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  • 特開-ビードコア被覆装置 図1
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  • 特開-ビードコア被覆装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100341
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ビードコア被覆装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/48 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
B29D30/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000916
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賀貴
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VA11
4F215VD12
4F215VD14
4F215VL17
4F215VL32
4F215VP09
4F215VP11
(57)【要約】
【課題】押出機から押し出したゴムシートを回転ドラムを介してビードコアに貼り付ける装置において、回転ドラムのドラム径を大きくすることができるビードコア被覆装置を提供する。
【解決手段】ビードコア被覆装置は、押出機と、回転ドラムと、回転ドラムの外周面とビードコアの内周面が近接するようにビードコアを回転可能に支持するカバーリング装置と、押出機から押し出したゴムシートを先端から回転ドラムの外周面に巻き付けていき、回転ドラムの外周面上にあるゴムシートの幅方向の一部を先端から回転するビードコアの内周面に貼り付け、ビードコアの内周面に貼り付けられたゴムシートの幅方向の残部をカバーリング装置によりビードコアの断面形状に沿って巻き付けるように、押出機、回転ドラム及びカバーリング装置を制御する制御部と、を備え、回転ドラムの回転軸は、ビードコアの回転軸と同一平面上に、ビードコアの回転軸に対して傾斜して配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のビードコアを帯状のゴムシートで被覆するビードコア被覆装置であって、
前記ゴムシートを押し出す押出機と、
前記押出機から押し出された前記ゴムシートを巻き付ける回転ドラムと、
前記押出機よりも前記回転ドラムの回転方向下流側の位置で、前記回転ドラムの外周面と前記ビードコアの内周面が近接するように、前記ビードコアを回転可能に支持するカバーリング装置と、
前記押出機から押し出した前記ゴムシートを先端から前記回転ドラムの外周面に巻き付けていき、前記ゴムシートが前記回転ドラムの外周面の全周に亘って巻き付けられる前に、前記回転ドラムの外周面上にある前記ゴムシートの幅方向の一部を前記先端から回転する前記ビードコアの内周面に貼り付け、前記ビードコアの内周面に貼り付けられた前記ゴムシートの幅方向の残部を前記カバーリング装置により前記ビードコアの断面形状に沿って巻き付けるように、前記押出機、前記回転ドラム、及び前記カバーリング装置を制御する制御部と、を備え、
前記回転ドラムの回転軸は、前記ビードコアの回転軸と同一平面上に、前記ビードコアの回転軸に対して傾斜して配置される、ビードコア被覆装置。
【請求項2】
前記回転ドラムの回転軸は、前記ビードコアの回転軸に対して15±10度の角度で傾斜する、請求項1に記載のビードコア被覆装置。
【請求項3】
前記押出機の押出方向先端側に接続されて、前記押出機から供給されたゴムを吐出する吐出口が端面に形成されたギアポンプを備え、
前記吐出口及び前記回転ドラムの回転軸を含む平面において、前記ギアポンプの端面と前記回転ドラムの外周面とのなす角度は、30度以下である、請求項1又は2に記載のビードコア被覆装置。
【請求項4】
前記回転ドラムのドラム径は、前記ビードコアの内径の0.3倍以上である、請求項1~3の何れか1項に記載のビードコア被覆装置。
【請求項5】
前記カバーリング装置は、前記ビードコアを挟んで前記回転ドラムと対向して前記ビードコアを押圧する押さえローラを備え、
前記押さえローラは、ローラ本体と、前記ローラ本体の軸方向端に設けられた鍔とを有する、請求項1~4の何れか1項に記載のビードコア被覆装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビードコア被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、空気入りタイヤのビードには、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコアが配されている。このビードコアの表面は、鋼線等を一体化するために薄いゴムシートで被覆される場合がある。このゴムシートは、カバーゴム或いはビードカバーゴムと呼ばれることもある。
【0003】
下記特許文献1には、押出機から押し出したゴムシートを先端から回転ドラムの外周面に巻き付ける工程と、前記ゴムシートが前記回転ドラムの外周面の全周に亘って巻き付けられる前に、前記回転ドラムの外周面上にある前記ゴムシートの幅方向の一部を前記先端から回転するビードコアの外表面に貼り付ける工程と、前記ビードコアの外表面に貼り付けられた前記ゴムシートの幅方向の残部を前記ビードコアの断面形状に沿って巻き付ける工程と、を備えるビードコア被覆方法が開示されている。すなわち、特許文献1のビードコア被覆方法では、押出機から押し出したゴムシートを、回転ドラムの外周面に一旦巻き付けた後に、回転ドラム上のゴムシートをビードコアの外表面に貼り付けるようにしている。これにより、押出機から押し出したゴムシートの寸法変化を防いで、ビードコアをゴムシートで高精度に被覆することができる。
【0004】
ところで、特許文献1のビードコア被覆方法において、例えば、回転ドラム上のゴムシートとビードコアとの間の周方向の接触面積を大きくして、ゴムシートをビードコアへ貼り付けしやすくする観点から、ビードコアの内周側に押出機と回転ドラムを配置し、且つ回転ドラムのドラム径を出来る限り大きくすることが望まれる。しかしながら、ビードコアの内周側に押出機と回転ドラムを配置する構成では、ビードコアの内径のサイズに制約を受けるため、回転ドラムのドラム径を大きくすることが難しい。そこで、回転ドラムのドラム径を大きくするためには、回転ドラムとビードコアの配置を改良する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-51670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、押出機から押し出したゴムシートを回転ドラムを介してビードコアに貼り付ける装置において、回転ドラムのドラム径を大きくすることができるビードコア被覆装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のビードコア被覆装置は、環状のビードコアを帯状のゴムシートで被覆するビードコア被覆装置であって、
前記ゴムシートを押し出す押出機と、
前記押出機から押し出された前記ゴムシートを巻き付ける回転ドラムと、
前記押出機よりも前記回転ドラムの回転方向下流側の位置で、前記回転ドラムの外周面と前記ビードコアの内周面が近接するように、前記ビードコアを回転可能に支持するカバーリング装置と、
前記押出機から押し出した前記ゴムシートを先端から前記回転ドラムの外周面に巻き付けていき、前記ゴムシートが前記回転ドラムの外周面の全周に亘って巻き付けられる前に、前記回転ドラムの外周面上にある前記ゴムシートの幅方向の一部を前記先端から回転する前記ビードコアの内周面に貼り付け、前記ビードコアの内周面に貼り付けられた前記ゴムシートの幅方向の残部を前記カバーリング装置により前記ビードコアの断面形状に沿って巻き付けるように、前記押出機、前記回転ドラム、及び前記カバーリング装置を制御する制御部と、を備え、
前記回転ドラムの回転軸は、前記ビードコアの回転軸と同一平面上に、前記ビードコアの回転軸に対して傾斜して配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ビードコア被覆装置の構成の一例を模式的に示す正面図
図2図1のビードコア被覆装置のII-II線断面図
図3】ビードコアの断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ビードコア被覆装置における一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0010】
本実施形態のビードコア被覆装置は、所定幅を有する長尺な帯状のゴムシートで環状のビードコアを被覆するためのものである。なお、本実施形態のビードコアは、断面六角形状のものとして説明するが、これに限定されず、ビードコアの断面形状は、四角形や丸形等でもよい。
【0011】
図1はビードコア被覆装置1の構成の一例を模式的に示す正面図である。図2図1のビードコア被覆装置1のII-II線断面図である。ビードコア被覆装置1は、押出機2と、回転ドラム3と、カバーリング装置4と、押出機2、回転ドラム3、及びカバーリング装置4を制御する制御部(図示していない)と、を備えている。なお、図2の断面図において、回転ドラム3、ゴムシートS、及びビードコア8以外は、平面視で描かれている。
【0012】
以下の説明においては、図1及び図2に示すように、環状のビードコア8の中心軸と平行な方向をX方向、ビードコア8の径方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。
【0013】
押出機2は、円筒形のバレル2aと、バレル2aの供給口に接続されたホッパー2bと、バレル2a内でゴムを混練して先端側に送り出すスクリュー(図示していない)と、スクリューを回転駆動させるスクリュー用モータ2cとを有する。スクリュー用モータ2cの作動は、制御部により制御される。
【0014】
押出機2の押出方向先端側には、ギアポンプ20が接続され、ギアポンプ20の先端側は口金21に接続されている。押出機2により混練されたゴム材料は、ギアポンプ20に供給される。ギアポンプ20は、端面20bを有し、端面20bには吐出口(図示していない)が形成されている。ギアポンプ20は、押出機2から供給されたゴムを吐出口から吐出して、口金21に対して定量のゴムを供給する。口金21からは所定の押出量でゴムシートSが押し出される。
【0015】
ギアポンプ20は、一対のギア20aを有しており、口金21に向けてゴムを送り出す機能を有する。一対のギア20aは、それぞれギア用モータ(図示していない)によって回転駆動され、ギア用モータの作動は、制御部により制御される。ギア用モータの回転数及びスクリュー用モータ2cの回転数を制御部により連動させて制御することで、口金21から押し出されるゴムシートSの押出量を制御することができる。
【0016】
なお、本実施形態では、押出機2の押出方向先端側にギアポンプ20が接続された、いわゆる外付けギアポンプを用いる例を示している。ただし、これに替えて、押出機内にギアポンプを内蔵したギアポンプ内蔵型押出機を用いるようにしてもよい。本開示において、ギアポンプ内蔵型押出機は、外付けギアポンプを接続した押出機に比べ、押出量を容易に制御することができ、なおかつギア用モータが不要なので押出機先端部がコンパクトになりより好ましい。
【0017】
押出機2、ギアポンプ20及び口金21は、一体として前後駆動装置(図示していない)より押出方向の前後に移動可能に構成されている。押出機2は、前進することによって回転ドラム3に接近し、後退することによって回転ドラム3から遠ざかる。前後駆動装置の作動も、制御部により制御される。
【0018】
回転ドラム3は、サーボモータ30により回転軸3rの周りに回転可能に構成されている。サーボモータ30の作動は、制御部により制御される。回転ドラム3の外周面3aには、口金21を介して押し出されたゴムシートSが供給され、ゴムシートSが貼り付いた状態で回転ドラム3をR1方向に回転駆動することにより、ゴムシートSを周方向に沿って巻き付けることができる。回転ドラム3の外周面3aは金属製となっている。回転ドラム3の外径(以下、ドラム径ともいう)は、例えば200~400mmである。
【0019】
回転ドラム3は、外周面3aを冷却する冷却機構又は加熱する加熱機構(何れも図示していない)を備えることが好ましい。冷却機構又は加熱機構としては、例えば、回転ドラム3の内部に冷却水又は温水を循環させる機構が用いられる。また、回転ドラム3の外周面3aは、貼り付けたゴムシートSを剥がしやすいような表面処理が行われたり、材質が用いられたりする。
【0020】
カバーリング装置4は、押出機2よりも回転ドラム3の回転方向R1下流側の位置で回転ドラム3の外周面3aとビードコア8の内周面が近接するようにビードコア8を回転可能に支持する。ビードコア8は、回転軸4rの周りを回転する。回転ドラム3のドラム径はビードコア8の内径よりも小さくなっており、回転ドラム3は、正面視において、カバーリング装置4に支持されるビードコア8の内周側に配置されている。回転ドラム3のドラム径は、ビードコア8の内径の0.3倍以上であるのが好ましく、0.4倍以上であるのがより好ましい。回転ドラム3のドラム径をビードコア8の内径の0.3倍以上とすることで、回転ドラム3上のゴムシートSとビードコア8との間の周方向の接触面積が大きくなるため、ゴムシートSをビードコア8へ貼り付けしやすくなる。なお、ゴムシートSとビードコア8は、回転ドラム3のドラム径とビードコア8の内径が異なるため、理論上互いに線接触となるが、実際には、ゴムシートSが貼り付けの際に押圧されて変形するため、互いに面接触となり得る。回転ドラム3のドラム径をビードコア8の内径に近付けることで、ゴムシートSとビードコア8との間の周方向の接触長さが増大するため、ゴムシートSとビードコア8との間の周方向の接触面積が大きくなる。特に限定されないが、ゴムシートSとビードコア8との間の周方向の接触長さは2~5mm程度である。
【0021】
カバーリング装置4は、ビードコア8の内周面に貼り付けられたゴムシートSをビードコア8の断面形状に沿って巻き付けるためのものである。カバーリング装置4は、支持したビードコア8をR2方向に回転させることができる。ビードコア8は、回転ドラム3の回転により従動的に回転する。
【0022】
図3は、ビードコア8の断面図を示す。ビードコア8は、断面六角形状をしており、内周面8a、外周面8d、内周側の一対の下側面8b,8f、および外周側の一対の上側面8c,8eを有する。
【0023】
内周面8aは、ビードコア8の回転軸4rに対して傾斜している。内周面8aのビードコア8の回転軸4rに対する傾斜角度θ1は、15~20度である。なお、本開示において、ビードコア8の内周面8aとは、ビードコア8の外表面(本実施形態においては外表面8a~8f)のうちビードコア8の回転軸4rに対する傾斜角度が最も小さい面とする。
【0024】
ビードコア8の内径は、例えば400~650mmである。なお、ビードコア8の内径とは、内周面8aのうち最も回転軸4rに近い位置での直径であり、図3に示すビードコア8においては内周面8aと下側面8fの交線からなる円の直径である。
【0025】
ビードコア8の外表面には、ゴムシートSが巻き付けられる。帯状のゴムシートSは、初めに幅方向の中央部がビードコア8の内周面8aに貼り付けられ、その後、幅方向の一方側が順に下側面8b、上側面8c、外周面8dに貼り付けられ、幅方向の他方側が順に下側面8f、上側面8e、外周面8dに貼り付けられる。
【0026】
カバーリング装置4は、押さえローラ41を備える。押さえローラ41は、ビードコア8の一部を挟んで回転ドラム3と対向する位置に配置される。押さえローラ41は、図2に示すように、ローラ本体411と、ローラ本体411の軸方向端に設けられた鍔412とを有する、いわゆる鍔付きローラである。
【0027】
押さえローラ41の回転軸41Aは、回転ドラム3の回転軸3rと略平行となっており、ローラ本体411の外周面がビードコア8の外周面8dに接触しながら押さえローラ41は回転する。また、押さえローラ41は、ビードコア8に向かって前後に移動可能に構成されている。これにより、回転ドラム3の外周面3a上にあるゴムシートSの幅方向の中央部を、回転するビードコア8の内周面8aに貼り付ける際、押さえローラ41はビードコア8の外周面8dを押圧することができる。なお、押さえローラ41は、ビードコア8の回転により従動的に回転する従動ローラである。
【0028】
ビードコア8は、内周面8aにゴムシートSを貼り付けられる際に、回転ドラム3から押されて+X方向の力がかかる。押さえローラ41が鍔412を備えることで、ビードコア8の+X方向の移動を規制することができる。
【0029】
カバーリング装置4は、ゴムシートSをビードコア8の断面形状に沿って巻き付けるために、複数のローラ42~46を備える。複数のローラ42~46は、特に限定されないが、それぞれ以下のような機能を有する。ローラ42は、例えば下側面8b,8fに対してゴムシートSを貼り付ける。ローラ44は、例えば上側面8c及び外周面8dに対してゴムシートSを貼り付ける。ローラ45は、例えば上側面8e及び外周面8dに対してゴムシートSを貼り付ける。ローラ43は、ローラ44及びローラ45によってゴムシートSを上側面8c,8e及び外周面8dに対して貼り付けやすくなるように、ゴムシートSの幅方向両端部をビードコア8に近付く方向に折り曲げる。ローラ46は、ゴムシートSの幅方向両端部をビードコア8の外周面8dに圧着する。なお、ビードコア8を挟んでローラ42,44,45,46に対向する位置には、それぞれ補助ローラが配置されている。また、カバーリング装置4は、回転するビードコア8の蛇行を防止する複数のガイドローラ47を備えている。
【0030】
次いで、回転ドラム3とビードコア8の位置関係について説明する。図1に示すように、回転ドラム3の回転軸3rは、ビードコア8の回転軸4rと同じXY平面上に配置されている。また、回転ドラム3の回転軸3rは、図2に示すように、ビードコア8の回転軸4rに対して傾斜して配置されている。これにより、Z方向視で回転ドラム3とビードコア8の重なりを小さくできるため、回転ドラム3のドラム径をビードコア8の内径に近付くように大きくすることができる。回転ドラム3のドラム径を大きくすることで、回転ドラム3上のゴムシートSとビードコア8との間の周方向の接触面積が大きくなるため、ゴムシートSをビードコア8へ貼り付けしやすくなる。また、回転ドラム3のドラム径を大きくすることで、冷却機構による外周面3aの冷却効果を得やすくなり、ゴムシートSが外周面3aから剥がれない等の不具合を防止できる。さらに、回転ドラム3のドラム径を大きくすることで、外周面3aの曲率を小さくできるため、口金21と外周面3aとの間の隙間で形成されるゴムシートSの厚みを調整しやすくなる。
【0031】
回転ドラム3の回転軸3rのビードコア8の回転軸4rに対する傾斜角度θ2は、15±10度であり、好ましくは15±5度である。なお、傾斜角度θ2は、回転ドラム3の回転軸3rとビードコア8の回転軸4rとを含む平面(前述のように本実施形態においてはXY平面)における角度である。傾斜角度θ2が5度より小さいと、Z方向視において、回転ドラム3とビードコア8の重なりが大きくなるため、回転ドラム3のドラム径を大きくするのが難しくなる。傾斜角度θ2が25度よりも大きいと、傾斜角度θ1との差が大きくなるため、ビードコア8の内周面8aにゴムシートSを適切に貼り付けるのが難しくなる。
【0032】
傾斜角度θ2は、傾斜角度θ1に対して±5度の範囲とするのが好ましく、±2度の範囲とするのがより好ましく、±0度とするのが特に好ましい。すなわち、傾斜角度θ2は、傾斜角度θ1と一致するのが特に好ましく、例えば15~20度である。傾斜角度θ2が傾斜角度θ1に対して±5度の範囲を超えると、回転ドラム3上のゴムシートSをビードコア8の内周面8aに貼り付けるのが難しくなる。
【0033】
次いで、押出機2と回転ドラム3の位置関係について説明する。ギアポンプ20の端面20bに形成された吐出口は、図1に示すように、回転ドラム3の回転軸3rと同じXY平面上に配置されている。このギアポンプ20の吐出口及び回転ドラム3の回転軸3rを含むXY平面において、ギアポンプ20の端面20bは、回転ドラム3の外周面3aに対して傾斜して配置されている。ギアポンプ20の端面20bと回転ドラム3の外周面3aとのなす角度θ3は、30度以下であり、好ましくは20度以下である。角度θ3を30度以下とすることで、口金21の内部に形成されるゴム流路の湾曲を小さくできるため、口金21の開口幅方向における流速差を小さくできる。
【0034】
以上のように、本実施形態に係るビードコア被覆装置1は、環状のビードコア8を帯状のゴムシートSで被覆するビードコア被覆装置1であって、ゴムシートSを押し出す押出機2と、押出機2から押し出されたゴムシートSを巻き付ける回転ドラム3と、押出機2よりも回転ドラム3の回転方向R1下流側の位置で、回転ドラム3の外周面3aとビードコア8の内周面8aが近接するように、ビードコア8を回転可能に支持するカバーリング装置4と、押出機2から押し出したゴムシートSを先端から回転ドラム3の外周面3aに巻き付けていき、ゴムシートSが回転ドラム3の外周面3aの全周に亘って巻き付けられる前に、回転ドラム3の外周面3a上にあるゴムシートSの幅方向の一部を先端から回転するビードコア8の内周面8aに貼り付け、ビードコア8の内周面8aに貼り付けられたゴムシートSの幅方向の残部をカバーリング装置4によりビードコア8の断面形状に沿って巻き付けるように、押出機2、回転ドラム3、及びカバーリング装置4を制御する制御部と、を備え、回転ドラム3の回転軸3rは、ビードコア8の回転軸4rと同一平面上に、ビードコア8の回転軸4rに対して傾斜して配置されるものである。
【0035】
この構成によれば、Z方向視で回転ドラム3とビードコア8の重なりを小さくできるため、回転ドラム3のドラム径をビードコア8の内径に近付くように大きくすることができる。
【0036】
また、本実施形態に係るビードコア被覆装置1においては、回転ドラム3の回転軸3rは、ビードコア8の回転軸4rに対して15±10度の角度θ2で傾斜する、という構成である。
【0037】
この構成によれば、回転ドラム3のドラム径を大きくすることができる。さらに、図3に示すような内周面8aがビードコア8の回転軸4rに対して傾斜するビードコア8の場合であっても、ビードコア8の内周面8aにゴムシートSを適切に貼り付けることができる。
【0038】
また、本実施形態に係るビードコア被覆装置1においては、押出機2の押出方向先端側に接続されて、押出機2から供給されたゴムを吐出する吐出口が端面20bに形成されたギアポンプ20を備え、吐出口及び回転ドラム3の回転軸3rを含む平面において、ギアポンプ20の端面20bと回転ドラム3の外周面3aとのなす角度θ3は、30度以下である、という構成である。
【0039】
この構成によれば、口金21の内部に形成されるゴム流路の湾曲を小さくできるため、口金21の開口幅方向における流速差を小さくできる。
【0040】
また、本実施形態に係るビードコア被覆装置1においては、回転ドラム3のドラム径は、ビードコア8の内径の0.3倍以上である、という構成である。
【0041】
この構成によれば、回転ドラム3上のゴムシートSとビードコア8との間の周方向の接触面積が大きくなるため、ゴムシートSをビードコア8へ貼り付けしやすくなる。
【0042】
また、本実施形態に係るビードコア被覆装置1においては、カバーリング装置4は、ビードコア8を挟んで回転ドラム3と対向してビードコア8を押圧する押さえローラ41を備え、押さえローラ41は、ローラ本体411と、ローラ本体411の軸方向端に設けられた鍔412とを有する、という構成である。
【0043】
この構成によれば、内周面8aにゴムシートSが貼り付けられる際に、ビードコア8が回転ドラム3から押されて軸方向へ移動することを防止できる。
【0044】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0046】
(1)上記実施形態に係るビードコア被覆装置1においては、回転ドラム3の回転軸3rは、ビードコア8の回転軸4rに対して15±10度の角度θ2で傾斜する、という構成である。しかしながら、ビードコア被覆装置1は、かかる構成に限られない。例えば、ビードコア8の内周面8aの回転軸4rに対する傾斜角度θ1が15度よりも小さい場合、傾斜角度θ2を15度よりも小さくするのが好ましい場合がある。
【0047】
(2)上記実施形態に係るビードコア被覆装置1においては、押出機2の押出方向先端側に接続されて、押出機2から供給されたゴムを吐出する吐出口が端面20bに形成されたギアポンプ20を備え、吐出口及び回転ドラム3の回転軸3rを含む平面において、ギアポンプ20の端面20bと回転ドラム3の外周面3aとのなす角度θ3は、30度以下である、という構成である。しかしながら、ビードコア被覆装置1は、かかる構成に限られない。例えば、口金21が開口幅方向における流速差を小さくできる機構を備える場合、角度θ3を30度よりも大きくすることができ、これにより、回転ドラム3のドラム径をさらに大きくすることができる。また、上記実施形態においては、ギアポンプ20の端面20bが回転ドラム3の外周面3aに対して傾斜しているが、これに限定されず、ギアポンプ20の端面20bは回転ドラム3の外周面3aと平行でもよい。
【0048】
(3)上記実施形態に係るビードコア被覆装置1においては、回転ドラム3のドラム径は、ビードコア8の内径の0.3倍以上である、という構成である。しかしながら、ビードコア被覆装置1は、かかる構成に限られない。例えば、ビードコア8の内径が十分に大きい場合、回転ドラム3のドラム径をビードコア8の内径の0.3倍よりも小さくしても、回転ドラム3上のゴムシートSとビードコア8との間の周方向の接触面積を適切に確保することができる。
【0049】
(4)上記実施形態に係るビードコア被覆装置1においては、押出機2の口金21の先端と回転ドラム3の外周面3aとが最も近接する位置と、ビードコア8の内周面8aと回転ドラム3の外周面3aとが最も近接する位置とが、回転ドラム3の回転方向R1に180°ずれているが、これに限定されず、90°や270°ずれていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…ビードコア被覆装置、2…押出機、3…回転ドラム、3a…回転ドラムの外周面、3r…回転ドラムの回転軸、4…カバーリング装置、4r…ビードコアの回転軸、8…ビードコア、8a…ビードコアの内周面、8b…ビードコアの下側面、8c…ビードコアの上側面、8d…ビードコアの外周面、8e…ビードコアの上側面、8f…ビードコアの下側面、20…ギアポンプ、20a…ギア、20b…ギアポンプの端面、21…口金、41…押さえローラ、41A…押さえローラの回転軸、42~46…ローラ、47…ガイドローラ、411…ローラ本体、412…鍔、R1…回転ドラムの回転方向、R2…ビードコアの回転方向、S…ゴムシート、θ1…ビードコアの内周面の回転軸に対する傾斜角度、θ2…回転ドラムの回転軸のビードコアの回転軸に対する傾斜角度、θ3…ギアポンプの端面と回転ドラムの外周面とのなす角度
図1
図2
図3