(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100291
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】分散体、塗工物および電極
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20230711BHJP
C09C 1/44 20060101ALI20230711BHJP
C09C 3/10 20060101ALI20230711BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230711BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230711BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230711BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20230711BHJP
【FI】
C09D17/00
C09C1/44
C09C3/10
H01M4/139
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01G11/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000816
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石井 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康平
(72)【発明者】
【氏名】深川 聡一郎
【テーマコード(参考)】
4J037
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
4J037AA01
4J037AA02
4J037CC17
4J037CC18
4J037CC29
4J037DD24
4J037EE03
4J037EE28
4J037FF11
5E078AB02
5E078AB06
5E078BA15
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5E078BA53
5E078BA71
5E078BA73
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA03
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA20
5H050CA22
5H050CA25
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050DA18
5H050EA08
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、炭素材料を高濃度で分散可能でありながら経時安定性が良好な分散体の提供を目的とする。
【解決手段】分散剤(A)、有機溶剤(B)、および炭素材料(C)を含み、
分散剤(A)が酸性基含有単量体単位(a)、炭素数10~40の単量体単位(b)、およびニトリル基、および複素環のうち1種以上の部位を有する単量体単位(c)を含有し、炭素数10~40の単量体単位(b)が、炭化水素基含有単量体単位、脂肪族環含有単量体、およびアルキレンオキシ基含有単量体単位からなる群より選択される1種以上である、分散体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤(A)、有機溶剤(B)、および炭素材料(C)を含み、
分散剤(A)が酸性基含有単量体単位(a)、炭素数10~40の単量体単位(b)、およびニトリル基、および複素環のうち1種以上の部位を有する単量体単位(c)を含有し、
炭素数10~40の単量体単位(b)が、炭化水素基含有単量体単位、脂肪族環含有単量体、およびアルキレンオキシ基含有単量体単位からなる群より選択される1種以上である、分散体。
【請求項2】
炭素数10~40の単量体単位(b)の含有量が、分散剤(A)の全単量体単位100質量%中、1~65質量%である、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
ニトリル基、および複素環のうち1種以上の部位を有する単量体単位(c)の含有量が、分散剤(A)の全単量体単位100質量%中、1~60質量%である、請求項1または2に記載の分散体。
【請求項4】
酸性基含有単量体単位(a)の酸性基が塩を形成している、請求項1~3のいずれか1項に記載の分散体。
【請求項5】
基材、および請求項1~4のいずれか1項に記載の分散体から形成されてなる層を備える、塗工物。
【請求項6】
導電性基材、ならびに請求項1~4のいずれか1項に記載の分散体および活物質を含む合材組成物から形成されてなる合材層を備える、電極。
【請求項7】
請求項6に記載の電極を備える、蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材料を分散する分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素材料は、電極、電磁波シールド材、導電性材料、光学材料、電界放出ディスプレー(FED)用部材、水素を始めとする各種ガスの吸蔵材料、漆黒性材料、塗料等の機能性材料として、エレクトロニクス、エネルギー、特殊塗料等の幅広い分野に利用されている。
【0003】
しかし炭素材料の中でも特にカーボンナノチューブ(CNT)は、チューブ状の繊維同士が非常に強いファンデルワールス力で凝集しているため、これらを解繊して溶媒中に高度に分散させることは難しい。その為、分散体が高粘度を示し、製品の分散機からの取り出しや輸送が困難となるばかりでなく、保存中にゲル化を起こし、使用困難になる場合がある。
【0004】
例えば、カーボンナノチューブを用いた分散体は、特許文献1では、芳香環を有する高分岐分散剤を用いた分散体が開示されている。また特許文献2~5には分散剤にアクリル樹脂を用いた分散体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/161307号
【特許文献2】特開2014-225465号公報
【特許文献3】特開2017-62868号公報
【特許文献4】特開2017-128670号公報
【特許文献5】国際公開第2006/033173号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の分散体は、炭素材料の含有量が低く、分散体を用いる用途(例えば、合材組成物)で不揮発分を高めることができなかった。
【0007】
本発明は、炭素材料を高濃度で分散可能でありながら経時安定性が良好な分散体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の分散体は、分散剤(A)、有機溶剤(B)、および炭素材料(C)を含み、
分散剤(A)が酸性基含有単量体単位(a)、炭素数10~40の単量体単位(b)、およびニトリル基、および複素環のうち1種以上の部位を有する単量体単位(c)を含有し、
炭素数10~40の単量体単位(b)が、炭化水素基含有単量体単位、脂肪族環含有単量体、およびアルキレンオキシ基含有単量体単位からなる群より選択される1種以上である、分散体。
【発明の効果】
【0009】
上記の本発明によれば、炭素材料を高濃度で分散可能でありながら経時安定性が良好な分散体を提供できる。また、本発明の分散体を用いる塗工物、電極を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、課題を解決できる範囲内であれば変形できる。
【0011】
本明細書の用語を定義する。まず、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、及び「アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシ」を表す。
単量体は、重合性不飽和基を含有し、重合により樹脂を形成する化合物である。単量体は、未反応状態であり、単量体単位は、単量体が重合後に樹脂を形成している状態である。重合性不飽和基は、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基等である。
【0012】
本発明の分散体は、分散剤(A)、有機溶剤(B)、および炭素材料(C)を含む。
【0013】
<分散剤(A)>
分散剤(A)は、酸性基含有単量体単位(a)、炭素数10~40の単量体単位(b)、およびニトリル基、および複素環のうち1種以上の部位を有する単量体単位(c)を含有し、
炭素数10~40の単量体単位(b)が、炭化水素基含有単量体単位、脂肪族環含有単量体、およびアルキレンオキシ基含有単量体単位からなる群より選択される1種以上である。
本発明の分散剤(A)中のニトリル基、および複素環のうち1種以上の部位を有する単量体単位(c)が炭素材料(C)への吸着部位として機能し、炭素数10~40の単量体単位(b)が立体反発部位として機能することで炭素材料を高濃度で分散可能でありながら経時安定性が良好な分散体を提供できる。
【0014】
<酸性基含有単量体単位(a)>
酸性基含有単量体単位(a)は、例えば、スルホ基、リン酸基またはカルボキシル基含有単量体が挙げられる。これらの中でもカルボキシル基またはリン酸基含有単量体が好ましく、カルボキシル基含有単量体がより好ましい。
【0015】
カルボキシル基含有単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、ε-カプラロラクトン付加アクリル酸、ε-カプラロラクトン付加メタクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及び無水マレイン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸等の酸無水物基含有モノマーの単官能アルコール付加体等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0016】
リン酸基含有単量体は、(メタ)アクリル酸2-(ホスホノオキシ)エチル、ポリエチレングリコールリン酸エステルメタクリレート、ポリプロピレングリコールリン酸エステルメタクリレート等が挙げられる。中でも好ましくは、(メタ)アクリル酸2-(ホスホノオキシ)エチルである。
【0017】
スルホ基含有単量体は、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジスルホン酸エチル(メタ)アクリレート、メチルプロピルスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スルホン酸エチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0018】
<炭素数10~40の単量体単位(b)>
炭素数10~40の単量体単位(b)は、酸性基、ニトリル基および複素環を有さず化合物全体の炭素数が10~40の単量体から形成される。
炭素数10~40の単量体単位(b)は、炭化水素基含有単量体単位、脂肪族環含有単量体、およびアルキレンオキシ基含有単量体単位からなる群より選択される1種以上の部位である。
【0019】
炭化水素基含有単量体は、直鎖または分岐鎖の炭化水素基含有単量体であり、例えば、ヘキシルメタクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ヘンエイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、トリコシル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、ペンタコシル(メタ)アクリレート、ヘキサコシル(メタ)アクリレート、ヘプタコシル(メタ)アクリレート、オクタコシル(メタ)アクリレート、ノナコシル(メタ)アクリレート、トリアコンチル(メタ)アクリレート、ヘントリアコンチル(メタ)アクリレート、ドトリアコンチル(メタ)アクリレート、トリトリアコンチル(メタ)アクリレート、テトラトリアコンチル(メタ)アクリレート、ペンタトリアコンチル(メタ)アクリレート、ヘキサトリアコンチル(メタ)アクリレート、テトラコンチル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、リノレイル(メタ)アクリレート、ドコデシル(メタ)アクリレート、セリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
脂肪族環含有単量体は、単環または多環脂環構造を含む単量体が挙げられる。単環脂環構造を含む単量体は、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、シクロデカン(メタ)アクリレート、シクロヘキセニルメチル(メタ)アクリレート、エチルシクロオクタン-イル(メタ)アクリレート、メチル(メチルシクロヘキセニル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
多環脂環構造を含む単量体は、例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチルー2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチルー2-アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも炭化水素基含有単量体、脂肪族環含有単量体が好ましく、炭化水素基含有単量体がより好ましい。これらの単量体を使用すると、分散体中で良好な立体反発部位として働き、分散性、経時安定性、導電性、および、成膜性に優れるため好ましい。
【0023】
炭素数10~40の単量体単位(b)の炭素数は、14~40が好ましく、20~35がより好ましく、20~30がさらに好ましい。炭素数が10~40の範囲であると、分散性、経時安定性が向上する。
【0024】
<ニトリル基、および複素環のうち1種以上の部位を有する単量体単位(c)>
ニトリル基、および複素環のうち1種以上の部位を有する単量体単位(c)(以下、単量体単位(c)という)は、酸性基含有単量体単位(a)および炭素数10~40の単量体単位(b)以外の単量体単位であり、単量体(c)から形成される。
【0025】
ニトリル基含有単量体は、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0026】
複素環含有単量体の複素環は、窒素、酸素、硫黄などの典型元素を含む環である。本明細書で複素環は、窒素、または酸素を含む環が好ましく、窒素を含む環がより好ましい。
【0027】
複素環含有単量体は、例えば、芳香族性複素環含有単量体、非芳香族性複素環含有単量体があげられる。中でも好ましくは、芳香族性複素環含有単量体である。
【0028】
芳香族性複素環含有単量体は、例えば、酸素原子を有する芳香族性複素環含有単量体、窒素原子を有する芳香族性複素環含有単量体が挙げられる。中でも好ましくは、分散性、および経時安定性の観点から、窒素原子を有する芳香族性複素環含有単量体である。これらの化合物であると、芳香族環が電子不足となるため、炭素材料との良好な吸着部位として働くため、分散性がより向上する。
【0029】
酸素原子を有する芳香族性複素環含有単量体としては、フルフリル(メタ)アクリレート、2-ブロモフランEO付加(メタ)アクリレート、ビニルフラン、フルフリルスチレン、アクリロイルフルフリル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート変性フルフリルアルコール、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート変性フルフリルアミン、ジオキソラン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
窒素原子を有する芳香族性複素環含有単量体は、例えば、窒素原子を有する芳香族複素環およびビニル基含有単量体、窒素原子を有する芳香族複素環含有(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも好ましくは、分散性、および経時安定性の観点から、さらに好ましくは窒素原子を有する芳香族複素環含有ビニル単量体である。なお、ビニル単量体は、重合性不飽和基としてビニル基を有する化合物である。
【0031】
窒素原子を有する芳香族複素環含有ビニル単量体は、例えば、1-ビニルピロール、1-ビニルイミダゾール、2-ビニルピロール、2-メチル-5-ビニル-1H-ピロール、4,5-ジヒドロ-2-ビニル-1H-イミダゾール、2-ビニル-1H-イミダゾール、1-ビニル-1H-ピラゾール、1-ビニル-3,5―ジメチル―1H-ピラゾール、3-メチル-5-フェニル-1-ビニルピラゾール、1-ビニルインドール、1-ビニル-2-メチル-1H-インドール、1-ビニルイソインドール、2-(メタ)アリル-1H-インドール、3-(メタ)アリル-1H-インドール、1-ビニル-1H-ベンゾイミダゾール、2-ビニル-1H-ベンゾイミダゾール、2-ビニル-5,6-ジメチル-1H-ベンゾイミダゾール、1-ビニルインダゾール、2-ビニルインダゾール、1-ビニルキノリン、2-ビニルキノリン、4-ビニルキノリン、2-ビニルイソキノリン、2-ビニルイソキサリン、2-ビニルキノキサリン、2-ビニルキナゾリン、2-ビニルシンノリン、1-(メタ)アリル-1H-ベンゾイミダゾール、1-(メタ)アリル-3-メチル-1H-インダゾール、1-(メタ)アリル-4-メチル-1H-インダゾール、N-(メタ)アリルキノリン-4-アミン、ジ(メタ)アリルキノリン、1,2-ジ(メタ)アリル-1,2-ジヒドロイソキノリン、3-フェニル-4-(メタ)アリルイソキノリン、1-ビニルピリジン-2(1H)-オン、1-(メタ)アリル-1H-イミダゾール、1-(メタ)アリル-2-メチル-1H-イミダゾール、1-(メタ)アリル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウム、1-(メタ)アリル-3-エチル-1H-イミダゾール-3-イウム、4-(メタ)アリル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール、5-(1-メチルプロピル)-5-(メタ)アリルピリミジン、5-(メタ)アリル-5-イソプロピルピリミジン、2-(メタ)アリルピリジン、4-(メタ)アリルピリジン、3,6-ジヒドロ-3-(メタ)アリルピリジン、2-(メタ)アリルインダゾール、9-(メタ)アリル-9H-カルバゾール、5-ブロモ-1-(メタ)アリル-1H-ピラゾール、1-(メタ)アリル-5,5-ジエチルピリミジン、N-(メタ)アリル-s-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N-(メタ)アリル-4,6-ジクロロ-1,3-5-トリアジン-2-アミン、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、6-メチル-2-エテニルピリジン、2-ビニルピラジン、2-メチル-5-ビニルピラジン、2-メチル-6-ビニルピラジン、2,5-ジメチル-3-ビニルピラジン、2-ビニルピリミジン、2-ビニルピリダジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、6-ビニル-1,3,5―ジメチル―2,4-ジアミン、3-ビニル-1,2,4,5-テトラジン、1-ビニルキナゾリン、1-ビニルシンノリン、1-ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0032】
窒素原子を有する芳香族複素環含有(メタ)アクリレートは、例えば、2-[2-ヒドロキシ-5-((メタ)アクリロイルオキシメチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-((メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-((メタ)アクリロイルオキシプロピル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-((メタ)アクリロイルオキシブチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-((メタ)アクリロイルオキシヘキシル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-((メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-((メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-((メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-((メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-シアノ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-((メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-t-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-((メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-ニトロ-2H-ベンゾトリアゾール、3-(2H-ベンゾトリアゾール―2-イル)-4-ヒドロキシフェネチル―(メタ)アクリラート、2-[3-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェル]エチル(メタ)アクリレート、2-[2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
非芳香族性複素環含有単量体は、例えば、酸素原子含有非芳香族性複素環単量体、窒素原子含有非芳香族性複素環単量体が挙げられる。
【0034】
酸素原子含有非芳香族性複素環単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチルグリシジルエーテル、グリシジルシンナマート、アリルグリシジルエーテル、1,3-ブタジエンモノオキシラン、ビニルシクロヘキセンモノオキシラン等のグリシジル基含有ビニルエステル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸-4,5-エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6,7-エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、ラクトン変性(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシル、ビニルシクロヘキセンオキシド、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸(3-メチル-3-オキセタニル)メチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸-2-オキソテトラヒドロピラン-4-イル、(メタ)アクリル酸-4-メチル-2-オキソテトラヒドロピラン-4-イル、(メタ)アクリル酸-4-エチル-2-オキソテトラヒドロピラン-4-イル、(メタ)アクリル酸-4-プロピル-2-オキソテトラヒドロピラン-4-イル、(メタ)アクリル酸-5-オキソテトラヒドロフラン-3-イル、(メタ)アクリル酸-2,2-ジメチル-5-オキソテトラヒドロフラン-3-イル、(メタ)アクリル酸-4,4-ジメチル-5-オキソテトラヒドロフラン-3-イル、(メタ)アクリル酸-2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル、(メタ)アクリル酸-4,4-ジメチル-2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル、(メタ)アクリル酸-5,5-ジメチル-2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル、(メタ)アクリル酸-5-オキソテトラヒドロフラン-2-イルメチル、(メタ)アクリル酸-3,3-ジメチル-5-オキソテトラヒドロフラン-2-イルメチル、(メタ)アクリル酸-4,4-ジメチル-5-オキソテトラヒドロフラン-2-イルメチル、3-(アクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン及び3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン等が挙げられる。
【0035】
窒素原子含有非芳香族性複素環単量体は、例えば、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、4-(ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-イル(メタ)アクリレート、1-ビニル-2-イミダゾリン、2-ビニル-2-イミダゾリン、1-ビニル-2-メチル-2-イミダゾリン、2-ビニル-2-イミダゾリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、1-(メタ)アリルピペラジン、2-ビニルピペラジン、4-ビニルピペラジン、1-ベンジル-2-ビニルピペラジン、1-ベンジル-3-ビニルピペラジン、1、4-ジメチル-3-ビニルピペラジン、N‐ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0036】
複素環含有単量体は、他に窒素原子と酸素原子を含む複素環含有単量体が挙げられる。窒素原子と酸素原子を含む複素環含有単量体としては、イミド(メタ)アクリレート、2-(4-オキサゾリン-3-イル)エチル(メタ)アクリレート、2-ビニルオキサゾール、2-フェニル-4-ビニルオキサゾール、2-フェニル-5-ビニルオキサゾール、5-エトキシ-2-ビニルオキサゾール、3-ビニル-5-ニトロソオキサゾール、2-ビニル-4,5-ジフェニルオキサゾール、2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン-5-オン、2-ビニルベンゾオキサゾール、4-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-[2-(1H-イミダゾール-5-イル)エチル](メタ)アクリルアミド、N-(オキセタン-3-イルメトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(オキセタン-2-イルメトキシメチル)(メタ)アクリルアミド等
が挙げられる。
【0037】
単量体(c)は、好ましくは、ニトリル基、または芳香族性複素環含有単量体であり、さらに好ましくは、ニトリル基、または6員環以上の芳香族性複素環含有単量体であり、さらに好ましくはニトリル基、もしくは、窒素原子を有する6員環以上の芳香族性複素環含有単量体であり、さらに好ましくは、窒素原子を有する6員環以上の芳香族複素環を有する単量体である。ニトリル基、もしくは、芳香族性複素環含有単量体であると、分散性、および経時安定性に優れる。これらの中でも好ましくは、(メタ)アクリロニトリル、ビニルピリジン、および2-[2-ヒドロキシ-5-((メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールであり、中でも好ましくは、(メタ)アクリロニトリル、2-ビニルピリジン、および2-[2-ヒドロキシ-5-((メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールである。
【0038】
分散剤(A)を構成する単量体は、酸性基含有単量体単位(a)、炭素数10~40の単量体単位(b)、および単量体(c)以外に、その他単量体を含有できる。
【0039】
その他単量体は、特に限定されないが
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸アリルなどのアルキルエステル単量体;
(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロブチル、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸トリパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリルプロペン酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノール3EO付加(メタ)アクリレート、及びパーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有単量体;
商品名「サイラプレーンFM-0711」(JNC社製)、商品名「サイラプレーンFM-0721」(JNC社製)商品名「サイラプレーンFM-0725」(JNC社製)、商品名「X-22-174DX」(信越シリコーン社製)「X-22-2426」(信越シリコーン社製)、商品名「X-22-174ASX」(信越シリコーン社製)、などのポリシロキサン部位を有する単量体;
ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香環含有単量体;
スチレン、α-メチルスチレン、p-ヒドロキシスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、4-ヒドロキシビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸ビニル、及び(メタ)アクリル酸アリル、p-t-ブトキシスチレン、p-t-ブトキシカルボニルスチレン、p-t-ブトキシカルボニルオキシスチレン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン酢酸ビニル等のビニル基を有する単量体;
(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート等のアミン骨格を持つ単量体;
N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等マレイミド部位を持つ単量体;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート又はこれらモノマーのカプロラクトン付加物、グリセリンモノ(メタ)アクリレート及びこれらのカプロラクトン付加物等が等のヒドロキシル基を有する単量体;
エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)エチル等のビニルエーテル部位を有する単量体;
ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基を有する単量体;
2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン及びこれらモノマーのカプロラクトン付加物等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート;
【0040】
分散剤(A)の合成に使用する単量体は、それぞれ単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0041】
酸性基含有単量体単位(a)の含有量は、分散剤(A)の全単量体単位100質量%中、1~65質量%が好ましく、5~60質量%がより好ましく、10~50質量%がさらに好ましい。
【0042】
炭素数10~40の単量体単位(b)の含有量は、分散剤(A)の全単量体単位100質量%中、1~65質量%が好ましく、5~60質量%がより好ましく、10~50質量%がさらに好ましい。
【0043】
ニトリル基、および複素環のうち1種以上の部位を有する単量体単位(c)の含有量は、分散剤(A)の全単量体単位100質量%中、1~60質量%が好ましく、1~55質量%がより好ましく、1~45質量%がさらに好ましい。
【0044】
炭素数10~40の単量体単位(b)は酸性基含有単量体単位(a)の含有量100質量部に対して、5質量部を超える質量が好ましく、10質量部以上がより好ましい。なお、上限は500質量部が好ましく、さらに好ましくは、250質量部である。
【0045】
酸性基含有単量体単位(a)と炭素数10~40の単量体単位(b)のモル比は、a/b=98.5/1.5~1.5/98.5が好ましく、a/b=95/5~10/90がより好ましい。
【0046】
分散剤(A)の酸価は、20~500mgKOH/gが好ましく、75~450mgKOH/gがより好ましく、100~400mgKOH/gがより好ましい。分散剤(A)の酸価が20~500mgKOH/gであると、分散性、経時安定性、成膜性、および耐水性が向上する。
【0047】
分散剤(A)の合成方法は、イオン重合、フリーラジカル重合、及びリビングラジカル重合等、公知の方法が使用できる。
【0048】
ランダム重合ポリマーの重合方法として、フリーラジカル重合が挙げられ、重合開始剤を使用する。重合開始剤は、例えば、アゾ系化合物及び有機過酸化物が挙げられる。
アゾ系化合物は、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカーボキシレート)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、または2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。有機過酸化物は、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサエート、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、またはジアセチルパーオキシド等が挙げられる。これらの中でも2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)が好ましい。
【0049】
重合開始剤の使用量は、ポリマーの分子量制御性の観点から、全単量体100質量部に対して、0.01~30質量部が好ましく、0.05~10質量部がより好ましい。
【0050】
重合温度は、40~150℃程度が好ましく、50~110℃がより好ましい。反応時間は、3~30時間程度が好ましく、5~20時間がより好ましい。
【0051】
フリーラジカル重合による分散剤(A)の合成には、ポリマー分子量調整のために連鎖移動剤を使用してもよい。
【0052】
連鎖移動剤は、例えば、α-メルカプトプロピオン酸、β-メルカプトプロピオン酸、2,3-ジメルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸o-メルカプト安息香酸、m-メルカプト安息香酸、チオリンゴ酸、o-チオクマル酸、α-メルカプトブタン酸、β-メルカプトブタン酸、γ-メルカプトブタン酸、11-メルカプトウンデカン酸、メルカプトメタノール、1-メルカプトエタノール、2-メルカプトエタノール、1-メルカプトプロパノール、3-メルカプトプロパノール、1-メルカプト-2,3-プロパンジオール、1-メルカプト-2-ブタノール、1-メルカプト-2,3-ブタンジオール、1-メルカプト-3,4-ブタンジオール,1-メルカプト-3,4,4’-ブタントリオール、2-メルカプト-3-ブタノール、2-メルカプト-3,4-ブタンジオールおよび2-メルカプト-3,4,4’-ブタントリオール、チオグリセロール、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチルなどのチオグリコール酸アルキルエステル、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸トリデシルなどのメルカプトプロピオン酸アルキルエステル等が挙げられる。
これらの中でも、1級チオール基を持つ化合物が特に連鎖移動剤効果が高く、分子量調整が容易のため好ましい。特に臭気と分子量調整の容易さのバランスから、β-メルカプトプロピオン酸、チオグリセロール、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルが好ましく、チオグリセロール、チオグリコール酸オクチルがより好ましい。
【0053】
リビングラジカル重合法は一般的なラジカル重合に起こる副反応が抑制され、更には、重合の成長が均一に起こる為、容易にブロックポリマーや分子量の整った樹脂を合成できる。
【0054】
ブロックポリマーを得る方法としてリビングラジカル重合が挙げられる。リビングラジカル重合は、例えば、可逆的付加開裂連鎖移動重合(以下、RAFT重合)、原子移動ラジカル重合、ヨウ素化合物を用いたリビング重合、有機テルル化合物を用いたリビング重合等の方法が挙げられる。これらの中でも反応操作が容易で重金属を含む化合物を必要としない点でRAFT重合が好ましい。
【0055】
RAFT重合は、RAFT剤の存在下、モノマーをラジカル重合する方法であり、RAFT剤は、連鎖移動効果、および重合開始効果を有する化合物であり、例えば、ジチオベンゾエート型、トリチオカーボネート型、ジチオカルバメート型、およびキサンテート型等、ならびにこれらの前駆体であるジスルフィド型が挙げられる。
ジチオベンゾエート型は、例えば、ジチオ安息香酸2-シアノ-2-プロピル、4-シアノ-4-(チオベンゾイルチオ)ペンタン酸、ベンゾジチオ酸2-フェニル-2-プロピル等が挙げられる。
トリチオカーボネート型は、例えば、4-[(2-カルボキシエチルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-4-シアノペンタン酸、2-{[(2-カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-シアノ-2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル、2-メチル-2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、S,S-ジベンジルトリチオ炭酸、トリチオ炭酸=ビス[4-(アリルオキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス[4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス{4-[エチル-(2-アセチルオキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸ビス{4-[エチル-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸=ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンジル]等が挙げられる。
ジチオカルバメート型は、例えば、4-クロロ-3,5-ジメチルピラゾ-ル-1-カルボジチオ酸2’-シアノブタン-2’-イル、3,5-ジメチルピラゾ-ル-1-カルボジチオ酸2’-シアノブタン-2’-イル、3,5-ジメチルピラゾ-ル-1-カルボジチオ酸シアノメチル、N-メチル-N-フェニルジチオカルバミン酸シアノメチル等が挙げられる。
ジスルフィド型は、ビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィド、ビス(チオベンゾイル)ジスルフィド等が挙げられる。
これらの中でも、合成時の反応制御が容易なトリチオカーボネート型化合物が好ましく、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-シアノ-2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル、トリチオ炭酸ビス{4-[エチル-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、ビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィドがより好ましい。
【0056】
分散剤(A)は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0057】
分散剤(A)の分子量は、特に限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量3,000~100,000が好ましく、5,000~50,000がより好ましい。
【0058】
分散剤(A)の含有量は、分散体100質量部中、0.1~30質量部が好ましく、0.5~15質量部がさらに好ましい。
【0059】
分散剤(A)は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、沈殿重合等公知の重合手法で合成できる。中でも、反応制御が容易な溶液重合が好ましい。使用する有機溶剤は、特に限定されず、例えば、下記の有機溶剤(B)を用いることができる。
【0060】
<有機溶剤(B)>
有機溶剤(B)は、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、芳香族、アミド、スルホキシド、エステル、カーボネート、グリコールエーテル、セロソルブ、その他溶剤等が挙げられる。これらの中でも、
好ましくは、ケトン類、エステル類、アルコール類、アミド類であり、さらに好ましくはケトン類、エステル類、アミド類であり、さらに好ましくは、アミド類である。
【0061】
有機溶剤(B)は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール;
ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、プロピレンオキシド、ジエチルエーテル、ジオキソラン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;
トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族;
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド;
ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート;
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等のグリコールエーテル;
メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ;
その他、メチルシクロヘキサン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0062】
有機溶剤(B)は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0063】
<炭素材料(C)>
炭素材料(C)は、例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、フラーレン等が挙げられる。カーボンブラックについては中性、酸性、塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。
【0064】
カーボンブラックは、例えば、市販のアセチレンブラック、ファーネスブラック、中空カーボンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック、酸化処理されたカーボンブラックや、黒鉛化処理されたカーボンブラック等が挙げられる。
【0065】
これらの中でもアセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブが好ましく、さらに好ましくは、カーボンナノチューブである。
【0066】
炭素材料(C)は、導電性を有するものが好ましい。導電性を持つ炭素材料(C)を分散体に配合することで、導電性が発現する。
【0067】
炭素材料(C)の含有量は、分散体100質量部中、0.5~30質量部が好ましく、さらに好ましくは、0.5~20質量部であり、0.5~15質量部がさらに好ましい。
【0068】
炭素材料(C)の含有量は、カーボンブラックを用いる場合は、分散体100質量部中、1~30質量部が好ましく、さらに好ましくは、2~30質量部であり、5~30質量部がさらに好ましい。
【0069】
<分散体>
本発明の分散体は、例えば、分散剤(A)、有機溶剤(B)、および炭素材料(C)を含有する組成物を、分散処理を行い製造できる。なお、分散処理は、使用する材料の添加の順序や分割して添加する等、任意に調整し、複数回以上の多段階処理をしてもよい。
【0070】
分散処理に用いる分散装置は、例えば、超音波装置、ビーズミル、ニーダー、ジェットミル、2本ロールミル、3本ロールミル、プラネタリーミキサー、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター、ハイシアミキサー、ディスパー、ハンマーミル、振動ミル、パールミル、スパイクミル、アジテータミル、コボールミルまたは高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
【0071】
分散装置を用いた分散方式は、バッチ式分散、パス式分散、循環分散等があるが、いずれの方式でもよく、2つ以上の方式を組み合わせてもよい。バッチ式分散とは、配管などを用いずに、分散装置本体のみで分散を行う方法である。パス式分散とは、分散装置本体に、配管を介して被分散液を供給するタンクと、被分散液を受けるタンクとを備え、分散装置本体を通過(パス)させる分散方式である。また、循環式分散とは、分散装置本体を通過した被分散液を、被分散液を供給するタンクに戻して、循環させながら分散を行う方式である。いずれも処理時間を長くするほど分散が進むため、目的の分散状態になるまでパス、あるいは循環を繰り返せばよく、タンクの大きさや処理時間を変更すれば処理量を増やすことができる。分散工程は、凝集粒子の解砕、導電材の解れ、濡れ、安定化等が順次、あるいは同時に進行し、進行の仕方によって仕上がりの分散状態が異なることから、各分散工程における分散状態を各種評価方法を用いて管理することが好ましい。
【0072】
本明細書で分散剤(A)は、酸性基含有単量体単位(a)の酸性基が塩を形成していることが好ましい。塩は、課題を解決できる範囲内で酸性基の一部で形成すればよい。塩形成率は、1~95%が好ましく、5~85%がより好ましい。塩形成率は、以下の式であらわされる。
式 : 塩形成率=塩基のモル数/分散剤(A)中の酸性基含有単量体単位(a)モル数
【0073】
塩基は、無機塩基、無機金属塩、および有機塩基が挙げられる。無機塩基は水溶液にした際に、塩基性を示すものであり、無機金属塩は無機塩基以外の無機化合物である。塩基は、無機塩基、および有機塩基が好ましく、無機塩基がより好ましい。
【0074】
無機塩基および/または無機金属塩は、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を有する化合物であることが好ましい。
【0075】
無機塩基および/または無機金属塩は、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を有する化合物、もしくはアンモニアである。アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を有する化合物としては、例えば、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の、塩化物、水酸化物、アンモニウム塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、バナジウム酸塩、モリブデン酸塩、ニオブ酸塩、ならびにホウ酸塩等が挙げられる。また、これらの中でも容易にカチオンを供給できる面でアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物、水酸化物、炭酸塩、アルコキシドが好ましい。
【0076】
アルカリ金属の水酸化物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。また、
アルカリ土類金属の水酸化物は、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0077】
アルカリ金属の炭酸塩は、例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが挙げられる。
【0078】
アルカリ金属のアルコキシドは、例えば、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウム-n-ブトキシド、リチウム-t-ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム-n-ブトキシド、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム-n-ブトキシド、ナトリウム-t-ブトキシド等が挙げられる。
【0079】
アルカリ土類金属のアルコキシドは、例えば、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウム-n-ブトキシド、マグネシウム-t-ブトキシド等が挙げられる。
【0080】
これらの中でも水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リチウム-t-ブトキシド、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-t-ブトキシド、がより好ましい。
【0081】
有機塩基は、1級、2級、3級アルキルアミンが挙げられる。
【0082】
1級アルキルアミンは、プロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、オクチルアミン、2ーエチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、2-アミノエタノール、3-アミノプロパノール、3-エトキシプロピルアミン、3-ラウリルオキシプロピルアミン等が挙げられる。
【0083】
2級アルキルアミンは、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、N-メチルヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジステアリルアミン、2-メチルアミノエタノール等が挙げられる。
【0084】
3級アルキルアミンは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルオクチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール等が挙げられる。
【0085】
有機塩基は、分散性の観点から、2級アルキルアミン、3級アルキルアミンが好ましく、さらに好ましくは3級アミンである。
【0086】
有機塩基は、炭素数が1~30の有機塩基が好ましく、さらに好ましくは炭素数1~20の有機塩基であり、さらに好ましくは1~10の有機塩基である。
【0087】
有機塩基は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール等の塩基性窒素原子を含有する化合物を用いても良い。
【0088】
塩基の配合量は、分散性の観点から、分散剤100質量部に対して、1~50質量部が好ましい。
【0089】
本発明の分散体には、必要に応じて、バインダー樹脂、防腐剤、染料、顔料、体質顔料、染料、正極活物質、負極活物質、および、添加剤を添加しても良い。添加剤は、界面活性剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、表面調整剤、酸化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、安定剤、難燃剤、可塑剤、球状フィラー、帯電防止剤、導電助剤等が挙げられる。
【0090】
本発明の分散体は、さらに、バインダー樹脂を含有できる。バインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、珪素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;セルロース、ロジン、天然ゴム、;スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンのような共役系を持つ樹脂等が挙げられる。
【0091】
本発明の分散体は、さらに、帯電防止剤、界面活性剤を含有していても良い。
【0092】
帯電防止剤は得られる塗工物の表面にブリードすることで、導電性等の諸物性が発現しやすくなる。さらに、塗工物のレベリング剤として作用し、塗工物の外観が良好となる。帯電防止剤および界面活性剤は、主にアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤に分類される。
【0093】
アニオン性界面活性剤は、脂肪酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸スルホン酸塩、グリセロールボレート脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステルなどが挙げられ、具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等が挙げられる。
【0094】
カチオン性活性剤は、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩があり、具体的にはステアリルアミンアセテート、トリメチルヤシアンモニウムクロリド、トリメチル牛脂アンモニウムクロリド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロリド、メチルオレイジエタノールクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリルピリジニウムブロマイド、ラウリルピリジニウムジサルフェート、セチルピリジニウムブロマイド、4-アルキルメルカプトピリジン、ポリ(ビニルピリジン)-ドデシルブロマイド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0095】
ノニオン性活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルアリルエーテルなどが挙げられ、具体的にはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。両性界面活性剤は、アミノカルボン酸塩、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0096】
本発明の分散体は、二次電池用電極用途として用いる事が好ましい。二次電池の電極の合材層に用いる場合は、さらに、正極活物質または負極活物質を含有させることができる。活物質は
リチウムイオンを取り込む/放出する役割をするものであり、活物質を添加することで合剤層としての機能が発現する。
【0097】
分散体は中でも、正極活物質を含有し、二次電池の正極合剤層形成に使用すること好ましい。
【0098】
正極活物質は、電池用活物質として機能するものであれば、特に限定はされない。例えば、リチウムイオン二次電池に使用する場合には、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。
【0099】
具体的には、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2)、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixNiyCozMn1-y-zO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4)等のリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物粉末(例えばLixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4など)、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、バナジウム酸化物(例えばV2O5、V6O13)、酸化チタン、ニッケルコバルトアルミニウム三元系合金等の遷移金属酸化物粉末、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、TiS2、およびFeS等の遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。ただし、x、y、zは数であり、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<y+z<1である。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーを使用することもできる。これら正極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
【0100】
負極活物質は特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属Li、またはその合金、スズ合金、シリコン合金負極、LiXTiO2、LiXFe2O3、LiXFe3O4、LiXWO2等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン等の導電性高分子、ソフトカーボンやハードカーボンといったアモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が用いられる。ただし、xは数であり、0<x<1である。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
【0101】
本発明の塗工物は、基材および、分散体から形成されてなる層を備える。その製造法としては、分散体を基材に塗工した後、溶媒を揮発させることで塗膜を得ることができる。
【0102】
本発明の分散体の基材への塗布方法は、特に制限されないが、例えば、バーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷法、リバースコーティング、ダイティング、ダイコーティング、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、ディッピング、ディップコーティング、静電塗装法、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装等を用いる事ができる。
【0103】
分散体を基材に塗工した後、常温乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等により溶媒を揮発させることで塗工物を得ることができる。乾燥方法は、使用する溶媒の種類や基材の耐熱性等を考慮して適宜選択される。また、塗工後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行うことができる。なお、塗布量;下塗り、中塗り、上塗り等の塗装順;塗装膜厚;乾燥時間等は、導電性塗料の種類や適用する基材に応じて任意に設定することができる。層の厚さは1~500μmである。
【0104】
分散体は、特に限定されず様々な基材に塗工でき、用途に合わせて任意に選択する事ができる。また基材の形態について任意に選択する事ができる。例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、ニッケル、および、チタン等及びその表面処理物等の金属基材;セメント、石灰、石膏等のセメント系基材;ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル等のプラスチック系基材等を挙げることができる。基材の厚さは1~500μm程度である。
【0105】
本発明の塗工物の用途は、着色用途と非着色用途が挙げられる。着色用途は、例えば、着色剤、オフセットインキ、グラビアインキ、カラーフィルター用レジストインキ、インキジェットインキ等が挙げられる。非着色用途は、例えば、塗料、導電材料等が挙げられる。導電用途は、例えば、蓄電デバイス、帯電防止材、電子部品、電極、透明電極(ITO膜)代替、電磁波シールド、導電性インキ等が挙げられる。また、蓄電デバイスは、例えば、燃料電池、電気二重層キャパシタ用電極、リチウムイオンキャパシタ用電極等が挙げられる。帯電防止材は、例えば、プラスチックやゴム製品のICトレーや電子部品材料等が挙げられる。また、各種基材からなる、建材、建築物、構造物等の建築・建材分野の各種被塗物等を挙げることができる。
【0106】
本発明の電極は、導電性基材、ならびに分散体および活物質を含む合材組成物から形成されてなる合材層を備えることが好ましい。
導電性基材は、各種二次電池に適用する素材を選択すればよい。例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、およびステンレス等の金属、ならびにその合金が挙げられる。電極の形状は、例えば、平板の箔、メッシュ状等が挙げられる。電極層の表面は、粗面化や穴あき加工がされていてもよい。
電極層の厚みは、通常1~500μm程度である。
【0107】
合材層は、電極層上にスラリー状の合材組成物を塗工、乾燥して形成することが好ましい。合材層の厚さは1~300μm程度である。
【0108】
本発明の蓄電デバイスは、上記電極を備えることが好ましい。前記蓄電デバイスは、例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池;電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等ンのキャパシタ等が挙げられる。
【実施例0109】
以下、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0110】
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
重量平均分子量(Mw)は、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。装置としてHLC-8320GPC(東ソー社製)を用い、分離カラムを2本直列に繋ぎ、両方の充填剤には「TSK-GEL SUPER HZM-N」を2連でつなげて使用し、オーブン温度40℃、溶離液としてTHF溶液を用い、流速0.35ml/minで測定した。サンプルは0.5wt%の上記溶離液からなる溶剤に溶解し、20マイクロリットル注入した。分子量はいずれもポリスチレン換算値である。
【0111】
(不揮発分)
不揮発分は、試料1.0gをアルミ容器に秤量し、電気オーブンで200℃雰囲気下10分後の乾燥前後の質量比から算出した。
不揮発分%=(乾燥後の質量)/(乾燥前の質量)×100
【0112】
(製造例1)
(分散剤(A-1)の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、アクリル酸20.0部、ベヘニルアクリレート40.0部、2-ビニルピリジン40.0部、チオグリセロール2.2部、N-メチルピロリドン(NMP)102.2部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、および2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を(日油社製;V-65)1.0部を13分割し30分毎に6時間かけて滴下したのち、さらに1時間反応させた。その後、不揮発分測定にて転化率が98%超えたことを確認し、必要に応じてNMPの添加により不揮発分を50%に調製し、分散剤(A-1)を得た。分散剤(A-1)の重量平均分子量(Mw)は7,500であった。
【0113】
(製造例2~26)
(分散剤(A-2)~(A-24)、比較分散剤(H-1、H-2)の製造)
使用するモノマーを表1に従って変更した以外は、製造例1と同様にして、それぞれ分散剤(A-2)~(A-24)、(H-1)、(H-2)を製造した。各分散剤の重量平均分子量(Mw)は表1に示す通りであった。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
表中の略号は以下の通りである。
AA:アクリル酸
VA:ベヘニルアクリレート
ANP-300:日油社製「ANP-300」、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート
AN:アクリロニトリル
2VP:2-ビニルピリジン
FMA:フルフリルメタクリレート
THFMA:テトラヒドロフルフリルメタクリレート
RUVA-93:大塚化学社製「RUVA-093」、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール
St:スチレン
NMP:N-メチルピロリドン
【0118】
<分散体の作成>
[実施例1]
表2-1に示す組成に従い、ガラス瓶に100Tを4部、分散剤(A-1)を4部、NMPを92部仕込み、充分に混合溶解、または混合した後、1.25mmφジルコニアビーズをメディアとして、ペイントコンディショナーで6時間分散し、各分散体を得た。得られた分散体について、分散性、経時安定性の評価を行い、その評価結果を表2に示した。なお、塩形成率は以下の式を用いて算出される。
式 : 塩形成率=塩基のモル数/分散剤(A)中の酸性基含有単量体単位(a)モル数
【0119】
[実施例2~38、比較例1~7]
表2-1~表2-3に示す組成に従い、ガラス瓶に炭素材料、分散剤、添加剤、有機溶剤とを仕込み、実施例1と同様の方法で各分散体を得た。得られた分散体について、分散性、経時安定性の評価を行い、その評価結果を表2に示した。
【0120】
Li-400:デンカブラックLi-400(デンカ社製、アセチレンブラック、平均一次粒子径48nm、比表面積39m2/g)
10B:JENOTUBE10B JEIO社製、多層CNT、外径7~12nm、
100T:K-Nanos100T(Kumho Petrochemical社製、多層CNT、外径10~15nm)
#30:三菱化学社製、ファーネスブラック、平均一次粒子径30nm、比表面積74m2/g
NMP:N-メチルピロリドン
DMAE:ジメチルアミノエタノール
PAA:ポリアクリル酸、和光純薬工業社製、Mw:25,000
Poly2VP:ポリ2-ビニルピリジン、Polysciences,Inc.社製、Mw:40,000
PVP:日本触媒社製、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンK-30
PVA:クラレ社製、ポリビニルアルコール、KurarayPOVAL PVA403、不揮発分100%
MEK:メチルエチルケトン
PGMAc:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
IPA:イソプロピルアルコール
【0121】
(分散性の評価方法)
粘度の測定は、B型粘度計(東機産業社製「BL」)を用いて、分散体温度25℃にて、分散体をヘラで充分に撹拌した後、B型粘度計ローター回転速度60rpmにて直ちに行った。測定に使用したローターは、粘度が100mPa・s未満の場合はNo.1を、100以上500mPa・s未満の場合はNo.2を、500以上2000mPa・s未満の場合はNo.3を、2000以上10000mPa・s未満の場合はNo.4のものをそれぞれ用いた。低粘度であるほど分散性が良好であり、高粘度であるほど分散性が不良である。判定基準は以下の通りである。△以上が実用レベルである。結果を表2に示す。
◎:300mPa・s未満
〇:300mPa・s以上500mPa・s未満
○△:500以上3000mPa・s未満
△:3000以上5000mPa・s未満
×:5000mPa・s以上、沈降または分離
【0122】
(経時安定性の評価方法)
上記で得られた分散体を室温で1週間静置した後に、分散体の状態を目視で状態を観察および粘度を測定し、以下の評価基準で判定した。使用可能なレベルは△以上である。結果を表2に示す。
◎:300mPa・s未満
〇:300mPa・s以上500mPa・s未満
○△:500以上3000mPa・s未満
△:3000以上5000mPa・s未満
×:分散体がゲル化し、流動性がなく測定が不可であった
【0123】
【0124】
【0125】
【表2-3】
<導電性組成物の作成>
[実施例39]
作成した分散体1にバインダー樹脂としてPVDF(クレハ社製、ポリフッ化ビニリデン、KFポリマーW1100を分散時に使用した有機溶剤と同様の有機溶剤を用いて、不揮発分10%および不揮発分中の炭素材料濃度7%になるように各分散体に配合して導電性組成物1を調製した。得られた導電性組成物について、耐水性、導電性、成膜性の評価を行い、その評価結果を表3に示した。
【0126】
[実施例40~76、比較例8~13]
表3に示す組成に従い、分散体、バインダー樹脂、有機溶剤を仕込み、実施例39と同様の方法で各導電性組成物、比較導電性組成物を得た。得られた導電性組成物について、耐水性、導電性、成膜性の評価を行い、その評価結果を表3に示した。
【0127】
PVDF:ポリフッ化ビニリデン、クレハ社製、KFポリマーW1100
JONCRYL678:アクリル系樹脂、BASF社製、JONCRYL678
PVP:日本触媒社製、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンK-30
【0128】
(分散体を用いた導電率の測定)
導電性の測定は、導電性組成物を厚さ100μmのPETフィルムの表面に、バーコーターを用いて調製した分散体を塗工した後、130℃で30分間乾燥させて、厚さ5μmの塗工物を形成した。塗工物の表面抵抗値を抵抗率計を使用して測定した。抵抗率計は、表面抵抗値が1.0×107Ω/より大きい場合は、ハイレスタ(三菱ケミカルアナリテック社製)を使用し、1.0×107Ω/以下の場合は、ロレスタ(三菱ケミカルアナリテック社製)を使用し測定を行った。結果を表3に示す。△以上が実用レベルである。結果を表3に示す。
〇:1.0×104Ω/未満(良好)
○△:1.0×104以上1.0×107Ω/未満(使用可)
△:1.0×107以上1.0×1010Ω/未満(使用可)
×:1.0×1010Ω/以上、沈降または分離(不良)
【0129】
(成膜性の評価)
上記、分散体を用いた導電率の測定で使用した分散体の塗工物の表面状態について、以下の評価基準で判定した。使用可能なレベルは△以上である。結果を表3に示す。
〇: ムラがなく均一である。
〇△ : 一部でムラが発生している。
△ : 全面でムラが発生している。
× : 凝集物がバーコータに詰まり塗布できない。
【0130】
(耐水性の評価)
上記導電率の測定で使用した塗工物を25℃温水に2時間浸漬した後引き上げ、表面の水滴をふき取った後塗工物の状態を目視評価した。結果を表3に示す。△以上が実用レベルである。
判定基準
〇:塗工物に変化がない。
〇△:塗面に白化が見られるが24時間放置すると元の状態に戻った。
△:塗面に白化が見られるが48時間放置すると元の状態に戻った。
×:塗工物が著しく白化しており、軽くこすっただけで簡単に剥がれた。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
<合材組成物の作成>
[実施例77]
分散体1を用いて、バインダー樹脂にPVDF、活物質としてリチウムコバルト複合酸化物、分散時に使用した有機溶剤と同様の有機溶剤を用いて、不揮発分70%、不揮発分中の炭素材料濃度0.5%、不揮発分中のバインダー樹脂濃度1.5%になるように合材組成物1を調製した。得られた合材組成物について、電極評価を行い、その評価結果を表4に示した。
【0135】
[実施例78~110、比較例14~19]
表4に示す組成に従い、分散体、バインダー樹脂、有機溶剤とを仕込み、実施例77と同様の方法で各合材組成物、比較合材組成物を得た。得られた合材組成物について、電極評価を行い、その評価結果を表4に示した。
【0136】
PVDF:ポリフッ化ビニリデン、クレハ社製、KFポリマーW1100
【0137】
(活物質を添加した分散体を用いた電極評価)
電極評価は、合材組成物を厚さ20μmのアルミニウム箔の表面に、バーコーターを用いて調製した合材組成物を塗工した後、140℃で30分間乾燥させて、厚さ5μmの塗工物を形成した。塗工物の表面抵抗値を抵抗率計を使用して測定した。抵抗率計は、表面抵抗値が1.0×107Ω/より大きい場合は、ハイレスタ(三菱ケミカルアナリテック社製)を使用し、1.0×107Ω/以下の場合は、ロレスタ(三菱ケミカルアナリテック社製)を使用し測定を行った。結果を表2に示す。△以上が実用レベルである。結果を表4に示す。
〇:1.0×105Ω/未満(良好)
○△:1.0×105以上1.0×107Ω/未満(使用可)
△:1.0×107以上1.0×1010Ω/未満(使用可)
×:1.0×1010Ω/以上、沈降または分離(不良)
【0138】
【0139】
【0140】
表の結果から、本発明の分散体は、分散剤(A)に酸性基を持つ単量体(a)、および炭素数10~40の単量体単位(b)および、ニトリル基、および複素環のうち1種以上の部位を有する単量体単位(c)を含有する事で、優れた分散性、経時安定性、耐水性、導電性、及び成膜性を有することがわかった。一方、PVPを用いた場合、比較例7のように炭素材料(C)の含有量が少ない場合は分散可能だが、比較例5のように高濃度にする事で分散不可となる。
【0141】
そのため、本分散体は電極、電磁波シールド材、導電性材料、光学材料、電界放出ディスプレー(FED)用部材、水素を始めとする各種ガスの吸蔵材料、漆黒性材料等の分野に適した分散体、塗料等に使用されることが好ましい。