパフォーマンスのバランスが取られる。理想的な目標は、すべての聴取位置で位相差ゼロを達成することである。実際には、複数の聴取位置で位相差ゼロを達成することは、数学的に不可能である。従って、より現実的なアプローチでは、各聴取位置での位相差を最小化する所定目標が定義される。
【0036】
各周波数ビンの位相シフトに関する限り、所定目標を満たすバランスの取れたパフォーマンスをもたらし得るいくつかのオプションが利用可能である。しかしながら、どのオプション(複数可)が成功するかは、必ずしも明確ではない。さらに、所定目標を満たすいくつかのオプションが存在する場合でも、どのオプションが最適な結果を示すかは、容易に明確にはなり得ない。本明細書の説明では、所定目標は、聴取環境内の第1の聴取位置及び第2の聴取位置における第1のスピーカ設置位置と第2のスピーカ設置位置との間の位相コヒーレンスに焦点を当てる。しかしながら、本明細書で説明される同じ原理及び概念は、3つ以上のスピーカ設置位置及び3つ以上の聴取位置の中央統合、前後統合、及びサブウーファー統合にも適用できることに、留意されたい。
【0037】
聴取環境300でオーディオシステムを調整することは、潜在的スピーカ設置位置310a~310bのそれぞれにスピーカ214を配置し、オーディオ入力204を再生し、聴取位置320a~320bのそれぞれでインパルス応答(IR)の測定値を取ることを含む。聴取位置のそれぞれで、スピーカ設置位置のそれぞれに関して、IRを測定することにより、IRの生データが収集される。IRは、例えば、振幅、及び位相成分、1つ以上の周波数または音調、周波数分解能、位相偏差を含み得る。上記で論述されるように、IR測定値を取るための手段は、本明細書では限定されない。IR測定値を収集するためにいずれの手段が使用されてもよく、測定値が格納されるフォーマットのみが、本発明の主題において重要である。測定システムは、本発明の主題の位相オプティマイザから分離されている。IR測定値は、任意の外部測定システムにより取得され、テキストファイルとして格納される。テキストファイルは位相オプティマイザにインポートされ、これは、本明細書において後で詳細に論述される。
【0038】
部分的なテキストファイル900の実施例が
図9に示される。データは、10Hzから2kHzまでの周波数について、運転席側聴取位置320aで、左前方スピーカ設置位置310aに関して取得されたIR測定値を表す。各周波数902の測定値には、振幅904、位相906、及び位相コヒーレンス908が含まれる。簡潔にするために、所定の周波数範囲内のすべての可能な周波数が
図9に示されているわけではない。
図9に示される実施例の所定の周波数範囲は、10.742188Hz~20000.001953Hzである。
【0039】
図3に示される例示的な聴取環境では、左前方スピーカ設置位置310a及び右前方スピーカ設置位置310bの2つのスピーカ設置位置と、運転者聴取位置320a及び同乗者聴取位置320bの2つの聴取位置とが存在し、測定システム102は、4セットのIR測定値を取得して、左右(LR)コヒーレンス分析を実行する。生データは、位相オプティマイザ104に入力するために、テキストファイルで格納される(
図9に示されるように)。下記に例が挙げられる。
【0040】
セット(1)は、
図9に実施例で示されるように、運転者(Dr)聴取位置320aで、左前方スピーカ設置位置310aに関して取得された生データである。
【0041】
セット(2)(図示せず)は、運転者(Dr)聴取位置320aで、右前方スピーカ設置位置310bに関して取得された生データである。
【0042】
セット(3)(図示せず)は、同乗者(Ps)聴取位置320bで、右前方スピーカ設置位置310bに関して取得された生データである。
【0043】
セット(4)(図示せず)は、同乗者(Ps)聴取位置320bで、左前方スピーカ設置位置310aに関して取得された生データである。
【0044】
図4Aは、運転者(Dr)聴取位置320aにおける、左前方スピーカ設置位置310aと右前方スピーカ設置位置310bとの生の未調整位相応答の差を表すグラフ400である。位相の理想的なゾーンは、±90である。
図4Aでは、いくつかの周波数での生の未調整位相応答の差は、±180の範囲内であり、これは望ましくなく、オーディオシステムから不良なオーディオ出力が生じ得る。
【0045】
図4Bは、同乗者(Ps)聴取位置320bにおける、左前方スピーカ設置位置310aと右前方スピーカ設置位置310bとの生の未調整位相応答の差を表すグラフ410である。
図4Bでは、位相は、同様に±180であり、望ましくない。
【0046】
図4Cは、
図4A及び
図4Bの運転者(Dr)位相差及び同乗者(Ps)位相差に関する近側と遠側の位相差を表すグラフ420である。近側とは、測定される位置に最も近いスピーカを指し、遠側とは、測定される聴取位置から最も離れたスピーカを指す。
図4Cに示されるように、運転者(Dr)聴取位置の位相応答422と、同乗者(Ps)聴取位置の位相応答424とは非対称であり、位相値が±90の好ましいゾーン426を上回るまたは下回る非コヒーレント位相の領域がいくつかある。
【0047】
図5は、任意のオーディオシステムを調整する方法のフロー
図500である。502にて、各聴取位置で各スピーカ設置位置に関して測定されたオーディオシステムのIRの生の未調整データの1つ以上のテキストファイルが、位相オプティマイザに入力、すなわちインポートされる。上記に論述されるように、測定システムは、位相オプティマイザから分離されており、各セットのIR測定値のデータは、例えばカンマ区切り(CSV)またはタブ区切りのテキストファイルフォーマットなどのテキストファイルフォーマットで格納されている。504にて、位相オプティマイザは、あらゆる不正確なデータ、不完全なデータ、無関係なデータ、及び重複データを検出して削除または修正することで、生データをクレンジングし、これにより、方法の後続ステップで、位相オプティマイザは適切なデータのみを使用することが確保される。
【0048】
506にて、オプティマイザは、聴取環境の聴取位置ごとに、±180の所定範囲内のすべての位相シフト値に関して、合成位相差を特定する。このステップは、聴取位置ごとに繰り返され、配列に格納される。
【0049】
508にて、位相オプティマイザは、各聴取位置の合成位相(すなわち生の位相+位相シフト)、すなわち合成位相差の平均及び標準偏差を特定し、値は配列に格納される。510にて、位相オプティマイザは、最小の平均及び標準偏差値を有する位相シフト値を格納する。
【0050】
512にて、各聴取位置及びすべての位相シフト値に関して、これが繰り返される。514にて、すべての可能な周波数が最適化されるまで、同様にこれが繰り返される。
【0051】
すべての可能な位相シフト値が試行され、すべての可能な周波数が最適化されると、516にて、オプティマイザは、位相シフト目標曲線を生成する。位相シフト目標曲線を生成するために、オプティマイザは、各周波数での理想的な位相シフトを選択する。理想的な位相シフトとは、最小の平均及び標準偏差値をもたらす合成位相である。オプティマイザは、位相相関を構文解析化、フォーマット化、及び最適化して、すべての周波数での理想的な位相シフトを表す位相シフト目標曲線を生成する。本発明の主題の位相シフトオプティマイザは、各セットにおける平均位相コヒーレンス及び座席間の整合性を最適化する。
【0052】
図6は、位相オプティマイザから出力された位相シフト目標曲線610のグラフ600である。FIRフィルタを使用して、またはバイカッドオールパスフィルタで近似させて、位相シフトが実施されると、オーディオシステムの最適化された位相コヒーレンスが得られる。
【0053】
図7に示される1つ以上の実施形態では、位相オプティマイザにより生成された位相シフト目標曲線は、702にて、オーディオシステムのDSPに直接入力される。あるいは、位相シフト目標曲線は、704にて、変換モジュールに入力され得る。706にて、変換モジュールは、必要に応じて目標曲線を、DSPと互換性のあるパラメータに変換する。このステップは、DSP及びDSPが関連付けられたフィルタ構成に基づいたオプションである。いくつかの事例では、位相シフト目標曲線は、パラメータを変換する必要なく実行されるように、702にて、DSPに直接プッシュされ得る。例えば、位相シフト目標曲線がDSPで受け入れ可能なデータフォーマットである場合、位相シフト目標曲線は、変換されずにDSPに直接プッシュされ得る。オーディオパラメータへの変換が必要な場合は、708にて、オーディオパラメータがDSPに入力される。710にて、DSPは、位相シフト目標曲線を適用する、またはDSPに応じて、変換モジュールから入力されたオーディオパラメータを適用する。
【0054】
図8Aは、第1の聴取位置及び第2の聴取位置における第1のスピーカの予測IRのグラフ800である。
図8Bは、第1の聴取位置及び第2の聴取位置における第2のスピーカの予測IRのグラフ810である。
図8Cは、
図8Aと
図8Bの比較を表すグラフ820である。
図8Cは、運転者(Dr)位相及び同乗者(Ps)位相に関する近側と遠側の位相差のプロットを表す。
【0055】
図8Aを参照すると、曲線802は、±90の好ましいゾーン内に収まっている。同様に、位相シフト目標曲線が適用された後の
図8Bでは、曲線812は、±90の好ましいゾーン内に収まっている。位相シフト目標曲線が適用されて、
図8Aと
図8Bとの比較が行われた後の
図8Cでは、第1のスピーカ設置位置の位相応答822及び第2のスピーカ設置位置の位相応答824は、聴取位置320a及び320bの両方に関して対称となり、位相値は、±90の好ましいゾーン内に留まる。
【0056】
前述の明細書では、本開示は、特定の例示的な実施形態を参照して説明されている。本明細書及び図面は、限定的ではなく例示であり、変更形態が本開示の範囲内に含まれることが意図される。従って、本開示の範囲は、単に記載された実施例によってではなく、請求項及びそれらの法的均等物によって、決定されるべきである。
【0057】
例えば、いずれかの方法の請求項またはプロセスの請求項に挙げられるステップは、いかなる順序で実行されてもよく、繰り返し実行されてもよく、請求項に提示される特定の順序に限定されない。さらに、いずれかの装置の請求項に挙げられる構成要素及び/または要素は、様々に置き換えて、組み立てられてもよく、あるいは動作可能に構成されてもよく、よって、特許請求の範囲に挙げられる特定の構成に限定されない。説明されるいずれかの方法またはプロセスは、1つ以上のデバイスで命令を実行することにより実施され得、1つ以上のデバイスには、プロセッサまたはコントローラ、メモリ(非一時的メモリを含む)、センサ、ネットワークインターフェース、アンテナ、スイッチ、アクチュエータなどが、いくつかの例として挙げられる。
【0058】
実施形態に関する利益、他の利点、及び問題の解決策が上記に説明されたが、いずれの利益、利点、問題の解決策も、またはいずれかの特定の利益、利点、もしくは解決策を生じ得る、もしくはより顕著にさせ得るいずれの要素も、いずれかの請求項またはすべての請求項の重要な、必要な、または必須の特徴または構成要素として、解釈されるべきではない。
【0059】
用語「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、「含む(includes)」、またはこれらの任意の変形は、非排他的な包含を指すことが意図され、よって、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、構成物、または装置は、挙げられたこれらの要素のみを含むのではなく、明示的に列挙されていない他の要素、またはこのようなプロセス、方法、物品、構成物、もしくは装置に特有な他の要素も含み得る。これらの具体的に挙げられていないものに加えて、本開示の実践で使用される前述の構造、配置、適用、割合、要素、材料、または構成要素の他の組み合わせ及び/または変更形態は、本開示の一般的な原理から逸脱することなく、変えられてもよく、あるいは特定の環境、製造仕様、設計パラメータ、または他の動作要件に具体的に適合されてもよい。