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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100354
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】電柱昇降器及び張出部
(51)【国際特許分類】
   E06C 1/383 20060101AFI20230711BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
E06C1/383 C
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000943
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】戸野 颯太
(72)【発明者】
【氏名】和田 衛
(72)【発明者】
【氏名】藤田 咲良
【テーマコード(参考)】
2E044
5G352
【Fターム(参考)】
2E044AA01
2E044BA12
2E044BB06
2E044BC12
2E044BC15
2E044BC22
2E044CA07
2E044CB02
2E044DA01
2E044DC03
5G352AB02
5G352AB04
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でありながら確実に電柱の昇降作業の手間や危険性を軽減できる電柱昇降器及び張出部を提供する。
【解決手段】電柱昇降器1は、複数の長尺体がジョイントを介して折り畳み可能に接続されてなる主柱56と、この主柱56の上端部に設けられ、主柱56を電柱の第一足場ボルトに係止する係止体と、長尺体にそれぞれ設けられる複数のステップと、長尺体のうち、最も下方に配置される最下長尺体53から延設される張出部2と、張出部2を最下長尺体53に対して取り付ける取付手段3を備え、張出部2は、長尺の張出体4と、この張出体4の下端4aに設けられる張出ステップ5,5を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱の昇降をするために用いられる電柱昇降器であって、
複数の長尺体がジョイントを介して折り畳み可能に接続されてなる主柱と、この主柱の上端部に設けられ、前記主柱を前記電柱の第一足場ボルトに係止する係止体と、複数の前記長尺体にそれぞれ設けられる複数のステップと、複数の前記長尺体のうち、最も下方に配置される最下長尺体から延設される張出部と、この張出部を前記最下長尺体に対して取り付ける取付手段を備え、
前記張出部は、長尺の張出体と、この張出体の下端に設けられる張出ステップを備えることを特徴とする電柱昇降器。
【請求項2】
前記張出体及び複数の前記長尺体は、それぞれの横断面がコ字状をなし、
前記張出体の前記下端以外の部分が、前記最下長尺体の横断面に形成される凹部に収容可能であり、
前記取付手段は、前記最下長尺体の両側端面にそれぞれ形成される一対以上の第1のピン孔と、前記張出体の、一対以上の前記第1のピン孔の位置に対応した位置にそれぞれ形成される一対以上の第2のピン孔と、前記第1及び第2のピン孔に挿通される1本以上のピンを有するピン構造であることを特徴とする請求項1に記載の電柱昇降器。
【請求項3】
前記ピン構造の代わりに、フックを備え、
このフックは、前記張出体の上端と一体的に形成され、かつ前記最下長尺体の前記横断面に沿って架け渡される被掛止体へ掛止可能に形成されることを特徴とする請求項2に記載の電柱昇降器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電柱昇降器を構成する張出部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱の昇降をするために用いられる電柱昇降器に係り、特に、最も下方のステップの高さを地面に十分近づけることのできる電柱昇降器及びこれを構成する張出部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地面から電柱の第一足場ボルトまでの高さは1.8m以上必要であると規定されているため、電柱を昇降する作業においては、作業者が地面から第一足場ボルトに到達するための補助具として、電柱昇降器が用いられる。この電柱昇降器は、例えば、主柱と、この主柱に沿って間隔を空けて取り付けられる複数のステップと、主柱の上端部に設けられる係止体を備えている。
そして、電柱昇降器を使用する際には、最初に係止体を第一足場ボルトへ係止する。しかし、第一足場ボルトが地面から1.8mよりも遥かに高い位置にある場合、係止体を第一足場ボルトへ係止することが困難である。また、係止できたとしても、電柱昇降器の最も下方に配置されるステップが、作業者が足を掛けることができないほどの高い位置になる。そのため、脚立を使用して昇降器に昇らなければならない状況や、地面から無理に跳びついたために足元がステップから滑り、作業者が転倒するといった状況が見受けられた。
そこで、近年、このような作業負担や危険性を軽減することができる技術が開発されており、それに関して既に発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には「電柱昇降器」という名称で、電柱の第一足場ボルトまで安全に昇柱できる電柱昇降器に関する発明が開示されている。
以下、特許文献1に開示された発明について説明する。特許文献1に開示された発明は、筒体が他の筒体内に挿入され、挿入量を変えることで伸縮可能で、軸線方向に複数の挿入孔が形成された昇降器本体と、昇降器本体の挿入孔に挿入されることで、昇降器本体の伸縮を規制するとともに、足場として機能するステップと、昇降器本体を前記電柱に固定する固定バンドと、昇降器本体の上端部に設けられ、電柱に設けられた足場ボルトに係止されるフックと、を備えることを特徴とする。
このような発明によれば、電柱の第一足場ボルトから地上までの高さに合わせて昇降器本体を伸長させることができる。また、ステップを挿入する挿入孔はすべての筒体に間隔を空けて設けられるため、最も下方のステップの高さを地面に十分近づけることができる。したがって、脚立の使用や、無理な跳びつきが不要となって、作業に要する手間や転倒の危険性を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-192402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発明においては、電柱の第一足場ボルトから地上までの高さに合わせて昇降器本体を伸長させた後で、隣接する筒体の挿入孔同士をそれぞれ一致させるためには、筒体同士の伸縮位置の調整を要すると考えられる。そのため、脚立を使用する手間は省くことができるものの、伸縮位置の調整という新たな手間が発生するおそれがある。
また、昇降器本体の全長ではなく、その下方部分についての長さ調整によって、最も下方のステップの高さを地面に近づけるという課題を解決できるほうが、より簡易な構成となり、かつ簡単に使用可能になると考えられる。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、簡易な構成でありながら確実に電柱の昇降作業の手間や危険性を軽減できる電柱昇降器及び張出部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明は、電柱の昇降をするために用いられる電柱昇降器であって、複数の長尺体がジョイントを介して折り畳み可能に接続されてなる主柱と、この主柱の上端部に設けられ、主柱を電柱の第一足場ボルトに係止する係止体と、複数の長尺体にそれぞれ設けられる複数のステップと、複数の長尺体のうち、最も下方に配置される最下長尺体から延設される張出部と、この張出部を最下長尺体に対して取り付ける取付手段を備え、張出部は、長尺の張出体と、この張出体の下端に設けられる張出ステップを備えることを特徴とする。
このような発明において、主柱と、係止体と、複数のステップを備える電柱昇降器は、既存の電柱昇降器が使用されてもよい。また、「張出部を電柱昇降器に対して取り付ける取付手段」とは、例えば、張出体を最下長尺体に対してスライド可能に取り付ける構成や、張出体を最下長尺体に係止して、最下長尺体から下方に吊り下げる構成が考えられる。
さらに、張出部が不要な場合には、張出体を最下長尺体に沿って収容したり、最下長尺体から取り外したりすることが可能な構成が望ましい。
【0008】
上記構成の発明においては、張出部が最下長尺体から延設され、さらに張出体の下端に張出ステップを備えることから、張出ステップが最下長尺体の下端よりもさらに地面に近い高さに配置される。
また、張出部が不要な場合には、これを取り外すこと等により、電柱昇降器を従来の使用方法のとおりに使用できる。
【0009】
次に、第2の発明は、第1の発明において、張出体及び複数の長尺体は、それぞれの横断面がコ字状をなし、張出体の下端以外の部分が、最下長尺体の横断面に形成される凹部に収容可能であり、取付手段は、最下長尺体の両側端面にそれぞれ形成される一対以上の第1のピン孔と、張出体の、一対以上の第1のピン孔の位置に対応した位置にそれぞれ形成される一対以上の第2のピン孔と、第1及び第2のピン孔に挿通される1本以上のピンを有するピン構造であることを特徴とする。
【0010】
このような構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、張出部の使用時に、張出体を最下長尺体から下方に伸展させる場合と、張出部の不使用時に、張出体の下端以外が最下長尺体の凹部に収容される場合のいずれにおいても、ピンが第1及び第2のピン孔に挿通される。よって、このいずれの場合においても、ピン構造によって、張出体が最下長尺体に対して移動不能に固定される。なお、横断面とは、主柱の軸線方向と直交する方向の面をいい、張出体及び複数の長尺体の両側端面とは、それぞれの横断面において、互いに対向する面をいう。
【0011】
さらに、第3の発明は、第2の発明において、ピン構造の代わりに、フックを備え、このフックは、張出体の上端と一体的に形成され、かつ最下長尺体の横断面に沿って架け渡される被掛止体へ掛止可能に形成されることを特徴とする。
このような構成の発明においては、第2の発明の作用に加えて、張出部の使用時に、張出体の上端と一体的に形成されるフックを最下長尺体の被掛止体に係止することで、張出体が被掛止体に吊り下げられる。なお、最下長尺体の被掛止体としては、例えば、複数の長尺体を折り畳み可能に接続するジョイントや、最下長尺体に取り付けられるアダプターが考えられる。
【0012】
そして、第4の発明は、第1乃至第3のいずれかに記載の電柱昇降器を構成する張出部である。
このような構成の発明においては、張出部が設けられることで、第1乃至第3のいずれかに記載の電柱昇降器の作用が発揮される。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、張出ステップが最下長尺体の下端よりもさらに地面に近い高さに配置されるため、作業者は、張出ステップに足を掛けることが容易となる。したがって、従来の課題であった脚立の使用や無理な跳びつきによる手間や転倒の危険性を軽減することができる。
また、第1の発明によれば、張出部が不要な場合には、これを取り外すこと等により、電柱昇降器を従来の使用方法のとおりに使用できるので、地面から第一足場ボルトの高さに応じて、張出部使用の要否を簡単に選択できる。
さらに、第1の発明は、電柱昇降器本体の全長ではなく、その下方部分についての長さ調整によって、最も下方のステップの高さを地面に近づけることができる。そのため、従来技術と比較すると、より簡易な構成となり、かつ簡単に使用することができる。
【0014】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、ピン構造によって、張出体が最下長尺体に対して移動不能に固定されることから、張出部の使用時には、作業者が張出ステップへ安全に足を掛けることができる。また、張出部の不使用時には、最下長尺体に設けられるステップへ足を掛ける際に、張出部が邪魔になることがない。
【0015】
第3の発明によれば、第2の発明の効果に加えて、フックを最下長尺体の被掛止体に係止することで、張出体が被掛止体に吊り下げられるため、電柱昇降器に対して張出部を容易に着脱することができる。
【0016】
第4の発明によれば、第1乃至第3のいずれかの発明の効果を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は実施例に係る電柱昇降器の使用状態を示す平面図であり、(b)は(a)におけるA方向矢視図である。
図2】(a)は実施例に係る電柱昇降器を構成する張出部の平面図であり、(b)は(a)におけるB方向矢視図である。
図3】(a)は図1(a)におけるC-C線断面図であり、(b)は図1(a)におけるD-D線断面図である。
図4】(a)は実施例に係る電柱昇降器を使用していない状態を示す平面図であり、(b)は(a)におけるE方向矢視図である。
図5】実施例に係る電柱昇降器を折り畳んだ場合の外観図である。
図6】(a)は実施例の変形例に係る電柱昇降器を構成する張出部及び取付手段の一部を、図1(a)におけるA方向からみた場合の側面図であり、(b)は取付手段の残部の横断面であり、(c)は同電柱昇降器の使用状態を示す側面図である。
図7】(a)は従来技術に係る電柱昇降器を表側からみた場合の平面図であり、(b)は(a)におけるF方向からみた場合の同電柱昇降器の使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0018】
まず、従来技術に係る電柱昇降器の構成について、図7を用いて説明する。図7(a)は従来技術に係る電柱昇降器を表側からみた場合の平面図であり、図7(b)は同電柱昇降器の使用状態図である。
図7(a)及び図7(b)に示すように、従来技術に係る電柱昇降器50は、横断面がそれぞれコ字状をなす複数の長尺体51~53がジョイント54,55を介して折り畳み可能に接続されてなる主柱56と、この主柱56の上端部に設けられ、主柱56を電柱70の第一足場ボルト71に係止する環状の係止体57と、複数の長尺体51~53にそれぞれ設けられる複数のステップ58~60を備える。
このうち、長尺体51~53、係止体57は、いずれもアルミニウム製である。また、ジョイント54,55は、長尺体51,52の下端にそれぞれねじ固定される。
【0019】
さらに、ステップ58,58はジョイント54の両側端面にそれぞれ固着されており、ステップ59はジョイント55の一方の側端面に固着されている。
そして、長尺体53の下端には、ステップ60を長尺体53に固着するための固着部材61が、ねじ固定される。
なお、ステップ58~60は、それぞれ図中に示す矢印のように、主柱56に対して略90度の範囲内で傾動可能である。
【0020】
また、ステップ58,59の直下と、ステップ60の直上には、主柱56を電柱70の表面に当接させるための当接部材62~64がそれぞれジョイント54,55と、固着部材61に溶着されている。この当接部材62~64は、電柱70の表面にフィットするように円弧状をなしており、長尺体51~53を中心としてそれぞれ左右外方へ突出している。
加えて、当接部材62,63の下方には、電柱昇降器50の揺れを防止するための締め付けベルト65,66が、それぞれ長尺体52,53にねじ固定されている。
【0021】
次に、本発明の実施の形態に係る電柱昇降器について、図1乃至図5を用いて詳細に説明する。なお、図1乃至図5においては、締め付けベルトの図示を省略する。図1(a)は実施例に係る電柱昇降器の使用状態を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)におけるA方向矢視図である。また、図1(a)は、図7(a)とは逆に、実施例に係る電柱昇降器を裏側(電柱に当接させる側)からみた場合のものである。
図1(a)及び図1(b)に示すように、実施例に係る電柱昇降器1は、電柱の昇降をするために用いられる電柱昇降器であって、従来技術に係る電柱昇降器50の構成(図7参照)に加えて、複数の長尺体51~53のうち、最も下方に配置される最下長尺体53から延設される張出部2と、張出部2を電柱昇降器50の最下長尺体53に対して取り付ける取付手段3を備える。
【0022】
このうち、最下長尺体53は、その両側端面53a,53bに、取付手段3の一部として、二対の第1のピン孔7a,7bが形成される。
また、張出部2は、最下長尺体53と同等な長さを有する長尺の張出体4と、この張出体4の下端4aに設けられて、この下端4aを中心にしてそれぞれ左右外方に突出可能な張出ステップ5,5と、この張出ステップ5,5を下端4aに対して固定する固定部材6を備える。なお、張出体4と、固定部材6は、いずれもアルミニウム製である。
【0023】
続いて、張出部の構成について、図2を用いて説明する。図2(a)は実施例に係る電柱昇降器を構成する張出部の平面図であり、図2(b)は図2(a)におけるB方向矢視図である。なお、図1で示した構成要素については、図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、図2(a)は、図7(a)とは逆に、張出部を裏側からみた場合のものである。
図2(a)及び図2(b)に示すように、張出体4は、横断面がコ字状をなす(図3参照)とともに、張出体4の下端4a以外の部分が、最下長尺体53の横断面に形成される凹部53c(図3参照)に収容可能である。
また、張出ステップ5,5は、電柱昇降器50が備えるステップ58~60と同様の構造であって、図中に示す矢印のように、張出体4に対して略90度の範囲内で傾動可能である。
【0024】
次に、取付手段3は、最下長尺体53の両側端面53a,53bにそれぞれ形成される二対の第1のピン孔7a,7b(図1参照)と、張出体4の、二対の第1のピン孔7a,7bの位置に対応した位置にそれぞれ形成される二対の第2のピン孔8a,8bと、第1のピン孔7a,7b及び第2のピン孔8a,8bに挿通されるピン9a,9bと、このピン9a,9bの先端にねじ込まれるナット10a,10bからなる。
さらに、固定部材6は、横断面がコ字状をなし、下端4aの両側端面を挟むようにこの下端4aに取り付けられる挟持体6aと、下端4aの両側端面を貫通するネジ部材6b,6bからなる。
【0025】
さらに、張出部の張出体が最下長尺体に収容された場合の構成について、図3を用いて詳細に説明する。図3 (a)は図1(a)におけるC-C線断面図であり、図3(b)は図1(a)におけるD-D線断面図である。なお、図1及び図2で示した構成要素については、図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3(a)に示すように、張出体4は最下長尺体53の凹部53cに収容される。このとき、張出体4の外側の壁面は、最下長尺体53の凹部53cに接している。
そして、張出部2を使用する場合、最下長尺体53の第1のピン孔7b,7bと、この第1のピン孔7b,7bの位置に一致する位置に移動させた張出体4の第2のピン孔8a,8aに、ピン9aが差し込まれる。その後、ピン9aの先端に一個のナット10aがねじ込まれる。これにより、張出体4が最下長尺体53に対してスライド移動しないように固定される。
また、図3(b)に示すように、最下長尺体53に設けられる固着部材61は、最下長尺体53の凹部53cが有する開口部53dを閉止するように、最下長尺体53の両側端面53a,53bに対して取り付けられている。
【0026】
さらに、張出部を使用しない場合について、図4を用いて説明する。図4(a)は実施例に係る電柱昇降器を使用していない状態を示す平面図であり、図4(b)は図4(a)におけるE方向矢視図である。なお、図1乃至図3で示した構成要素については、図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、図4(a)は、図7(a)とは逆に、張出部を裏側からみた場合のものである。
図4(a)及び図4(b)に示すように、張出部2を使用しない場合は、二本のピン9a,9bが、それぞれ第1のピン孔7a,7b及び第2のピン孔8a,8bに差し込まれて、ピン9a,9bの各先端に二個のナット10a,10bがねじ込まれる。これにより、張出部2を使用する場合と同様に、張出体4が最下長尺体53に対してスライド移動しないように固定される。
【0027】
また、電柱昇降器1を持ち運ぶ場合は、二本のピン9a,9bを第1のピン孔7a,7b及び第2のピン孔8a,8bから引き抜いて、張出体4を最下長尺体53の凹部53cから抜き出し、さらに主柱56をジョイント54,55において折り畳むとよい。
【0028】
次に、実施例に係る電柱昇降器を折り畳んだ場合について、図5を用いて説明する。図5は、実施例に係る電柱昇降器を折り畳んだ場合の外観図である。なお、図1乃至図4で示した構成要素については、図5においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図5に示すように、電柱昇降器1は、張出体4を最下長尺体53の凹部53cから抜き出した後に、折り畳み可能である。詳細には、まず長尺体52に対して最下長尺体53を折り畳み、さらにこの最下長尺体53の上から被せるように長尺体51を折り畳む。そして、張出部2を、例えば長尺体52に沿って並べ、締め付けベルト65,66(図7参照)を用いてこれらをまとめると、容易な持ち運びが可能となる。
【0029】
上記構成の電柱昇降器1によれば、張出部2を使用した場合、張出体4が最下長尺体53から延設され、さらに張出体4の下端4aに張出ステップ5,5を備えることから、張出ステップ5,5が最下長尺体53の下端よりもさらに地面に近い高さに配置される。
よって、作業者は、張出ステップ5,5に足を掛けることが容易となる。したがって、従来の課題であった脚立の使用や無理な跳びつきによる手間や転倒の危険性を軽減することができる。
また、第1のピン孔7b,7bと、第2のピン孔8a,8aに、ピン9aが差し込まれる等により、張出体4が最下長尺体53に対してスライド移動しないように固定されるから、作業者は、張出ステップ5,5に安心して荷重をかけることができる。
【0030】
一方、張出部2が不要な場合には、張出体4を最下長尺体53に対して移動しないようにピン9a,9bとナット10a,10bを用いて固定したり、張出体4を最下長尺体53の凹部53cから引き出して張出体4を取り外したりすることにより、電柱昇降器1を従来の使用方法のとおりに使用できる。
そのため、地面から電柱70の第一足場ボルト71までの高さに応じて、張出部2を使用するか否かを簡単に選択できる。
さらに、電柱昇降器1は、その全長ではなく、張出体4が設けられる下方部分についての長さ調整によって、最も下方の張出ステップ5,5の高さを地面に近づけることができる。そのため、従来技術と比較すると、より簡易な構成となり、かつ簡単に使用することができる。
【0031】
続いて、実施例の変形例に係る電柱昇降器について、図6を用いて説明する。図6(a)は実施例の変形例に係る電柱昇降器を構成する張出部及び取付手段の一部を、図1(a)におけるA方向からみた場合の側面図であり、図6(b)は取付手段の残部の横断面であり、図6(c)は同電柱昇降器の使用状態を示す側面図である。なお、図1乃至図5で示した構成要素については、図6においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、締め付けベルトの図示も省略する。
図6(a)乃至図6(c)に示すように、実施例の変形例に係る電柱昇降器1Aは、実施例に係る電柱昇降器1の張出部2と、取付手段3の代わりに、それぞれ張出部2Aと、取付手段3Aを備える。
張出部2Aは、張出部2の張出体4の代わりに、張出体11を備える。この張出体11も、横断面がコ字状をなしており、両側端面11a,11aを備える。さらに、張出体11は、その下端11bに、張出ステップ5,5と、固定部材6を備える。
また、取付手段3Aは、取付手段3のピン構造の代わりに、張出体11の上端11cにおいて、両側端面11a,11aとそれぞれ一体的に形成される一対のフック12,12と、最下長尺体53に対して着脱可能に取り付けられるアダプター13を備える。なお、このフック12,12と、アダプター13も、アルミニウム製である。
【0032】
また、図6(b)に示すように、フック12,12は、最下長尺体53の横断面に沿って架け渡される被掛止体へ掛止可能に形成される。なお、本実施例では、被掛止体とは、アダプター13を指している。
さらに、図6(c)に示すように、アダプター13は、半割体13a,13aが、ヒンジ13bを介して環状となるように連結されている。よって、半割体13a,13aのヒンジ13bに対向する部分は開放端となり、この開放端には一対の突片13c,13cが形成される。
この突片13c,13cは、ナット14bがねじ込まれるピン14aが貫通して取り付けられる。よって、フック12,12を半割体13a,13aの上縁に掛止し、かつピン14aとナット14bを突片13c,13cに取り付けると、張出部2Aが、最下長尺体53へ固定される。これ以外の電柱昇降器1Aの構成は、実施例に係る電柱昇降器1の構成と同様である。
【0033】
電柱昇降器1Aによれば、電柱昇降器50を改造することなく、張出部2Aを取り付けることができる。また、最下長尺体53に対するアダプター13の高さ位置を変化させることにより、張出ステップ5,5の高さ位置の微調整が可能である。さらに、最下長尺体53の凹部53cに横桟といった構造物がある場合にも、凹部53cに張出体11を収容しないので、張出体11を最下長尺体53に取り付けることができる。これ以外の電柱昇降器1Aの効果は、実施例に係る電柱昇降器1の効果と同様である。
【0034】
なお、本発明に係る電柱昇降器は、実施例に示すものに限定されない。例えば、第1のピン孔7a,7bと、第2のピン孔8a,8bは一対または二対よりも多く設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、電柱の昇降をするために用いられる電柱昇降器及びこれを構成する張出部として利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1,1A…電柱昇降器 2,2A…張出部 3,3A…取付手段 4…張出体 4a…下端 5…張出ステップ 6…固定部材 6a…挟持体 6b…ネジ部材 7a,7b…第1のピン孔 8a,8b…第2のピン孔 9a,9b…ピン 10a,10b…ナット 11…張出体 11a…側端面 11b…下端 11c…上端 12…フック 13…アダプター 13a…半割体 13b…ヒンジ 13c…突片 14a…ピン 14b…ナット 50…電柱昇降器 51~52…長尺体 53…長尺体(最下長尺体) 53a,53b…側端面 53c…凹部 53d…開口部 54,55…ジョイント 56…主柱 57…係止体 58~60…ステップ 61…固着部材 62~64…当接部材 65,66…締め付けベルト 70…電柱 71…第一足場ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7