(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100273
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】積層成形品の製造方法および積層成形品製造システム
(51)【国際特許分類】
B29C 43/58 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
B29C43/58
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074131
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2022000385の分割
【原出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆幸
【テーマコード(参考)】
4F204
【Fターム(参考)】
4F204AC03
4F204AD16
4F204AD20
4F204AG03
4F204AH36
4F204AR06
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FB11
4F204FB22
4F204FG03
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ01
4F204FQ38
(57)【要約】
【課題】多層化された積層成形品を好適に製造する方法およびシステムを提供する。
【解決手段】積層成形品の製造方法は、積層フィルムが仮接着またはラミネートされた積層成形品のラミネートおよび平坦化を行う積層成形品の製造方法であって、以下の工程を含む。工程(a)は、所定の構造構成体がそれぞれ異なる複数の押圧板を予め用意する。工程(b)は、新たに仮接着またはラミネートされた基材の状態に応じて、複数の押圧板から1つの押圧板を選択する。工程(c)は、平坦な主面を有する盤体の主面に対して選択にかかる押圧板を取り付けることにより、圧締部を用意する。工程(d)は、圧締部の温度が所定の範囲内になるよう圧締部の温度を制御する。工程(e)は、基材の表面に圧締部を押圧する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層フィルムの少なくとも一部が仮接着またはラミネートされた基材を押圧体により押圧する積層工程を有し、前記積層工程を複数回繰り返すことで所定の層数分の積層フィルムが積層された積層成形品を製造する積層成形品製造システムであって、
前記押圧体を構成する少なくとも1の構造構成体がそれぞれ異なる複数の前記押圧体を収容する収容体と、
前記積層フィルムの少なくとも一部が新たに仮接着またはラミネートされた前記基材の状態に応じて複数の前記押圧体から選択された少なくとも1の前記押圧体を加熱体に取り付けて圧締部を形成するための取付部と、
前記圧締部の温度が所定の範囲内になるよう前記加熱体の温度を制御する温度制御装置と、を備える、
積層成形品製造システム。
【請求項2】
複数の前記押圧体は、それぞれ、化学成分組成、厚さ、重さ、弾性率、表面硬さ、断面硬さ、引張強さ、引張降伏強さ、圧縮強さ、かさ密度、断面積、断面形状、投影面積、投影輪郭形状、表面粗さ、平面度、平行度、熱伝導度、比熱容量、電気伝導度、誘電率、磁化率、吸水率、反射率、および光沢度のうち少なくともいずれか1つの物性が異なる前記構造構成体により構成される、
請求項1に記載の積層成形品製造システム。
【請求項3】
前記構造構成体は、種類の異なる複数の弾性体、種類の異なる複数の剛性体、種類の異なる複数の繊維体、種類の異なる複数の粒子体、および空隙からなる構成要素の集合の中から同じ種類の前記構成要素を含む少なくとも2つの前記構成要素を組み合わせて構成される、
請求項2に記載の積層成形品製造システム。
【請求項4】
前記構成要素の組み合わせは、複数の異なる前記構成要素が2次元または3次元に形成された所定のパタン構造を含む、
請求項3に記載の積層成形品製造システム。
【請求項5】
前記積層フィルムの少なくとも一部が新たに仮接着またはラミネートされた前記基材の状態に応じて複数の前記押圧体から少なくとも1の前記押圧体を選択するセレクタをさらに備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の積層成形品製造システム。
【請求項6】
前記セレクタは、前記構造構成体を構成する前記構成要素の組み合わせに基づいて、仮接着された前記積層フィルムが前記基材の凹凸に従うように前記基材を押圧するための、前記選択をする、
請求項3を従属する場合の請求項5に記載の積層成形品製造システム。
【請求項7】
前記セレクタは、前記構造構成体を構成する前記構成要素の組み合わせに基づいて、前記積層フィルムがラミネートされた後であって押圧される前の前記基材の表面が予め設定された平坦度になるように前記基材を押圧するための、前記選択をする、
請求項3を従属する場合の請求項5に記載の積層成形品製造システム。
【請求項8】
前記セレクタが参照する前記基材の状態は、前記積層フィルムの少なくとも一部が新たに仮接着またはラミネートされた後であって押圧される前の前記基材の積層数を含む、
請求項5~7のいずれか一項に記載の積層成形品製造システム。
【請求項9】
前記セレクタが参照する前記基材の状態は、前記積層フィルムの少なくとも一部が新たに仮接着またはラミネートされた後であって押圧される前の前記基材の材質や厚さを含む、
請求項5~8のいずれか一項に記載の積層成形品製造システム。
【請求項10】
前記セレクタが参照する前記基材の状態は、前記積層フィルムの少なくとも一部が新たに仮接着またはラミネートされた前記基材に予め積層された前記積層フィルムを含む前記基材に施された加工の状態を含む、
請求項5~9のいずれか一項に記載の積層成形品製造システム。
【請求項11】
前記収容体が収容する前記押圧体のうち前記選択にかかる前記押圧体と、前記圧締部に取り付けられている前記押圧体とを交換する交換装置をさらに備える、
請求項1~10のいずれか一項に記載の積層成形品製造システム。
【請求項12】
前記交換装置は、前記選択にかかる前記押圧体を前記圧締部に取り付ける前に予熱する予熱装置を含む、
請求項11に記載の積層成形品製造システム。
【請求項13】
前記押圧体は、前記積層成形品に接触したときの圧力を分散するために設けられた緩衝層を前記構造構成体として備える、
請求項1~12のいずれか一項に記載の積層成形品製造システム。
【請求項14】
前記押圧体は、仮接着またはラミネートされた前記積層フィルムが前記基材の凹凸に従うように、前記基材を押圧する面に弾性体を前記構造構成体として備える、
請求項1~13のいずれか一項に記載の積層成形品製造システム。
【請求項15】
積層フィルムの少なくとも一部が仮接着またはラミネートされた基材を当該基材に接触する押圧体と当該基材に熱を付与する加熱体とを含む圧締部により押圧する積層工程を有し、前記積層工程を複数回繰り返すことで所定の層数分の積層フィルムが積層された積層成形品を製造する積層成形品の製造方法であって、
前記押圧体を構成する少なくとも1の構造構成体がそれぞれ異なる複数の前記押圧体から、少なくとも1つの前記押圧体を選択するための選択基準を設定する工程と、
平坦な主面を有する盤体の前記主面に対して、前記選択基準に基づいて、前記選択にかかる前記押圧体を含む前記圧締部を用意する工程と、
前記圧締部の温度が所定の範囲内になるよう前記加熱体の温度を制御する工程と、
前記基材の表面に前記圧締部を押圧する工程と、
を備える、
積層成形品の製造方法。
【請求項16】
前記選択基準を設定する工程は、前記積層フィルムの少なくとも一部が新たに仮接着またはラミネートされた前記基材の状態に応じて、前記選択基準を設定する、
請求項15に記載の積層成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層成形品の製造方法および積層成形品製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
凹凸を有する基材に樹脂フィルムのような被積層材を積層することにより回路基板やIC基板等を製造する積層装置および積層方法が開発されている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている方法は、上下キャリアフィルムとともに真空積層装置内に搬入した基材の上下部の積層成形空間を減圧し、一方の空間の減圧を継続しつつ他方の空間を加圧することにより基材をキャリアフィルムによって加圧する。
【0004】
また特許文献2に開示されている方法は、上盤と下盤を閉鎖した際に真空吸引可能なチャンバを形成し、少なくともいずれか一方の盤に設けられた弾性膜体をチャンバ内に膨出させて基材を加圧する。
【0005】
特許文献3に開示されているシステムは、減圧されたチャンバ内で加圧体により基材を加圧し中間積層材を成形する真空積層装置と、真空積層装置の後工程に配設され中間積層材を加圧する平坦化プレス装置と、を有する。このシステムの平坦化プレス装置は、タイバの部分にそれぞれ加圧機構を備え、加圧機構を個別に位置制御可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-058349号公報
【特許文献2】特開2013-237230号公報
【特許文献3】特開2021-100802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ビルドアップ基板の製造工程に代表されるように、表面に微細な凹凸が加工された基材に、熱硬化性樹脂フィルムのような積層フィルムを繰り返し積層(ラミネート)することで、多層化された積層成形品を製造する工程においては、基材の厚さや凹凸の分布等の形状要素、積層成形品の密度や硬さ等の物性要素、積層成形品の反りやねじれ等の不良要素等が、積層段階毎やロット毎に異なるため、上述の技術だけでは好適に対応することが難しい。特に、近年の高性能化されたビルドアップ基板の製造工程においては、基材に施される凹凸パタンが微細化、深度化、および三次元的に複雑分布化する傾向にあり、それに伴い上記の各要素が重畳的かつ不確定的に作用するので、積層成形品の品質ばらつきが大きくなるという問題が発生している。そのため、積層成形品の歩留まり向上の観点から、積層成形品の積層段階毎やロット毎の品質安定化が強く望まれている。
【0008】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、多層化された積層成形品を好適に製造する方法およびシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示にかかる積層成形品の製造方法は、積層フィルムの少なくとも一部が仮接着またはラミネートされた基材を加圧する積層工程を有し、その積層工程を複数回繰り返すことで、所定の層数分の積層フィルムが積層された積層成形品を製造する製造方法であって、以下の工程を含む。
工程(a)は、所定の構造構成体がそれぞれ異なる複数の押圧板を予め用意する。押圧板は加熱体を含んでいてもよい。
工程(b)は、基材に予め積層された積層フィルムの層数が所定の段階において、積層フィルムの少なくとも一部が新たに仮接着またはラミネートされた基材の状態に応じて、複数の押圧板から1つの押圧板を選択する。
工程(c)は、平坦な主面を有する一対の盤体の各盤体の主面に対して選択にかかる押圧板を取り付けることにより、圧締部を用意する。
工程(d)は、圧締部の温度が所定の範囲内になるよう圧締部の温度を制御する。
工程(e)は、積層フィルムの少なくとも一部が仮接着またはラミネートされた基材の表面に圧締部を押圧する。
【0010】
本開示にかかる積層成形品の製造方法は、積層フィルムの少なくとも一部が仮接着またはラミネートされた基材を加圧する積層工程を有し、その積層工程を複数回繰り返すことで、所定の層数分の積層フィルムが積層された積層成形品を製作する製造方法であって、収容体、セレクタ、盤体、押圧板および温度制御装置を有する。収容体は、構造構成体がそれぞれ異なる複数の押圧板を収容する。セレクタは、基材に予め積層された積層フィルムの層数が所定の段階において、積層フィルムの少なくとも一部が新たに仮接着またはラミネートされた基材の状態に応じて、複数の押圧板から1の押圧板を選択する。盤体は、平坦な主面に1の押圧板が交換可能に設置されることにより積層フィルムの少なくとも一部が仮接着またはラミネートされた基材を押圧する圧締部を構成する。温度制御装置は、圧締部の温度が所定の範囲内になるよう圧締部の温度を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、多層化された積層成形品を好適に製造する方法およびシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態にかかる積層成形品製造システムのブロック図である。
【
図2】積層成形品製造システムが行う積層成形品の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】積層工程ブロックの具体例を示す構成図である。
【
図5】平坦化装置における加工領域の構成の具体例を示す構成図である。
【
図8】押圧板と積層工程との対応パタンの例を示す表である。
【
図9】積層成形品製造システムの具体例を示す図である。
【
図10】収容体およびセレクタの具体例を示す図である。
【
図11】押圧板供給ブロックの動作を示す第1の図である。
【
図12】押圧板供給ブロックの動作を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0014】
<実施の形態>
図1を参照しながら、実施の形態にかかる積層成形品製造システムの概要構成について説明する。
図1は、実施の形態にかかる積層成形品製造システム1のブロック図である。積層成形品製造システム1は、複数の積層フィルムがラミネートされた積層成形品を製造するための機能を有している。積層成形品は、予め微細な凹凸が加工された所定の基材に、所定の層数の積層フィルムが積層されたものである。積層成形品製造システム1は、基材に予め積層された積層フィルムの層数が所定の段階において、積層フィルムの少なくとも一部が新たに仮接着された基材をラミネートし、ラミネートした基材の表面を段階的に平坦化する。積層成形品製造システム1は主な構成として、制御装置10、押圧板供給ブロック20および積層工程ブロック30を有する。
【0015】
制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)またはMCU(Micro Controller Unit)等の演算装置を含む回路であって、押圧板供給ブロック20および積層工程ブロック30を適宜制御する。制御装置10は例えば押圧板供給ブロック20および積層工程ブロック30がそれぞれ有するモータ等の駆動部や、センサ等に通信可能に接続している。
【0016】
また制御装置10は、メモリ11を有している。メモリ11は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。これにより制御装置10は、メモリ11が予め格納している所定のプログラムを起動することにより上述の制御を実行できる。メモリ11はさらに、後述する押圧板40に関する押圧板データを記憶している。押圧板データは、複数の押圧板40と基材の積層状態との対応関係を示したデータである。これにより積層成形品製造システム1は、基材における積層状態に応じた押圧板40を選択できる。
【0017】
押圧板供給ブロック20は、積層工程ブロック30に対して押圧板を供給または交換する。押圧板供給ブロック20は、制御装置10により制御される。押圧板供給ブロック20は主な構成として、収容体21、セレクタ22および交換装置23を有している。
【0018】
収容体21は、複数の押圧板40を交換可能に収容する。押圧板40は、積層工程ブロック30が有するラミネート装置31または平坦化装置32において用いられる部材である。押圧板40は、積層フィルムに接する面において、押圧体40’を有している。押圧体40’は、盤体に対する側において、加熱体を有していてもよい。また、押圧体40’は、種々の構造構成体を形成していてもよい。
【0019】
例えば、積層フィルムの少なくとも一部が仮接着された基材をラミネート装置31が減圧下でラミネートする工程において、押圧体40’は、仮接着された積層フィルムが基材の凹凸に正確に従うように、基材を押圧する。すなわち、押圧体40’は、例えば押圧後に基材の凹凸と積層フィルムとの間に気泡を残存させたり、溶融した積層フィルムの一部を基材の縁より外側に流出させたり、基材の表面の積層フィルムに皺を発生させたり、基材と積層フィルムの位置関係が所定の位置からずれたりしないように、押圧前の基材の状態に応じた所定の構造構成体を有する。この場合、押圧体40’は、構造構成体を形成し得る構成要素として、複数の種類の弾性体、複数の種類の剛性体、複数の種類の繊維体、複数の種類の粒子体、および空隙からなる構成要素の群の中から少なくとも2つの構成要素を選択の基準として含み、この基準により選択される。また押圧体40’は、それらの構成要素が2次元的および3次元的に適切に組み合わされた所定のパタン構造を有し得る。
【0020】
また、押圧体40’は、例えば平坦化装置32が、積層フィルムがラミネートされた基材の表面を段階的に押圧し、基材の表面を均等に平坦化する。すなわち、押圧体40’は、例えば押圧後に基材の表面が所定の平坦度および平滑度となるように、押圧前の基材の状態に応じた所定の構造構成体を有する。この場合、押圧体40’は、構造構成体を形成し得る構成要素として、複数の種類の弾性体、複数の種類の剛性体、複数の種類の繊維体、複数の種類の粒子体、および空隙からなる構成要素の群の中から少なくとも2つの構成要素を選択の基準として含み、この基準により選択される。また押圧体40’は、それらの構成要素が2次元的および3次元的に適切に組み合わされた所定のパタン構造を有し得る。
【0021】
なお、上述した「複数の種類」は、各々の物性要素が異なることを意味するものであってもよい。すなわち、複数の種類は、物性要素として、素材の成分組成が異なることを意味するものであってもよい。また複数の種類は、成分組成以外の物性要素として、厚さ、重さ、弾性率、表面硬さ、断面硬さ、引張強さ、圧縮強さ、かさ密度、断面積、断面形状、投影面積、投影輪郭形状、表面粗さ、平面度、平行度、熱伝導度、比熱容量、電気伝導度、誘電率、磁化率、吸水率、反射率、光沢度で表される物性要素のうち少なくとも1つが異なることを意味するものであってもよい。
【0022】
例えば、SUS304組成のステンレス板であっても、表面粗さがRa0.4のものと、Ra1.6のものを異なる複数の種類と解釈してもよい。また、上述の「2次元的に適切に組み合わせる」とは、例えば平坦化装置32に用いられる押圧体40’の構造構成体のうち、SUS304組成のステンレス板からなる剛性体において、中心付近の面粗さをRa0.4、周縁付近をRa1.6とし、それらの面積比率を新たにラミネートされた積層フィルムの直下に配置される導電体の状態に応じて、例えば5:1となるようにしてもよい。
【0023】
また、「3次元的に適切に組み合わせる」とは、例えば上記のSUS304組成のステンレス板の内部において、以下のような構造を採用することを意味してもよい。すなわち、ステンレス板の内部の中央付近において、同心円状の空洞が、基材の面と平行になるように設けられる。さらに中央付近から周縁部に向かって基材の面に対して角度θを成すように放射状の空洞が広がるように設けられる。この場合に角度θは、積層フィルムの直下に配置される導電体の状態に応じて、例えば中心に近い領域をθ=0度、周縁に近い領域をθ=0.2度となるように設定される。
【0024】
なお、上記の2次元的な組み合わせ(所定のパタン構造)は、例えば適切な大きさの砥粒を用いた研磨加工により製作可能であり、上記の3次元的な組み合わせは、例えばレーザー焼結式の3Dプリンターにより製作可能である。
【0025】
収容体21が収容する複数の押圧板40は、各々の押圧板40に含まれる押圧体40’において、所定の構造構成体がそれぞれ異なる。ここで、構造構成体とは、複数の種類の弾性体、複数の種類の剛性体、複数の種類の繊維体、複数の種類の粒子体、および空隙からなる構成要素の群の中から少なくとも2つの構成要素を選択の基準として含み、この基準により選択されたものを指す。なお、構造構成体は、それらの構成要素が2次元的および3次元的に適切に組み合わされた所定のパタン構造を有していてもよい。また、構成要素の種類とは、素材の化学成分組成、厚さ、重さ、弾性率、表面硬さ、断面硬さ、引張強さ、引張降伏強さ、圧縮強さ、かさ密度、断面積、断面形状、投影面積、投影輪郭形状、表面粗さ、平面度、平行度、熱伝導度、比熱容量、電気伝導度、誘電率、磁化率、吸水率、反射率、および光沢度のうち少なくともいずれか1つを含み得る。
【0026】
すなわち収容体21が収容する複数の押圧板40は、各々の押圧板40に含まれる押圧体40’において、例えば素材の化学成分組成が異なっていてもよいし、厚さが異なっていてもよい。また押圧体40’は、素材の化学成分組成や厚さが同じであって、硬度や弾性率が異なるものであってもよい。複数の押圧板40は、基材の状態に合わせて選択され、積層工程ブロック30に設置される。押圧板40はセレクタ22によって選択され、さらにセレクタ22によって取り出される。なお、積層工程ブロック30が積層成形品の製造工程において一度に複数の押圧板40を要する場合には、収容体21は、対応する複数の押圧板40を収容する。
【0027】
セレクタ22は、収容体21が収容する複数の押圧板40から少なくとも1つの押圧板40を選択して取り出す。セレクタ22は、基材における積層フィルムが新たに仮接着またはラミネートされた基材の状態に応じて複数の押圧板から少なくとも1の押圧板40を選択する。積層フィルムが新たに仮接着またはラミネートされた基材の状態とは、例えば基材に予め積層された積層フィルムの積層数である。また積層フィルムが新たに仮接着またはラミネートされた基材の状態とは、例えば基材に予め積層された積層フィルムの材質や厚さであってもよい。積層フィルムが新たに仮接着またはラミネートされた基材の状態は、予め積層された積層フィルムを含む基材に施された加工の状態であってもよい。
【0028】
予め基材に施された加工とは、基材表面の積層フィルムに対して施された切削加工や穴あけ加工を含む。また予め基材に施された加工は、例えば積層フィルムに敷設された薬剤や添付された金属箔(めっき)の状態を含む。また予め基材に施された加工は、例えば基材を所定の温度で加熱する熱処理(キュア処理)を含む。なお、積層工程ブロック30が積層成形品の製造工程において一度に複数の押圧板40を要する場合には、セレクタ22は複数の押圧板40を選択する。セレクタ22は、取り出した押圧板40を、交換装置23に引き渡す。
【0029】
交換装置23は、収容体21が収容する押圧板40のうち選択にかかる押圧板40と、積層工程ブロック30に取り付けられている押圧板40とを交換する。交換装置23はセレクタ22が取り出した交換用の押圧板40を受け取ると、受け取った押圧板40と、積層工程ブロック30に既に取り付けられている押圧板40とを交換する。また交換装置23は、交換により積層工程ブロック30から取外した押圧板40をセレクタ22に引き渡す。
【0030】
積層工程ブロック30は、積層フィルムが新たに仮接着された基材をラミネートし、ラミネートした基材の表面を平坦化する。積層工程ブロック30は、制御装置10により制御される。積層工程ブロック30は主な構成として、ラミネート装置31、平坦化装置32および温度制御装置33を有している。
【0031】
ラミネート装置31は、基材に新たに仮接着された積層フィルムをラミネートする。ラミネート装置31は、搬送用フィルムを介して基材の表面に接触し、且つ、圧力を付与することにより、かかる圧着処理(ラミネート)を実行する。ラミネート装置31は、盤体を上下動させることで積層フィルムを押圧したり、押圧状態から解放したりすることにより、ラミネート処理を行うものが望ましい。具体的には、ラミネート装置31は、サーボモータまたはトルクモータを用いた回転駆動を動力とし、ボールねじを介して盤体を上下動させることが望ましい。その場合、ラミネート装置31は、押圧体40’の構造構成体の構成要素うち、基材に面する主面において、シリコンゴムやフッ素樹脂等の耐熱性を有する弾性体が用いられることがさらに望ましい。
【0032】
なお、ラミネート装置31は、上述の方式に限らず、可塑性と耐熱性を有する樹脂製のダイアフラムを用いて積層フィルムを押圧することによりラミネートを行ってもよい。あるいは、ラミネート装置31は例えばローラを有し、積層成形品の表面にローラを転がすことによりラミネートを行ってもよい。またラミネート装置31は上述の方式とはさらに異なる方式によりラミネートを行ってもよい。
【0033】
ラミネート装置31は、圧締部50を有する。圧締部50は、押圧板40を含む。押圧板40は、構造構成体に加熱体51を含んでいても良い。またラミネート装置31は、押圧板40を交換可能に保持する。ラミネート装置31に交換可能に保持される押圧板40は、交換を容易とするため、ロボットアーム等がアクセス可能な位置と向きにボルト締結部を有していることが望ましい。なお、押圧板40は、交換可能にする手段として、上記のようにボルト締結する手段以外に、油圧シリンダやエアシリンダを用いたワンタッチ式チャックによる機械的な締結手段を有していても良いし、電磁石や吸引装置などを用いた吸着力を原理とする締結手段を有していても良い。
【0034】
平坦化装置32はラミネート装置31がラミネートを施した基材の表面を平坦化する。平坦化装置32は主な構成として、圧締部50を有している。圧締部50は、新たにラミネートされた積層フィルムの表面に所定の熱と圧力を付与することにより、基材の表面を平坦化する。
【0035】
圧締部50は、押圧板40を含む。押圧板40は、構造構成体に加熱体51を含んでいても良い。加熱体51は、温度制御装置33により温度が制御される部材を含む。これにより押圧板40は、基材の表面に対して熱や圧力を伝える。平坦化装置32は、盤体を上下動させることで積層フィルムを押圧したり、押圧状態から解放したりすることにより、平坦化処理を行うものが望ましい。具体的には、平坦化装置32は、サーボモータまたはトルクモータを用いた回転駆動を動力とし、ボールねじを介して盤体を上下動させることが望ましい。その場合、押圧体40’が有する構造構成体の構成要素は、基材に面する主面における表面粗さが中心部分と周縁部分とで異なるステンレス板のような剛性体であることがさらに望ましい。
【0036】
また平坦化装置32は、押圧板40を交換可能に保持する。平坦化装置32に交換可能に保持される押圧板40は、交換を容易とするため、ロボットアーム等がアクセス可能な位置と向きにボルト締結部を有していることが望ましい。なお、押圧板40は、交換可能にする手段として、上記のようにボルト締結する手段以外に、油圧シリンダやエアシリンダを用いたワンタッチ式チャックによる機械的な締結手段を有していても良いし、電磁石や吸引装置などを用いた吸着力を原理とする締結手段を有していても良い。
【0037】
基材において積層フィルムが多層化した場合、予め基材に積層された積層フィルムの材質や積層数、予め基材に積層された積層フィルムの厚みや平坦度や平滑度に対する累積公差、あるいは予め基材や積層フィルムに施された加工状態等により、ラミネートや平坦化するために好適な押圧体40’の構造構成要素が異なる。そのため、積層成形品製造システム1は、押圧体40’が有する構造構成要素に応じて押圧板40を適宜交換する。これにより積層成形品製造システム1は、好適にラミネートもしくは平坦化処理を実行できる。
【0038】
温度制御装置33は、平坦化装置32が有する加熱体51の温度を制御する。例えば温度制御装置33はサーミスタおよびヒータを含み、加熱体51が設定された温度になるようにヒータを制御する。これにより積層成形品製造システム1は、基材を平坦化する際の圧締部50の温度が所定の範囲内になるように、圧締部50の温度を制御する。温度制御装置33は制御装置10により制御される。
【0039】
図2は、積層成形品製造システムが行う積層成形品の製造方法を示すフローチャートである。本開示にかかる積層成形品の製造方法は、積層フィルムの少なくとも一部が仮接着またはラミネートされた基材を加圧する積層工程を有し、その積層工程を複数回繰り返すことで、所定の層数分の積層フィルムが積層された積層成形品を製作する製造方法であって、上述の積層成形品製造システム1を使用するユーザが積層成形品製造システム1を利用して実行する。
【0040】
まず、ユーザは、工程(a)において、所定の構造構成体がそれぞれ異なる複数の押圧板40を予め用意する(ステップS11)。
【0041】
工程(a)における所定の構造構成体は、押圧体40’において、複数の種類の弾性体、複数の種類の剛性体、複数の種類の繊維体、複数の種類の粒子体、および空隙からなる構成要素の群の中から少なくとも2つの構成要素を選択の基準として含み、この基準により選択されたものを指す。なお、構造構成体は、それらの構成要素が2次元的および3次元的に適切に組み合わされた所定のパタン構造を有している。また、構成要素の種類は、素材の化学成分組成、厚さ、重さ、弾性率、表面硬さ、断面硬さ、引張強さ、引張降伏強さ、圧縮強さ、かさ密度、断面積、断面形状、投影面積、投影輪郭形状、表面粗さ、平面度、平行度、熱伝導度、比熱容量、電気伝導度、誘電率、磁化率、吸水率、反射率、および光沢度のうち少なくともいずれか1つを含む。ユーザは、積層成形品を製造する工程から、基材の積層工程ごとに、適宜押圧板40を用意する。
【0042】
次に、工程(b)において、積層成形品製造システム1は、積層フィルムの少なくとも一部が新たに仮接着またはラミネートされた基材の状態に応じて、複数の押圧板から少なくとも1つの押圧板40を選択する(ステップS12)。
【0043】
工程(b)における基材の状態は、例えば基材に予め積層された積層フィルムの積層数である。また工程(b)における基材の状態は、例えば基材に予め積層された積層フィルムの材質や厚さであってもよい。工程(b)における基材の状態は、例えば予め積層された積層フィルムを含む基材に施された加工の状態であってもよい。予め基材に施された加工とは、基材表面の積層フィルムに対して施された切削加工や穴あけ加工を含む。また予め基材に施された加工は、例えば積層フィルムに敷設された薬剤や添付された金属箔(めっき)の状態や累積厚さや総敷設面積を含む。また予め基材に施された加工は、例えば基材を所定の温度で加熱する熱処理(キュア処理)を含む。
【0044】
次に、工程(c)において、積層成形品製造システム1は、盤体の主面に対して上記選択にかかる押圧板40を取り付けることにより、圧締部50を用意する(ステップS13)。
【0045】
なお、工程(c)において、積層成形品製造システム1は、複数の種類の弾性体、複数の種類の剛性体、複数の種類の繊維体、複数の種類の粒子体、および空隙からなる群の中から少なくとも2つが選択され、それらの構成要素が2次元的および3次元的に適切に組み合わされた押圧体40’を含む押圧板40を取り付けることにより圧締部50を用意するものであってもよい。
【0046】
次に、工程(d)において、積層成形品製造システム1は、圧締部50の温度が所定の範囲内になるよう圧締部50の温度を制御する(ステップS14)。
【0047】
次に、工程(e)において、積層成形品製造システム1は、積層フィルムが新たに仮接着またはラミネートされた基材の表面に圧締部50を押圧する(ステップS15)。
【0048】
次に、工程(f)において、積層成形品製造システム1は、基材に積層フィルムが新たに仮接着もしくはラミネートされる毎に、工程(b)から工程(e)までの積層処理を実行する。すなわち、積層成形品製造システム1は、積層成形品の製造プロセスにおいて、積層処理が終了か否かを判定する(ステップS16)。積層処理が終了と判定する場合(ステップS16:YES)、積層成形品製造システム1は処理を終了する。一方、積層処理が終了と判定しない場合(ステップS16:NO)、積層成形品製造システム1は、工程(b)(ステップS12)に戻り、工程(b)から工程(e)までの積層処理を繰り返す。なお、積層処理を繰り返す場合において、工程(b)の前に、基材や基材に積層された積層フィルムに対して所定の加工を施してもよい。基材や積層フィルムに施す加工とは、例えば基材表面の積層フィルムに対して施す切削加工や穴あけ加工を含む。また基材や積層フィルムに施す加工は、例えば基材表面の積層フィルムに対して施す薬剤の敷設や金属箔(めっき)の添付を含む。また基材や積層フィルムに施す加工は、例えば基材を所定の温度で加熱する熱処理(キュア処理)を含む。なお、積層工程ブロック30が積層成形品の製造工程において一度に複数の押圧板40を要する場合には、セレクタ22は複数の押圧板40を選択する。
【0049】
次に、積層成形品製造システム1について具体例を挙げて説明する。
図3は、積層工程ブロック30の具体例を示す構成図である。
図3に示す積層工程ブロック30は、側面方向から観察した構成の概略を示したものである。
【0050】
なお、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、
図3は、右手系の直交座標系が付されている。また、
図3以降において、直交座標系が付されている場合、
図1のX軸、Y軸、およびZ軸方向と、これらの直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸方向はそれぞれ一致している。
【0051】
図3に示す積層工程ブロック30は主な構成として、ラミネート装置31、平坦化装置32、温度制御装置33を有している。積層工程ブロック30は基材A1を押圧し、ラミネート処理を施した後、基材A1の表面をさらに段階的に押圧し、段階的な平坦化処理を施す。基材A1は、下部を支持する下部搬送用シート36と上部を覆う上部搬送用シート35とに挟まれた状態で、図の右側から左側に搬送される。積層工程ブロック30に投入される基材A1は、
図3において右側に配置されているラミネート装置31に搬送される。
【0052】
上部搬送用シート35と下部搬送用シート36とは、例えばポリエチレンテレフタレートを帯状に成形することにより形成されている。上部搬送用シート35と下部搬送用シート36とは、
図3に示した積層工程ブロック30の左右端において巻き取られ、左右方向に同期して巻き取りまたは繰り出しが行われることにより、基材A1を挟み込んだ状態で搬送できる。
【0053】
ラミネート装置31は、基材A1を受け入れると、上下方向に圧力を付与して仮接着されている積層フィルムをラミネートする。ラミネート装置31は例えば上部ラミネート処理部311と下部ラミネート処理部312とを有している。ラミネート装置31は、上部ラミネート処理部311と下部ラミネート処理部312とにより基材A1を挟み込み、圧力をかけることによりラミネート処理を施す。ラミネート装置31は、上部ラミネート処理部311と下部ラミネート処理部312とにより基材A1を挟み込み、減圧可能なチャンバを形成するものであってもよい。ラミネート工程が完了すると、基材A1は上下の搬送用シートにより平坦化装置32に搬送される。
【0054】
図3に示す平坦化装置32は、第1平坦化装置32Aと、第2平坦化装置32Bとを含む。第1平坦化装置32Aは、ラミネート装置31においてラミネートが施された基材A1を受け取り、受け取った基材A1に対して平坦化処理を施す。第1平坦化装置32Aにより平坦化処理が施された基材A1は、上部搬送用シート35および下部搬送用シート36により第2平坦化装置32Bに搬送される。第2平坦化装置32Bは、第1平坦化装置32Aにより平坦化処理が施された基材A1を受け取り、受け取った基材A1に対してさらに平坦化処理を施す。このような段階的な平坦化処理により、積層成形品の製造工程における生産性が向上する。第2平坦化装置32Bにより平坦化処理が施された基材A1は、上部搬送用シート35および下部搬送用シート36により平坦化装置32の外へ搬送される。
【0055】
なお、本開示において平坦化装置32と称する場合は、第1平坦化装置32Aおよび第2平坦化装置32Bの両方を含む。
図3に示す平坦化装置32は、生産性を高めるために、平坦化処理を段階的に2回実行できるように2つの平坦化装置が設けられているが、平坦化装置32が有する平坦化装置は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0056】
温度制御装置33は、ラミネート装置31に接続し、ラミネート装置31における所定の部位の温度を制御する機能を有している。また温度制御装置33は、第1平坦化装置32Aと、第2平坦化装置32Bとに接続し、これらがそれぞれ有する加熱体51の温度を制御する。これにより、ラミネート装置31、第1平坦化装置32Aおよび第2平坦化装置32Bは基材A1に対して所定の熱と圧力を付与する。なお、温度制御装置33は、ラミネート装置31、第1平坦化装置32A、および第2平坦化装置32Bをそれぞれを異なる温度に制御可能である。
【0057】
次に、
図4を参照して平坦化装置32についてさらに説明する。
図4は、平坦化装置32の具体例を示す構成図である。平坦化装置32は、主な構成として、基盤321、加圧装置322、固定盤体323、可動盤体324、ガイド孔325、ガイド軸326を有している。
【0058】
基盤321は、平坦化装置32の下部において加圧装置322が摺動するためのガイド軸326を支持する。すなわち、加圧装置322は、基盤321により上下動可能に支持されている。加圧装置322は所定の駆動装置を有すると共に、可動盤体324の下部に係合し、可動盤体324を上下動させる。可動盤体324を上下動させる手段は特に限定されるものではないが、基板を正確にラミネート処理および均等に平坦化処理するために、サーボモータまたはトルクモータを用いた回転駆動を動力とし、ボールねじを介して上下動させることが望ましい。可動盤体324を上下動させる手段は、上記に限らず、油圧シリンダやエアシリンダを用いるものであっても良い。
【0059】
固定盤体323は、基盤321が支持するガイド軸326の上端に固定され、下部において押圧板40を保持する。可動盤体324は、ガイド軸326が挿通されたガイド孔325を有し、ガイド軸326により上下方向に移動可能に支持される。また可動盤体324は下部において加圧装置322に係合している。これにより可動盤体324は、加圧装置322に制御されて上下動する。さらに可動盤体324は上面において押圧板40を保持する。
【0060】
ガイド軸326は、基盤321から上方に延出している軸であって、上端において固定盤体323を支持するとともに、基盤321と固定盤体323との間において可動盤体324を上下方向に移動可能に支持する。ガイド軸326は例えばボールスプライン軸を含み、ボールスプライン軸により可動盤体324を上下方向に案内してもよい。ガイド軸326はタイバと称されてもよい。
【0061】
上述の構成において、平坦化装置32は、可動盤体324が下方に位置している状態で、上部搬送用シート35および下部搬送用シート36が搬送する基材A1を受け入れる。そして基材A1が所定の位置に停止した状態で、平坦化装置32は加圧装置322を駆動して可動盤体324を上方へ押し上げる。これにより平坦化装置32は固定盤体323が有する押圧板40と基材A1の上面とを接触させるとともに、可動盤体324が有する押圧板40と基材A1の下面とを接触させる。そして平坦化装置32は基材A1の上下面を圧締部50により圧締する。
【0062】
図5を参照して平坦化装置32についてさらに説明する。
図5は、平坦化装置における加工領域の構成の具体例を示す構成図である。
図5に示す平坦化装置32は、基材A1を圧締する領域を示している。
【0063】
押圧板40は、断熱部52と、加熱体51と、押圧体40’と、を含む。断熱部52は、加熱体51と固定盤体323または加熱体51と可動盤体324との間の熱の伝達を押さえるために設けられた部材である。加熱体51は、例えば直方体状の部材であり、固定盤体323と可動盤体324とのそれぞれに固定されている。加熱体51はまた、複数のカートリッジヒータ330を有している。カートリッジヒータ330は、温度測定手段により測定された温度情報に基づき、温度制御装置33により出力が制御されている。温度測定手段は、サーモカップルを測定対象に接触させて測定する手段であっても良いし、放射温度計を用いて測定対象に接触させずに測定する手段であってもよい。また、温度測定手段は、それら以外の手段であっても良い。加熱体51は剛性が比較的に高く、また蓄熱量が比較的に高いものであることが好ましい。これにより圧締部50は好適に基材A1を圧締できる。
【0064】
加熱体51は基材A1に近い側の主面において押圧体40’を交換可能に保持している。なお、加熱体51は、カートリッジヒータ330に代えて、ゴムヒータやプレートヒータを有していても良い。あるいは、加熱体51は、カートリッジヒータ330に代えて、水蒸気やオイルなどの熱媒を通流させる流路を有していても良い。また、加熱体51は、カートリッジヒータ330に対する通電部が着脱可能とされていても良い。同様に、加熱体51が、カートリッジヒータ330に代えて、ゴムヒータやプレートヒータを有する場合は、それらに対する通電部が着脱可能とされていても良い。また、加熱体51が、カートリッジヒータ330に代えて、水蒸気やオイルなどの熱媒を通流させる流路を有する場合は、例えば弁を備えた継手を用いて、熱媒の供給口と回収口を、熱媒の供給源と回収源から着脱可能とされていても良い。
【0065】
押圧体40’は加熱体51の主面に交換可能に取り付けられている。加熱体51と押圧体40’とは、例えば端部がクランパにより固定されていてもよい。加熱体51と押圧体40’とは、例えば端部がボルトにより螺合されていてもよい。
【0066】
図6は、押圧板40の具体例を示す構成図である。
図6には、可動盤体324に設けられている押圧板40の断面が示されている。押圧板40は主な構成として、可動盤体324に接触する側から順に、断熱部52、加熱体51および押圧体40’を有している。
【0067】
なお、
図6に示す押圧板40は、可動盤体324に設けられているものを示すが、固定盤体323に設けられている押圧板40も同様の構成を有している。また固定盤体323が有する押圧板40を上部押圧板と称し、可動盤体324が有する押圧板40を下部押圧板と称する場合がある。同様に、上部押圧板に含まれる押圧体40’を、上部押圧体と称し、下部押圧板に含まれる押圧体40’を下部押圧体と称する場合がある。
【0068】
上述の構成において、断熱部52は、加熱体51と可動盤体324との間に介在して、加熱体51と可動盤体324との熱交換を抑制する。これにより平坦化装置32は効率よく加熱体51を加熱する。断熱部52は例えば熱伝導率が比較的に低い樹脂、金属、セラミックスまたはファイバー材等により構成されうる。
【0069】
加熱体51は直方体状の金属部材であって、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮等の金属により構成され得る。これにより加熱体51は、ラミネート処理や平坦化処理において基材A1を圧締する際に歪まない程度の剛性を有する。また加熱体51は、ラミネート処理や平坦化処理において、基材A1の表面に所定の熱を付与するために充分な熱容量を有する。加熱体51は、温度制御装置33により摂氏80度から摂氏200度程度になるように制御される。
【0070】
押圧体40’は、ラミネート処理や平坦化処理の対象である基材A1または基材A1を搬送する搬送用シートに接触する接触層42を、構造構成体として少なくとも有している。接触層42は、ラミネート装置31においては例えば耐熱性を有する樹脂などの弾性体であり、平坦化装置32においては例えば金属やセラミックスなどの剛性体、もしくは耐熱性を有する樹脂などの弾性体である。また押圧体40’は、構造構成体として、基材A1に接触したときの圧力を分散する緩衝層41を、接触層42と加熱体51の間に有していても良い。緩衝層41は、例えば耐熱性を有する樹脂などの弾性体である。なお、緩衝層41および接触層42は、上記に限らず、複数の種類の弾性体、複数の種類の剛性体、複数の種類の繊維体、複数の種類の粒子体、および空隙からなる構成要素の群の中から少なくとも2つの構成要素を選択の基準として含み、この基準により選択され、それらの構成要素が2次元的および3次元的に適切に組み合わされた所定のパタン構造を有していても良い。
【0071】
緩衝層41は、ラミネート処理および平坦化処理において接触層42が受ける圧力を好適に分散する。緩衝層41は例えば樹脂、ゴム、紙、繊維強化材または不織布などが用いられる。緩衝層41の厚さは例えば100マイクロメートルから5ミリメートル程度である。ラミネート処理において、接触層42は樹脂板であって、例えば100マイクロメートルから5ミリメートル程度のシリコン樹脂やフッ素樹脂が採用され得る。また平坦化処理において、接触層42は金属板であって、例えば100マイクロメートルから5ミリメートル程度のステンレス板が採用され得る。接触層42に金属板のような剛性体を用いた場合であっても、圧締処理において負荷される荷重に対して、わずかに弾性変形する程度の剛性を有していることが好ましい。
【0072】
なお、弾性体と剛性体の区別は、例えば弾性率に基づいても良い。すなわち、弾性率が30キロニュートン毎ミリメートル平米(kN/mm2)を区別の基準とし、これ未満の弾性率を持つ場合を弾性体とし、これ以上の弾性率をもつ場合を剛性体としても良い。また剛性の大小は、弾性率の大小により表されても良い。また接触層42は、表面粗さが小さいことが好ましい。そのため接触層42に金属やセラミックスを用いる場合は、鏡面となる程度の仕上げ研磨加工が施されていることが好ましい。また、接触層42は、表面に例えば窒化チタン(TiN)等のセラミック被膜、クロムやニッケル等のめっき、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の潤滑被膜のようなコーティングが施されても良い。
【0073】
以上、ラミネート装置31および平坦化装置32が有する圧締部50の構成について説明した。なお、ラミネート装置31の場合、ラミネート装置31は、ラミネート処理をするための真空チャンバを有し、この真空チャンバ内に圧締部50を有する。
【0074】
次に、
図7を参照して、基材A1について説明する。
図7は、基材の具体例を示す構成図である。
図7に示す基材A1は、ビルドアップ基板または多層基板と呼ばれるものである。ビルドアップ基板または多層基板は、積層成形品の一実施態様である。基材A1は、基材A10の両面に積層フィルムA11~A23が積層されており、それぞれの層に適宜、穴開け加工が施され、さらに導電箔が付加されている。基材A10は例えばエポキシ系の熱硬化性樹脂や、エポキシ系樹脂とガラス繊維との複合材またはポリエチレンテレフタレート等の樹脂が用いられる。積層フィルムは、例えばポリエチレンテレフタレートやポリイミド等の樹脂が用いられる。
【0075】
上述の構成において、基材A1はまず、基材A10が形成され、形成された基材A10に対して、第1積層工程、第2積層工程および第3積層工程が施される。以下に、これらの工程の概要を説明する。
【0076】
まず、シート状の基材A10は、孔開け加工等を施された後に、銅めっきが施され、さらにエッチング処理により配線パタンが形成される。これにより例えばビアホールA30が形成され、基材A10の加工が完了する。
【0077】
次に、第1積層工程において、基材A10は、積層フィルムA11および積層フィルムA21が積層される。ここで積層フィルムA11および積層フィルムA21が仮接着された基材A10は、積層成形品製造システム1に投入される。積層成形品製造システム1において、ラミネート装置31は積層フィルムA11および積層フィルムA21が仮接着された基材A1にラミネート処理を施し、さらに平坦化装置32はラミネートされた積層フィルムA11および積層フィルムA21の表面を平坦化する。積層成形品製造システム1から取り出された基材A1は次に、銅めっきおよびエッチングが施されることにより、パタンA31やビアホールA32等が形成される。
【0078】
次に、第2積層工程において、基材A1は上記第1積層工程と同様に、積層フィルムA12および積層フィルムA22が仮接着、ラミネートおよび平坦化される。さらに基材A1は、積層フィルムA12および積層フィルムA22に対して銅めっきおよびエッチングが施される。
【0079】
さらに第3積層工程において、上記第1積層工程および第2積層工程と同様に、基材A1は積層フィルムA13および積層フィルムA23が仮接着、ラミネートおよび平坦化され、めっき等による銅箔のパタンが形成される。
【0080】
以上、基材A1の構成および積層工程の概略について説明した。ここに示した基材A1は、基材A10の両面のそれぞれに3層ずつの積層フィルムが積層されている。また基材A1のそれぞれの積層フィルムは、個別の銅箔パタンやビアホールを有している。そのため、ラミネート処理や平坦化処理を行う場合、押圧板40の構造構成体が各積層工程に個別に設定されるのが好ましい。
【0081】
次に、
図8を参照して、積層工程と押圧板40との関係について説明する。
図8は、押圧板と積層工程との対応パタンの例を示す表である。
図8に示す表は、第1平坦化装置32Aおよび第2平坦化装置32Bにそれぞれ取り付けられる押圧板の、積層工程ごとの構成を示している。
【0082】
第1平坦化装置32Aの固定盤体323に取り付けられる上部押圧板は、第1積層工程において、構成No.1-11を有する。第1平坦化装置32Aの可動盤体324に取り付けられる下部押圧板は、第1積層工程において、構成No.1-12を有する。同様に、第2平坦化装置32Bの上部押圧板は、第1積層工程において、構成No.1-13を有する。第2平坦化装置32Bの下部押圧板は、第1積層工程において、構成No.1-14を有する。
【0083】
以下、同様に、第2積層工程において、第1平坦化装置32Aの上部押圧板は、構成No.2-11を有し、下部押圧板は、構成No.2-12を有する。第2平坦化装置32Bの上部押圧板は、構成No.2-13を有し、下部押圧板は、構成No.2-14を有する。
【0084】
第3積層工程において、第1平坦化装置32Aの上部押圧板は、構成No.3-11を有し、下部押圧板は、構成No.3-12を有する。第2平坦化装置32Bの上部押圧板は、構成No.3-13を有し、下部押圧板は、構成No.3-14を有する。
【0085】
上述のように、押圧板40の構造構成体は、各層の積層工程に応じて別個に設定され得る。また押圧板40の構造構成体は、平坦化装置32における押圧の順序や配置に応じても設定され得る。さらに、押圧板40の構造構成体は、押圧する面における積層フィルムがラミネートされた基材の状態に応じて設定される。ここで、積層フィルムがラミネートされた基材の状態とは、例えば基材に予め積層された積層フィルムの積層数である。また積層フィルムがラミネートされた基材の状態とは、例えば基材に予め積層された積層フィルムの材質や厚さであってもよい。積層フィルムがラミネートされた基材の状態とは、例えば予め積層された積層フィルムを含む基材に施された加工の状態であってもよい。予め基材に施された加工とは、基材表面の積層フィルムに対して施された切削加工や穴あけ加工を含む。また予め基材に施された加工は、例えば積層フィルムに敷設された薬剤や添付された金属箔(めっき)の状態や累積厚さや総敷設面積を含む。また予め基材に施された加工は、例えば基材を所定の温度で加熱する熱処理(キュア処理)を含む。積層成形品製造システム1を使用するユーザは、積層成形品を製造するに際し、予め積層工程を鑑みて、
図8に示したそれぞれの工程および取り付けられる位置に対応した押圧板40の構造構成体を決定する。
【0086】
また上述の構成の決定において、ユーザは、緩衝層41および接触層42の構成要素を参照する。緩衝層41および接触層42の構成要素とは、複数の種類の弾性体、複数の種類の剛性体、複数の種類の繊維体、複数の種類の粒子体、および空隙からなる構成要素の群の中から少なくとも2つの構成要素を選択の基準として含み、この基準により選択されたものを指す。また、それらの構成要素は2次元的および3次元的に適切に組み合わされた所定のパタン構造を有していても良い。上記の「複数の種類」は、素材の成分組成、厚さ、重さ、弾性率、表面硬さ、断面硬さ、引張強さ、引張降伏強さ、圧縮強さ、かさ密度、断面積、断面形状、投影面積、投影輪郭形状、表面粗さ、平面度、平行度、熱伝導度、比熱容量、電気伝導度、誘電率、磁化率、吸水率、反射率、光沢度で表される物性要素のうち少なくとも1つが異なることを意味するものであってもよい。なお、構造構成体の組合せは上述のものに限られない。ユーザは、このような構造構成体に鑑みて、種々の組み合わせから、それぞれの工程に好適な構成を決定する。
【0087】
またユーザは、
図8に示した情報に対応する構成を有する押圧板40をそれぞれ用意すると、用意した押圧板40を押圧板供給ブロック20の収容体21にセットする。さらに、ユーザは、
図8に示した情報を、積層成形品製造システム1のメモリ11に記憶させる。これにより、積層成形品製造システム1は、それぞれの積層工程における押圧板40を平坦化装置32に取り付けることが出来る。
【0088】
なお、
図8に示した構成のそれぞれは、同じ構成を有するものであってもよい。すなわち、例えば第2積層工程における第1平坦化装置32Aの上部押圧板に設定された構成No.2-11と、第3積層工程における第1平坦化装置32Aの上部押圧板に設定された構成No.3-11とは、同じであってもよい。あるいは、第2積層工程における第1平坦化装置32Aに設定されている構成No.2-11、構成No.2-12と、第2積層工程における第2平坦化装置32Bに設定されている構成No.2-13、構成No.2-14とは、同じであってもよい。そのため、収容体21は、複数の同じ種類の押圧板40を収容していてもよい。
【0089】
次に、
図9を参照して、押圧板供給ブロック20の具体的な構成について説明する。
図9は、積層成形品製造システムの具体例を示す図である。
図9に示す押圧板供給ブロック20は、積層工程ブロック30の傍らに設置され、平坦化装置32に対して押圧板40を交換する。
【0090】
交換装置23は、収容体21が収容する複数の押圧板40のうち選択にかかる押圧板40と、圧締部50に取り付けられている押圧板40とを交換する。押圧板供給ブロック20が有する交換装置23は主な構成として、搬送部230、搭載部231、回転軸232およびレール部233を有している。
【0091】
搬送部230は、搭載部231を支持するとともに、レール部233に水平方向に移動可能に支持されている。これにより搬送部230は、搭載部231をレール部233に沿って移動させることができる。
【0092】
搭載部231は、搬送部230に支持されており、搬送部230の上で
図9のY方向に直動可能かつ回転軸232を中心にZ軸周りに回動可能に構成されている。また搭載部231は、セレクタ22との間で押圧板40の受け渡しが可能であり、セレクタ22から受け取った押圧板40を搬送可能に搭載する。搭載部231は、搬送した押圧板40を平坦化装置32の圧締部50に取り付ける。さらに搭載部231は、圧締部50に取り付けられている押圧板40を取り外す。
【0093】
レール部233は、搬送部230を設定されたレールに沿って移動可能に支持する。
図9に示したレール部233は、積層工程ブロック30の上部搬送用シート35に平行にレールが延伸しており、セレクタ22と平坦化装置32との間を搬送部230が往復できるように設定されている。
【0094】
図10を併せて参照しながら押圧板供給ブロック20についてさらに説明する。
図10は、収容体21およびセレクタ22の具体例を示す図である。
【0095】
収容体21は、複数の押圧板40を交換可能に収容する。
図10に示す収容体21は、上下方向に複数の押圧板40がスタック可能に構成されている。収容体21が収容する押圧板40は、
図8を参照して説明した情報にしたがって収容されている。収容体21に収容された押圧板40は、セレクタ22により取り出される。またセレクタ22により取り出された押圧板40は、セレクタ22により収容される。
【0096】
セレクタ22は、収容体21が収容している複数の押圧板40から1つの押圧板40を選択して取り出す。セレクタ22は、収容体21から取り出した押圧板40を、交換装置23に引き渡す。またセレクタ22は、交換装置23から受け取った押圧板40を、収容体21の所定の場所に収容する。上述の機能を実現するため、セレクタ22は押圧板40を搭載するトレー部が上下方向に移動可能に構成されている。さらにセレクタ22は、押圧板40を受け渡しするための機構を有している。
【0097】
次に、
図11および
図12を参照して、押圧板供給ブロック20の動作を説明する。
図11は、押圧板供給ブロック20の動作を示す第1の図である。ここで示す押圧板供給ブロック20の動作は、積層工程ブロック30におけるラミネート装置および平坦化装置32がラミネート処理および平坦化処理を実行していないタイミングにおいて行われる動作である。ここでは一例として、第1平坦化装置32Aが有している押圧板40Aと、収容体21が有している押圧板40Sとを交換する動作について時刻Tの流れに沿って説明する。
【0098】
まず時刻T1において、セレクタ22は、収容体21から所定の押圧板40Sを選択して取り出す。そしてセレクタ22は取り出した押圧板40Sを、交換装置23に引き渡す。なお、このとき積層成形品製造システム1の制御装置10は、メモリ11を参照し、第1平坦化装置32Aに新たに取り付ける押圧板40を選択する。交換装置23は、交換にかかる押圧板40Sを搭載すると、レール部233に沿って移動を開始する。
【0099】
次に、時刻T1の後の時刻T2において、押圧板40Sを搭載した状態でレール部233を移動した交換装置23は、第1平坦化装置32A近傍に停止する。さらに、搭載部231は、押圧板40Aを取り出すために、押圧板40Aに近づく。
【0100】
次に、時刻T2の後の時刻T3において、搭載部231は、押圧板40Aを取り外し、取り外した押圧板40Aを搭載して第1平坦化装置32Aから離れる方向に所定の距離を移動する。
【0101】
次に、時刻T3の後の時刻T4において、交換装置23の搭載部231は、押圧板40Aと押圧板40Sとを交換するために、回転軸232を中心に180度回動する。
【0102】
図12を参照して引き続き押圧板供給ブロック20の動作について説明する。時刻T4の後の時刻T5において、搭載部231は、交換するための押圧板40Sを第1平坦化装置32Aに近づける。
【0103】
次に、時刻T5後の時刻T6において、交換装置23は、押圧板40Sを圧締部50に取り付ける。押圧板40Sを圧締部50に取り付けると、次に搭載部231は第1平坦化装置32Aから離れる方向に移動を開始する。
【0104】
次に、時刻T6の後の時刻T7において、取り外した押圧板40Aを搭載した交換装置23は、レール部233に沿ってセレクタ22に向かって移動する。
【0105】
次に、時刻T7の後の時刻T8において、交換装置23は、押圧板40Aをセレクタ22に引き渡す。そしてセレクタ22は、交換装置23から受け取った押圧板40Aを、収容体21に収容する。
【0106】
以上、押圧板供給ブロック20の動作について説明した。上述の構成により、積層成形品製造システム1は、基材の各層における積層工程に応じて、適宜、押圧板40を交換出来る。なお、上述の構成または動作は、押圧板供給ブロック20の一例を示したものであって、押圧板供給ブロック20の構成または動作はこれに限られない。例えば収容体21はセレクタ22に代えて上下動してもよい。押圧板供給ブロック20が有する機構は、上述の構成に代えて、例えば多関節ロボットを用いるものであっても良い。例えば交換装置23はレール部233および搬送部230に代えて、ロボットアームにより搭載部231を搬送するものであってもよい。積層成形品製造システム1は、積層工程ブロック30のうちラミネート装置31が積層成形品製造システム1とは別個のものであってもよい。
【0107】
交換装置23は、選択にかかる押圧板40を圧締部50に取り付ける前に予熱する予熱装置を含んでもよい。収容体21は、予め押圧板40を所定の温度に制御して保温する保温装置を有していてもよい。特に押圧板40が、熱容量の大きな加熱体51や断熱部52を含んでいる場合、生産性を高めるため、予め所定の温度となるように予熱することが望ましい。
【0108】
セレクタ22および交換装置23の機能の少なくとも一部は、積層成形品製造システム1のユーザが担ってもよい。すなわち押圧板供給ブロック20は全て自動で制御されるものに代えて、その動作の一部をマニュアルで操作されるものであってもよい。
【0109】
また、本実施の形態は、押圧板40として緩衝層41と接触層42とを含む構成により説明したが、収容体21が収容し、交換装置23が交換するのはこれらのいずれか1つであってもよい。あるいは、収容体21が収容し、交換装置23が交換する押圧板40が、加熱体51や断熱部52を含んでいてもよい。
【0110】
以上に述べたように、実施の形態によれば、本開示によれば、多層化された積層成形品を好適に製造する方法およびシステムを提供できる。なお、上述の積層成形品は、ビルドアップ基板または多層基板と呼ばれるものである。よって、本開示の技術は、ビルドアップ基板の製造方法およびビルドアップ基板製造システム、または多層基板の製造方法および多層基板製造システムと称されても良い。
【0111】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 積層成形品製造システム
10 制御装置
11 メモリ
20 押圧板供給ブロック
21 収容体
22 セレクタ
23 交換装置
30 積層工程ブロック
31 ラミネート装置
32 平坦化装置
33 温度制御装置
35 上部搬送用シート
36 下部搬送用シート
40 押圧板
40’ 押圧体
41 緩衝層
42 接触層
50 圧締部
51 加熱体
52 断熱部
230 搬送部
231 搭載部
232 回転軸
233 レール部
321 基盤
322 加圧装置
323 固定盤体
324 可動盤体
325 ガイド孔
326 ガイド軸
330 カートリッジヒータ
A1 積層成形品