(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100285
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】メンテナンス計画作成装置およびメンテナンス計画作成方法ならびにメンテナンス計画作成プログラム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20230711BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20230711BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
G05B19/418 Z
G05B23/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000808
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】丸田 晟央
【テーマコード(参考)】
3C100
3C223
5E353
【Fターム(参考)】
3C100AA57
3C100AA63
3C100BB12
3C100BB13
3C100BB19
3C100BB33
3C100EE07
3C223AA11
3C223BA01
3C223FF33
3C223FF34
3C223FF35
3C223FF46
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3C223FF52
3C223GG01
3C223HH02
5E353CC04
5E353CC12
5E353CC23
5E353EE54
5E353EE62
5E353EE89
5E353LL04
5E353NN18
5E353QQ08
5E353QQ09
(57)【要約】
【課題】生産装置が有する装置要素を効率的にメンテナンスすることができるメンテナンス計画を作成することができるメンテナンス計画作成装置およびメンテナンス計画作成方法ならびにメンテナンス計画作成プログラムを提供する。
【解決手段】生産装置が有する装置要素のメンテナンス計画を作成するメンテナンス計画作成方法は、実装基板ごとに実装される部品点数または生産装置の作業時間を含む生産計画情報を取得し(ST22)、装置要素の使用回数または使用時間とミス率との関係に基づいて、装置要素のミス率が許容値を超過するまでに使用可能な許容回数または許容時間を算出し(ST23)、許容回数または許容時間と生産計画情報に基づいて、装置要素のメンテナンス計画を作成し(ST26、ST28)、作成されたメンテナンス計画を出力する(ST30)。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装ラインが備える生産装置が有する装置要素のメンテナンス計画を作成するメンテナンス計画作成装置であって、
複数の種類の実装基板ごとに実装される予定の部品点数または予定される前記生産装置の作業時間の少なくともいずれかを含む生産計画情報を取得する取得部と、
前記装置要素の使用回数または使用時間とミス率との関係に基づいて、前記部品実装ラインにおいて使用される前記装置要素の前記ミス率が許容値を超過するまでに使用可能な許容回数または許容時間を算出する許容算出部と、
算出された前記許容回数または前記許容時間と、取得された前記生産計画情報とに基づいて、前記装置要素のメンテナンス計画を作成する作成部と、
作成された前記メンテナンス計画を出力する出力部と、を備える、メンテナンス計画作成装置。
【請求項2】
前記作成部は、前記実装基板の生産中に前記許容回数または前記許容時間を超過することが予想される装置要素は、当該実装基板の生産を開始する前までにメンテナンスを実施するように前記メンテナンス計画を作成する、請求項1に記載のメンテナンス計画作成装置。
【請求項3】
前記作成部は、前記生産計画情報に含まれる第1実装基板に実装される予定の第1部品点数に前記第1実装基板の次に生産される第2実装基板に実装される予定の第2部品点数を加算した加算部品点数が、前記許容回数に対応する部品点数を超過する装置要素は、前記第1実装基板の生産が終了した後にメンテナンスを実施するように前記メンテナンス計画を作成する、請求項1または2に記載のメンテナンス計画作成装置。
【請求項4】
前記作成部は、前記生産計画情報に含まれる第1実装基板に予定される第1作業時間に前記第1実装基板の次に生産される第2実装基板に予定される第2作業時間を加算した加算作業時間が、前記許容時間に対応する作業時間を超過する装置要素は、前記第1実装基板の生産が終了した後にメンテナンスを実施するように前記メンテナンス計画を作成する、請求項1または2に記載のメンテナンス計画作成装置。
【請求項5】
前記生産計画情報は、前記部品実装ラインを次の種類の実装基板の生産に切り替える切替作業に必要な切替時間を含み、
前記作成部は、前記実装基板の生産中に前記許容回数または前記許容時間を超過することが予想される装置要素は、当該種類の実装基板の生産を開始する前の切替作業であり、かつ、前記切替時間が当該装置要素のメンテナンスにかかるメンテナンス時間よりも長い切替作業において前記メンテナンスを実行するように前記メンテナンス計画を作成する、請求項1から4のいずれか1項に記載のメンテナンス計画作成装置。
【請求項6】
前記生産計画情報は、前記部品実装ラインを第1実装基板から次の種類の第2実装基板に切り替える第1切替作業に必要な第1切替時間を含み、
前記作成部は、前記第2実装基板の生産中に前記許容回数または前記許容時間を超過することが予想される装置要素は、
前記第1切替時間が当該装置要素のメンテナンスにかかるメンテナンス時間がよりも長い場合に、前記第1切替作業において前記メンテナンスを実行するように前記メンテナンス計画を作成する、請求項1から5のいずれか1項に記載のメンテナンス計画作成装置。
【請求項7】
前記作成部は、前記第2実装基板の生産中に前記許容回数または前記許容時間を超過することが予想される装置要素は、
前記第1切替時間が当該装置要素の前記メンテナンス時間がよりも短い場合は、前記第1実装基板の生産を開始する前の切替作業であり、かつ、前記部品実装ラインを次の実装基板に切り替える切替時間が当該装置要素の前記メンテナンス時間よりも長い切替作業において前記メンテナンスを実行するように前記メンテナンス計画を作成する、請求項6に記載のメンテナンス計画作成装置。
【請求項8】
前記部品実装ラインの生産実績情報に基づいて、前記装置要素の前記使用回数または前記使用時間と前記ミス率との関係を算出するミス率算出部をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載のメンテナンス計画作成装置。
【請求項9】
前記ミス率算出部は、
同じ種類の複数の前記装置要素に対して、前記使用回数の区間ごとまたは前記使用時間の区間ごとに複数の前記装置要素のそれぞれで発生したミスの個別ミス率を算出し、
算出された複数の前記個別ミス率の平均値、中央値、最頻値のいずれかを当該種類の装置要素の当該区間のミス率として採用する、請求項8に記載のメンテナンス計画作成装置。
【請求項10】
部品実装ラインが備える生産装置が有する装置要素のメンテナンス計画を作成するメンテナンス計画作成方法であって、
複数の種類の実装基板ごとに実装される予定の部品点数または予定される前記生産装置の作業時間の少なくともいずれかを含む生産計画情報を取得し、
前記装置要素の使用回数または使用時間とミス率との関係に基づいて、前記部品実装ラインにおいて使用される前記装置要素の前記ミス率が許容値を超過するまでに使用可能な許容回数または許容時間を算出し、
算出された前記許容回数または前記許容時間と、取得された前記生産計画情報とに基づいて、前記装置要素のメンテナンス計画を作成し、
作成された前記メンテナンス計画を出力する、メンテナンス計画作成方法。
【請求項11】
部品実装ラインが備える生産装置が有する装置要素のメンテナンス計画の作成をコンピュータにより実行させるメンテナンス計画作成プログラムであって、
複数の種類の実装基板ごとに実装される予定の部品点数または予定される前記生産装置の作業時間の少なくともいずれかを取得する取得ステップと、
前記装置要素の使用回数または使用時間とミス率との関係に基づいて、前記部品実装ラインにおいて使用される前記装置要素の前記ミス率が許容値を超過するまでに使用可能な許容回数または許容時間を算出する許容算出ステップと、
算出された前記許容回数または前記許容時間と、取得された前記生産計画情報とに基づいて、前記装置要素のメンテナンス計画を作成する作成ステップと、
作成された前記メンテナンス計画を出力する出力ステップと、を含む、メンテナンス計画作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産装置が有する装置要素のメンテナンス計画を作成するメンテナンス計画作成装置およびメンテナンス計画作成方法ならびにメンテナンス計画作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
実装基板を生産する部品実装ラインが備える生産装置には、複数のテープフィーダやノズルなどの装置要素が取り付けられる。これら装置要素は、使用による精度の低下やミス率の増加を抑制するため、使用期間や使用回数などにより定められるメンテナンス時期までにメンテナンスが行われる。特許文献1には、装置の電源電流や振動等を監視して装置が故障する前の予兆を検知すると、その装置のメンテナンス限界時期を算出し、メンテナンス限界時期の前にメンテナンスを実施するメンテナンス計画を作成するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来技術では、装置が故障する前の予兆を検知した時点でメンテナンス計画を作成するため、次のような問題点があった。すなわち、メンテナンス対象となる装置要素が数台と少ない場合は予兆を検知した時点でメンテナンス計画を作成することで効率的なメンテナンス計画を作成することができるが、メンテナンス対象が数百台もあるような場合は、予兆を検知する度にメンテナンス計画を作成すると逆に生産性が低下することもあり、生産計画への影響を抑制しつつ多数のメンテナンス対象に対して効率的なメンテナンス計画を作成するためには、更なる改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、生産装置が有する装置要素を効率的にメンテナンスすることができるメンテナンス計画を作成することができるメンテナンス計画作成装置およびメンテナンス計画作成方法ならびにメンテナンス計画作成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のメンテナンス計画作成装置は、部品実装ラインが備える生産装置が有する装置要素のメンテナンス計画を作成するメンテナンス計画作成装置であって、複数の種類の実装基板ごとに実装される予定の部品点数または予定される前記生産装置の作業時間の少なくともいずれかを含む生産計画情報を取得する取得部と、前記装置要素の使用回数または使用時間とミス率との関係に基づいて、前記部品実装ラインにおいて使用される前記装置要素の前記ミス率が許容値を超過するまでに使用可能な許容回数または許容時間を算出する許容算出部と、算出された前記許容回数または前記許容時間と、取得された前記生産計画情報とに基づいて、前記装置要素のメンテナンス計画を作成する作成部と、作成された前記メンテナンス計画を出力する出力部と、を備える。
【0007】
本発明のメンテナンス計画作成方法は、部品実装ラインが備える生産装置が有する装置要素のメンテナンス計画を作成するメンテナンス計画作成方法であって、複数の種類の実装基板ごとに実装される予定の部品点数または予定される前記生産装置の作業時間の少なくともいずれかを含む生産計画情報を取得し、前記装置要素の使用回数または使用時間とミス率との関係に基づいて、前記部品実装ラインにおいて使用される前記装置要素の前記ミス率が許容値を超過するまでに使用可能な許容回数または許容時間を算出し、算出された前記許容回数または前記許容時間と、取得された前記生産計画情報とに基づいて、前記装置要素のメンテナンス計画を作成し、作成された前記メンテナンス計画を出力する。
【0008】
本発明のメンテナンス計画作成プログラムは、部品実装ラインが備える生産装置が有する装置要素のメンテナンス計画の作成をコンピュータにより実行させるメンテナンス計画作成プログラムであって、複数の種類の実装基板ごとに実装される予定の部品点数または予定される前記生産装置の作業時間の少なくともいずれかを取得する取得ステップと、前記装置要素の使用回数または使用時間とミス率との関係に基づいて、前記部品実装ラインにおいて使用される前記装置要素の前記ミス率が許容値を超過するまでに使用可能な許容回数または許容時間を算出する許容値算出ステップと、算出された前記許容回数または前記許容時間と、取得された前記生産計画情報とに基づいて、前記装置要素のメンテナンス計画を作成する作成ステップと、作成された前記メンテナンス計画を出力する出力ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産装置が有する装置要素を効率的にメンテナンスすることができるメンテナンス計画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成説明図
【
図2】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(メンテナンス計画作成装置)の情報処理系の構成を示すブロック図
【
図3】本発明の一実施の形態のミス率算出方法のフロー図
【
図4】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(メンテナンス計画作成装置)によって作成される(a)個別ミス率の発生頻度の例の説明図(b)ミス率と使用回数の関係の例を示す説明図
【
図5】本発明の一実施の形態の許容算出方法のフロー図
【
図6】本発明の一実施の形態のメンテナンス計画作成方法のフロー図
【
図7】本発明の一実施の形態の(メンテナンス計画作成装置)で用いられる(a)生産計画の例の説明図(b)メンテナンス計画の例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、管理コンピュータ、部品実装ライン、印刷装置、部品実装装置などの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
まず
図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システムは、部品実装ラインLを構成する生産装置を通信ネットワーク2によって接続し、管理コンピュータ3によって管理する構成となっている。部品実装ラインLは、基板搬送方向の上流(紙面左側)から下流(紙面右側)に向けて、基板供給装置M1、印刷装置M2、印刷検査装置M3、部品実装装置M4~M8、実装検査装置M9、リフロー装置M10、基板回収装置M11などの生産装置を直列に連結して構成されている。部品実装ラインLは、基板に部品を実装した実装基板を生産する機能を有している。なお、部品実装ラインLは通信ネットワーク2を介して接続される生産装置群であって、物理的に生産装置同士が連結されていなくてもよい。
【0013】
図1において、基板供給装置M1は、複数の基板を収納するラック等の収納部を備え、収納部から取り出した基板を下流の装置に供給する基板供給作業を実行する。印刷装置M2は、印刷作業部に装着されたスクリーンマスクを介して上流側から搬入された基板にペースト状のはんだを印刷するはんだ印刷作業を実行する生産装置である。印刷装置M2は、複数の開口が形成されたスクリーンマスクに基板を当接させ、スクリーンマスクに当接させたスキージを移動させてスクリーンマスク上に供給されたはんだを開口に押し込むことで、基板にはんだを印刷する。
【0014】
印刷装置M2は、スクリーンマスクの基板に接触する面に付着したはんだを定期的に除去する清掃部を備えている。また、印刷装置M2は、スクリーンマスクの上面と下面を撮像し、スクリーンマスクの表面状態や平面度、スクリーンマスク上に供給されたはんだの粘度などの状態を観察するカメラ、粘度検出センサ、平面度を検出するための圧力センサ等を備えている。印刷装置M2は、はんだ印刷作業中にカメラや各種センサ(粘度検出センサ、圧力センサ等)を用いて、スクリーンマスクの表面状態、はんだの粘度、はんだの大気暴露時間、スキージの移動回数、スキージの移動時間、スクリーンマスクの平面度など監視する。監視結果は、管理コンピュータ3に送信される。
【0015】
基板にはんだを堆積させる開口を有するスクリーンマスク、スクリーンマスク上を移動して開口にはんだを押し込むスキージ、スクリーンマスクの基板に接触する面に付着したはんだを清掃する清掃部、基板を搬送するコンベアなどは、はんだの印刷品質や生産性を一定水準に維持するため、所定のタイミングでメンテナンスが行われる。すなわち、印刷装置M2において、スクリーンマスク、スキージ、清掃部は、メンテナンス対象である。メンテナンス作業の実施日時は、後述するように、メンテナンス対象の状態の監視結果に基づいて管理コンピュータ3により設定される。
【0016】
図1において、印刷検査装置M3は、はんだ検査カメラや各種センサを含む印刷検査作業部によって基板に印刷されたはんだの状態を検査する印刷検査作業を実行する生産装置である。印刷検査装置M3が検査したはんだを堆積した基板の表面状態などの監視結果は、管理コンピュータ3に送信される。
【0017】
図1において、部品実装装置M4~M8は、実装ヘッドに装着されたノズルでテープフィーダやトレイフィーダなどの部品供給装置が供給する部品を取り出し、はんだが印刷された基板に実装する部品実装作業を実行する生産装置である。テープフィーダは、部品を保持するキャリアテープをテープ送りして部品を供給する部品供給装置である。トレイフィーダは、複数の部品を保持するトレイを入れ替えながら部品を供給する部品供給装置である。部品実装装置M4~M8は、ノズルが保持する部品を撮像する部品認識カメラ、ノズルに流入するエアの流量を計測するセンサ、部品供給装置が供給する部品を撮像するヘッドカメラなどを備えている。
【0018】
部品実装装置M4~M8は、部品実装作業中にカメラや各種センサを用いて、実装ヘッドによる実装ミス、ノズルが部品を正常に吸着していない吸着ミス、部品供給装置が部品を正常に供給していない供給ミスなどを監視する。監視結果は、管理コンピュータ3に送信される。基板に部品を実装させる実装ヘッド、実装ヘッドに備えられる部品を保持するノズル、実装ヘッドに部品を供給する部品供給装置、基板を搬送するコンベアなどは、部品の実装品質や生産性を一定水準に維持するため、所定のタイミングでメンテナンスが行われる。すなわち、部品実装装置M4~M8において、実装ヘッド、ノズル、部品供給装置は、メンテナンス対象である。メンテナンス作業の実施日時は、後述するように、メンテナンス対象の状態の監視結果に基づいて管理コンピュータ3により設定される。
【0019】
このように、部品実装作業を実行するテープフィーダ、トレイフィーダ、実装ヘッド、ノズルは、部品実装装置M4~M8(生産装置)が有する装置要素である。部品実装ラインLは、部品実装装置M4~M8が5台の構成に限定されることなく、部品実装装置M4~M8が1~4台であっても6台以上であってもよい。
【0020】
図1において、実装検査装置M9は、実装検査カメラを含む実装検査作業部によって基板に実装された部品の状態を検査する実装検査作業を実行する生産装置である。実装検査装置M9が検査した基板の所定の位置に部品が実装されていない実装ミスなどの監視結果は、管理コンピュータ3に送信される。リフロー装置M10は、装置内に搬入された基板を基板加熱部によって加熱して、基板上のはんだを硬化させ、基板の電極部と部品とを接合する基板加熱作業を実行する。基板回収装置M11は、複数の基板を収納するラック等の収納部を備え、上流の装置が搬出する基板を受け取って収納部に回収する基板回収作業を実行する。
【0021】
管理コンピュータ3は、部品実装ラインLが備える生産装置の稼働に必要なデータやパラメータを作成し、各生産装置に送信する機能を有している。また、管理コンピュータ3は、部品実装ラインLが備える複数の生産装置からメンテナンス対象の状態の監視結果や生産状況を収集し、メンテナンス対象についてのメンテナンス作業計画を作成する機能を有している。なお、部品実装システム1が備える部品実装ラインLは1本である必要はなく、2本以上であっても良い。
【0022】
次に
図2を参照して、管理コンピュータ3の情報処理系の構成について説明する。ここでは、管理コンピュータ3が備える複数の機能のち、生産装置(印刷装置M2、印刷検査装置M3、部品実装装置M4~M8、実装検査装置M9)からメンテナンス対象の状態の監視結果や生産状況などの生産実績を収集し、部品実装ラインLが備える生産装置が有する複数の装置要素などのメンテナンス対象のメンテナンス作業計画を作成するメンテナンス計画作成装置としての構成について説明する。ここでは、部品実装ラインLにおいて生産する実装基板を切り替える切替作業中にメンテナンス作業を実行する場合のメンテナンス計画の作成について説明する。
【0023】
管理コンピュータ3は、処理部10、記憶装置である記憶部11の他、入力部12、表示部13、通信部14を備えている。処理部10はCPUなどのデータ処理装置であり、内部処理部として実績収集部15、ミス率算出部16、取得部17、許容算出部18、作成部19、出力部20を備えている。なお、管理コンピュータ3は、ひとつのコンピュータで構成する必要はなく、複数のデバイスで構成してもよい。例えば、記憶部、処理部の全てもしくは一部をサーバを介してクラウドに備えてもよい。
【0024】
図2において、入力部12は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部13は液晶パネルなどの表示装置であり、記憶部11が記憶する各種データを表示する他、入力部12による操作のための操作画面、入力画面などの各種情報を表示する。通信部14は、通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装ラインLを構成する生産装置(印刷装置M2、印刷検査装置M3、部品実装装置M4~M8、実装検査装置M9など)との間でデータの送受信を行う。
【0025】
記憶部11には、生産計画情報11a、生産実績情報11b、装置要素情報11c、ミス率情報11d、メンテナンス時間情報11e、メンテナンス計画11fなどが記憶されている。生産計画情報11aには、部品実装ラインLで生産予定の実装基板(基板種)の情報、生産枚数、生産装置の構成、生産装置の装置要素を特定する情報と使用位置情報、部品実装ラインLを次の種類の実装基板の生産に切り替える切替作業に必要な切替時間などが含まれている。
【0026】
実装基板の情報には、基板に実装される部品の種類、実装位置(XY座標)、実装される予定の部品点数または予定される生産装置の作業時間などが含まれている。すなわち、生産計画情報11aには、複数の種類の実装基板ごとに実装される予定の部品点数または予定される生産装置の作業時間の少なくともいずれかが含まれる。
【0027】
図2において、実績収集部15は、部品実装ラインLの生産装置(印刷装置M2、部品実装装置M4~M8など)から生産実績を定期的に収集する。生産実績には、生産開始日時、生産終了日時(生産装置が実装基板を生産した時間)、生産枚数、生産装置が有する装置要素(テープフィーダ、トレイフィーダ、実装ヘッド、ノズルなど)の使用回数または使用時間、作業ミスの回数、ミス率(頻度)、動作エラーの回数とその内容などの情報が含まれる。
【0028】
実績収集部15は、収集した情報を生産装置または装置要素を特定する情報と関連付けて生産実績情報11bとして記憶部11に記憶する。装置要素情報11cには、部品実装ラインLにおいて使用される装置要素毎に、装置要素を特定する情報、最新のメンテナンスからの使用回数と使用時間、次のメンテナンスまでに使用可能な許容回数と許容時間、装置要素の使用位置(生産装置と装着位置、保管位置など)などの情報が記憶されている。実績収集部15は、収集した装置要素の生産実績に基づいて、装置要素の使用回数と使用時間を更新する。ミス率算出部16は、部品実装ラインLの生産実績情報11bと装置要素情報11cに基づいて、装置要素の使用回数または使用時間とミス率との関係を算出する。
【0029】
ここで、
図3のフローに沿って、
図4を参照しながら、ミス率算出部16による装置要素の使用回数または使用時間とミス率の関係の算出方法の一例について説明する。ここでは、装置要素として部品実装装置M4~M8に装着して使用されるテープフィーダを例に、装置要素の使用回数とミス率の関係の算出方法について説明する。テープフィーダ以外の装置要素の場合や、装置要素と使用時間の関係の場合も同様の算出方法であり、詳細な説明は省略する。
【0030】
図3において、まず、ミス率算出部16は、生産実績情報11bと装置要素情報11cに基づいて、同じ種類の複数のテープフィーダ(装置要素)に対して、使用回数の区間ごと(または使用時間の区間ごと)に複数のテープフィーダのそれぞれで発生した作業ミス(吸着エラー、ジャミングなど)の個別ミス率を算出する(ST1:個別ミス率算出工程)。
図4(a)に示す例では、使用回数が100回の区間ごとにテープフィーダの吸着エラーの個別ミス率を算出している。
【0031】
具体的には、ミス率算出部16は、最新のメンテナンス以降にテープフィーダが部品を供給した回数が1回から100回の間に吸着エラーが発生した回数の実績から個別ミス率を算出する。同様に、ミス率算出部16は、テープフィーダごとに使用回数が101回から200回の区間の個別ミス率、201回から300回の区間の個別ミス率のように、使用回数が100回を区切りに個別ミス率を計算する。
【0032】
図3において、次いでミス率算出部16は、複数のテープフィーダで算出した個別ミス率に基づいて、使用回数(または、使用時間)の区間ごとに個別ミス率の発生頻度(確率分布)を算出する(ST2:確率分布作成工程)。すなわち、ミス率算出部16は、使用回数が1回から100回の区間の個別ミス率が同じ、または、同程度であるテープフィーダの数の発生頻度を算出する。101回から200回の区間、201回から300回の区間も同様である。
【0033】
図3において、次いでミス率算出部16は、各区間の個別ミス率の代表値を決定する(ST3:区間ミス率決定工程)。この例では、個別ミス率の最頻値(P(100)、P(200)、P(300)、・・・)が発生頻度の代表値として採用されている(
図4(a))。なお、代表値は最頻値に限定されることなく、その区間の個別ミス率の中央値であっても、平均値であってもよい。すなわち、ミス率算出部16は、算出された複数の個別ミス率の平均値、中央値、最頻値のいずれかを当該種類の装置要素の当該区間のミス率として採用する。
【0034】
図4(b)は、ミス率算出部16が算出した区間ごとの個別ミス率の代表値(最頻値)を、ミス率と使用回数の関係として表したグラフである。具体的には、ミス率算出部16は、使用回数が1回から100回の区間の使用回数を100回とし、その区間の個別ミス率の最頻値(P(100))をミス率としプロットする。この例では、テープフィーダのミス率が供給する部品ごとに別の集合として統計処理されており、使用回数が500回ごとに部品D1と部品D2のミス率がプロットされている。すなわち、同じ種類のテープフィーダであっても、供給する部品が異なる場合は、異なる集合としてミス率が算出されている。
【0035】
図3において、ミス率算出部16は、算出した使用回数(または使用時間)とミス率の関係をミス率情報11dとして記憶部11に記憶させる(ST4:ミス率記憶工程)。すなわち、記憶部11は、装置要素の使用回数または使用時間に対応するミス率を記憶する。なお、上記では使用回数を100回ごとの区間に分けていたが、区間は100回ごとに限定されることはない。例えば、50回ごとであっても200回ごとであってもよい。また、使用時間の場合は、例えば、使用時間を100秒の区間に分けて、ミス率との関係が算出される。
【0036】
図2において、メンテナンス時間情報11eには、メンテナンス対象の種類別にメンテナンス作業の内容、各メンテナンス作業にかかる標準的なメンテナンス時間などが記憶されている。例えば、印刷装置M2では、スキージの清掃、清掃部の部材交換、コンベアのベルトの清掃などのメンテナンス作業のメンテナンス時間が記憶されている。テープフィーダでは、スプロケットの調整、可動部の給油などのメンテナンス作業のメンテナンス時間が記憶されている。実装ヘッドでは、シャフトの清掃、可動部の給油などのメンテナンス作業のメンテナンス時間が記憶されている。ノズルでは、分解清掃、可動部の給油、ノズルの交換などのメンテナンス作業のメンテナンス時間が記憶されている。
【0037】
図2において、取得部17は、後述するメンテナンス計画作成処理において、生産計画作成コンピュータ(図示省略)などから生産計画情報11aを取得して、記憶部11に記憶させる。許容算出部18は、生産実績情報11b、装置要素情報11c、ミス率情報11dに基づいて、装置要素ごとにミス率が所定の許容値を超過するまでに使用可能な許容回数と許容時間を算出し、装置要素情報11cに記憶されている許容回数と許容時間を更新する。
【0038】
ここで、
図5のフローに沿って、
図4(b)を参照しながら、許容算出部18による部品D1を供給するテープフィーダの許容回数を算出する許容算出方法の例について説明する。他の装置要素の場合や許容時間の場合の算出方法も同様であり、詳細な説明は省略する。
図5において、まず、許容算出部18は、ミス率情報11dに含まれる算出対象のテープフィーダの使用回数(または使用時間)とミス率の関係に基づいて、ミス率が増加傾向にあり、かつ、ミス率が所定の許容値(例えば、3%)となった使用回数(または使用時間)を使用限界回数(または使用限界時間)として算出する(ST11:使用限界算出工程)。
【0039】
図4(b)の例では、使用回数が5000回と5500回の間でミス率が許容値を超過している。そこで、許容算出部18は、5000回のミス率と5500回のミス率を補完(例えば、線形近似)してミス率が許容値となる使用限界回数(D1)を算出する。なお、使用限界回数の算出方法は、線形近似に限定されることはない。例えば、使用回数とミス率の関係から多項式などの近似式を算出し、この近似式と許容値から使用限界回数を算出してもよい。
【0040】
なお、メンテナンス直後の使用回数が500回と1000回の間でもミス率が許容値を超過しているが、この区間ではミス率が減少傾向にあるため、使用限界回数の算出条件には該当していない。また、使用限界回数を超えていなくても、ミス率が所定期間において減少傾向にない場合は正しくメンテナンスがなされていない等の問題があるとして、後述するST24の生産中に許容回数(許容時間)を超過する対象としてもよい。
【0041】
また、同じ種類のテープフィーダであっても、供給する部品が異なる場合(例えば、部品D1と部品D2)は、算出される使用限界回数も異なる場合がある(例えば、使用限界回数(D1)と使用限界回数(D2))。このように、装置要素の使用状況(例えば、テープフィーダが供給する部品の種類)に応じて使用限界回数を算出することで、装置要素をより効率的にメンテナンスすることができる。
【0042】
図5において、次いで許容算出部18は、算出した使用限界回数(または使用限界時間)から装置要素情報11cに含まれる算出対象のテープフィーダの最新のメンテナンスからの使用回数(または使用時間)を引き算して、許容回数(または許容時間)を算出する(ST12:許容回数時間算出工程)。次いで許容算出部18は、装置要素情報11cに記憶されている許容回数(または許容時間)を、算出した許容回数に更新させる(ST13:許容回数時間更新工程)。
【0043】
このように、許容算出部18は、装置要素の使用回数または使用時間とミス率との関係(ミス率情報11d)に基づいて、部品実装ラインLにおいて使用される装置要素のミス率が許容値を超過するまでに使用可能な許容回数または許容時間を算出する。なお、使用限界回数(または使用限界時間)の算出条件はミス率が許容値となった使用回数(または使用時間)に限定されることはない。例えば、ミス率の増加率が所定値となった使用回数を使用限界回数の算出条件としてもよいし、使用回数の累積値から算出されるミス率が所定値となった使用回数を使用限界回数の算出条件としてもよい。
【0044】
図2において、作成部19は、生産計画情報11aに含まれる生産計画と切替時間、装置要素情報11cに含まれる装置要素の許容回数または許容時間、メンテナンス時間情報11eに含まれる装置要素のメンテナンスにかかるメンテナンス時間などに基づいて、装置要素のメンテナンス計画を作成する。後述するように、作成部19は、実装基板の生産中に許容回数または許容時間を超過することが予想される装置要素は、当該実装基板の生産を開始する前までにメンテナンスを実施するようにメンテナンス計画を作成する。作成部19は、作成したメンテナンス計画をメンテナンス計画11fとして記憶部11に記憶させる。出力部20は、作成されたメンテナンス計画11fを表示部13や他のコンピュータなどに出力する。
【0045】
次に、
図6のフローに沿って、
図7を参照しながら、部品実装ラインLが備える生産装置が有する装置要素のメンテナンス計画11fを作成するメンテナンス計画作成処理によるメンテナンス計画作成方法(メンテナンス計画作成プログラム)について説明する。
【0046】
図6において、まず、部品実装ラインLが備える生産装置が有する装置要素の使用回数または使用時間とミス率との関係が算出される(ST21:ミス率算出工程)。ミス率算出工程(ST21)では、
図3に示すミス率算出方法により部品実装ラインLの最新の生産実績情報11bに基づいてミス率を算出しても、過去に算出したミス率(ミス率情報11d)を参照してもよい。次いで取得部17は、生産計画作成コンピュータまたは記憶部11から複数の種類の実装基板ごとに実装される予定の部品点数または予定される生産装置の作業時間の少なくともいずれかを含む生産計画情報11aを取得する(ST22:取得工程)。
【0047】
図7(a)は、取得された生産計画情報11aに含まれる生産計画の例を示している。この例では、部品実装ラインLにおいて、基板種1の実装基板、基板種2の実装基板、基板種3の実装基板の生産が順番に計画されている。そして、基板種1の実装基板の生産時間T01(時刻T0~T1)後の時刻T1から時刻T2の切替時間T12には、部品実装ラインLが生産する実装基板を基板種1から基板種2に切り替える切り替え1が予定されている。また、基板種2の実装基板の生産時間T23(時刻T2~T3)後の時刻T3から時刻T4の切替時間T34には、部品実装ラインLが生産する実装基板を基板種2から基板種3に切り替える切り替え2が予定されている。
【0048】
図6において、次いで許容算出部18は、生産実績情報11b、装置要素情報11c、ミス率情報11dに基づいて、部品実装ラインLにおいて使用される装置要素のミス率が許容値を超過するまでに使用可能な許容回数または許容時間を算出する(ST23:許容算出工程)。許容算出工程(ST23)では、
図5に示す許容算出方法などにより許容回数または許容時間が算出される。次いで作成部19は、生産計画に含まれる実装基板に実装される予定の部品点数または生産装置の作業時間と、許容算出工程(ST23)において算出された許容回数または許容時間から、実装基板の生産中に許容回数または許容時間を超過する装置要素(メンテナンス対象)があるか否かを判断する(ST24:許容超過判断工程)。
【0049】
図7(a)の例では、作成部19は、基板種1、基板種2、基板種3の実装基板に実装される部品点数または作業時間と、メンテナンス対象である装置要素の実装基板の生産開始時点の許容回数または許容時間から、基板種1、基板種2、基板種3の実装基板のいずれかの生産中に許容回数または許容時間を超過する装置要素があるか否かを判断する。
【0050】
なお、部品点数と使用回数、作業時間と使用時間の関係は、次のとおりである。例えば、テープフィーダでは、実装基板に部品を1個(1点)実装する際には、スプロケットが1回間欠回転されて1個の部品が供給される。そのため、装置要素がテープフィーダで、使用回数が部品を供給するためにスプロケットを間欠回転させた累積回数である場合、部品点数と使用回数は1対1の関係(1点が1回に相当)である。また、装置要素がテープフィーダで、使用時間が部品実装装置M4~M8に装着されてテープフィーダに電源が投入されている積算時間である場合、作業時間は実装基板の生産に使用される使用時間(例えば、生産時間T01)である。
【0051】
図7(b)において、テープフィーダF01の基板種1の実装基板の生産開始時点(時刻T0)の許容回数は2000回であり、テープフィーダF01が基板種1の実装基板に実装する予定の部品点数は1000点である。そのため、基板種1の生産終了時点(時刻T1)での許容回数は1000回(2000回-1000回)となる。
【0052】
また、テープフィーダF01が基板種2の実装基板に実装する予定の部品点数は2000点である。そのため、基板種2の実装基板の生産時間T23中にテープフィーダF01の許容回数は0回になる。そこで、作成部19は、許容超過判断工程(ST24)において、テープフィーダF01は基板種2の実装基板の生産中に許容回数を超過すると判断する。同様に、テープフィーダF02とテープフィーダF03は、基板種3の実装基板の生産中に許容回数を超過すると判断されている。
【0053】
具体的には、作成部19は、生産計画情報11aに含まれる第1実装基板(基板種1の実装基板)に実装される予定の第1部品点数(1000点)に第1実装基板の次に生産される第2実装基板(基板種2の実装基板)に実装される予定の第2部品点数(2000点)を加算した加算部品点数(3000点)を算出する。そして、作成部19は、加算部品点数(3000点)が許容回数(2000回)に対応する部品点数(2000点)を超過するか否かを判断する。
【0054】
または、作成部19は、生産計画情報11aに含まれる第1実装基板に予定される第1作業時間に第1実装基板の次に生産される第2実装基板に予定される第2作業時間を加算した加算作業時間が、許容時間に対応する作業時間を超過するか否かを判断する。
【0055】
図6において、次いで作成部19は、許容超過判断工程(ST24)において超過するメンテナンス対象(装置要素)があると判断された場合(Yes)、部品実装ラインLを次の種類の実装基板の生産に切り替える切替時間に当該メンテナンス対象のメンテナンス作業が終了するか否かを判断する(ST25:切替時間判断工程)。切替時間にメンテナンス作業が終了する場合(ST25においてYes)、作成部19は、当該メンテナンス対象のメンテナンス作業を当該切替時間に設定したメンテナンス計画を作成する(ST26:切替時間設定工程)。
【0056】
すなわち、作成部19は、実装基板の生産中に許容回数または許容時間を超過することが予想される装置要素は(ST24においてYes)、当該種類の実装基板の生産を開始する前の切替作業であり、かつ、切替時間が当該装置要素のメンテナンスにかかるメンテナンス時間よりも長い切替作業においてメンテナンスを実行するようにメンテナンス計画を作成する(ST26)。
【0057】
図7(b)において、切り替え1の切替時間T12は、テープフィーダF01のメンテナンス作業のメンテナンス時間より長い(ST25においてYes)。そこで、作成部19は、テープフィーダF01のメンテナンス作業を切り替え1の切替時間T12に設定したメンテナンス計画を作成する(ST26)。すなわち、作成部19は、第2実装基板(基板種2)の生産中に許容回数または許容時間を超過することが予想される装置要素(テープフィーダF01)は、第1切替時間(切替時間T12)が当該装置要素のメンテナンスにかかるメンテナンス時間がよりも長い場合に、第1切替作業(切り替え1)においてメンテナンスを実行するようにメンテナンス計画を作成する。
【0058】
図7(b)において、切り替え2の切替時間T34は、テープフィーダF02のメンテナンス作業のメンテナンス時間より短い。しかし、切り替え1の切替時間T12は、テープフィーダF02のメンテナンス作業のメンテナンス時間より長い(ST25においてYes)。そこで、作成部19は、テープフィーダF02のメンテナンス作業を切り替え1の切替時間T12に設定したメンテナンス計画を作成する(ST26)。
【0059】
すなわち、作成部19は、第3実装基板(基板種3)の生産中に許容回数または許容時間を超過することが予想される装置要素(テープフィーダF02)は、第2切替時間(切替時間T34)が当該装置要素のメンテナンス時間よりも短い場合は、第2実装基板(基板種2)の生産を開始する前の切替作業であり、かつ、部品実装ラインLを次の実装基板(基板種2)に切り替える切替時間(切替時間T12)が当該装置要素のメンテナンス時間よりも長い切替作業(切り替え1)においてメンテナンスを実行するようにメンテナンス計画を作成する。
【0060】
図6において、切替時間にメンテナンス作業が終了しない場合(ST25においてNo)、作成部19は、当該メンテナンス対象と同じ種類の予備の装置要素があるか否かを判断する(ST27:交換判断工程)。予備の装置要素がある場合(ST27においてYes)、作成部19は、当該メンテナンス対象を予備の装置要素と交換するメンテナンス計画を作成する(ST28:交換作業設定工程)。
【0061】
図7(b)において、切り替え2の切替時間T34は、テープフィーダF03のメンテナンス作業のメンテナンス時間より短い(ST25においてNo)。しかし、切り替え2の開始時点の時刻T3において、テープフィーダF03と同じ種類の予備のテープフィーダF04(装置要素)がある。そこで、作成部19は、切替時間T34において、メンテナンス対象のテープフィーダF03を予備のテープフィーダF04と交換する交換作業を実行するメンテナンス計画を作成する(ST28)。また、作成部19は、交換作業によって部品実装装置M4~M8から取り外されたテープフィーダF03に対し、交換作業後にメンテナンス作業を実行するメンテナンス計画を作成する。
【0062】
図6において、予備の装置要素がない場合(ST27においてNo)、作成部19は、切替時間を当該メンテナンス対象のメンテナンス時間よりも長くなるように、生産計画を変更する(ST29:生産計画変更工程)。このように、取得工程(ST22)において取得された生産計画情報11aと、許容算出工程(ST23)において算出された許容回数または許容時間とに基づいて、装置要素のメンテナンス計画が作成される(ST26、ST28)。次いで出力部20は、作成されたメンテナンス計画を表示部13などに出力(表示)させる(ST30:出力工程)。これによって、生産装置が有する装置要素を効率的にメンテナンスすることができる。
【0063】
なお、ST29において作成部19は生産計画の変更を自動で実施してもよいが、変更の承認を作業者が所持する作業端末に通知して承認を得たうえで計画変更を行ってもよい。作業者の承認を得たうえで生産計画を変更することで、生産計画の変更回数を低減させることができる。また、作業者に通知する際に変更の通知に加えて対象の装置要素の使用回数やミス率を合わせて通知することでより承認の判断をしやすくしてもよい。
【0064】
上記説明したように、本実施の形態の管理コンピュータ3は、実装基板ごとに実装予定の部品点数または予定される作業時間の少なくともいずれかを含む生産計画情報11aを取得する取得部17と、装置要素(テープフィーダ)の使用回数または使用時間とミス率との関係(ミス率情報11d)に基づいて、装置要素のミス率が許容値を超過するまでに使用可能な許容回数または許容時間を算出する許容算出部18と、算出された許容回数または許容時間と取得された生産計画情報11aに基づいて、装置要素のメンテナンス計画を作成する作成部19と、作成されたメンテナンス計画を出力する出力部20を備え、装置要素のメンテナンス計画を作成するメンテナンス計画作成装置である。これによって、生産装置が有する装置要素を効率的にメンテナンスすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のメンテナンス計画作成装置およびメンテナンス計画作成方法ならびにメンテナンス計画作成プログラムは、生産装置が有する装置要素を効率的にメンテナンスすることができるメンテナンス計画を作成することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0066】
3 管理コンピュータ(メンテナンス計画作成装置)
L 部品実装ライン
M2 印刷装置(生産装置)
M4~M8 部品実装装置(生産装置)