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特開2023-100326着底判定システムおよび着底判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100326
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】着底判定システムおよび着底判定方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/08 20060101AFI20230711BHJP
   E02D 1/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
E02D3/08
E02D1/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000899
(22)【出願日】2022-01-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000182030
【氏名又は名称】若築建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太
(72)【発明者】
【氏名】有木 高明
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA01
2D043AB07
2D043CA06
2D043CB03
2D043DB03
2D043EB05
(57)【要約】
【課題】ケーシングパイプを着底させたい着底層を確実に判定できる着底判定システムおよび着底判定方法を提供する。
【解決手段】着底判定システムは、バイブロハンマの振動により海底の軟弱層に貫入されるケーシングパイプが、軟弱層の下層の支持地盤である着底層に着底したことを判定する着底判定システムであって、バイブロハンマを支持する支柱に取り付けられ、バイブロハンマから伝達される振動を検出するセンサと、ケーシングパイプの海底への貫入中にセンサにより検出される振動の周波数特性を繰り返し算出し、算出した周波数特性がバイブロハンマの固有の第1のピーク周波数に加えて、固有のピーク周波数より高い第2のピーク周波数を含むことを検出した場合、ケーシングパイプの先端の着底層への到達を判定する判定部とを有することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイブロハンマの振動により海底の軟弱層に貫入されるケーシングパイプが、前記軟弱層の下層の支持地盤である着底層に着底したことを判定する着底判定システムであって、
前記バイブロハンマを支持する支柱に取り付けられ、前記バイブロハンマから伝達される振動を検出するセンサと、
前記ケーシングパイプの海底への貫入中に前記センサにより検出される振動の周波数特性を繰り返し算出し、算出した周波数特性が前記バイブロハンマの固有の第1のピーク周波数に加えて、前記固有のピーク周波数より高い第2のピーク周波数を含むことを検出した場合、前記ケーシングパイプの先端の前記着底層への到達を判定する判定部と
を有することを特徴とする着底判定システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記第2のピーク周波数のスペクトル値が前記第1のピーク周波数のスペクトル値より大きいことを検出した場合、前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする請求項1に記載の着底判定システム。
【請求項3】
前記判定部は、複数の前記第2のピーク周波数を検出した場合、前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の着底判定システム。
【請求項4】
前記判定部は、複数の前記第2のピーク周波数のうち、スペクトル値が前記第1のピーク周波数のスペクトル値より高い第2のピーク周波数の個数が第1の基準個数以上の場合、前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする請求項3に記載の着底判定システム。
【請求項5】
前記判定部は、スペクトル値が前記第1のピーク周波数のスペクトル値より高い第2のピーク周波数の個数が前記第1の基準個数以上であると判定した回数が基準回数以上の場合、前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする請求項4に記載の着底判定システム。
【請求項6】
前記判定部は、前記第1の基準個数以上の第2のピーク周波数の個数の第1の所定時間当たりの平均値を算出し、算出した平均値が第2の基準個数以上であると判定した場合、前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする請求項4に記載の着底判定システム。
【請求項7】
前記判定部は、前記平均値が第2の基準個数以上であるとの判定が、前記第1の所定時間より長い第2の所定時間継続する場合、前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする請求項6に記載の着底判定システム。
【請求項8】
前記判定部は、前記センサが検出した振動の周波数特性の時間変化をウェーブレット解析により算出し、算出した振動の周波数特性と合わせて、前記ケーシングパイプの先端の前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の着底判定システム。
【請求項9】
前記判定部は、前記ウェーブレット解析により得られるスカログラムのデータに基づいて、卓越周波数が前記第1のピーク周波数から前記第2のピーク周波数に変化したことを検出した場合、ウェーブレット解析による前記着底層への到達を判定することを特徴とする請求項8に記載の着底判定システム。
【請求項10】
バイブロハンマの振動により海底の軟弱層に貫入されるケーシングパイプが、前記軟弱層の下層の支持地盤である着底層に着底したことを判定する着底判定方法であって、
前記バイブロハンマを支持する支柱に取り付けられるセンサにより、前記バイブロハンマから伝達される振動を検出し、
前記ケーシングパイプの海底への貫入中に前記センサにより検出される振動の周波数特性を繰り返し算出し、算出した周波数特性が前記バイブロハンマの固有の第1のピーク周波数に加えて、前記固有のピーク周波数より高い第2のピーク周波数を含むことを検出した場合、前記ケーシングパイプの先端の前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする着底判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着底判定システムおよび着底判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイブロハンマによりケーシングパイプに振動を与えて地盤に貫入し、ケーシングパイプを引き戻しながら砂を投入し、投入した砂を締め固めるサンドコンパクションパイル工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。オーガロッドの地盤への貫入時の振動データをフーリエ変換することで得られるスペクトラムデータの周波数帯域毎の最大値を平均化した平均値が大きく変化した場合に、支持地盤層があると判定する手法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-309091号公報
【特許文献2】特開2000-19261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、海底の軟弱層を締め固めた砂杭で置き換えるサンドコンパクションパイル工法では、バイブロハンマを操作するオペレータ等がケーシングパイプの先端位置の時間変化を示すオシログラフを読み取ることで、ケーシングパイプを着底させたい着底層への到達を判定している。例えば、オシログラフは、ケーシングパイプの移動量の時間変化に基づいて生成され、表示画面等に表示される。
【0005】
ケーシングパイプを着底させたい着底層が土丹層または硬質な砂礫地盤などの場合には、オシログラフにより着底判定が可能であるが、自動では判定できないという問題がある。一方、例えば、着底層が、N値が"5"程度の洪積粘土層または礫混じり粘土層などで、軟弱層の貫入速度と区別が付きにくい場合、オシログラフによる着底判定が難しい場合がある。
【0006】
さらに、バイブロハンマを動作させる電動機の負荷電流値またはケーシングパイプの吊り荷重値をモニタリングすることで、着底判定を実施する場合、負荷電流値または荷重値は、ケーシングパイプの周面の摩擦の影響および機械設備の仕様に依存して変化する。このため、着底判定の判定基準を海底の地盤の状況および機械設備の仕様により調整する必要があり、着底判定を確実に実施することが難しい。
【0007】
上記の課題に鑑み、本発明は、海底の地盤の状況および機械設備の仕様に依存せず、ケーシングパイプを着底させたい着底層を確実に判定できる着底判定システムおよび着底判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの観点によれば、着底判定システムは、バイブロハンマの振動により海底の軟弱層に貫入されるケーシングパイプが、前記軟弱層の下層の支持地盤である着底層に着底したことを判定する着底判定システムであって、前記バイブロハンマを支持する支柱に取り付けられ、前記バイブロハンマから伝達される振動を検出するセンサと、前記ケーシングパイプの海底への貫入中に前記センサにより検出される振動の周波数特性を繰り返し算出し、算出した周波数特性が前記バイブロハンマの固有の第1のピーク周波数に加えて、前記固有のピーク周波数より高い第2のピーク周波数を含むことを検出した場合、前記ケーシングパイプの先端の前記着底層への到達を判定する判定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、海底の地盤の状況および機械設備の仕様に依存せず、ケーシングパイプを着底させたい着底層を確実に判定できる着底判定システムおよび着底判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態における着底判定システムが搭載されるサンドコンパクション船の一例を示す図である。
図2図1の着底判定システムにおける計測装置のハードウェアの概要を示す図である。
図3図2の着底判定システムの動作の一例を示すフロー図である。
図4図2の制御装置が表示画面に表示する加速度データと加速度データの周波数特性の一例を示す図である。
図5図3のステップS40において、ケーシングパイプの先端が軟弱層に貫入されたときの周波数特性の一例を示す図である。
図6図3のステップS60におけるピーク周波数の抽出処理の例を示す図である。
図7図3のステップS70、S80による基準周波数でのスペクトルより大きいスペクトルの抽出処理と、抽出したスペクトルのカウント処理との一例を示す図である。
図8図3のステップS90による着底層への到達判定処理の一例を示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態における着底判定システムの動作の一例を示すフロー図である。
図10図9のステップS30Aで表示されるスカログラムの一例を示す図である。
図11図1のケーシングパイプの先端の海中での位置と経過時間との関係を示すオシログラフの一例を示す図である。
図12図2の制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態における着底判定システムの一例を示す図である。例えば、着底判定システムは、海上サンドコンパクションパイル工法により海底の軟弱地盤に砂杭を打設する締め固め装置を装備したサンドコンパクション船(台船)に設置される。
【0013】
締め固め装置は、船上に立設されたリーダマスト10と、リーダマスト10に沿って上下方向に移動可能に配置されるケーシングパイプ12とを有する。リーダマスト10は、バイブロハンマ16を支持する支柱の一例である。また、締め固め装置は、ケーシングパイプ12の上端に設置されたホッパー14、バイブロハンマ16およびショックアブソーバ18を含む砂杭打設機構部20と、砂杭打設機構部20に取り付けられたガイドローラ22とを有する。砂杭打設機構部20は、吊下ワイヤWによりケーシングパイプ12とともに吊り下げられる。
【0014】
ガイドローラ22は、リーダマスト10の砂杭打設機構部20側に設けられるスライドガイド24に接触した状態で案内され、上下方向に移動する砂杭打設機構部20とともに移動する。特に限定されないが、リーダマスト10は、下方がトラス構造を有し、上方が筒構造を有する。
【0015】
また、サンドコンパクション船には、ケーシングパイプ12の先端が海底の軟弱層を通過して軟弱層より堅い支持地盤である着底層に到達したことを検出する着底判定システムが設置される。着底判定システムは、リーダマスト10の下方に取り付けられるセンサユニット30、計測装置40および制御装置50を有する。以下では、着底判定システムは、着底判定システムSYSとも称される。
【0016】
例えば、センサユニット30は、リーダマスト10において、サンドコンパクション船の甲板上の1mから2mの高さの作業床の位置に取り付けられる。このため、作業者等は、リーダマスト10に登ることなくセンサユニット30をリーダマスト10に取り付けることができ、安全に取り付け作業を実施することができる。
【0017】
例えば、制御装置50は、サンドコンパクション船の操船室内に設置される。センサユニット30と計測装置40とはケーブルCABLにより接続される。例えば、計測装置40と制御装置50とは、無線で接続される。なお、計測装置40と制御装置50とは、有線で接続されてもよい。
【0018】
センサユニット30は、リーダマスト10のトラス構造部に固定されるアングルANGLと、アングルANGLに間隔を置いて取り付けられる加速度センサSNS(SNS1、SNS2、SNS3)とを有する。例えば、各加速度センサSNS1-SNS3は、クランプCLMPによりアングルANGLとともにトラス構造部に固定される。
【0019】
加速度センサSNS1-SNS3は、船の長手方向、船の幅方向および上下方向の加速度をそれぞれ検出する3軸加速度センサとして機能する。各加速度センサSNS1-SNS3は、計測した加速度信号をケーブルCABLを介して計測装置40に送信する。
【0020】
計測装置40は、各加速度センサSNS1-SNS3から受信する加速度信号を所定周期でサンプリングすることで加速度データ(振幅データ)を生成し、生成した加速度データを制御装置50に送信する。なお、センサユニット30は、船の上下方向の加速度を検出する加速度センサSNSのみを有してもよい。
【0021】
例えば、制御装置50は、PC(Personal Computer)等のコンピュータ装置である。なお、制御装置50は、タブレット等の携帯端末でもよい。制御装置50は、計測装置40から受信する加速度データに基づいて、ケーシングパイプ12の先端が軟弱層の下層の支持地盤である着底層に到達したか否かを検出する。制御装置50は、ケーシングパイプ12の先端が着底層に到達したと判定した場合、着底層への到達を示す着底情報を外部に出力する。例えば、制御装置50は、表示画面、アラーム音(音声を含む)およびランプの発光の少なくともいずれかにより着底情報を外部に出力する。これにより、締め固め装置を動作させるオペレータ等は、オシログラフ等を読み取ることなく、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を認識することができる。
【0022】
図1に示す締め固め装置では、まず、ワイヤWにより吊り下げられたケーシングパイプ12の先端を自重により海底(軟弱層の表面)に貫入させる。この後、バイブロハンマ16を上下方向に振動させ、ケーシングパイプ12の先端を軟弱層に押し込んでいく。例えば、ケーシングパイプ12内のシルトを抜いた後、ケーシングパイプ12の先端に所定量の砂を投入することで、閉塞効果により砂を蓋として機能させてもよい。この場合、この後にケーシングパイプ12内にシルトが入り込むことなく、バイブロハンマ16の振動によりケーシングパイプ12を軟弱層に貫入することができる。
【0023】
以下では、例えば、バイブロハンマ16の振動周波数がほぼ9~10Hzであるとして説明する。これは、バイブロハンマ16の振動周波数は機種に依存することなく、ほぼ9~10Hzであるためである。したがって、制御装置50は、着底判定に使用する基準周波数を、軟弱層の硬度に応じて決める必要はなく、バイブロハンマ16の振動周波数とすることができる。換言すれば、本発明による着底判定方法は、ケーシングパイプ12を貫入する海底地盤の地質によらず、常に一定の基準周波数を使用して実施することができる。
【0024】
ケーシングパイプ12の先端は、バイブロハンマ16の振動により軟弱層に貫入されていき、軟弱層の下に位置する、軟弱層より硬い着底層に到達する。さらに、ケーシングパイプ12の先端は、着底層の上部に貫入される。ケーシングパイプ12の先端が着底層に到達すると、着底層からの振動の反射等により、バイブロハンマ16の固有の基準周波数に加えて、基準周波数より高い周波数成分を含む振動が、バイブロハンマ16に伝達される。
【0025】
バイブロハンマ16の固有の振動および基準周波数より高い周波数の振動は、ガイドローラ22およびスライドガイド24を介してリーダマスト10に伝達される。そして、リーダマスト10に伝達された振動は、リーダマスト10に取り付けられた加速度センサSNSにより加速度として検出される。
【0026】
後述するように、制御装置50は、加速度センサSNSにより検出された加速度の特性の変化に基づいて、ケーシングパイプ12の先端が着底層に到達し、さらに着底層に貫入され始めたことを検出する。
【0027】
図2は、図1の着底判定システムSYSにおける計測装置40のハードウェアの概要を示す図である。計測装置40は、ひずみ測定ユニット40a、無線ユニット40bおよびバッテリーユニット40cを有する。
【0028】
ひずみ測定ユニット40aは、ケーブルCABLを介して加速度センサSNS1-SNS3からそれぞれ受信する加速度信号を加速度データに変換し、変換した加速度データを無線ユニット40bに出力する。なお、センサユニット30が上下方向の加速度を検出する加速度センサSNSのみを有する場合、ひずみ測定ユニット40aは、1つの加速度センサSNSから受信する加速度信号を加速度データに変換し、変換した加速度データを無線ユニット40bに出力する。
【0029】
例えば、ひずみ測定ユニット40aは、加速度信号を500Hzから2000Hzのサンプリング周波数で加速度データに変換する。加速度信号のサンプリング周波数は、バイブロハンマ16の振動周波数(例えば、9Hz)より十分に大きい。このため、リーダマスト10に伝達されるバイブロハンマ16の振動の基準周波数および基準周波数より高い周波数の振動の加速度データを精度よく検出することができる。
【0030】
無線ユニット40bは、ひずみ測定ユニット40aから受信する加速度データを制御装置50に送信する。バッテリーユニット40cは、ひずみ測定ユニットおよび無線ユニット40bに電力を供給する。なお、計測装置40にAC(Alternating Current)電源等の外部電源を供給可能な場合、計測装置40は、バッテリーユニット40cを持たなくてもよい。
【0031】
図3は、図2の着底判定システムSYSの動作の一例を示すフロー図である。図3に示すフローは、例えば、ケーシングパイプ12の先端を海中に入れたことに基づいて開始される。例えば、図3に示すフローは、図2の制御装置50が着底判定プログラムを実行することにより実現される。すなわち、図3は、着底判定方法および着底判定プログラムの一例を示す。図3の処理を実施する制御装置50は、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を判定する判定部の一例である。
【0032】
まず、ステップS10において、制御装置50は、計測装置40を介して加速度データの受信を開始し、受信した加速度データをメモリ等に格納する。次に、ステップS20において、制御装置50は、受信した加速度データの高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)による解析(以下、FFT解析)を開始し、加速度データの周波数特性を算出する。これ以降、制御装置50は、加速度データの受信と加速度データのFFT解析による周波数特性の算出とを図3に示す処理が終了するまで繰り返し実施する。
【0033】
次に、ステップS30において、制御装置50は、図4に例示するように、加速度データの時間変化を示すグラフと、FFT解析により算出された加速度データの周波数特性を示すグラフとを表示画面に表示する。なお、制御装置50は、加速度データの時間変化を示すグラフと、周波数特性を示すグラフとを表示画面に表示しなくてもよい。
【0034】
次に、ステップS40において、制御装置50は、FFT解析により基準周波数のピークが出現したか否かの判定を繰り返し実施し、基準周波数のピークが出現した場合、処理をステップS50に移行する。
【0035】
例えば、制御装置50は、ケーシングパイプ12の先端を軟弱層に貫入後、1分間、基準周波数のピークの出現を判定する。なお、砂杭の打設時にオシログラフを使用する場合、制御装置50は、ケーシングパイプ12の先端が軟弱層の所定深さの任意の深さ範囲にあるときに基準周波数のピークの出現を判定してもよい。オシログラフを利用する場合、制御装置50は、ケーシングパイプの移動量に応じて判断されるケーシングパイプ12の先端の海中での深度を示す深度情報をオシログラフの生成装置から取得する。
【0036】
図1で説明したように、基準周波数は、バイブロハンマ16の振動周波数(例えば、9Hz)である。ステップS50において、制御装置50は、取得した基準周波数の周波数値Fvとリニアスペクトル等のスペクトル値Svとをメモリ等に記憶する。以下では、周波数値およびスペクトル値は、単に周波数およびスペクトルとも称される。
【0037】
次に、ステップS60において、制御装置50は、FFT解析の結果に基づいて、基準周波数Fvより高いピーク周波数を抽出する抽出処理を実施する。例えば、制御装置50は、ケーシングパイプ12の先端が、想定される着底層から所定距離だけ離れた位置に到達したことに基づいて、ピーク周波数の抽出処理を開始する。例えば、サンプリングピッチが500Hzで、2秒に1回のデータ抽出処理を行う場合、2秒間で1000個のデータを取得できるため、解析データ数として1024個(2の10乗)を選択する。
【0038】
次に、ステップS70において、制御装置50は、ステップS60で抽出したピーク周波数のうち、スペクトルSvより大きいスペクトルがあるか否かを判定する。制御装置50は、スペクトルSvより大きいスペクトルがある場合、処理をステップS80に移行し、スペクトルSvより大きいスペクトルがない場合、処理をステップS60に戻す。
【0039】
ステップS80において、制御装置50は、スペクトルSvより大きいスペクトルの個数m(着底判定指数)をカウントする。
【0040】
次に、ステップS90において、制御装置50は、カウントした個数mに基づいて、ケーシングパイプ12の先端が着底層に到達したか否かを判定する。例えば、制御装置50は、カウントした個数mが予め設定された第1の基準個数以上の場合、着底層への到達を判定してもよい。また、制御装置50は、カウントした個数mが第1の基準個数以上と判定した回数が基準回数以上の場合、着底層への到達を判定してもよい。
【0041】
制御装置50は、着底層への到達を判定した場合、処理をステップS100に移行し、着底層へ到達していないことを判定した場合、処理をステップS60に戻す。着底層への到達の判定処理の例は、図8に示される。
【0042】
なお、制御装置50は、ステップS80による個数mのカウントを実施せず、基準周波数より高い周波数を有するピーク周波数を検出した場合、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を判定してもよい。あるいは、制御装置50は、ステップS80による個数mのカウントを実施せず、基準周波数より高いピーク周波数のスペクトル値が基準周波数のスペクトル値より大きいことを検出した場合、着底層への到達を判定してもよい。
【0043】
さらに、制御装置50は、ステップS80による個数mのカウントを実施せず、基準周波数より高い周波数を有する複数のピーク周波数を検出した場合、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を判定してもよい。
【0044】
ステップS100において、制御装置50は、ケーシングパイプ12の先端が着底層に到達したこと示す着底情報(着底層への到達)を、例えば、表示画面に表示するために出力し、図3の処理を終了する。
【0045】
図4は、図2の制御装置50が表示画面に表示する加速度データと加速度データの周波数特性の一例を示す図である。例えば、制御装置50は、加速度センサSNS1-SNS3毎に加速度データの時間変化を示すグラフを表示し、所定時間の経過毎に、加速度データの周波数特性(スペクトル)のグラフを表示する。ここでは、加速度データおよびリニアスペクトルを示し、単位はm/sである。
【0046】
図4では、加速度データから変換される周波数特性の説明を分かりやすくするために、加速度データ(加速度振幅)のグラフは、着底層の到達判定にかかわりなく、所定時間(360秒)が経過するまで表示されている。
【0047】
例えば、制御装置50は、予め作業者等が指定した加速度センサSNSにより取得される加速度データの周波数特性をグラフとして表示する。図4の例では、制御装置50は、上下方向(リーダマスト10の高さ方向)の振動を検出する加速度センサSNSが取得する加速度データの周波数特性を取得する。図4では、時間T1(30秒)および時間T2(240秒)での周波数特性が例示される。
【0048】
0秒から時間T1までは、ケーシングパイプ12の先端が海底に届く前の加速度データが示される。ケーシングパイプ12の先端が海底(軟弱層)への貫入を開始した時間T1(30秒)では、軟弱層に貫入されたケーシングパイプ12の先端の振動は、軟弱層に吸収され、軟弱層からケーシングパイプ12への振動の反射はほとんどない。
【0049】
したがって、時間T1でのスペクトルの波形は、バイブロハンマ16の振動周波数である9Hz付近のみにピークを有する。換言すれば、スペクトルのピーク周波数がバイブロハンマ16の振動周波数のみの場合、制御装置50は、ケーシングパイプ12の先端が着底層に届いていないと判定できる。
【0050】
一方、ケーシングパイプ12の先端が着底層に届いた時間T2(240秒)以降では、ケーシングパイプ12の先端は、軟弱層より硬い着底層内で振動する。このため、ケーシングパイプ12の先端の振動の一部は、着底層に吸収されず、着底層からの振動の反射としてケーシングパイプ12の先端に伝達され、さらに、バイブロハンマ16、ガイドローラ22およびリーダマスト10まで伝達される。このとき、着底層から伝わる振動の周波数として、基準周波数(=9Hz)より高い複数の周波数のピークが出現する。また、基準周波数より高い複数の周波数のピーク値(スペクトル値)のいくつかは、基準周波数のピーク値よりも大きくなる。
【0051】
図5は、図3のステップS40において、ケーシングパイプ12の先端が軟弱層に貫入されたときに算出される周波数特性の一例を示す図である。制御装置50は、基準周波数Fv(例えば、9Hz)を取得した場合、基準周波数FvとスペクトルSv(例えば、0.15m/s)との値をメモリ等に記録する。なお、図5は、図4の時間T1での周波数特性を示すが、制御装置50は、基準周波数Fvを抽出するまでステップS40の取得処理を繰り返し実施し、周波数特性をそれぞれ算出する。
【0052】
図6は、図3のステップS60におけるピーク周波数の抽出処理の例を示す図である。例えば、制御装置50は、基準周波数Fvより高いピーク周波数をスペクトルが大きい順に、予め設定されたサンプル数n(この例ではn="5")だけ抽出する。そして、制御装置50は、抽出したピーク周波数の値Fn(F1-F5)とスペクトルの値Sn(S1-S5)とをメモリ等に記録する。基準周波数Fvは、第1のピーク周波数の一例であり、基準周波数Fvより高いピーク周波数は、第2のピーク周波数の一例である。
【0053】
図7は、図3のステップS70、S80による基準周波数FvでのスペクトルSvより大きいスペクトルの抽出処理と、抽出したスペクトルのカウント処理との一例を示す図である。制御装置50は、図6で抽出した5個のピーク周波数のうち、スペクトルが基準周波数FvでのスペクトルSvより大きいピーク周波数の個数mをカウントする。
【0054】
図7に示す例では、制御装置50は、スペクトルSvより大きいスペクトルS1、S2、S3のピーク周波数F1、F2、F3の個数m(この例では、3個)をカウントする。例えば、ピーク周波数は、それぞれF1=65Hz、F2=38Hz、F3=84Hzであり、スペクトルは、それぞれS1=0.65m/s、S2=0.22m/s、S3=0.19m/sである。スペクトルS2、S1、S3の末尾の数値は、スペクトルの大きさ順を示す。
【0055】
そして、制御装置50は、所定の時間間隔で、図6に示したピーク周波数の抽出処理と、図7に示した個数mのカウントとを繰り返し実施する。制御装置50は、スペクトルSvより大きいスペクトルの個数mが所定の閾値Vthである第1の基準個数以上の場合、着底層への到達を判定してもよい。例えば、第1の基準個数は3個である。
【0056】
なお、制御装置50は、式(1)に示すように、5個のピーク周波数のスペクトルSnのうち、スペクトルSvに係数αを乗じた値より大きいスペクトルを抽出し、抽出したスペクトルの個数mをカウントしてもよい。例えば、図7では、係数αは"1.0"に設定される。
Sn>α×Sv ‥ (1)
【0057】
図8は、図3のステップS90による着底層への到達判定処理の一例を示す図である。制御装置50は、図8に示すように、スペクトルSvより大きいスペクトルSnの出現個数mの時間変化のデータ(出現個数mの分布データ)を生成する。制御装置50は、例えば、2秒毎のFFT解析で得られる出現個数mのデータを分布データに順次追加していく。
【0058】
次に、制御装置50は、第1の所定時間毎の出現個数mの平均値maveを算出する。そして、制御装置50は、平均値maveが"1"以上となる時間が第2の所定時間継続する場合、ケーシングパイプ12の先端が着底層に到達したと判定する。特に限定されないが、図8に示す例では、第1の所定時間は30秒であり、第2の所定時間は60秒である。平均値maveの"1"は、第2の基準個数の一例である。
【0059】
また、図8に示す例では、制御装置50は、平均値maveが"1"以上となる時間が60秒以上継続したことを、経過時間=120秒で判定する。そして、制御装置50は、判定した経過時間から60秒(すなわち、第2時間)遡った経過時間を着底層への到達時間とする。これにより、ケーシングパイプ12の先端は、着底層への到達が判定された場合に、既に60秒間、着底層に貫入しているため、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を、より確実にすることができる。この結果、締め固め装置による砂杭の着底層への到達の信頼性を向上することができる。
【0060】
この後、制御装置50は、図3のステップS100に示したように、表示画面等に表示するために、着底層への到達を示す着底情報を出力する。
【0061】
以上、この実施形態では、制御装置50は、バイブロハンマ16からリーダマスト10に伝達される振動の周波数特性を算出し、バイブロハンマ16の基準周波数Fvより高い周波数でのスペクトルを算出する。そして、制御装置50は、基準周波数Fvより高いピーク周波数でのスペクトルの検出に基づいて、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を判定する。これにより、締め固め装置を動作させるオペレータ等は、オシログラフ等を読み取ることなく、制御装置50による判定結果に基づいて、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を認識することができる。
【0062】
制御装置50は、ケーシングパイプ12の先端が着底層に到達したと判定した場合、着底層への到達を示す着底情報を外部に出力する。これにより、締め固め装置を動作させるオペレータ等は、オシログラフ等を読み取ることなく、着底情報の認知に基づいてケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を認識することができる。
【0063】
例えば、バイブロハンマ16の振動周波数は、バイブロハンマ16の機種により決まっている。したがって、制御装置50は、着底判定に使用する基準周波数を、軟弱層の硬度に応じて決める必要はなく、バイブロハンマ16の振動周波数とすることができる。換言すれば、本発明による着底判定方法は、ケーシングパイプ12を貫入する海底地盤の地質および機械設備の仕様に依存せず、常に一定の基準周波数を使用してケーシングパイプ12を着底させたい着底層を確実に判定することができる。
【0064】
例えば、制御装置50は、基準周波数Fvより高いピーク周波数のスペクトル値が基準周波数Fvのスペクトル値より大きいことを検出した場合、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を判定することができる。または、制御装置50は、基準周波数Fvより高い複数のピーク周波数のスペクトル値が基準周波数Fvのスペクトル値より大きいことを検出した場合、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を判定することができる。
【0065】
さらに、制御装置50は、基準周波数Fvのスペクトル値より大きいスペクトル値で、基準周波数Fvより高いピーク周波数の個数が、第1の基準個数以上の場合、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を判定することができる。また、制御装置50は、第1の基準個数以上であると判定した回数が基準回数以上の場合、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を判定することができる。
【0066】
または、制御装置50は、第1の基準個数以上の第2のピーク周波数の個数の第1の所定時間当たりの平均値を算出し、算出した平均値が第2の基準個数以上であると判定した場合、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を判定することができる。さらに、制御装置50は、平均値が第2の基準個数以上であるとの判定が、第1の所定時間より長い第2の所定時間継続する場合、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を判定することができる。
【0067】
図9は、本発明の第2の実施形態における着底判定システムの動作の一例を示すフロー図である。図3と同様の処理については、詳細な説明を省略する。図9の動作を実施する着底判定システムSYSは、第1の実施形態の着底判定システムSYSの機能に加えて、ウェーブレット解析を実施する機能を有する。
【0068】
この実施形態の着底判定システムSYSの構成は、図2に示した着底判定システムSYSの構成と同様である。また、この実施形態の着底判定システムSYSは、図1と同様に、締め固め装置を装備したサンドコンパクション船に設置される。図9のフローは、図3のステップS20、S30の代わりにステップS20A、30Aが実施され、新たにステップS92A、S94Aが実施されることを除き、図3の動作フローと同様である。
【0069】
ステップS10の後、ステップS20Aにおいて、制御装置50は、受信した加速度データのFFT解析とともに、ウェーブレット解析を開始し、ウェーブレット解析により振動の周波数特性の時間変化を算出する。これ以降、制御装置50は、加速度データの受信と加速度データのFFT解析およびウェーブレット解析とを図3に示す処理が終了するまで継続する。
【0070】
次に、ステップS30Aにおいて、制御装置50は、図4に例示した加速度データの時間変化を示すグラフおよび加速度データの周波数特性を示すグラフとともに、ウェーブレット解析により得られた周波数特性の時間変化を示すスカログラムの表示を開始する。なお、制御装置50は、加速度データの時間変化を示すグラフと、周波数特性を示すグラフと、スカログラムとを表示画面に表示しなくてもよい。この後、制御装置50は、図3と同様に、ステップS40からステップS80の処理を実施する。
【0071】
制御装置50は、ステップS90で着底層への到達を判定した後、ステップS92Aにおいて、ウェーブレット解析により得たスカログラムのデータに基づいて、卓越周波数の変化を抽出する。
【0072】
次に、ステップS94Aにおいて、制御装置50は、卓越周波数の変化に基づいて、ケーシングパイプ12の先端が着底層に到達したか否かを再判定する。制御装置50は、スカログラムのデータが着底層への到達を示す場合、処理をステップS100に移行し、着底層への到達が疑われる場合、処理をステップS60に戻す。
【0073】
例えば、制御装置50は、スカログラムのデータが軟弱層の貫入中を示す卓越周波数から着底層の貫入中を示す卓越周波数に変化している場合、着底層への到達を判定する。一方、制御装置50は、スカログラムのデータが軟弱層の貫入中を示す卓越周波数から着底層の貫入中を示す卓越周波数に変化していない場合、着底層に到達していないと判定する。
【0074】
そして、制御装置50は、ステップS100において、着底層への到達を示す着底情報を表示画面等に出力し、図9の処理を終了する。このように、制御装置50は、ステップS90とステップS94Aとによる二重の判定に基づいて、ケーシングパイプ12の先端が着底層に到達したか否かを判定する。これにより、着底層への到達判定の精度を向上することができる。また、ケーシングパイプ12の先端が着底層に貫入したことを確実に判定することができる。
【0075】
図10は、図9のステップS30Aで表示されるスカログラムの一例を示す図である。ケーシングパイプ12の先端が軟弱層を貫入中の場合、スカログラムは、卓越周波数がバイブロハンマ16の振動周波数とほぼ同じ10Hzであることを示す。このとき、卓越周波数の帯域幅は狭い。
【0076】
一方、ケーシングパイプ12の先端が着底層を貫入中の場合、スカログラムは、卓越周波数がバイブロハンマ16の振動周波数と異なる65Hzになりつつあることを示す。なお、ケーシングパイプ12の先端が着底層を貫入中の場合、バイブロハンマ16の振動周波数に近い10Hzは、スカログラムに現れているが、65Hzおよび40Hzに比べて強度が小さい。また、スカログラムに現れてる10Hzの帯域幅は、ケーシングパイプ12の先端が軟弱層を貫入中の帯域幅とほぼ同じである。
【0077】
したがって、制御装置50は、卓越周波数が、バイブロハンマ16の振動周波数からバイブロハンマ16の振動周波数より高い周波数に変化したことを検出した場合、または、変化しつつあることを検出した場合、着底層への貫入を判定することができる。
【0078】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様に、制御装置50は、バイブロハンマ16からリーダマスト10に伝達される振動のピーク周波数のスペクトル値に基づいて、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を判定することができる。これにより、締め固め装置を動作させるオペレータ等は、オシログラフ等を読み取ることなく、制御装置50による判定結果に基づいて、ケーシングパイプ12の先端の着底層への到達を認識することができる。
【0079】
さらに、この実施形態では、制御装置50は、スカログラムから判定される卓越周波数が、バイブロハンマ16の振動周波数からバイブロハンマ16の振動周波数より高い周波数に変化したことに基づいて、着底層への貫入を判定することができる。あるいは、制御装置50は、スカログラムから判定される卓越周波数が、バイブロハンマ16の振動周波数からバイブロハンマ16の振動周波数より高い周波数に変化しつつあることを検出したことに基づいて、着底層への貫入を判定することができる。
【0080】
また、制御装置50は、スペクトルSvより大きいスペクトルの個数m(着底判定指数)とスカログラムとによる二重の判定に基づいて、ケーシングパイプ12の先端が着底層に到達したか否かを判定する。これにより、着底層への到達判定の精度を向上することができ、ケーシングパイプ12の先端が着底層に貫入したことを確実に判定することができる。
【0081】
図11は、図1のケーシングパイプ12の先端の海中での位置と経過時間との関係を示すオシログラフの一例を示す図である。図11に示すオシログラフは、ケーシングパイプの移動量に応じて判断されるケーシングパイプ12の海中での先端位置(深さ)の時間変化を示す。
【0082】
図11に示す例では、軟弱層の表面は水深20mであり、着底層の表面は33mである。軟弱層への貫入中に先端位置が浅くなっているのは、シルト抜き処理の実施を示す。シルト抜き処理の後、ケーシングパイプ12の先端に砂を入れて閉塞効果により砂を蓋として機能させ、軟弱層への貫入が継続される。
【0083】
ケーシングパイプ12の軟弱層への貫入速度はほぼ一定である。ケーシングパイプ12の先端が軟弱層を通過し、着底層に到達すると貫入速度は急速に低下する。従来、締め固め装置を操作するオペレータ等が、表示装置に表示されるオシログラフを読み取って、着底層への到達を判定している。
【0084】
ケーシングパイプ12の先端が着底層に到達した後、ケーシングパイプ12は所定量だけ着底層に貫入される。この後、砂杭の打設処理が開始される。砂杭の打設処理では、まず、ケーシングパイプ12内に所定量の砂が投入された後、ケーシングパイプ12が所定の長さ引き抜かれる。次に、バイブロハンマ16を振動させてケーシングパイプ12の先端で砂を着底層に向けて押圧することで、砂杭を部分的に形成する。この後、ケーシングパイプ12内への砂の投入と、ケーシングパイプ12の所定量の引き抜きと、バイブロハンマ16による砂の押圧とが繰り返され、軟弱層内に砂杭が形成される。
【0085】
図12は、図2の制御装置50のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53および外部記憶装置54を有する。また、制御装置50は、入力インタフェース部55、出力インタフェース部56、無線インタフェース部57および通信インタフェース部58を有する。例えば、CPU51、ROM52、RAM53、外部記憶装置54、入力インタフェース部55、出力インタフェース部56、無線インタフェース部57および通信インタフェース部58は、バスBUSを介して相互に接続される。
【0086】
CPU51は、OS(Operating System)および着底判定プログラム等の各種プログラムを実行し、制御装置50の全体の動作を制御する。CPU51は、着底判定プログラムを実行するコンピュータの一例である。
【0087】
ROM52は、CPU51により実行される着底判定プログラムを含む各種プログラムおよび各種パラメータ等を保持する。RAM53は、CPU51により実行される各種プログラムや、プログラムで使用するデータ等を記憶する。外部記憶装置54は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等であり、RAM53に展開される各種プログラムを記憶する。
【0088】
入力インタフェース部55には、制御装置50を操作するオペレータ等からの入力を受け付けるマウスまたはキーボード等の入力装置60が接続可能である。出力インタフェース部56には、表示画面を有する表示装置、スピーカー、ライトまたはプリンタ等の各種出力装置70が接続可能である。制御装置50が、ノートパソコンまたはタブレット等の携帯端末の場合、入力装置60および出力装置70の一部は、制御装置50に内蔵されていてもよい。
【0089】
無線インタフェース部57は、例えば、図2の無線ユニット40bとの間で無線通信を実施する。通信インタフェース部58は、制御装置50をネットワーク等に接続する。
【0090】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0091】
10 リーダマスト
12 ケーシングパイプ
14 ホッパー
16 バイブロハンマ
18 ショックアブソーバ
20 砂杭打設機構部
22 ガイドローラ
24 スライドガイド
30 センサユニット
40 計測装置
40a ひずみ測定ユニット
40b 無線ユニット
40c バッテリーユニット
50 制御装置
51 CPU
52 ROM
53 RAM
54 外部記憶装置
55 入力インタフェース部
56 出力インタフェース部
57 無線インタフェース部
60 入力装置
70 出力装置
ANGL アングル
BUS バス
CABL ケーブル
CLMP クランプ
SNS(SNS1、SNS2、SNS3) 加速度センサ
SYS 着底判定システム
W 吊下ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイブロハンマの振動により海底の軟弱層に貫入されるケーシングパイプが、前記軟弱層の下層の支持地盤である着底層に着底したことを判定する着底判定システムであって、
前記バイブロハンマを支持する支柱に取り付けられ、前記バイブロハンマから伝達される振動を検出するセンサと、
前記ケーシングパイプの海底への貫入中に前記センサにより検出される振動の周波数特性を繰り返し算出し、算出した周波数特性が前記バイブロハンマの固有の第1のピーク周波数に加えて、前記固有の第1のピーク周波数より高い複数の第2のピーク周波数を含むことを検出し、検出した複数の前記第2のピーク周波数のうち、スペクトル値が前記第1のピーク周波数のスペクトル値より高い第2のピーク周波数の個数が第1の基準個数以上の場合、前記ケーシングパイプの先端の前記着底層への到達を判定する判定部と
を有することを特徴とする着底判定システム。
【請求項2】
前記判定部は、スペクトル値が前記第1のピーク周波数のスペクトル値より高い第2のピーク周波数の個数が前記第1の基準個数以上であると判定した回数が基準回数以上の場合、前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする請求項1に記載の着底判定システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1の基準個数以上の第2のピーク周波数の個数の第1の所定時間当たりの平均値を算出し、算出した平均値が第2の基準個数以上であると判定した場合、前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする請求項1に記載の着底判定システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記平均値が第2の基準個数以上であるとの判定が、前記第1の所定時間より長い第2の所定時間継続する場合、前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする請求項3に記載の着底判定システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記センサが検出した振動の周波数特性の時間変化をウェーブレット解析により算出し、ピーク周波数による前記着底層への到達と前記ウェーブレット解析による前記着底層への到達とがともに判定されたとき、前記ケーシングパイプの先端の前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の着底判定システム。
【請求項6】
前記判定部は、前記ウェーブレット解析により得られるスカログラムのデータに基づいて、卓越周波数が前記第1のピーク周波数から前記第2のピーク周波数に変化したことを検出した場合、ウェーブレット解析による前記着底層への到達を判定することを特徴とする請求項5に記載の着底判定システム。
【請求項7】
バイブロハンマの振動により海底の軟弱層に貫入されるケーシングパイプが、前記軟弱層の下層の支持地盤である着底層に着底したことを判定する着底判定方法であって、
前記バイブロハンマを支持する支柱に取り付けられるセンサにより、前記バイブロハンマから伝達される振動を検出し、
前記ケーシングパイプの海底への貫入中に前記センサにより検出される振動の周波数特性を繰り返し算出し、算出した周波数特性が前記バイブロハンマの固有の第1のピーク周波数に加えて、前記固有の第1のピーク周波数より高い複数の第2のピーク周波数を含むことを検出し、検出した複数の前記第2のピーク周波数のうち、スペクトル値が前記第1のピーク周波数のスペクトル値より高い第2のピーク周波数の個数が第1の基準個数以上の場合、前記ケーシングパイプの先端の前記着底層への到達を判定すること
を特徴とする着底判定方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
一つの観点によれば、着底判定システムは、バイブロハンマの振動により海底の軟弱層に貫入されるケーシングパイプが、前記軟弱層の下層の支持地盤である着底層に着底したことを判定する着底判定システムであって、前記バイブロハンマを支持する支柱に取り付けられ、前記バイブロハンマから伝達される振動を検出するセンサと、前記ケーシングパイプの海底への貫入中に前記センサにより検出される振動の周波数特性を繰り返し算出し、算出した周波数特性が前記バイブロハンマの固有の第1のピーク周波数に加えて、前記固有の第1のピーク周波数より高い複数の第2のピーク周波数を含むことを検出し、検出した複数の前記第2のピーク周波数のうち、スペクトル値が前記第1のピーク周波数のスペクトル値より高い第2のピーク周波数の個数が第1の基準個数以上の場合、前記ケーシングパイプの先端の前記着底層への到達を判定する判定部とを有することを特徴とする。