(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100299
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】減音装置及び減音システム
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20230711BHJP
F24F 7/04 20060101ALI20230711BHJP
F24F 13/24 20060101ALI20230711BHJP
F16L 55/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
F24F13/02 H
F24F7/04 B
F24F13/24 242
F24F13/24 245
F16L55/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000839
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506396582
【氏名又は名称】株式会社みやちゅう
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】冨▲高▼ 隆
(72)【発明者】
【氏名】洞田 浩文
(72)【発明者】
【氏名】市原 真希
(72)【発明者】
【氏名】吉川 優
(72)【発明者】
【氏名】教誓 勉
(72)【発明者】
【氏名】川崎 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】清水 悟
(72)【発明者】
【氏名】菊池 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】畠山 正樹
【テーマコード(参考)】
3H025
3L058
3L080
【Fターム(参考)】
3H025CA01
3H025CB03
3H025CB14
3H025CB15
3L058BB04
3L058BC04
3L080AE02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】換気性能が低下することを抑制可能な、減音装置及び減音システムを提供する。
【解決手段】減音装置11は、室内側S1と室外側S2を連通させる通気管4の中に設置され、通気管4を通過する空気の上流側に設けられる上流側壁部21と、下流側に設けられる下流側壁部22と、上流側壁部と下流側壁部とを接続し、通気管4の内面4fに対向して設けられる側壁部23とを備え、これらの壁部により囲繞される部分には内部空間25が形成され、上流側壁部は外周側から中央21cに向かうにつれて漸次上流側に突出するように形成され、側壁部には、側壁部と通気管の内面4fとの間に隙間100を形成する隙間形成機構24が設けられ、内部空間を上流側空間25Aと下流側空間25Bに区画する第1仕切板35を備え、複数の開口部28が、上流側壁部と下流側壁部の各々に設けられて、上流側空間と下流側空間のいずれか一方または双方に共鳴器が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物の室内側と室外側を連通させる通気管の中に設置されて、当該通気管を通過する音を減音する減音装置であって、
前記通気管を通過する空気の上流側に設けられる上流側壁部と、下流側に設けられる下流側壁部と、前記上流側壁部と前記下流側壁部とを接続し、前記通気管の内面に対向して設けられる側壁部と、を備え、
前記上流側壁部、前記下流側壁部、及び前記側壁部により囲繞される部分には内部空間が形成され、
前記上流側壁部は、外周側から中央に向かうにつれて、漸次前記上流側に突出するように形成され、
前記側壁部には、当該側壁部と前記通気管の前記内面との間に隙間を形成する隙間形成機構が設けられ、
前記内部空間を、前記上流側に位置する上流側空間と、前記下流側に位置する下流側空間に区画する第1仕切板を備え、
複数の開口部が、前記上流側壁部と前記下流側壁部の各々に設けられて、前記上流側空間と前記下流側空間のいずれか一方または双方に共鳴器が形成されている、減音装置。
【請求項2】
前記第1仕切板の位置を、前記上流側と前記下流側とを結ぶ方向に調整することができる、請求項1に記載の減音装置。
【請求項3】
前記上流側空間と前記下流側空間のいずれか一方または双方には、多孔質の部材が格納されている、請求項1または2に記載の減音装置。
【請求項4】
前記上流側空間と前記下流側空間のいずれか一方が、前記第1仕切板に接合された少なくとも1つの第2仕切板によって、複数の小空間に区画され、
前記複数の小空間の各々は、前記開口部により、外部と連通し、
前記複数の小空間の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されている、請求項1または2に記載の減音装置。
【請求項5】
前記上流側空間と前記下流側空間の他方には、多孔質の部材が格納されている、請求項4に記載の減音装置。
【請求項6】
前記上流側空間と前記下流側空間の双方が、前記第1仕切板に接合された少なくとも1つの第2仕切板によって、複数の小空間に区画され、
前記複数の小空間の各々は、前記開口部により、外部と連通し、
前記複数の小空間の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されている、請求項1または2に記載の減音装置。
【請求項7】
前記上流側壁部は、円錐状、または半球状に形成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の減音装置。
【請求項8】
前記隙間形成機構は、前記側壁部から前記通気管の前記内面に向けて突出するように設けられた複数の突出部であるか、または、前記側壁部と前記通気菅の前記内面との間に介装された介装材である、請求項1から7のいずれか一項に記載の減音装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項の減音装置を複数備え、
当該複数の減音装置の各々が、前記通気管内に、当該通気管の軸線方向に互いに離間するように設けられている、減音システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減音装置及び減音システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物には、室内外の換気を目的とした通気管が設けられている。
通気管としては、例えば、建築構造物の壁に形成された貫通孔に設置される、通気スリーブが挙げられる。通気スリーブの両端に、ベントキャップや給気レジスター、排気レジスターを設置することで、給気経路や排気経路が形成される。
あるいは、通気管として、例えば天井裏に設置されたファンを間に挟むように、室内側と室外側を連通させるように設けられた配管も挙げられ得る。
これらのような通気管を設けると、室内側と室外側との間で、通気管を通して音が伝わることがある。ファン等の設備機器が間に挟まれた場合には、設備機器の動作音が通気菅を通して伝わることもある。このような、通気管を通過する音を低減することが望まれている。
【0003】
これに対し、特許文献1には、通気スリーブ(貫通孔)内に貫通設置した外管と、外管内に挿入設置した、外周面に吸音層を巻回した内管と、を備える構成が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、外周面に吸音層が設けられた内管の内側は、室内室外を結ぶ方向に貫通する構造となっているため、減音効果は限定的なものとなる。このような構成で、減音効果をより高めるためには、吸音層の径方向の厚みを増大させればよいが、吸音層を厚くすると、通気スリーブ内の空気の流れが悪くなり、換気性能が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、減音性能を高めつつも、換気性能が低下することを抑制可能な、減音装置及び減音システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明の減音装置は、建築構造物の室内側と室外側を連通させる通気管の中に設置されて、当該通気管を通過する音を減音する減音装置であって、前記通気管を通過する空気の上流側に設けられる上流側壁部と、下流側に設けられる下流側壁部と、前記上流側壁部と前記下流側壁部とを接続し、前記通気管の内面に対向して設けられる側壁部と、を備え、前記上流側壁部、前記下流側壁部、及び前記側壁部により囲繞される部分には内部空間が形成され、前記上流側壁部は、外周側から中央に向かうにつれて、漸次前記上流側に突出するように形成され、前記側壁部には、当該側壁部と前記通気管の前記内面との間に隙間を形成する隙間形成機構が設けられ、前記内部空間を、前記上流側に位置する上流側空間と、前記下流側に位置する下流側空間に区画する第1仕切板を備え、複数の開口部が、前記上流側壁部と前記下流側壁部の各々に設けられて、前記上流側空間と前記下流側空間のいずれか一方または双方に共鳴器が形成されている。
このような構成によれば、側壁部は、通気管の内面との間に隙間を形成するように設けられている。このため、減音装置は、通気管の軸線方向から見て、隙間の部分を除いて、通気管の大部分を遮る構造となっている。これにより、音が通気管内を貫通することが抑制される。また、通気管内を通過する空気の流路は、通気管の軸方向に直交する断面における断面積が、減音装置を挟んだ前後の部分に対し、減音装置が設けられた部分で小さくなっている。つまり、通気管内を通過する空気の流れ方向において、空気の流路は、大面積から小面積となった後、再び大面積となるように、大きく変化する。この断面積の変化によって音の干渉が生じ、通気管を通過する音が減音される。
また、上流側壁部、下流側壁部、及び側壁部により囲繞されて形成された内部空間が、第1仕切板によって、上流側空間と下流側空間に区画されている。ここで、上流側壁部と下流側壁部の各々には、複数の開口部が設けられ、上流側空間と下流側空間のいずれか一方または双方に共鳴器が形成されている。このため、共鳴器の共鳴周波数に近い周波数を有する音は、共鳴現象により減音される。
これらの効果が相乗し、通気管を通過する音が、効果的に減音される。
また、上流側壁部は、外周側から中央に向かうにつれて、漸次上流側に突出するように形成されている。このため、通気管内を上流側壁部に向けて流れる空気は、上流側壁部の中央から外周側に向けて流れ、通気管の内面と側壁部の間に形成された隙間へ滑らかに誘導される。このため、上記のように通気管を大きく塞ぐ構造となっているにもかかわらず、圧力損失、すなわち空気が通気管を通過する際に失うエネルギー量が抑えられている。したがって、上記のような減音装置を設けたとしても、換気性能は、大きくは損なわれない。
その結果、減音性能を高めつつも、換気性能が低下することを抑制可能な、減音装置を提供できる。
【0007】
本発明の一態様においては、前記第1仕切板の位置を、前記上流側と前記下流側とを結ぶ方向に調整することができる。
上記のように形成された共鳴器の共鳴周波数は、開口部の面積や開口率、開口部が設けられた上流側壁部または下流側壁部の板厚、上流側壁部または下流側壁部から第1仕切板までの奥行等の要素に依存して変化する。特に、第1仕切板までの奥行を大きくすれば、共鳴周波数は低くなり、小さくすれば、共鳴周波数は高くなる。
ここで、上記のような構成によれば、第1仕切板の位置を、上流側と下流側とを結ぶ方向に調整することができる。
例えば、第1仕切板の位置を上流側へと調整すれば、上流側壁部と第1仕切板の間の距離が小さくなるので、上流側空間に共鳴器が形成された場合においては、その共鳴周波数は高くなる。同時に、下流側壁部と第1仕切板の間の距離が大きくなるので、下流側空間に共鳴器が形成された場合においては、その共鳴周波数は低くなる。
逆に、第1仕切板の位置を下流側へと調整すれば、上流側壁部と第1仕切板の間の距離が大きくなるので、上流側空間に共鳴器が形成された場合においては、その共鳴周波数は低くなる。同時に、下流側壁部と第1仕切板の間の距離が小さくなるので、下流側空間に共鳴器が形成された場合においては、その共鳴周波数は高くなる。
このようにして、共鳴周波数を調整することができるので、減音装置が設置される現場で特に大きな音の周波数に、共鳴器の共鳴周波数をあわせて、当該周波数を有する音を効率的に減音することができる。このため、減音性能をより高めることができる。
【0008】
本発明の別の態様においては、前記上流側空間と前記下流側空間のいずれか一方または双方には、多孔質の部材が格納されている。
多孔質の部材は、広い周波数帯域の音を減音することが可能な吸音材として作用する。
したがって、上記のような構成によれば、共鳴現象によって、特定の、共鳴器の共鳴周波数に近い周波数の音を低減するとともに、多孔質の部材の吸音効果によって、広い周波数帯域の音を低減することができるので、減音性能を、更に効果的に、高めることができる。
【0009】
本発明の別の態様においては、前記上流側空間と前記下流側空間のいずれか一方が、前記第1仕切板に接合された少なくとも1つの第2仕切板によって、複数の小空間に区画され、前記複数の小空間の各々は、前記開口部により、外部と連通し、前記複数の小空間の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されている。
上記のような構成によれば、上流側空間と下流側空間のいずれか一方が複数の小空間に区画され、複数の小空間の各々は、開口部により外部と連通し、複数の小空間の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されている。このため、共鳴現象により減音される対象となる共鳴周波数を複数とすることができるので、広い周波数範囲にわたる音が減音され得る。したがって、減音性能をより高めることができる。
【0010】
本発明の別の態様においては、前記上流側空間と前記下流側空間の他方には、多孔質の部材が格納されている。
このような構成によれば、多孔質の部材の吸音効果により、減音性能を、更に効果的に、高めることができる。
【0011】
本発明の別の態様においては、前記上流側空間と前記下流側空間の双方が、前記第1仕切板に接合された少なくとも1つの第2仕切板によって、複数の小空間に区画され、前記複数の小空間の各々は、前記開口部により、外部と連通し、前記複数の小空間の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されている。
上記のような構成によれば、上流側空間と下流側空間の双方が複数の小空間に区画され、複数の小空間の各々は、開口部により外部と連通し、複数の小空間の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されている。このため、共鳴現象により減音される対象となる共鳴周波数を複数とすることができるので、広い周波数範囲にわたる音が減音され得る。したがって、減音性能をより高めることができる。
【0012】
本発明の別の態様においては、前記上流側壁部が、円錐状、または半球状に形成されている。
このような構成によれば、通気管内を上流側壁部に向けて流れる空気は、上流側壁部の中央から外周側に向けて、更には側壁部と通気管の内面との間の隙間へと、円滑に流れ、圧力損失が大きくなるのを効果的に抑制可能である。
【0013】
本発明の別の態様においては、前記隙間形成機構は、前記側壁部から前記通気管の前記内面に向けて突出するように設けられた複数の突出部であるか、または、前記側壁部と前記通気菅の前記内面との間に介装された介装材である。
このような構成によれば、減音装置の側壁部と通気管の内面との間に、隙間を、適切に形成することができる。
【0014】
本発明の減音システムは、上記したような減音装置を複数備え、当該複数の減音装置の各々が、前記通気管内に、当該通気管の軸線方向に互いに離間するように設けられている。
このような構成によれば、既に説明したような、減音装置による減音効果を、相乗的に、奏することができる。
特に、通気管内を通過する空気の流路の断面積が変化する回数が多くなるため、更に効率的に、減音性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、減音性能を高めつつも、換気性能が低下することを抑制可能な、減音装置及び減音システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムを備えた通気管が設けられた建築構造物の壁を示す断面図である。
【
図4】上記減音装置の上流側壁部を軸線方向から見た図である。
【
図5】上記減音装置の下流側壁部を軸線方向から見た図である。
【
図6】(a)は、上記減音装置において、第1仕切板を下流側へと調整した場合の断面図であり、(b)は、上流側へと調整した場合の断面図である。
【
図7】本発明の実施形態の第1変形例に係る減音装置において、上流側壁部を軸線方向から見た図である。
【
図9】本発明の実施形態の第2変形例に係る減音装置において、上流側壁部を軸線方向から見た図である。
【
図10】
図9の減音装置における、第1仕切板と第2仕切板の斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態の第3変形例に係る減音装置において、上流側壁部を軸線方向から見た図である。
【
図12】本発明の実施形態の第9変形例に係る減音装置において、下流側壁部を軸線方向から見た図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る減音システムの第11変形例の構成を示す断面図である。
【
図14】上記第11変形例に係る減音システムの減音装置を軸線方向から見た図である。
【
図15】本発明に係る減音装置を設けた場合(実施例1)と、減音装置を設けない場合(比較例1)、及び減音装置の上流側壁部と下流側壁部に開口部を設けない場合(比較例2)の比較結果を、1/1オクターブバンド中心周波数ごとに示したグラフである。
【
図16】
図15の結果を1/3オクターブバンド中心周波数ごとに示したグラフである。
【
図17】他の減音装置を設けた場合(実施例2)と、上記の比較例1、比較例2)の比較結果を、1/3オクターブバンド中心周波数ごとに示したグラフである。
【
図18】更に他の減音装置を設けた場合(実施例3)と、上記の比較例1、比較例2)の比較結果を、1/3オクターブバンド中心周波数ごとに示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明による減音装置、減音システムを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムを備えた通気管が設けられた建築構造物の壁を示す断面図を
図1に示す。
図2は、
図1の拡大図である。
図3は、
図1の減音装置の断面図である。
図4は、
図1の減音装置の上流側壁部を軸線方向から見た図である。
図5は、
図1の減音装置の下流側壁部を軸線方向から見た図である。
図1、
図2に示されるように、建築構造物の壁1に、換気用の通気管4が設けられている。本実施形態においては、通気管4は、通気スリーブであり、壁1を貫通して室内側S1と室外側S2とを連通する貫通孔2内に設けられている。通気管4は、例えば円筒状で、室内側S1と室外側S2とを結ぶ軸線方向Daに沿って延び、横方向に延在するように設けられている。通気管4は、室内側S1と室外側S2とを連通させ、これらの間で空気の換気を行う。本実施形態では、通気管4は、例えば、室外側S2から室内側S1に給気を行う給気ダクトとして用いられる。
【0018】
このような通気管4内に、減音システム10が設けられている。減音システム10は、複数の減音装置11を備えている。本実施形態では、減音システム10は、例えば2つの減音装置11を備えている。本実施形態においては、これら2つの減音装置11は同一のものである。これらの減音装置11は、通気管4内に、通気管4の軸線方向Daに間隔を空けて、互いに離間するように配置されている。各減音装置11は、主に、通気管4を通過する音を減音する。各減音装置11は、減音装置本体20を備えている。
【0019】
図2、
図3に示すように、減音装置本体20は、上流側壁部21と、下流側壁部22と、側壁部23と、隙間形成機構24と、を一体に備えている。
上流側壁部21は、通気管4を通過する空気の流れ方向Fの上流側に設けられる。上流側壁部21は、外周側から中央21cに向かうにつれて、その外形が漸次縮小している。上流側壁部21は、外周側から中央21cに向かうにつれて、漸次上流側に突出するように形成されている。本実施形態では、上流側壁部21は、円錐状に形成されている。
【0020】
下流側壁部22は、通気管4を通過する空気の流れ方向Fの下流側に設けられている。下流側壁部22の外周部22aは、通気管4の軸線方向Daに直交する面に沿って形成されている。下流側壁部22の内周部には、凹部26が形成されている。凹部26は、その中央部が上流側に凹むように形成されている。凹部26の中心には、軸線方向Daに直交する面に沿うように、中央壁部22bが形成されている。
下流側壁部22には、筒体27が設けられている。筒体27は、凹部26の中央壁部22bから、流れ方向Fの下流側に突出するように延びている。筒体27は、円筒状で、その軸線方向が通気管4の軸線方向Daと一致するように設けられている。
【0021】
側壁部23は、減音装置本体20の外周部に設けられている。側壁部23は、通気管4の軸線方向Daに延びる円筒状で、上流側壁部21の外周部と下流側壁部22の外周部とを接続している。側壁部23の外径は、通気管4の内径よりも小さく形成されている。側壁部23は、通気管4の内面4fに対し、通気管4の径方向に間隔をあけて対向して設けられる。これにより、側壁部23と通気管4の内面4fとの間には、軸線方向Daから見て環状の隙間100が形成されている。
【0022】
上流側壁部21の外周部と、側壁部23の流れ方向Fの上流側の端部とは、所定の曲率で湾曲した上流側湾曲面23vを介して接続されている。側壁部23の流れ方向Fの下流側の端部と下流側壁部22の外周部とは、所定の曲率で湾曲した下流側湾曲面23wを介して接続されている。このような上流側湾曲面23v、下流側湾曲面23wによって、減音装置本体20に対して流れ方向Fの上流側から隙間100に流れ込む空気の流れ、隙間100から流れ方向Fの下流側に流出する空気の流れに剥離等が生じにくくなり、隙間100の周辺における流れを円滑なものとすることができる。
【0023】
減音装置本体20は、中空構造とされ、上流側壁部21、下流側壁部22、及び側壁部23により囲繞される部分には内部空間25が形成されている。
減音装置11は、第1仕切板35を備えている。第1仕切板35は、側壁部23の内径と略同等の外径を有するように、円形に形成された板状の部材である。第1仕切板35には、外縁部から垂直に立ち上がるように、フランジ35aが形成されている。第1仕切板35は、内部空間25内に、軸線方向Daに直交するように設けられている。フランジ35aの径方向外側の表面は、側壁部23の内面23f(
図3参照)と当接している。これにより、第1仕切板35は、内部空間25を、上流側に位置する上流側空間25Aと、下流側に位置する下流側空間25Bに区画する。
【0024】
上流側壁部21と下流側壁部22の双方に、複数の開口部28が設けられている。
上流側壁部21においては、
図4に示されるように、開口部28は円形で、上流側壁部21の中央21cの径方向外側に、周方向に等間隔をあけて複数形成されている。本実施形態では、開口部28は、中央21cを中心とした例えば3つの同心円の各々に沿って、周方向に等しい間隔をあけて設けられている。各開口部28は、上流側壁部21を軸線方向Daに貫通して形成されている。
【0025】
本実施形態においては、上流側空間25Aに、共鳴器が形成されている。より詳細には、減音装置11の上流側空間25Aを形成する部分である、上流側壁部21、第1仕切板35、及び上流側壁部21と第1仕切板35の間に位置する側壁部23の上流側の部分の各々を壁部として、上流側空間25Aを一つの容器とみなしたときに、容器の一部に複数の開口部28が設けられた態様の共鳴器として作用するように、減音装置11の形状や大きさ、第1仕切板35の設置位置等が決定されている。
一般に、共鳴器の共鳴周波数f
0は、板厚がlの穿孔板(上流側壁部21)に対して奥行(穿孔板から容器の底部となる第1仕切板35までの距離)がLの背後空気層を設けた場合に生じる共鳴現象と同様の扱いとなり、穿孔板の開口率をP、音速をc、δを開口端補正とすると、次式(1)により計算される。
【数1】
ここで、上流側壁部21の表面積をS、開口部28の数をn、1つの開口部28の面積をsとすると、開口率Pは、次式(2)により、板(上流側壁部21)の面積に対する開口部28の面積の総計の割合として計算される。
【数2】
このように、共鳴器の共鳴周波数は、背後空気層の奥行Lや、開口率Pによって、異なる値をとり得る。
【0026】
本実施形態における減音システム10や減音装置11が設けられる環境においては、例えば室外側S2における特定の騒音が室内側S1に伝達することがあり得る。このような場合には、ある特定の周波数が卓越して、騒音となっていることが多い。
あるいは、通気管4の長さに対応して共鳴現象が生じ、特定の周波数の遮音性能が低下することもある。例えば、通気スリーブの長さが、一般的な住宅における壁の厚さである200mmである場合には、500Hzの周波数帯域で、共鳴現象による遮音性能低下が生じやすく、当該周波数帯域の音が通気スリーブを介して室内側S1へと侵入しやすい。
このように、特に室内側S1へと侵入しやすい音の周波数が特定されていれば、背後空気層の奥行Lや開口率Pを調整して、共鳴器の共鳴周波数f0が当該周波数と一致するように設計することにより、当該周波数の音を効率的に減音することが可能となる。
【0027】
このため、本実施形態における減音装置11は、第1仕切板35の位置を、上流側と下流側とを結ぶ方向、すなわち軸線方向Daに調整することができるように、構成されている。
図6(a)は、上記減音装置において、第1仕切板を下流側へと調整した場合の断面図であり、
図6(b)は、上流側へと調整した場合の断面図である。
例えば、第1仕切板35を、
図3に位置P1として示される位置から、
図6(a)に位置P2と示される位置へと、下流側に、すなわち下流側壁部22へ向かう方向に移動させると、上流側壁部21から第1仕切板35までの距離(奥行)が大きくなって背後空気層すなわち上流側空間25Aの容積が大きくなる。すると、上式(1)により、共鳴周波数f
0が低くなる。
逆に、第1仕切板35を、
図3に位置P1として示される位置から、
図6(b)に位置P3と示される位置へと、上流側に、すなわち上流側壁部21へ向かう方向に移動させると、上流側壁部21から第1仕切板35までの距離(奥行)が小さくなって背後空気層すなわち上流側空間25Aの容積が小さくなる。すると、上式(1)により、共鳴周波数f
0が高くなる。
このような第1仕切板35の移動は、例えば第1仕切板35に設けられた図示されない把持部を把持して、第1仕切板35を上流側壁部21に接近または離間するようにスライドさせることにより、実現し得る。
【0028】
共鳴周波数f0は、また、開口率Pを変化させることによっても調整することができる。上式(1)によると、開口率Pを大きくすると共鳴周波数f0は高くなり、開口率Pを小さくすると共鳴周波数f0は低くなる。
したがって、例えば、開口部28を予め多く設けて初期状態における共鳴周波数f0を高い状態としておき、減音装置11を設置する環境において騒音として卓越する周波数が初期状態における共鳴周波数より低ければ、開口部28を適切な分量だけ塞いで開口率Pを小さくして、共鳴周波数f0を下げることで、共鳴周波数f0を調整することができる。
この場合において、開口部28は、テープを上流側壁部21の表面に貼ったり、樹脂等により開口部28と略同形状に形成された塞ぎ材を開口部28挿入したりすることで、塞ぐことができる。
【0029】
下流側壁部22においても、
図5に示されるように、開口部28は円形で、下流側壁部22の中央壁部22bの径方向外側に、周方向に等間隔をあけて複数形成されている。本実施形態では、開口部28は、中央壁部22bを中心とした例えば3つの同心円の各々に沿って、周方向に等しい間隔をあけて設けられている。各開口部28は、下流側壁部22を軸線方向Daに貫通して形成されている。
下流側空間25Bには、吸音材30が格納されている。本実施形態においては、吸音材30は、例えば、粒状に形成された多数の、ゼオライト、パーライト、木炭等の、多孔質の部材である。
吸音材30として、粒状に形成された多孔質の部材に替えて、例えば所定の厚さに加工されたグラスウールを用いても構わない。ただし、この場合においては、第1仕切板35の位置を調整するに際し、吸音材30の厚さが調整後の第1仕切板35と下流側壁部22の間の距離に一致するように、吸音材30を適宜、加工して、厚さを調整する必要がある。これに対して、吸音材30として、粒状に形成された多孔質の部材を使用する場合においては、第1仕切板35の位置を調整した後に、適切な量の吸音材30を下流側空間25Bに封入すればよいので、第1仕切板35の位置調整作業と、その後の吸音材30の設置作業が容易となる。
吸音材30として、ゼオライト、パーライト、木炭等を用いることで、吸音以外にも、消臭、調湿といった効果が得られる。
【0030】
下流側壁部22の内側には、下流側壁部22の全ての開口部28を覆うように、内貼材31が接合されている。内貼材31は、下流側壁部22の開口部28から吸音材30が脱落するのを抑制する。また、内貼材31は、下流側壁部22の開口部28を介して下流側空間25B内に空気や音が侵入しやすくするために、通気性を有する素材により形成されている。本実施形態において、内貼材31は、例えば不織布によって形成されている。
【0031】
本実施形態においては、減音装置11の下流側空間25Bを形成する部分には、共鳴器が形成されていない。その代わり、下流側空間25Bには上記のように吸音材30が設けられ、吸音材30の吸音効果によって、通気管4を通過する音が減音される。
吸音材30には、より多くの空気や音が、接触するような構造となっているのが望ましい。したがって、本実施形態においては、下流側空間25B側は、上式(1)を考慮せず、できるだけ多くの開口部28を設けて、開口率、すなわち下流側壁部22の面積に対する開口部28の面積の総計の割合ができるだけ大きくなるように構成されている。その結果として、上記のように、下流側空間25B側には、共鳴器は形成されていない。
例えば、下流側壁部22においては、開口部28は、上流側壁部21よりも、周方向における互いの離間間隔が小さくなり、開口部28の数が多くなるように設けられている。また、下流側壁部22においては、開口部28は、直径が、上流側壁部21における開口部28の直径よりも大きくなるように、形成されている。
【0032】
上記のように、本実施形態においては、下流側空間25Bには、共鳴器として共鳴現象を起こすことによる減音効果を期待していない。このため、第1仕切板35の位置は、基本的には、上流側空間25Aに形成される共鳴器の共鳴周波数のみを考慮して、式(1)により決定されればよい。
しかし、多孔質の部材は、一般に、周波数が高くなるにしたがって吸音率が高くなるような、吸音特性を有している。また、吸音材30の厚さ(軸線方向Daにおける長さ)が大きくなるにつれて、吸音率が高くなる周波数の下限が低くなる。したがって、吸音材30の厚さを大きくし、吸音材30の体積を大きくすることによって、広い周波数帯域の音を低減することが可能となる。
このため、より好ましくは、上流側空間25Aに形成される共鳴器の共鳴特性と、下流側空間25Bに設けられる吸音材30による吸音特性の双方が、バランスよく適切な性能を発揮できるような位置に、第1仕切板35を設けるのが望ましい。このようにすれば、共鳴器の共鳴周波数に近い周波数を有する音を適切に減音しつつ、それ以外の広範囲の帯域の周波数を有する音をも、減音する構成とすることができる。
【0033】
側壁部23には、隙間形成機構24が設けられている。本実施形態においては、隙間形成機構24は、複数の突出部24Aである。複数の突出部24Aは、側壁部23の周方向に間隔をあけた3箇所以上に形成されている。本実施形態では、突出部24Aは、側壁部23の周方向に等間隔をあけて、計4箇所に形成されている。各突出部24Aは、板状に形成されるとともに、通気管4の軸線方向Daと平行となるように、側壁部23から径方向の外側に立ち上がって設けられている。
図2に示すように、各突出部24Aは、側壁部23から通気管4の内面4fに向けて突出している。突出部24Aの径方向外側(通気管4側)の端辺24sは、少なくともその一部が通気管4の内面4fに突き当たっている。これら複数の突出部24Aは、側壁部23と通気管4の内面4fとの間に隙間100を形成する。
通気管4の流路断面積に対する、隙間100の流路断面積の割合、すなわち流路開口率は、16~22%となるのが好ましく、19%とするのが最も好ましい。
【0034】
突出部24Aの端辺24sは、側壁部23からの立上り高さが、流れ方向Fの上流側と下流側とで異なるように形成されている。本実施形態において、突出部24Aは、流れ方向Fの下流側から上流側に向かって、端辺24sの側壁部23からの立ち上がり高さが漸次小さくなるよう、テーパー状に形成されている。これにより、突出部24Aの端辺24sは、流れ方向Fの上流側で、通気管4の内面4fとの間に間隔を隔てている。
【0035】
通気管4の室内側S1の端部には、レジスター5が装着されている。レジスター5は、レジスター本体51と、レジスター開閉部52と、を備えている。
レジスター本体51は、通気管4の室内側S1の端部の内周面に沿うように挿入された筒部51aを有している。レジスター本体51は、筒部51aの径方向内側に、シャフト支持材53を一体に有している。シャフト支持材53は、その中央部に、後述するレジスター本体51のシャフト56が挿通されるシャフト挿通孔53hを有している。シャフト支持材53は、周方向に間隔をあけて複数本が設けられたステー53sを有している。これら複数本のステー53sは、径方向外側に延びて筒部51aに接合されている。シャフト支持材53は、通気管4内において、流れ方向Fの下流側に配置された減音装置11Bの下流側壁部22に突き当てて配置されている。また、レジスター本体51は、壁1の室内側S1に、枠部54を一体に有している。枠部54は、軸線方向Daから見て環状で、貫通孔2の径方向外側で、壁1に沿うように設けられている。
【0036】
レジスター開閉部52は、シャッター55と、シャフト56と、を一体に備えている。シャッター55は、軸線方向Daに直交する面に沿って配置された板状で、枠部54の内側に配置されている。シャフト56は、シャッター55の中央部から軸線方向Daに沿って、流れ方向Fの上流側に突出するように設けられている。シャフト56は、シャフト挿通孔53hに挿入され、軸線方向Daに沿って移動可能に設けられている。これにより、シャッター55は、枠部54の内側で、シャフト56とともに軸線方向Daに移動可能とされている。シャッター55は、枠部54の内側に配置された状態から、枠部54よりも室内側S1に出没可能とされている。これにより、シャッター55の外周縁と、枠部54の内周縁との間隔が増減し、通気管4を通して室外側S2から室内側S1に導入する空気の量(給気量)を調整可能となっている。シャッター55が枠部54の内側に位置した状態で、シャフト56の流れ方向Fの上流側の端部は、流れ方向Fの下流側に配置された減音装置11Bの下流側壁部22に設けられた筒体27に挿入される。
【0037】
通気管4の室外側S2の端部には、ベントキャップ6が装着されている。ベントキャップ6は、キャップ本体61と、管挿入部62と、を一体に備えている。
キャップ本体61は、複数のルーバー61aを有している。管挿入部62は、キャップ本体61と一体に設けられている。管挿入部62は、筒状で、通気管4の室外側S2の端部の内周面に沿うように挿入されている。管挿入部62は、通気管4内で流れ方向Fの上流側に配置された減音装置11Aの突出部24Aの端辺24sの流れ方向Fの上流側の端部と、通気管4の内面4fとの間に挿入されている。
【0038】
上記のような減音装置11及び減音システム10に対し、室外側S2から通気管4内に空気が通過しようとすると、空気は、通気管4内で流れ方向Fの上流側に配置された減音装置11Aの、上流側壁部21に突き当たる。
上流側壁部21は、外周側から中央21cに向かうにつれて、漸次上流側に突出するように、円錐状に形成されているので、空気は上流側壁部21の中央21cから外周側に向けて流れ、通気管4の内面4fと側壁部23の間に形成された隙間100へ滑らかに誘導される。
ここで、上流側壁部21の外周部と、側壁部23の流れ方向Fの上流側の端部とは、所定の曲率で湾曲した上流側湾曲面23vを介して接続されている。したがって、空気が隙間100に流れ込む際に、空気の乱れが生じにくい。
空気は、隙間100を通った後、減音装置11Aの後方へと流れ込む。
ここで、側壁部23の流れ方向Fの下流側の端部と下流側壁部22の外周部とは、所定の曲率で湾曲した下流側湾曲面23wを介して接続されている。したがって、空気が隙間100から流れ出る際に、空気の乱れが生じにくい。
【0039】
減音装置11Aの後方へと流れ込んだ空気は、次に、流れ方向Fの下流側に配置された減音装置11Bの、上流側壁部21に突き当たる。
減音装置11Bは、減音装置11Aと同等の構成となっているため、上記の減音装置11Aに関する説明と同様に、空気は減音装置11Bの後方へと流れる。
減音装置11Bの後方へと流れた空気は、室内側S1へと給気される。
【0040】
ここで、室外側S2から室内側S1へと通気管4内を音が通過する場合を考える。
減音装置11は、通気管4の軸線方向Daから見て、隙間100の部分を除いて、通気管4の大部分を遮る構造となっている。これにより、音が通気管4内を貫通することが抑制される。
また、減音装置11の内側には、内部空間25が形成されており、この内部空間25を形成する壁部のひとつである上流側壁部21には、開口部28が設けられている。更には、減音装置11の内部には、第1仕切板35が設けられており、上流側壁部21、第1仕切板35、及び上流側壁部21と第1仕切板35の間に位置する側壁部23の上流側の部分により、共鳴器が形成されている。この共鳴器によって、通気管4内を通過しようとする、特に共鳴器の共鳴周波数に近い周波数の音は、減音される。
また、内部空間25には、粒状に形成された多孔質の部材である吸音材30が格納されている。多孔質の部材は、その吸音特性により、広い周波数帯域の音を低減することが可能であるため、共鳴器の共鳴周波数とは異なる周波数の音も、適度に減音される。
更には、通気管4内には、2個の減音装置11A、11Bが設けられている。これにより、通気管4内を通過する空気の流れ方向、すなわち通気管4の軸線方向Daにおいて、空気の流路の断面積は、大面積から、減音装置11Aが設けられている部分において小面積となった後、再び大面積となり、更にその後、減音装置11Bが設けられている部分において小面積となった後に大面積となるように、複数回にわたり、大きく変化する。この断面積の変化によって音の干渉が生じ、通気管4を通過する音が減音される。
【0041】
上述したような減音装置11によれば、減音装置11は、建築構造物の室内側S1と室外側S2を連通させる通気管4の中に設置されて、通気管4を通過する音を減音する減音装置11であって、通気管4を通過する空気の上流側に設けられる上流側壁部21と、下流側に設けられる下流側壁部22と、上流側壁部21と下流側壁部22とを接続し、通気管4の内面4fに対向して設けられる側壁部23と、を備え、上流側壁部21、下流側壁部22、及び側壁部23により囲繞される部分には内部空間25が形成され、上流側壁部21は、外周側から中央21cに向かうにつれて、漸次上流側に突出するように形成され、側壁部23には、側壁部23と通気管4の内面4fとの間に隙間100を形成する隙間形成機構24が設けられ、内部空間25を、上流側に位置する上流側空間25Aと、下流側に位置する下流側空間25Bに区画する第1仕切板35を備え、複数の開口部28が、上流側壁部25Aと下流側壁部25Bの各々に設けられて、上流側空間25Aに共鳴器が形成されている。
このような構成によれば、側壁部23は、通気管4の内面4fとの間に隙間100を形成するように設けられている。このため、減音装置11は、通気管4の軸線方向Daから見て、隙間100の部分を除いて、通気管4の大部分を遮る構造となっている。これにより、音が通気管4内を貫通することが抑制される。また、通気管4内を通過する空気の流路は、通気管4の軸方向に直交する断面における断面積が、減音装置11を挟んだ前後の部分(通気管4の内側に減音装置11が設けられていない部分)に対し、減音装置11が設けられた部分(隙間100の部分)で小さくなっている。つまり、通気管4内を通過する空気の流れ方向において、空気の流路は、大面積から小面積となった後、再び大面積となるように、大きく変化する。この断面積の変化によって音の干渉が生じ、通気管4を通過する音が減音される。
また、上流側壁部21、下流側壁部22、及び側壁部23により囲繞されて形成された内部空間25が、第1仕切板35によって、上流側空間25Aと下流側空間25Bに区画されている。ここで、上流側壁部21と下流側壁部22の各々には、複数の開口部28が設けられ、特に本実施形態においては、上流側空間25Aに共鳴器が形成されている。このため、共鳴器の共鳴周波数に近い周波数を有する音は、共鳴現象により減音される。
これらの効果が相乗し、通気管4を通過する音が、効果的に減音される。
また、上流側壁部21は、外周側から中央21cに向かうにつれて、漸次上流側に突出するように形成されている。このため、通気管4内を上流側壁部21に向けて流れる空気は、上流側壁部21の中央21cから外周側に向けて流れ、通気管4の内面4fと側壁部23の間に形成された隙間100へ滑らかに誘導される。このため、上記のように通気管4を大きく塞ぐ構造となっているにもかかわらず、圧力損失、すなわち空気が通気管4を通過する際に失うエネルギー量が抑えられている。したがって、上記のような減音装置11を設けたとしても、換気性能は、大きくは損なわれない。
その結果、減音性能を高めつつも、換気性能が低下することを抑制可能な、減音装置11を提供できる。
【0042】
上記のように、減音装置11は、通気管4の大部分を遮る構造となっているため、室外側S2から例えば雨などに起因して水が侵入してきた場合であっても、水の室内側S1への通過を抑制することができる。
【0043】
また、第1仕切板の位置を、上流側と下流側とを結ぶ方向(軸線方向)Daに調整することができる。
上記のように形成された共鳴器の共鳴周波数は、開口部の面積や開口率、開口部が設けられた上流側壁部21の板厚、上流側壁部21から第1仕切板35までの奥行等の要素に依存して変化する。特に、板から第1仕切板35までの奥行を大きくすれば、共鳴周波数は低くなり、小さくすれば、共鳴周波数は高くなる。
ここで、上記のような構成によれば、第1仕切板35の位置を、上流側と下流側とを結ぶ方向に調整することができる。
例えば、第1仕切板35の位置を上流側へと調整すれば、上流側壁部21と第1仕切板35の間の距離が小さくなるので、上流側空間25Aに形成された共鳴器の共鳴周波数は高くなる。
逆に、第1仕切板の位置35を下流側へと調整すれば、上流側壁部21と第1仕切板35の間の距離が大きくなるので、上流側空間25Aに形成された共鳴器の共鳴周波数は低くなる。
このようにして、共鳴周波数を調整することができるので、減音装置11が設置される現場で特に大きな音の周波数に、共鳴器の共鳴周波数をあわせて、当該周波数を有する音を効率的に減音することができる。このため、減音性能をより高めることができる。
【0044】
また、下流側空間25Bには、多孔質の部材(吸音材30)が格納されている。
多孔質の部材は、広い周波数帯域の音を減音することが可能な吸音材30として作用する。
したがって、上記のような構成によれば、共鳴現象によって、特定の、共鳴器の共鳴周波数に近い周波数の音を低減するとともに、多孔質の部材の吸音効果によって、広い周波数帯域の音を低減することができるので、減音性能を、更に効果的に、高めることができる。
【0045】
また、多孔質の部材は、粒状に形成されている。
このような構成によれば、第1仕切板35の位置の調整、及び第1仕切板35の位置を調整した後の、多孔質の部材の充填が容易である。
【0046】
また、上流側壁部21が、円錐状に形成されている。
このような構成によれば、通気管4内を上流側壁部21に向けて流れる空気は、上流側壁部21の中央21cから外周側に向けて、更には側壁部23と通気管4の内面4fとの間の隙間100へと、円滑に流れ、圧力損失が大きくなるのを効果的に抑制可能である。
【0047】
また、隙間形成機構24は、側壁部23から通気管4の内面4fに向けて突出するように設けられた複数の突出部24Aである。
このような構成によれば、減音装置11の側壁部23と通気管4の内面4fとの間に、隙間100を、適切に形成することができる。
【0048】
上述したような減音システム10によれば、上記したような減音装置11を複数備え、複数の減音装置11の各々が、通気管4内に、通気管4の軸線方向Daに互いに離間するように設けられている。
このような構成によれば、減音装置11による減音効果を、相乗的に、奏することができる。
特に、通気管4内を通過する空気の流路の断面積が変化する回数が多くなるため、更に効率的に、減音性能を高めることができる。
【0049】
(実施形態の第1変形例)
なお、本発明の減音装置、減音システムは、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
図7は、第1変形例に係る減音装置において、上流側壁部を軸線方向から見た図である。
図7においては、上流側空間の内部構造が、上流側壁部を透過して、破線で示されている。
図8は、
図7のI-I部分の断面図である。
本変形例の減音装置11Cにおいては、上流側空間25Aが、第1仕切板35に接合された第2仕切板36Aによって、複数の小空間V1、V2に区画されている。
第2仕切板36Aは、底辺36aと、底辺36aの両端から垂直に立ち上がる2つの短辺36b、及び、2つの短辺36bの各々の、底辺36aとは反対側の端部から、底辺36aから離れるにつれて漸次接近するように設けられた2つの斜辺36cにより、輪郭が略5角形となるように形成されている。底辺36aは、第1仕切板35の直径と略同等の長さを有している。第2仕切板36Aは、第1仕切板35から垂直に立ち上がるように、第1仕切板35に接合されている。
第2仕切板36Aは、短辺36bと斜辺36cが、これらが対向する、上流側空間25Aを形成する側壁部23の内面23fと上流側壁部21の内面21fの各々に、隙間がほぼ生じない程度に近接し、あるいは当接するように、設けられている。
これにより、小空間V1は、第2仕切板36Aの一方の表面側に、小空間V2は、第2仕切板36Aの他方の表面側に、それぞれ形成されている。
複数の小空間V1、V2の各々は、上流側壁部21に設けられた開口部28により、外部と連通している。
【0050】
本変形例の減音装置11Cにおいては、上流側空間25Aの、一方の小空間V1と、他方の小空間V2の各々に、共鳴器が形成されている。ここで、本変形例においては、複数の小空間V1、V2の各々において、互いに共鳴周波数が異なるように、共鳴器が形成されている。
例えば、第2仕切板36Aを、第1仕切板35の中心を通る位置において第1仕切板35に接合した場合には、上流側空間25Aが略同等の容積の、2つの小空間V1、V2に区画される。この場合においては、例えば小空間V1側における、上流側壁部21の開口部28の開口率が、小空間V2側における、上流側壁部21の開口部28の開口率よりも小さくなるように、小空間V1側の開口部28をより多く塞ぐことにより、小空間V1側の共鳴器の共鳴周波数を、小空間V2側の共鳴器の共鳴周波数よりも低くすることができる。
あるいは、例えば第2仕切板36Aを、第1仕切板35の中心を通らないように、中心からずらして設け、小空間V1と小空間V2の容積を異ならしめることによっても、小空間V1側の共鳴器の共鳴周波数と、小空間V2側の共鳴器の共鳴周波数とを、異なるものとすることができる。
本変形例においても、上流側空間25Aとは反対側の、他方の側となる下流側空間25Bには、吸音材30として、多孔質の部材が格納されている。
【0051】
本変形例の減音装置11Cにおいては、上流側空間25Aが、第1仕切板35に接合された少なくとも1つの第2仕切板36Aによって、複数の小空間V1、V2に区画され、複数の小空間V1、V2の各々は、開口部28により、外部と連通し、複数の小空間V1、V2の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されている。
上記のような構成によれば、上流側空間25Aが複数の小空間V1、V2に区画され、複数の小空間V1、V2の各々は、開口部28により外部と連通し、複数の小空間V1、V2の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されている。このため、共鳴現象により減音される対象となる共鳴周波数を複数とすることができるので、広い周波数範囲にわたる音が減音され得る。したがって、減音性能をより高めることができる。
【0052】
また、上流側空間25Aとは反対側の、他方の側となる下流側空間25Bには、多孔質の部材が格納されている。
このような構成によれば、多孔質の部材の吸音効果により、減音性能を、更に効果的に、高めることができる。
【0053】
(実施形態の第2変形例)
第2仕切板は、第1変形例とは異なる態様で設けられてもよい。
図9は、第2変形例に係る減音装置において、上流側壁部を軸線方向から見た図である。
図9においては、上流側空間の内部構造が、上流側壁部を透過して、破線で示されている。
図10は、
図9の減音装置における、第1仕切板と第2仕切板の斜視図である。
本変形例の減音装置11Dにおいても、上流側空間25Aが、第1仕切板35に接合された第2仕切板36Bによって、複数の小空間V3、V4に区画されている。本変形例においては、第2仕切板36Bは、円筒形状に形成されている。第2仕切板36Bは、円筒形状の軸線方向における一端36dが第1仕切板35に接合されている。
第2仕切板36Bは、他端36eが上流側壁部21の内面に、隙間がほぼ生じない程度に近接し、あるいは当接するように、設けられている。
これにより、第2仕切板36Bの外側に小空間V3が、及び第2仕切板36Bの内側に小空間V4が、それぞれ形成されている。
複数の小空間V3、V4の各々は、上流側壁部21に設けられた開口部28により、外部と連通している。
【0054】
本変形例の減音装置11Dにおいては、上流側空間25Aの、一方の小空間V3と、他方の小空間V4の各々に、共鳴器が形成されている。本変形例においても、例えば第2仕切板36Bの軸線方向の直径を調整して小空間V3と小空間V4の容積を異ならしめたり、小空間V3と小空間V4の開口率を調整したりすることによって、上記第1変形例と同様に、複数の小空間V3、V4の各々に対応して、互いに共鳴周波数が異なるように、共鳴器が形成されている。
本変形例においても、上流側空間25Aとは反対側の、他方の側となる下流側空間25Bには、吸音材として、多孔質の部材が格納されている。
【0055】
本変形例の減音装置11Dにおいては、上流側空間25Aが、第1仕切板35に接合された少なくとも1つの第2仕切板36Bによって、複数の小空間V3、V4に区画され、複数の小空間V3、V4の各々は、開口部28により、外部と連通し、複数の小空間V3、V4の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されている。
上記のような構成によれば、上記第1変形例と同様に、減音性能をより高めることができる。
【0056】
(実施形態の第3変形例)
第2仕切板は、複数の枚数が設けられてもよい。
図11は、第3変形例に係る減音装置において、上流側壁部を軸線方向から見た図である。
図11においては、上流側空間の内部構造が、上流側壁部を透過して、破線で示されている。
本変形例の減音装置11Eにおいては、上流側空間が、第1仕切板35に接合された、複数の第2仕切板36C、36D、36Eによって、複数の小空間V5、V6、V7に区画されている。第2仕切板36C、36D、36Eの各々は、平板状に形成されている。第2仕切板36C、36D、36Eは、
図11のように軸線方向から視たときに、第1仕切板35の中心位置において互いに接合されて、当該中心位置から放射状に延びるように設けられている。
第2仕切板36C、36D、36Eは、各々の、互いに接合された側とは反対側の外端36fが、上流側空間25Aを形成する側壁部23の内面23fに、隙間がほぼ生じない程度に近接し、あるいは当接するように、設けられている。また、第2仕切板36C、36D、36Eは、各々の、軸線方向において第1仕切板35とは反対側に位置する端部が、上流側壁部21の内面に、隙間がほぼ生じない程度に近接し、あるいは当接するように、設けられている。
このようにして、小空間V5は、軸線方向を中心とした周方向における、第2仕切板36Cと第2仕切板36Dの間に形成されている。同様に、小空間V6は、第2仕切板36Dと第2仕切板36Eの間に、及び小空間V7は、第2仕切板36Eと第2仕切板36Cの間に、それぞれ形成されている。
複数の小空間V5、V6、V7の各々は、上流側壁部21に設けられた開口部28により、外部と連通している。
【0057】
本変形例の減音装置11Eにおいては、上流側空間25Aの、複数の小空間V5、V6、V7の各々に、共鳴器が形成されている。本変形例においても、例えば第2仕切板36C、36D、36Eの各々の間の周方向の角度を調整して小空間V5、V6、V7の容積を互いに異ならしめたり、小空間V5、V6、V7の開口率を調整したりすることによって、上記第1及び第2変形例と同様に、複数の小空間V5、V6、V7の各々に対応して、互いに共鳴周波数が異なるように、共鳴器が形成される。
本変形例においても、上流側空間25Aとは反対側の、他方の側となる下流側空間には、吸音材として、多孔質の部材が格納されている。
【0058】
本変形例の減音装置11Eにおいては、上流側空間25Aが、第1仕切板35に接合された複数の第2仕切板36C、36D、36Eによって、複数の小空間V5、V6、V7に区画され、複数の小空間V5、V6、V7の各々は、開口部28により、外部と連通し、複数の小空間V5、V6、V7の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されている。
上記のような構成によれば、上記第1及び第2変形例と同様に、減音性能をより高めることができる。
特に、本変形例においては、上記第1及び第2変形例よりも多くの小空間V5、V6、V7が形成され、その各々に対応して、互いに共鳴周波数が異なるように、共鳴器が形成されている。このため、共鳴現象により減音される対象となる共鳴周波数を、更に多く設けることができるので、より広い周波数範囲にわたる音が減音され得る。したがって、減音性能を、更に高めることができる。
【0059】
なお、上記第1~第3変形例に関し、例えば第1変形例のような場合においては、第1仕切板35に対して、上流側空間25Aを区画するように第2仕切板36Aが形成されている。このため、上記実施形態に関して
図6を用いて説明したように、第1仕切板35を、上流側に移動させるためには、第2仕切板36Aの斜辺36cを切削し、第2仕切板36の軸線方向Daの長さを短くする必要がある。あるいは、第1仕切板35を下流側に移動させると、第2仕切板36Aの斜辺36cと上流側壁部21の内面21fとが離間して、小空間V1と小空間V2とが互いに連通することにより、所望の共鳴器を形成することが難しくなる。
このような場合においては、例えば、予め、複数の第1仕切板35を用意し、これらの各々に、短辺36bの長さが異なるように、互いに異なる形状に形成された第2仕切板36Aを、それぞれ接合しておく。そのうえで、減音装置11Cを設置する現場で騒音を調査し、減音すべき音の周波数を決定し、当該周波数に近い共鳴周波数となるように、小空間V1、V2の容積を計算する。そして、計算された容積を実現可能な短辺36bの長さを有する第2仕切板36Aが接合された第1仕切板35を選択して、これを減音装置11Cの内部に設置する。
このようにして、異なる形状、大きさの第2仕切板が接合された第1仕切板を複数、予め用意し、適宜これを入れ替えることによって、第1仕切板の位置を、上流側と下流側とを結ぶ方向に調整することができるように、構成してもよい。
これにより、減音すべき音を適切に低減可能な減音装置11Cを構築することができる。
第2、第3変形例に関しても同様である。
【0060】
(実施形態の第4変形例)
上記実施形態においては、上流側空間25A側に共鳴器が形成され、下流側空間25B側においては、開口部28が内貼材31によって覆われて、内部に吸音材30が格納された構成となっていたが、これに限られない。
本変形例の構成においては、下流側空間25Bにおいても、その容積や開口部28の面積を調整することで、共鳴器を形成することができる。
すなわち、上流側空間25Aと下流側空間25Bの双方に、共鳴器が形成されてもよい。
この場合においては、特に、上流側空間25Aに形成される共鳴器と、下流側空間25Bに形成される共鳴器の共鳴周波数が互いに異なるようにすることで、減音の対象となる音の周波数の幅を広くすることができる。
【0061】
本変形例のような場合においても、第1仕切板35の位置を、上流側と下流側とを結ぶ方向に調整することができるようにするのが望ましい。
この場合においては、第1仕切板35の位置を上流側へと調整すれば、上流側壁部21と第1仕切板35の間の距離が小さくなるので、上流側空間25Aに形成された共鳴器の共鳴周波数は高くなる。同時に、下流側壁部22と第1仕切板35の間の距離が大きくなるので、下流側空間25Bに形成された共鳴器の共鳴周波数は低くなる。
逆に、第1仕切板35の位置を下流側へと調整すれば、上流側壁部21と第1仕切板35の間の距離が大きくなるので、上流側空間25Aに形成された共鳴器の共鳴周波数は低くなる。同時に、下流側壁部22と第1仕切板35の間の距離が小さくなるので、下流側空間25Bに形成された共鳴器の共鳴周波数は高くなる。
このようにして、共鳴周波数を調整することができるので、減音装置が設置される現場で特に大きな音の周波数に、共鳴器の共鳴周波数をあわせて、当該周波数を有する音を効率的に減音することができる。このため、減音性能をより高めることができる。
【0062】
(実施形態の第5変形例)
上記実施形態の構造とは逆に、下流側空間25Bのみに共鳴器が形成されていてもよい。この場合に、上流側空間25Aのみに、多孔質の部材が格納されてもよい。すなわち、上流側空間25A側において、開口部28が内貼材31によって覆われて、内部に吸音材30として多孔質の部材が格納され、下流側空間25B側に共鳴器が形成されてもよい。
本変形例のような場合においても、第1仕切板35の位置を、上流側と下流側とを結ぶ方向に調整することができるようにするのが望ましい。
この場合においては、第1仕切板35の位置を上流側へと調整すれば、下流側壁部22と第1仕切板35の間の距離が大きくなるので、下流側空間25Bに形成された共鳴器の共鳴周波数は低くなる。
逆に、第1仕切板35の位置を下流側へと調整すれば、下流側壁部22と第1仕切板35の間の距離が小さくなるので、下流側空間25Bに形成された共鳴器の共鳴周波数は高くなる。
このようにして、共鳴周波数を調整することができるので、減音装置が設置される現場で特に大きな音の周波数に、共鳴器の共鳴周波数をあわせて、当該周波数を有する音を効率的に減音することができる。このため、減音性能をより高めることができる。
【0063】
(実施形態の第6変形例)
上記実施形態及び各変形例のいずれの場合においても、更に、上流側空間25Aと下流側空間25Bの双方に、吸音材30として多孔質の部材が格納されてもよい。
すなわち、多孔質の部材は、上流側空間25Aと下流側空間25Bのいずれか一方または双方に、格納されていてもよい。
上記のような構成によれば、減音性能を、更に効果的に、高めることができる。
【0064】
(実施形態の第7変形例)
上記第1~第3変形例においては、上流側空間25Aが、第2仕切板36A~36Eによって、複数の小空間V1~V7に区画され、複数の小空間V1~V7の各々が、開口部28により、外部と連通するように構成されていたが、これに限られない。
例えば、上流側空間25Aと下流側空間25Bの双方が、第1仕切板35に接合された少なくとも1つの第2仕切板によって、複数の小空間に区画され、複数の小空間の各々は、開口部28により、外部と連通し、複数の小空間の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されているように、構成してもよい。
上記のような構成によれば、上流側空間25Aと下流側空間25Bの双方が複数の小空間に区画され、複数の小空間の各々は、開口部28により外部と連通し、複数の小空間の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されている。このため、共鳴現象により減音される対象となる共鳴周波数を複数とすることができるので、広い周波数範囲にわたる音が減音され得る。したがって、減音性能をより高めることができる。
【0065】
(実施形態の第8変形例)
上記第1~第3変形例の構造とは逆に、例えば、下流側空間25Bのみが、第1仕切板35に接合された少なくとも1つの第2仕切板によって、複数の小空間に区画され、複数の小空間の各々は、開口部28により、外部と連通し、複数の小空間の各々に、それぞれ異なる共鳴周波数の共鳴器が形成されているように、構成してもよい。
この場合において、下流側空間25Bとは反対側の、他方の側となる上流側空間25Aには、多孔質の部材が格納されているように、構成してもよい。
このような構成によれば、上記第1~第3変形例と同様に、減音性能をより高めることができる。
【0066】
(実施形態の第9変形例)
上記実施形態においては、下流側空間25B側には、共鳴器は形成されておらず、開口部28が内貼材31によって覆われて、内部に吸音材30として多孔質の部材が格納されていた。このように、下流側空間25Bに共鳴器としての作用を期待せず、内部に吸音材30を設けることによる吸音効果を期待する場合においては、開口部28をできるだけ大きくすることで、吸音材30に対して、空気や音が、より接触しやすくなるようにしてもよい。
図12は、第9変形例に係る減音装置において、下流側壁部を軸線方向から見た図である。
本変形例の減音装置11Fにおいては、開口部28Aは、扇形形状に形成されている。開口部28Aは、半径方向の端辺28aが、下流側壁部22の、中央壁部22b近傍から外周部22aまで、長く延在するように形成されている。
このような構成によれば、吸音材30による減音効果をより高めることができる。
【0067】
(実施形態の第10変形例)
また、上記実施形態では、外周側から中央21cに向かうにつれて漸次上流側に突出する上流側壁部21を、円錐状に形成するようにしたが、これに限らない。
例えば、上流側壁部は、外周側から中央に向かうにつれて漸次上流側に突出するよう、半球状に形成するようにしてもよい。
このような構成によっても、通気管内を上流側壁部に向けて流れる空気は、上流側壁部の中央から外周側に向けて円滑に流れ、圧力損失が大きくなるのを効果的に抑制可能である。
【0068】
(実施形態の第11変形例)
また、上記実施形態及び各変形例に対し、室外側S2から室内側S1への、雨等による通気管4内の水の通過を抑制する、止水部を設けるようにしてもよい。
図13は、本第11変形例における減音システムの断面図である。
図14は、本第11変形例における減音装置を軸線方向から見た図である。
本変形例の減音装置11Gは、止水部40を備えている。止水部40は、上流側壁部21の下側から、下方向に延在するように設けられている。止水部40は、横方向に延在するように設けられた通気管4の、下側の内面4fに対応する形状に形成されている。本変形例においては、通気管4は円筒状である。このため、止水部40は、下側の端辺40eが、
図14のように軸線方向Daから視たときに円弧状になるように形成されており、下側の端辺40eが通気管4の下側の内面4fに当接するように設けられている。これにより、側壁部23と通気管4の内面4fとの間に形成された、下側の隙間100は、閉塞されている。
減音装置11Gの間には、止水板50が設けられている。
【0069】
本変形例においては、側壁部23と通気管4の内面4fとの間に隙間100を形成する隙間形成機構24は、ゴム等の弾性を有する材料で形成された介装材24Bである。介装材24Bは、減音装置本体20の上端と下端に1つずつが設けられている。介装材24Bは、予め減音装置本体20に接着剤などで接合されていてもよいし、減音装置本体20を通気管4内に位置づけた状態で、減音装置本体20と通気管4の内面4fの間に挿入するように設けてもよい。
介装材24Bは、隙間100よりも僅かに大きい厚さとなるように形成されている。介装材24Bが、減音装置本体20と通気管4の内面4fの間に設けられた際には、介装材24Bが弾性変形して収縮し、その原形に復元しようとする力により、減音装置本体20が通気管4内に固定される。
本変形例のように、隙間形成機構24を、側壁部23と通気菅4の内面4fとの間に介装された介装材24Bとした場合においては、効率的に隙間100を形成し、かつ減音装置11Gを通気管4内に固定することができる。
【0070】
(その他の変形例)
また、上記実施形態では、通気管4内に減音装置11を2つ設けるようにしたが、これに限らない。減音装置11を1つのみ、または3つ以上設けるようにしてもよい。
また、通気管4内には、空気を強制的に流通させる、ファン等の機械設備が設けられていてもよい。例えば、通気管4としては、天井裏に設置されたファンを間に挟むように、室内側と室外側を連通させるように設けられた配管等、建築構造物の室内側S1と室外側S2を連通させるように設けられたものであれば、どのような態様であっても構わない。例えば、上記実施形態においては、通気管4は横方向に延在するように設けられていたが、斜め方向、縦方向等、他の方向に延在するように設けられていてもよい。
また、上記実施形態では、上流側壁部21、下流側壁部22に形成する開口部28を、通気管4の軸線方向Daから見て円形で、周方向に等間隔をあけて複数形成するようにしたが、その数、配置等は適宜変更可能である。開口部28を、スリット状としてもよい。
また、隙間形成機構24の配置、設置数は、適宜変更可能である。
【0071】
また、上記実施形態では、通気管4を、室外側S2から室内側S1に給気を行う給気ダクトとして用いられるようにしたが、これに限らない。通気管4は、室内側S1から室外側S2に排気を行う排気ダクトとして用いることも可能である。この場合、通気管4内の減音装置11の向きを、上流側壁部21が流れ方向Fの上流側(室内側S1)を向くように配置すればよい。
特にこのような場合においては、下流側空間25Bが室外側S2を向くため、上記の第4、第5、第7、第8変形例のような、下流側空間25Bにも共鳴器が形成された形態の減音装置を用いると、好適である場合がある。
【0072】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記各実施形態及び各変形例で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、上記実施形態として
図2を用いて説明した減音装置11において、隙間形成機構24として、突出部24Aではなく、第11変形例として説明したような介装材24Cを設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態と第8変形例を組み合わせて、上流側空間25A側を、上記実施形態のように、上流側空間25A全体で1つの共鳴器を形成するようにしつつ、下流側空間25B側に、第2仕切板で区画して、複数の共鳴器を形成するようにしてもよい。
あるいは、上記の構造を逆にして、上流側空間25A側を、第1~第3変形例として説明したように、第2仕切板で区画して、複数の共鳴器を形成するようにしつつ、下流側空間25B側は、下流側空間25B全体で1つの共鳴器を形成するようにしてもよい。
更には、上流側空間25Aと下流側空間25Bの各々を、異なる態様で、第2仕切板によって区画しても構わない。例えば、上流側空間25Aを、第1変形例として
図7を用いて説明したように2つの小空間に分割しつつ、下流側空間25Bを、第3変形例として
図11を用いて説明したように3つの小空間に分割するようにしてもよい。
【0073】
(検討例)
次に、上記第2変形例として示した構成について、以下のような検討を行ったので、その結果を示す。
上記第2変形例として示した構成のように、上流側空間を円筒形状の第2仕切板で区画し、円筒の内側と外側の各々の小空間が、共鳴器として作用するように設定した。第2仕切板の内側の小空間は、共鳴周波数が400Hzとなるように設定した。第2仕切板の外側の小空間は、共鳴周波数が630Hzとなるように設定した。
このような減音装置を、長さが300mm、直径が150mmの通気管の内部に2個、100mmの間隔をあけて設置し、これを実施例1とした。
これに対し、実施例1と同じ通気菅で、内側に減音装置を備えていない状態のものを用意し、これを比較例1とした。
更に、実施例1と同じ通気菅内に、実施例1と同じ減音装置を、開口部をすべて塞いで上流側空間と下流側空間が共に共鳴器として作用しない状態で、2個、100mmの間隔をあけて設置し、これを比較例2とした。
これらの比較例1、比較例2、及び実施例1に対し、音響透過損失試験を実施した。
【0074】
図15は、比較例1、比較例2、及び実施例1の比較結果を、1/1オクターブバンド中心周波数ごとに示したグラフである。
300mmの長さの通気管においては、両端が開口した管において生じる共鳴周波数が400Hz帯域に含まれる。したがって、比較例1では、音響透過損失は400Hz帯域が含まれる500Hz帯域で、遮音性能が大きく低下する傾向が確認される。
比較例2では、減音装置が設置されることによって通気管内で流路の断面積が変化し、これによって音の干渉が生じる。これにより、1kHz以上の高い周波数帯域で騒音低減効果が確認されている。しかし、最も遮音性能が低下する500Hz帯域においては、比較例1との間で、顕著な差はみられない。
他方、実施例1においては、比較例1、比較例2と比較して、大幅な遮音性能向上を達成している。具体的には、500Hz帯域では、共鳴器の共鳴現象により、遮音性能が約9dB向上した。また、1kHz以上の高い周波数帯域では、吸音材により、遮音性能が2~5dB程度向上した。結果として、実施例1は、遮音等級「T-1」を達成した。
【0075】
更に、実施例1の減音装置において、第2仕切板の外側の小空間に対応する開口部を塞いで、第2仕切板の内側の小空間の、共鳴周波数が400Hzとなるように設定された部分のみが共鳴器として作用するようにしたものを、実施例1と同様に通気管内に配し、これを実施例2とした。
また、実施例1の減音装置において、第2仕切板の内側の小空間に対応する開口部を塞いで、第2仕切板の外側の小空間の、共鳴周波数が630Hzとなるように設定された部分のみが共鳴器として作用するようにしたものを、実施例1と同様に通気管内に配し、これを実施例3とした。
これらの実施例2、実施例3に対しても、同様に音響透過損失試験を実施した。
【0076】
図16は、
図15の実施例1の結果を、1/3オクターブバンド中心周波数ごとに示したグラフである。
図17は、比較例1、比較例2、及び実施例2の比較結果を、1/3オクターブバンド中心周波数ごとに示したグラフである。
図18は、比較例1、比較例2、及び実施例3の比較結果を、1/3オクターブバンド中心周波数ごとに示したグラフである。
図17によると、実施例2では、比較例1、比較例2に対し、400Hz帯域で遮音性能が向上していることがわかる。同様に、
図18によると、実施例3では、比較例1、比較例2に対し、630Hz帯域で遮音性能が向上していることがわかる。
ここで、
図16をみると、
図17、
図18と同様に、個々の共鳴器が機能して400Hz帯域と630Hz帯域における遮音性能が向上しているが、それのみならず、2つの共鳴器が同時に機能することで、400Hz帯域と630Hz帯域の間の500Hz帯域を含む、広い周波数範囲で、遮音性能が大幅に向上している。
更に、吸音材により、1kHz以上の高い周波数帯域でも安定的に遮音性能が向上している。
【符号の説明】
【0077】
4 通気管 25 内部空間
4f 内面 25A 上流側空間
10 減音システム 25B 下流側空間
11、11A~11G 減音装置 28、28A 開口部
21 上流側壁部 30 吸音材(多孔質の部材)
21c 中央 35 第1仕切板
22 下流側壁部 36A~36E 第2仕切板
23 側壁部 100 隙間
24 隙間形成機構 S1 室内側
24A 突出部 S2 室外側
24B 介装材 V1~V7 小空間
Da 軸線方向、上流側と前記下流側とを結ぶ方向