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  • 特開-遊星歯車装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100278
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】遊星歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/28 20060101AFI20230711BHJP
   F16H 55/17 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
F16H1/28
F16H55/17 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000785
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】門井 幸太
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正幸
(72)【発明者】
【氏名】南雲 稔也
【テーマコード(参考)】
3J027
3J030
【Fターム(参考)】
3J027FA11
3J027FA37
3J027FB08
3J027FB32
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC24
3J027GE23
3J030BB06
3J030BB18
3J030BC02
(57)【要約】
【課題】雄スプライン部の噛合いの悪化を抑えつつ太陽歯車部の歯すじ修整を行う。
【解決手段】遊星歯車装置1は、太陽歯車部43を有する太陽歯車軸41と、太陽歯車部43と噛合う遊星歯車44と、を備えている。太陽歯車軸41は、前段軸と連結するための雄スプライン部42を有し、太陽歯車部43の各歯部が軸方向に延在されることで雄スプライン部42が構成されている。太陽歯車部43は、軸方向両端部に向けて歯厚が徐々に小さくなるクラウニング部43bを有している。雄スプライン部42は、クラウニング部43bの歯厚変化量よりも軸方向の歯厚の変化が小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽歯車部を有する太陽歯車軸と、前記太陽歯車部と噛合う遊星歯車と、を備えた遊星歯車装置であって、
前記太陽歯車軸は、前段軸と連結するための雄スプライン部を有し、前記太陽歯車部の各歯部が軸方向に延在されることで前記雄スプライン部が構成され、
前記太陽歯車部は、軸方向両端部に向けて歯厚が徐々に小さくなるクラウニング部を有し、
前記雄スプライン部は、軸方向における歯厚の変化量が前記クラウニング部よりも小さい、
遊星歯車装置。
【請求項2】
前記雄スプライン部は、軸方向において歯厚が一定の一定歯厚部を有する、
請求項1に記載の遊星歯車装置。
【請求項3】
太陽歯車部を有する太陽歯車軸と、前記太陽歯車部と噛合う遊星歯車と、前記太陽歯車軸と連結する前段軸と、を備えた遊星歯車装置であって、
前記太陽歯車軸は、前記前段軸と連結する雄スプライン部を有し、前記太陽歯車部の各歯部が軸方向に延在されることで前記雄スプライン部が構成され、
前記太陽歯車部は、軸方向両端部に向けて歯厚が徐々に小さくなるクラウニング部を有し、
前記雄スプライン部は、前記クラウニング部から連続して軸方向に歯厚が変化しており、
前記前段軸は、前記雄スプライン部と噛合う雌スプライン部が、前記雄スプライン部の軸方向の歯厚の変化に応じて軸方向に歯厚が変化している、
遊星歯車装置。
【請求項4】
前記クラウニング部は、歯厚が軸方向に曲線的に変化し、
前記雄スプライン部は、歯厚が軸方向に直線的に変化している、
請求項3に記載の遊星歯車装置。
【請求項5】
前記クラウニング部と前記雄スプライン部において、軸方向での歯厚の変化が互いに滑らかに連続している、
請求項3又は請求項4に記載の遊星歯車装置。
【請求項6】
前記前段軸は、前段減速機構の出力部材である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の遊星歯車装置。
【請求項7】
前記クラウニング部は、遊星歯車と噛合う範囲の軸方向両端の歯厚が同じである、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の遊星歯車装置。
【請求項8】
前記太陽歯車部は、前記雄スプライン部よりも歯面の表面粗さが小さい、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の遊星歯車装置。
【請求項9】
前記太陽歯車部は、前記雄スプライン部よりも歯面の硬さが高い、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の遊星歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車装置においては、遊星歯車と噛合う太陽歯車部と、前段軸と連結される雄スプライン部とが、同じ太陽歯車軸上に形成される(例えば、特許文献1参照)。このような遊星歯車装置では、太陽歯車軸に対し、太陽歯車部の噛合いを良化するための歯すじ修整を実施する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-159814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、単純に太陽歯車軸の歯すじ修整を行うと、雄スプライン部が太陽歯車部の延長で加工されるなどして、雄スプライン部の噛合いが悪化するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、雄スプライン部の噛合いの悪化を抑えつつ歯すじ修整を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、太陽歯車部を有する太陽歯車軸と、前記太陽歯車部と噛合う遊星歯車と、を備えた遊星歯車装置であって、
前記太陽歯車軸は、前段軸と連結するための雄スプライン部を有し、前記太陽歯車部の各歯部が軸方向に延在されることで前記雄スプライン部が構成され、
前記太陽歯車部は、軸方向両端部に向けて歯厚が徐々に小さくなるクラウニング部を有し、
前記雄スプライン部は、軸方向における歯厚の変化量が前記クラウニング部よりも小さい構成とした。
【0007】
また本発明は、太陽歯車部を有する太陽歯車軸と、前記太陽歯車部と噛合う遊星歯車と、前記太陽歯車軸と連結する前段軸と、を備えた遊星歯車装置であって、
前記太陽歯車軸は、前記前段軸と連結する雄スプライン部を有し、前記太陽歯車部の各歯部が軸方向に延在されることで前記雄スプライン部が構成され、
前記太陽歯車部は、軸方向両端部に向けて歯厚が徐々に小さくなるクラウニング部を有し、
前記雄スプライン部は、前記クラウニング部から連続して軸方向に歯厚が変化しており、
前記前段軸は、前記雄スプライン部と噛合う雌スプライン部が、前記雄スプライン部の軸方向の歯厚の変化に応じて軸方向に歯厚が変化している構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、雄スプライン部の噛合いの悪化を抑えつつ太陽歯車部の歯すじ修整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る遊星歯車装置を示す断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】(a)は第2遊星歯車機構の入力軸の歯を軸方向から見た図であり、(b)は(a)のIII-III線での当該歯の断面図である。
図4】(a)は第2遊星歯車機構の入力軸の歯の変形例を示す断面図であり、(b)は第2遊星歯車機構の入力軸の歯及びこれと噛合う雌スプライン部の歯溝の他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[遊星歯車装置の全体構成]
図1は、本実施形態に係る遊星歯車装置1を示す断面図である。
この図に示すように、遊星歯車装置1は、ウォーム減速機構20と、少なくとも2段の単純遊星歯車機構(第1遊星歯車機構30、第2遊星歯車機構40)とを、図示しないモータからの動力伝達経路上でこの順に備えている。
なお、以下の説明では、遊星歯車装置1の中心軸Axに沿った方向を「軸方向」、中心軸Axに垂直な方向を「径方向」、中心軸Axを中心とする回転方向を「周方向」という。また、軸方向のうち、モータが連結される側(図中の上側)を「入力側」といい、被駆動部材が連結される側(図中の下側)を「出力側」という。
【0012】
ウォーム減速機構20には、図示しないモータが連結されている。モータの回転軸は、カップリングを介してウォーム減速機構20のウォームピニオン21に連結されている。ウォームピニオン21はウォームギヤ22と噛合し、動力の伝達方向を略直角に変更する。ウォームギヤ22は中間軸23に固定されている。中間軸23は、カップリング24を介して第1遊星歯車機構30の入力軸31と連結されている。
【0013】
第1遊星歯車機構30は、入力軸31に形成された太陽歯車部33、当該太陽歯車部33と噛合する3個の遊星歯車34、各遊星歯車34を回転自在に支持するキャリヤピン35、及び各遊星歯車34が内接噛合する内歯歯車36を備える。第1遊星歯車機構30は、太陽歯車部33の回転によって生じる3個の遊星歯車34の公転を、キャリヤピン35が固定された出力部材37から取り出す。出力部材37は、スプライン継手を介して第2遊星歯車機構40の入力軸41と連結されている。
なお、図1及び図2では、遊星歯車34とキャリヤピン35を1個のみ図示している。後述する第2遊星歯車機構40の遊星歯車44とキャリヤピン45も同様である。
【0014】
第2遊星歯車機構40は、入力軸(太陽歯車軸)41に形成された太陽歯車部43、当該太陽歯車部43と噛合する3個の遊星歯車44、各遊星歯車44を回転自在に支持するキャリヤピン45、及び各遊星歯車44が内接噛合する内歯歯車46を備える。第2遊星歯車機構40は、太陽歯車部43の回転によって生じる3個の遊星歯車44の公転を、キャリヤピン45が固定された出力部材47から取り出す。出力部材47は、スプライン継手を介して出力軸49と連結されている。出力軸49の端部には、図示しない被駆動部材に設けられた歯車(例えば、リング歯車)と噛合う出力ピニオン49aが一体的に固定されている。
【0015】
以上の構成を具備する遊星歯車装置1では、モータの回転力がウォーム減速機構20に入力されると、ウォームピニオン21とウォームギヤ22の噛合によって初段減速されて、第1遊星歯車機構30の入力軸31に伝達される。
第1遊星歯車機構30の入力軸31が回転すると、入力軸31に形成された太陽歯車部33が回転し、遊星歯車34が内歯歯車36の内側で公転する。この公転成分は、キャリヤピン35を介して出力部材37から取り出され、スプライン継手を介して第2遊星歯車機構40の入力軸41に伝達される。
第2遊星歯車機構40においても、第1遊星歯車機構30と同様の減速作用がなされ、遊星歯車44の公転が出力部材47から取り出され、スプライン継手を介して出力軸49に伝達される。出力軸49が回転すると出力ピニオン49aも回転し、出力ピニオン49aに連結された被駆動部材にその回転力が伝達される。こうして、ウォーム減速機構20と、2段の単純遊星歯車機構(第1遊星歯車機構30、第2遊星歯車機構40)とで減速された回転力が被駆動部材に出力される。
【0016】
[第2遊星歯車機構の入力軸の歯面形状]
図2は、図1の要部拡大図である。
この図に示すように、第2遊星歯車機構40の入力軸(太陽歯車軸)41は、雄スプライン部42と太陽歯車部43とを同軸上に有している。
このうち、雄スプライン部(スプライン軸)42は、第1遊星歯車機構30の出力部材37と連結されており、出力部材37の雌スプライン部(スプライン穴)38と噛合する複数の第1の歯42a(図3(b)参照)を有している。一方、太陽歯車部43は、遊星歯車44と噛合する複数の第2の歯43a(図3(b)参照)を有している。
【0017】
雄スプライン部42の第1の歯42aと、太陽歯車部43の第2の歯43aとは、同歯数かつ同モジュールに形成されており、太陽歯車部43の各第2の歯43aが軸方向に延在されることで雄スプライン部42が構成されている。つまり、入力軸41は、雄スプライン部42と太陽歯車部43とに亘って軸方向に連結された(一体的に形成された)歯41aを有しており、そのうち入力側の部分が、出力部材37の雌スプライン部38と噛合する第1の歯42aであり、出力側の部分が、遊星歯車44と噛合する第2の歯43aとなっている(図3(b)参照)。
なお、特に限定はされないが、太陽歯車部43(第2の歯43a)は、雄スプライン部42(第1の歯42a)と異なり周期的に変化する負荷が作用することから、雄スプライン部42よりも歯面の表面粗さ(例えば算術平均粗さRa)が小さいことが好ましい。例えば、太陽歯車部43には、雄スプライン部42よりも高度な仕上加工が施されている。また、同様の理由から、太陽歯車部43(第2の歯43a)は、例えば当該太陽歯車部43にのみ高周波焼入れを行う等により、雄スプライン部42(第1の歯42a)よりも歯面の硬さが高いことが好ましい。
【0018】
図3(a)は入力軸41の歯41aを軸方向から見た図であり、図3(b)は図3(a)のIII-III線での歯41aの断面図である。
図3(a)、(b)に示すように、入力軸41の歯41aは、軸方向(歯幅方向)に歯厚が変化している。
具体的に、本実施形態では、入力軸41のうちの太陽歯車部43に対し、遊星歯車44との歯当たりを良化する目的で、軸方向に略一定の歯厚状態(破線で図示)から歯すじ(歯面)修整が施されている。本実施形態の太陽歯車部43には、歯すじ修整としてクラウニングが施されている。これにより、太陽歯車部43は、その軸方向全長に亘り、軸方向両端部に向けて歯厚が徐々に小さくなるクラウニング部43bとなっている。クラウニング部43bでは、遊星歯車44と噛合う範囲において、歯厚が軸方向に略対称に分布しており、軸方向両端の歯厚が互いに略同一となっている。
なお、クラウニング部43bは太陽歯車部43の少なくとも一部であればよい。すなわち、太陽歯車部43がクラウニング部43bを有していればよい。
【0019】
一方、入力軸41のうちの雄スプライン部42には、歯すじ修整加工(クラウニング)が実施されていない。そのため、雄スプライン部42は、軸方向において歯厚が略一定の一定歯厚部42bとなっている。
なお、一定歯厚部42bは雄スプライン部42の少なくとも一部であればよい。すなわち、雄スプライン部42が一定歯厚部42bを有していればよい(雄スプライン部42の軸方向の端部に面取りがある場合、その面取り部分は除く)。
【0020】
このように、本実施形態では、太陽歯車部43がクラウニング部43bを有しており、雄スプライン部42が一定歯厚部42bを有している。これにより、雄スプライン部42の噛合いが悪化することなく、太陽歯車部43の噛合いが良化する。すなわち、雄スプライン部42の噛合いの悪化を抑えつつ、太陽歯車部43の歯すじ修整を行うことができる。
より詳しくは、通常の歯すじ修整では、研削砥石を使用して歯幅方向に沿って歯面全体が加工される。この場合、雄スプライン側の歯形状は、図3(b)に二点鎖線で示すように、クラウニング部の延長で湾曲した形状となるため、この雄スプライン部と、歯厚変化の小さい雌スプライン部とで、噛合いが悪化する(ガタ等が生じる)おそれがある。
この点、本実施形態では、太陽歯車部43がクラウニング部43bを有し、雄スプライン部42が一定歯厚部42bを有するように、クラウニングが実施される。すなわち、雄スプライン部42の噛合いの悪化(ガタの発生)を抑えつつ、太陽歯車部43の歯すじ修整が行われる。ひいては、雄スプライン部42のガタ発生により遊星減速部の各歯車にミスアライメントが生じ、歯車の片当たりや歯面損傷のリスクがあるところ、本実施形態ではこのようなミスアライメントの発生を抑制し、片当たりや歯面損傷のリスクを低減できる。
【0021】
なお、雄スプライン部42は、一定歯厚部42bを有していなくともよく、軸方向における歯厚変化量が、クラウニング部43bよりも小さければよい。ここで、クラウニング部43bの「(軸方向における)歯厚変化量」とは、最も歯厚が大きいクラウニング部43bの軸方向中央と、最も歯厚が小さい軸方向端部とにおける相対的な歯厚の変化量ΔS(片面の場合。両面の場合にはその2倍)を指す。同様に、雄スプライブ42bの「(軸方向における)歯厚変化量」とは、最も歯厚が大きい雄スプライン部42bの部位と、最も歯厚が小さい部位とにおける相対的な歯厚の変化量を指し、本実施形態においては、歯厚が一定であることから、歯厚変化量は「0」となる。このような構成により、上記と同様の効果が得られる。したがって、例えば図4(a)に示すように、クラウニング加工が終了する太陽歯車部43(クラウニング部43b)の軸方向端部から雄スプライン部42側を、均一な歯厚としてもよい。
【0022】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態の遊星歯車装置1によれば、入力軸(太陽歯車軸)41は、太陽歯車部43の各歯部が軸方向に延在されることで雄スプライン部42が構成され、太陽歯車部43は、軸方向両端部に向けて歯厚が徐々に小さくなるクラウニング部43bを有し、雄スプライン部42は、軸方向における歯厚変化量がクラウニング部43bよりも小さい。
したがって、雄スプライン部42の噛合いの悪化を抑えつつ、太陽歯車部43の歯すじ修整を行うことができる。ひいては、雄スプライン部42のガタ発生により遊星減速部の各歯車にミスアライメントが生じ、歯車の片当たりや歯面損傷のリスクがあるところ、本実施形態ではこのようなミスアライメントの発生を抑制し、片当たりや歯面損傷のリスクを低減できる。
【0023】
また、本実施形態の遊星歯車装置1によれば、雄スプライン部42は、軸方向において歯厚が一定の一定歯厚部42bを有している。
これにより、雄スプライン部42の噛合いの悪化をより一層抑えつつ、太陽歯車部43の歯すじ修整を行うことができる。
【0024】
[変形例]
上記実施形態では、入力軸41の雄スプライン部42の歯厚変化を抑えることにより雌スプライン部38との噛合いの悪化を抑制することとした。しかし、雄スプライン部42の軸方向の歯厚の変化に応じて(これに対応するように)、雌スプライン部38の歯厚を軸方向に変化させてもよい。
より詳しくは、図4(b)に示すように、雄スプライン部42の第1の歯42aの歯厚と、これに噛合う雌スプライン部38の歯溝38aの幅とで、軸方向の変化率を互いに対応させてもよい。ここで、第1の歯42aの歯厚と歯溝38aの幅とで軸方向の変化率が「対応する」とは、互いに対応する軸方向位置において、これらの軸方向の変化率が略一致する(所定の誤差範囲内である)ことをいう。
【0025】
この場合、入力軸41(歯41a)の歯すじ修整では、クラウニング部43bと雄スプライン部42において、軸方向での歯厚の変化が互いに滑らかに連続するように加工すればよい。例えば、クラウニング部43bの入力側端部の歯厚変化率のまま、雄スプライン部42を直線的に加工してもよい。つまり、クラウニング部43bは歯厚が軸方向に曲線的に変化し、雄スプライン部42は歯厚が軸方向に直線的に変化していてもよい。歯厚変化率を一定に(又は大きく変えないように)することで、比較的容易に加工を行うことができる。
【0026】
このように、雄スプライン部42の歯厚変化に対応させて、雌スプライン部38の歯厚を変化させた場合でも、上記実施形態と同様に、雄スプライン部42と雌スプライン部38の噛合いの悪化(ガタの発生)を抑えつつ、太陽歯車部43の歯すじ修整を行うことができる。
【0027】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、本発明を2段目の第2遊星歯車機構40の入力軸(太陽歯車軸)41に適用した場合について説明したが、本発明は1段目の第1遊星歯車機構30の入力軸(太陽歯車軸)31にも適用可能である。すなわち、ウォーム減速機構20の中間軸(出力軸)23(又はモータの出力軸)と、第1遊星歯車機構30の入力軸31とをスプラインにより連結し、そのスプライン部と太陽歯車部33とに本発明の構造を適用してもよい。また、太陽歯車軸を有する遊星歯車装置に広く適用可能であり、減速機構の段数やどのような減速機構と組み合わされるかは特に限定されない。
【0028】
また、上記実施形態では、遊星歯車機構として単純遊星歯車機構を例に挙げて説明したが、本発明に係る遊星歯車装置は、単純遊星歯車機構に限定されず、太陽歯車部とスプライン部が同軸上に配置される遊星歯車装置(機構)に広く適用可能である。
【0029】
また、本発明に係る遊星歯車装置は、風力発電機のヨー駆動用減速機、ショベルの旋回ベアリング用減速機、ロボット用遊星減速機等、各種の減速機に適用可能である。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 遊星歯車装置
30 第1遊星歯車機構(前段減速機構)
37 出力部材(前段軸)
38 雌スプライン部
38a 歯溝
40 第2遊星歯車機構
41 入力軸(太陽歯車軸)
41a 歯
42 雄スプライン部
42a 第1の歯
42b 一定歯厚部
43 太陽歯車部
43a 第2の歯
43b クラウニング部
44 遊星歯車
Ax 中心軸
ΔS 歯厚変化量
図1
図2
図3
図4